ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国生まれの大人気学習漫画<サバイバルシリーズ> ジオたちが干潟であのケブル(ユムシ)と遭遇!

2016-06-29 23:40:58 | 韓国の漫画
      

 私ヌルボ、<サバイバルシリーズ>という子供たち(&その親たち)に大人気の学習漫画のことを知ったのは、「児童書で学ぶ韓国史」と題した1年ほど前の過去記事(→コチラ)に寄せられたカイカイ反応通信愛読者さんのコメントが最初でした。
 その後市立図書館で見てみようと思って探してみると、35冊あるこのシリーズ本の蔵書のすべてが予約待ちでいっぱい! その数は30~100人くらい。これでは予約しても自分の番が回ってくるまで何ヵ月かかることか、と思って断念。
 ところが、たまたまこの5月にある書店の児童向け学習漫画の棚に「干潟のサバイバル1・2」があるのをみつけました。
 「もしや」と思い1・2巻をパラパラめくっていくと、ありましたがな、ふっふっふっ。・・・何のことかというと、昨年(2015年)8~9月4回に分けて書いたケブル(=ユムシ)です。(最初の記事は→コチラ。) それも1コマだけというのではなく、けっこういろいろ描かれている上、ユムシ以外の干潟の生物についてもたくさん取り上げていて、全体的に「おもしろてためになる」本のようです。これは何ヵ月かかっても図書館で借りて読むかという気になって検索したところ、ありゃ、蔵書にない!? 8千円の「日本語訳 国連北朝鮮人権報告書」も購入してくれた図書館なのに・・・。そこでリクエストしたら、新本購入ではなく他市の図書館から借りた本を渡してくれました。
 ユムシが登場するのは「干潟のサバイバル 2」の方。その表紙が上左の画像。右は元の韓国版です。韓国語の書名は「갯벌에서 살아남기」なんですね。つまり、<サバイバルシリーズ>は韓国では<살아남기 시리즈>というわけです。

       
 さて、どんな筋立てになっているかというと、主な登場人物は上の3人。
 左から、このシリーズの最近の10数作(かな?)で活躍する主人公のジオ。そしてこの巻で登場する干潟体験団の優等生サラ、そしてムツゴロウ漁師の後継者海鮮(うみき)。うーむ、これで「うみき」と読ませるのか・・・。原書では彼の名は「해문(ヘムン)」となっていてジオからは「해물(ヘムル)」と呼ばれたりしてますが「해물(海物)」とは海産物のことで、たとえば「해물탕(海物湯)」なんかはふつう海鮮鍋と訳したりしてるので、そう考えれば直訳に近いかも。またサラは原書では아라(アラ)。この変更は日本名としての自然さ重視かな?
 
 干潟体験に行く途中、ジオは睡眠不足で倒れた仲間のケイのカバンを預かることになります。現地の干潟に行った彼はそこで自分を馬鹿にしたサラと海鮮を相手に口論となります。ところがジオが持ってきたカバンをサラが無断で開けて中に入っていた探査服を着てしまいます。続いてジオも海鮮も着用したその探査スーツは実はノウ博士の発明品で、彼ら3人は小さくなったまま干潟の生物と死闘を繰り広げることに・・・というわけでサバイバルの物語が始まります。
 
 1巻から貝殻に閉じ込められたり、おぞましい姿のスゴカイイソメと死闘を繰り広げたりとピンチの連続。なんとか切り抜けて2巻に入ると、裏表紙(右画像)にあるように潮が満ちてきて干潟の穴に逃げ込むのですが・・・。

 そこでついにユムシ(ケブル)と出会うことに・・・。

 ジオはユムシのことを知らなかったようですね。

 次のページではユムシの巣穴の説明。

 このようなU字形の巣穴だと、シギのようなクチバシが長く曲がっている水鳥にも捕食されることはありません。

 ところが、ユムシよりずっと小さくなってしまっている3人は下のコマのようなはめに・・・。(笑)

     

 まあ例によってこの難局は乗り越えますが、その後もテナガダコ等々といろいろあったりして、以下は略しておしまい。

 そして最後に、まとめの説明。ユムシについてはずいぶん詳しく記されています。


 「香りが良くて淡泊な味」とありますが、先のコマで「ユムシに比べたらゴカイの方がかわいいわ」と言ってたサラちゃんが「わあ、おいしい」と食べてますねー。この本を読んだ日本の子供(と大人)ははたして食べたいと思うかどうか? ちなみに私ヌルボ、昨年来これだけ書いていながらこの3ヵ月で2回韓国に行ったのにまだ食べていません。ま、そのうち。

 ※朝日新聞出版のサイト中の<サバイバルシリーズ>の公式サイト(→コチラ)によると、このシリーズは世界中で2千万部も読まれているとか。日本では55点刊行されているようです。(→コチラの記事ののんきさんのコメントでは「すでにほとんど全巻持ってます」とのこと。それはスゴイ!です。)

 ※韓国版についての情報は、主として<ナムウィキ>から。→コチラによると<보물찾기 시리즈(宝探しシリーズ)>とともにアイセウム出版社のメシのタネなのだそうです。→コチラによると、第6次シリーズだけでも18作品(32冊)が刊行されてます。その6月シリーズの登場人物は→コチラ、主人公のジオについては→コチラで実に細かく書かれています。「ピピは冗談じゃなく汚い女主人公だ」等々、その本を読んでいなくても笑っちゃうくらい。
 毎度のことながら、<ナムウィキ>のオタク度&ユーモアは大したものです。
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韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [6月24日(金)~6月26日(日)]

2016-06-28 21:07:39 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 →1つ前の記事も韓国女優キム・コッピ出演の日本映画「つむぐもの」に関係する記事です。

 昨日厚木まで行って観た「火の山のマリア」は、グアテマラが舞台でスペイン語は話さないマヤ族の娘の物語でしたが、火山の存在感が強烈で、それが主役といってもいいくらい。パカヤという2552mの活火山だそうです。
 こういった映像とともにグアテマラというあまりよく知らない所の自然や文化を垣間見られるのも映画の魅力ですが、これも書物ではわからない聴覚の魅力については「オマールの壁」で奏でられていたウードという弦楽器の音楽が印象に残っています。独特の哀調を帯びた伝統音楽で、YouTubeで探すと聴くことができます。

 あと2日で今年上半期が終わり。上記の「火の山のマリア」が今年39本目の映画でした。年間ちょうど100本観た昨年より少し遅いペース。3月頃までは「ブリッジ・オブ・スパイ」「消えた声が、その名を呼ぶ」「キャロル」「サウルの息子」「インサイダー/内部者たち」「東柱」等々印象に残る映画がわりとあったのに、春以降は全体的にイマイチといった印象。まあ春以降でも「さざなみ」「牡蠣工場」「暗殺」そして花コリで観た韓国アニメ「そばの花、運のいい日、そして青春」なんかはよかったですけどねー。
 明日か明後日もう1本観て40本にするかな・・・って何にするか? 「二重生活」とか、あ、そういえばユーロスペースで「ひと夏のファンタジア」が始まってましたね。
 
「朝鮮日報」6月24日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
 「秘密はない」
   けっこう楽しめる当惑 ★★★


 「サフラジェット」

   女性、堂々と、毅然として ★★★


 「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」

   巨大化した分マヌケ度も ★★

 「クリミナル」

   悩みを下ろして見たら ★★

 「サフラジェット」は、昨年のロンドン映画祭でオープニング作品として上映されたイギリス映画。洗濯工場の労働者モード(キャリー・マリガン)を中心に1世紀前のイギリスの婦人参政権運動の黎明期を描きます。メリル・ストリープが実在した女性運動家エメリン・パンクハーストを演じています。日本公開は未定(かな?)。他の3作品は下の記事中で紹介しています。

         ★★★ NAVERの人気順位(6月28日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】

①(1) ライフ・イズ・ビューティフル  9.38
②(2) オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン  9.33
③(3) 同級生(日本)  9.20
④(4) シーモアさんと、大人のための人生入門  9.15
⑤(5) オーヴェという男  9.13
⑥(-) ムーラン・ルージュ  9.12
⑦(6) 太陽の下  9.05
⑧(7) シング・ストリート 未来へのうた  9.03
⑨(10) ビフォア・サンライズ 恋人までの距離〈ディスタンス〉  8.94
⑩(-) 折れた矢(韓国)  8.92

 入れ替わりがありましたが、今回も新登場の作品はありません。一応新作といえるのは③④⑤⑦⑧。旧作と同数です。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) トリコロール 青の愛  9.00(1)
②(2) キャロル  8.96(13)
③(3) ピアニスト  8.75(1)
④(-) ふたりのベロニカ  8.75(1)
⑤(-) おとなは判ってくれない  8.38(2)
⑥(5) ライフ・イズ・ビューティフル  8.34(8)
⑦(6) ビフォア・サンライズ 恋人までの距離〈ディスタンス〉  8.25(2)
⑧(7) 哭声(韓国)  8.18(17)
⑨(9) ブルー・ジャスミン  7.93(10)
⑩(10) ひと夏のファンタジア(日本・韓国)  7.79(12)

 新登場の④⑤も含め、あいかわらず旧作の再上映が目立ちます。
 ④「ふたりのベロニカ」は、①と同じキェシロフスキ監督の1991年の作品。韓国題は「베로니카의 이중 생활」です。
 ⑤「大人は判ってくれない」は、いうまでもなくトリュフォー監督の最初の長編大ヒット作。韓国題は「400번의 구타(400回の殴打)」で、こりゃあ何なんだ!?と思いますが、実は原題「LES QUATRE CENTS COUPS」の直訳だったのですね。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績6月24日(金)~6月26日(日)] ★★★

         日本より2週早い公開の「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」が1位
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・インデペンデンス・デイ・・6/22 ・・・・・・・・・・699,662・・・・・・・・・・・986,464・・・・・・・・・・8,624・・・・・・・・926
       :リサージェンス
2(1)・・ジャングル・ブック・・・・・・・6/09 ・・・・・・・・・・・350,562 ・・・・・・・・・2,215,812 ・・・・・・・・18,961・・・・・・・・692
3(2)・・特別捜査 死刑囚の手紙(韓国)・・6/16・・・・237,961 ・・・・・・・・・1,002,358・・・・・・・・・・8,093・・・・・・・・522
4(3)・・死霊館 エンフィールド事件・・6/09・・・・・・・・204,807 ・・・・・・・・・1,644,708 ・・・・・・・・13,483・・・・・・・・474
5(4)・・アガシ(韓国)・・・・・・・・・・・・6/01 ・・・・・・・・・・・155,201・・・・・・・・・4,056,253・・・・・・・・・33,417・・・・・・・・486
6(新)・・秘密はない(韓国)・・・・・・6/23 ・・・・・・・・・・・137,167 ・・・・・・・・・・193,729 ・・・・・・・・・1,600 ・・・・・・・・501
7(7)・・ミー・ビフォア・ユー ・・・・・・6/01 ・・・・・・・・・・・・59,755 ・・・・・・・・・・775,576 ・・・・・・・・・6,321・・・・・・・・208
8(新)・・クリミナル・・・・・・・・・・・・・・6/22 ・・・・・・・・・・・・44,925 ・・・・・・・・・・・74,160 ・・・・・・・・・・・603・・・・・・・・342
9(5)・・ウォークラフト・・・・・・・・・・・6/09・・・・・・・・・・・・・36,943・・・・・・・・・1,144,005・・・・・・・・・・9,994・・・・・・・・227
10(8)・・哭声(韓国) ・・・・・・・・・・・・5/12・・・・・・・・・・・・・20,567・・・・・・・・・6,851,523 ・・・・・・・・55,634・・・・・・・・142
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 なんのかんの行ってもアメリカ映画は強いです。それにしてもなぜ日本よりも公開が早いのか、私ヌルボはいまだにわかりません。
 今回の新登場は1・6・8位の3作品です。
 1位「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」は、少なくとも予告編はインパクトがあった1996年の「インデペンデンス・デイ」の20年ぶりの続編。物語も「あれから20年後」なのか。その間人類は強力な防衛システムを構築した一方、エイリアンの方も進歩発展を遂げて再度襲撃してくるそうですよ。韓国題は「인디펜던스 데이:리써전스」。日本公開は7月9日です。
 6位「秘密はない」は韓国のスリラー。国会議員になりたい新人政治家キム・ジョンチャン(キム・ジュヒョク)と彼の妻ヨノン(ソン・イェジン)の娘が選挙を15日後に控えたある日行方不明になります。娘を探すため手を尽くしたヨノンは娘がいなくなったのに選挙しか頭にない夫と、事件をまともに調査しない人々に対し憤って、誰も信じられない状況の中一人で娘を探し始めます。ところがヨノンは娘の行方を追う中でだんだんと明らかになった衝撃的な真実と直面することに・・・。原題は「비밀은 없다」です。それにしても、ソン・イェジンは時代劇から現代劇、ラブロマンスにアクションにスリラーと、ホントに幅広く活躍してます。期待が高まっている「徳恵翁主」は8月公開です。
 8位「クリミナル」は、アメリカのSFアクションスリラー。CIAエージェントのビル(ライアン・レイノルズ)は、ワシントン、ベルリン、北京を廃墟にする 反政府テロ組織の背後を追跡していたところ、逆に彼らに狙われて重要な記憶を残したまま殺されてしまいます。テロを防ぐ手がかりを失わないため、CIAは脳科学研究の権威フランク(トミー・リー・ジョーンズ)の主導でビルの記憶と能力を凶悪犯で投獄されている死刑囚ジェリコ(ケビン・コスナー)に移植します。ジェリコは、最終的にテロを食い止めるため、そしてビルの妻ジリアン(ガル・ガドット)を守るための戦いを決意します・・・。俳優陣は豪華なのになんかB級臭が漂ってるようだゾ。韓国題は「크리미널」。日本公開は今年中です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・ボーン・トゥ・ビー・ブルー・・・・・・・・6/09 ・・・・・・・・・・・・・・10,103・・・・・・・・・・・・68,858・・・・・・・・・・・・・558 ・・・・・・・・・61
2(3)・・炎のランナー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/16 ・・・・・・・・・・・・・・・5,658・・・・・・・・・・・・26,200・・・・・・・・・・・・・168 ・・・・・・・・・63
3(5)・・私たち(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/16 ・・・・・・・・・・・・・・・5,250・・・・・・・・・・・・16,335・・・・・・・・・・・・・127 ・・・・・・・・・42
4(2)・・シング・ストリート 未来へのうた・・5/19・・・・・・・・・・・・・・・4,309・・・・・・・・・・・552,278 ・・・・・・・・・・・4,428 ・・・・・・・・・35
5(6)・・私の少女時代・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/12・・・・・・・・・・・・・・・1,309・・・・・・・・・・・405,436 ・・・・・・・・・・・3,286 ・・・・・・・・・21

 今回の新登場はありません。
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映画「つむぐもの」 ヨナのセリフ、字幕は「クソじじい」ですが、モトの韓国語は何と言っていた?

2016-06-27 13:43:54 | 韓国語あれこれ

 先日「つむぐもの」という映画を観てきました。糸を紡ぐ話かと思ったらそうではなく、和紙で有名な越前市の年老いた和紙職人の剛生(石倉三郎)と、勤め先をクビになった後ちょっとした縁で韓国の扶余からワーキングホリデーで越前にやってきた女性ヨナ(キム・コッピ)が主人公。

 キム・コッピといえば、あの名作「息もできない」(2008)で女高生を演じてましたが、いつしか30代に突入。しかし今回も実年齢より若い役柄を自然に演じてます。冒頭は百済の古都扶余(プヨ)。ヨナがクビになったという勤め先はにも建物に「정림사지박물」という文字が。セリフ中にはなく当然字幕ありませんでしたが「定林寺址博物館」(→説明)ですね。職場としてなかなか良さそうなところなのに・・・って、(たぶん)そこさえクビになっちゃったダメ女だからってことで物語が始まるんですけどね。
 で、ワーキングホリデーで日本に行くことを決めると母親が「なんでまた왜놈の国に!?」なんぞと言ったりしてます。字幕では왜놈(ウェノム)「敵国」と訳してました。直訳だと「倭奴」なんですが、まあ訳し方のむずかしいところ。しかし、かの国ではふだんの会話の中でこういうふうにわりと自然に使われる言葉なんでしょうね。日本での韓国・朝鮮人に対する蔑称はどれくらいふつうに使われているのか、私ヌルボはよくわかりません。そんなに多くはないような気はするのですが・・・。

 さて福井県にやってきたヨナですが、和紙作りの手伝いの仕事をするつもりで来たはずだったのに直前に剛生(たけお)が脳腫瘍で倒れ、身体がきかなくなってしまったため思ってもみなかった介護をするはめに・・・。全然介護の経験も知識もない上に、剛生がまた相当にヘンクツな老人で扱いにくいことこの上なし。また何よりもおたがい言葉が通じないという大障壁が立ちはだかっています。
 そんなわけで、元来気の強いヨナが韓国語で悪態をつきたくなる気持ちもよ~くわかります。

 ・・・と、ここからがやっとこの記事の核心部分。(やれやれ。)
 で、上述のヨナの悪態で何度か出てきた言葉が「このクソじじい!」

 ここで韓国語学習者の皆さんに問題です「クソじじい」に該当する元の韓国語は?

 私ヌルボは今まで知らなかった単語ですが、何とか聴き取ったところによると「영감쟁이(ヨンガムジェンイ)」です。

 辞書にも載っている言葉で、<NAVER辞典>には「[俗語] 老いぼれ。‘늙은이(=老人)’の蔑称」と説明されています。その他「朝鮮語辞典」(小学館)等にも「老いぼれ」という訳語が載っていますが、ヌルボ思うに「老いぼれ」よりも「クソじじい」の方が多少なりとも愛情が感じられる(?)ので、たしかにコチラの方がこの場面の訳語としては適切ですね。

 さて、この「영감쟁이」「영감」「쟁이」に分けてみてみると・・・。

 「쟁이」については、過去記事<韓国の消えゆく職業 「~クン」と「~ジャンイ」>(→コチラ)の中で少し書きましたが「겁쟁이(臆病者)」「거짓말쟁이(嘘つき)」のように、「○○쟁이」という言葉には侮蔑の意の籠められていることが多いようですね。炭焼きのことを「숯장이(スッチャンイ)」と言いますが、これを「숯쟁이(スッチェンイ)」と言うと差別語になるということです。また「멋쟁이」という言葉は辞書には「おしゃれな人・しゃれ者・めかし屋・だて者・ダンディー」といった訳語が載っていますが、これも若干ケイベツ的なニュアンスが含まれているのでしょうか?(よくわからず。)

 「영감(ヨンガム)」は漢字だと「令監」。韓国の小説等ではよく見る言葉です。「朝鮮語辞典」には次の訳が載っています。
 1. 老夫婦の妻が夫を呼ぶ尊敬語。
 2. (他人の)老年の男性に対する尊敬語。
 3. [歴史用語]正三品と従二品の官吏の呼び名。
 4. 高級官僚や家柄のよい人の尊敬語。


 用例をなんとなく見ていると、バルザックの「ゴリオ爺さん」「고리오 영감」なんですねー。「ゴリオ ハラボジ」ではなく、いろんな意味合いを含んだコチラの方が作品の内容に合っているということなのでしょう、たぶん。そういえば、「ゴリオ爺さん」の原題(フランス語)は「Le Père Goriot」。ということは「爺さん」じゃなくて「父さん」。これも「Père」には(日本語の父さんよりも)いろんなニュアンスが込められている、ということなのかな?

 はてさて、映画「つむぐもの」に戻って。上述のようにほとんど無理のようにみえた剛生とヨナのコミュニケーションが徐々に深まっていくのです。以下ネタバレは避けますが、言葉も大事ですが、それよりももっと大切なものがたしかにあるということですね、うん。(とひとりナットク。)
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最近刊行された「国連北朝鮮人権報告書」は北朝鮮人権問題の画期的総集成!

2016-06-24 19:07:55 | 北朝鮮のもろもろ

 4月に「日本語訳 国連北朝鮮人権報告書」(ころから)が刊行されました。
 2014年3月17日に北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)が国連人権理事会に提出した「北朝鮮における人権調査報告書」を翻訳したものです。
 本ブログの過去記事(→コチラ)でも記した通り、この報告書は→コチラからダウンロードすることができますが、表記は英・仏・スペイン・露・中・アラビア語の6ヵ国語だけです。外務省のサイトには一応日本語訳がアップされています(→コチラ)が、認知度は低く、誤訳も散見され、またパソコン上で読むのもたいへんです。
 そんな中、→コチラコチラの記事に書かれているように木瀬貴吉さんという方がクラウドファンディングを提起し、今年1月目標額(60万円)を上回る支援を得て、木瀬さんご自身が設立した出版社「ころから」からの刊行が実現したというわけです。
 ネックは8000円(+税)という値段なのですが、私ヌルボはより多くの皆さんにも読んでもらおうということも期待して図書館にリクエストしたところ、購入が決まって今日初めて手にすることができました。感謝感謝! 横浜市、それも図書館の近所に住まいしてホントによかったです。

 さて、この本の内容を目次で見てみると・・・。

 巻頭で「ころから編集部」が<刊行にあたって>という一文を置いています。その中で次のように記している点に私ヌルボは強い共感を覚えました。
  本書に、ある種の溜飲を下げるための糾弾を期待することは目的違いとなる。
   非道・無法国家としての北朝鮮像をより強固にするだけの目的にも応じかねる。
 つまり、北朝鮮の人権問題を、人権問題そのものではなくなんらかの目的の材料・手段として用いようとする事例がしばしば見られるということです。
 また、北朝鮮による「内政干渉である」「アメリカこそが人権侵害をやめていない」との反論については次のようにかかれています。
  人権のための国際法は、第二次世界大戦中のナチス・ドイツによるホロコーストを国際社会が防げなかったことへの反省から生まれた。「内政不干渉」の名の下、数百万の命を見殺しにした事実から、こと人権においては内政干渉する、という原理が築かれつつある。
   人権侵害をおかしている国は北朝鮮一国でないことは、だれの目にも自明である。(日本も国連人種差別撤廃委員会から何度も勧告されている。)
  その意味で、本書で報告される人権侵害は、日本を含む他国とも地続きであることは否めない。
   第Ⅶ章「結論及び勧告」において、北朝鮮政府のみならず、国際社会にも責任を求めていることに、本報告書の存在意義があると考える。

 報告書は、初めに調査の作業方法について記しています。

 調査の大きな障害になったのは北朝鮮の非協力。調査委員会の入国を認めず、ソウル・ロンドン・ワシントンで開かれた公聴会への招待に対しても無返答。まあ、これは「想定内」でしょうが・・・。
 したがって、調査の主な対象者(直接の証人)は約3万人の脱北者に限られましたが、北朝鮮による自身や家族への報復を恐れる人が多く、公聴会等では顔を隠したり匿名の人も相当数いたし、聞き取り調査も非公開を条件にしたケースが240件以上に及んだが、「こうした徹底した保護策をとっても報復の危険性は否定できない」。これも想定内ではありますが、日本でも顔を隠し本名を明かさない脱北者はわりとふつう(?)にいるということは、それだけ恐怖感が根強く、また実際に彼らに対する「北からの働きかけ」がそれなりに現実味を帯びていることをうかがわせます。

 Ⅲ章では北朝鮮の人権侵害の歴史的・政治的背景が前近代から現代に至るまで叙述されています。冒頭に「儒教的社会構造と日本の植民地支配下での抑圧が、今日の北朝鮮に広がる政治構造と政治意識の特徴を作りだした」と規定している点が注目されます。また日本の植民地支配の評価については「日本が最終的に挑戦の発展を助けたのかどうかの問題は、政治的また学問的両面で、いまだに多くの論議を残している」としています。戦後の党派抗争、朝鮮戦争、「金王朝への権力統合」(←報告書中の用語)についても、(ヌルボの目には)客観的で妥当な文章で略述されています。


 Ⅳ章は「調査結果」。さまざまな自由・権利の侵害の実態が多くの証言者によって語られます。あるいは各種の具体的なデータが掲げられています。つまり、聞き取り等の微視的な資料と、巨視的な観点の両方からまとめられているということ。

 たとえばこの地図。
      
 <地方別重度の栄養失調の人の人口に占める割合>(左)と、WFP(国連世界食糧計画)の活動範囲(2012~13年)=白い部分が活動不能地域。本文では、支援のため現地に赴いた人道組織が直面した際の問題が具体的に記されています。

 本書では、いくつもの差別のベースになっている要素として「成分」について詳しく記されています。本ブログの最近の記事<韓国の連座制&遡及法を考える③>(→コチラ)でも書きましたが、本人だけでなく家族や親戚の経歴によって仕事や進学、居住地まで決定づけられるという制度です。本書では韓国・統一研究院の資料により核心階層が人口の28%、基本階層が45%、複雑(動揺・敵対)階層が27%という数字を紹介しています。
 政治犯収容所(北朝鮮では「管理所」という)や一般刑務所(北朝鮮では「教化所」という)、公開処刑、障碍者差別、移動や居住の自由がないこと等々、ぜひ多くの人に知ってほしい個別事例はたくさんありますが、ありすぎて書けません。
 1つだけ、「越北者」の、残された家族が韓国で差別されたことに関連して。自分の意思で韓国から「北」に行った共産主義者等の脱北者の、残された子供が進学や就職で差別されたことは、これも<韓国の連座制&遡及法を考える②>(→コチラ)で書きました。ところが、そんな反共が国是だった当時の<パルゲンイ(アカ)>の家族だけではないのです。北朝鮮には帰還できずにいる数多くの朝鮮戦争時の韓国人捕虜や、戦争後北朝鮮に拘束・拉致されたままの韓国人が(公的には)516人もいるのですが、1990年代まではこのような拉致被害者の家族まで「高等教育と政府系の職業に就くことを拒否された」とのことです。ある拉致された漁師の娘である証人は、彼女が警察から目をつけられることを嫌った雇い主によって解雇されたとか。家族が拉致されても国は保護・支援をしたり返還に尽力してくれるどころか監視対象(!)にされてしまったとは・・・。また金大中大統領以降は「太陽政策」の一環(?)で拉致問題は「離散家族」問題の中に組み込まれたそうです。(~2008年。) 家族たちのロビー活動の結果、拉致被害者家族が申請すれば国から賠償されるという法律が成立したのはやっと2007年のことなのですね。
 拉致関係では、韓国・日本以外にも中国人、レバノン人、タイ人、シンガポール人やマレーシア人、ルーマニア人等の事例が記されています。
 以前にも書いたことですが、拉致被害者問題は日本人限定ではなく、よりグローバルかつ多角的な観点から取り組むべき問題だと思います。

 Ⅴ章は「人道に対する罪」について。
 上記の収容所等での人道に対する罪や、宗教信仰者に対する迫害、国外逃亡者に対する監禁・拷問等々。これもこの本に記されていることはあまりにも多い事例のごくごく一部にすぎません。ふつうの国であれば、たとえば1件でも拷問死があったり、飢えに瀕した子供たちを放置したことがあれば大きな問題とされるのに、それが北朝鮮のこととなると無関心だったり、事実を知らなかったり、知ったとしても「あの国ならそんなこともあるだろう」としか思わない人が日本に限らず多いのではないでしょうか?
 先の<刊行にあたって>にも記されていたように、この報告書は「北朝鮮政府のみならず、国際社会にも責任を求めている」ということを、私たちも「国際社会の一員として」銘記すべきだと思います。

※ヌルボ同様、多くの皆さんがこの本を地元の図書館の蔵書に加えるようリクエストして下さることを期待しています。(もちろん自分で購入されてもいいですが・・・。)
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韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [6月17日(金)~6月19日(日)]

2016-06-22 14:29:16 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
  便利さを求めてなぜか苦労する (横浜 ましゅまろ)

 ずっと以前の「毎日新聞 万能川柳」に掲載された拙作です。
 3月末に、それまで韓国映画の主要情報源にしていた<DAUM映画>のサイトの仕様が一変しました。それにともなって、この記事中のネチズン&専門家の評点ランキングも<NAVER映画>と<シネ21>に切り替えました。
 それから3ヵ月も経っていないのに、今度は<シネ21>が大幅に模様替えとは!
 映画作品の評価は当然のことながら観客動員数と直結しているものではなく、また個人的にもこれまで感銘を受けた作品をふり返ると、商業的にも成功を収めた大ヒット作は3割、いや2割にも満たないと思います。そんなわけで、<シネ21>を拠点とした専門家の評価についての情報ははぜひ必要なのですが・・・。で、やむなく<NAVER映画>の記者・評論家の評点を拾ってランキングを作成することにしました。
 先の<DAUM映画>同様、<シネ21>のサイトのデザイン一新のポイントは、文字情報よりも画像に重点を置いた点にあります。しかし、日本でいえば「キネ旬」に相当する専門誌の「シネ21>までこうなってしまったとは寂しい・・・。
 思えばWindows10もそんな感じ。少なくともこれまでの方式になじんできた年配者にとってはメイワクでメンドーなだけです。やれやれ。

 数ヵ月前、<왓챠>(ワッチャ.Watcha)という韓国のベンチャー企業が開発した映画推薦サービスがあることを知りました。ユーザーが、自分が観た映画について評価を付けると、その好みを分析して気に入ると思われる映画を推薦してくれるサービスとのことです。その他映画評の作成、独自のコレクション作成等々さまざまなサービスを提供し、今年からは映画のストリーミングサービスにも進出しているとか・・・。
 書籍については、アマゾン等が、私ヌルボがちょっとクリックしてみた本をきっちり記録していて、本人が忘れてしまった後もしつこく誘いをかけてきますが、この<ワッチャ>も自分以上に自分のことを知るウザったいヤツなんだろうな、・・・と思いつつ、<왓챠>をハングルのままでググると、なんと<WATCHA あなた好みの作品と出会える無料記録レビューアプリ>と題した日本語サイト(→コチラ)が開くではないですか! いやー、昨年から日本語アプリとしても登場しているんですね、知らんかった。・・・といってもヌルボは相変わらずのガラケーですから・・・。しかし「スマホにすべきだ」との同調圧力をヒシヒシを感じる今日この頃。たしかに韓国ラジオもそのまま聴けるし、ウェブトゥーンも読めるし、便利だとは思うんですけどね・・・。
  便利さを求めてなぜか苦労する

 久しぶりに「朝鮮日報」の「封切映画 ぴったり10字評」が掲載されていました。
 
「朝鮮日報」6月17日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
 「私たち」
   少女たちの日記を開く ★★★★


 「フランコフォーニア」

   美しい物を守る方法・・・ ★★★


 「特別捜査 死刑囚の手紙」

   過去何度も観たような・・・ ★★

 「ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>」

   まさか3作目ないよね? ★★

 「フランコフォーニア」は、昭和天皇を描いた「太陽」等のソクーロフ監督によるフランス映画。第二次大戦中のパリを舞台に、ルーヴル美術館でナチスの手から美術品を守り続けた人々を描いた史実に基づくドラマ。日本公開は初冬。他の3作品は下の記事中で紹介しています。

           ★★★ NAVERの人気順位(6月21日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】

①(2) ライフ・イズ・ビューティフル  9.38(11246)
②(3) オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン  9.33
③(5) 同級生(日本)  9.20(506)
④(7) シーモアさんと、大人のための人生入門  9.14(386)
⑤(8) オーヴェという男  9.11(591)
⑥(-) 太陽の下  9.05(534)
⑦(-) シング・ストリート 未来へのうた  9.03(3236)
⑧(-) ノーザン・リミット・ライン 南北海戦[延坪海戦](韓国)  9.03
⑨(-) ジョゼと虎と魚たち(日本)  9.02(6334)
⑩(-) ビフォア・サンライズ 恋人までの距離〈ディスタンス〉  8.94(2456)

 半数が入れ替わりましたが、新登場の作品はありません。旧作の再上映がまた増えてきて①②⑧⑨⑩と半分を占めています。⑧「ノーザン・リミット・ライン 南北海戦」が入っているのは、「護国の月」6月の特別上映でしょう。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①トリコロール 青の愛  9.00(1)
②キャロル  8.96(13)
③ピアニスト  8.75(1)
④アムール  8.48(11)
⑤ライフ・イズ・ビューティフル  8.34(8)
⑥ビフォア・サンライズ 恋人までの距離〈ディスタンス〉  8.25(2)
⑦哭声(韓国)  8.18(17)
⑧ジョゼと虎と魚たち(日本)  8.15(5)
⑨ブルー・ジャスミン  7.93(10)
⑩ひと夏のファンタジア(日本・韓国)  7.79(12)

 このランキングも、①③④⑤④⑧⑨と7割が旧作の再上映です。
 ⑩「ひと夏のファンタジア」については、以前にも紹介したように、若手監督のチャン・ゴンジェが奈良県五條市を舞台にして撮った長編第3作。2部構成の前半は韓国人映画監督が、後半は韓国人女性がこの地を訪れて地元の人と織りなすコミュニケーションが描かれ、それの2つの物語がどこか交差するファンタジックな構成になっています。韓国での上映は好評で高い評価を受けていましたが、ようやく6月25日からユーロスペースをかわきりに日本での一般公開がスタートします。公式サイトは→コチラ。韓国題は「한여름의 판타지아」です。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績6月17日(金)~6月19日(日)] ★★★

         「ジャングル・ブック」が2週連続1位
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・ジャングル・ブック・・・・・・・6/09 ・・・・・・・・・・・619,171 ・・・・・・・・・1,706,143 ・・・・・・・・14,752・・・・・・・・898
2(37)・・特別捜査 死刑囚の手紙(韓国)・・6/16・・・429,488・・・・・・・・・・・537,875・・・・・・・・・・4,400・・・・・・・・690
3(4)・・死霊館 エンフィールド事件・・6/09・・・・・・・・420,146 ・・・・・・・・・1,247,483 ・・・・・・・・10,207・・・・・・・・640
4(3)・・アガシ(韓国)・・・・・・・・・・・・6/01 ・・・・・・・・・・・284,676・・・・・・・・・3,711,447 ・・・・・・・・30,649・・・・・・・・625
5(2)・・ウォークラフト ・・・・・・・・・・6/09 ・・・・・・・・・・・193,593・・・・・・・・・1,044,767・・・・・・・・・・9,179・・・・・・・・508
6(23)・・ミュータント・ニンジャ・タートルズ・・6/01・・149,384・・・・・・・・・・・178,600 ・・・・・・・・・1,487・・・・・・・・517
       :影<シャドウズ>
7(6)・・ミー・ビフォア・ユー ・・・・・・6/01 ・・・・・・・・・・・・75,967 ・・・・・・・・・・652,084 ・・・・・・・・・5,321・・・・・・・・272
8(5)・・哭声(韓国) ・・・・・・・・・・・・・5/12・・・・・・・・・・・・・56,480・・・・・・・・・6,798,962 ・・・・・・・・55,212・・・・・・・・291
9(7)・・X-MEN:アポカリプス・・・・5/25・・・・・・・・・・・・・12,067・・・・・・・・・2,927,615 ・・・・・・・・24,379 ・・・・・・・・・90
10(8)・・アングリーバード・・・・・・・5/19 ・・・・・・・・・・・・10,427 ・・・・・・・・・・672,772・・・・・・・・・・5,158・・・・・・・・・75
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 韓国映画「哭声」は勢いを失って、最終的には700万人そこそこといったところかな? 「アガシ」は500万を超えるかどうかといった感じで、ふつうのヒット作レベル。今年上半期の韓国映画観客動員数は結局「検事外伝」の969万人がダントツの1位で終わりそうです。
 今回の新登場は6位「「ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>」だけです。
 2位「特別捜査:死刑囚の手紙」は韓国の犯罪ドラマ。公式公開日のずっと前から上映されていて5月24日の記事で紹介済み。一応再掲しておきます。ピルジェ(キム・ミョンミン)は元は模範的警察、今ではよく売れるブローカー(弁護士事務長?)になっていて、切れることのない事件の依頼に「神が下したブローカー」との異名もあります。その彼に ある日、監獄の死刑囚から疑問の手紙が1通届きます。手紙の主は、世間を震撼させた仁川の財閥・大海製鉄夫人殺人事件の犯人スンテ(キム・サンホ)。スンテは、無実の自分の無念を訴えます。ピルジェが探れば探るほど現われてきたのは巨大背後勢力の実体。彼はますます大きくなる事件の背後にあるものを直感します・・・。原題は「특별수사: 사형수의 편지」。
 6位「ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>」は、“カメ“で“忍者“の4人のヒーローの活躍を描く1980年代から続く人気シリーズの新作。人類を救うためニューヨークを飛び出したニンジャ・タートルズが、世界を舞台に暴れ回ります・・・。元々は1984年のアメコミに始まるシリーズなのですが、日本での認知度・人気度がどんなものか私ヌルボにはわかりません。しかしなかなか濃ゆいファンはいるようですね。韓国題は「닌자터틀 : 어둠의 히어로」。日本公開は8月26日です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(2)・・ボーン・トゥ・ビー・ブルー・・・・・・・・6/09 ・・・・・・・・・・・・・・10,402・・・・・・・・・・・・49,110・・・・・・・・・・・・・419 ・・・・・・・・・83
2(1)・・シング・ストリート 未来へのうた・・5/19・・・・・・・・・・・・・・・7,332・・・・・・・・・・・542,193 ・・・・・・・・・・・4,362 ・・・・・・・・・52
3(32)・・炎のランナー ・・・・・・・・・・・・・・・・・6/16・・・・・・・・・・・・・・・6,713・・・・・・・・・・・・15,414 ・・・・・・・・・・・・・・91 ・・・・・・・・・81
4(新)・・子ども騎士トレンク・・・・・・・・・・・・6/16 ・・・・・・・・・・・・・・・5,717・・・・・・・・・・・・・6,442 ・・・・・・・・・・・・・・48 ・・・・・・・・174
5(28)・・私たち(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/16・・・・・・・・・・・・・・・5,456・・・・・・・・・・・・・7,574 ・・・・・・・・・・・・・・59 ・・・・・・・・・76

 新登場は3・4・5位の3作品です。
 3位「炎のランナー」は、もちろん1981年のイギリス映画の佳作の再上映。韓国題は「불의 전차」です。
 4位「子ども騎士トレンク」は、ドイツ・オーストリア合作のアニメ。アンデルセン賞等数々の児童文学賞を受賞したドイツの作家キルステン・ボイエの児童小説が原作です。彼女の作品は日本では2作品が翻訳されています(韓国では約10作品)が、これは未訳。物語の主人公は9歳の少年トレンク。彼の夢は騎士になることでしたが、貧しい農民の息子の彼が騎士になる方法はただ一つ。それは暗い森に住む恐ろしい龍を打ち破ることです。しかしその森は大人はもちろん、実際の騎士も怖れて通らないところでした。はたして彼はその困難な夢を実現することができるのでしょうか・・・。韓国題は「꼬마기사 트랭크」です。
 5位「私たち」は、小学生の女の子の友人関係とその悩みに焦点を当てた韓国映画。いつも一人ぼっちで終業式の日もみんなが去ったあと一人教室に残っていたソン(チェ・スイン)は、転校生のチア(ソル・ヘイン)と出会う。お互いの秘密を教え合い、すぐに仲良くなった2人は楽しい夏休みを過ごす。夏休みが終わり学校が再び始まるとチアはソンに冷たい。やがてソンをいじめるポラ(イ・ソヨン)の仲間に入り、ソンを無視するチア。どうしてもチアとの関係を取り戻したいソンはチアの秘密をばらしてしまいます・・・。「中央日報」の記事(→コチラ)によると、今年2月の<ベルリン国際映画祭>のジェネレーション部門では最優秀長編デビュー作部門の候補に入り、またチェコで開かれたズリーン国際こども・若者映画祭では国際コンペティション部門最優秀賞、チェ・スインが最優秀主演女優賞を受賞したとのことです。原題は「우리들」です。こういう映画は観てみたいなー。
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「岳人」2016年6月号の特集<韓国の山> ②日本と韓国の登山事情の違い等

2016-06-20 23:45:10 | 韓国・朝鮮関係の知識教養(歴史・地理・社会等)

 →1つ前の記事の最後の方で「韓国の山は、やはり魅力的な岩山が特徴的」と書きましたが、高い山だけでなく、たとえばソウル近郊の低山も意外なほどの岩山です。
            


 上は北漢山(プッカンサン)の仁寿峰(インスボン)。ご覧のような花崗岩の岩壁で「東洋のヨセミテ」ともよばれているとのことです。
 その他、仁王山(イヌァンサン)、道峰山(トボンサン)、水落山(スラクサン)等も(写真で見るだけでも)「ほほう」という声が自然に出るほどの奇岩の景勝地です。
 さて、右の画像の人物ですが、北漢山・白雲山荘で<歩荷(ボッカ)一筋32年>というミン・ヒョンシクさんで「多い時には50㎏の荷物を1日4回運び上げます」とのこと。うーむ、高校生の山岳部員だと20㎏のザックでもきついレベルなのに・・・。

 ここで本書に記されていた韓国と日本の登山関係のいろんな違いを略述しておきます。

すれ違う時「登り優先、右側通行」という日本での暗黙のルールは韓国では通用しない。

山小屋は基本的に素泊まりで、飲食物の販売はカップラーメンと若干の行動食だけ。自炊スペースは広い。予約は国立公園が一括管理していて、予約なしでは宿泊できない。したがって、→コチラでネット予約をする。(韓国語がわからない人は→英語で。) 料金は寝具なしで1泊7千~8千ウォン。毛布は+2千ウォン。
 日本と大きく異なるのは受付開始時刻が遅いこと。5~9月は18~19時、10~4月は17~18時で、その時刻にならないと客室に入れない! つまり、日本のように15時頃到着して・・・ということではないようです。

登山地図は携帯しない人が多い。下記のように案内板等が整っているということも1つの理由のようです。
 ※5万分の1地図(1枚5千ウォン)や主な山の地図を購入するならソウルの中央地図文化社で。鐘閣駅2番出口から北100m、最初の十字路を左折後すぐの洋菓子店2F。営業時間は9:00~18:30。(土日休業。) 古地図等も含めて実にさまざまな地図を取り扱っている店です。→ http://www.camap.co.kr/

道標・案内板が十分に設置されている。国立公園内には多目的位置表示板という標識が約500m間隔で設置されていて、これにはピーク等までの距離の他、緊急連絡用の電話番号も記されている。※ただしハングルと英字のみで漢字表記はナシ。
 実際どのような物か、韓国サイトから拾ってみました。
 下左は雪岳山、中は北漢山の多目的位置表示板で、右は鶏龍山にあるその説明板です。
          


登山道は整備が行き届いている。日本ならハシゴや鎖がかかっているような岩場だと、手すりのついた階段が設置されていることが多い。(「なるべく自然の状態を残す」という日本の考え方とは異なる。) たとえば下の画像。
       
 まあ、あれだけ年配者も大勢山に登っているので、何をおいても「安全第一」ということでしょうか。


 本書では、登山に関連した韓国語の単語と、簡単な会話についてもページを割いています。
      
 大体は中級レベルの韓国語学習者であればふつうに知っている単語ですが、一応要注意のものを挙げておきます。
 ザック=배낭(背嚢)、ストック=스틱、コンパス(磁石)=나침반(羅針盤)、寝袋=침낭(寝嚢)、水場=약수터(薬水ト)・샘터(泉ト)、上り道=오르막[길]、下り道=내리막[길]

 私ヌルボ、ソウルに行く度に「今度は登るゾ!」と思いつつ果たせないまま20年。(あ、南山(ナムサン.262m)だけは歩いて登ったことがあったなー。) 数日前馬耳山(マイサン)は、なんとか塔寺からのコースをただ登り、反対側に下りましたが、それだけで十分しんどかったです。せめて景福宮のすぐ後ろの仁王山(340m)・北岳山(プガクサン.343m)は1年以内に登っておかなければ! (と思っても自分自身が信用できなかったりして・・・。(笑))
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「岳人」2016年6月号の特集<韓国の山> ①山好き&韓国好きの人にぜひオススメ!

2016-06-20 21:51:16 | 韓国・朝鮮関係の知識教養(歴史・地理・社会等)

 かつては山男のハシクレだった私ヌルボも、この20年というものは山から遠ざかっています。したがって、上のような山の雑誌の韓国特集も、ヌルボが韓国オタクということを知っている本屋さんがいて教えてくれなければ気づきもしなかったでしょう。
 たまたまそんな本屋さんがいてラッキーでした。

 この「岳人」という雑誌は以前から知ってはいましたが、2014年出版業務が中日新聞社からモンベル系列のネイチュアエンタープライズに引き継がれたことは知りませんでした。なるほど、裏表紙や記事等々にモンベル関係の広告や記事が載っています。 ※モンベルの店舗は日本に106あるそうですが、韓国には約140店あって、世界最多なのだそうです。

 さて、目次を見てみると・・・。
 韓国内で標高ベスト3の漢拏山(ハルラサン)=1950m、②智異山(チリサン)=1915m、③雪岳山(ソラクサン)=1708mはもちろん紹介されています。ちなみに朝鮮半島最高峰は北朝鮮・中国国境の白頭山(ペクトゥサン)=2744m、また有名な北朝鮮の名山・金剛山(クムガンサン)=1638mです。
 これらの高い山のほかに、ソウルの人々に親しまれている500~800m程度の山々もいろいろ紹介されています。

 この韓国の山々の地図を見て私ヌルボが注目したのは、半島南部の智異山から韓国北西部の雪岳山を経て北朝鮮の金剛山まで薄茶色で太く白頭大幹が表示されていること。これはさらに白頭山まで続いているものです。この白頭大幹については、2014年に<民族主義の色濃い伝統的な地理観? <白頭大幹>をめぐって>と題した3回シリーズの記事を書きました(→コチラ)が、近代以前の朝鮮時代からある伝統的な地理観に基づく概念です。日本の統治期にはそれとは異なる近代的な地質・地理学による山脈体系が学校等でも教えらましたが、近年(90年代以降)民族主義の高まりとともに<白頭大幹>が脚光を浴びるようになってきたようです。で、私ヌルボ個人としては、学問的な観点からは使用は要注意の用語だと思います。

 上はソウル近郊の山々が一目でわかる地図。一番高い北漢山(プッカンサン)も高さ837mです。韓国の人はホントに山が好きです。本書にも「人口の3分の1は登山好き」とか「韓国の人口は5000万人ほどですが、登山人口は2000万人と言われます」と記されています。土日の朝早く地下鉄に乗ると、1つの車両に必ずといっていいほど登山服姿の客を見かけます。日帰りハイキング程度でもけっこう本格的なイデタチです。
 また本書にも書かれていますが、山でマッコリを飲む人が多いんですね。まあ山に限らず野遊会と言って眺めのいい屋外で飲むのが好きな人たちですが・・・。そういえば昨年連載した<S氏の慶熙大学校10週間留学記>中の記事(→コチラ)によるとS氏は韓国人の友人カンさんと道峰山に登ってますが、「山登りの際の必需品」というトマトキュウリは山で食べて、酒は下山してからだったようです。

 韓国の山は、やはり魅力的な岩山が特徴的です。北朝鮮・金剛山萬物相(→画像検索結果)は有名ですが、韓国にもすごい岩壁や奇岩で知られる山々がたくさんあります。たとえば先の目次の画像の左側、岩峰が連なっているのは雪岳山の山容です。

 そして上の画像は済州島東端の観光ポイント城山日出峰(ソンサンイルチュルボン)。世界自然遺産の奇観で、巨大噴火口がある頂上まで歩いて約15分とのこと。ヌルボはまだ行ってません。

 どうも長くなりそうな感じなので、このへんでとりあえずひと区切り。

 → 「岳人」2016年6月号の特集<韓国の山> ②日本と韓国の登山事情の違い等
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韓国内の映画 NAVER映画とシネ21の人気順位 と 週末の興行成績 [6月10日(金)~6月12日(日)]

2016-06-17 23:37:11 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 いやー、まいったまいったまいりました。
 今17日正午過ぎ。全州→龍山のKTX車内です。
 14日(火)夜から韓国に来ています。当初の予定ではその日のうちにこの記事をアップするはずだったのが、誤算その1はちょうどその14日がgooブログのメンテの日で午後2時過ぎまで接続できず、そのまま羽田へ。夜遅く金浦空港に到着後は龍山のドラゴンヒルスパへ。有名な巨大スパですが、私ヌルボは今回が初めて。で、パソコン作業は翌日に延期。
 ところが、翌日第2の誤算が・・・。羽田空港で借りたルーターによる接続がうまくいかず悪戦苦闘。そのままサークル仲間と落ち合って全州へ。昨日16日電話で問い合わせ説明を聞いた後何度か試行錯誤。その間も塔寺に行きハイキングコースを歩き、すき間の時間はほとんど酒を飲み続け、でようやく昨夜ルーターが使用可能に。やれやれ。しかしその後もあちこちで酒を飲み続け、宿に帰ってからまた飲み続け・・・。

 ・・・で、今は17日夜鍾路3街の宿。そんなわけで、映画関係の前書きはゆっくり書いている余裕なし。とりあえずは全州の韓屋マウルにある東学紀念館の展示にあった東学関係の映画のポスターを紹介。
 右の「開闢」(1991)については、以前<林権澤監督の映画「開闢」を観て、東学について学ぶ>と題した記事を書いたことがありました。(→・→。) しかし左の東学、水雲崔済愚(동학, 수운 최제우)」(2012)については全然知りませんでした。東学の創始者・崔済愚(号は水雲)の生涯の最後の時期を描いた作品のようです。

 「朝鮮日報」の「封切映画 ぴったり10字評」はこの1ヵ月間掲載されていません。はたして再開するのかどうか?

           ★★★ NAVERの人気順位(6月14日現在上映中映画) ★★★

①(1) ズートピア  9.38
②(-) ライフ・イズ・ビューティフル  9.38
③(-) オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン  9.33
④(2) 戦場のピアニスト  9.30
⑤(4) 同級生(日本)  9.22
⑥(5) 鬼郷(韓国)  9.19
⑦(7) シーモアさんと、大人のための人生入門  9.15
⑧(6) オーヴェという男  9.14
⑨(-) エターナル・サンシャイン  9.09
⑩(8) はじまりのうた  9.07

 新登場は③「オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン」ですが、2011年公開作品の再上映です。私ヌルボ、あの怪人出現の時の印象的なフレーズを思い出しました。韓国題は「오페라의 유령 : 25주년 특별 공연」です。

           ★★★ シネ21 専門家の平均得点順位 ★★★

①(1) キャロル  9.00
②(2) 哭声(韓国)  8.14
③(3) ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!  7.60
④(-) ピアニスト  7.60
⑤(5) さざなみ  7.50
⑤(5) クラン  7.50
⑦(5) アガシ(韓国)  7.46
⑧(8) シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ  7.45
⑨(4) X-MEN:アポカリプス  7.43
⑩(9) シーモアさんと、大人のための人生入門  7.33
⑩(-) ボーン・トゥ・ビー・ブルー  7.33

 ④「ピアニスト」と⑩「ボーン・トゥ・ビー・ブルー」が新登場です。
 ④「ピアニスト」は、2001年のハネケ監督作品の再上映。韓国題も「피아니스트(ピアニスト)」で、ポランスキー監督の「戦場のピアニスト」と同じ。紛らわしいな。間違って観に行った人もいるんじゃないかな?
 ⑩「ボーン・トゥ・ビー・ブルー」は、50年代に活躍したジャズ・トランペッターのチェット・ベイカーの苦闘の時代を描いたアメリカ・カナダ・イギリス合作のドラマ。<第28回東京国際映画祭>のコンペティション部門でも上映された作品です。チェット・ベイカーは一時は「マイルス・デイヴィスをも凌ぐ人気を誇っていた」そうですが、その後ドラッグに依存し、暴行されて歯を失ってどん底に落ち、これ以上演奏をすることができなくなった瞬間そばに残ったのは 恋人のジェーンとトランペットだけでした。。そんな彼が再生を目指す姿をイーサン・ホークが演じます。村上春樹によれば「彼の音楽からは青春の匂いがする」のだそうです。全然ご存知なかった方は彼の代表作「My Funny Valentine」を聴いてみて下さい。(→YouTube) 韓国題は「본 투 비 블루」。日本での一般公開は今秋です。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績6月10日(金)~6月12日(日)] ★★★

         「アガシ」は1週で「ジャングル・ブック」に首位の座を明け渡す
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・ジャングル・ブック・・・・・・6/09 ・・・・・・・・・・・771,783・・・・・・・・・・・851,924・・・・・・・・・・7,379・・・・・・・・925
2(新)・・ウォークラフト ・・・・・・・・・6/09 ・・・・・・・・・・・555,348・・・・・・・・・・・671,519・・・・・・・・・・5,955・・・・・・・・736
3(1)・・アガシ(韓国)・・・・・・・・・・・・6/01 ・・・・・・・・・・・526,539・・・・・・・・・3,131,876 ・・・・・・・・25,988・・・・・・・・781
4(29)・・死霊館 エンフィールド事件・・6/09 ・・・・・・・484,855 ・・・・・・・・・・560,362 ・・・・・・・・・4,598・・・・・・・・635
5(3)・・哭声(韓国) ・・・・・・・・・・・・・5/12 ・・・・・・・・・・・134,653・・・・・・・・・6,669,099 ・・・・・・・・54,163・・・・・・・・439
6(4)・・ミー・ビフォア・ユー ・・・・・・6/01 ・・・・・・・・・・・103,820 ・・・・・・・・・・500,037 ・・・・・・・・・4,092 ・・・・・・・・335
7(2)・・X-MEN:アポカリプス・・・・5/25・・・・・・・・・・・・・98,207 ・・・・・・・・2,887,462 ・・・・・・・・24,065 ・・・・・・・・419
8(5)・・アングリーバード ・・・・・・・・5/19 ・・・・・・・・・・・・27,048 ・・・・・・・・・・659,951・・・・・・・・・・5,061・・・・・・・・165
9(43)・・劇場版 遊☆戯☆王・・・・・6/09 ・・・・・・・・・・・・19,804 ・・・・・・・・・・・22,931 ・・・・・・・・・・・182 ・・・・・・・・210
       THE DARK SIDE OF DIMENSIONS(日本)
10(6)・・シング・ストリート 未来へのうた・・5/19・・・・・18,250 ・・・・・・・・・・525,214 ・・・・・・・・・4,251 ・・・・・・・135
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 記事冒頭で書いたように注目作「アガシ」が突出した数字で1位になっていますが、映画評やネチズンの感想等をみると必ずしも絶賛とまではいかないようで、興行の成否を現時点で判断するのは早計のような気もします。
 今回の新登場は1・2・4・9位の4作品です。
 1位「ジャングル・ブック」は、よく知られたキプリングの児童文学が原作。ウォルト・ディズニーの遺作となったアニメを実写化した作品です。ジャングルに取り残されてオオカミを母として成長した人間の少年モーグリ。人間の世界に戻るか、ジャングルで生きるべきかの選択を迫られます・・・。の傑作として知られる原作と、ウォルト・ディズニーのスピリットを継承した感動の冒険映画。韓国題は「정글북」。日本公開は8月11日です。
 2位「ウォークラフト」は、世界的にヒットした同名のPCゲームシリーズ3部作を実写化したスペクタクル・ファンタジー。滅びゆく故郷を捨てて新たな定住地を求めるオーク族と、彼らの侵略から平和な王国アゼロスを守るため立ち上がった人間たちの戦いと、それに続く物語です。韓国題は「워크래프트: 전쟁의 서막」。日本公開は7月1日です。
 4位「死霊館 エンフィールド事件」は、アメリカのホラーシリーズの新作。
実際に起きた出来事を基に製作したとのことですが、今作はロンドン北部エンフィールドを舞台に、
少女と4人の子供を育てるシングルマザーが正体不明の音や不穏な囁き声、ポルターガイスト等の現象に苦んでいるのを、心霊研究家のウォーレン夫妻が彼女たちを救うため再び恐怖の元凶と対峙する・・・というのはヌルボとしてはあまり新味を感じないんですけど、どうなの? 韓国題は「컨저링 2」。日本公開は7月9日です。
 9位「劇場版 遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS」は、人気シリーズ初の劇場版アニメ、といっても私ヌルボの苦手ジャンルで、未見だし語る資格ナシ。原作が「少年ジャンプ」に連載されたのが1996~2004年とのことで、もうけっこう前のことになるのですね。韓国題は「극장판 유희왕 더 다크 사이드 오브 디멘션즈」です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・シング・ストリート 未来へのうた・・・5/19・・・・・・・・・・・・・・18,250・・・・・・・・・・・525,214 ・・・・・・・・・・・4,251 ・・・・・・・・135
2(2)・・私の少女時代・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/12・・・・・・・・・・・・・・・8,770・・・・・・・・・・・394,229 ・・・・・・・・・・・3,219 ・・・・・・・・・71
3(3)・・オーヴェという男 ・・・・・・・・・・・・・・・・5/25・・・・・・・・・・・・・・・2,401・・・・・・・・・・・・78,744 ・・・・・・・・・・・・・623 ・・・・・・・・・43
4(新)・・猫なんかよんでもこない(日本)・・ 6/09・・・・・・・・・・・・・・・1,165・・・・・・・・・・・・・2,543 ・・・・・・・・・・・・・・20 ・・・・・・・・・32
5(新)・・視線の間(韓国)・・・・・・・・・・・・・・6/02・・・・・・・・・・・・・・・・・711・・・・・・・・・・・・・1,403 ・・・・・・・・・・・・・・11 ・・・・・・・・・28

 新登場は4位「猫なんかよんでもこない」と5位「視線の間」です。
 4位「猫なんかよんでもこない」は私ヌルボは観ていません。数日前の韓国紙によると愛猫国といえばイギリスと日本なのだそうですが、韓国も今やすっかり愛猫国の仲間入り。この映画とは全然関係ありませんが、→コチラのニュースは大韓猫国の議会のようすが写真入りで伝えられています。この作品の韓国題は「고양이는 불러도 오지 않는다」です。
 5位「視線の間」は、国家人権委員会による人権映画プロジェクトの13回目の作品で、3話からなるオムニバス。成績向上のため好きなトッポッキを食べる自由を制限され、必死で脱出をはかる女高生、誰かが自分を監視していると考えている誇大妄想に陥った青年、奇妙な一日を送る保険販売員のを通して現在の人権について問題を提起します。原題は「시선 사이」です。
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多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ③韓国では、日本統治期の見方が変わりつつある(?)

2016-06-13 08:44:05 | 韓国映画(&その他の映画)
 → 多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ①<進歩系>映画と<保守系>映画
 → 多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ②昨年来日本統治期を背景とした作品が増えている

 このシリーズの前回の記事では、この頃増えている日本統治期を背景とした作品を紹介しました。それからすでに20日も経ってしまい、その間、6月1日にはパク・チャヌク監督の「アガシ(お嬢さん)」が公開され、→コチラの記事が伝えるように「動員数200万人突破=R19映画では最短での新記録」と好スタートをきったそうです。

 では、なぜ日本の統治期を舞台とした韓国映画がこのところ目立って増えているのか?という「本論」にやっと入ることにします。
 最初にりあえず結論を提示しておくと、それはの時代に対する見方が近年変わってきていることの表れでは?ということ。
 私ヌルボがそう考えるようになったのは、たとえば次のような本からです。

        
 左は申明直「모단뽀이 경성을 거닐다(モダンボーイ 京城をぶらつく)」(2003)。副題は「만문만화로 보는 근대의 얼굴(漫文漫画で見る近代の顔)」で、1930年代の京城の世相風俗を、当時の新聞に掲載されていた安夕影(ソギョン)の漫文漫画を紹介した本です。
 ※夕影は号で、本名は安碩柱(アン・ソクチュ)。挿絵画家ばかりでなく、映画監督をしたり(「志願兵」という親日映画等を制作。→コチラ参照) 韓国でも北朝鮮でも歌われている「我々の願いは統一」の作詞者でもあります。
 ※この本の元となった著者の論文(日本語)は→コチラで読むことができます。
 この本は刊行された2003年韓国の読書界で話題になり、「朝鮮日報」の「今年の本10冊」にも選定されたそうです。
 私ヌルボがこの本のことを知ったのはその翌年くらいだったか? そして2005年にはもう翻訳書が東洋経済新報社から刊行されました。書名は「幻想と絶望 漫文漫画で読み説く日本統治時代の京城」です。
 この本の版元の惹句は次の通りです。
 当時の新聞に掲載されていた漫文漫画をもとに、近代文化が花開き、きらびやかだった1930年代の京城のありのままの姿を追う。暗黒の時代としての側面ばかりが語られてきた朝鮮近代史に風穴をあける新しい歴史観として韓国で話題になった書の待望の翻訳。
 この翻訳書の「訳者あとがき」で、古田富建さんは次のように記しています。

 韓国の現地高校に通った訳者(古田)の経験では、歴史の教科書で学んだりテレビドラマに描かれる植民地朝鮮の人びとの姿は、 「独立のために戦う独立運動家」か、日本にこびる忌むべき「親日派」、あるいは日本の憲兵に怯え、日本人に搾取されながら貧しい生活を強いられる民衆だった。
 特に、国定の歴史教科書では、「統治」対「抵抗」の二元的なパラダイムで執筆されていた。そのような歴史認識を持っていたせいか、この原書に触れた時、ものすごい「新鮮さ」を感じた。植民地という抑圧された苦しい時代状況の中でも、「モダン」を楽しみ、精一杯生きようとした当時の人間の「素顔」がそこに見られたからだ。


 私ヌルボが初めて(20年ほど前?)韓国の歴史教科書を見た時も同様の感想を持ちました。安重根と柳寛順以外は初めて名前を見る「独立闘士」の名前が何人も載っている一方、当時の町や村のようすや一般の朝鮮人の生活等については、土地や米の収奪、強制徴用、神社の参拝強制、日本語教育の強制等の否定すべき統治政策以外は全然描かれていないのです。

 ところが、21世紀に入って上掲の書籍の他にも、教科書には載っていない日本統治時代の姿がメディアでしばしば見られるようになりました。
 新聞では、2010年が韓国併合から100年ということもあって、その前年頃からとくに日本統治期についての企画記事がいくつも掲載されました。たとえば「東亜日報」では2009年10月から翌年2月まで<동아일보 속의 근대 100경(東亜日報の中の近代100景)>が連載されました。→コチラはその記事一覧ですが、独立運動関係や言論弾圧等の記事もある一方、ティールームとカビチャ(=コーヒー)の記事やラジオ汽車と鉄道駅「ひと夏のヴァカンス」といったさまざまな新しい文物を幅広く取り上げています。
 映画では、90年代にすでに「将軍の息子」(1990)「錦紅よ、錦紅よ」(1995)等がありましたが、今世紀に入ってからの作品を観てみると、「1942 奇談」(2007)(→コチラ)「ワンス・アポン・ア・タイム」(2008)(→コチラ「モダンボーイ」(2008)(→コチラ)等があります。またTVドラマでは「野人時代」(SBS.2002~03)「英雄時代」(MBC.2004~05)「京城スキャンダル」(KBS.2007)等があげられます。
 これらの映画やドラマの内容をみると、現代(ヒュンダイ)財閥創業者の鄭周永(ドラマではチョン・テサン)の一代記といった「英雄時代」以外はほとんど何らかの形で抗日を主要なファクターとして構成されています。しかし、背景の時代像は、日帝の支配という暗い部分に対して、京城の街の新風俗が対照的に描かれるようになってきています。
 たとえば、「京城スキャンダル」の公式サイトのイントロダクションを見てみると・・・。
 舞台は1930年代の京城(現在のソウル)。
  南北が1つであったこの頃の朝鮮は、大日本帝国の支配下にあった。自由を奪われ、しいたげられる民衆。
  しかし!一方で華やかな生活に身を任せるモダンボーイ&モダンガールたちがいた。
  朝鮮時代にはありえなかった自由恋愛の思想、次々に入ってくる舶来品、違法ダンスホールで繰り広げられる夜ごとのパーティー。
  まったく悲壮感の漂わない明るく軽快な植民地時代の物語。

  主人公ソヌ・ワンは京城一のプレイボーイ。一方のヒロインは革命に生きる独立運動家ナ・ヨギョン、そして泣く子も黙る高級妓生チャ・ソンジュ

 ・・・映画「モダンボーイ」とちょっと重なるところがありますね。タイトルからしてそんな<新風俗>を明確にウリにしているわけだし・・・。

 また、前にも引用した「中央日報」の記事(→コチラ)は、この時代を描いた映画が増えている理由の1つとして、「日帝強制占領期間が視覚的観点から魅力的だと見る人々も多い」と記しています。「その時期が民族的見解では日々怒りの押し寄せる屈辱の連続だったが、日帝が移植した近代文明によって都心に電車が通り、中折れ帽をかぶった紳士が街を闊歩するなど空間のビジュアル自体はロマンチックな要素があるということだ」と、やはり新風俗と抗日運動の対比というのが最近のこれらの映画の基本的構図というわけです。
 そして「暗殺」の場合はこの「視覚的な魅力」にこだわり、綿密な時代考証をふまえ、多額の費用をかけて当時の街や物を再現しました。「ハンギョレ」の記事(→コチラ)によると、「シャンデリア1個に5000万ウォン、リンカーンK等のクラシックカー購買・レンタルに4億ウォンなど、セットと衣装だけに35億ウォンを投じた」そうです。

    
 上の画像は私ヌルボが4月1日にソウルの映像資料院で開催中の企画展「<암살>, 1930년대 경성과 호흡하다(<暗殺>1930年代京城と呼吸する)」を見てきた時に撮った写真です。残念ながらリンカーンKはなかったものの、監督のこだわりを垣間見ることができることができる展示でした。当時の京城の地図の上に、映画に出てきた主な建物の位置が説明文とともに示されていて、真ん中の三越百貨店の画像もその1つです。また、映画の中で主人公の1人が初めてコーヒーを飲むシーンがありますが、右の画像はコーヒーの淹れ方を記した当時の雑誌です。展示中にはありませんでしたが、カフェで暗殺者たちが踊る(!)シーンでは、ジャン・ギャバンの歌う「Léo, Léa, Élie」という歌(→YouTube)が流されていました。

 以上、あれこれ細々と書きましたが、要は1930年代は「暗いばかりの時代ではない」という認識が広がってきているということです。

 では、なぜこれまでの歴史教科書の記述のような「統治」対「抵抗」の二元的なパラダイムから外れたような見方が出てきたのでしょうか?

 ウィキペディアの<朝鮮の歴史観>の項目(→コチラ)等によると、韓国の歴史学界では1960~90年代は上記のような歴史観を基軸とする民族主義史学が圧倒的に優勢で、教科書もそうした歴史観に沿って記述されてきました。ところが90年代後半頃から<植民地近代化論>等々の立場から批判の声が上がり、たとえばとくに「教科書問題」をめぐって論争が展開されてきました。(←昨年来大きな政治的争点になりました。)
 そして2015年9月に文教部(日本の文科省に相当)が発表した2015改正教育課程案では、「(1919年成立の)大韓民国臨時政府の正統性排除(=1949年を大韓民国政府樹立とする)」、「独立運動史の大幅縮小(20年代のみとする)」、「朝鮮後期の経済状況の記述削除(=内在的発展論の否定)塔が盛り込まれ、ついに長く主流だった(左派的な)民族主義史観が廃棄されました。→「ハンギョレ」の記事(韓国語)参照。やっぱり批判的に書いています。 
 続いて今年3月。「朝鮮日報」のコラム「萬物相」は<時代的使命を果たした「内在的発展論」を超えて>と題した記事(→コチラ)で民族主義史学の基本的主張である内在的発展論について、それを担ってきた学者グループの中から限界と問題点を認めるような発言があったことを取り上げました。(やっぱり、「ハンギョレ」とは逆に好意的に書いています。)
 ※内在的発展論とは、朝鮮後期には国内ですでに資本主義の萌芽が形成されており、一方的な収奪であった日本の支配がなければ朝鮮の資本主義は独自に順調に発展していたはず、と考える論。
 私ヌルボ、このように身内の学者からも内在的発展論への疑問(批判?)が提起されたことは、歴史学界の枠を超えた画期的な出来事として受けとめました。
 つまり、上述のような「統治」対「抵抗」の二元的なパラダイムで記述されていた歴史教科書が大幅に改められるというわけだし・・・。とはいえ、このまま左派的な民族主義史観が衰えるとも思えませんが・・・。もし次の大統領選挙で進歩系が勝てばまた教科書内容も揺り戻しがありそうで、まだせめぎ合いは続くのではないでしょうか?
 
 また長々と書いてしまいましたが、用はこのような歴史学界の事情がこの20年くらいの間の近代、とくに日本統治期に対する見方の変化にも反映されているのではないかということです。
 では、何がこのような歴史観の推移・変貌を促したのかというと、これはもう本ブログのテリトリーから外れてしまうのでオシマイにしておきます。

 このシリーズ、次回は映画「暗殺」の中の<史実>と<虚構>について考えるということにします。(たぶん。)

 → ④判別がむずかしい<史実>と<虚構>の間
 → ⑤韓国でようやく知られ始めた金元鳳(キム・ウォンボン)と義烈団
 → ⑥「日本軍により3469人が殺された事件」というのは何だ?
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韓国内の映画 NAVER映画とシネ21の人気順位 と 週末の興行成績 [6月3日(金)~6月5日(日)]

2016-06-07 23:51:57 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 昨日6月6日、韓国では午前10時全国的にサイレンの音が1分間鳴らされたことでしょう。毎年この日は<殉国先烈(순국선열)>と<護国英霊(호국영령>の慰霊とその精神を継承するという顕忠日(현충일.ヒョンチュンイル)で、1分間のサイレンの間は黙祷することになっています。この日ソウルの国立顕忠院では、大統領が臨席して式典が催されます。
 一昨年の式典については→コチラ
の記事で書きました。その時はヨ・ジングが朴槿恵大統領にバッジを付けてもらったりしていましたが、今回はイ・スンギが参席したのですね。→コチラは、(皆と一緒に)「愛国歌(国歌)」を歌っている動画です。今年2月軍に入隊した彼は「나 군대 간다(僕は軍隊に行く)」(→YouTube)という歌も歌っているし、すっかり軍隊の<広告塔>といった感じになってます。(もちろん海外派兵ドラマ「太陽の末裔」をはじめとして。)
 またTVでもこの顕忠日に合わせて<特選映画>を放映するのが常で、今回はKBS1では「リターン・トゥ・ベース」、KBS2では「ノーザン・リミット・ライン 南北海戦」(原題:延坪海戦)、そしてEBSでは「高地戦」と、この5年ほどの間に公開され話題になった戦争・軍隊関係作品を放映しました。

 6月1日からカンヌ映画祭でも上映されたパク・チャヌク監督の話題作「アガシ」の一般公開がスタート。「朝鮮日報(日本語版)」の記事(→コチラ)によると、「公開4日目にして観客100万人を突破」し、また公開初週182万人という記録は青少年観覧不可映画史上最高とのこと。しかし、原作のサラ・ウォーターズの歴史ミステリー「荊の城」はすごくおもしろかったものの、ヌルボ思うに映画化作品の8割以上は明らかに原作以下だからなー。この作品は後の方になると原作の構成とかなり異なり、また「原作よりも軽い」といった感想もありました。実際に観たSARUさんは「「アガシ」、ワンジョニ(完全に)パク・チャヌク印 変態映画」とツイートしてるし・・・。(→コチラ。) まあ「今後に注目」といったところですかねー。

 「朝鮮日報」の「封切映画 ぴったり10字評」は先週掲載されませんでした。これで3週続き。以前にもこういうことがありましたが、少し気になります。

           ★★★ NAVERの人気順位(6月7日現在上映中映画) ★★★

①(2) ズートピア  9.39
②(4) 戦場のピアニスト  9.30
③(-) 言えない秘密  9.27
④(-) 同級生(日本)  9.22
⑤(-) 鬼郷(韓国)  9.19
⑥(-) オーヴェという男  9.19
⑦(5) シーモアさんと、大人のための人生入門  9.16
⑧(-) はじまりのうた  9.07
⑨(7) 太陽の下  9.04
⑩(6) シング・ストリート 未来へのうた  9.03

 ④「同級生」が新登場です。日本では今年2月公開で、一部でまだ上映中の作品をもう韓国でやっているまですね。ボーイズラブ・コミックのアニメ化ですが、日本での認知度はどれほどでしょうか? 私ヌルボ、タイトルだけは知っていましたが、そのままスルーしてしまったので語る資格ナシです。韓国題は「동급생」です。
 なお、⑧「はじまりのうた」は、韓国では「비긴 어게인」というタイトルで2014年公開され、日本でも2015年公開されました。

           ★★★ シネ21 専門家の平均得点順位 ★★★

①(1) キャロル  9.00
②(3) 哭声(韓国)  8.31
③(6) ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!  7.60
④(6) X-MEN:アポカリプス  7.57
⑤(8) さざなみ  7.50
⑤(8) クラン  7.50
⑤(-) アガシ(韓国)  7.50
⑧(10) シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ  7.45
⑨(-) シーモアさんと、大人のための人生入門  7.33
⑩(-) ズートピア  7.33

 ⑤「アガシ」だけが今回の新登場ですが、この作品については冒頭と続くランキングの記事を参照のこと。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績6月3日(金)~6月5日(日)] ★★★

         「アガシ」が前評判通り1位だが、今後ははたして?
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(15)・・アガシ(韓国) ・・・・・・・・・・・6/01・・・・・・・・・・1,262,008・・・・・・・・・1,821,608 ・・・・・・・・15,115 ・・・・・・1,167
2(1)・・X-MEN:アポカリプス・・・・・5/25・・・・・・・・・・・・531,365・・・・・・・・・2,496,805 ・・・・・・・・20,833・・・・・・・・705
3(2)・・哭声(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・5/12 ・・・・・・・・・・・375,481・・・・・・・・・6,292,519 ・・・・・・・・51,072・・・・・・・・582
4(39)・・ミー・ビフォア・ユー・・・・・・6/01 ・・・・・・・・・・・178,698 ・・・・・・・・・・240,429 ・・・・・・・・・1,969 ・・・・・・・・476
5(3)・・アングリーバード・・・・・・・・・5/19 ・・・・・・・・・・・・94,838 ・・・・・・・・・・556,727 ・・・・・・・・・4,270 ・・・・・・・・419
6(4)・・シング・ストリート 未来へのうた・・5/19 ・・・・・・59,799 ・・・・・・・・・・464,251 ・・・・・・・・・3,786 ・・・・・・・・290
7(46)・・怖い話3:火星から来た少女(韓国)・・6/01 ・・45,452・・・・・・・・・・・・70,006・・・・・・・・・・・561 ・・・・・・・・316
8(6)・・私の少女時代 Our Times・・・5/12・・・・・・・・・・・30,396・・・・・・・・・・・364,068 ・・・・・・・・・2,992・・・・・・・・155
9(新)・・ザ・ボーイ~人形少年の館~・・6/01 ・・・・・・・28,798・・・・・・・・・・・・38,525・・・・・・・・・・・308 ・・・・・・・・184
10(5)・・ケチュンばあさん(韓国)・・5/19・・・・・・・・・・・・・25,185・・・・・・・・・・・448,720 ・・・・・・・・・3,376 ・・・・・・・・237
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 記事冒頭で書いたように注目作「アガシ」が突出した数字で1位になっていますが、映画評やネチズンの感想等をみると必ずしも絶賛とまではいかないようで、興行の成否を現時点で判断するのは早計のような気もします。
 今回の新登場は1・4・7・9位の4作品です。
 1位「アガシ」は、イギリスのヴィクトリア朝を舞台にしたサラ・ウォーターズの傑作ミステリー「荊の城」を、パク・チャヌク監督が日本統治期の京城に設定を変えて映画化した作品。幼い時に両親を亡くし、後見人の厳格な叔父の下で育った貴族のアガシ(お嬢様)秀子(キム・ミニ)の屋敷に、伯爵(ハ・ジョンウ)からの推薦で新しい下女スッキ(キム・テリ)がやって来ます。それまで淋しい思いで暮らしてきた秀子は徐々に純朴そうなスッキを頼りにするようになります。しかしスッキの正体は有名な女盗賊の娘でした。秀子が相続する莫大な財産を狙って伯爵(実は詐欺師)が下女として送り込んだのです。はたしてそのたくらみは・・・。原題は「아가씨」。
 4位「ミー・ビフォア・ユー」は、世界で大反響を呼んだジョジョ・モイーズのベストセラーの映画化作品。日本でも翻訳書が「ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日」(集英社文庫)が刊行されています。地元のカフェで働いていた26歳の女性ルイス・クラーク(エミリア・クラーク)は、カフェの閉店により失職。家族を養わなければならない彼女がようやく就けたのは半年限定の介護の仕事でした。介護をする相手は、事故で四肢麻痺になった35歳の元実業家のウィル(サム・クラフリン)。当初は冷たい態度だったウィルは、ルイスの献身的な態度に徐々に心を開いてゆき、ルイスもウィルのおかげで自信をもてるようになって徐々に惹かれ始めますが、ある日彼女はウィルがスイスの尊厳死施設に予約を入れていたことを知ってしまいます・・・。韓国題は「미 비포 유」。日本公開は未定です。
 7位「怖い話3:火星から来た少女」は韓国のホラーシリーズの3年ぶりの第3作。遥か未来。機械たちが支配する惑星に不時着した少女は、機械に自分が人間を避けてここに来た理由を一つ一つ伝えていきます。そして以下の3つの物語が展開される、という構成になっています。<過去の話:恐怖の実話「狐穴」>は、科挙試験を終えて故郷に帰る途中だったイセン(イム・スロン)は突然現れた盗賊に追われ、やっと人里離れた村にの女性と老人が住む家に逃れて一晩泊まることになります。ところがその家は人間が一度足を踏み入れれば二度と生きて帰れない<狐穴>でした・・・。<現在の話:疾走怪談「ロードレージ」>は、真夜中、人気の少ない高速道路を走っていたドングン(パク・ジョンミン)とスジン(キョン・スジン)の前に怪しいダンプが現れ、何度も前に割り込んできては行く手を遮ります。頭に来たドングンが追い越すと、ダンプはしつこく追いかけて来ておどしをかけてきます・・・。<未来の話:人工知能ホラー「機械霊」>は、母イェソン(ホン・ウニ)の代わりに幼い息子チングの一番の友だちになった人工知能ロボットのドゥンコでしたが、ある日ドゥンコに突然エラーが起き、チングの心は傷ついてしまいます。イェソンはチングに内緒でドゥンコを処分して新しいロボットを購入しますが、その新しいロボットにもやがておかしな症状が現れ始めます・・・。原題は「무서운 이야기 3 : 화성에서 온 소녀」です。
 9位「ザ・ボーイ~人形少年の館~」は、アメリカーのミステリー・ホラー。アメリカの女性グレタ(ローレン・コーハン)はイギリスの田舎に暮らす老夫婦の8歳の子供を世話する仕事を得ます。ところが、紹介された息子というのは人間ではなく実物大の人形でした。20年前に亡くした息子の代わりとしてずっと暮らしてきたのです。グレタは指示された通りに「子守」を始めますが、その後馬鹿馬鹿しくなって人形を放置すると、なんとその人形が生きているとしか思えないようなことが起こります・・・。韓国題は「더 보이」。日本公開は今夏です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・シング・ストリート 未来へのうた・・・5/19・・・・・・・・・・・・・・59,779・・・・・・・・・・・464,251 ・・・・・・・・・・・3,786 ・・・・・・・・290
2(2)・・私の少女時代・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/12・・・・・・・・・・・・・・30,396・・・・・・・・・・・364,068 ・・・・・・・・・・・2,992 ・・・・・・・・155
3(8)・・オーヴェという男 ・・・・・・・・・・・・・・・・5/25・・・・・・・・・・・・・・・8,316・・・・・・・・・・・・69,186 ・・・・・・・・・・・・・546 ・・・・・・・・・84
4(16)・・羊飼いたち(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・6/02・・・・・・・・・・・・・・・1,442・・・・・・・・・・・・・3,191 ・・・・・・・・・・・・・・26 ・・・・・・・・・54
5(4)・・喊山・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/25・・・・・・・・・・・・・・・1,235・・・・・・・・・・・・10,316 ・・・・・・・・・・・・・・81 ・・・・・・・・・38

 新登場は4位「羊飼いたち」だけです。韓国の犯罪・スリラー。かつては注目の俳優だったワンジュ(パク・ジョンファン)でしたが、今は<役割依頼業>でやっと生計を立てています。つまり客の依頼で誰かになりすまして客に有利な発言をしたりする仕事。ある日彼が受けた依頼は、殺人事件の被害者の母親という女性から。巨額の報償金に目がくらんで目撃者役を引き受けた彼は、警察に行って抜かりなく嘘の証言をします。ところがその殺人事件の裏に別の真実があることを知り、ワンジュは事件当日に被害者と共にいたグァンソク(ソン・ハジュン)とヨンミン(ユン・ジョンイル)に会いに行くのですが・・・。原題は「양치기들」です。
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韓国の連座制&遡及法を考える⑤ 「先祖=自分」、「過去=現在」という仮説

2016-06-06 19:11:56 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 → <韓国の連座制&遡及法を考える④ 本間九介「朝鮮雑記」(1894)にみる連座制の事例から考えたこと>

 過去4回の記事で韓国と朝鮮の事例をいろいろ挙げましたが、この最終回ではそれをふまえて(ヌルボとしては)大胆な(?)仮説を提示してみます。次の2つです。

  [1] 韓国人は「先祖と一体」である。
  [2] 韓国人にとっては、「過去は現在と地続き」である。


 [1]は、なんといっても朝鮮王朝以来の儒教思想の影響が現在にも及んでいるということの現れで[2][1]から導き出される歴史意識です。
 早い話が「先祖=自分」であり、「過去=現在」ということ。(あ、韓国だけでなく北朝鮮も同様です。)
 以下、もう少し詳しく見てみます。

[1] 韓国人は「先祖と一体」である。
 先祖の名誉は自分の名誉、先祖の恥は自分の恥。そして先祖の屈辱は自分の屈辱なので、それを晴らすのは当然のこと。
 したがって、慰安婦問題に関して安倍首相「私たちの子や孫の世代に、謝罪し続ける宿命を負わせるわけにはいかない」という発言は韓国人には責任回避と映るのも当然でしょう。また「親日」行為を働いた者の子孫から財産を没収したり、国のために命を捧げた人や、現在の韓国や過去の日本の政治の犠牲になった人たちの遺族が多額の報奨金・補償金を受け取るのも当然ということになります。
 ただ、これには日本の軍人恩給と若干共通する点もあると思われます。たとえば、2011年の「東亜日報」の<韓国戦争遺族の補償金、たったの5千ウォン>という記事(→コチラ)がありますが、たしかに朝鮮戦争で一家の働き手を失った家族に死亡給与金が日本円で500円というのは理不尽ですね。
 しかし、昨2015年3月の<独立功労者の遺族向け家計支援、最大5倍に引き上げへ>という記事(→ 「朝鮮日報(日本語版.会員制)」、または→コチラ)はいかがなものでしょうか? この記事によると、韓国では「独立功労者の子供と孫の世代は計6万5683人おり、うち5874人に補償金が支払われている」が、「国家報勲処は、昨年(2014年)までその孫で最も年上の人に毎月35万ウォンずつ支給していた家計支援費を今年(2015年)からは所得に応じて毎月52万~188万ウォンに引き上げると発表した」とのことです。

 こうした「先祖の栄誉は自分の栄誉」といった韓国(&北朝鮮)によくある思考方式について、産経新聞・黒田勝弘ソウル支局長は2004年<過去に熱上げる韓国政治>と題した記事(→コチラ参照)で次のようなことを書いています。(その後「韓国は不思議な隣人」(産経新聞社)に所収。)

 盧(武鉉)大統領は先の演説(「八・一五光復節記念演説」)で「日本統治時代に独立運動をした人はその後、三代にわたって貧乏し、親日派は三代にわたって羽振りがいい」という話を紹介した。大統領がこの種の“俗説”を記念演説で引用したのには驚いたが、この「三代にわたって」というのが面白い。(中略)
 しかし問題は、親が独立闘士であれ親日派であれ、子孫が努力しなければ貧乏するだろうし、逆にがんばれば裕福になるだろう。ただそれだけのことである。それが近代社会というものである。(中略) 独立運動家の子孫が貧しかったとすれば、それは子孫の責任だろう。
 なのに大統領は、親日派の子孫が羽振りがよく、独立運動家の子孫が貧乏なのは問題だ、間違っているといっているようにみえる。これでは「個人」より血筋とか家門が重視されなければならない、ということになるではないか。
 盧政権は大統領以下、ほとんどが解放後生まれの若い世代で民主化運動出身の進歩派が多い。その新世代政権が過去好きで血筋や家門などという古い価値観にとらわれているのだ。これは韓国の変わらぬ政治文化、政治風土というしかない。


 咸臨丸でアメリカを訪れた福沢諭吉がワシントン初代大統領の子孫が今どうしているかを聞いても誰も知らないことに驚いた(「福翁自伝」)ことはよく知られています。あれほど儒教が重視された身分制社会を強く批判した福沢も、そんな社会の中で培われた感覚はいかんともしがたかったということでしょう。もちろん今の日本人は上の黒田氏の記事に同感するでしょうが、その点韓国は現在も血統に関しては「徹底的に(断絶ではなく)持続の思想」(小倉紀蔵「心で知る、韓国」であり、「血統に対する宗教的ともいえるような帰依感」を持っている(田中明「韓国の民族意識と伝統」)という点で日本と対照的です。
 つまりは、日本よりもはるかに儒教が深く根を下ろしていて、現代社会にまで大きく影響を及ぼしているとみられます。また北朝鮮の場合は、韓国以上に伝統的な儒教倫理を色濃く残しているのではないでしょうか? 指導者(金正日)が父親(金日成)の喪に服したり、先の記事で書いたように、3代遡って「成分」を分けたり金日成の家系の「聖家族化」を推進したり等々。
 ※北朝鮮の3代続く独裁体制がスターリン主義・日本の戦前の天皇制・封建時代から続く家父長的儒教主義の3つを受け継いでいるという理解はとてもわかりやすいと私ヌルボは思います。

[2] 韓国人にとっては、「過去は現在と地続き」である。
 韓国の連続ドラマの多くは、最初の数回は出生の秘密等々子供時代から始まり、成人後の本来の主役が登場するのは何回か後になります。
 つまり、現在の自分は生まれて以来の成育歴に直結している、・・・って当然といえば当然なのですが、それを強く意識し、そこにアイデンティティを見出し、あるいはそこに現在のいろんなことを結びつけるといった意識が強いのでは?
 また、復讐物が非常に多い(半分以上?)というのも韓国ドラマの特徴です。国や一族の歴史だけでなく、個人史でも「過去=現在」なので、日本人の目からは「なぜそんなに過去にこだわるの? 復讐に情熱を注ぐよりも、過去は忘れて、あるいは過去の不幸は今後の教訓として、新しい未来に向けて頑張る方がはるかに生産的で良いんじゃないの?」と考えるのは、日本人にとって過去は現在から簡単に切り離して「水に流せる」から。都合の悪い過去はトカゲのしっぽのようにどんどん捨てていけばいい。(それはそれで「問題あり」ですが。) ところが韓国人にとっては現在の自分は過去の自分により規定されていて、個人的にも過去の恨み=現在の恨みだから、それを晴らさないことには先に進めないのです。

 歴史を見る場合も、「地続き」の現在から過去を見るわけなので、「現在の価値基準で過去を裁く」ことになります。
 したがって、たとえば「韓国併合条約は合法か、無効か?」といった問題についての歴史研究者間の論議でも話がかみ合わないというケースがふつうに(?)生じたりするわけです。(「その当時はそれが正しいとされた」と言うと、韓国人の研究者から「アナタはそれを認めるのかっ!」という声が上がるとか・・・。)
 ※日韓歴史共同研究(→ウィキペディア)や韓国併合再検討国際会議(→コチラの記事)参照。また→<「日韓併合条約は無効でした」と認めることの何が不都合なのだろう?>と題したコチラのブログ記事に寄せられたコメントのやりとりはなかなか興味深いです。

 ところで、日韓間で「正しい歴史認識」と言う時、その「正しさ」の意味を双方がどのように理解しているでしょうか?
 日本人の場合は問題とされる歴史上が「実際に」あったかどうかにこだわります。本当に史実なのか否か定かでないことを前提とした主張は、それだけで「正しい」とは言えないと考えます。この「正しさ」は、何年何月何日に何があった、という意味での「正しさ」です。
 それに対して、韓国人の考える「正しい歴史認識」とは、歴史に対する「正しい価値判断」を意味します。何が「正義」で、何が「不正義」なのかを「正しく」判断すること。そしてその判断基準は上記のように「現在の価値観」によるものです。日本人にしてみれば、「現在のモノサシで過去を測るのはおかしい」とふつうに考えるところですが、「正義の基準は時代を超えた普遍的なもの」であり、また現在の価値観が時代の進行につれて変化していっても、それに併行して過去の見方も変わるのは当然で、なんら問題はないというわけです。

 上掲の小倉紀蔵「心で知る、韓国」にも、次のように記されています。

 「・・・だから歴史を見る目も大分違う。なぜ日本人は過去の糾弾をしないのかということを韓国人はよくいう。過去の糾弾というのは、儒教的な意味でいえば毀誉褒貶の「春秋の筆法」(事実を述べるのに価値判断を入れて書く書き方)によって、どれが悪くて、どれが善かったという、必ず善悪の価値を付けて歴史を裁くことをいう。そういう歴史観こそが文明だと思っている。死ねばすべて仏なんだというような歴史観は、儒教的な意味では野蛮に見えるのである。」
 「韓国人の歴史意識においては、現在も朝鮮王朝時代も、連続性あるいは同時性としてとらえられているのである。」


 こうして見ると、先の安倍首相の「私たちの子や孫の世代に、謝罪し続ける宿命を負わせるわけにはいかない」という言葉と、朴槿恵大統領の「加害者と被害者という立場は、千年過ぎても変わらない」という言葉との間のミゾの深さがわかるというものです。※「日本人の」価値観に基づく言葉だけで相手を批判しても通じるわけがないのです。もちろん韓国→日本も同様。

 韓国併合条約や、1965年日韓基本条約といった日韓間に理解の齟齬がある取り決めと関連して思い出したのが前の記事で紹介した本間九介「朝鮮雑記」中の1つの記事です。ただし国家間ではなく、個人間の約束事、具体的には金銭貸借のことなので、同列に扱うことは問題はありそうだし、内容的にも「侮辱的」ととられる要素がありますが、それは承知の上でとりあえず紹介します。

<韓人單純なり>
 韓人は比較的に正直といはんよりは、寧ろ單純といふべき人種なり、(中略) 例令ば彼等の金を借るや、其證書面には若し期日を經過するも義務を果さゝるときは、違約金として五貫文を推尋すること、或は官に卞呈して公裁を仰ぐべしなど、汪洋に書くとも、瓜期に至りて人之を催促すれば、彼等は即ち曰く一銭もなし、願くは猶ほ一期を猶豫せよと、人其最初の約に違ふを責むれば、彼等卽ち曰く唯一時の急を救はん爲め必ず約を履むの意なかりしと、彼等は常に斯る辦疏をなして恬として羞づることなし、然れども彼等は不思議にも借りたる金を借りぬとは言はぬなり、彼等實に單純なる人種なり
といふべし、
 證文に期を約するは是れ假相、一寸延れば尋といふ是れ韓人の眞面目、


 つまり、「韓人は金を借りても證文に記された返却期日を守るという意識に乏しく、催促しても1銭もないから延ばしてくれ等と言って恥じるところがない」ということ。
 誤解のないよう付記すれば、韓国人を非難するのではなく、「当時の韓人がなぜこうだったのか?」についての考察です。1つ目の推論は、契約期日を重視する商慣習・商道徳が定着するほど商業経済が発達していなかったのではないか、ということ。2つ目は、「過去=現在」なので、現在の自分の状況からみて不都合な内容であれば、過去の約束事も単に書き直せばよい、と思っているのでは、ということです。

 上述のように国家レベルと個人レベルを並列することに疑問を抱きつつも、現代の「約束破り」で思い起こしたのは北朝鮮の国際社会での「約束事」についてです。
 北朝鮮が「核保有国」になってしまった足跡はまさに掟破りの連続でした。核拡散防止条約に加盟後も条約を遵守せず秘密裏に核開発を進めたこと、その後核拡散のおそれの低い軽水炉完成までの期間米日韓が費用を負担して重油を無償で提供して北朝鮮の核兵器開発を放棄させることを目的として合意の上発足したKEDOも、北朝鮮がウラン濃縮による核開発を続行していることが明るみに出て、結局北朝鮮がIAEAから脱退して頓挫しました。
 また日本と北朝鮮の間では、「拉致被害者問題」等にしても、「3年後には日本に里帰りできる」はずだった日本人妻の問題にしても、過去幾度となく約束事が反故にされてきました。
 国際間の約束事を遵守することよりも優先すべきことがたくさんあるということ。言葉を変えて言えば、国際間の約束事を破ることについてのハードルは相当に低いということです。(ある本には「約束を堂々と破ることが指導的な地位にある者の証左」(!)と書かれていました。)

 いろんな細かな事例を挙げるときりがありません。ぼちぼちオシマイにしますが、今回の記事はこのブログの記事としてはちょっと異色の、やや「政治的色合い」を帯びた「憶測」めいた記事になってしまいました。
 専門的な研究者であれば、ホントに歴史的な時間の意識や、先祖についての意識等についてちゃんとした調査を踏まえた論を展開すべきところでしょう。(そういう研究はあるのかな?) 非専門家の私ヌルボとしては、「こう考えるとわかりやすい」ということで<仮説>として提示したまでです。

 [蛇足] 「嫌韓」の人たちに「利用」されそうなことも書いてしまいましたが、ヌルボの本意は「相互理解」にあります。
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韓国の連座制&遡及法を考える④ 本間九介「朝鮮雑記」(1894)にみる連座制の事例から考えたこと

2016-06-03 23:46:21 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 → <韓国の連座制&遡及法を考える③ 北朝鮮の連座制と<成分>、金日成の「輝ける家系」等

        

 もうひと月以上経ってしまいましたが、久しぶりにすずらん通りのアジア文庫に行ってきました。内山書店のビルの、現在は2階にあります。
 そこで平積みになっていたのが上左の本。
 今年2月に「120年ぶりの復刊」とのふれ込みで刊行された本間九介「朝鮮雑記」(原著は1894年刊)です。復刊といっても原文そのままではなく現代語訳になっています。しかし豊富な挿絵は原書のままです。帯にもあるように、あのイザベラ・バード「朝鮮紀行」の4年前に出版されながら、以後“幻の書”とされていたとのことです。

 私ヌルボがこの本のことを知ったのは2008年です。この本は、今回の日本での現代語訳よりずっと早く、その2008年6月に韓国語訳(上右画像)が刊行されました。韓国紙「毎日経済新聞」のサイトに<日本浪人が見た1893年朝鮮の風景>と題した紹介記事が載りましたが、記事原文はその後削除されています。しかし、→コチラの2ちゃんねるの掲示板で(あの) 蚯蚓φ★さんが訳文を載せてくれています。
 おもしろそうな本なので、図書館等にあるかなと思って探しても見つからず。しかし<近代デジタルライブラリー>に収められていることを知りました。(→コチラ。)
 ただ、文語体&旧字体で画像も見づらいのでところどころ拾い読みした程度だったので、アジア文庫でこの現代語訳を見て迷わず購入し、思った通りの興味深い内容でイッキ読みしたというわけです。

 その内容ですが、この本間九介という人は実に好奇心旺盛だったとみえて、実にさまざまなところに目を向け、観察し考察したことを記述しています。
 まさにネタの宝庫なのですが、今回は1つに絞って取り上げます。(今この本が手許にないので、原文をそのまま載せます。)
 ※この本についていろいろ知りたい方は→コチラや→コチラのブログ記事参照。

<塞翁の馬>
 京畿道安城の両班秉轍は余の知人なり、昨春大科を經て第一に及第し、朝散大夫に任せられ、成均館出勤を命ぜらる、知人相會して之を慶賀す、數日にして又命あり曰く、其官を奪て江原道江陵に配竄すと、其理由書に曰く、汝の叔父曾て朝旨に違ひ天主教を奉じ、斬に處せられたるの罪人なり、其醜族の姪を以て、敢て科擧の試場に列す、其罪輕からず即ち江陵に配すと、人間萬事、塞翁の駒の如し、昨日の慶、今日の吊、余復何をか言はん唯氏貧、官を受くるも賄賂を獻じて長官に媚ぶるの餘なかりしを憫むのみ、


 つまり、筆者の知人の韓人がせっかく科挙に合格して官職を得たが、ほどなくして「叔父が天主教(カトリック)禁教に背いて斬罪に処せられたことを秘密にして科挙を受けたのはけしからん」という理由で江陵に追放刑となってしまった、というもの。

 私ヌルボ、この本の韓国人の大食やケンカのようす等々の記述を見て「昔も今も変わりないなー」と思いましたが、上のくだりも同様です。
 朝鮮王朝時代は大逆罪や国家反逆行為を犯した者は、その親兄弟だけでなくいとこや6親等・8親等の親族まで罰したそうですから、上記のような事例も当然だったのでしょう。
 また、天主教迫害といえば時期的には興宣大院君により8千人以上が捕縛・処刑されたという1866(~71)年の丙寅教獄の頃と思われますが、すると本間九介が現地で取材した20年以上前のこと。その間、1880年代前半にはキリスト教信教も容認され、(プロテスタントも含めて)布教活動が活発化しています。したがって、この筆者の知人の韓人のケースはキリスト教禁止に関連するものではありません。あるいは、記事から推量されるように、官吏が賄賂をあてにして彼の個人情報から見つけたネタということなのでしょうか?
 いずれにしろ、こうした理由をもって科挙に合格したほどの優秀な人材を処罰するとは、本間九介が理不尽に思うのは当然です。
 もちろん現代日本人の私ヌルボも。・・・ということでふと思ったのが、この100年以上も前と同様のことが今の韓国や北朝鮮でも形を変えつつも続いているのではないか?ということ。
 それは相手方の考え方がヘンだ、間違っているということではなく、「そんな何十年も前のことは関係ない」とか、「そんな会ったこともないような遠い親戚や何代も前の先祖なんて自分とは関係ないし、関係づける方がおかしい」と考えるのは自分が日本人だからで、韓国や北朝鮮ではそうは考えない人がわりとふつうにいるのかもしれない、という相対的な視点です。
 そう考えると、最近の日韓間の「歴史認識」や「補償」等々をめぐる齟齬の基底にあるものがわかるような気がしてきました。
 これがこの<韓国の連座制&遡及法を考える>シリーズのきっかけでした。

 前回の記事では「あと1回」と書きましたが、とりあえずここでひと区切り入れて、あともう1回まとめの記事を書くことにします。

 →<韓国の連座制&遡及法を考える⑤ 「先祖=自分」、「過去=現在」という仮説>
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韓国の連座制&遡及法を考える③ 北朝鮮の連座制と<成分>、金日成の「輝ける家系」等

2016-06-02 18:10:33 | 北朝鮮のもろもろ
 このシリーズの①(→コチラ)では韓国の「親日」、②(→コチラ)では「パルゲンイ(アカ)」についての連座制の事例をあげました。
 しかし、連座制や遡及法が今も社会に根を深く下しているという点では北朝鮮がはるか上を行っています。多くの北朝鮮本が伝えているので、すでに多くの人が知るところではありますが・・・。

 連座制については、たとえばそれまで国の重要なポストに就いていた人物が失脚したり粛清の憂き目に遭ったりすると、家族たちも収容所送りになるという話は、いろんな本で読みました。近所の人たちの目にふれないように、早朝や深夜に連行されていくとか・・・。
 明らかな国家反逆者・裏切り者の場合、家族も無条件で収容所送りでしょう。

 1997年韓国に亡命した黄長燁(ファン・ジャンヨプ)元労働党秘書の場合は、→コチラの記事によると、妻と1男3女の家族は自宅軟禁状態におかれていたが98年息子のファン・キョンモ氏が亡命を試みて友人1人と平壌を出たものの2週間後に龍川で公安当局に逮捕され、結局母親とともに銃殺刑に処せられたそうです。韓国ウィキペディアでは、3人の娘も皆「死亡」となっています。
 しかし<ナムウィキ>(→コチラ.韓国語)には「子供は1男2女で、息子は外交官、長女は外国文学を専攻した学者、次女は医学部を卒業した医師」とあり、彼の亡命後家族達の安否は自殺・処刑・生存の諸説あって確かではないが、妻は自殺し他の家族は政治犯収容所に送られたとみられるとのことです。また収容所に送られることとなった遠い親戚の軍人は「党に忠誠を尽くしていた私が、なぜ顔を一度見たことのない黄長秘書のために収容所に行かなければならないのか」と抵抗し自殺したということも記されています。
 黄長燁亡命に伴ってこのような遠縁まで含めた家族・親族に対する処罰つまり「縁座」だけでなく、それ以外に係累として処罰された者は計3千人にも及んだとの推定もあるようです。
 例の張成沢の粛清に関しては、直系の家族が処刑された他、処罰の対象者は万単位に上るという記事もありましたが、真偽のほどはよくわかりません。

 1987年大韓航空機爆破事件を実行した北朝鮮の元工作員・金賢姫の家族の場合は、耀徳(ヨドク)政治犯収容所に送られたという説もありましたが、2012年1月その家族たちと親しかったという脱北者が「清津の古いマンションで25年間にわたり徹底監視網の中で、生活に苦しみながら暮らしている」と証言したことが報じられました。(→「中央日報」、→「DailyNK」。)

 また、脱北したら家族が処罰されるという話もありますが、近年脱北者の手記を読むと、まず自分が脱北した後ブローカー等を通じて家族と連絡をとり、一家全員の脱北に成功したという事例が少なからずあるようです。2008年の<DaylyNK>の<“北‘家族ぐるみの脱北’を阻め”…連座制強化>と題した記事(→コチラ)には「国家が脱北と推定される失踪者たちの家族と親戚に対する監視と処罰を一層厳しくしている」とあるのですが、その後どれほど実際に強化されたのでしょうか?
 今年4月初めに報じられた中国・寧波市の北朝鮮レストランの支配人と従業員13人の集団亡命事件の場合は、事態はまだ進行中です。北朝鮮当局は4月27日中国国内のレストランから韓国の諜報機関によって拉致されたと発表し、女性従業員の両親のビデオ映像を公開しました。関連記事(日本語)は→コチラ、その映像は→YouTubeで見ることができます。両親は涙ながらに娘を帰すように訴えています。
 数年前からな本や講演等で北朝鮮を批判してきた収容所から生還したという脱北者・申東赫(シン・ドンヒョク)に対しても「ウソを暴く」ため北朝鮮当局は両親が登場する動画を公表(→YouTube)しましたが、こうした対応が増えてきているとみていいのでしょうか?

 「連座制」と並ぶもう1つのテーマ「遡及法」について。
 北朝鮮が、<出身成分>により国民を3階層・51区分に分け、居住地・職業・進学等々さまざまな場面にそれを反映させて国民を統制していることも90年代頃から一般に知られるようになってきました。
 3階層とは次の3つです。※→ウィキペディア参照。

 ○核心階層・・・特権階級。労働党員・抗日戦士・パルチザン・栄誉軍人・労働者・貧農等の子孫。
 ○動揺階層・・・国に反抗する可能性があり、要注意とされる。中農・商人・手工業者等の子孫。(※帰国事業により日本から帰還した人々は、この階層の最下位に位置づけられている。)
 ○敵対階層・・・国に反抗する可能性が高く、監視の対象とされる。富豪・地主・資本家・宗教家・親日派・親米派・罪人等の子孫。>

[2018年7月22日の追記] 伊藤亜人「北朝鮮人民の生活」(弘文堂.2017)によれば、核心階層=全人口の約30%、動揺階層=約50%、敵対階層=約20%。

 問題は、こうした区分が本人の能力や希望や人となり等とは関係なく、祖父や父が何をしていたかで人生の重要なことが決定づけられてしまうということ。封建社会の身分制度とどこが違うのか?といった感じです。世界の国々の中に同様の国がはたしてあるかどうかはわかりませんが、現存する「負の歴史遺産」として登載される資格はありそうです。

 こうした先祖の行跡が子孫を規定するというのは、別の面で見れば「偉大な先祖」は子孫に福をもたらすということ。あるいはさらに「先祖の偉大さ」を周知させ称えることは現代の自分個人や一族にとっても大きなプラスとなるということです。
 その典型はもちろん金日成です。
 白峯(著)「金日成伝」(雄山閣.1969)は、彼の家系から書き起こされていますが、まず曽祖父の金膺禹(キム・ウンウ.1848~78)は万景台で地主の墓守として小屋に住み、「小作をしながら苦しい生計をたて」ていたが、「アメリカの海賊船シャーマン号が大同江へ侵入してきたとき(1866年)、・・・群衆の先頭にたって勇敢にたたかった」と記しています。(→ウィキペディアには、さらに細かなエピソードが書かれている。)
 祖父の金輔鉉(キム・ボヒョン.1871~1955)「息子や孫たちの独立運動と革命活動をたすけることに一生をささげた人たった」と記載。※→ウィキペディアには、「誠実な人であったため、(金日成の)欺瞞に耐えられず、後日平壌で行われた金日成将軍の凱旋祝賀会には欠席をしている」とか「孫の金成柱(金日成)が朝鮮民主主義人民共和国を建設し、親族が官僚に登用される中で、政府の要職に就くことを嫌い、万景台で従来通り、農夫として生活した」等々の興味深い記述がある。)
 そして父の金亨稷(キム・ヒョンジク.1894~1926)について伝記は「祖国光復のために一生をささげた熱烈な愛国者であり、強力な地下組織をつくって献身的にたたかった前衛的な闘士であり、すぐれた革命家であった。そしてまた先生は、数多くの青少年を愛国思想で教育し、かれらを勇敢な闘士に育てあげた教育者でもあった」と称賛しています。(→ウィキペディア。)
 また母親についても康盤石(カン・バンソク)女史もまた、反日闘争に生涯をささげた意志の強い女性であった。女史は革命家の忠実な妻として、婦人たちのなかで反日啓蒙活動をねばり強くおしすすめただけでなく、三人の息子たち、なかでも長男の金日成将軍を革命家に育てあげ、祖国光復の偉業にむかわせたすぐれて母親であり、数多くの投資をわが子のように愛した朝鮮のまことの母であった」とこれまた大絶賛。そればかりか「熱烈な革命家」で西大門刑務所で獄死した叔父・金亨權(キム・ヒョングォン.1905~36)や、やはり「熱烈な反日闘士」で、20歳で世を去った金日成のすぐ下の弟・金哲柱(キム・チョルジュ)についても言及されています。
 そして「このように、金日成将軍の一家は熱烈な反日愛国の家柄であり、一族が代をついで祖国の独立のために身をささげた世界でもまれな革命家の家筋であった」とまとめられています。

 実は私ヌルボ、最近の韓国でも「偉大な先祖」を顕彰することが現在の自分たち一族の自尊心を高めるという事例にふれる機会がありました。もしかしたら、自尊心・アイデンティティといったレベルだけでなく、なんらかの「実利」につながる部分もあるかもしれません。

 こうした社会の慣習や制度、過去の見方や先祖に対する考え方は韓国と北朝鮮に共通するもので、一方では日本との間の「歴史認識」をめぐる対立にも大きく作用しているのでは、と思います。

 このシリーズはあと1回です。このテーマ設定のきっかけになった本を紹介します。

☆記事とは直接関係ありませんが、「失脚した人物の家族」ということで思い出したのがブルガリア映画の秀作「ぼくと彼女のために」(1988)です。
 DVDも出ておらず、そんなに話題にもならなかった作品で、ネット情報もわずかにすぎません。自分のメモとして→コチラの記事にリンクを張っておきます。

 → <韓国の連座制&遡及法を考える④ 本間九介「朝鮮雑記」(1894)にみる連座制の事例から考えたこと>
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韓国内の映画 NAVER映画とシネ21の人気順位 と 週末の興行成績 [5月27日(金)~5月29日(日)]

2016-06-01 18:13:12 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
    

 私ヌルボ、5月28~29日は生まれ故郷への1泊旅行。新幹線・名古屋駅に降り立つと、伊勢志摩サミット関係のインフォメーション(上左)。初日向かったのは、初めてのナゴヤドーム。小2の時までしかいませんでしたが、食べ物ではきしめんとういろう、それ以外では中日ドラゴンズへの思い入れは続いています。上右の写真のテレビ塔も懐かしのランドマークと言いたいところですが、今は周囲に高層ビルやオアシス21等もできて、目立たなくなってきているのは時代の流れですね。
 で、今回の旅行の目的はというと<花開くコリア・アニメーション2016>(→公式サイト)。東京会場は開催日に所用があって行けず。しかし一昨年末ソウルで惜しくも観られなかった長編アニメ「そばの花、運のいい日、そして春春」をぜひ観なければ、との一心で奮発しました。
 会場は上右の写真の右手の方にある愛知芸術劇場内。29日の午前11時30分から夕方までその長編を含む4プログラムをすべて鑑賞しました。
 「そばの花、運のいい日、そして春春」は「朝鮮短篇小説選(上・下)」(岩波文庫)所収の日本統治期の短編小説3編が原作のオムニバスで、アン・ジェフン監督は落ち着いた色調で当時の雰囲気を描き出しています。個人的には、パンソリの節に乗せた語りで物語が進められる金裕貞原作の「そして春春」がおもしろかったですね。そういえば短編中にもキム・ヘミ監督「Little King」もパンソリの語りでした。正祖が水原に行幸した際に漢江を渡るのに36艘の舟を並べて舟橋を造ったことをモチーフにした内容にマッチしていて絵柄等々の完成度も高く、インディ・アニフェスト2015でグランプリを受賞したのもうなずける作品でした。その他の短編にもいかにも現代アートといった絵柄の作品や、イマジネーション豊かな作品等々興味深い作品が多々ありました。
 そして何といっても名古屋まで足を運んでよかったと思ったのは、西村嘉夫さんと初めて話をする機会を得たことです。ずーっと以前から<ソチョンのホームページ>で韓国映画の諸情報を仕入れてきたこと等々の感謝の言葉を直接お伝えできて幸いでした。「中野武蔵野館で「アダダ」を観た」という話が出てきました。私ヌルボの思い出の映画館の1つです。90年代から、いろんな場所で何度もすれ違ったりしてきたのでしょうね。西村さんと<シネマコリア>、これからもよろしくお願いします。

 5月27日は「ルーム」、31日は「ヘイル、シーザー」と、懸案だった2作品を鑑賞。どちらも良かったです・・・(ってそれだけか!?) あ、「ルーム」の子役ジェイコブ・トレンブレイ君はやっぱりスゴイ。母親のインタビュー取材中のあの表情の演技には驚きました。

 「朝鮮日報」の「封切映画 ぴったり10字評」は先週掲載されませんでした。

           ★★★ NAVERの人気順位(5月31日現在上映中映画) ★★★

①(1) 東柱[ドンジュ](韓国)  9.39
②(2) ズートピア  9.39
③(4) ライフ・イズ・ビューティフル  9.38
④(-) 戦場のピアニスト  9.30
⑤(7) シーモアさんと、大人のための人生入門  9.16
⑥(6) シング・ストリート 未来へのうた  9.14
⑦(10) 太陽の下  9.06
⑧(8) 私の少女時代 Our Times  9.00
⑨(-) 4等(韓国)  8.97
⑩(-) ビフォア・サンライズ 恋人までの距離〈ディスタンス〉  8.93

 今回の新登場はありません。旧作の再上映が③④⑩の3作品で、一時より少なくなりました。

           ★★★ シネ21 専門家の平均得点順位 ★★★

①(1) キャロル  9.00
②(2) ライフ・イズ・ビューティフル  8.40
③(3) 哭声(韓国)  8.31
④(4) スポットライト 世紀のスクープ  8.00
④(4) ブルックリン  8.00
⑥(6) ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!  7.60
⑥(-)X-MEN:アポカリプス  7.60
⑧(7) さざなみ  7.50
⑧(7) クラン  7.50
⑩(9) シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ  7.45

 ⑥「X-MEN:アポカリプス」だけが今回の新登場。この作品については後述します。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績5月20日(金)~5月22日(日)] ★★★

         「哭声」に代わって「X-MEN:アポカリプス」が1位
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(22)・・X-MEN:アポカリプス・・・・5/25・・・・・・・・・・1,166,862・・・・・・・・・1,640,560 ・・・・・・・・13,575・・・・・・1,258
2(1)・・哭声(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・5/12 ・・・・・・・・・・・633,143・・・・・・・・・5,680,867 ・・・・・・・・46,132 ・・・・・・・910
3(2)・・アングリーバード・・・・・・・・・5/19 ・・・・・・・・・・・163,236 ・・・・・・・・・・449,001 ・・・・・・・・・3,446・・・・・・・・554
4(5)・・シング・ストリート 未来へのうた・・5/19 ・・・・・・94,732 ・・・・・・・・・・348,560 ・・・・・・・・・2,845 ・・・・・・・388
5(4)・・ケチュンばあさん(韓国)・・5/19 ・・・・・・・・・・・・・80,175・・・・・・・・・・・382,563 ・・・・・・・・・2,906 ・・・・・・・435
6(7)・・私の少女時代 Our Times・・・5/12 ・・・・・・・・・・69,368・・・・・・・・・・・307,691 ・・・・・・・・・2,523 ・・・・・・・195
7(3)・・シビル・ウォー ・・・・・・・・・・・4/27・・・・・・・・・・・・・40,571・・・・・・・・・8,643,611 ・・・・・・・・72,404・・・・・・・・242
        /キャプテン・アメリカ
8(28)・・オーヴェという男・・・・・・・・・5/25・・・・・・・・・・・・26,110・・・・・・・・・・・・44,132・・・・・・・・・・・353 ・・・・・・・・244
9(6)・・探偵洪吉童:消えた村(韓国)・・5/04・・・・・・・・・13,581・・・・・・・・・1,421,332・・・・・・・・・11,444・・・・・・・・125
10(33)・・ビフォア・アイ・ウェイク・・・5/25・・・・・・・・・・・・・5,869・・・・・・・・・・・・・9,076 ・・・・・・・・・・・・72・・・・・・・・199
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「哭声(コクソン)」は500万人を超えたものの、ここにきて勢いにやや陰りがみられますが、はたして?
 今回の新登場は1・・8・10位の3作品です。
 1位「X-MEN:アポカリプス」は、超人的能力を持つミュータントの戦いを描くアメリカのSFシリーズ第6作。ミュータントの始祖でかつて“神“として崇められていたアポカリプスは数千年の眠りから目覚めますが、人間の文明が間違った方向に発展したと考え、“黙示録の四騎士“を率いて新たな秩序の確立をめざします。X-MENたちはそんな彼らを企てを阻むためて立ち上がり、かつてないバトルが繰り広げられます・・・。韓国題は「엑스맨: 아포칼립스」。日本公開は2016年8月11日です。
 8位「オーヴェという男」(仮)は、スウェーデンの無名作家フレデリック・バックマンが書いた同名のベストセラー小説の映画化作品。スウェーデンで70万部以上の販売高を上げ、その後全世界30カ国版権輸出してヨーロッパでは100万部を超え、韓国でも昨年5月刊行された翻訳書が1ヵ月後にベストセラー1位、そして2015年で最も売れた小説1位となり、ネチズン選定の良書1位にも選定される等々話題となった本です。(日本では未訳。) 主人公のオーヴェは59歳。長年勤めた職場から急にリストラされ、気難しい人間になってしまっています。最近の流行語でいえば까칠남(カチラム.ガサツ男・無愛想男)。韓国本の表紙の顔(右)を見ればわかります。映画の方はヒゲはないが表情はほぼ同じ。共同住宅地の監視役みたいな存在で、周囲の人たちのなすことすべてが気に入らないといった彼の隣に、新しく越してきた若夫婦+幼い女の子2人も、これまた迷惑極まりない・・・と思っていたオーヴェ。今は1人心を開くことができた亡き妻の後を追うことだけと、すべての準備を終えて計画の実行を前にしたとたん、彼の決断を妨害したのは・・・。韓国題は「오베라는 남자」。日本公開は未定、かな? 翻訳待ち?
 10位「ビフォア・アイ・ウェイク」(仮)は、アメリカーのファンタジー・ホラー。事故で子供を失った若い夫婦ジェシー(ケイト・ボスワーズ)とマーク(トーマス・ジェーン)は両親のいない8歳の少年コーディ(ジェイコブ・トレンブレイ)を養子として迎えます。ところが、コーディはなぜか眠りに落ちることを恐れています。コーディが眠っていると、美しい蝶と一緒に、死んだ息子ショーンを見るようになっていたのです。夫婦はコーディが夢が現実にしてしまうという事実を知ることになります。 死んだ息子と会おうとコーディを寝かせるジェシーとマークは、コーディが眠った後繰り広げられる恐ろしい出来事の中でも欲を抑えられず、結局コーディに睡眠薬まで飲ませたその日の夜、コーディの悪夢が始まり、目を覚ますことができない恐れが近づいてきます・・・。韓国題は「썸니아」。日本公開は未定のようです。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・シング・ストリート 未来へのうた・・・5/19・・・・・・・・・・・・・・94,732・・・・・・・・・・・348,560 ・・・・・・・・・・・2,845 ・・・・・・・・388
2(2)・・私の少女時代・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/12・・・・・・・・・・・・・・69,368・・・・・・・・・・・307,691 ・・・・・・・・・・・2,523 ・・・・・・・・195
3(8)・・オーヴェという男 ・・・・・・・・・・・・・・・・5/25・・・・・・・・・・・・・・26,110・・・・・・・・・・・・44,132 ・・・・・・・・・・・・・353 ・・・・・・・・244
4(新)・・喊山・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/25・・・・・・・・・・・・・・・3,632・・・・・・・・・・・・・6,801 ・・・・・・・・・・・・・・54 ・・・・・・・・105
5(新)・・モン・ロワ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・5/26・・・・・・・・・・・・・・・2,099・・・・・・・・・・・・・3,519 ・・・・・・・・・・・・・・26 ・・・・・・・・・40

 3・4・5位の3作品が新登場です。
 3位「オーヴェという男」については上述しました。
 4位「喊山」は昨年の第20回釜山国際映画祭でクロージング作品として上映された中国映画で、「喊山」はその原題。韓国題は「산이 울다(山が泣く)」、英題は「Mountain Cry」です。舞台は1984年の中国の山奥の村。村の青年ハン・チョンがアナグマを捕まえるために仕掛けておいた爆薬を移住してきたばかりのラ・ホンが間違って踏んで死亡する衝撃的な事故が発生します。村の長老たちは、警察に通報していない代わりに、ハン・チョンがラ・ホンの聴覚障害者の妻ホン・シアの世話をするように命じます。ハン・チョンはホン・シアを見守りながら徐々に彼女に惹かれ始めますが、その仲を嫉妬する寡婦のチン・ホアと村人たちとの葛藤はますます大きくなっていく。そしてホン・シアの暗い過去が明らかになり、映画は予期せぬ結末へ・・・。息詰まる緊張感の中に描かれる愛の物語、かな? ちょっと観てみたい感じですが、日本公開は未定のようです。
 5位「モン・ロワ」は、フランスのラブロマンス(かな?)。6月24~27日開催の<フランス映画祭2016>の上映作品で、→コチラに紹介記事がありま。スキー事故で大けがを負った弁護士のトニー(エマニュエル・ベルコ)。リハビリセンターでリハビリを続ける中、元夫ジョルジオ(ヴァンサン・カッセル)との波乱に満ちた関係を振り返ります。これほどまでに深く愛した男はいったい何者だったのか。なぜ愛し合うことになったのか。・・・10年前トニーは以前憧れていたレストラン経営者のジョルジオとクラブで再会し、激しい恋に落ちた2人は電撃的に結婚を決め、トニーは妊娠したのですが・・・。韓国題は「몽 루아」です。日本での一般公開は未定のようです。

      
 アン・ジェフン監督と、彼の作品。左上の「Green Days~大切な日の夢~」については、4年前に記事にしました。(→コチラ。)
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