ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

田月仙「禁じられた歌」 = さまざまな理由で禁止された韓国・朝鮮(+日本)の歌を、思いを込めて紹介した好著

2016-09-30 09:46:17 | 韓国の音楽

 <カリプソの女王>浜村美智子「黄色いシャツ」 (日本語版)のレコードを出していた(1972年)とは知らなかったなー。他にも知らなかったことが一杯。
 一応知っていたことはザ・フォーク・クルセダーズ「イムジン河」のレコードが発売中止になったおおよそのイキサツ(参照→ウィキペディア)及びその歌詞が「豊かな北から川の向こうの荒れ果てた南の故郷を眺めて嘆く」(2番)という内容ということ。(最近「当事者が「本当の舞台裏」を明らかにする」というキャッチコピーの喜多由浩「『イムジン河』物語 “封印された歌”の真実」(アルファベータブックス)が刊行されましたが未読。) 他には日本文化開放以前の韓国で五輪真弓「恋人よ」が人気だったということ。しかし、それ以前にいしだあゆみ「ブルー・ライト・ヨコハマ」が韓国でも不法コピーのカセットテープ等で広まり、韓国人がもっともよく知る日本の歌になったとは知りませんでした。

 この「禁じられた歌」(中公新書ラクレ.2008)という本は、在日コリアン2世のソプラノ歌手・田月仙(チョン・ウォルソン)さんが「いろんな事情」で歌うことやレコードの発売等を禁止された歌について多角的な観点から書いた好著です。

 「多角的な観点」というのは次のようなことです。
 まず「朝鮮半島 音楽百年史」と副題にあるように、1910年(韓国併合)から現代までの1世紀の韓国・朝鮮と日本の間の鳥瞰図的な歴史がおのずと見えてくる記述になっていること。
 また、田月仙さん自身がいろんな人に話を聞いたりして積極的に取材をしていること。公演等で訪れた所でたまたま会った人の話だけでなく、自らの興味・関心に沿って目的の場所や人を訪ねたり、本やレコード等の資料を求めたりもしているのです。
 たとえば「アリラン」にしても、映画「アリラン」(羅雲奎監督.1926)について2005年団成社(初めて上映した映画館)に行って映画研究家のチョン・ジョンファさんから説明を聞いたり、中国・延辺では朝鮮族の人の話を聞くだけでなく、北朝鮮レストランで歌を聴いたり、ロシア・ハバロフスクに招かれた時にはその地のカレイスキー(高麗人=韓国人)からロシア語の「アリラン」を聴いたり、ロサンゼルスのコリアタウンにある韓国人の雑貨店主からも話を聞いたり等々・・・。
 もう1つ、この本ならではの視点というのは、田月仙さん自身の歌手としての歩みが記されているるということ。この点については、小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞した前著の「海峡のアリア」(2006年)の方がまさに自伝なのですが、この「禁じられた歌」でもさまざまな思い出が記されています。中でも<歴史的体験>といえるのは、1985年に平壌の音楽祭に招かれて金日成主席の前で独唱したことや長く収容所生活を強いられていた兄たちと再会したこと、あるいは1998年の韓国・金大中政権の時、日本文化の段階的開放が進められている頃に東京都の親善大使としてソウルで公演をするになった彼女は「赤とんぼ」「浜千鳥」「夜明けのうた」の3曲を歌う予定だったのが「夜明けのうた」だけは(歌曲ではなく)大衆歌謡とみなされて許可が下りず、結局「♪あーあー」という声だけで歌ったこと等々。

 このように多彩な内容が、とても読みやすい文章で書かれていることも私ヌルボが良書という大きな理由で、高校生にもぜひ読んでほしいと思います。(「海峡のアリア」の方が<感動本>ですが、コチラは新書で入手しやすいので・・・。)

 私ヌルボ、これらの「禁じられた歌」を「禁じた」のは誰かということで分類・整理してみました。次の通りです。

[Ⅰ] 日本の統治期
 ・民族の独立・抵抗を内包した歌・・・「鳳仙花」
[Ⅱ] 戦後の韓国
 ・「倭色」歌謡=日本的歌謡は放送禁止に・・・「椿娘(トンベクアガシ)」
 ・日本の歌
 ・北朝鮮の歌、南から北朝鮮に渡った「越北作家」の歌
 ・「運動圏」の歌=軍事政権に反対する民主化運動の側の闘争の歌・・・「朝露(アチミスル)」
 ・「親日派」の作詞家・作曲家・歌手による歌・・・上記の「鳳仙花」「故郷の春」の作曲者・洪蘭坡(ホン・ナンパ)「哀愁の小夜曲」で知られる歌手南仁樹(ナム・インス)
[Ⅲ] 戦後の北朝鮮
 ・体制の<理念>に合わない歌等、多数
[Ⅳ] 戦後の日本
 ・本書では上記の「イムジン河」だけですが、森達也「放送禁止歌」(知恵の森文庫)(←オモシロイ!)には実にいろんな事例が集められています。多くは差別用語やワイセツな表現等による問題を避けたいメディア側の自主規制のようですね。

 これらの政治権力による歌への禁圧や「親日派狩り」等に対して、いうまでもなく田月仙さんは批判的に書いています。彼女が国境を越えて活動を通して国際的な視野を身につけているからということもあるでしょうし、もしかしたら日本で生まれ育った在日だからこその「ふつうの見方」なのかもしれません。

 ところで、この2008年刊行の新書を私ヌルボがなぜ今再読してこのブログ記事を書いたのかというと、実は北朝鮮での2つの「禁じられた歌」について韓国のニュース記事を読んだからです。その2つの歌については(またもや)次回に続くということにします。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [9月23日(金)~9月25日(日)]

2016-09-27 22:03:05 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 公開初日or2日目に映画を観るのは最近あまりないことですが、いくらなんでも「君の名は。」のようなことはなかろうと25日観に行ったのが<ハドソン川の奇跡>。やっぱりイーストウッド監督にハズレなしです。主人公、そしてイーストウッド監督からも思い起こされるのは<矜持(きょうじ)>という言葉。あえて欠点( ?)をあげるとすれば、きちんとしすぎていることかな?

 今日(27日)は久しぶりの青空。家を出ると今シーズン初めてのキンモクセイの香りが漂ってきました。
 例年この時期になると、ぼちぼち<コリアン・シネマ・ウィーク>の情報が出てくるのでは? 10月後半の催しだからまだ早いのかな?
  [9月28日午後3時の追記] 韓国文化院のサイトで<コリアン・シネマ・ウィーク 2016>の記事が今載りました。→コチラです。上映スケジュールや作品紹介等々。私ヌルボのコメントはまた来週。

 昨年は8月に開催された<新大久保映画祭>。今年は11月3~7日なのか。しかし、→公式サイトを見ると8作品中6作品はもう観てるし、ちょっと以上に期待感が沸いてこないなー・・・。
 そして<東京フィルメックス>は11月19日~27日とちょっと先で、上映作等はまだよくわかりませんが、→コチラの「中央日報(日本語版)」の記事によると韓国映画「私たち」は招待されているとのことで、これは期待大!
 あ、<東京国際映画祭>というのもあったか。ここらへんは→シネマコリアをご参照くださいということで。そのtwitterの方(→コチラ)。韓国映画ファンの方々はちゃんとフォローしましょう。

 昨年特別上映会で観たセウォル号関係のドキュメンタリー「ダイビング・ベル」が10月1日から横浜のシネマ・ジャック&ベティ(→コチラ)で公開。例の釜山国際映画祭の紛糾のモトとなった作品です。昨年見逃した方はどうぞ。
   
「朝鮮日報」9月23日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
。)  「ウルフパック」
   映画で育った子供たち ★★★☆


 「僕一人で休暇」

   かくも切ない執着とは・・・ ★★★

 「僕一人で休暇」は韓国のロマンス。カンジェ(パク・ヒョックォン)の趣味は写真を撮ることですが、独りで楽しむ趣味なので妻(キム・スジン)は不満を募らせています。済州島に独り写真を撮りに行ったカンジェは、そこで仲良く見える家族にカメラを向けると、そこにいたのは初恋の相手シヨン(ユンジュ)。シヨンを忘れられなかったカンジェは、10年間彼女を追い、ひそかに見守り続けていたのでした。その後会社にも家にもシヨンの姿が見えなくなり、不安になったカンジェはシヨンの家のベルを押してしまいます・・・。「ウルフパック」は以下の記事の中で紹介しています。

         ★★★ NAVERの人気順位(9月27日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.39(75)
②(2) 影たちの島(韓国)  9.38(87)
③(4) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.30(1,042)
④(5) 私たち(韓国)  9.23(926)
⑤(7) オーヴェという男  9.12(1,274)
⑦(-) 映画 ビリギャル(日本)  9.12(245)
⑧(8) マイケル・ムーアの世界侵略のススメ  9.03(145)
⑨(-) 国家代表2(韓国)  8.79(4,587)
⑩(-) ニュースの真相  8.76(174)

 今回の初登場は⑦と⑩の2作品です。
 ⑦「映画 ビリギャル」は、私ヌルボ観てないのでなんとも・・・。設定自体にほとんど興味がわかなかったので・・・。<ぴあ映画生活>に「頭の悪い女子高生が頑張って慶大に合格する話。へー、だから何?」というクチコミがありましたが、そこまではけなしませんが・・・。(慶大合格よりも、達成感・自信感が得られるのはいいと思います。) 韓国題「불량소녀, 너를 응원해!(不良少女、おまえを応援する)」です。原題の語感までは翻訳不能か?
 ⑩「ニュースの真相」は、日本でも8月に公開され、現在も上映中。韓国題は「트루스」です。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(-) キャロル  8.96(13)
②(1) アガシ(韓国)  7.68(18)
③(2) 私たち(韓国)  7.66(14)
④(4) 密偵(韓国)  7.50(12)
⑤(5) ナショナル・ギャラリー 英国の至宝  7.50(4)
⑥(6) ディーブ  7.35(5)
⑦(7) トンネル(韓国)  7.21(14)
⑧(-) ウルフパック  7.20(5)
⑨(8) ヒッチコック/トリュフォー  7.17(6)
⑩(9) 影たちの島(韓国)  7.14(7)

 ⑧「ウルフパック」だけが今回の新登場です。サンダンス映画祭ドキュメンタリー部門を受賞したアメリカの作品です。ある日ニューヨーク・マンハッタンに、腰までの伸びた髪、顔に仮面をかぶったまま不安そうに見回しながら怪しい行動を見せる少年が現れました。驚くべきことに、その15歳の少年ムクンダ・アングロは、家の外に初めて出てきたと言い、また自分を含め7人兄妹が家族以外の人と話をしたこともないと告白します。低所得者用アパートに住む彼らは両親の教育方針により彼らは14年間アパートから出ることを許されず、その間5千本以上の映画を見てお気に入りの作品の真似などをして遊んだりしていたとか・・・。たまたまこのドキュメンタリーの撮影が入ったことで、兄弟たちは外へ出る機会を増やしていくのですが・・・。今年5月観た「ルーム」もそうでしたが、いまもどこかで長く監禁されている人が何人もいそうな気がしますね。オフィシャル・トレーラーは→コチラ。韓国題は「더 울프팩」。日本公開は未定のようです。あ、Netflixで見られるとのことです。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績9月23日(金)~9月25日(日) ★★★

