→ <참(チャム=真の)のつく言葉 ②日本語だと「本~」とか「真~」。とりあえず分類してみました。>
まず、前回の記事のリスト中日本人でもナットクできるものを拾ってみます。
참가자미(マガレイ)や참돔(マダイ)はそのまんま、日韓共通。
참개구리(トノサマガエル)も異論はないですね。しかし日本のトノサマバッタは韓国では풀무치。単に「草に埋もれている」という意味で、なんか素っ気ない感じです。
참매미(ミンミンゼミ)や참새우(クルマエビ)もまあいいか。対抗馬のクマゼミは말매미(馬ゼミ)。イセエビは、韓国人が日本に来て初めて知るというくらいだから勝負になりません。
逆に、日本人にとって疑問に思う言葉は、そこに韓国の自然・文化等の特色が読み取れたりするので興味深いところ。
まず、참새(スズメ)、참치(マグロ)、참나무(クヌギ等)、참꽃(ツツジ)等に鳥や魚や木や花を代表させていいのか?(怒)
スズメなんか威厳はないし、数をたのんだ烏合の衆だし(・・・ってあれはカラスか)、まあ「舌切り雀」みたいな昔話で親しまれて・・・は日本か、韓国では「フンブとノルブ」・・・あれはツバメだったか、まあそれだけ韓国でもごく一般的ということでしょう。
それよりも注目は참나무(クヌギ等)。もし日本で「真の木」を選ぶとしたら何になると思いますか? サクラ? あれは花がなければナンボのもんじゃいという木です(笑)。あ、葉っぱは桜餅に使うか。樹皮も趣きがあるな。ゴメンゴメン。
閑話休題。古語にまさに「真木(まき)」という言葉があります。三夕の歌の1つ、寂蓮の「(前略)まき立つ山の秋の夕暮れ」という和歌のまき(真木)です。百人一首にもあったな。(「村雨の~」) 意味は「ヒノキ、スギ等の常緑針葉樹の総称」で「良材となる木」。家屋にも、さまざまな家具や道具等に広く用いられてきました。
ところが韓国にはスギは元々ないし(ヒノキも)、主な建材はマツ。ただ気候風土のこともあって韓国の家は石や土が重用されてきたことも日韓の大きな違いです。(最近日本のヒノキが好まれているとのニュースもある。) ・・・ということもあって、참숯(堅炭)や船の建材等多くの用途があるクヌギが木の代表となっている、ということなのかな?
참꽃(ツツジ)の참は、진달래(ツツジ)の仲間の代表なのかと思ったら「食べられる花」なんですね。春先に화전(ファジョン.花箭)=季節の花を飾るチヂミを作って食べる習俗があるそうです。→コチラや→コチラの記事と写真参照。なかなか見た目もキレイです。ただ、これも참の字がつくからには食べられないものが一方になるということ。毒性の強い철쭉(クロフネツツジ)がそれ。本当に見分けがつきにくいというか、私ヌルボはわかりません。
참고래(セミクジラ)というのもなぜ참が付くのかよくわかりませんが、捕鯨の歴史を見るとセミクジラはかつて日本や朝鮮半島の沿岸からも見られるほどの近海にも出没し、遊泳速度も遅いため近世末までは捕鯨の絶好の対象として乱獲されたとのこと。つまり(日韓とも)一番身近なクジラだったということだそうです。しかし20世紀初頭にはすでに絶滅寸前の状態で、現在は絶滅危惧種になっています。(※和名セミクジラは背中の曲線の美しさに由来する背美鯨から。)
しかし、今クジラの代表格はなんといってもシロナガスクジラですよね。セミクジラを참고래とよぶのはおもしろくないかもしれません(??)が、シロナガスクジラには대왕고래(大王クジラ)という立派な韓国名が与えられています。歴代国王中1番人気の世宗大王と同格です。文句のあろうはずはありません。
ことのついでにダイオウイカもそのまま대왕오징어です。ただ、참게(チュウゴクモクズガニ)に対してタラバガニが왕게(王カニ)と대(大)の字が付いていないのはちょっとシコリが・・・。(カニのシコリでなくヌルボのシコリ。)
それよりも、カワイソーなのはイルカ(돌고래)で、これは돌などという「動植物の悪い品質や野生の物を表わす接頭辞」がつけられています。(肉が不味いからかな?)
ここで話は前回の記事の分類表に戻ります。
表では、참の付く言葉をとりあえず4種類に分けました。
しかし、もう1つ別の項目を立てた方がよさそうなのです。
3ヵ月以上も前ですが、4月6日付「朝鮮日報」を観ていたら下画像のような全面広告がありました。(下左)
Eマートの「国産の力! 5大水産物企画展」です。そこで塩引きのサバ、済州のギンタチウオ、活アワビ、イカとともに全羅南道・霊光(ヨングァン)の참굴비(チャムグルビ)というのがあります。(上右)굴비(クルビ)は조기(イシモチ)の干物でなぜか韓国では高級な食材で、霊光はその特産地として知られています。では참굴비とは何か?
以下は→コチラの記事(韓国語)の要約です。
珍島の南(済州島の北)に位置する楸子島(チュジャド)近海はイシモチ等の良い漁場ですが、島内には加工の技術や作業場が不足していたため以前から霊光方面にそのまま供給してきました。ところが2003年に加工工場が造られてクルビの生産が始まり、翌年にはEマートと提携して<楸子島クルビ>という独自ブランドで製品を供給するようになりました。そして2008年から<楸子島チャムグルビ祭>が開催され、チャムグルビを目玉に観光にも力を入れ、実際に観光客も多数訪れるようになったとか。2013年には下画像のような造形物も設置されています。
本題に戻ります。このチャムグルビという言葉は、上記のように産地の楸子島関係者(と、たぶんEマート)が商品の販路拡大と観光の振興を図って新たに創ったものです。もちろん、クルビにチャムを付けることによって「ココが本家本元!」というイメージを喚起させようというねらいです。
前回の記事で「本マグロ・本醸造・本瓦・ほんだし」の「本~」をきちんと分類・説明するとなるとむずかしい、といったことを書きました。その中に「ほんだし」がありますが、これは味の素の商品名です。やはり「ほん」によるイメージアップを図ったものです。同類のものとしてはフジパンの食パンの商品名に「本仕込」というのがあります。先の分類の【Ⅱ】で「品質が優れている」等の説明を書きましたが、今このような言葉のプラスイメージを利用して商品名・ブランド名にするという例は、日韓ともに探せば他にもあると思われます。というわけで、これが新項目です。
あ、そうそう。その代表とも言うべき商品名を1つあげておきます。辞書には載っていませんが、日本人でも多くの人が知っている商品名です。
韓国焼酎といえばまずこの참이슬(チャミスル)! 이슬=露。ということは、あの真露(진로.JINRO)をただ固有語に置き換えただけ。しかし참の語感も幸いしてか大ヒットし、今も圧倒的なシェアを誇っています。
・・・とオチがついた(?)ところでタラタラ続いた記事もようやくオシマイ。
今回もしつこくオマケ画像。7月25日付「朝鮮日報掲載の「春のメイタガレイとヨモギの汁に負けない夏の東海(日本海)のマガレイの刺身(봄 도다리쑥국 못지않은 여름 東海의 참가자미회)」という記事です。(その記事は→コチラで読めます。(韓国語))
まず、前回の記事のリスト中日本人でもナットクできるものを拾ってみます。
참가자미(マガレイ)や참돔(マダイ)はそのまんま、日韓共通。
참개구리(トノサマガエル)も異論はないですね。しかし日本のトノサマバッタは韓国では풀무치。単に「草に埋もれている」という意味で、なんか素っ気ない感じです。
참매미(ミンミンゼミ)や참새우(クルマエビ)もまあいいか。対抗馬のクマゼミは말매미(馬ゼミ)。イセエビは、韓国人が日本に来て初めて知るというくらいだから勝負になりません。
逆に、日本人にとって疑問に思う言葉は、そこに韓国の自然・文化等の特色が読み取れたりするので興味深いところ。
まず、참새(スズメ)、참치(マグロ)、참나무(クヌギ等)、참꽃(ツツジ)等に鳥や魚や木や花を代表させていいのか?(怒)
スズメなんか威厳はないし、数をたのんだ烏合の衆だし(・・・ってあれはカラスか)、まあ「舌切り雀」みたいな昔話で親しまれて・・・は日本か、韓国では「フンブとノルブ」・・・あれはツバメだったか、まあそれだけ韓国でもごく一般的ということでしょう。
それよりも注目は참나무(クヌギ等)。もし日本で「真の木」を選ぶとしたら何になると思いますか? サクラ? あれは花がなければナンボのもんじゃいという木です(笑)。あ、葉っぱは桜餅に使うか。樹皮も趣きがあるな。ゴメンゴメン。
閑話休題。古語にまさに「真木(まき)」という言葉があります。三夕の歌の1つ、寂蓮の「(前略)まき立つ山の秋の夕暮れ」という和歌のまき(真木)です。百人一首にもあったな。(「村雨の~」) 意味は「ヒノキ、スギ等の常緑針葉樹の総称」で「良材となる木」。家屋にも、さまざまな家具や道具等に広く用いられてきました。
ところが韓国にはスギは元々ないし(ヒノキも)、主な建材はマツ。ただ気候風土のこともあって韓国の家は石や土が重用されてきたことも日韓の大きな違いです。(最近日本のヒノキが好まれているとのニュースもある。) ・・・ということもあって、참숯(堅炭)や船の建材等多くの用途があるクヌギが木の代表となっている、ということなのかな?
참꽃(ツツジ)の참は、진달래(ツツジ)の仲間の代表なのかと思ったら「食べられる花」なんですね。春先に화전(ファジョン.花箭)=季節の花を飾るチヂミを作って食べる習俗があるそうです。→コチラや→コチラの記事と写真参照。なかなか見た目もキレイです。ただ、これも참の字がつくからには食べられないものが一方になるということ。毒性の強い철쭉(クロフネツツジ)がそれ。本当に見分けがつきにくいというか、私ヌルボはわかりません。
참고래(セミクジラ)というのもなぜ참が付くのかよくわかりませんが、捕鯨の歴史を見るとセミクジラはかつて日本や朝鮮半島の沿岸からも見られるほどの近海にも出没し、遊泳速度も遅いため近世末までは捕鯨の絶好の対象として乱獲されたとのこと。つまり(日韓とも)一番身近なクジラだったということだそうです。しかし20世紀初頭にはすでに絶滅寸前の状態で、現在は絶滅危惧種になっています。(※和名セミクジラは背中の曲線の美しさに由来する背美鯨から。)
しかし、今クジラの代表格はなんといってもシロナガスクジラですよね。セミクジラを참고래とよぶのはおもしろくないかもしれません(??)が、シロナガスクジラには대왕고래(大王クジラ)という立派な韓国名が与えられています。歴代国王中1番人気の世宗大王と同格です。文句のあろうはずはありません。
ことのついでにダイオウイカもそのまま대왕오징어です。ただ、참게(チュウゴクモクズガニ)に対してタラバガニが왕게(王カニ)と대(大)の字が付いていないのはちょっとシコリが・・・。(カニのシコリでなくヌルボのシコリ。)
それよりも、カワイソーなのはイルカ(돌고래)で、これは돌などという「動植物の悪い品質や野生の物を表わす接頭辞」がつけられています。(肉が不味いからかな?)
ここで話は前回の記事の分類表に戻ります。
表では、참の付く言葉をとりあえず4種類に分けました。
しかし、もう1つ別の項目を立てた方がよさそうなのです。
3ヵ月以上も前ですが、4月6日付「朝鮮日報」を観ていたら下画像のような全面広告がありました。(下左)
Eマートの「国産の力! 5大水産物企画展」です。そこで塩引きのサバ、済州のギンタチウオ、活アワビ、イカとともに全羅南道・霊光(ヨングァン)の참굴비(チャムグルビ)というのがあります。(上右)굴비(クルビ)は조기(イシモチ)の干物でなぜか韓国では高級な食材で、霊光はその特産地として知られています。では참굴비とは何か?
以下は→コチラの記事(韓国語)の要約です。
珍島の南(済州島の北)に位置する楸子島(チュジャド)近海はイシモチ等の良い漁場ですが、島内には加工の技術や作業場が不足していたため以前から霊光方面にそのまま供給してきました。ところが2003年に加工工場が造られてクルビの生産が始まり、翌年にはEマートと提携して<楸子島クルビ>という独自ブランドで製品を供給するようになりました。そして2008年から<楸子島チャムグルビ祭>が開催され、チャムグルビを目玉に観光にも力を入れ、実際に観光客も多数訪れるようになったとか。2013年には下画像のような造形物も設置されています。
本題に戻ります。このチャムグルビという言葉は、上記のように産地の楸子島関係者(と、たぶんEマート)が商品の販路拡大と観光の振興を図って新たに創ったものです。もちろん、クルビにチャムを付けることによって「ココが本家本元!」というイメージを喚起させようというねらいです。
前回の記事で「本マグロ・本醸造・本瓦・ほんだし」の「本~」をきちんと分類・説明するとなるとむずかしい、といったことを書きました。その中に「ほんだし」がありますが、これは味の素の商品名です。やはり「ほん」によるイメージアップを図ったものです。同類のものとしてはフジパンの食パンの商品名に「本仕込」というのがあります。先の分類の【Ⅱ】で「品質が優れている」等の説明を書きましたが、今このような言葉のプラスイメージを利用して商品名・ブランド名にするという例は、日韓ともに探せば他にもあると思われます。というわけで、これが新項目です。
あ、そうそう。その代表とも言うべき商品名を1つあげておきます。辞書には載っていませんが、日本人でも多くの人が知っている商品名です。
韓国焼酎といえばまずこの참이슬(チャミスル)! 이슬=露。ということは、あの真露(진로.JINRO)をただ固有語に置き換えただけ。しかし참の語感も幸いしてか大ヒットし、今も圧倒的なシェアを誇っています。
・・・とオチがついた(?)ところでタラタラ続いた記事もようやくオシマイ。
今回もしつこくオマケ画像。7月25日付「朝鮮日報掲載の「春のメイタガレイとヨモギの汁に負けない夏の東海(日本海)のマガレイの刺身(봄 도다리쑥국 못지않은 여름 東海의 참가자미회)」という記事です。(その記事は→コチラで読めます。(韓国語))