ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画の興行成績 [4月23日(金)~4月25日(日)]と人気順位 ►アカデミー賞作品賞はもっと娯楽性を重視してほしい! ►「シカゴ7裁判」と「ユダ&ブラック・メシア」の共通項

2021-04-29 18:05:00 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶アカデミー賞の結果はほぼ予測の範囲内、と言っていいのかな? 作品賞の「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督は中国生まれ、「ミナリ」のリー・アイザック・チョン監督は韓国系移民2世。共にアジア人の血を引いていますが国籍はアメリカです。(「フェアウェル」のルル・ワン監督も中国生まれで米国籍。) こういう事例がめずらしくはなくなったんですね。ただ、ニュースによると最近米国でアジア系住民に対するヘイトクライムが増えているとのこと。アジア人としては必ずしも「よかったね」と喜んでばかりも言ってられない現実があります。・・・と、この件については(いつもの)毒にも薬にもならない言葉で止めておきます。
 韓国映画オタクとして助演女優賞を受賞したユン・ヨジョン先生にふれないわけにはいきません。受賞スピーチが話題になっていますが、日本語の記事では→コチラ、そして→コチラあたりが今のところ詳しく書かれています。このスピーチと、質問への当意即妙の受け答えをみると、彼女が<先生>とよばれる理由が決して「年長者だから」というだけのものではないことがよくわかります。
 アカデミー賞作品賞といえば、下記のように先日昨秋公開の「シカゴ7裁判」を観て来ました。また韓国では22日から「ユダ&ブラック・メシア」が公開されています。この2作品の共通項はどちらも作品賞にノミネートされたということ。また内容的には60年代末のベトナム反戦運動や黒人差別反対運動(公民権運動の延長)の実話に基づいた作品ということです。これは偶然なのか、あるいは今特に約半世紀前の民衆闘争に対する関心が高まっているということがあるのかはよくわかりませんが・・・。
 ※昨今のアカデミー賞作品賞はノミネート作品からしてほとんどが<何らかの社会的メッセージ>が込められている感じがします。今回もやっぱり、でした。前にも書きましたが、かつてのようにもっと娯楽性を重視して、多くの映画ファンをわくわくさせるような作品を選定してほしいものです。

▶この1週間で観た映画は次の4本です。
 ・「JUNK HEAD」★★★★ (個人が7年もかけて作ったというSFストップモーションアニメ。いやあ、すごい人がいるもんですね。中身もすごくユニーク。セリフは日本語でも英語でも何語でもなく字幕付。独自のその作品世界はグロいというかエグイというか・・・。とにかくこんなモノを作り上げた執念はビンビン感じた。ただ、すごいなーとは思ったからといって、それが心の奥深くを打つものがあるか否かということは別。)
 ・「あの頃。」★★★(先々週に観て気になっていた「街の上で」の今泉力哉監督の作品ということで観ることに。しかし同じ若者たちの群像劇といってもオトコばっかり7人(だっけ?)じゃなー(笑) 松坂桃李演じる剱がたまたまTVで松浦亜弥(ちょっと懐かしい)のCMを見たのをキッカケに<ハロオタ>(←初めて知った言葉)になってオタ友たちとのつき合いが始まって・・・となるのだが、「街の上で」の映画作りと比べると感情移入がむずかしいジャンルだし、準主役の仲野太賀の役柄がなんともウザったくて堪えがたいレベル。やっぱりそれぞれに魅力的な4人の新進女優をそろえた「街の上で」が格段に上。)
 ・「シカゴ7裁判」★★★★☆ (昨秋の公開以来観ようと思いながら今に至った。1968年ベトナム反戦運動が高まる中でのデモ隊と警察との衝突をめぐる裁判を描いた法廷映画。私ヌルボ、ただでさえ人の顔や名前を憶えるのが大の苦手で、最初の「被告は次の3グループに分けられ・・・」以下膨大な情報もすぐ理解できるはずもなくストーリーの展開についていくのがやっと。後で→コチラの記事等を読んでわかったことが多々。それでも被告たちの間の闘い方や法廷戦術の違い等考えさせられたし、当時の時代の空気が感じられ、やはり観てよかった。☆1つ分の減点は観た側のヌルボの理解力の問題。あと2回観たら★5つになりそう。なお川本三郎さんがキネ旬で昨年のベスト①に挙げ、「懐かしさと痛みなしに観ることは出来なかった」と記しているのは彼の過去の事情を考えるとわかるような気がします。)
 ・「別に、友達とかじゃない」★★★(「シカゴ7裁判」に続くアップリンク渋谷3本目。群馬県桐生市を舞台にした青春映画(かな?)。タイトル通り小学校も一緒だが<友達>とは言い難い卒業を迎えた女子高生3人が高校からの帰路たまたま一緒になり久しぶりに言葉を交わすが、話は今一つぎこちなく、進路のこと等のビミョーな話題ともなると各自どこまで話したらいいのやら・・・。「この町にはきらめくものも希望もなにもない」感は群馬とか栃木方面の高校生にはどれくらい一般的なんだろう? ふと思い出した栃木が舞台の「檸檬の頃」(2007)も同じ高3の話(榮倉奈々も谷村美月もまだ10代で)で好印象を持ったが、それと比べると人物造形と人間関係がちょっと不自然に感じられ、物語に入り込めなかった。将来の夢の話から相互の非難の応酬さらにはつかみ合いになったと思ったら、ポラロイドの前で並んで写真撮ったりとか・・・。39分という短い上映時間ではそこまで描き切れなかった? (料金は1,200円だったが。))
▶上記のように4月26日(月)今年2度目の「アップリンク渋谷」(右画像)に行って3本まとめて鑑賞。5月20日をもって閉館とのこと。1995年開館ということは、もう四半世紀になるのか・・・。「南部軍」と「南営洞1985」という観る機会のなさそうな韓国映画も観られたし、見逃していた作品を上映しているので助かったことも何度かありました。やはりコロナ禍が閉館の大きな要因のようです。アップリンク吉祥寺と京都は今後も継続とのことですが、ミニシアター愛好者としてはアップリンクに限らず厳しい状況をがんばって乗り越えていってほしいと願っています。

▶韓国・北朝鮮関係映画上映情報
 ・「トゥルーノース」(公式サイト)は6月4日公開。横浜生まれで在日4世(日本国籍)の清水ハン栄治監督が制作した日本・インドネシア合作アニメ。帰国事業で北朝鮮に渡った在日朝鮮人の悲劇の物語。※私ヌルボは昨年の東京国際映画祭で鑑賞。ぜひ多くの人に観てほしい作品です。
 ・韓国で4月15日から公開されているコン・ユとパク・ポゴム主演の「徐福」「SEOBOK/ソボク」の邦題で7月16日公開。(詳細は→コチラ。)

▶神奈川県人なのにまだ行ったことがない鎌倉市川喜多映画記念館(→公式サイト)。6月20日まで「アンコール:企画展「映画ポスターの革命:ATG〔アート・シアター・ギルド]の挑戦〕というのをやっているのか。「日本映画名優(バイプレイヤーズ)列伝」という企画展も? 近いうち行楽を兼ねて行ってみませう。

         ★★★ NAVERの人気順位(4月27日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(新) スプリング・ソング(韓国)  9.65(26)
②(1) 復活(韓国)  9.48(125)
③(4) 詩を読む時間(韓国)  9.38(13)
④(6) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本)  9.31(11,212)
⑤(7) ソウルフル・ワールド  9.30(9,667)
⑥(9) 玆山魚譜(韓国)  9.29(1,827)
⑦(新) ザ・ピーナッツバター・ファルコン  9.21(33)
⑧(-) ラーヤと龍の王国  9.15(1,644)
⑨(-) 名探偵コナン 緋色の弾丸(日本)  9.03(577)
⑩(-) ジョゼと虎と魚たち(日本)  9.27(33)

 ①と⑦の2作品が新登場です。
 ①「スプリング・ソング」は韓国のドラマ&ミュージカル。冬が終わるのを待っていたある日、ジュンサン(ユ・ジュンサン)は新曲を準備していたバンドメンバー、ジュヌァ(イ・ジュヌァ)にミュージックビデオの制作を提案します。「俺たち、春の歌を作ろう!」。ジュンサンはたまたま観た映画を思い出し、撮影地からコンテ、セリフまで即興で決めることになります。日本の俳優アキノリ(中川晃教)と韓国の俳優ソジン(キム・ソジン)、そしてスヌォン(チョン・スヌォン)まで、ジュンサンの唐突な計画ひとつで集まることになります。十分心の動くままにひとつになった4人の男女アーティストたち。はたしてこの曲で春と出会えるでしょうか・・・。原題は「스프링 송」です。
 ⑦「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」はアメリカのドラマ。日本では2020年2月に公開されています。韓国題は「피넛 버터 팔콘」です。

     【記者・評論家による順位】

①(1) ソウルフル・ワールド  8.44(9)
②(2) Mank/マンク  8.14(7)
③(3) ノマドランド  8.00(8)
④(4) スパイの妻(日本)  8.00(5)
⑤(5) 夏時間[ハラボジの家](韓国)  7.83(12)
⑥(6) ミナリ  7.58(12)
⑦(新) ユダ&ブラック・メシア  7.20(5)
⑧(9) TENET テネット  7.18(11)
⑨(10) 本当に遠いところ(韓国)  7.14(7)
⑩(-) ファーザー  7.13(8)

 ③「ユダ&ブラック・メシア」が新登場です。アメリカのドラマで、今回のアカデミー賞で作品賞にノミネートされた作品です。またダニエル・カルーヤは助演男優賞を受賞しました。物語は1966年のシカゴから始まります。17歳のウィリアム・オニール(ラキース・スタンフィールド)は警官になりすまして自動車を乗っ取ろうとした容疑で逮捕されます。そんな彼に対し、FBIのロイ・ミッチェル特別捜査官(ジェシー・プレモンス)が取引を持ちかけます。「もし君がブラックパンサー党のイリノイ州支部に潜入してFBIの捜査に協力してくれたら、今回の1件はなかったことにしよう」。刑務所に入りたくなかったオニールは取引に応じます。この背景には、FBI局長J・エドガー・フーバーによる反体制的な政治勢力の監視・情報活動の強化方針がありました。その主要なターゲットが黒人たちによる公民権運動で、フーバーはその指導者を<ブラック・メシア>と規定し、その無力化を図ったのです。当時ブラックパンサー党イリノイ州支部長だったフレッド・ハンプトン(ダニエル・カルーヤ)はまさにその<ブラック・メシア>でした。彼は敵対していたギャングと和解し、黒人以外のマイノリティをも運動に取り込み、また貧困層の子供に無料の朝食を提供する等々の方策によって支持を拡大しつつありました。入党したオニールは徐々にハンプトンの信頼を得て、ついには彼の警護を命じられます。そして得た情報をミッチェルに流し、報奨金を受け取ります。ところが、ハンプトンの行動を間近で見ているうちに、オニールは自分のやっていることに対する疑念が膨らみます。「ハンプトンは本当に「人々の安全を脅かす悪人」なのか」と・・・。そんな中、党の事務所で市警と党員の間で銃撃戦が発生し、オニールの立場はさらに苦しくなります。そして1969年12月、ついに決定的な出来事が起こります・・・。韓国題は「유다 그리고 블랙 메시아」。日本公開は未定のようです。フツーに考えれば公開しないわけはないと思いますが・・・。えっ、今夏レンタルリリース予定だって!?(ホンマか?)

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績4月23日(金)~4月25日(日) ★★★
       新登場の韓国映画「明日の記憶」に続き、ねばる「劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編」が2位

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(48)・・明日の記憶(韓国)・・・・・・・・・・・4/21 ・・・101,662 ・・・・・・・136,066 ・・・・・・1,222 ・・・・・・957
2(3)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・94,505 ・・・・・1,822,474 ・・・・・17,577 ・・・・・・642
       無限列車編(日本)
3(1)・・徐福(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/15 ・・・・60,822 ・・・・・・・331,387 ・・・・・・3,151 ・・・・・・902
4(2)・・名探偵コナン 緋色の弾丸(日本)・・4/16・・78,703 ・・・・・・・・78,703 ・・・・・・・・752 ・・・・・・844
5(8)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03・・・・12,636・・・・・・・・939,376 ・・・・・・8,504 ・・・・・・290
6(5)・・玆山魚譜(韓国)・・・・・・・・・・・・・・3/31 ・・・・11,482 ・・・・・・・323,701 ・・・・・・2,870 ・・・・・・445
7(4)・・Mr.ノーバディ・・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・・7,758 ・・・・・・・129,310 ・・・・・・1,234 ・・・・・・326
8(6)・・ゴジラvsコング ・・・・・・・・・・・・・3/25 ・・・・・6,536 ・・・・・・・698,084 ・・・・・・6,722 ・・・・・・263
9(9)・・ノマドランド ・・・・・・・・・・・・・・・4/15 ・・・・・6,281・・・・・・・・・28,425 ・・・・・・・・274 ・・・・・・154
10(7)・・大人たちは知らない(韓国)・・・4/15 ・・・・・5,501・・・・・・・・・26,848 ・・・・・・・・262 ・・・・・・157
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 新登場は1位「明日の記憶」だけです。(これは珍しい! たぶん12年前のブログ開設以来かも。) 事故で記憶を失ったまま目が覚めたスジン(ソ・イェジ)の横には、優しい夫ジフン(キム・ガンウ)が注意深く彼女の面倒をみています。そして家に帰ってきた後、顔を合わせた近所の人たちの危険な未来が見え始め、スジンは混乱に陥ります。そんなある日、道で会った昔の職場の同僚はスジンのことを心配してジフンに対し信じがたいことを言い、ちょうど発見した写真の中の夫の席にはジフンではなく別の男がいます。さらに悪いことに、スジンは誰だかわからない男が自分を脅かす幻影に苛まれるのですが・・・。原題は「내일의 기억」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(2)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03・・・・・12,636・・・・・・・・・939,376 ・・・・・・8,504 ・・・・・・290
2(1)・・大人たちは知らない(韓国)・・・・・・4/15 ・・・・・・5,501・・・・・・・・・・26,848 ・・・・・・・・262 ・・・・・・157
3(22)・・羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来・・・4/22・・・・・・2,216 ・・・・・・・・・・・3,719・・・・・・・・・・35 ・・・・・・127
4(3)・・ファーザー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・・・2,130・・・・・・・・・・33,712 ・・・・・・・・290 ・・・・・・・76
5(4)・・レ・ミゼラブル・・・・・・・・・・・・・・・・・4/15 ・・・・・・1,389・・・・・・・・・・・7,739・・・・・・・・・・64 ・・・・・・・57

 3位「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」が新登場です。中国のアニメ。主人公の羅小黒[ロシャオヘイ]はネコの妖精、といっても円い目がすごくデカくてネコとは見えないかも。日本では2019年11月に公開されています。韓国題は「나소흑전기: 첫만남편」です。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画の興行成績 [4月16日(金)~4月18日(日)]と人気順位 ►エッ、「名探偵コナン 緋色の弾丸」は日韓同日公開だった!? ►「春江水暖」はデビュー作とは思えないスケールの大きさ

2021-04-22 16:36:46 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶アカデミー賞授賞式(4月26日)が近づいてきました。注目の作品賞は「ノマドランド」が有力視されていますが、<キネ旬Review>で、藤木TDCさんが「原作本にあるワーキャンパーの過酷さや困窮を自由や心地良さと曲解させる優雅な演出には違和感。金持ち向けの映画祭映画になり、快適なシネコンでゆったり見ても観光気分以外に得るものはない」と書いているのは同感。真魚八重子さんも「救いは毎回あって、悲愴な域には踏み込まず・・・ノマドたちの交流会もヒッピーの理想形でちょっと口当たりが良すぎやしないか」等ほぼ同様の主旨で★3つに止めています。作品中で主人公が「ノマド生活はそんなラクなもんじゃない!」と強く言う場面はあったと思いますが、観た人の中で誤解してる人はたしかに多そう。それでも受賞に値するレベルだとは思いますけどね。

▶この1週間で観た映画は次の3本です。
 ・「朝鮮名探偵 鬼<トッケビ>の秘密」★★★ (昨年11月以来の韓国文化院の配信で視聴。このシリーズ、知ってはいたが、もろエンタメのフュージョン時代劇で私ヌルボの嗜好に合わず、今回は無料なので観てみたが、3月31日配信で後半は観られなかった「王と道化師たち」の方がなんぼかおもしろかったゾ。タイクツはしなかったけど・・・。日頃の憂さを忘れて「あーおもしろかった!」でスッキリする映画を求めてる人向きかも。)
 ・「春江水暖~しゅんこうすいだん」★★★★☆ (「帰れない二人」等のジャ・ジャンクー、「象は静かに座っている」のフー・ボー等と同様、本作のグー・シャオガン監督も長回しが話題になっているが、せかせかしてる日本人と中国人では時間の感覚が違うんだろうな、たぶん。しかし一部で話題のビー・ガン監督(「ロングデイズ・ジャーニー」等)のような眠気を誘うものでは全然なく、長編デビュー作とは思えないスケールの大きさを感じた。こういう作風の日本映画を期待するのは到底無理。おばあさんの古稀の祝宴に息子や孫たちが大勢集まったその場でおばあさんは脳卒中で倒れて病院へ。命は助かったものの認知症が進行するおばあさんを4人の息子の誰が面倒をみるか? 嫁の意向等もあるし・・・。これに孫たちの結婚や借金等々の話も絡んで、細部まで描かれた絵巻のように(と多くの人もたとえているが)微視的視点から広い世界が見通せる。時代は変わっても大家族の絆は固い、という点は先月観た「フェアウェル」と共通。最後の画面に「一の巻 完」の文字、ってことは・・・。)
 ・「サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス」★★☆ (サン・ラー[1914~93]は半世紀前頃は<サン・ラ>と表記されていたジャズ演奏者&作曲家。当時学生だった私ヌルボが愛聴していたのはフリージャズの最先端のアルトサックス奏者アルバート・アイラーで、サン・ラは同じフリージャズでも毛色が違う感じでほとんど聴く機会もなかった。その彼の映像と音楽が今なんでこのように映画化されたのか?という疑問を抱きつつ観にいくと、時代を感じさせる粗い画面と奇妙な色使い、ケッタイな展開等々で、おそらく睡魔に襲われた観客も多かったのでは?ということでこの評点。 ただヌルボとしては彼の音楽の<独自性>を確認したこと等々、観てよかったと思う。)

▶注目の韓国映画上映情報。
「白頭山大噴火」(原題「백두산」)は8月27日(金)公開。イ・ビョンホン、ハ・ジョンウ、マ・ドンソク等出演。→公式サイト

         ★★★ NAVERの人気順位(4月20日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) 復活(韓国)  9.60(121)
②(2) アイカ  9.50(16)
③(-) 私はボリ(韓国)  9.43(184)
④(9) 詩を読む時間(韓国)  9.38(13)
⑤(8) 復活: その証拠(韓国)  9.35(406)
⑥(10) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本)  9.31(10,968)
⑦(-) ソウルフル・ワールド  9.30(9,640)
⑧(-) カイラスへ行く道(韓国)  9.30(153)
⑨(-) 玆山魚譜(韓国)  9.29(1,677)
⑩(-) そしてパン・ヘンジャ(韓国)  9.27(33)

 半分入れ替わりましたが、初登場の作品はありません。

     【記者・評論家による順位】

①(1) ソウルフル・ワールド  8.44(9)
②(2) Mank/マンク  8.14(7)
③(新) ノマドランド  8.00(8)
④(3) スパイの妻(日本)  8.00(5)
⑤(4) 夏時間[ハラボジの家](韓国)  7.83(12)
⑥(5) ミナリ  7.58(12)
⑦(-) 冬の夜に(韓国)  7.33(6)
⑧(7) アイカ  7.20(5)
⑨(8) TENET テネット  7.18(11)
⑩(9) 本当に遠いところ(韓国)  7.14(7)

 ③「ノマドランド」が新登場ですが、日本でも3月26日に公開され、アカデミー賞作品賞の最有力作品として話題になっていて多くの情報が流されているので説明は略します。韓国題は「노매드랜드」です。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績4月16日(金)~4月18日(日) ★★★
       コン・ユとパク・ボゴム主演の「徐福」が1位、日韓同日公開の「名探偵コナン 緋色の弾丸」は2位に

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(49)・・徐福(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・4/15 ・・・163,523 ・・・・・・・210,233 ・・・・・・2,015 ・・・・1,388
2(新)・・名探偵コナン 緋色の弾丸(日本)・・4/16・・78,703 ・・・・・・・・78,703 ・・・・・・・・752 ・・・・・・844
3(4)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・33,024 ・・・・・1,709,924 ・・・・・16,471 ・・・・・・538
       無限列車編(日本)
4(3)・・Mr.ノーバディ・・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・25,013 ・・・・・・・113,109 ・・・・・・1,080 ・・・・・・520
5(1)・・玆山魚譜(韓国)・・・・・・・・・・・・・・3/31 ・・・・21,767 ・・・・・・・302,404 ・・・・・・2,674 ・・・・・・567
6(2)・・ゴジラvsコング ・・・・・・・・・・・・・3/25 ・・・・17,855 ・・・・・・・687,045 ・・・・・・6,615 ・・・・・・494
7(新)・・大人たちは知らない(韓国) ・・・4/15・・・・10,755・・・・・・・・・15,010 ・・・・・・・・143 ・・・・・・209
8(6)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03・・・・10,724・・・・・・・・919,149 ・・・・・・8,320 ・・・・・・290
9(39)・・ノマドランド ・・・・・・・・・・・・・・4/15 ・・・・・9,987・・・・・・・・・16,160 ・・・・・・・・158 ・・・・・・181
10(7)・・ファーザー ・・・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・・4,197・・・・・・・・・29,366 ・・・・・・・・251 ・・・・・・142
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 新登場は1・2・7・9位の4作品です。
 1位「徐福」[じょふく](ソボク)は韓国のドラマ。最初にタイトルを見て、これは古代中国の伝説上の人物、徐福を主人公にした物語かなと思いました。秦の始皇帝の時代、東方に霊薬を求めて三千人の若い男女と多数の技術者を引き連れて船出した人物で、日本の各地に伝承が残り、また韓国にも済州島等に彼が立ち寄った等の話が伝えられています。・・・が、本作のあらすじを見てみると上記の伝説はほとんど関係ナシ! 伝説に興味がある皆さんは各自ググったりしてみてください。(→韓国のウィキペディア)過去のトラウマを抱かせた事件により外部と断絶した人生を送っている元要員のギホン(コン・ユ)は、情報局からの拒絶できない最後の提案を受け入れます。それは幹細胞の複製と遺伝子操作によって作られた実験体の徐福(パク・ボゴム)を安全に移動させるというもの。しかし任務遂行と同時に思いもよらない攻撃を受け、かろうじて逃れ出たギホンと徐福は特別な同行者同士になります。実験室の外の世界に初めて接し、すべてが不思議な徐福と、生涯最後の任務をすみやかに終えたいギホンは、行く先々で事あるごとに衝突します。一方、人類の救いでもあり災厄にもなり得る徐福を奪い去ろうとするいくつかの集団の追跡はますます激しくなっていきます・・・。原題は「서복」です。さて、「伝説はほとんど関係ナシ」(=少しある)と書いた理由は見当がつきましたか? その共通のキーワードは「不死」です。
 2位「名探偵コナン 緋色の弾丸」は、日本では4月16日(金)に公開されたばかりで、全国の映画館のスクリーンを席捲している真っ最中。(全国最多の18スクリーンを有するユナイテッド・シネマ豊橋18では1日に31回も上映してる!) その作品を韓国でも同日公開とは! いやあ、このコロナ禍の中の日韓両国で、それぞれの持ち場でがんばって仕事してる皆さんがいらっしゃるんですね。(この<席捲>の割を食った映画も多いんだろうな・・・。) 私ヌルボ、このシリーズは全然観てないのでコメントする資格ナシ、です。韓国題は「명탐정 코난: 비색의 탄환」です。
 7位「大人たちは知らない」は韓国のドラマ。「暗殺」「密偵」等に俳優として出演したイ・ファン監督の2作目の作品で、昨年の第25回釜山国際映画祭で上映され韓国映画監督組合賞を受賞しました。彼の最初の監督作品「パク・ファヨン」(2018)は、仲間の女高生の家にたむろしてタバコを喫いラーメンを食べたりしている家出中の若者たちの群像劇で、今作も内容的にその延長線上にあると言えそうです。前作で脇役だった17歳のセジン(イ・ユジン)が今作では18歳になり、物語の主人公となります。それも突然妊婦になって・・・。無責任な大人たちに疲れて距離を置いたセジンは家出歴4年目の同い年ジュヨン(アン・ヒヨン= EXIDのハニ)に出会います。その時以来親友になった2人に加えて、シンジ(シン・ヘッピ)と危機の瞬間に現れた青い髪のジェピル(イ・ファン=監督)まで、どこか似ている4人が集まり、セジンの<遺産プロジェクト>が始まります。「私たちも生きなければならないからね」。大人たちは知らない一番率直な十代の物語です。原題は「어른들은 몰라요」です。暴力等、過激なシーンが多いようで、に評点&寸評を寄せた約400人のネチズン中約100人が評点1を付けています。
 9位「ノマドランド」については上述の通りすでに日本では公開されています。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(新)・・大人たちは知らない(韓国) ・・・・・4/15 ・・・・・10,755 ・・・・・・・・・15,010 ・・・・・・・・143 ・・・・・・209
2(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・・10,724 ・・・・・・・・919,149 ・・・・・・8,320 ・・・・・・290
3(2)・・ファーザー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・・・4,197・・・・・・・・・・29,366 ・・・・・・・・251 ・・・・・・142
4(28)・・レ・ミゼラブル・・・・・・・・・・・・・・・・4/15 ・・・・・・2,557・・・・・・・・・・・4,462・・・・・・・・・・37 ・・・・・・・97
5(13)・・あなたの4月(韓国)・・・・・・・・・・・・4/01 ・・・・・・1,510・・・・・・・・・・・6,766・・・・・・・・・・51 ・・・・・・・44
  1・4・5位の3作品が新登場ですが、1位「大人たちは知らない」については上述しました。
 4位「レ・ミゼラブル」はフランスのドラマ。しかしあのヴィクトル・ユーゴーの小説の映画化作品ではなく、現代社会の問題を扱う内容。日本では昨2020年2月に公開されています。韓国題は「레 미제라블」です。
 5位「あなたの4月」は韓国のドキュメンタリー。タイトル中の<4月>とは2014年4月16日。何の日かというと、韓国では常識(かな?)。日本ではどうでしょうか? ヒントはポスター(右画像)の黄色いリボン。つまりセウォル号沈没事故の日です。本作は事故そのものではなく、犠牲者周辺の人々がそれぞれの思いを語ったものです。カメラの前に立つ<ふつうの人たち>に1つの質問が投げかけられます。「2014年4月16日には、何をしていましたか?」 沈んでゆく船を悲しい思いで眺めていた教師、大統領に会いに来た遺族を見て何も声をかけられなかったカフェの店長、つらい気持ちに堪えながら遺族のそばに守るように立っていた人権活動家、事故海域で遺体を収拾した記憶に苦しむ珍島の漁民、 授業時間にニュースを接し、ただニュースを見ていた高校生。時は流れましたが、まだ傷跡のように残っているセウォル号の惨事の記憶を取り出します・・・。原題は「당신의 사월」です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画の興行成績 [4月9日(金)~4月11日(日)]と人気順位 ►韓国映画「家に帰る道」上映してくれんかねー ►「街の上で」、観てよかった、けどね・・・

2021-04-14 23:50:34 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶今回の記事で紹介した作品中、個人的に「コレは観たい!」と思った作品は、「家に帰る道[秘密のジョンウォン]」です。昨年の<第15回大阪アジアン映画祭>で上映され、パク・ソンジュ監督が<来るべき才能賞>を受賞した作品です。私ヌルボ、大阪には行ったものの「ポーランドへ行った子どもたち」を優先したために見逃してしまったのは残念。この記事の最後の方でかなり詳しくストーリーを書いちゃってます。それだけでも胸に迫るものがあって・・・。ネタバレになっちゃう部分は白い字になってるので読みたい方は範囲指定をして読んでください。(右画像は「家に帰る」の一場面)