         「密偵」が3週連続トップ
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・・・累計観客動員数・・・・・・累積収入・・・・上映館数
1(1)・・密偵(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・458,767 ・・・・・・・・・・・6,895,161 ・・・・・・・・56,657・・・・・・・・・1,105
2(2)・・ベン・ハー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・191,514 ・・・・・・・・・・・1,226,406 ・・・・・・・・10,118 ・・・・・・・・・・653
3(3)・・マグニフィセント・セブン ・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・104,731・・・・・・・・・・・・・880,101 ・・・・・・・・・7,331・・・・・・・・・・・543
4(19)・・アイアムアヒーロー(日本)・・・・9/21・・・・・・・・・・・100,632・・・・・・・・・・・・・147,120 ・・・・・・・・・1,272・・・・・・・・・・・263
5(4)・・古山子、大東輿地図(韓国)・・・・9/07・・・・・・・・・・・・49,613 ・・・・・・・・・・・・・948,879 ・・・・・・・・・7,631・・・・・・・・・・・394
6(28)・・ブリジット・ジョーンズの日記・・9/28 ・・・・・・・・・・・41,226 ・・・・・・・・・・・・・・47,411・・・・・・・・・・・416・・・・・・・・・・・349
       ダメな私の最後のモテ期
7(新)・・ハドソン川の奇跡 ・・・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・・41,118・・・・・・・・・・・・・・43,135・・・・・・・・・・・400 ・・・・・・・・・・・343
8(5)・・アリス・イン・ワンダーランド・・・・9/07・・・・・・・・・・・・30,897・・・・・・・・・・・・・502,167 ・・・・・・・・・4,066・・・・・・・・・・・267
       ~時間の旅~
9(6)・・ロック・ドッグ ・・・・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・・29,861・・・・・・・・・・・・・204,326 ・・・・・・・・・1,610・・・・・・・・・・・314
10(新)・・対決(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・9/22・・・・・・・・・・・・15,981・・・・・・・・・・・・・・23,089 ・・・・・・・・・・・180・・・・・・・・・・・366
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 秋夕の連休が終わって客足激減は致し方のないところか。「密偵」もかなり勢いが鈍りましたが、3週連続トップで累計700万人は目前に。
 今回の新登場は6・7・10位の4作品です。
 6位「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」は、人気シリーズの第3作。テレビ局の敏腕プロデューサーになったブリジット(レニー・ゼルウィガー)ですが、独身のままでいつしかアラフォー。ある日彼女はハンサムで性格もいいIT企業の社長ジャック(パトリック・デンプシー)と出会い、以後急接近。その一方でかつて愛した男マーク(コリン・ファース)とも再会し、結局2人の男性の間で揺れ動く彼女・・・。韓国題は「브리짓 존스의 베이비」。日本公開は10月29日です。
 7位「ハドソン川の奇跡」は、日本では少なくとも公式日程では韓国より先に9月24日に公開れてます。韓国題は「설리:허드슨강의 기적」と、「ハドソン川の奇跡」」の前に主人公の名前サリーが入っています。原題はその「SULLY」だけなんですけどね。
 10位「対決」は、韓国のアクション。就活中といっても就職はとうにあきらめたと達観力している(?)のプンホ(イ・ジュスン)は、タイマンゲームで小遣いを稼ぐのが楽しいという若者。しかし兄のガンホ(イ・ジョンジン)はそんな弟がナサケなくてしかたないという刑事。そのガンホが、ゲームで出会った同士がタイマンゲームで起きた殺人事件を捜査していて現場に出動しますが、残忍な手口で相手にやられてしまいます。プンホは兄の復讐のために犯人を追いかけ、ゲーム会社のCEOハン・ジェヒ(オ・ジホ)にたどり着きますが・・・。原題は「대결」です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(5)・・アイアムアヒーロー(日本)・・・・・・・9/21・・・・・・・・・・・・・100,632・・・・・・・・・・147,120 ・・・・・・・・・・・1,272 ・・・・・・・・263
2(3)・・カフェ・ソサエティ・・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・・・・15,415 ・・・・・・・・・・・94,022・・・・・・・・・・・・・788 ・・・・・・・・120
3(新)・・ボーン・トゥ・ダンス ・・・・・・・・・・・・9/22・・・・・・・・・・・・・・12,631 ・・・・・・・・・・・16,515・・・・・・・・・・・・・113 ・・・・・・・・176
4(1)・・ロビンソン・クルーソー・・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・・・10,371 ・・・・・・・・・・127,690・・・・・・・・・・・・・981 ・・・・・・・・128
5(18)・・映画 ビリギャル(日本)・・・・・・・・・9/21・・・・・・・・・・・・・・・7,617 ・・・・・・・・・・・11,030・・・・・・・・・・・・・・89 ・・・・・・・・128

 今回の新登場は3位と5位の2作品です。
 3位「ボーン・トゥ・ダンス」は、プロのヒップホップダンサーを目指す若者の熱き戦いを描いたニュージーランド映画。地元のダンスチームに所属している青年トゥはプロのヒップホップダンサーを夢見ていました。ある日彼は全国的なダンスチームであるK-Crewのオーディションを受けるのですが、それを裏切りと思って地元チームや親友からは反発を受けてしまいます。複雑な状況の中、トゥはK-Crewのリーダーの彼女に思いを寄せてしまって・・・。この複雑な状況で動く心。トゥが下した決断とは・・・。韓国題は「뉴 스텝업: 어반댄스」。日本では10月1日にDVDが発売されます。
 5位「映画 ビリギャル」については上述しました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ④判別がむずかしい<史実>と<虚構>の間

2016-09-23 19:50:42 | 韓国映画(&その他の映画)
 → 多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ①<進歩系>映画と<保守系>映画
 → 多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ②昨年来日本統治期を背景とした作品が増えている
 → 多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ③韓国では、日本統治期の見方が変わりつつある(?)

 前回の記事から3ヵ月以上も経ってしまいました。なんと言うか、・・・なんとも言えません。じつは、このシリーズの本論というべき部分はここからなんですけどね。つまり今までは序論。(←なんてこった!) まあその、今回のテーマ自体がむずかしくて・・・(汗)

 で、今回のテーマの<史実>と<虚構>の間なんですが、映画では巧く「接ぎ木」されているわけだから、ふつうの韓国人でも見分けがつかない点が多々あります。いや、それよりも映像化されると、なんとなくフィクション部分も事実と思われそうなので、それが心配
 
 てなわけで、一応わかりやすいところで、主な登場人物が実在する人物か否かについて。

 まず、チョン・ジヒョンハ・ジョンウイ・ジョンジェ等の人気俳優が演じた登場人物は皆架空の人物、イ・ジョンジェが扮したヨム・ソクチンという人物は廉東振(ヨム・ドンジン.1902〜50)(→ウィキペディア)がモデルという話が・・・。名前も似てるし、そういうことでしょう。経歴等は重なる点もある程度かな?
 
 1911年の冒頭シーンで登場する寺内正毅はもちろん初代朝鮮総督。そして李完用は朝鮮を日本に売った親日派、というよりも第1の売国奴!として有名。またこのシーンの舞台のソンタクホテル(Sontag Hotel.손탁호텔)(右画像)も徳寿宮の裏手(西)に実在したホテル。
 ※このホテルの名は支配人のドイツ人女性アントニット・ゾンタクの名前から命名。彼女は閔妃(明成皇后)・高宗と密接な関係があり、露館播遷を仕切ったりもした人物で、このホテルも高宗の力添えで1902年建てられたが1923年に撤去し新築。しかし朝鮮戦争で焼失した。
 ・・・というわけで、人物と建築物は実在。でも冒頭シーンで展開される<活劇>はフィクションです。
 またこのシーンで「この映画では李完用が流暢に日本語を話すが、実際の李完用は日本語があまりできなくて、常に通訳に依存しなければならなかった。ただし英語は非常に流暢で、日本の官僚とはだいたい英語で会話したという」と指摘しているのは<ナムウィキ>の「暗殺」の項目(→コチラ)。

 登場する歴史上の人物で、一番知られている人物が金九。李承晩が批判されてアメリカに戻った後の大韓民国臨時政府のリーダー。(1940~47年は主席。)
 私ヌルボ、今年6月に龍山からわりと近い孝昌(ヒョチャン)公園に行ってきました。
 公園の入口付近の横断幕を見ると・・・。
 「孝昌公園に誰がいらっしゃるかご存知ですか? 大韓民国国民なら知っていなければなりません!」と記されています。
 公園内には金九だけでなく、李奉昌(イ・ポンチャン)等、他の独立義士たちの墓もあります。
 そしてこの建物は・・・。
 金九についての資料・事蹟等を展示している白凡記念館。おりしも校外学習で見学に訪れた女子高の生徒たちが10時の開館を待っていました。(「白凡(ペクボム)」は金九の号。)

 映画の最初の方で、その金九の登場シーンがあります。1933年、場所は中国の杭州。なぜ杭州なのかというと、1919年上海で結成された臨時政府は、満州事変以降の日本の侵略によって32年以降は光復(終戦)時の重慶まで各地を転々としていて、32~35年は杭州にあったから。
       
 白凡記念館の階段。これによると1933年に嘉興に移っていますが・・・。
 そして、この杭州のシーンで金九と話をしている人物が金元鳳(キム・ウォンボン.김원봉)。(特別出演のチョ・スンウが儲け役!)
 おー、彼こそがこの記事のメイン!・・・のはずだったのに、もう字数が・・・。

 ということで、金元鳳については次の記事に回すことにします。ふー。
 その代わりに、上述の<ナムウィキ>の「暗殺」の項目(→コチラ)と、→コチラ)の韓国記事に書かれていたこの映画と史実をめぐるトリビアの主なものを列挙しておきます。

○チョン・ジヒョン等の話す言葉が現代口語で、植民地時代に合っていない
○上記の冒頭の<活劇>シーンと一応ダブるのは、1910年12月27日、安重根のいとこの安明根(アン・ミョングン)寺内正毅総督暗殺を計画したが事前に発覚し逮捕された事件。つまりあんな<活劇>はなかった。
○満州韓国独立軍の駐屯地でのアン・オギュン(チョン・ジヒョン)の服が新品のようにキレイすぎ、飢えていた痕跡もない。また独立軍は1921年6月の自由市惨変(→ウィキペディア)で壊滅し、東北抗日聯軍(→ウィキペディア)も1936年中国共産党の指導の下に結成されたことを勘案すれば、中隊レベル(140人程度)が満州に駐屯することも難しい。とても日本軍と交戦をする状況ではなかった
○アンオギュンたち3人が記念写真を撮った場面で壁にかかっていた太極旗は光復以降の太極旗で、当時のものではない。
○アン・オギュンたち3人が京城駅に到着した時。午後6時の時報とともに国旗(日章旗)下降式を行うといったことはなかった。(「国際市場で逢いましょう」の1場面を想起させる。) 駅構内の放送が不自然、というか、当時はそのような放送設備はなかったはず。また京城駅駅名の英字表記がKEIZYOとなっているが、日本の駅名表示方式(ヘボン式)ではKEIJÔが正しい。
○三一独立運動の時はわからないが、1930年代に日本の軍人が京城の街中で民間人を即決銃殺する場面は論外。いくら日本軍人でも殺人罪で処罰されるだろう。
関東軍の旭日旗が陸軍ではなく海軍の旭日旗になっている。
○いくら輸入車が多かったにしても、すべての車両が左ハンドルというのは問題。日本軍のトラックまで左ハンドルということはないだろう。


 ・・・いやー、細かなところまでチェックを入れる人は日韓ともにけっこういるものです。旭日旗の陸軍と海軍の違いなんて、日本人のどれくらいが知っているのだろう? あ、ヌルボのサークル仲間諸氏は知ってそうだな。

 → ⑤韓国でようやく知られ始めた金元鳳(キム・ウォンボン)と義烈団
 → ⑥「日本軍により3469人が殺された事件」というのは何だ?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [9月16日(金)~9月18日(日)]

2016-09-21 19:28:50 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 この夏、韓国映画業界は期待の大作が次々にヒットしてずいぶん盛り上がりました。8月末から今月にかけてその総括記事が各紙に載っています。
 9月19日の「朝鮮日報」の記事(→コチラ.韓国語)は見出しからして「今夏だけで観客3600万人・・・韓国映画が完勝した理由は」ですからねー。7~8月の総観客数5568人中、韓国映画は3611万人で65%を占めたとのこと。自国映画占有率が20~40%くらいで推移している仏・伊・英の各国と比較したグラフも載っています。まあ以前から全世界で自国映画のシェアが50%を越える国は米国、インド、中国、日本、韓国の5ヵ国だけなんですけどね。で「完勝の理由」というのは大企業(ロッテとCJ)が映画業界に参入し、後発のショーボックス、NEWも含め4大配給会社の競争が好結果を生んでいる(製作方式・運営の透明化等)とのこと。ただ、近ごろは観客動員1千万人を超える<大当たり(テバク)>映画は増えているが、300~500万人程度の<中当たり(チュンバク)>が減っているのが残念とか。

 その今夏の<大当たり>映画ですが、これまで本ブログでも紹介してきた次の画像の4作品です。
 上段左が「釜山行き」、右が「仁川上陸作戦」、下段左が「徳恵翁主」、右が「トンネル」と、7月20日の「釜山行き」を皮切りに以後この順で4週続けて順次公開されました。
 これらについて9月7日の「朝鮮日報」に「今夏の韓国映画ビッグ4、最終勝者は?」という見出しの記事がありました。(→コチラ.韓国語)。右の表はその記事の中にあったものの一部。<最終勝者>は、観客動員数で唯一1千万人超えた「釜山行き」が「おもしろさ」でも他を圧倒して文句なしといったところ。「韓国初のゾンビ映画」ということですが、韓国社会の実相とある意味相性がいいのかも。あのセウォル号事件で船が沈みつつあるのに「だいじょぶだからそのまま部屋にいなさい」と放送されたのと似たようなことは昨年のMERSコロナウイルス蔓延や、今回の地震騒ぎの中でもある高校でもあったそうだし・・・。以前→コチラで紹介したチョン・ユジョンの「28」という伝染病蔓延パニックを描いたホラー小説とも関連性がありそうです。
 他の3作について。「仁川上陸作戦」は<クッポン(국뽕)>(=過度の愛国主義)映画といわれてました。たまにこの手の作品は登場し、それなりに集客力はあるようです。「徳恵翁主」は、対馬の元領主・宗家の当主と政略結婚し、生涯の大半を心の病とともに送った悲劇のお姫様(高宗の娘)を独立運動の支援者のように描いた<歴史歪曲>が一部で取り沙汰されました。突然の崩落事故でトンネル内に閉じ込められた男の話「トンネル」も、救出劇だけでなくやはり政治やメディアの対応も含めたパニック映画。事実に基づく「チリ33人 希望の軌跡」とは雰囲気は違う感じ。・・・って、私ヌルボ、以上4作品全然観てないんですけど。(無責任!)
 あ、一番印象に残った俳優は「トンネル」のハ・ジョンウを抑えて「釜山行き」のマ・ドンソクというのは「!」 たぶんどちらも日本公開ありそうな感じ。早く観てみたいものです。「仁川~」は日本公開どうかな? 「徳恵翁主」はなさそう?

 「朝鮮日報」の「封切映画 ぴったり10字評」は先週掲載されませんでした。

         ★★★ NAVERの人気順位(9月20日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.42(72)
②(3) 影たちの島(韓国)  9.38(84)
③(4) ドロップ・ボックス(韓国)  9.32(90)
④(5) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.30(920)
⑤(6) 私たち(韓国)  9.24(911)
⑥(-) 一死覚悟(韓国)  9.16(240)
⑦(7) オーヴェという男  9.12(1,264)
⑧(-) マイケル・ムーアの世界侵略のススメ  9.03(115)
⑨(-) サフラジェット  8.96(425)
⑩(8) 劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~(日本)  8.92(106)

 入れ替わりや順位変動はありましたが、本ブログ新登場の作品はありません。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(2) アガシ(韓国)  7.68(18)
②(3) 私たち(韓国)  7.66(14)
③(4) ドロップ・ボックス(韓国)  7.66(1)
④(5) 密偵(韓国)  7.50(10)
⑤(6) ナショナル・ギャラリー 英国の至宝  7.50(4)
⑥(8) ディーブ  7.35(5)
⑦(9) トンネル(韓国)  7.21(14)
⑧(-) ヒッチコック/トリュフォー  7.17(6)
⑨(-) 影たちの島(韓国)  7.14(7)
⑩(-) 釜山行き(韓国)  7.10(17)

 コチラのランキングも入れ替わりや順位変動はありましたが、新登場の作品はありません。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績9月16日(金)~9月18日(日) ★★★

         「密偵」の独走が続く
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・密偵(韓国)・・・・・・・・・・・・・・9/07 ・・・・・・・・・2,061,343 ・・・・・・・・・6,048,476 ・・・・・・・・49,974・・・・・・1,368
2(44)・・ベン・ハー・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・594,486・・・・・・・・・・・897,235 ・・・・・・・・・7,564・・・・・・・・717
3(新)・・マグニフィセント・セブン・・9/14 ・・・・・・・・・・391,115・・・・・・・・・・・679,524 ・・・・・・・・・5,752・・・・・・・・579
4(2)・・古山子、大東輿地図(韓国)・・9/07 ・・・・・・・・297,608・・・・・・・・・・・852,257 ・・・・・・・・・6,896・・・・・・・・536
5(3)・・アリス・イン・ワンダーランド・・9/07 ・・・・・・・・134,291・・・・・・・・・・・447,619 ・・・・・・・・・3,639・・・・・・・・392
       ~時間の旅~
6(46)・・ロック・ドッグ ・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・119,044・・・・・・・・・・・168,601 ・・・・・・・・・1,337・・・・・・・・399
7(4)・・月光宮殿(韓国) ・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・48,067・・・・・・・・・・・138,018 ・・・・・・・・・1,047・・・・・・・・275
8(8)・・ロビンソン・クルーソー ・・・9/07・・・・・・・・・・・・42,447 ・・・・・・・・・・114,860 ・・・・・・・・・・・885・・・・・・・・181
9(5)・・おもちゃが生きている・・・・9/07・・・・・・・・・・・・42,281・・・・・・・・・・・131,232 ・・・・・・・・・1,026・・・・・・・・216
10(34)・・アイカツ!ミュージックアワード・・9/14・・・37,470・・・・・・・・・・・・61,382 ・・・・・・・・・・・417・・・・・・・・344
       みんなで賞をもらっちゃいまSHOW !(日本)
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 9月14~18日は秋夕で5連休とあって映画館に足を運んだ人が多く、全体的に数字が増えていますが、とくに「密偵」は週末だけで200万人を超えて独走状態。累計でも600万人突破。この勢いがどこまで続くか注目。
 今回の新登場は2・3・6・10位の4作品です。
 2位「ベン・ハー」は、もちろんアカデミー賞11部門を受賞したあの1959年のウィリアム・ワイラー監督作品のリメイク。あれを観た感動を知る人は、どんなに巧く作っても超えられないと思うのでは? 私ヌルボもその1人。「ベン・ハー」と聞いただけであのミクロス・ローザ作曲の美しいテーマ曲が甦ってきますぞよ。韓国題は「벤허」。日本公開は来年です。
 3位「マグニフィセント・セブン」は、「七人の侍」のリメイクというか、いや「荒野の七人」のリメイクか。西部劇だし・・・。やっぱりハリウッドは作品の素材が払底してるのかな? 志村喬→ユル・ブリンナー、そして半世紀以上経って今度はデンゼル・ワシントンか。彼ももう60代か、ふうん。最初に観た「遠い夜明け」は本当に感動的だったな・・・。と、これまた感懐に耽ってしまいます。韓国題は「매그니피센트 7」。日本公開は来年1月27日です。
 6位「ロック・ドッグ」は、アメリカ・中国合作のアニメ。主役はワンちゃんのボディ。臆病な羊が集まって暮らす雪の村の警備犬ボディは 歌っている時が一番幸せ。 お父さんのカンパと狼から村を守っていたある日、たまたま空から落ちラジオを拾うと世界的トップスターのアンガスの声。それに勇気を得て町に行き、紆余曲折の末に偶像アンガスに会ったものの喜びも束の間、みすぼらしい姿の彼は門前払い。さらに雪の村を狙うオオカミの群れの標的にされて追われして踏んだり蹴ったり。まあそこからの逆転はお約束ですから、たぶん。
韓国題は「드림 쏭(ドリーム・ソング)」。日本公開はない、かな?
 10位「アイカツ!ミュージックアワード みんなで賞をもらっちゃいまSHOW !」は、「2012年にデジタルカードゲームとしてリリースされ、テレビアニメ版も子どもたちから人気を集めている」というもので、女子小学生を中心に人気なのだそうですけど、私ヌルボ今初めて知りましたがな。遠い世界だなー。<アイカツ>は何かと思ったら<アイドル活動>のことなのか、はあ~・・・。韓国題は「아이엠스타 뮤직어워드」です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(2)・・ロビンソン・クルーソー・・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・・・42,447 ・・・・・・・・・・114,860・・・・・・・・・・・・・885 ・・・・・・・・181
2(1)・・おもちゃが生きている ・・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・・・42,281 ・・・・・・・・・・131,232・・・・・・・・・・・1,026 ・・・・・・・・216
3(8)・・カフェ・ソサエティ・・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・・・・33,641 ・・・・・・・・・・・56,796・・・・・・・・・・・・・493 ・・・・・・・・188
4(3)・・最悪の1日(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・8/25・・・・・・・・・・・・・・・4,050・・・・・・・・・・・・75,797・・・・・・・・・・・・・600 ・・・・・・・・・36
5(6)・・アイアムアヒーロー(日本)・・・・・・・9/21・・・・・・・・・・・・・・・3,689 ・・・・・・・・・・・10,332・・・・・・・・・・・・・・72 ・・・・・・・・・22

 また先週のデータと矛盾が・・・。いまだに理由がわからず。
 5位「アイアムアヒーロー」だけが初登場ですが、日本映画でもこれは未見なのでなんとも・・・。ゾンビ映画というと「釜山行き」の方に意識が向かってしまうもので・・・。韓国題は「아이 엠 어 히어로」です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「貧困のため」よりも大きな理由は? 韓国の海外養子、赤ちゃんポストをめぐる事情②

2016-09-20 16:36:05 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
1つ前の記事では「Twinsters ~双子物語~(트윈스터즈)」というドキュメンタリー映画と、それに関連して韓国の海外養子について「近年減ってきてはいるが課題は依然多く、また新たな問題も生じている」といったことを書きました。

 今回は、それと関連して「ドロップ・ボックス(드롭박스)」というもう1つのドキュメンタリー映画を紹介します。今年5月から韓国で上映され、観客・映画評論家から非常に高い評価を受けているアメリカ・韓国合作の作品で、監督はアメリカのブライアン・アイヴィー監督です。
 タイトルの「ドロップ・ボックス」とは、2009年ソウル市冠岳区蘭谷洞にある主サラン共同体教会に設けられた韓国最初の赤ちゃんポストのこと。日本で熊本市の慈恵病院というカトリック系の病院に「こうのとりのゆりかご」という名称で赤ちゃんポストが開設されたのが2007年ですからその2年後です。つまり諸事情のため育てることのできない新生児を親が匿名で特別養子縁組をするため韓国では最初に設置されたものです。(※一般的には<ドロップ・ボックス>ではなく<ベイビー・ボックス(베이비박스)>という。)
 この作品はそこのイ・ジョンナク牧師の話です。といっても、内容は彼の日常よりも子どもたちに重点が置かれています。薬を服用していた女子中学生が産んだ子供とか、障碍を持った子供とか・・・。
 (※ベイビー・ボックスはその後もう1ヵ所京畿道軍浦市のセ(新)カナアン教会に設置され、現在はその2ヵ所とのこと。)

 実はこの映画も私ヌルボは観ていません。しかしいろいろ関連情報を探して読んでみると、国際養子の問題とも関連する諸問題があることが見えてきました。
 まず驚いたのは「2009年の開設以来約800人の命を助けた」というその数の多さです。日本では2007年の運用開始から8年間で合計112人とのこと。ということは、なんと日本の約10倍にもなるではありませんか!
 (ここで「なんだ、海外養子の多さといい赤ちゃんポストといい、韓国人はずいぶん無責任だな」と<嫌韓>方面に直行するのは早計に過ぎます。)

 右の表を見ればわかるように、この韓国のベイビー・ボックスに託された赤ちゃんの数は最近とくに急増しています。以下その背景を探ってみました。

 上述のように、この「ドロップ・ボックス」という映画に対する評価は高く、<NAVER映画>でネチズン90人の平均評点が9.32、観客の評点は9.91に上り、コメントも好意的なものばかりです。しかし世論は必ずしもベイビー・ボックスに肯定的なものが大多数とはいえないようです。つまり「赤ちゃんを捨てることを助長するような環境を作ってはいけない」というのがその理由です。

 政府もまたベイビー・ボックスに否定的です。というのは、子どもの権利条約ハーグ国際養子縁組条約に示された「子どもが自分の親について知りたいと思うのは当然の権利」という理念を重視して前の記事でも記したように養子縁組特例法(2012年)を制定し、養子縁組に際しては出生届等の手続きを義務づけたわけですから、そうした必須の手続きを経ないベイビー・ボックスは認められないというものです。ただ法的な問題等のため強制的な閉鎖には乗り出していませんが・・・。

 ところが、依然として未婚の母に対する差別が深刻な社会で養子縁組の手続きのハードルを高くすると、当の未婚の母はベイビー・ボックスの他にどんな選択肢があるのでしょうか?
 なんらかの形で赤ちゃんを「遺棄」するか、自分あるいは子どもの命を絶つといったはるかに悲惨なことになってしまいそうです。
 ※ここで私ヌルボ、업둥이(オプトゥンイ)という言葉があることを初めて知りました。(主として子どものいない老夫婦等の)家の前に捨てられた赤子のこと。「ふつうその家で育てられることになる」そうです。しかし、この頃は人間の赤ちゃんよりももっぱらイヌやネコについて用いられている言葉のようです。

 さて、「依然として未婚の母に対する差別が深刻な社会」と書きましたが、具体的にはどのようなものでしょうか? 
 たとえば2013年4月の「ハンギョレ」の記事(→コチラ.韓国語)。
 (たぶん役場の窓口で、担当職員が)「子供のお父さんは? え、未婚の母ですって?」と声を高めると、人々の視線が突き刺さった
・・・とか、
 1人で出産の準備のために役場と保健所を行き来していると、行く先々で「なぜシングルマザーになったのですか?」という質問が続いた
・・・等々。
 統計庁の調査資料によれば2000年に11万7千人だったシングルマザーは2010年に16万6千人余りと5万人近く増えましたが、2009年に430人の未婚の母を対象に行った調査では、彼女たちに対する偏見・差別は「非常に深刻=30.7%、深刻=58.3%、ほとんどない=9.0%、全然ない=2.0%」と全体の9割は「深刻だ」と答えています
 この「ハンギョレ」の記事では、4月の臨時国会で包括的差別禁止法が可決されれば、シングルマザーも差別と偏見から保護を得るようになり、ある組織の代表は「法が成立すると、教育課程の中でも未婚父・母の家を多様な家庭の1つの形として提示したり、企業は未婚の母をむやみに解雇できなくなり、10代の未婚の母は学校から追い出されず学習権を保証される等、制度が改善されるだろう」と予想しています。
 ところが2016年1月の「女性新聞」の記事(→コチラ.韓国語)を読むとあいかわらず厳しい状況は続いているようで、仕事に就いている人は51%に留まっています。シングルマザーであることを理由に就職できなかったり、あるいは保育施設の問題で仕事と育児の両立が困難だったり・・・。そのうえ公的な支援が不十分なこともあって経済的に追いつめられている人が大半のようです。
 日本でも幼い子どもを抱えて働く女性の問題がクローズアップされましたが、韓国の場合は差別・偏見、公的支援のレベルの問題等もあってさらに過酷な状況のように思われます。

 先に<嫌韓>方面の人に「海外養子」に出されたり赤ちゃんポストに託される子どもの数だけで韓国を非難するのは早計と書きました。ヌルボ思うに、批判するとしたらその数ではなく、シングルマザーに対する偏見・差別ですね。

 前の記事と続けて韓国の海外養子と赤ちゃんポスト関係の記事をいろいろ読み、考えたことを書きました。その中でもう1つ見逃してはならない事実を知りました。それはどちらのケースもその子どもたちの2割以上が障碍児ということです。「なんなんだ、この数字は!?」という驚き+憤りが・・・という反応は当然でしょうが、この件についてもいずれ何らかの形で背景を探ってみたいと思います。

★[付記①]
 日本財団が行っているプロジェクトの1つに<ハッピーゆりかごプロジェクト>があります。特別養子縁組や里親制度の普及をめざすというものですが、そこのサイト内に「韓国の未婚母支援、養子縁組を学ぶ旅」と題した2回続きの記事が掲載されています。その①(→コチラ)は「未婚母支援の団体でインタビュー」、その②(→コチラ)は「ベビーボックスと養子縁組機関でインタビュー」という内容で、その②では「ドロップ・ボックス」がある主サラン共同体教会を訪ねて取材した内容をいろいろ具体的に記しています。
 その①ではエランウォン(園? 院?)というシングルマザー支援施設を取材しています。民間団体による支援等は韓国の方が進んでいる面もあるようですね。調べてみるとエランウォンは1960年エリノア・ヴァン・リロップ(韓国名パン・エラン. 1921~2015)というアメリカ人女性宣教師が韓国で初めて開設した未婚母子支援施設とのことです。

★[付記②]
 日本の赤ちゃんポストをめぐっては、NHK<クローズアップ現代>の2015年5月の記事(→コチラ)参照。

※養子問題とか出生の秘密というと韓国ドラマではおなじみのネタですが、それも上記のような歴史的社会的状況とと関係がありそうですね。

※もしかしたら、未婚男女(とくに10代)の性意識・性行動」といったことも関係ありそうですが、そこまで調べるとなると収拾がつかなくなりそうなのであえて踏み込みませんでした。

[2021年4月14日の追記] 
 2019年「Unplanned」というアメリカ映画が作られ、翌年韓国でも公開されました。反人工妊娠中絶の活動家であるアビー・ジョンソンの実体験を映画化した作品です。タイトルのアンプランド(unplanned)は「予定外の」「無計画な」といった意味です。この映画は、韓国での観覧者の平均評点が9.62/10という高評価でした。その背景をさぐると、とくにカトリック系ではどんな事情があっても胎児は神から授かった命だから・・・ということで堕胎はあってはならないこととされています。上の記事の熊本・慈恵病院もカトリック系ですね。また養子縁組の仲介団体もカトリック関係のようです。韓国では18世紀頃からカトリックの布教活動が始まり(プロテスタント19世紀後期に宣教を開始)、教会を拠点に教育・医療等の活動を展開していきます。今韓国ではカトリックは全国民の1割で、2割を占めるプロテスタントの半分ですが、それでも日本よりもはるかに多いと言えます。このような宗教風土も養子の多さの1要因になっているのではと思われます。なお、カトリック教会は同性婚にも基本的に反対していますが、近年の時代風潮の中でそれなりの「ゆらぎ」も見られるようです。一方、アメリカ等では数十年前から女性運動の高まりの中で「産むか否かの選択は女性の権利」という主張も強くなり、現在はさまざまな主張が入り乱れているような印象を受けます。つまり、(カトリックの)宗教風土や伝統的な儒教倫理と「人権」「平等」といった新しい価値観の相克、またそれ以前に貧困や社会的な差別といった現実、それらのいくつもの要因が複雑に絡み合った問題だと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「貧困のため」よりも大きな理由は? 韓国の海外養子、赤ちゃんポストをめぐる事情①

2016-09-18 08:39:39 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
今年3月、韓国で「Twinsters ~双子物語~(트윈스터즈)」というドキュメンタリー映画が公開されました。
 英・仏・米・韓国合作のキュメンタリーで、内容は次の通りです。

 昨年あたりからいろいろ報じられているのでご存知の方も多いと思います。
 フランス国籍でロンドン在住のデザイナーの勉強をしているアナイス・ボルディエさん(画像右、だっけな?)が「あなたとそっくりのアジア系女優が動画に出てる」と教えられたのがそもそもの始まり。相手のサマンサ・フッターマンさんも1987年11月9日と自分と同じ誕生日でした。アナイスさんはロサンゼルス在住の俳優というサマンサさんとFacebookで連絡を取ります。すると2人は釜山生まれで、すぐ養子の斡旋業者によって別々に引き取られていった双子だったことが判明しました。
 2013年5月、ロンドンで26年ぶりの再会した2人は遺伝子検査を受け、100%一卵性双生児であることが明らかになります。その後この物語の映画化のためクラウドファンディングで資金を調達し、サマンサさん自身が監督となって完成したのがこの作品です。

 このドキュメンタリーの韓国版予告編を貼っておきます。

 ※日本での劇場公開はありませんが、Netflixで「双子物語」のタイトルで配信されています。(→コチラ
 [2018年9月13日の追記] この記事を書く以前に、アナイスさん・サマンサさんの共著「他人のふたご」(太田出版.2016/2)の翻訳本が刊行されていることを知りました。上述のことが当人たちによって詳しく書かれている本です。図書館で読んでみましたが、とてもスリリングで一気読みしました。

 ・・・と、いろいろ書くとさも自分も観たように思われるかもしれませんが、実は観てません。しかし梗概を読むだけでも感動する話ではありませんか!
 私ヌルボ、それにケチをつける気持ちは全然ありません。ただ、いろいろと考えざるをえない要素があるのも事実です。

 たとえば先週9月8日、「朝鮮日報」に「子犬まで海外養子に出す韓国」と題した記事が掲載されていました。ソチラの方が本記事のキッカケです。(原文は下画像または→コチラ。)
 ニューヨーク在住の歯科医師の女性による寄稿です。
 記事の要点は、近年韓国から外国に送られる犬たちに関すること。ひどい環境に置かれていた補身湯(犬鍋)用の犬を韓国や外国の動物保護活動団体が救い、主にアメリカやカナダの家庭に送っているのだそうです。筆者は「気になるのはなぜ韓国人はこんなことも責任を負わないのかという点だ」と問題提起し、韓国内で養子先を見つけるキャンペーンをすべきだと主張しています。
 私ヌルボがその記事で注目したのは、犬ではなく韓国人の海外養子について記されている以下の部分です。

 私は13歳の時家族と一緒にアメリカに来てミネソタ州で育った。当時ミネソタ州にはアメリカ人家庭の養子となった韓国の子供たちがとても多くいて、私も時々養子と思われたりした。・・・・
  1998年、金大中大統領は、海外養子に対して公式謝罪したことがある。・・・・
  6・25戦争の後は、深刻な経済的困難のため、海外養子がやむを得ない選択だっただろう。以後70〜80年代には未婚のカップルの赤ちゃんを他国に送ったりして海外養子の流れは続いた。このように海外に養子に行った子供たちが総計17万人を越えるが、世界1位だという。しかし、今経済的困難は理由にならない。韓国はすでに世界10位圏の経済大国ではないか。

 先のドキュメントの事例を考えると、たしかにほとんど奇跡に近い幸運であることは間違いないとしても、上記のように韓国人入養児(←韓国での用語)の数が「総計17万人を越えて世界1位」という点に着目すれば、そんな偶然の海外養子の双子同士の出会いが韓国人だったということは確率的には高いということになります。

 韓国では、ソウル五輪の頃から国内外で「児童輸出国」という批判に直面してきて、その後(とくに21世紀に入ってから)諸施策がとられるようになってきました。たとえば国内に4団体あるという海外養子斡旋団体が、最初から外国にではなくまず国内での養子斡旋を優先するとか、シングルマザーへの支援を強化するとか・・・。その成果(?)か、2009年の「ハンギョレ」の記事(→コチラ.韓国語)によると、1998年には年間2443人だった海外養子の数は2008年には1250人に減り、グアテマラ・中国・ロシア・エチオピアに続いて5位に後退しています。
 その後2011年に養子縁組特例法が制定され(翌年施行)、それまで養子縁組機関の判断でマッチングし委託していたのが、赤ちゃんを養子に出す場合には出生届を義務化し、裁判所が養子縁組を最終決定するようにしました。そして2013年韓国はようやく児童の基本権を最重視するハーグ国際養子縁組条約に加盟しました。(91番目の加盟国) しかし「中央日報(日本語版)」の記事(→コチラ)が指摘するように課題は依然多く、また新たな問題も生じているようです。

 そこで、もう1つのドキュメンタリー映画を紹介・・・となるのですが、とりあえずここで一区切り。

 <嫌韓>に直結しやすいネタですが、そういうつもりはありませんのでご承知おきを。(蛇足ではありますが・・・。)

 ★韓国の海外養子(入養児)については、本ブログでも2度映画関連でけっこう詳しく書いたことがありました。「冬の小鳥」の記事(→コチラ)と、「はちみつ色のユン」の記事(→コチラ)です。

 ★参考:<日刊サイゾー>の記事「実は“児童輸出大国”だった!? 韓国で「海外養子」が多いワケ」コチラ



 ★昨年10月の「中央日報(日本語版)」(→コチラ)では、中央日報系のTV局JTBCのトークバラエティ番組「非頂上会談」出演者のイタリア人モンディさんが、イタリアから母国訪問に来韓した海外養子の通訳&案内をしたこととともに、「特に先進国の政府は養子縁組の成功談を広報することよりも、子供たちを養子縁組させる必要性そのものをできるだけなくす努力をしなければならないと思う。困難な状況のために養子縁組させる必要ができれば、海外よりも同じ国で養子縁組をさせるのが理想的な解決策であろう」と正論を記しています。
 そうそう。フランスで大臣になった女性とか、スポーツで注目されている人とか「成功事例」はしばしば韓国で報道されたりしていますが、その反対の事例もかなりあるのでは? 韓国をはじめとするメディアはそれをむしろ探るべきでしょう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

[韓国語] ~것 같아요(~みたい)というアイマイ表現が韓国でも増えてるみたい

2016-09-15 14:47:17 | 韓国語あれこれ
 図書館で9月13日の「朝鮮日報」をパラパラと眺めていたら、A29面の一番下に「~같아요」という言葉、慢性病になっているのでは?」と題した投稿記事があるのが目に入りました。

 「~같아요(カッタヨ)」とは「~みたいです」「~のようです」といった意味の文末表現です。またGoogle翻訳等では「~と思います」と訳出されたりもしています。

 ※記事本文(原文)は下の画像または→コチラ参照。

 記事の内容は、およそ次のようなものです。

○最近TVなどで男女を問わず「~같아요」という語尾表現が多く、耳に障る。
○たとえば、風景を見て「멋진 것 같아요」(ステキみたい)「아름다운 것 같아요」(美しいみたい)と言ったり、感想や意見を訊くと「좋은 것 같아요」(良いみたい)「행복한 것 같아요」(幸せみたい)「슬픈 것 같아요」(悲しいみたい)と言ったりしている。はなはだしくは「아픈 것 같아요」(痛いみたい)と言う場合もある。食べ物の味についても「맛있는 것 같아요」(美味しいみたい)「매운 것 같아요」(辛いみたい)と言うのをよく聞く。
○なぜ自分が直接経験したことまで他人の話のように言ってしまうのか? 「풍경이 멋집니다」(風景がステキです)「아름답습니다」(美しいです)「행복합니다」(幸せです)「맛이 좋습니다」(美味しいです)、このように断定的になぜ言えないのだろうか?
○いつからか、青少年と若年層でこのような曖昧な表現が増え始め、以後減少するどころか、社会全体に拡大していく感じだ。私たちのほとんどが何か確信できず、自信が欠如したまま生きているためではないか。このように何気なく話す言葉が普遍化され、社会を無気力にしてはいないだろうか。もっと積極的な言葉を使って、活気に満ち堂々とした大韓民国を作ろう。


 ・・・いやあ、私ヌルボもたしかにちょっと気にはなってたこの表現。「朝鮮日報」がこの投稿を掲載したということは、やっぱり同様の認識があるということですねー。よく聞くからそれがフツーなんだろうなと思って自分でも意識的に使うようになってたみたいな・・・。(笑)
 今「것 같아요 韓国語」でググる(→結果)と、多くの韓国語関係サイトでもごく当たり前のようにこの「~것 같아요」の表現を紹介・説明しています。

 で、私ヌルボがこの記事を読んで「もしかして・・・」と思ったのは「韓国でも日本の後を追ってこうしたアイマイ・婉曲表現が増えてきているのかな?」ということ。
 日本で、やはり若者を中心として「~かな」「~みたいな」「~感じ」「~とか」「~かも」等のように文末をアイマイにぼかす表現が目立つようになってメディア等でも取り上げられたのはいつ頃だったのかな? その時にもやはり「なんではっきり言わないんだ!?」と批判する人もいましたね・・・。

 個人的にはヌルボ、本ブログの書き方にも如実に表われていますが、「~と思います(思われます)」「~ではないでしょうか?」等々のボンヤリとした表現を多用していて、断定形を用いることはまれです。それは断定できます。(笑)
 何十年も前のことですが、あるベテランの先生が「私は内心では疑問に思っていることや個人的な考えであっても、授業では「○○は△△だ」と断定的な言い方をします」と言ったことを今も覚えています。そちらの方が生徒としては明確に理解できるからとのことでした。
 ところがヌルボとしては「「坊つちやん」の作者は夏目漱石です」のような事実を述べる場合は別として「○○は△△だと思いますという言い方を意識的にしてきました。「自分はそう思うが、人によってはそう思わないだろう。では君はどう思う?」という意図を込めた表現として。

 こうしたアイマイ表現・ぼかし表現が増えた背景としては、多様な価値観を認めるという風潮があるのかもしれません。心理的には、我を通さず他者を尊重し、対立を回避する<やさしさ>の表われという面とともに、<責任逃れ>といった否定的側面もありそう思われます。(←この表現がまさにソレ。)

 こんな<時代的気分>が逆行することは考えられず、この投稿についての賛否は別として、「~같아요」という表現は今後も増えることはあっても減ることはまずないでしょう。

 ※本ブログで何度か書いた<日本と韓国の24年という年差>という持論に、この事例も含まれるかどうか?

 
※見出し中の고질병は漢字では痼疾病持病・慢性病といった意味。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [9月9日(金)~9月11日(日)]

2016-09-14 12:37:57 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 9月3日(土)品川に行った時に、例の「君の名は。」を観ようとT・ジョイPRINCE品川に入ったものの、昼頃から午後6時過ぎあたりまですべて満席! 「オーバーではなく、すさまじい大ヒットである」と前日「毎日新聞(夕)」の<シネマの休日>が書いていた通り。
 そこで9月12日(月)昼前に出直して川崎TOHOへ。それでも500席以上キャパがあるスクリーン5に100人以上入ってからなー。すごいすごい。

 ちょくちょく書いているように、およそアニメには疎い私ヌルボですが、新海誠監督作品は2013年の「言の葉の庭」を公開直後に観てます。角川シネマ新宿の小さい方のスクリーン。新宿御苑に降る雨の描写がとくに印象に残りました。で、その翌年ソウルに行った時、たまたま韓国映像資料院の建物内のシネマテークKOFAでアニメ特集をやってて、そこで「雲のむこう、約束の場所」「ほしのこえ」「秒速5センチメートル」の3作品をまとめて観てきました。右画像はその時のポスターです。
 で「君の名は。」の感想ですが、なかなか良かった。(・・・て、それだけ?) 私ヌルボ、あと数十年若かったらもっと感動してただろうな。いろんな点でスケールが大きくなって、新海監督は「カベを1つ越えた」というのはわかります。しかし、最初に観た頃の(ファン層も含めて)小ぢんまりとしたオタクっぽいフンイキの方がヌルボの性に合ってるかも。まあ今もそんな要素はあいかわらず残ってますね。そういえば<NAVER映画>のサイトで「言の葉の庭」に対する例外的な低評価のネチズンのレビューに「病的なラブフォビア(恋愛恐怖症)」と書かれてたのがあったな。たしかにオタク的妄想恋愛(笑)の気味はあるかもなー。ま、そこらへんも魅力のうちなのかもしれませんが・・・。
 この「君の名は。」は今年の釜山国際映画祭で「シン・ゴジラ」とともに上映されるとのこと。しかし、韓国での上映が待ちきれず飛行機で日本に来て観た人もいるんですよねー。→コチラ(自動翻訳)参照。

 「君の名は。」を観終って蒲田に移動。JR蒲田駅近辺に来たのはたしか石原慎太郎が衆院選に出てた時だから・・・え、1993年てか !? 石原候補が握手を求めてきたのを拒んだ記憶があるなー。(笑)
 来たついでにゴジラが上陸・遡上してきた呑川を確認。(右画像) この程度の川幅のローカルな川だと巨大化する以前のゴジラを撮るにはたしかに好都合。
 で、初めて入った蒲田宝塚で見逃がしていた「海よりもなお深く」を鑑賞。コチラは観客5人だったかな? 蒲田で観て正解の映画でした。(・・・って、どこが ?(笑))
   
「朝鮮日報」9月9日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
。)  「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」
   こんな痛快な侵攻なら ★★★★


 「密偵」

   ‘ガンホの顔’という分類 ★★★☆

 「アリス・イン・ワンダーランド ~時間の旅~」

   ハリウッド、続編の強迫? ★★★


 「古山子、大東輿地図」

   朝鮮の‘オタク’のために ★★★


 「月光宮殿」

   韓国アニメ、跳躍はいつ? ★★☆


 上掲の作品はすべて以下の記事の中で紹介しています。

         ★★★ NAVERの人気順位(9月13日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.51(61)
②(3) ズートピア  9.35(17,659)
③(6) 影たちの島(韓国)  9.34(77)
④(4) ドロップ・ボックス(韓国)  9.31(89)
⑤(2) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.29(765)
⑥(5) 私たち(韓国)  9.24(896)
⑦(7) オーヴェという男  9.13(1,246)
⑧(-) 劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~(日本)  9.02(91)
⑨(9) 内部者たち:ジ・オリジナル(韓国) 9.02(7,092)
⑩(10) シング・ストリート 未来へのうた  8.99( 3,981)

 ⑧「劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~」だけが今回の新登場です。私ヌルボ、原作本も読んでないしなー・・・。それにしても、映研、書道、百人一首等々の高校の文化系部活への注目、あと何が残ってる? 生物とか天文とか化学といった理科関係か、弁論部・新聞部とか、あ、農業高校なんかいいかも・・・と思ったら「銀の匙 Silver Spoon」というのがあったか。韓国題は「극장판 울려라! 유포니엄」です

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) キャロル  8.96(13)
②(2) アガシ(韓国)  7.68(18)
③(3) 私たち(韓国)  7.66(14)
④(4) ドロップ・ボックス(韓国)  7.66(1)
⑤(-) 密偵(韓国)  7.50(1)
⑥(5) ナショナル・ギャラリー 英国の至宝  7.50(4)
⑦(6) BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント  7.45(5)
⑧(-) ディーブ  7.35(5)
⑨(7) トンネル(韓国)  7.21(14)
⑩(8) ズートピア  7.20(5)

 ⑤と⑧の2作品が初登場です。
 ⑤「密偵」については後述します。
 ⑧「ティーブ」は20014年のヨルダン・アラブ首長国連邦・カタール・イギリスの合作作品で、日本では同年東京フィルメックスで上映されましたが、一般劇場公開はなく現在に至っています。物語の舞台は第1次大戦中のアラビア半島西部ヒジャーズ地方(当時はオスマン帝国の支配下)。遊牧民の少年ディーブはある日、イギリス人の将校に道案内を頼まれ、兄とともに彼を連れて出発します。将校は極秘の任務があるというでしたが、目的地に向かう途中で何者かに襲撃され、彼ばかりか兄も殺されてしまいます・・・。韓国題は「디브」です。これは一般公開してほしいな・・・。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績9月9日(金)~9月11日(日) ★★★

         ソン・ガンホ、コン・ユの「密偵」が1人勝ちのトップ
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(65)・・密偵(韓国)・・・・・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・1,607,742・・・・・・・・・・2,174,148 ・・・・・・・・17,716・・・・・・1,444
2(19)・・古山子、大東輿地図(韓国)・・9/07・・・・・・・219,297 ・・・・・・・・・・・300,550 ・・・・・・・・・2,386・・・・・・・・756
3(新)・・アリス・イン・ワンダーランド・・9/07・・・・・・・156,040・・・・・・・・・・・192,844・・・・・・・・・・1,581・・・・・・・・515
       ~時間の旅~
4(37)・・月光宮殿(韓国) ・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・55,004・・・・・・・・・・・・63,353 ・・・・・・・・・・・490・・・・・・・・425
5(新)・・おもちゃが生きている・・・9/07・・・・・・・・・・・・49,492・・・・・・・・・・・・59,311 ・・・・・・・・・・・458・・・・・・・・294
6(1)・・トンネル(韓国)・・・・・・・・・・・8/10・・・・・・・・・・・・46,305・・・・・・・・・7,076,076・・・・・・・・・57,179・・・・・・・・420
7(3)・・ライト/オフ・・・・・・・・・・・・・8/24・・・・・・・・・・・・41,760 ・・・・・・・・・1,081,040・・・・・・・・・・8,652・・・・・・・・329
8(新)・・ロビンソン・クルーソー・・9/07 ・・・・・・・・・・・・41,470・・・・・・・・・・・・50,214 ・・・・・・・・・・・386・・・・・・・・329
9(2)・・メカニック:ワールドミッション・・8/31 ・・・・・・・・39,190 ・・・・・・・・・・516,531・・・・・・・・・・4,169・・・・・・・・210
10(5)・・徳恵翁主(韓国) ・・・・・・・・8/03・・・・・・・・・・・・10,554・・・・・・・・・5,568,733・・・・・・・・・44,155 ・・・・・・・・272
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 4週連続1位だった「トンネル」は6位に後退し、代わってソン・ガンホとコンユ主演の「密偵」が予測通りトップに。それにしても、韓国映画の好調が続きます。
 今回の新登場は1~5位と8位の計6作品です。
 1位「密偵」は、このところ続いている日本統治期を背景にした作品。1920年代の朝鮮です。朝鮮人の警察官イ・ジョンチュル(ソン・ガンホ)は、武装独立運動組織・義烈団の後をイヌという匿名で 義烈団リーダーのキム・ウジン(コン・ユ)に接近します。2人はお互いの正体と意図を知りながらも本音を隠したまま近づきます。出処不明の情報が双方の間に漏れ出て、誰が密偵なのかわからない中で、 義烈団は日本の主要施設を破壊できる爆弾を京城に持ち込もうと企てます。そして日本の警察は彼らを追い、皆が上海に集まります。追う者たちと捕まるわけにはいかない者たちとの間に緊張感が深まる中、 爆弾を積んだ列車は国境を越えて京城に向かいます・・・。原題は「밀정」です。
 2位「古山子、大東輿地図」は、朝鮮後期に朝鮮半島全土を歩いて「大東輿地図」を完成させた金正浩(キム・ジョンホ)の物語。古山子(コサンジャ)はその号です。もしかして朴範信(パク・ボムシン)の小説「古山子」(→コチラ)の映画化かなと思ったらその通り。朝鮮の本当の地図を作成するために2本の足で全国八道を踏破した金正浩(チャ・スンウォン)は、娘のスンシル(ナム・ジヒョン)がいつの間にか16歳になるかも忘れたまま「地図に狂った人」という非難にもかかわらず、国が独占した地図を人々と分かち合いたいという思いでひたすら地図完成と木版制作に没頭します。しかし安東金氏一族と対立する興宣大院君は、権力を掌握するため彼の地図を手に入れようとします。「 歴史に記録されていない金正浩の秘められた物語」云々というから、フィクションの部分がけっこうあって、そこがキモ? しかし、韓国の人たちのほとんども彼の生涯等について誤解しているようで・・・というのは本ブログのかなり詳しい過去記事(→コチラ)と、そして→コチラの記事のコメント欄も・・・。この作品の原題は「고산자, 대동여지도」です。
 3位「アリス・イン・ワンダーランド ~時間の旅~」は、日本ではすでに7月1日から公開されています。韓国題は「거울나라의 앨리스」。
 4位「月光宮殿」は、韓国のアニメ。人間と神との間で繰り広げられる宮殿ファンタジー・アドベンチャーです。偶然昌徳宮の中の幻想の世界・月光宮殿に入ってしまった13歳の少女ヒョン・ジュリ。そこで<問題児>のリスのタラミとイケメン武士のワンに出会ったジュリは 家に帰る道を探しますが、 時間を動かす自擊漏(水時計)の鍵を持って月光宮殿を支配しようとする梅花夫人の計略で危機に直面することに・・・。原題は「달빛궁궐」です。
 5位「おもちゃが生きている」(仮)は、アルゼンチン・スペインの合作で、「瞳の奥の秘密」のフアン・ホセ・カンパネラ監督が初めて手がけた3Dアニメで、2013年アルゼンチンで大ヒットしたそうです。原題の「Metegol」とはテーブル・ゲームのサッカーのこと。主人公の少年アマデオは、サッカーが得意ないじめっ子のゴロッソとそのゲームで対決して勝ちましたが、ゴロッソはそれをずっと根に持ってしまいます。それから10年後、ゴロッソは世界的なサッカー選手となっています。しかし彼は少年時代の恨みから(!)故郷を破壊しにやって来る(!!)のです。町長は怖がって逃げ、町のすべては壊され、アマデオの(片想いの ?)彼女はヘリで連れていかれ・・・。ところが悲しむアマデオの涙がゲームの人形に落ちた瞬間、力強い逆転劇が始まります・・・。韓国題は「장난감이 살아있다」。日本公開はなさそう、かな?
 8位「ロビンソン・クルーソー」(仮)は、ベルギーの3Dアニメ。激しい嵐が吹き荒れた後、<人間>という新しい生命体を発見した島の動物たち。彼らは自分の足で歩く<人間>の到来に驚くばかり。しかし意外に親切で優しそうなロビンソン・クルーソーの魅力にはまり始めますが、ある日ロビンソン・クルーソーと同じような見知らぬ生命体が現れてロビンソン・クルーソーを脅かす・・・って一体何なんだ? 「誰も知らなかった彼の無人島生存の秘密が明かされる!」?? 韓国題は「로빈슨 크루소」。日本では劇場未公開で、レンタルDVDが出てます。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(3)・・最悪の1日(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・8/25・・・・・・・・・・・・・・・4,580 ・・・・・・・・・・・67,606・・・・・・・・・・・・・540 ・・・・・・・・・42
2(49)・・マイケル・ムーアの世界侵略のススメ・・9/08・・・・・・・・2,493 ・・・・・・・・・・・・4,343・・・・・・・・・・・・・・35 ・・・・・・・・・32
3(26)・・カフェ・ソサエティ・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・・・・・1,227・・・・・・・・・・・・・2,134・・・・・・・・・・・・・・21 ・・・・・・・・・11
4(1)・・マダム・フローレンス! ・・・・・・・・・8/24・・・・・・・・・・・・・・・1,094 ・・・・・・・・・・137,011・・・・・・・・・・・1,058 ・・・・・・・・・10
       夢見るふたり
5(10)・・海よりもまだ深く(日本) ・・・・・・・・・7/27・・・・・・・・・・・・・・・・904・・・・・・・・・・・・88,805・・・・・・・・・・・・・737・・・・・・・・・12

 2・3位の2作品が新登場です。
 2位「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」は、日本ではすでに5月公開されています。韓国題は「다음 침공은 어디?(次の侵攻はどこ?)」です。
 3位「カフェ・ソサエティ」は、今年のカンヌ国際映画祭のオープニング作品として上映されたウディ・アレン監督の新作ロマンチック・コメディ。舞台は芸能人から政治家、ギャングまでありとあらゆる人間が出入りしていた1930年代のハリウッド。そこにが飛び込んでいったのがボビー・ドーフマン(ジェシー・アイゼンバーグ)という野心ある青年。業界の有力者でもある叔父の下で働き始めたばかり彼の恋愛を通して、ハリウッドの虚実が浮き彫りになっていきます・・・。韓国題は「카페 소사이어티」。日本公開はありそうですが詳細は未定のようです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おもしろくてためになる<歴史共和国 韓国史法廷>シリーズ 6月抗争・禁乱廛権等(その2)

2016-09-10 17:37:05 | 韓国・朝鮮関係の知識教養(歴史・地理・社会等)
      

 →3つ前の記事の続きです。今回は上画像右の「なぜ禁乱廛権が廃止されたか?(왜 금난전권이 폐지되었을까?)」を紹介します。

 表紙の絵を見ると近現代でないことはわかります。日本史で言えば江戸時代半ば頃18世紀あたりが今回の法廷で取り扱われている時代です。
 では、そもそも<禁乱廛権>とは何ぞや?
 読みは<クムナンジョンクォン>、日本の音読では<きんらんてんけん>です。廛は一見塵と間違えそうですが、<てん>と読み、屋敷や店を意味する漢字。ここでは店の方です。
この4文字は<禁乱・廛権>ではなく、<禁・乱廛・権>と区切って理解するとわかりやいです。つまり「乱廛を禁止する権利」のことです。

 では乱廛とは何か?
 ・・・という前に、まず順を追って市廛(시전.シジョン.してん)という用語から説明しておきます。これは政府の統制下にある店舗のことです。政府は店舗を立てて商人に貸与し、政府が必要とする物品を調達・供給させるとともに、店舗税と商税を徴収しました。市廛商人は官庁に物品を納める見返りとして、特定商品の独占販売権を与えられました。このように政府と「持ちつ持たれつ」といった関係にあったのが市廛商人でした。
 また、これら市廛の中でもっとも規模が大きく繁盛したものが絹、紙、魚等を売る店で、後にこれらは六矣廛(욱의전.ユギジョン.ろくいてん)と総称されました。

 そこで乱廛(난전.ナンジョン.らんてん)について。
 これは政府の統制下にある市廛とは逆に、政府の許可を得ないで商売をしている露店(の商人)のことで私商(사상.ササン)ともいいます。つまり、朝鮮後期の商業発展とともに成長してきた新興商人層で、とくに18世紀以降漢城(ソウル)を始め各地で活発な商業活動を行うようになりました。

 この乱廛の台頭によって自らの商権を侵害された市廛が政府に要請して1706年(粛宗32年)獲得した権利が禁乱廛権でした。漢城(ソウル)の都城内と城外十里(約4㎞)以内の地域で乱廛の活動を規制して市廛商人に専売特権を与えるとともに、それを守らせる権利を付与したものです。

 しかし、このような権力と結びついた商業の独占権といったものは物価高の要因ともなるし、商業の自由な発展を阻害することになります。当然私商や都市窮民の反発は高まり、結局は撤廃されるのが時代の流れ。
 その結果が1791年の辛亥通共(シネトンゴン.しんがいつうきょう)とよばれる禁乱廛権を禁止する措置で、当時の左議政蔡済恭(チェ・ジェゴン)の建議を容れて正祖(右画像)により実施されました。「六矣廛以外の」というただし書き付きですが、全ての市廛の禁乱廛権を否定し、設立30年未満の市廛を廃止するという内容で、この措置は以後の商業発展のひとつの契機となったとのことです。

 ・・・と、ここまで読んで「なんだ、日本史の<楽市・楽座>と同じようなものじゃん!」と思った人は多いのでは? 織田信長が1577年安土城下で実施した、という施策。→ウィキペディアによると1549年近江の大名・六角定頼によるものが最初だそうですが、いずれにしろ正祖の時代より200以上も前。それだけ朝鮮は日本よりも商業の発展が遅れていたってことか!?と思いますが、これだけで結論付けるのは早計でしょう。今後の課題ですね。

 やっと本書の中身に立ち返って、まず登場人物の紹介から。
 この裁判の原告はキム・シジョン(左画像)、そして被告はパク・ササン(右画像)です。あ、両者とも架空の人物です。
 シジョンとササンという名の綴りは市廛、私商と同じ。わかりやすいです。(笑) つまりキム・シジョンは親から受け継いだ市廛、それも規模が大きい六矣廛で中国産の絹織物を取り扱っている商人です。
 一方パク・ササンは漢江を根拠地にしている京江(경강)商人とよばれていた商人集団の代表的存在。
 私ヌルボが「ここらへんが本書の構成の妙だな」と思ったのは、旧時代の代表を原告に、新時代の担い手を被告に設定にしている点。前の記事で旧軍人を原告、民主派学生を被告にしたように、「負けそうな側」を原告にしているのです。つまり「歴史的に敗者や正義に反する側にも言い分はある」という意図なのだろう、とヌルボとしては肯定的に理解しました。
 で、原告キム・シジョンが「役人の無理な要求にも応え、国のために代々商売をしてきたのに、乱廛がはびこって自分たちの権利を侵害しているのに、政府が禁乱廛権まで廃止するとは到底容認できない」という理由で私商の代表パク・ササンを相手取って賠償を求めたのかこの裁判というわけです。
 これに対して被告パク・ササンは、朝鮮の商業発展に寄与しているのは自分たちの方だ。市廛の方こそ権力をかさに横暴を働いてわれわれの財産権を侵害してきた」と反論します。

 双方とも仲間の商人等が証人として出廷します。原告側証人で、乱廛の取締りに当たった役人の名前がカン・タンソク(강단속)というのはちょっと笑ってしまいます。漢字だと強団束。団束は取締りの意です。
 実在の人物で登場しているのは上記の蔡済恭(チェ・ジェゴン)(右画像)=被告側証人と、1799年領議政となった老論派の李秉模(イ・ビョンモ)(左画像)=原告側証人です。※蔡済恭が手に掲げているのは死後(1824)刊行された彼の詩文集「樊巖集(번엄집)」です。

 そのやりとりを読むと、禁乱廛権廃止という施策は社会経済上の観点からだけでなく、市廛との結びつきによって利益を得ていた老論派に打撃を与えるといった意図も見えてきます。(戦国大名が楽市・楽座によって大寺社等の旧勢力に経済的打撃を加えたのと同じパターンか?) 蔡済恭は南人派の領袖。つまり反老論派で、正祖の信任を得て政治に携わった人物です
 あ、蔡済恭はドラマ「トキメキ☆成均館スキャンダル」に登場しているのですね。もちろん「イ・サン」にも・・・。とくに前者では、禁乱廛権のことがドラマの展開にも関わって出てきたようですよ。(→コチラ参照。)

 さて、いよいよ判決です。主文は・・・・
 歴史共和国韓国史法廷は原告キム・シジョンが被告パク・ササンを相手に提起した物質的・精神的損害賠償請求を棄却する。
 ・・・と、予測通りの結果。判決理由を簡略に記すと、
 禁乱廛権は人間の生活に必要な需要と供給の原則を阻害するもので、普遍的な真理に則ったものではない。したがって、資本主義と自由市場経済体制が芽生え始めた朝鮮後期には禁乱廛権を廃止することは、その時代の流れに合ったものとみられ、今回の訴訟は原告の主張は棄却するものとする。
 この「資本主義と自由市場経済体制が芽生え始めた朝鮮後期」という部分には<内在的発展論><資本主義萌芽論>といった民族史観の匂いがほのかに感じられますね。(参考→<朝鮮の歴史観>)

 以上が本書の主な内容で、結末は上記のように予想通りでしたが、ベンキョーになったのは17世紀最初のあたりからの社会の変化がいろいろ記されていること。
 とくに16世紀末の壬辰倭乱・丁酉再乱(文禄慶長の役)が朝鮮の経済や土地制度、身分制度に及ぼした影響は非常に大きく、朝鮮史の分水嶺ともいわれているとのことですが、その中で「田植えが普及して農業生産が高まり、耕作地も拡大した」と記されています。
 田植えは韓国語では移秧法(이앙법.イアンポプ.いおうほう)、あるいはモネギ(모내기)といいます。※「모」は「苗」の固有語で、모내기は「苗を移すこと」。
 この田植えの普及についての判事と被告側弁護士のやり取りは次の通りです。
 判事「移秧法が壬辰倭乱以後に普及したということは、もしかして日本から入ってきたものですか?
 弁護士「いいえ。ふつうモネギといっている移秧法は高麗時代に普及していましたが、当時は水利施設が貧弱だったので国でも勧めませんでした。灌漑施設がないとモネギの時期に日照りが続くと苗が全滅するからです。しかし壬辰倭乱後には技術が発達して移秧法は全国に拡大していきました。」
 ふーむ、このあたりにも何かありそうな気配がないでもない? ま、それは今後の課題。

[付記①] 本書中にあった「朝鮮後期の商業と貿易活動」を示す図は、1996年発行の高校国史教科書(の翻訳書)に同じものがありましたので並べて貼っておきます。
     

[付記②] 私ヌルボが上述の六矣廛(ユギジョン)という言葉を知ったのは、2012年12月ソウル市歴史博物館の展示物を見たのが最初です。その写真を貼っておきます。
 
 朝鮮第1の繁華街とされる漢城の雲従街(운종가.ウンジョンガ)。その中心部の現在の鐘閣あたりに六矣廛があったそうです。
 ※近年の発掘による遺物が2012年にオープンした六矣廛博物館で展示されているそうです。(→ソウルナビ。→innolife。) 場所はタプコル公園のすぐ東の六矣廛ビル地下。(←知らんかったな。)
 上の展示物を見ると、ずいぶん道幅が広いですね。ホンマかいな?と思っていろいろ検索すると、→コチラの<カイカイ反応通信>の記事が見つかりました。1900年当時の写真が掲載されていたので1枚拝借して貼っております。他にも店舗の写真等数枚あります。なるほど、道路はたしかに広いですね。ただ、街のフンイキは大分違うような・・・。


 生徒・児童向きとはいえ、1冊読むといろんな知識が得られるものです。教科書よりもおもしろいし・・・。しかし、また新たな疑問もいろいろ。当然とはいえ、キリがありません。ふー。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [9月2日(金)~9月4日(日)]

2016-09-08 11:01:43 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 コリアキネマ倶楽部で観た北朝鮮映画「後日の私の姿(먼 후날의 내 모습)」(1997)はいろんな意味で興味深い内容でした。いわゆる<苦難の行軍>の厳しい状況下で作られた作品で、トラクターの代用燃料として木炭ガスが用いられるとか現場の労働者がその改良に努めるとか・・・。また平壌の豪奢なアパートで暮らす革命世代3世のグータラお坊ちゃん(←日本の基準ではマジメな部類)の暮らしぶりを批判してたり、というのも現実の反映か? 1998年の平壌国際映画祭での最優秀賞(「たいまつ金賞」)受賞作だそうですが、この映画祭というのがユニークで・・・というのはまた別の話。

 北朝鮮関係では、9月24日からユーロスペースで「将軍様、あなたのために映画を撮ります」が始まります。(後日横浜のシネマ・ジャック&ベティ等でも上映。) 1978年北朝鮮に拉致され、86年ウィーンのアメリカ大使館に亡命するまで北朝鮮であの「帰らざる密使」や「プルガサリ」等の製作に携わった申相玉(シン・サンオク)監督と女優崔銀姫(チェ・ウニ)についてのドキュメンタリーで、「ふたりが密かに録音していた金正日の肉声も収められる」とのことです。公式サイトは→コチラ。多少なりとも関心がある方は「闇からの谺―北朝鮮の内幕(上・下)」(文春文庫)をぜひ読んでみて下さい。(アマゾンの値段は1円です。) 読み物としておもしろいです!
   
「朝鮮日報」9月2日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
。)  「マネーモンスター」
   「マネー・ショート」が上手 ★★★☆

 「愛と暗闇の物語」

   ナタリー、ホント欲張り ★★★


 「イコールズ」

   当代の青春俳優を確認! ★★★

 「ズーランダー NO.2」

   第1作の再上映を待つ ★★★


 「メカニック:ワールドミッション」

   「96時間」の南侵版だね ★★☆


 「SKIPTRACE/絶地逃亡」

   秋夕間近。ジャッキーだ! ★★☆

 「マネーモンスター」は日本では6月に公開済。「愛と暗闇の物語」(仮)はナタリー・ポートマンの初監督作品で昨年のカンヌ国際映画祭では特別招待作品として上映されました。イスラエルの著名な作家アモス・オズの自伝が原作で、1940年代末パレスチナに移り住んだ少年アモスとその両親の物語。詳細は→コチラ参照。日本公開は未定。「ズーランダー NO.2」はアメリカのコメディ「ズーランダー」(2001)の続編。男性スーパーモデルに殺人がからんで・・・という設定は前作同様か? 日本公開未定。「SKIPTRACE/絶地逃亡」(仮)はジャッキー・チェン主演の最新アクション。詳細は→コチラ。日本公開は年内のようです。他の作品は以下の記事の中で紹介しています。

         ★★★ NAVERの人気順位(9月6日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(-) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.6(55)
②(2) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.38(613)
③(-) ズートピア  9.35(17,620)
④(-) ドロップ・ボックス(韓国)  9.31(89)
⑤(4) 私たち(韓国)  9.24( 888)
⑥(1) 影たちの島(韓国)  9.20(49)
⑦(7) オーヴェという男  9.14(1,230)
⑧(8) 名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)(日本)  9.06(2,596)
⑨(-) 内部者たち:ジ・オリジナル(韓国) 9.02(7,075)
⑩(-) シング・ストリート 未来へのうた  8.99( 3,962)

 ①と④の2作品が本ブログ初登場です。
 ①「Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~」は、アメリカ・韓国・ネパール・インド合作のドキュメンタリー。テンジン・リグドルはチベット難民2世のアーティスト。「死ぬまでに一度、故郷チベットの土を踏みたい」という父親の遺言に突き動かされ、彼は父親同様故郷チベットの土を踏むことのできない人々のために17ヵ月間のプロジェクトを敢行します。それは20トンもの土をチベットからインドへ運ぶというもの。2000kmもの距離と50ヵ所の関門という困難を乗り越えて、土はチベット難民が暮らすインドのダラムサラに到着します・・・。この作品は9月11日(日)に長野市(→コチラ参照)で日本初上映。また9月13日(火)に東京外国語大学(→コチラ参照)で上映&劇中歌の演奏、監督のトーク等があります。韓国題は「브링 홈:아버지의 땅」です。
 ④「ドロップ・ボックス」は、韓国のドキュメンタリー。日本では2007年熊本市の慈恵病院というカトリック系の病院に「こうのとりのゆりかご」という名称で赤ちゃんポストが開設されました。諸事情のため育てることのできない新生児を親が匿名で特別養子縁組をするための施設です。韓国でも2009年ドロップ・ボックスという赤ちゃんポストが設けられました。そこは病院ではなく、ソウル市冠岳区の蘭谷洞にある主サラン共同体教会という教会。この作品はそこのイ・ジョンナク牧師の話です。といっても彼の日常よりも主に子どもたちについて。薬を服用していた女子中学生が産んだ子供とか、障碍を持った子供とか・・・。この映画を観た方のブログ記事は→コチラ。「2009年の開設以来約800人の命を助けた」とのことですが、この数字には驚きました。(以下、少し長くなりそうなので別記事にします。) 原題は「드롭박스」です

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(-) キャロル  8.96(13)
②(1) アガシ(韓国)  7.68(18)
③(2) 私たち(韓国)  7.66(14)
④(-) ドロップ・ボックス(韓国)  7.66(1)
⑤(3) ナショナル・ギャラリー 英国の至宝  7.50(4)
⑥(4) BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント  7.45(5)
⑦(5) トンネル(韓国)  7.21(14)
⑧(-) ズートピア  7.20(5)
⑨(7) ヒッチコック/トリュフォー  7.17(6)
⑩(8) 影たちの島(韓国)  7.14(7)

 本ブログの新登場は④「ドロップ・ボックス」だけですが、これについては上述しました。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績9月2日(金)~9月4日(日) ★★★

         「トンネル」が4週連続トップ
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・トンネル(韓国)・・・・・・・・・・・8/10・・・・・・・・・・・344,724・・・・・・・・・6,942,955 ・・・・・・・・56,147・・・・・・・・739
2(55)・・メカニック:ワールドミッション・・8/31・・・・・・273,896 ・・・・・・・・・・415,456・・・・・・・・・・3,342・・・・・・・・320
3(2)・・ライト/オフ・・・・・・・・・・・・・8/24 ・・・・・・・・・・・241,314・・・・・・・・・・998,656・・・・・・・・・・7,904・・・・・・・・558
4(4)・・ゴーストバスターズ ・・・・・・8/25・・・・・・・・・・・127,963 ・・・・・・・・・・479,470・・・・・・・・・・3,827・・・・・・・・459
5(3)・・徳恵翁主(韓国) ・・・・・・・・・8/03・・・・・・・・・・・100,708・・・・・・・・・5,528,972・・・・・・・・・43,863・・・・・・・・480
6(7)・・釜山行き(韓国)・・・・・・・・・・7/20・・・・・・・・・・・・57,080・・・・・・・・11,531,424・・・・・・・・・92,912・・・・・・・・328
7(5)・・-スター・トレック BEYOND・・8/17 ・・・・・・・・・・53,529・・・・・・・・・1,127,337・・・・・・・・・・9,951・・・・・・・・362
8(6)・・ペット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/03・・・・・・・・・・・・53,059・・・・・・・・・2,514,118・・・・・・・・・19,359・・・・・・・・368
9(8)・・仁川上陸作戦(韓国) ・・・・・7/27・・・・・・・・・・・・36,944・・・・・・・・・7,033,158・・・・・・・・・54,992・・・・・・・・283
10(新)・・イコールズ ・・・・・・・・・・・・8/31・・・・・・・・・・・・54,887・・・・・・・・・・・・56,266 ・・・・・・・・・・・425・・・・・・・・357
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 夏休みも終わり、韓国映画の盛況で注目された観客動員数もここにきてかなり落ちてきました。3週連続1位だった「トンネル」も勢いは鈍ってきたものの、「仁川上陸作戦」にづいて9月6日に700万人の大台に到達し、これで4週連続トップです。
 今回の新登場は2・10位の2作品です。
 2位「メカニック:ワールドミッション」は、米・仏合作のアクションで「メカニック」(2011)の続編。殺し屋稼業から足を洗い平穏に暮らしていたビショップ(ジェイソン・ステイサム)のもとに、かつて彼を裏切って逃走した兄弟子のクレイン(サム・ヘイゼルダイン)から殺しの依頼が入ります。相手にしないつもりでしたが、何の罪もない女を人質にとられたビショップは、やむなく依頼を受けることに。ターゲットとして提示されたのは、フィクサーとして世界を裏で操る3人の武器商人。ところが計画を進めるうちにビショップはクレインの企みを知ります・・・。韓国題は「메카닉: 리크루트」。日本公開は9月24日です。
 4位「ゴーストバスターズ」は、日本の方がめずらしく早くて8月19日から始まっています。韓国題は「고스트버스터즈」です。
 10位「イコールズ」は、アメリカのSF&ロマンス。
舞台はすべての感情が統制され、愛だけが唯一の犯罪とされた感情統制区域。ある日、同僚の死を目撃したサイラス(ニコラス・ホルト)は、その現場でニア(クリステン・スチュワート)の微妙な表情の変化を見て 彼女が<感情保菌者 >であることを知ります。その後ニアを観察していたサイラスは、生まれて初めて不慣れな感情を感じて 感情抑制治療を受けますが、ニアに向かう気持ちはますます大きくなっていきます。そして 初めて愛という感情を感じるようになった2人はお互いの心を確認し愛を共有しますが思わぬ危機に直面し、結局2人は脱出を決心します・・・。韓国題は「이퀄스」。日本公開はあるようですが時期は未定。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・マダム・フローレンス! ・・・・・・・・・8/24・・・・・・・・・・・・・・13,520 ・・・・・・・・・・130,733・・・・・・・・・・・1,011 ・・・・・・・・137
       夢見るふたり
2(新)・・グランドファーザー(韓国)・・・・・・8/31 ・・・・・・・・・・・・・・13,054 ・・・・・・・・・・・26,141・・・・・・・・・・・・・195 ・・・・・・・・274
3(2)・・最悪の1日(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・8/25 ・・・・・・・・・・・・・・11,078 ・・・・・・・・・・・56,857・・・・・・・・・・・・・460 ・・・・・・・・・71
4(3)・・犯罪の女王(韓国) ・・・・・・・・・・・・・8/25 ・・・・・・・・・・・・・・・2,935 ・・・・・・・・・・・40,447・・・・・・・・・・・・・318 ・・・・・・・・・45
5(5)・・愛人/ラマン ・・・・・・・・・・・・1992/6/20 ・・・・・・・・・・・・・・・2,734 ・・・・・・・・・・・14,094・・・・・・・・・・・・・108・・・・・・・・・・38

 今回の新登場は2位「グランドファーザーだけ。韓国のドラマ&アクションです。かつてベトナム戦争に参戦した軍人だったキグァン(パク・グニョン)は、工場の通勤バスの運転手をして生計を立てています。ある夜彼は長い間消息が絶えていた息子が自殺したとの知らせを聞きます。葬儀場に出向いたキグァンは、そこで息子が残した孫娘のポラム(コ・ポギョル)に会います。息子の突然の死が釈然としないないギグァンは、氷のように冷たい孫娘に対し「お父さんは自殺ではない」ことを明らかにするために全力を尽くします。その後決定的な手がかりを得たギグァンは、真実に近づくほど悲しみは怒りに変わり、そして守るべきただ1人のために命をかけて死闘に臨みます。原題は「그랜드파더」です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする