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普天間基地問題についての中間整理

2010年01月26日 13時38分54秒 | 防衛問題
移設反対派が当選したという名護市長選挙の結果が出たが、鳩山政権とDPJ は「戦略的目標(笑)」というものを全く持っていないようである。これまでの時間の空費は、一体何の為のものだったのか?あまりに杜撰な主張の変遷には、呆れるばかりである。政権誕生以前から、普天間移設問題では「国外移転」、悪くても「県外移転」を掲げてきたのであれば、その目標に向かって努力すべきだろう。

一応、個人的見解について、簡単に整理をしてみることにする。


①本当に代替施設が「沖縄に存在しなければならない理由」とは何か?

最大の疑問点がこれである。これまでの報道等で散見された理由としては、代表例が朝鮮半島有事であるが、どうやらその説明というのが妥当なものではなかったようである。また、台湾有事の際に普天間から「スーパースタリオンでとんでゆく」作戦というのも紹介されていたようではあるが、普天間のスーパースタリオンが4機ないしゼロの配備ということなら、正当性の説明としては極めて脆弱な根拠としかなり得ないだろう。4機マックスで200人規模の特殊部隊を投入したとして、超人戦隊でもないわけだから、どういった作戦や目標で投入されるのかという疑問は残る。

また、日本の憲法上の制約というものがあるのであって、これについての見解は回答が得られてはいない。たとえ台湾と中国その他との戦闘状態が発生したとしても、日本領土内に存在する基地から米軍が直接出撃し攻撃参加する、といった事態が、法的に認容されるかどうかということである。この問題はクリアになっているわけではない(過去の解釈からすれば、不可という立場をとらざるを得ないのではないか)。いくら米軍の事情があるからといっても、憲法に反するわけにはいかないことくらい、承知しているだろう。仮に、台湾に特殊部隊をヘリで直接送り込むという想定を有しているとしても、そのことを「代替施設は沖縄」とする理由付けには使うことができない、ということである。これは、米国側が説明すべき立場にあるものである。


②沖縄に残る海兵隊の機能とは何か?

現在約11000名の海兵隊員が沖縄にいると言われているが、グアム移転は約8千、場合によるが8550名規模の移転ということも想定されている(米側文書)ようである。そうすると、残りは約2450名ということになるわけである。これには、ロジスティック中隊のような、地上戦闘部隊以外も含む数であると考えられるので、地上戦闘要員としての実数ということになれば、恐らくは約2000名規模、ということになってしまうのではなかろうか、と。ESGやMEUの編成には、各基地の部隊を順繰り入れ替えつつ、訓練もやり、という予定なのであろうと思われる。

将来的な展望として、3MEFの規模が縮小されるという予定はあっても、拡張されるということは考え難いので、これまでの部隊の規模や数よりは減少してゆくであろう、と予想する。そうなれば、沖縄にあった時の規模よりも全体として小さくなっていても不思議ではない、ということである。固定化された常駐部隊の数は、それほど多くはないのではないか、ということである。


③他の論点として

そもそも、米軍再編という大きな流れは様々な側面があって、軍事技術的な部分ばかりではなく、政治的な部分も少なくないであろう。それに関する論説は、恐らく数多く出されてきたであろうから、ここでは気になる論点だけについて述べておきたい。

第一に、東アジアにおける緊張の程度である。ロシアや中国の政治的脅威がかつてに比べて低下している、ということはあるだろう。直接対決の場面というのが、大規模には想定され難くなった、ということもあるだろう。米国から見た、対ロシア、対中国というバランスでは、そう捉えられているということである。

第二に、戦争自体の質的変化である。国家間の大規模総力戦のような対決構図は後退し、違った紛争が多く生じてきているということである。これについても、定型的な解説が多くあるだろう。

第三に、米軍以外の軍事能力向上である。よく言われるのが、中国軍の近代化と能力向上、である。これはその通りだろう。また、北朝鮮にしても、ミサイル能力の向上は見られてきた、ということになるだろう。このことが、米軍再編に重要な影響を及ぼしていると考えられるのではないか。

この第三の論点について、もう少し述べたい。
以前に拙ブログ記事に書いたことがあるが、「中国軍や北朝鮮軍のミサイル攻撃」というのが攻撃手段として脅威を増した、ということではないかと思う。基地へのミサイル攻撃を集中すれば、飛べなくなる、というごく当たり前の事実について、これに対する”保険”、つまり軍事的対策が必要になってきた、ということであろう。
昔であれば、中国軍や北朝鮮軍の攻撃能力として、「沖縄」までは侵攻を想定し難かったわけである。しかし、昨今のミサイル能力の向上や中国軍の航空戦力強化等、在沖米軍基地は昔ほど安全ではなくなった、ということである。もしも沖縄に集中しすぎているとすれば、どういう事態が想定されると思うか?嘉手納基地ばかりでなく、在沖米軍基地にミサイルが雨あられと降り注いでこないとも限らないわけである。それは、一気に戦力を削がれることになるのだ。

こうした攻撃を緩和するには、「射程の外へ出る」というのが有効となるのではないか?
遠いからこそ、意味があるのだ。
また、ある程度分散配置をすることで、リスク軽減が図られるということになるわけである。投資と同じ。

ハワイやグアムに届くミサイルというのは、数が限られてくる。中国軍の潜水艦から発射される巡航ミサイルがあるかもしれないが、その能力には物理的限界がある。北朝鮮や中国の本土から発射されても届く、という事態よりはマシ、ということである。こうした点を考慮すれば、沖縄に集中配置するのは得策ではない。

沖縄から「ヘリで直接攻撃しに行ける」という機能は、現時点では、さほど重要ではないはずである。代替施設を求められるのは、殆どが訓練の必要上ということであり、いざ事が起こった時の運用が想定されている「攻撃部隊の出撃拠点としての軍事基地機能」ではないだろう。だとすれば、沖縄に代替施設を設置しなければならない、という必要度は低下し、必須の要件であるということの説得的な意見とはならないだろう。