▶この1週間で観た映画は1本だけです。
 ・「街の上で」★★★★(コロナ渦で上映スケジュールが大きく狂った作品をやっと鑑賞。下北沢(懐かしい!)を舞台にした若者たちの群像劇で、なかなかおもしろかった、というか、観てよかった、というか・・・。しかし、だからと言って高評価というわけではなくて、そこらへんビミョー。いくつかの映画サイトでファンのレビューをみると、なるほどなーと共感するものも多々ある。「日頃私たちの感じている言語化できない気持ちをセリフや演出で巧みに表現している」とか「絶妙な空気感」とか「さまざまな組み合わせの2人の会話をワンカットで長回しするシーンが印象的」とか。その一方で「本作品の登場人物の若者たちは互いにプライドを傷つけ合おうとするばかりで、愛がない。共感はあるが愛がないのだ。そして共感を愛だと勘違いしている」という指摘も鋭いと思う。また私ヌルボとしては、あの「花束みたいな恋をした」同様に登場する若者たちの意識空間の狭さ(=作品世界の狭さ)がすごく気になる。「キミたちにとって一番の問題は一体何なの?」と訊いてみたい。)

▶注目の韓国映画上映情報。
「サムジンカンパニー1995」(サムジングループ英語TOEICクラス)は7月9日(金)公開。→公式サイト
「逃げた女」は6月11日公開。→公式サイト

         ★★★ NAVERの人気順位(4月13日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) 復活(韓国)  9.62(116)
②(3) アイカ  9.50(14)
③(4) 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(日本)  9.48(1,021)
④(5) モンテ・クリスト:ザ・ミュージカル・ライブ(韓国)  9.46(39)
⑤(6) カナの婚宴:口約  9.42(374)
⑥(7) ブータン 山の教室  9.42(158)
⑦(10) アイロ ~北欧ラップランドの小さなトナカイ~  9.36(11)
⑧(-) 復活: その証拠(韓国)  9.35(405)
⑨(新) 詩を読む時間(韓国)  9.33(12)
⑩(-) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本)  9.31(10,733)

 ⑨「詩を読む時間」が新登場です。韓国のドキュメンタリー。ソウルに住む5人は、初めて自分の不安について話をします。カメラの前で聞かせてくれる彼らの声は、まるで詩を読むようです。疲れる職場生活について薬を飲み、堪えるべきかどうか悩んでいる30代の女性。選択を考える暇もなく機械のように働いたものの解雇された労働者、20年以上安定した職場に通っていたがなぜだかわからない罪悪感でパニック障害を患った50代の男性。不安な現実よりもゲームの中の世界に安定を求める男性。自分が経験した嫌悪と差別をすべての弱者の痛みと同一視する女性。彼らはそれぞれ異なる境遇ですが、不確実で悲惨な現実の前に立ち、自分自身を見つめます・・・。原題は「시 읽는 시간」です。

     【記者・評論家による順位】

①(1) ソウルフル・ワールド  8.44(9)
②(2) Mank/マンク  8.14(7)
③(3) スパイの妻(日本)  8.00(5)
④(4) 夏時間[ハラボジの家](韓国)  7.83(12)
⑤(5) ミナリ  7.58(12)
⑥(-) 逃げた女(韓国)  7.33(6)
⑦(7) アイカ  7.20(5)
⑧(-) TENET テネット  7.18(11)
⑨(8) 本当に遠いところ(韓国)  7.14(7)
⑩(新) ファーザー  7.13(8)

 ⑩「ファーザー」が新登場ですが、この作品については後述します。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績4月9日(金)~4月11日(日) ★★★
       「玆山魚譜」が「ゴジラvsコング」を抜いて1位に

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(2)・・玆山魚譜(韓国)・・・・・・・・・・・・・・3/31 ・・・・54,137 ・・・・・・・255,561 ・・・・・・2,250 ・・・・・・804
2(1)・・ゴジラvsコング ・・・・・・・・・・・・・3/25 ・・・・53,427 ・・・・・・・652,427 ・・・・・・6,278 ・・・・・・832
3(新)・・Mr.ノーバディ・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・45,980・・・・・・・・・67,846 ・・・・・・・・654 ・・・・・・505
4(3)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・43,541 ・・・・・1,654,373 ・・・・・15,919 ・・・・・・627
       無限列車編(日本)
5(新)・・モータルコンバット・・・・・・・・・4/08 ・・・・22,349・・・・・・・・・29,517 ・・・・・・・・308 ・・・・・・672
6(4)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・12,764 ・・・・・・・897,866 ・・・・・・8,124 ・・・・・・433
7(40)・・ファーザー・・・・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・・8,658・・・・・・・・・17,150 ・・・・・・・・150 ・・・・・・348
8(48)・・裏切りのサーカス・・・・・2012/2/29 ・・・・・4,066・・・・・・・・・94,972 ・・・・・・・・715 ・・・・・・146
9(106)・・ニューヨーク・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・・3,719・・・・・・・・・・6,230・・・・・・・・・・51 ・・・・・・140
       親切なロシア料理店
10(7)・・ラーヤと龍の王国 ・・・・・・・・・・・3/04 ・・・・・3,582 ・・・・・・・316,876 ・・・・・・2,929 ・・・・・・141
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 新登場は3・5・7・9位の4作品です。
 3位「Mr.ノーバディ」はアメリカのアクション&コメディ。物語の主人公ハッチ・マンセル(ボブ・オデンカーク)は、温厚な家族一筋の男で、日々郊外にある自宅と職場の工場をバス通勤している平凡な人物で、およそ闘士、戦士といったタイプとは正反対の人間。まさに原題通りの<Nobody>=<何者でもない人>です。ある夜、2人の泥棒がそのハッチの家に侵入します。ところがこんな時でも彼は深刻な問題に発展することをおそれて積極的に自分や家族を守ろうとしませんでした。このため彼の息子ブレイク(ゲージ・マンロー)と妻のベッカ(コニー・ニールセン)はハッチに失望し、彼から離れ始めます。この事件はハッチに自信が実体のない父親と夫であることに対して憤慨させ、抑圧されたスキルを目覚めさせてしまいます・・・。韓国題は「노바디」。日本公開は6月11日です。
 5位「モータルコンバット」はアメリカのアクション&ファンタジー。<モータルコンバット>とは、元々は1992年にアメリカの会社が開発・発売した対戦型格闘ゲームで、90年代には全世界的にヒットしました。日本でも93年からスーパーファミコン、ゲームボーイ等に移植され初上陸したとのことなので、いろいろ記憶をお持ちの方も大勢いらっしゃるのでは? 私ヌルボは仕事に専心していた時期でもあり(??)全然知らなかったですが・・・。で、このシリーズは<残虐格闘ゲーム>と呼ぶべきジャンルを形成して数多くのフォロワーが生まれたとも。そしてシリーズ第一作では「脊髄ごと首を引き抜く」というショッキングな内容で「北米のみならず日本のゲーマーからも注目を浴びた」そうです。ふうん。さてこのゲームの映画化作品なのですが、1995年に同タイトルの香港を舞台にした格闘技アクション映画が公開されています。しかし本作はそれとは別のリブート作品です。物語の主人公は自らの生い立ちを知らない総合格闘技選手のコール・ヤング(ルイス・タン)。彼はある日サブ・ゼロという暗殺者に命を狙われます。コールは家族の安全が脅かされることを懸念して仲間たちと共に地球の守護者ライデン(浅野忠信)の寺院を訪れます。そして太古から続く格闘トーナメント<モータルコンバット>のことや、コールが魔界の敵たちと戦うために選ばれた戦士であることを知ります・・・。韓国題は「모탈 컴뱃」。日本公開は6月18日です。
 7位「ファーザー」は、英仏合作のドラマ。この作品も第93回アカデミー賞作品賞にノミネートされ、また主演のアンソニー・ホプキンス(83歳)が主演男優賞、その娘を演じたオリヴィア・コールマンも助演女優賞等々、同賞に計6部門もノミネートされています。(→コチラ参照。) 物語の主人公アンソニー(アンソニー・ホプキンス)はロンドンで独り暮らしをしています。彼は記憶が薄れ始めていますが、娘のアン(オリヴィア・コールマン)が介護人を手配しようとしても拒否しています。そんな中、アンから新しい恋人とパリで暮らすと告げられ、ショックを受けますが、それが事実だとすると、アンソニーの自宅に突然現れた「アンと結婚して10年以上になる」と語る見知らぬ男は一体誰なんだ? 何か魂胆があるのか?という疑念も湧いてきます。それに、自分のもう1人の最愛の娘(次女)ルーシーはどこに消えたのか?等々、現実と幻の境界が崩れていく中で最後にアンソニーがたどり着いた<真実>とは・・・。韓国題は「더 파더」。日本公開は5月14日です。
 9位「ニューヨーク 親切なロシア料理店」は、デンマーク等5ヵ国による合作のヒューマンドラマ。日本ではすでに昨年12月公開されています。韓国題は、原題「The Kindness of Strangers」を直訳して「타인의 친절(他人の親切)」。これだとどんな話か全然わからないと思いますが・・・。
 なお、8位「裏切りのサーカス」は旧作の再上映。ジョン・ル・カレのスパイ小説「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」(ハヤカワ文庫)の映画化作品で、韓国題も原題「TINKER TAILOR SOLDIER SPY」そのままの「팅커 테일러 솔저 스파이」。なんで日本では本と違うタイトルにしたのかな? 知ってたら観に行ったのに・・・。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・・12,764・・・・・・・・・897,866 ・・・・・・8,124 ・・・・・・433
2(22)・・ファーザー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・・・8,658・・・・・・・・・・17,150 ・・・・・・・・150 ・・・・・・348
3(53)・・ニューヨーク・・・・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・・・3,719・・・・・・・・・・・6,230・・・・・・・・・・51 ・・・・・・140
       親切なロシア料理店
4(17)・・家に帰る道・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/08 ・・・・・・2,810・・・・・・・・・・・5,277・・・・・・・・・・43・・・・・・・143
       [秘密のジョンウォン](韓国)
5(7)・・復活: その証拠(韓国) ・・・・・・・・・10/08 ・・・・・・2,185・・・・・・・・・・39,120・・・・・・・・・318・・・・・・・・19

 2・3・4位の3作品が新登場ですが、2位「ファーザー」、3位「ニューヨーク 親切なロシア料理店」については上述しました。
 4位「家に帰る道[秘密のジョンウォン]」は韓国のドラマ。原題は「비밀의 정원(秘密のジョンウォン)」で、記事冒頭に書いたように昨年の<第15回大阪アジアン映画祭>で上映された際の邦題です。スポーツセンター水泳インストラクターとして働くジョンウォン(ハン・ウヨン)と夫サンウ(チョン・ソッコ)は若いカップル。狭く古いアパート暮らしてきましたが、サンウの両親が譲ってくれた古い一戸建てに引っ越すために荷物の整理をしています。引っ越しの費用についてあれこれ計算をしているところにジョンウォンに電話がかかってきます。それは警察からの電話でした。※以下ネタバレ。黄色い字なので、読みたい方はその部分を範囲指定をしてください。刑事が言うには、10年前の事件の犯人が捕まって新たに調書を書かなければならないので警察署に来てくれとのこと。10年前とはジョンウォンが女子高生の頃。突然具合が悪くなった妹をお母さんと一緒に病院に連れて行ったのです。お母さんは妹の世話をするために病院に残り、ジョンウォンは翌朝登校をしなければならないので夜明け頃1人で家に帰るその途中、見知らぬ男に性的暴行をされてしまったのです。当時のDNAを証拠として、10年後の今犯人が逮捕されたのです。しかし、ジョンウォンにしてみれ事件後かろうじて傷を癒し、結婚して夫と暮らしているのに、平然と被害者に電話をかけてくるとは・・・と心が乱れるのも当然です。ジョンウォンが電話でちゃんと対応しなかったため、刑事は家まで訪ねて来ます。言いたくなかったのジョンウォンの秘密が捜査記録という書類として刑事によって夫に明らかにされるという不合理な状況にはスクリーンを超えて観客までも当惑させます。夫婦の平和だった結婚生活はこのように瞬時にバランスを失い、コミュニケーションが断絶したまま枯れていきます。どんな言葉でもかけたい夫サンウと何も言いたくないジョンウォンの危うい日常が淡々と続きます。その後、ジョンウォンはソウルに試験を受けにきた妹のソヒ(チョン・ダウン)を故郷の泰安に連れて行ってやるため、サンウと一緒に夜車で実家に向かいます。そして、自分の足首をつかんでいた過去の場所を訪ねて行きます。思い出したくなかった記憶と正面から向き合うジョンウォンと、自分のために姉にそんなことが起ったと自責の念を抱き意気消沈して姉に近寄ることができないソヒは、そこで過去の傷と記憶を正面から眺めます。ジョンウォンとサンウは、微かに笑みを浮かべながら泰安海岸を一緒に歩いて行きます・・・。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画の興行成績 [4月2日(金)~4月4日(日)]と人気順位 ►イ・ジュニク監督の新作「玆山魚譜」に注目! ►最初の10分でタイクツした「アウステルリッツ」、観てよかった!

2021-04-08 23:44:32 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶過日<映画.com>の会員登録をすると、<プロフィール>、(好みの映画の)<映画スタイル>に続いて<生涯ベスト5>というのを書く書式が送られて来ました。なるほどねーと思ってたまたま→コチラを見ると①マッドマックス 怒りのデス・ロード とナットクの作品名になってます。
 しかし私ヌルボ、<生涯ベスト5>となると考えれば考えるほどわからなくなってしまいます。20年ほど前に高校生用に作成した<お薦め映画リスト>の約200作品を見ながら絞っていく作業に取りかかったものの、「煙突屋ペロー」・小津安二郎「生まれてはみたけれど」・島津保次郎「隣の八重ちゃん」・田坂具隆「路傍の石」・成瀬巳喜男「鶴八鶴次郎」・今井正「にごりえ」・・・と、戦前の日本映画だけでたちまち五指に余ってしまいます。いずれリストを再整理して<高校生にすすめる本360冊>のようにブログで公開しようと思いますが、いつになることやら・・・。

▶今回の記事で紹介した作品中、個人的に「コレは観たい!」と思った作品は、イ・ジュニク監督「玆山魚譜」(じさんぎょふ.チャサンオボ)。主演ソル・ギョングは初の時代劇とのことです。下掲の記事では個人的な関心の領域まで書いてしまいました。今から約2世紀前の物語ですが、政治的にも文化的にも、また日本史との比較等でも興味深い時代です。
 イ・ジュニク監督の名前は日本の韓国映画ファンの間ではどれくらい知られているのでしょうか? 最近10年間の作品をあげてみると、「ソウォン/願い」(2013)、「王の運命 -歴史を変えた八日間」(2015)、「空と風と星の詩人~尹東柱の生涯~」(2015)、「金子文子と朴烈」(2017)の4作で、私ヌルボの好みに合っています。奇抜な展開で観客を驚かしたり、芸術的な描写で観客を眠りに誘ったりせず、自然な撮り方をしていることと、何よりも監督自身の登場人物や作品自体への思い入れが感じられる点に共感します。いずれ日本でも公開されると思いますが、期待しています。

▶この1週間で観た映画は以下の2本です。
 ・「ヒッチャー ニューマスター版」★★★★(1986年のハラハラドキドキのスリラーで、何人かの人が「これはスゴイ!」と書いていたので観に行ったら、たしかに97分間スクリーンから目が離せなかった。ヒッチハイカーの男を乗せたらそいつがとんでもない殺人鬼で・・・、という話だが、その動機・目的はわからない・・・。私ヌルボも★4.5以上つけるかとも思ったが、冷静に考えてみるとあの名作「ダークナイト」の場合は連続殺人魔ジョーカーに魅力があったことを思うと、コチラは怖さはあっても人物造形に深さがないような・・・、と考えて減点。)
 ・「アウステルリッツ」★★★★ (セルゲイ・ロズニツァ監督のドキュメンタリー<群衆>3部作をこれで全部観たゾ、と叫んで自分を褒めてやりたい! この作品も94分の最初の10分でフツーの人はタイクツする! そして私ヌルボもフツーの人だしね(笑)。しかし観ているうちにタイクツさが薄らいでゆくというか・・・。内容はベルリン郊外のホロコーストの現場となった元強制収容所の、展示物等ではなく訪れる大勢の人たちを固定カメラでただ撮っただけ、というもの。いやあ、「粛清裁判」「国葬」と、この3作でドキュメンタリーに対する視野が広がったような気がする。得した感じ。<群衆>のパンフ1,400円もしたけど買ってよかった(ホンマか?)。)

         ★★★ NAVERの人気順位(4月6日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) 復活(韓国)  9.65(111)
②(3) そしてパン・ヘンジャ(韓国)  9.53(32)
③(4) アイカ  9.50(14)
④(6) 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(日本)  9.48(1,018)
⑤(2) モンテ・クリスト:ザ・ミュージカル・ライブ(韓国)  9.45(38)
⑥(7) カナの婚宴:口約  9.42(374)
⑦(8) ブータン 山の教室  9.42(156)
⑧(-) ランド  9.38(21)
⑨(新) ノガリ(韓国)  9.36(14)
⑩(新) アイロ ~北欧ラップランドの小さなトナカイ~  9.36(11)

 ⑨と⑩の2作品が新登場です。
 ⑨「ノガリ」は韓国のドラマ&コメディ。タイトルの<ノガリ>にはスケトウダラの幼魚の他、バラマキ、嘘等の意味がありますが、本作では後述の映画制作会社の名称が<ノガリフィルム>ににっています。物語の主人公は映画監督のパク・ミングク(本作の監督の自演)。最年少での映画祭に進出し、この名前さえあれば映画人としての花道が保障されていると思っていました。ところが待っていたのは5年間の空白。会社の事務所はハエが飛んでるばかり=閑古鳥が鳴いています。そこにある日100億ウォンの投資を提案したいという1本の電話がかかってきます。条件は、「海兵隊と海女が主人公の戦争映画を作ってほしい」というもの! ところがこの絶好のチャンスを前に、彼らは悩むことになるのですが…。昔から夢は大きく持つべしと言いますね。しかし、これではたして彼らに暖かい太陽がが昇る日がやってくるのでしょうか・・・? 原題は「노가리」です。
 ⑩「アイロ ~北欧ラップランドの小さなトナカイ~」はフランスのドキュメンタリー。ラップランドは、スカンジナビア半島北部の、スウェーデン・ノルウェー・フィンランド・ロシアの4ヵ国にまたがる地方です。そのラップランドで撮影された驚くべき成長ドキュメンタリードラマの主人公は人間ではなく、<アイロ>と名付けられた1頭の赤ちゃんトナカイです。<アイロ>は生後5分で立つことを覚え、5分で歩き、5分で走らなければ生き抜くことはできません。やがて彼は広大な針葉樹と氷に囲まれた森やフィヨルドを駆け抜けます。その自然の中で出会うキツネ、テン、白フクロウ、クズリ、クマ、オオカミ、レミング、ウサギ等々のさまざまな動物たちは時には敵であり、時には友だちになるものもあります。多くの捕食者の脅威と予測不可能な状況の中で、アイルは母トナカイの助けを借りて生き残るすべを学び、大人トナカイに成長していきます・・・。ぜひ→予告編を見てみてください! わずか1:29でもけっこう感動的。よく撮ったものです。韓国題は「아일로」。日本では昨年1月にDVDが発売されています。

     【記者・評論家による順位】

①(1) ソウルフル・ワールド  8.44(9)
②(2) Mank/マンク  8.14(7)
③(3) スパイの妻(日本)  8.00(5)
④(4) 夏時間[ハラボジの家](韓国)  7.83(12)
⑤(5) ミナリ  7.58(12)
⑥(6) 冬の夜に(韓国)  7.33(6)
⑦(7) アイカ  7.20(5)
⑧(-) TENET テネット  7.18(11)
⑨(8) 本当に遠いところ(韓国)  7.14(7)
⑩(新) 玆山魚譜(韓国)  7.00(9)

 ⑩「玆山魚譜」が新登場ですが、この作品については後述します。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績4月2日(金)~4月4日(日) ★★★
       イ・ジュニク監督の新作「玆山魚譜」が1位「ゴジラvsコング」に迫る

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ゴジラvsコング・・・・・・・・・・・・・・3/25 ・・・147,077 ・・・・・・・563,400 ・・・・・・5,403 ・・・・1,053
2(47)・・玆山魚譜(韓国)・・・・・・・・・・・・・3/31 ・・・109,036 ・・・・・・・162,848 ・・・・・・1,408 ・・・・1,195
3(2)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・59,915 ・・・・・1,581,467 ・・・・・15,199 ・・・・・・624
       無限列車編(日本)
4(3)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・25,345 ・・・・・・・872,959 ・・・・・・7,895 ・・・・・・571
5(新)・・ジョゼと虎と魚たち(日本) ・・・3/31 ・・・・10,023・・・・・・・・・16,032 ・・・・・・・・142 ・・・・・・399
6(4)・・ザ・ボックス(韓国) ・・・・・・・・・・・3/24 ・・・・・9,755・・・・・・・・108,602 ・・・・・・・・854 ・・・・・・・39
7(6)・・ラーヤと龍の王国 ・・・・・・・・・・・・3/04 ・・・・・8,264 ・・・・・・・312,706 ・・・・・・2,890 ・・・・・・198
8(新)・・誰もいないところ(韓国)・・・・・・3/31 ・・・・・7,023・・・・・・・・・14,213 ・・・・・・・・119・・・・・・・353
9(5)・・催眠(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/24 ・・・・・5,726・・・・・・・・・50,550 ・・・・・・・・461 ・・・・・・162
10(新)・・ヒジュラー[海吉拉]・・・・・・・・・3/31 ・・・・・4,488・・・・・・・・・10,051 ・・・・・・・・・86・・・・・・・210
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 新登場は2・5・8・10位の4作品です。
 2位「玆山魚譜」(じさんぎょふ.チャサンオボ)は韓国の時代劇ドラマ。主人公は丁若銓[チョン・ヤクチョンn](1758~1816)という約200年前の博物学者です。彼は全羅南道羅州出身の学者の家の男兄弟4人中の次男として生まれました。その4人兄弟中一番有名なのは何と言っても末っ子の丁若鏞[チョン・ヤギョンng](1762~1836)でしょう。彼を主人公としたドラマ「牧民心書」(2000)や「チョン・ヤギョン李氏朝鮮王朝の事件簿」(2009)もありますが、とくに日本では人気ドラマ「イサン」(2007~08)で知名度が一気に高まったのでは? 正祖(イサン)の信頼を得て水原城築造に挙重機を設計する等尽力した実学者です。ところが兄弟たちの運命が大きく変わったのが1800年の正祖の急逝でした。兄弟たちは19世紀末当時広まりつつあった天主教(カトリック)に関心を持ち読書会等に参加したりもしていたのですが、正祖に代わって幼い純祖が王となり実権を握った保守派は辛酉教難とよばれる天主教弾圧を推し進め、兄弟中で最も信仰心の強かった三男の丁若鍾[チョン・ヤクチョンng](1760~1801)は処刑されてしまいます。また丁若鏞は全羅南道康津(カンジン)に配流されて18年の流刑生活を余儀なくされます。また丁若銓も1801年全羅道の西南端近くの薪智島に流され、翌年さらに遠い木浦西南沖の牛耳島へ、そして1808年にはそこからはるか西方沖合の黒山島(フクサンド)に移ります。さて、ここからやっとジワッとこの映画の話。「玆山魚譜」とは、この丁若銓が黒山島に行った後に著した海の生物の図譜のタイトルです。具体的には、ゴカイ、ナマコ、イソギンチャク、カモメ、オットセイ、クジラ、ワカメ等々、魚類に限らず甲殻類や貝の他、海鳥や虫、そして海藻も含まれ、見出し項目は全部で226に上ります。物語は丁若銓(ソル・ギョング)が黒山島に来た時から始まります。好奇心旺盛な彼はその地で海の生物に魅了され、本を書くことを決意します。そのためにはと海をよく知っている青年漁師張昌大[チャン・チョンデ]に助けを求めますが、張昌大は罪人を助けることはできないと即座に拒絶します。丁若銓は、その昌大が1人で漢字を勉強して手こずっていることを知り、「私が知っている知識とあなたの魚の知識を教えあおう」と提案すると、彼は受け入れます。2人はどうのこうの言いながらも、次第に互いの師となり友になっていきます。ところがある日、昌大ががんばって勉強しているのは出世のためだという事実を知って若銓はとても失望します。一方昌大も若銓とは目指す道が違うことを認識し、若銓のそばを離れて外の世界のに行きたいと決心するのですが・・・。原題は「자산어보」です。
    
【「玆山魚譜」中のガンギエイ(홍어.ホンオ)。黒山島の名産で刺身は強いアンモニア臭がある(左) ジュニア向けの本もある。】

 5位「ジョゼと虎と魚たち」は言うまでもなく最近公開のアニメ版の方ですが、私ヌルボはあえて、というか、<断固として>観ていません。というのは、田辺聖子の原作(1985年)や、
池脇千鶴と妻夫木聡の好演が印象に残る実写版(2003)の肝心なところまで変えられていることを事前情報で知ったからです。このアニメ版を観て感動したならそれはそれとしてケチはつけませんが・・・。韓国題は「조제, 호랑이 그리고 물고기들」です。
 8位「誰もいないところ」は韓国のドラマ。イギリスから7年ぶりにソウルに戻った小説家が偶然の出会いと別れを繰り返す中での心の物語です。小説家の名はチャンソク(ヨン・ウジン)。彼はある早春、妻がいるイギリスを離れて7年ぶりにソウルに帰って来ます。彼は本当によかったという思い出があるこの季節の道を歩きつつも、「当時とはずいぶん変わった」と思います。そのように現実なのか小説なのか混然としているようなチャンソクの物語は、たまたま出会った4人の人々との話に続きます。時間を失った女性ミヨン(IU)、思い出を燃やす編集者ユジン(ユン・ヘリ)、希望を求める写真家ソンハ(キム・サンホ)、記憶を生きる女性バーテンダーのジュウン(イ・ジュヨン)。しょせん作り話である小説をなぜ読むかわからないというミヨンは、よく作り上げられた話と人々が信じているというチャンソクが書いた話に一気にのめり込みます。チャンソクの新しい小説の出版を支援する編集者ユジンは、インドネシア留学生だった冬につらい思いで別れた彼氏の話をして予想外の喪失を告白します。ソンハは久しぶりに出会ったチャンソクにいきなり神秘的な僧侶との出会いを伝えて胸に抱いている小さな白い薬箱にまつわる秘密を教えてくれました。闇が深まるソウルのとあるバーで、ノートに何か書いているチャンソクに近づいてきたジュウンは、詩を書くことが好きですと言って自分の心を解く方法について話し、チャンソクにも酒1杯で興味深い記憶を買ってくれと提案します。こうして集められた話はチャンソクが直面するすべての感情を引き出していきます・・・。原題は「아무도 없는 곳」です。
 10位「ヒジュラー[海吉拉]」は、台湾の青春ラブロマンス、というか・・・。劉宛婷(姚愛甯[ヤオ・アイニン])と何希真(林意箴[ダイアン・リン])は親友同士の女子高校生。そして2人はイケメン男子の文棠生(許光漢[グレッグ・シュー])を好きになります。(中略) そして劉宛婷は文棠生と付き合い始めたたのですが、ある事故をきっかけに彼女は自分の体が<ふつう>ではないことを知り、希真や棠生の前から突然姿を消してしまいます。その後しばらく経ち、大学生になった彼らが再び宛婷と出会った時、2人はすぐには彼女とはわからず、そして名前も変わっていました・・・。韓国題は「해길랍」。日本公開は未定のようです。※タイトルの意味を説明するとほぼネタバレに近くなってしまいますが、原題の「海吉拉」はヒンディー語の単語の音訳で、<ヒジュラー>でググるとウィキペディアの項目がヒットします。それにしても、姚愛甯がよくこのむずかしい役を引き受けたと思います。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・・25,345・・・・・・・・・872,959 ・・・・・・7,895・・・・・・・571
2(新)・・ヒジュラー[海吉拉] ・・・・・・・・・・・3/31 ・・・・・・4,488・・・・・・・・・・10,051 ・・・・・・・・・86・・・・・・・210
3(14)・・さらば、わが愛/覇王別姫・・2017/3/30・・・・・2,572 ・・・・・・・・108,132 ・・・・・・・・984・・・・・・・・88
4(9)・・復活: その証拠(韓国) ・・・・・・・・・10/08 ・・・・・・2,286・・・・・・・・・・36,495・・・・・・・・・293・・・・・・・・24
5(再)・・いまを生きる・・・・・・・・・・・・1990/5/19 ・・・・・・1,830 ・・・・・・・・・61,109 ・・・・・・・・465・・・・・・・103

 2位「ヒジュラー[海吉拉]」が新登場ですが、この作品については上述しました。
 旧作の2作品の韓国題は、3位「さらば、わが愛/覇王別姫」が「패왕별희 디 오리지널」となぜか<the original>が付き、5位「いまを生きる」は「죽은 시인의 사회(死んだ詩人の社会)」で、原題は「DEAD POETS SOCIETY」なので、韓国題はその直訳。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする