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インフレ率と為替変動

2008年05月15日 19時27分57秒 | 経済関連
ちょっと気になったので、メモ。

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はてなブックマーク - インフレ目標の失敗 - 池田信夫 blog

こういう記事らしい。

『スティグリッツによれば、現在の「新型スタグフレーション」に対応するには、各国で採用されているインフレ目標をやめるべきだという。

いま世界的に起こっているインフレはマネタリーな現象ではなく、天然資源の価格上昇というリアルな要因が各国に「輸出」されたグローバルな現象であり、一国の金融政策ではコントロールできない。中国のインフレは8%、ベトナムは18%を超えている。これを金利の引き上げで2%程度に抑制することは不可能であり、暴力的な金融引き締めを行なえば、不況がさらに深刻化するだけだ。

グリーンスパン時代にアメリカ経済が安定していたのは、彼の巧みな金融政策のおかげではなく、中国などからの輸入デフレによって物価が安定していたからだ。いま起こっているのは逆に、資源コストの上昇による輸入インフレなので、金利を上げても止まらない。必要なのは、先進国も途上国もインフレ目標を廃止し、物価よりも実体経済の安定を目標にした経済運営を行なうことだ。』

池田氏の記述が正しいということにはならない、ということに注意すべきではないかと思う。

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★中国やベトナムの高インフレ率は、必ずしも「インフレ目標の失敗」を意味するものではない。

これは言っておくべきかと(笑)。
何故なら、両国とも為替による調節機能が不十分であるからだろうと推測している。ともに管理為替である。

ベトナム;為替管理制度

あと、インフレ目標の有無には関係なく、アメリカの金融政策で中国やベトナムのインフレ率をコントロールすることはできないし、インフレ目標を設定している国々の金融政策では有効な対処となるはずもないでしょうね。それらの国々では、国内事情の方が大事ですので。


①架空のモデルで考えてみる

通貨「ドル」のA国と通貨「ギル」のB国があるとする。輸出入は完全に均衡していて、双方とも経常収支はゼロ。
通貨の交換比率が1ドル=2ギルであるとする。両国には同じ品物であるパンPがあるものとしよう。A国でPの価格は5ドル、B国では10ギルである。為替通りの価格ということ。
さて、B国でインフレ率が10%であったので、次の年にはPの価格が11ギルになったものとする。すると、為替が変動せず1ドル=2ギルならば、A国でのPの価格は5.5ドルであるはず、ということになる。しかし、A国のインフレ率が20%であったなら、Pの価格は既に6ドルになっているだろう。

ここで、単にA国とB国のPの価格を比較すると、同等品なのであるから等価であるはずで、11ギルのPと6ドルのPは同じ価値ということになります(近頃よくある比較はビッグマック指数とか)。となれば、為替はどうなるかというと、6ドル=11ギルとなるので、1ドル=約1.83ギルということです。前年の2ギルから比べると「ギル高ドル安」になっているはず、ということです。為替が自由に変動する場合には、インフレ率の高いA国と、低いB国ではインフレ率の差が為替で調節され得る、ということだと思います。高インフレ率のA国の通貨は相対的に「減価」となる、ということです。ギルがドルペッグで為替が動かないとなれば、A国で6ドルになってしまうと、B国では12ギルの価格で売られてしまうことになってしまい、高インフレが招かれることになるでしょう。

経済成長率がある程度高く、貿易黒字で利益を獲得していくと、国内通貨での価格表示が増大するか通貨価値が増大して国内通貨表示では大きく変動しないかのいずれか、ということではないでしょうか。

ある期に外貨表示価格100ドルであった財があるとして、それが次の期では外貨表示価格が105ドルになっていれば、国内通貨(ギル)価格表示だとどうなるか。
・為替変動がない場合(1ドル=2ギル):200ギル→210ギル(=105ドル×2)
・為替変動した場合(1ドル=1.95ギル):200ギル→204.75ギル(=105ドル×1.95)
となるので、為替変動で調節された方がB国内での価格表示される数字の大きさは、見掛け上小さくなる。けれども、価値が変わってるわけではなくて、単なる表示される数字の問題です。B国での物価指数を考える時には、これら「国内通貨表示価格」が集められてきて考えることになるので、為替変動がある方が「高インフレ率」を招くのを防ぐ効果が期待できるでしょう。


②なぜベトナムではインフレ率が高いのか

国内物価を見て金融調節で対応しようとしても、限界がある、ということはあるかもしれません。いくら金融引き締めを行っても、輸出が伸びて獲得外貨が増加し、その富が国内に還流してしまえばマネーが増大していることには違いありません。通常の為替変動相場であると、ベトナム通貨は増価し相対的にドルは下落する、ということになるかと思います。
が、管理為替であるために、その調節弁は十分に機能していないのではなかろうか、ということです。ベトナム経済が輸出のウェイトがあまり大きくなくて獲得利益が国内経済規模に比べて十分小さいのであれば、インフレ率には大きく影響しないかもしれません。けれども、恐らく近年のベトナムの輸出額は増加しているであろうと思いますので、そこから利益が多く得られるならばベトナム国内に還流してしまうのは止むを得ないのではないのかな、と。高インフレ率の大きな要因として、こうした硬直的な為替変動があるのではなかろうか、ということです。中国でも為替変動は極めて小さく管理されているのですから、似たようなものですね。


③日本の狂乱物価を思い浮かべると

finalventさんが今日は沖縄返還の日だ、と日記で述べて(2008-05-15 - finalventの日記)おられましたが、狂乱物価はまさしくその時期でした。沖縄でも返還後には猛烈な物価高となったらしいです。

ニクソン・ショックの71年以降、国際為替の調節はまともに機能しなくなってしまった時期だったのではないかな、と。
変動相場制 - Wikipedia

そこに追い討ちとなったのが、石油危機でした。中東戦争に端を発するオイルショック、というやつですね。
この時期には先進国で高インフレが軒並みとなり、日本でも異常なまでの物価高となりました。スタグフレーションというのが起こった時期でもありました。
これらが終息していくのは76年頃で、為替というのは色々と問題を起こすことがあるかも、ということかなと。


④狂乱物価はそれだけではないかも

いくら為替による調節機構が十分機能しなくなったとしても、それだけで物価上昇が月単位で数十%ということは中々考え難いわけですね。全くの素人考えなんですけれども、やはり人間の予測行動の問題なのではなかろうか、と。

たとえば中国地震の被災地のような状況を考えてみましょう。
目の前にカップラーメンがあるとして、これが今は150円だとします。自分の周囲の人たちを観察すると、欲しいと考える人たちばかりです。そりゃそうですよね。食べるものが少ないわけですから。で、きっとみんなカップラーメンを買いたがるでしょう。品薄だから、明日とか明後日になれば、2倍か、3倍か、いや、もっと高値になっているかもしれません。そういう心配というか恐怖というか不安が増大しているわけです。

そうすると、誰しも先を争って目の前にある「1個150円のカップラーメン」に飛びつくわけです。この現象が何日か続いてみたらどうなるでしょうか?たぶん毎日、値段が上がっていく一方となるでしょう。
人々の心に、「品物が大量にあって今すぐ買わなくても大丈夫だ、安心だ、これから暫くは値段が上がらないだろう」というような安堵がもたらされるまでは、我先に買いたがるからです。お金として持ってる100円や千円よりも、「現物」つまり実物価値のあるものに置き換えないと「大変なことになる、手に入らなくなる」という恐怖感に支配されると、値段は次々と上がっていき、そのことが更に人々の不安心理を加速してしまうのです。
(例のサブプライムショックで株式市場暴落みたいな、投売り続出のオンパレード状態とも近いかも)

なので、今日150円だったカップラーメンは、明日には300円に、明後日には1000円に、という具合に、優先順位の高いものは価格がうなぎのぼりになっていくはずです。実物信奉じゃないんだけど、ゲンナマよりも実物を最優先にしなくちゃいけないと考える時がある、ということ。その場合には狂乱物価のようなことが起こる。

けれど世の中の物価指数は今すぐに必要じゃないものもたくさんある為に、全ての価格が一気に上昇するとは限りませんよね。ダイエット商品だの、化粧品だの、ゴージャス下着だの(笑)、そういった商品価格が一斉に上がるわけではないので。そうすると消費者物価指数全体では、カップラーメンのような上昇率とはならず、平準化された上昇率ということになるでしょう。


⑤まとめ?

そういうわけで、為替の調節機能がイカレるとインフレ率は変動する範囲が大きくなることは考えられるかな、と。管理為替制だと外部からの攻撃(アジア通貨危機の時のようなヤツ)には耐性があり、変動幅を小さくできるメリットはあるものの、調節機能を奪っていることが考えられるので、自由な変動による調節が働く方が望ましい。なので、中国やベトナムに限らず、湾岸諸国のドルペッグも含めて、為替による調節機能が働く方が、国内の金融政策は行いやすいのではないかな、と思う。

天然資源の価格上昇があったとしても、各国の輸入(或いは輸出)比率がどの程度なのか、ということがある。日本のように経済規模がある程度大きく、石油依存度が小さくなっていれば、(天然資源価格上昇による)輸入物価上昇が、必ずしも全ての物価上昇を招くわけではない。現に日本だと、これほど天然資源の価格上昇が言われている中で、消費者物価上昇率に与えるインパクトは弱く、高々数%に過ぎない。他の要因―例えば輸入によって低価格が達成されてきたもの、円高で輸入価格が下落したもの、デジタル製品等の性能向上による価値下落、携帯電話料金やネット接続料金の下落―などによって一部相殺されているので、消費者物価指数に対しては資源価格上昇の影響度が高インフレ国みたいに出ているとは思われない。

経済の成熟度がそれほどでもなく、為替による調節機能が弱く、貿易の比重が割と大きい(特に輸出優位の)国においては、高インフレ率となってしまうことが有り得るのではないだろうか、と。


これら現象は、インフレ目標の有無だとか失敗云々という問題ではないのではないかと思われるが、賢明な諸兄はどのようにお考えになるであろうか。



天災から見える国の違い~ミャンマー、中国、アメリカ

2008年05月15日 13時22分38秒 | 社会全般
ミャンマーのハリケーン被害も中国の地震被害もともに深刻であるのに、救助作業への大きな障害を抱えている。ミャンマーにおいては、軍事政権の支援拒否が大問題で、更に救援物資の独占、役人・軍人等の腐敗ということがある。また、中国でも同様に海外からの人的支援は拒否し、資金援助は受けるという姿勢である。米国政府は中国へ僅か50万ドルの支援金を申し入れたが、外交儀礼の一つという程度であろう。日本も同程度でいいと思う。

むしろ、現地の日本系企業は、「自分たちの社員」(勿論中国人だ)を守るべく食糧等の援助物資を供給することが必要だろうと思う。中国の役人たちに横領されたりするのが当たり前だろうと思うので、日本や沿岸地域から物資を送っても、必要な人たちに届かない虞があるだろう。それならば、民から民へ、つまり企業間の物資輸送みたいにしないと現地の被災者たちには届かないのではないかな、ということだ。

状況を更に悪化させるのは、中国の人口が多いということだろう。被災人口が大きいので、当たり前の支援規模では全然足りない、ということが考えられる。また物流手段や援助物資の分配等、想像もつかないくらいのロジスティックス能力みたいなものが必要とされるからだ。


今日の読売朝刊の1面記事はこれだった。

被災者が支援物資奪い合い、運搬中の車に殺到…四川大地震 国際 YOMIURI ONLINE(読売新聞)

先に奪った者勝ち、ということだ。これが現実なんだ。


こういう事態は別に中国だけじゃない。アメリカのハリケーン被害の時に起こったのは、似たような略奪行為だった。

ブロガーは見た--ハリケーンに襲われたニューオーリンズの惨状ニュース - CNET Japan

(一部引用)

Barnettはさらに次のように続けた。「政府が完全にお手上げ状態であるため(いずれにせよ、何もできなかっただろうが)、われわれはこの街の治安回復を真剣に検討している。いくつかの報告によると、警察が略奪行為を行っており、またQuarter近くのある警察管区では自動小銃が発射されたため、まともな警察官は各管区内で包囲されているという」

 「危険は承知しているが、私はForeign Internal Defenseについて多少の経験がある。まるで『Planet of the Apes(猿の惑星)』のようなこの混乱を鎮めるチャンスがあれば、誰かが最初の一歩を踏み出さなくてはならない。つまり、現在あちこちで『Lord of the Flies(蝿の王)』の世界が展開されている。まさに無秩序状態だ。私有財産も人命も全く尊重されない」

 さらに同日、しばらく経ってからBarnettは次のように書いている。「警察が略奪行為を行っているが、これは複数の情報源から確認が取れている。略奪行為の一部は『正当』と言えるかもしれない。もっとも、この状況で『正当』という言葉に何らかの意味があればの話だが。警官らはATM荒らしや金庫破りもしている。これらも確認済みだ。実際に複数の目撃者がいる。また、彼らは公用の名目で自動車ディーラーから十数台のSUVを持ち出し、さらに銃器店や質屋から銃などの小型の武器を略奪した。おそらく『犯罪者』による略奪行為を防ぐためと思われるが、彼らの真の意図など誰にも分からない」

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カトリーナ被害の時に限らず、アメリカで起こったロス地震やロス暴動の時にも、やはり同様に略奪行為は行われた。それもごく少数の悪者が悪事を働く、というレベルではなく、もっと大規模に行われるのである。上記引用記事のようなことは珍しくも何ともなく、警官たちの中にだって「これ幸い」と持てる強権を利用して略奪するのだ。これは国民性なのか何なのか判らないが、そういう国なのだ。


日本では、殆どこういう光景は見られない。暴動に関しては、以前記事にも書いた。
災害救助活動の検討3

日本人だって極限状態におかれたらどうなるか分らんよ、という意見があるかもしれないが、それでも日本人はこれまでの災害時にそういう暴徒と化して略奪を行ったりはしてこなかった(昔の打ち壊しみたいなのは当然あったよ)。そういう国民なんだ、ということ。実際全部を確かめたわけではないけど、被災地域では互いに助け合うし食糧も分け合うし、概ね整然と並ぶ。他人の家とか店とかから奪っていく人たちなんて、まず見ないと思う。

警官や自衛隊や消防隊だって、全力で住民を守ろうと頑張るし、命懸けで整然と組織的に働いてくれる。悪徳警官みたいな人が現れて、「大チャーンス」みたいにあちこちから奪っていくなんてこともない。自衛隊が組織的暴力を企て、放置されたATMから根こそぎ金を奪ったりはしない。日本とはそういう国なんです。

アメリカや中国では、法の秩序というものが崩壊した環境にあっては、生き抜く為には自分の持つ「暴力的な力のみ」が唯一頼れるもので、暴力が支配する場面というのが訪れるのだ。まさしく、「北斗の拳」に出てくるような世紀末世界みたいなものだ。けれども、日本は違うのだ、ということ。殆どの場合、秩序は保たれている。暴力ではなしに。


ネット界隈では、日本人のいいところみたいな記事が人気を集めたりしていますが、それとも通じるかも。拙ブログでも随分昔に書いた。
エリート教育は国際競争力を高めるか


田舎に住んでいると見かけるかもしれないが、国道の脇なんかに農産物が売られている店があったりする。店番なんて勿論誰もいないんだけど。台の上に、とうもろこしやトマトなんかが、「ひとカゴ 100円」という具合に売られている。傍らにはお金を入れる缶みたいなのがあるだけで、誰も見てないんだから、勝手に持ち去られても気付かれないんですよね。けれど、野菜も、お金も、そこにきちんと残されているんですよ。誰も勝手に持っていったりはしない。いや、確かめてみたわけじゃないから判らないんだけど(中には不届き者も少しはいるかもしれんが)。こういう商売って、日本くらいでしかできないんじゃないかと思うわけですよ。朝早く来て、野菜をカゴに入れて並べる。多分、夕方くらいに残った野菜やお金を回収に来る、ってことですよね。最初見た時には、ちょっと驚いたんですが、そういうもんなんだな、と思いましたよ。これをアメリカや中国でやったらどうなるかというと、並べた途端に全て持ち去られてしまうでありましょう、きっと(笑)。お金が入れられた缶があれば、それは当然なくなっているでしょう。でも、日本だと、どちらもきちんと残っているんです。

ごく稀には賽銭箱から盗んだりするような罰当たりな人もいるかもしれませんが、そういう不届き者というのは少ないんじゃなかろうか、というのが私の印象です。道端のお金がずっとそこに普通に残っているんですから。国民全体としては、「完全主義の文化」とか誠実さや信頼度の高さというのがあると思うんですよ。そのことを日本人はもっと自信を持っていいと思うのですよ。たしかに偽装云々とか散々報道されたりして、残念に思う部分はあるのですが、自信を失う前にこれまで培ってきた日本人気質のいいところに目を向ければいいと思います。