ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画 週末の興行成績 [10月18日(金)~10月20日(日)]と、人気順位 ►映画祭の季節、ドヤ街を撮ったドキュメンタリーの件等

2019-10-23 18:48:47 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▸10月18日(金)シネマ・ジャック&ベティで「帰れない二人」を鑑賞。ジャ・ジャンクー監督作品は「罪の手ざわり」以来5年ぶり。長い年月に及ぶ<腐れ縁>男女の物語は「浮雲」をはじめなかなか味わい深い作品が多いようですが(他人事だから?)、これもじわっときます。また「罪の手ざわり」同様、そんな物語の背景の社会の変化等が自然に描写されている点もいいです。ただ、「感動作!」と!マークをつけるような作品でもないので、誰にでもオススメというわけでもありませんが・・・。

▸昨日22日(火)はかながわ労働プラザで横浜キネマ倶楽部主催の「寿ドヤ街 生きる2」(渡辺孝明監督.1984)を観ました。約35年前の映像を見て、その間に変わったもの、変わってないもの等についていろいろ思いを馳せました。変わったものといえば、映像や音声などの映画製作技術もまさにそうで、事前に字幕等を入れた部分もあったそうですが、それでも寿の住人へのインタビュー等で聞き取りにくい部分が多く、案の定上映後の監督トークの際質問がありました。そこで監督が「わかりたいと思ったら、それに近づいていくこと」を強調していたのはナルホドと思いました。他にも「ドキュメンタリーで<感動作>は求めない。それは自分の中のイメージにすぎない」等々、とても聞き応えのあるトークでした。
 かながわ労働プラザを出て、すぐ近くの寿町界隈を久しぶりに散策。寿の現況については愛読している<はまれぽcom.>の→「横浜寿町・日本三大ドヤ街の今」と題した記事参照。(この記事の書き方はちょっと<東京DEEP案内>っぽい感じが気になりますが。)
 ドヤ街関係の映画では、折しもテアトル新宿で「解放区」の上映が始まっています。ドキュメンタリー作家をめざす映像作家の青年の姿を通して釜ヶ崎という街とそこの人々を映し出した作品とのことですが、大阪市による内容修正勧告に応じず助成金を返還したことがあいちトリエンナーレと同様に表現の自由をめぐる問題として報道されていますね。来月横浜でも上映が始まるので、その時に観てみます。それにしても、行政側(&国民のマジョリティ)のネガネに適ったものにしか助成金を出さないというのは、多様であるべき文化を先細りさせる自殺行為だと思います。(個別的には判断がむずかしい事例もあるとは思いますが。)

▸映画祭や特別企画上映の時期に入りました。
 10月28日(月)〜11月5日(火)は<第32回東京国際映画祭>ですが、→上映作品リストを見ると、今回韓国映画は<アジアの未来>部門の「失われた殺人の記憶」(原題:아내를 죽였다[妻を殺した])と、<東京国際ファンタスティック映画祭ナイト>の「悪人伝」だけ?
 11月15日(金)~28日(木)ヒューマントラストシネマ渋谷では<韓国映画 CJゾーンの映画たち>で、過去公開された15作品を上映。そのリストは→コチラ参照。私ヌルボが観たのは8作品かな? とくにオススメは「ワンドゥギ」「優しい嘘」・・・って、原作者(キム・リョリョン)も監督(イ・ハン)も同じだ!
 11月23日(土・祝)~12月1日(日)は<第20回東京フィルメックス>(→公式サイト)。コンペティション部門は「波高」(原題:파고)だけが韓国映画ですが、前出の「失われた殺人の記憶」とも韓国ではまだ一般公開されていません。ただ、過去の入賞作から投票で選ばれた「息もできない」が上映されます。この超名作をまだご覧になってない方はこの機会にぜひ!
 11月30日(土)~12月13日(金)はシネマヴェーラ渋谷で<生誕100年記念 異端の天才 キム・ギヨン>。全13作品の一覧とその内容紹介は→コチラで、上映スケジュールは→コチラ。これは韓国映画史に関心がある方はぜひ! 全体的にオゾマシイというかオドロオドロシイというか、そんなフンイキですけどね。という私ヌルボは4本観ただけなんですが・・・。
 そして明日24日(木)は<コリアン・シネマ・ウィーク 2019>(10/29(火)~11/2(土)の当選発表か。どうなるかな?
 それにしても、各地の映画祭で数々の賞を獲得し、韓国で一般公開されて好評を得ている「ハチドリ」の日本公開はどうなっているのでしょうか?

         ★★★ NAVERの人気順位(10月22日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
       ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) 私の歌は遠く遠く(韓国)  9.79(121)
②(9) 明かりの下で(韓国)  9.60(20)
③(-) 今日も上、上(韓国)  9.55(143)
④(2) 主戦場  9.50(977)
⑤(4) マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白(韓・仏)  9.47(103)
⑥(7) ポーランドに行った子供たち(韓国)  9.32(537)
⑦(-) ディーター・ラムス  9.31(89)
⑧(10) 教会のお兄さん(韓国)  9.28(1,549)
⑨(-) レッドシューズ(韓国)  9.24(3,835)
⑩(-) アンタッチャブル  9.06(18)

 ③と⑨の2作品が新登場です。
 ③「今日も上、上」は、韓国のドラマ。というよりも、早い話が愛猫映画で、昨年の第22回富川国際ファンタスティック映画祭と第1回ネコ映画祭(atソウル劇場)に公式招請され好評を博した作品とのことです。今日も平和なソンオンマ(ソン・ウソン)と12匹のニャンコたち。サンハウスでのどかな時間を過ごしていたそのニャンコたちに、ある日全身が震えるようなことが起こります。「みんな、一緒に旅行に行こうか!?」 青天の霹靂のようなオンマの一言で初めて外の世界へ旅行を始めたニャンコたち。涼しい風、青い海、夕暮れの野原まで、すべてがどこまでも目新しい、そんなニャンコたちの運命は・・・。原題は「오늘도 위위」です。
 ⑨「アンタッチャブル」(仮)は、イギリスのドキュメンタリー。2017年「ニューヨークタイムズ」の衝撃的な報道にハリウッドが揺れ始めます。世界的に有名なハリウッドの大物映画プロデュヘサーのホビー・ワインスタイン(→ウィキペディア)が過去30年の間に女優など多数の女性に対し、セクハラや性的暴行を繰り返していたというもので、その被害者数は100人にものぼりますが、彼の報復を恐れ、泣き寝入りするしかなかったのです。そんな被害者たちが声を上げ、勇気を持って醜悪な真実に立ち向かったこの事件は、その後のMeToo運動の口火を切ることになりました・・・。韓国題は「와인스타인(ワインスタイン)」。日本公開は未定のようです。

     【記者・評論家による順位】

①(1) 寄生虫[パラサイト](韓国)  9.06(16)
②(2) ハチドリ(韓国)  8.38(13)
③(3) ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド  7.90(10)
④(-) ブラッド・シンプル  7.75(4)
⑤(-) ストライキ前夜(韓国)  7.71(7)
⑥(4) マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白(韓・仏)  7.60(5)
⑦(5) ジョーカー  7.50(10)
⑧(6) アド・アストラ  7.38(8)
⑨(7) 主戦場  7.33(6)
⑩(8) EXIT(韓国)  7.23(13)

 ④「ブラッド・シンプル」が新登場です。1984年コーエン兄弟が初めて手がけた作品で、日本では1987年公開されましたが、韓国ではなぜか今回が初公開です。韓国題は「블러드 심플」です。

      ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績10月18日(金)~10月21日(日) ★★★
           日本より1日早く公開の「マレフィセント2」が「ジョーカー」に替わって1位

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・・累積収入・・上映館数
1(42)・・マレフィセント2・・・・・・・・・・・10/17 ・・・・・・・・・540,314 ・・・・・・・611,451 ・・・・・・・・5,353・・・・・・1,108
2(1)・・ジョーカー・・・・・・・・・・・・・・・・・10/02 ・・・・・・・・・389,985・・・・・・4,508,681 ・・・・・・・39,508 ・・・・・・・978
3(2)・・いちばん普通の恋愛(韓国)・・・・10/02・・・・・・・・・266,469・・・・・・2,543,801 ・・・・・・・21,744 ・・・・・・・821
4(新)・・2回しましょうか(韓国)・・・・・10/17・・・・・・・・・・90,046 ・・・・・・・136,264 ・・・・・・・・1,151 ・・・・・・・645
5(3)・・パーフェクトマン(韓国)・・・・・・10/02・・・・・・・・・・65,889・・・・・・1,182,328 ・・・・・・・・9,863 ・・・・・・・485
6(4)・・ジェミニマン ・・・・・・・・・・・・・・・10/09・・・・・・・・・・21,171 ・・・・・・・375,702 ・・・・・・・・3,209 ・・・・・・・377
7(20)・・君と出会った夏 ・・・・・・・・・・・・10/16・・・・・・・・・・11,590 ・・・・・・・・19,205・・・・・・・・・・165 ・・・・・・・174
8(新)・・チビっ子自転車 スピーディ・・10/17・・・・・・・・・・・7,105 ・・・・・・・・・7,598・・・・・・・・・・・58 ・・・・・・・318
9(新)・・ワイルド・ローズ・・・・・・・・・・・・10/17 ・・・・・・・・・・6,292 ・・・・・・・・10,534・・・・・・・・・・・79 ・・・・・・・151
10(21)・・バーティゴ[めまい](韓国) ・・・10/16 ・・・・・・・・・・5,606 ・・・・・・・・11,161・・・・・・・・・・・96 ・・・・・・・290
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は1・4・7・8・9・10位の6作品です。
 1位「マレフィセント2」は、日本でも1日遅れで公開されているので説明は省略します。韓国題は「말레피센트 2」です。
 2位「2回しましょうか」は、韓国のラブコメ。ヒョヌ(クォン・サンウ)は恥をかくことなく敢行したソニョン(イ・ジョンヒョン)との離婚式を終え、再び待望の独身生活に入ります。しかしソニョンは願わなかった離婚だっただけに不満な毎日を過ごすことに。そこへソニョンに好意を持つサンチョル(イ・ジョンヒョク)が現れます。サンチョルはヒョヌとソニョンの共通の友人です。そのサンチョル、これので独身生活を終わらせたくて、相談にやってきたのはヒョヌのところでした・・・。原題は「두번할까요」です。
 7位「最高の夏、最高の私たち」は、中国の青春ラブストーリー。その分野の人気女性作家である八月長安の200万部売れた小説「最好的我們」の映画化作品です。あ、その前にドラマ化されて、日本でも「最上のボクら」というタイトルで放映されてるのですね。女性カメラマンの耿耿[ゴンゴン](何藍逗)にとって、7年前の高校生だった頃の思い出の人は余淮[ユーホワイ](陳飛宇)でした。17歳、すべてが不器用だったものの、すべてが良かった頃でした。彼女が劣等生で彼が優等生。そんな2人の懐かしくももどかしい記憶をたどります・・・。韓国題は「너를 만난 여름(君と出会った夏)」。この作品は、ちょうど10/22~29日東京都写真美術館ホールで開かれている<2019東京・中国映画週間>(→コチラ)の中で上映されます。(あ、個人的注目作「流転の地球」の上映もあるゾ! ・・・って、半年前からNetflixで配信してるけど。)
 8位「チビっ子自転車 スピーディ」は、スペインのアニメ。町で最速のチビっ子自転車スピーディは、いつか世界最高のレーサーになるという夢を持っています。レーシング大会1等で町のスーパースターになったロックは、もっと速いスピードと町の発展のためには自転車全部にガソリンエンジンを付けなければならないと主張します。しかしスピーディは町を汚染させるガソリンエンジンの秘密を知り、これを食い止めるためのレース対決を開こうとします・・・。韓国題は「꼬마 자전거 스피디」です。
 9位「ワイルド・ローズ」は、イギリスの音楽ドラマ。生まれつきの歌唱力でグラスゴーのあるバーで人気上昇中のローズ(ジェシー・バックリー)の夢はカントリー・ミュージックの聖地、アメリカのナッシュビルのスターになること。ところがその資金稼ぎのためヘロイン売買に手をそめて前科の経歴がついてしまい、その上10代の時に産んだ2人の子供を抱えるシングルマザー生活。しかし、ローズの最初のファンを自任した雇い主スザンナと母親の助けを借り、BBCを経てついにナッシュビルの地を踏むことになりますが・・・。韓国題は「와일드 로즈」。日本公開は未定のようです。
 10位「バーティゴ[めまい]」は、韓国のドラマ&ラブロマンス。英題は「Vertigo」なのですが、本来はドイツ語で<めまい>、それも文字通り周囲がぐるぐる回る回転性めまいのことを言います。有名なヒッチコックの「めまい」の原題も「Vertigo」で、高い建物に上るとめまいがする高所恐怖症の元刑事が登場します。本作のチョン・ケス監督ももちろんそれを念頭に置いていて、高層ビルが主舞台になっています。ただコチラの原題の「버티고(バティゴ)」は英題の韓国語表記とは別に韓国語の「耐えて」という意味にもなるのがややこしてところ。<ソウルナビ映画>ではそう訳しています。30代の会社員ソヨン(チョン・ウヒ)は、めまいがするような高層ビル内のオフィスで毎日なんとか耐えて仕事をしています。安定した生活を願っているものの、現実には不安定な契約社員でお手上げ状態。恋人のジンス(ユ・テオ)と他人には知られず社内恋愛中ですが、それも不安な関係。毎晩かかってくる母親からの電話もうっとうしい・・・。もうこれ以上耐えられないと感じた彼女がくず折れてしまいそうなその瞬間、窓の外にロープにぶら下がったまま彼女を見守るガラス拭きの男グァヌ(チョン・ジェグァン)と目が合います・・・。うーむ、これはやっぱり上記の意味を全部含んだタイトルのようですね。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・・・上映館数
1(6)・・最高の夏、最高の私たち・・・・・・・・10/16・・・・・・・・11,590・・・・・・・・・19,205 ・・・・・・・・・165 ・・・・・・・・・174
2(新)・・ワイルド・ローズ・・・・・・・・・・・・・10/17・・・・・・・・・6,292・・・・・・・・・10,534 ・・・・・・・・・・79 ・・・・・・・・・151
3(1)・・ハチドリ(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・8/29・・・・・・・・・2,416・・・・・・・・129,229・・・・・・・・1,055 ・・・・・・・・・・42
4(4)・・怪しい隣人・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/09・・・・・・・・・2,175・・・・・・・・・10,997 ・・・・・・・・・・64 ・・・・・・・・・・13
5(新)・・北間道[プッカンド]の十字架(韓国)・・10/17 ・・・・2,027・・・・・・・・・・3,096 ・・・・・・・・・・24 ・・・・・・・・・123

 1・2・5位の3作品が新登場です。
 1位「最高の夏、最高の私たち」と、2位「ワイルド・ローズ」については上述しました。
 5位「北間道[プッカンド]の十字架」は韓国のドキュメンタリー。北間道とは、北朝鮮の北側、つまり中国の旧満州一帯をさす(朝鮮側からの)呼称で、昔から朝鮮族も多数居住し、現在も朝鮮族自治州があります。(州都は延吉。) 日本による朝鮮統治期、故郷を離れて北間道に移り住んだ朝鮮人にはキリスト教徒が大勢いました。彼らが手に持った十字架は独立を求める強い意志の象徴であり、背負うべき時代の使命でした。歴史学者のシム・ヨンファン歴史N教育研究所長が北間島の朝鮮族の後裔である故ムン・ドンファン牧師の回顧録に沿って北間島の各地の隠れた抗日独立運動の痕跡と意味を探ります・・・。原題は「북간도의 십자가」。ポスターの画像を見ると、やっぱり尹東柱と宋夢奎の写真も入っていますね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする