ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[8月24日(金)~26日(日)]

2012-08-28 23:27:28 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 21日の「毎日新聞」に、前日シリアで政府軍の銃撃により殺害された山本美香さんについての記事が載っていました。(→コチラ。)
 彼女は早稲田大大学院で「ジャーナリズムの使命」の講師を務めていましたが、講義中に寄せられた質問に答える形で「講義後のメッセージ」を学生に配りました。山本さんは「報道で戦争は止められるのか?」という質問を一番に挙げ、「そういう願いがあるからこそ続けられる」と記したそうです。
 ・・・すごいなー、正直なところ、心打たれました。といっても、「では、おまえはあえて命を危険にさらせるか?」と問われたら、私ヌルボ、それはできませんとうつむくしかない・・・。

 気骨あるジャーナリストといえば、昨日観たドキュメンタリー「ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳」。彼も、これまで彼が撮った写真も訴える力がある。しかしある専門家の評は「ドキュメンタリーは・・・時代性や、世間の求めるものとの幸運な一致があるかないかが大事な要素」という観点からこの映画に否定的な評価(40点)を下しています。うーむ、なんという「時代」なんだ。
 「死刑弁護人」も、ぜひ多くの人に観てほしいドキュメンタリーです。安田好弘弁護士も、実に気骨のある弁護士です。マスコミに登場する彼が悪人面に見える(失礼!)のは、そのように撮られているのではないか、とこの映画を観て思いました。映画の中で、名古屋女子大生誘拐殺人事件(1981年)の犯人・木村修治のことが出てきました。以前読んだ彼の書いた手記は非常に痛切なものがありました。「自分の死刑を、最後の死刑にしてほしい」と言っていた彼が処刑されたのは95年でした。

          ★★★ Daumの人気順位(8月28日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①ヤコブへの手紙  9.4(28)
②サミーの冒険 2  9.1(144)
③どうぶつ会議 3D  8.9(38)
④ステップアップ・レヴォリューション  8.8(220)
⑤アイス・エイジ 4:大陸移動説  8.8(139)
⑥名探偵コナン 11人目のストライカー(日本)  8.7(99)
⑦ヒステリア  8.7(29)
⑧シスター  8.6(26)
⑨あの頃、君を追いかけた  8.6(136)
⑩ジェイニー・ジョーンズ  8.4(36)

 ⑦、⑨、⑩の3作品が初登場です。
 ⑦「ヒステリア」は、今年(2012年)3月の沖縄国際映画祭でも上映された英米合作映画。ビクトリア時代、若い医師が世界初のバイブレーターを作った背景を、爽やかに描いた物語、なんだそうです。ナヌナヌ? その当時、女性が抱えるストレスや、抑うつ・不安感など、いわゆる‘ヒステリアの症状’は、子宮内部の圧力が変調したからである、という迷信が信じられていた、ですと? それを治療するために、ですと? 韓国題は「히스테리아」。
 ⑨「あの頃、君を追いかけた」、コチラは2011年東京国際映画祭の上映作品。90年代の青春を描いた台湾映画。高校~大学生当時の甘酸っぱい思いを、そのほろ苦い思い出とともに提示している、・・・との感想がいつも詳しいyohnishi's blogにありました。「シンガポール、マレーシア、香港、マカオ、中国で公開されて、香港でもやはり大ヒットしている」とのことです。日本での一般公開が決定済みのようですが、いつになるのか・・・。さしあたっては9月15・16・21・23日に福岡国際映画祭で上映されます。韓国題の「그 시절, 우리가 좋아했던 소녀(あの頃、僕たちが好きだった少女」の方が日本題よりわかりやすいですね。
 韓国版の予告編をYouTubeで観てたら、後ろの席の女の子が鉛筆の先で背中を突っつくシーンがあって、私ヌルボ、高校時代に同じようなことがあったのを懐かしく思い出しました。
 ⑩「ジェイニー・ジョーンズ」は、音楽をベースにしたアメリカのドラマ。酒にやつれて暮らす盛りを過ぎたロックバンドのボーカルの男。ある日、記憶にない女性がいきなり訪ねてきて13歳の女の子ジェイニーをあんたの娘だと言ってを残して去る。男はジェイニーとの関係にとまどうが、やがて音楽を通じて親子の絆を深めていき、ジェイニーもまた徐々に心を開いてゆく・・・。韓国題は「제이니 존스」。日本公開は未定かな。

   
         【「あの頃、君を追いかけた」(韓国版)予告編】

【専門家による順位】

①ミッドナイト・イン・パリ  7.8(7)
②少年は残酷な弓を射る  7.7(7)
③嵐が丘  7.7(4)
④二つの扉(韓国)  7.6(6)
⑤プロジェクト・ニム  7.5(2)
⑥ダークナイト ライジング  7.4(7)
⑦シスター  7.2(5)
⑧ぴちぴち(韓国)  7.0(6)
⑨ジョージ・ハリスン リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド  7.0(2)
⑩名探偵コナン 11人目のストライカー(日本)  7.0(1)

 新登場はありません。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[8月24日(金)~26日(日)] ★★★

         カンプル原作のスリラー「隣人」がトップに

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(29)・・隣人(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・8/22・・・・・・・・・・・・・・・782,219・・・・・・・・・1,095,739 ・・・・・・・・・8,178・・・・・・・600
2(2)・・風と共に去りぬ(韓国)・・・・・・・・・8/08・・・・・・・・・・・・・・・537,459・・・・・・・・・4,107,165 ・・・・・・・・29,046・・・・・・・515
3(1)・・泥棒たち(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・7/25 ・・・・・・・・・・・・・・513,819・・・・・・・・12,095,057 ・・・・・・・・87,340・・・・・・・544
4(4)・・R2B:リターン・トゥ・ベース(韓国)・・8/15 ・・・・・・・・・・・・・182,678 ・・・・・・・・1,059,493・・・・・・・・・・7,617・・・・・・・330
5(3)・・トータル・リコール・・・・・・・・・・・・・8/15・・・・・・・・・・・・・・・172,672・・・・・・・・・1,111,786・・・・・・・・・・8,197・・・・・・・321
6(5)・・ステップアップ・レヴォリューション・・8/15 ・・・・・・・・・・・165,116 ・・・・・・・・・・673,201 ・・・・・・・・・5,125・・・・・・・269
7(6)・・サミーの冒険 2・・・・・・・・・・・・・・・8/01・・・・・・・・・・・・・・・・71,939 ・・・・・・・・1,401,308 ・・・・・・・・10,487・・・・・・・244
8(10)・・どうぶつ会議 ・・・・・・・・・・・・・・・・8/08・・・・・・・・・・・・・・・・33,674 ・・・・・・・・・・275,373・・・・・・・・・1,808・・・・・・・115
9(8)・・ダークナイト ライジング・・・・・・・・・7/19 ・・・・・・・・・・・・・・・・29,519・・・・・・・・・6,359,455・・・・・・・・47,308・・・・・・・・81
10(新)・・レッドライト ・・・・・・・・・・・・・・・・・8/23 ・・・・・・・・・・・・・・・・29,395 ・・・・・・・・・・・38,258・・・・・・・・・・・274・・・・・・・197
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「泥棒たち」が1,200万人を超え、韓国映画歴代3位に。歴代2位の「王の男」(1,230万人)超えも時間の問題で、あとは「グエムル 漢江の怪物」だけです。
 今回は1~4位がすべて韓国映画。昨年の8月以来でしょう、たぶん。
 新登場は1位と10位の2作品です。
 1位「隣人」は、本ブログでも過去何度もとりあげた人気ウェブ漫画家カンプル原作のスリラー。202号室の少女の死から10日間隔で発生する連続殺人事件。犯人がごく近くに住んでいるという事実を知ったことで、同じマンション内の住人たちの間にまき起こるできごとを描いた作品です。平凡に生きる登場人物それぞれが、その傷を癒し再生するという、カンプル作品らしい群像劇ですが、映画ではどうなっているか? 原作の女の子はキム・セロンちゃんより数歳上の高校生だったですね。原題は「이웃사람」。
 10位「レッドライツ」。引退していた伝説の霊能力者(ロバート・デ・ニーロ)が30年ぶりに復活するが、超常現象を調査し真偽の検証を続けている心理学者と弟子の女子学生が、その霊能力者の調査に乗り出すが、その2人が体験したものは、想像を超えた真実だった・・・って、それは何だ!? という心理サスペンス。韓国題は「레드라이트」。日本公開は年内?

     
カンプル「セロンちゃん、僕はほんとにオッパと呼ばれるのはいいんだけど。」 「シャロンちゃんだったら僕をアジョシと呼んでもいいよ。いや、そう呼んでよ。」「アジョシと1度呼んでくれる? アジョシ? アジョシ~」  ウォンビンさんにアジョシって言ってたじゃない。ん?ん? 僕もアジョシ。 
キム・セロン「・・・・・・」
(「DAUM映画 隣人]より)

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数

1(新)・・あの頃、君を追いかけた・・・・・・・・8/22 ・・・・・・・・・・・・・・12,693 ・・・・・・・・・・・・・20,320 ・・・・・・・141・・・・・・・・・113
2(1)・・少年は残酷な弓を射る・・・・・・・・・・7/26 ・・・・・・・・・・・・・・・2,642 ・・・・・・・・・・・・・35,522 ・・・・・・・283・・・・・・・・・・15
3(2)・・シスター・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/09 ・・・・・・・・・・・・・・・1,009 ・・・・・・・・・・・・・10,303・・・・・・・・・77・・・・・・・・・・17
4(9)・・第5クォーター ・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/23・・・・・・・・・・・・・・・・・825 ・・・・・・・・・・・・・・1,530・・・・・・・・・11・・・・・・・・・・18
5(3)・・二つの扉(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・6/21・・・・・・・・・・・・・・・・・568 ・・・・・・・・・・・・・68,421・・・・・・・・471・・・・・・・・・・・9

 新登場は4位「第5クォーター」。タイトルで見当がつく人は何割いるかな? アメフトすなわちアメリカンフットボールの映画です。大学のフットボール選手である兄に憧れていた弟は16歳の誕生日を前に交通事故に遭い、5人に臓器を提供して世を去る。その弟の遺志を継いで、フットボールを始めた兄が、弟の背番号5をつけて活躍する、という物語。韓国題は「5쿼터」。
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韓国語の本(原書)を読むには・・・・  公共図書館を利用しよう!

2012-08-27 23:53:13 | お知らせ、その他いろいろ
 本ブログ中で、訪問者の多い記事の1つが韓国の本を入手するには? 韓国本専門書店とネット通販の紹介(1)(2)です。

(1)では【1】韓国本を常備している店舗に行って買う
     【2】韓国本を置いている図書館

(2)では【3】韓国本を扱っているネット通販(日本語サイト)
     【4】韓国のネット書店で直接購入

 ・・・について記しました。(時おり更新しています。)

 アクセス数は、(1)よりも(2)の方が多い、ということは、やはり韓国本が買える店というのが非常に少ないということでしょう。
 日本でこれだけ韓国語の学習者が増え、直接韓国の書籍や雑誌、新聞等を読みたいという人も当然多くなってきたにもかかわらず、需要に対して供給の間口が非常に狭いというのが現状です。
 韓国の書籍を販売している書店は、上掲の記事に記したように全国でも2ケタにもならず、ネット通販のショップは増えてきているとはいえ、扱っている本の大半は韓流スター関係のものです。

 そこで私ヌルボのお奨めは公共図書館です。韓国書を置いている図書館の比率はまだまだ低いレベルですが、それでも高麗書林のサイト中の<韓国書が借りられる全国図書館>というページによると、全国で130もの図書館がリストアップされています。

 その中に、ヌルボのごく近所の横浜市中央図書館が入っています。蔵書数でいえば、『日本の図書館 - 統計と名簿2011』によると160.6万冊で、全国の公立図書館の中では第6位。(最下段参照)
 私ヌルボが希望する本は9割以上の確率であるし、いろいろ検索すると、戦前の貴重な本や、韓国・朝鮮に関係するものでは「朝日新聞外地版[全68巻・別巻1]」(ゆまに書房)約240万円及び現在刊行中の同2期全37巻約136万円という高価な資料までそろえてくれているので、とても重宝な図書館です。
           
  【参考書の開架に並んでいる。ベルリン五輪の前に南次郎総督と期待のマラソン選手孫基禎選手(結果は周知のように優勝)との対談記事を最近読みました。】

 そんな中央図書館でも、置いていない本ももちろんあります。先日、関貴星さんの娘の呉文子さんが書いた「パンソリに想い秘めるとき ある在日家族のあゆみ」という本を検索したら中央図書館にはなく、中図書館のみにあるとか。

 そこで先日原付で本牧の中図書館に行ってきました。
 目当ての本を借りて、なんとなく「新しく入った本」のお知らせを見ると、アラ、韓国書が2冊書かれているではありませんか。それも金蘭都(キム・ナンド)の「苦しいから青春だ(아프니까 청춘이다)」と、鄭裕靜(チョン・ユジョン)の「7年の夜(7년의 밤)」。どちらも2011年韓国の話題の本です。(私ヌルボ、「7年の夜」はちょい前買っちゃったなー、読んでないけど。残念!) 館内を回ると「韓国・朝鮮語図書」の書架があって、200冊以上(??)のハングルで書かれた書籍が置かれている。これは知らなかった。また児童書の絵本のコーナーにも相当数の韓国の絵本が並んでいました。
 上記の<韓国書が借りられる全国図書館>のリストには横浜市立図書館では中央図書館しかリストアップされていなかったからなー・・・・。
 その後確認してみると、中図書館の他、泉・栄・金沢・戸塚・保土ケ谷・鶴見・山内・瀬谷・旭・港南・南・磯子・港北・神奈川・緑の各図書館に同様の韓国書のコーナーがあるようです。(都筑図書館たけは未確認。) なかでも、中・泉・鶴見の3図書館が蔵書検索で見たかぎりでは充実しているようです。
 
        
        【横浜市立中図書館。この書架3つ分と、別に児童書がある。】

 7月には、職安通り方面に行ったついでに新宿区立大久保図書館に行ってきました。場所柄、韓国書がかなり多く置かれていました。質・量とも荒川区立日暮里図書館には負けていますが・・・。

       
      【大久保図書館は大久保通りから少し入った所。新大久保駅から徒歩8分。】

   
     【大久保図書館の韓国語の書架。大きい写真にしました。書名を確認してみて下さい。】
   
     【絵本もそれなりに備えています。「ろくべえまってろよ」とか「スーホの白い馬」とか「つるにょうぼう」とか・・・。】


 <東京図書館制覇!>という個人サイトによると、足立区立中央図書館の外国語図書がすごいそうです。「英語・中国語・ハングルはかなりの冊数」で、それ以外の国の図書もたくさんあり・・・と、オーストリア・アルゼンチン・バングラディッシュ以下40ヵ国以上も国名をあげています。うーむ、これは行ってみなければ・・・。
 大阪は、今度鶴橋方面に行ったら生野図書館に寄ってこなければ、と思っています。「ハングルで検索できる」そうで、これは横浜より進んでいます。

 で、韓国語学習者にとってこうした図書館が便利な点は、①タダ! ②通販に比べて手間が省ける ・・・という点はもちろんですが、③文章の難易度がわかる、というのがいいですね。難しければ「そのうちに・・・」と心に期して返却すればいいだけだし。とくにヌルボのおすすめは絵本ですね。それから読みやすい児童書。すいすい読み進むと、気のせいか語学力がずいぶんupしたように思えます。(たいていは気のせいですけど。)
\t
 横浜市立図書館のサイトによると、近年<多文化・多言語サービス推進事業>として外国語書籍の充実をはかっているようです。また多文化サービスの推進は公共図書館の全国的が潮流になっています。
 上掲の<韓国書が借りられる全国図書館>をみると、日本全国のほとんどの県立図書館に韓国書が配備されていますが、このような流れの中で、そこに掲載されていない図書館にも置かれている可能性がありますね。
 また、リクエストすれば購入してもらえるかもしれません。大都市の図書館の場合は、韓国の新聞もあって当然です。
 べつに韓国書に限らず、図書館は大いに活用したいものです。


[参考] 日本の公共図書館の蔵書数順位  ※『日本の図書館 - 統計と名簿2011』による
    
①大阪市立中央図書館 195.0万冊 
②大阪府立中央図書館 186.3万冊
③東京都立中央図書館 176.3万冊
④札幌市中央図書館 172.0万冊   
⑤豊田市中央図書館 161.0万冊
⑥横浜市中央図書館 160.6万冊
⑦滋賀県立図書館 128.7万冊
⑧福岡市総合図書館 123.9万冊
⑨名古屋市鶴舞中央図書館 121.4万冊
⑩徳島県立図書館 113.5万冊
コメント (4)
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韓国電力社員が描いた漫画「出張先は北朝鮮」で垣間見る北朝鮮の人々と社会(その3)

2012-08-25 02:09:30 | 北朝鮮のもろもろ
 2つ前の記事、および1つ前の記事の続きです。

 呉英進「出張先は北朝鮮」(作品社)は、類書が(ほとんど?)ないにもかかわらず、日本では注目されてこなかったようで残念です。金王朝関係の本は同工異曲ゴマンと刊行され、図書館の開架の棚にもずらっと並んでいるのに・・・。
 もしかして、翻訳者(西山秀昭氏)の自費出版? 軽水炉が軽水になっている箇所がいくつもあるように、全体的に校正が甘い感じだし、宣伝もなされてないようで、私ヌルボも最近やっと知ったところ。もっと多くの人に読んでほしいものです。

 韓国ではそれなりに注目されたようで、漫画賞を受賞したり、呉英進さんのインタビューも動画になっています。(→コチラ。)

   [D] 北朝鮮の人々のくらし

①精一杯生きている。

▶山は禿山だらけ。金日成の現地指導で造成された鬱蒼とした松林で、カリカリという音が聞こえてきた。それは子どもとおばあさんが松葉をかき集める音だった。(燃料用)▶北の労働者には昼飯は提供されないので弁当を持ってくる。キムチと豆モヤシ、雑穀まじりのご飯、蒸しジャガ、油で揚げた餅のようなもの。木の枝で作った箸。勧められて飲んだ酒がものすごく強い。
▶労働党創建55周年。大勢の人が歩いて楊花へ。手に手に赤い旗と造花を持って。夕方両手にいっぱいの贈り物をさげて帰る人々。55の生活必需品が配られたとか。
▶北のバーではサッポロの缶ビールも売っている。が賞味期限切れ。しかし「缶の中の酒が変わるわけありません」と気にしない。
▶牛の糞を踏んでも、踏んだ感じがしない。べったり粘りつかない。食糧事情が悪いのは牛も同じ。


 ・・・食料や燃料が乏しい中で、人々は懸命に生きています。

②厳しい生活の中に楽しみも・・・。

▶杉苗を植える緑化事業に動員された北の人たち。男女にわかれ、車座になり手拍子を取りながら歌を歌う。男たちの間では主牌(チュペー)というカードゲームが盛ん。 
▶韓国人社員相手に食堂と飲み屋が設けられていて、奉仕員(接待員)とよばれる女性従業員がいる。平壌出身の大卒女性が多い。酒のお返しは絶対に受けないが、歌はなかなかのもの。「人生って何なのかと聞かれたら私は答えるでしょう~♪」


      
 【北朝鮮の奉仕員が歌った歌「생이란 무엇인가(生とは何か)」。きれいな曲です。背景の白頭山・天池も美しい。】

③人々の情はどこも共通。

▶酷寒の日、雪道を4㎞歩いて娘が父の弁当を持ってきて、一緒に食べる光景を呉さんは見て心を動かされる。 
▶工事現場を見物に来た人たちの中で、誰かが置いていった包みを開けると、差し入れの食べ物が!
▶亡くなった人は桐製の棺か、リンゴ箱等の板切れをつなぎあわせた棺に収める。男が近づいてきて啜り泣きを始め、棺を自転車の荷台に載せて家を出た・・・。


 ・・・人間関係はむしろ濃密といっていいようです。

④韓国との違い

▶ムノ(大きいタコ)を持った釣り帰りの人にそのムノこの海で採れたのか訊いたら「このナクチ(小さいタコ)ですか?」。その後食堂でナクチを頼んだらイカ(オジンオ)が出てきた。「みんなナクチなんだな」
▶「ケサニが食べたタマゴ」という民話の本。「ケサニってなんだ?」と訊くと「先生、本当にケサニも知らないんですか? ケサニはケサニですよ」。呉さんがそのリ・ソンピル「게사니가 먹은 구슬알(ケサニが食べた玉子)」(1993.金城青年出版社)という本を買って読むと、「ケサニ(게사니)とはコウィ(거위)つまりガチョウのことだった。


 ・・・言葉の違いはいっぱいありそう。「게사니」はNAVER辞典には北韓語として出てました。

▶北の人は本貫を知らない。戦後間もなく廃止されたとか。

 ・・・もちろん、この他いっぱいあるでしょう。

   [E]豊かな自然は残っているが、山は禿山

▶自然は豊か。空気はおいしく、海の水と白い砂浜がきれい。潜るとどこを掘っても貝だらけ。しかかし、上記のように山は禿山。燃料用に人々が伐ってゆく。▶国の保護鳥キジはよく見かける。車のフロントガラスに激突することもめずらしくはないようだ。
▶呉さんが初めて北韓に行ったのは1999年が最初。出張を命じられ、蔚山から船で。NLL(北方限界線)にさしかかると、灯の見えない漆黒の世界に。2日後(正確には46時間目)に咸興南道楊花港へ。北の案内船は塗装が剥がれ真っ黒に錆びついていて、真紅のスローガンの色と対照的。空気が気持ちがいいのが印象的で、北の地に降り立つと「まるで「미래소년 코난(未来少年コナン)」の1シーンのようだった」とのこと。


 ・・・私ヌルボが1991年初めて北朝鮮の地(元山)を見た時の第一印象は、「なんだ、この時間が止まっているような前近代的光景は!」というオドロキでした。

   [F]韓国に何年くらい遅れをとっているか?

○現地の韓国人社員の間で議論。北の現実は・・・

▶A(40代か?)「ここの現実をみると韓国の70年代末とよく似ているよ」
 B(30代後半?)「70年代末なら韓国の方がずっとよかった。車も多かったし建物も・・・」
 C(30代前半)「平壌は地下鉄もあるしアパートも多いし」
 D(50歳以上?)「いや! 平壌は例外だ。あそこは特別だよ!」
 E(50歳以上?)「ここの人たちの服装は60年代の半ばくらいだよ」
 D「沖の帆船を観ていると韓国の50年代後半くらいにしかならんよ!」
 A「50年代はあんまりでしょう。電話もあるしカラーテレビもあるし」
 C「ここの田畑を見るとよく整理されているし70年代初めくらいにはなるでしょうよ」
 D「昔はそうかも知れんけど、今はそれから10年後退しているよ! 山に木がないのを見なよ。全部燃料として伐ったんだ。オレたちの子供時代と同じだ! 君はまだ若いから知らんだろうが・・・」
 C「エーイ、本当に!」
 A「何怒ってんだ」
 C(テポドンの切手を見せて)「自力で人工衛星を発射しているのに、ここがなんで50年代なんだ!」


 ・・・なかなか興味深い会話です。

       
  【呉英進さんが1年半すごした琴湖の軽水炉建設地。2005年建設事業は打ち切られた。】

 しかし、これだけの費用(韓国&日本の)と労力を費やして推進されていたKEDOの軽水炉建設事業とは、一体なんだったのでしょうか?
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韓国電力社員が描いた漫画「出張先は北朝鮮」で垣間見る北朝鮮の人々と社会(その2)

2012-08-24 15:11:10 | 北朝鮮のもろもろ
 1つ前の記事の続きです。

 下の画像は、原書の表紙です。

          
  【「북한체류기(北韓滞留記)」上巻(左)が「남쪽 손님(南側のお客さん)」、下巻が「빗장열기(カンヌキを開ける)」。表紙は日本版の方がよさそう。】

   [B] 北朝鮮の体制いろいろ

①できうるかぎり情報を統制する。

▶車を運転していた呉英進さん、背中に赤ちゃんを負い、両手に荷物を持った女性が歩いていたので乗せてあげたいと思った・・・が、南北の議定書では「韓国の車に北の住民を乗せてはならない」と規定されているし、女性も車が眼中にないように歩いていくので、そのまま。

 ・・・極力北の一般人との接触をさせないという方針。また北の人が韓国人の車に乗せてもらったりすると、生活総和の場で反省を迫られます。

▶武器・爆発物・劇薬以外で北朝鮮が搬入を禁止しているものには、高倍率の望遠鏡や双眼鏡・強力なズーム付のカメラやビデオカメラ・無線通信機器・新聞・雑誌・フィルムやビデオがある。 
▶工事現場の工程写真を撮る時には、北の労働者は身を隠す。北当局は、対北宣伝に利用するかもしれないという理由で労働者の撮影を禁じている。
▶北の電信柱は韓国より低く、倒れそうに見える。北では、道端に建てた韓国の電信柱をなぜか黒く塗りたてている。(韓国製であることをわからせないため?)
▶将軍様のお名前や革命スローガンを損なうような写真は持ち出し禁止。将軍様の銅像をバックにピースサインで撮った記念写真はダメ。


 ・・・国内の状況を伝える映像等が外に漏出したり、外国の情報がチェックもなく入ってくることを警戒している。将軍様は絶対不可侵。

▶理髪店には「労働新聞」、グラビア誌、文芸誌、革命小説等を常備。それらを読んで呉英進さんが気づいたことは「北朝鮮の歴史には金日成時代以前がない」。
▶「将軍様の写真が載った新聞は折りたたんではいけない」ということは、外の世界でもかなり知られるようになった。
▶「労働新聞」には北の新聞は社会面がない。つまり、事件や事故の記事が全然ない。スポーツ・芸能面、広告も。「黒羊の乳で豆腐をこしらえた」とか、「咸鏡道の女子小学生がウサギ2匹を10数匹に増やして党から表彰された」という、韓国では子ども新聞で見るような記事が載っている。
▶グラビアには80年代半ば、水害で被害を蒙った韓国に支援の米をした時の写真が。
▶スペイン・セビリアの世界陸上の女子マラソンで鄭成玉選手が優勝。北のメディアは数日後に報道。


 ・・・北朝鮮で「正しい」報道とは、体制をきちんと維持するためのものであり、言論・報道の自由についての考え方が国際通念とは根本的に違います。

②北朝鮮の体制ならではのシステム、ルールがいろいろ。

▶線路の枕木交換作業を見ると、女性もツルハシを持って重労働。「共和国は男女平等ですから」。 
▶田植え期間になると、「総進軍 田植え戦闘へ!」と書かれた赤い旗を立てて開始。
▶村と村の境界線には検問所があり、木のバーが渡してあるだけだが、通行証や訪問証がないと越えられない。そこは村人たちの物々交換の場所でもあり、親戚や友人が会う場所でもある。
▶呉英進さんのように、訪朝者の中で平壌以外の所に行くのは稀である。訪問先が平壌の場合は、宿舎(ホテル)に行く前に万寿台の金日成銅像をまわって献花と黙禱をすることになる。北の住民が外国出張から帰国した時の規定のコースである。


 ・・・こうした北での「常識」の中で暮らした人が脱北して韓国で生活するとなると、非常な困難があるのも当然。

   [C] 北朝鮮の人たちとの会話

①神聖にして侵すべからず

▶1対1の個人的な会話でも「敬愛する指導者同志のご配慮で・・・」という枕詞がちょくちょく付く。
▶韓国に国際郵便を出すため琴湖国際通信所(郵便局)に行った呉さん、「この金正日のもの(切手)いくら?」と言って女性局員に激怒される。
▶クリスマスイブの日、食堂で酒を飲みながら、奉仕員(接待員)の女性に「今日は何の日かわかる?」と訊くと、「抗日女性英雄の金正淑同志の誕生日ですよ!!」
▶革命歌謡の流れるバーで接待員に「金正日委員長のお子さんは何人いるの?」と訊くと「ここではあんまり多くのことを知ろうとしてはいけません。先生様、いま南朝鮮では「知ろうとするな! 怪我するよ」という言葉が流行ってるってね」


 ・・・昔の日本臣民は、陰では天皇について語る場面もありましたが・・・。

②教育の成果

▶タラタラしてる労働者を叱ると、軽水炉事業についての議論に。核査察を口にすると、米帝こそ査察を受けるべき、とか。「いろんな国から金を集めて発電所を作っているのをありがたく思わなきゃ!」というと「その言いぐさは何ですか!! 軽水炉事業はどこまでも我が偉大な将軍様がクリントンの首を締めつけて勝ち取ったものです!」 
▶南朝鮮(韓国)の車を道で見ると、子どもたち硬い表情で目を背ける。


 ・・・教育の力が大きいのはどこの国も共通。韓国の「独島はわれらが地」も。教育というより教化。

③プライドは高い

▶「配給はきちんと出てるか?」とか「飢えている人はいないのか?」と訊ねると「一体何が知りたいんですか!」と語気を強める。デリケートな話は避けるようになる。 
▶北の労働者「われわれ人民には不足なものは1つもありませんよ」
 南の労働者「じゃ家に冷蔵庫あるか?」
 北「冷蔵庫? ア! 冷凍機のことか! そんなの!ありますよ!」
 南「そうだよ。上に冷凍庫がついているやつさ」
 北「オレはそんなの知りませんよ! うちのオンマがみんな管理しているからオレの知ったことじゃないんだ!」


 ・・・プライド(自尊心)の高さは南北共通かも。\t

④ふとホンネが・・・

▶並んで座ってタバコを吸いながら北の班長が呟く。「それでも首領様の時代はよかったですね」

 ・・・このホンネは北の人たちに共通なようで、いろんな本で見ましたね。

 あと1回続きます。
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韓国電力社員が描いた漫画「出張先は北朝鮮」で垣間見る北朝鮮の人々と社会(その1)

2012-08-23 23:47:08 | 北朝鮮のもろもろ
              

 呉英進「出張先は北朝鮮①&②」(作品社.2004年)を読みました。
 異色のマンガ北朝鮮訪問記です。それも短期間の訪問ではなく、548日間滞在した記録。

 呉英進(オ・ヨンジン)さんは1970年生まれ。95年に明知大を出て韓国電力に入社しましたが、2000年3月KEDOのプロジェクトで軽水炉建設のため北朝鮮・咸鏡南道琴湖(クモorクムホ)原子力建設本部に派遣され01年8月帰国しました。
 2009年の「週刊京郷」の記事によると、彼は大学で建築工学を専攻。一方、漫画サークルで活動を続け、「華麗なるキャッツビー」の作者カン・ドハ等とムック誌「漫画実験ブーム」を作るほど漫画どっぷりの生活でしたが、卒業をひかえて漫画では暮らしていけないと選んだ職場が韓国電力。
 そして上記のように北朝鮮軽水炉建設現場で約1年半の間建設監督を任された際、実際の経験をもとに描いた漫画が「북한체류기(北韓滞留記)」全2巻で、この「出張先は北朝鮮①&②」はその翻訳本です。

 玄武岩「統一コリア」(光文社新書.2007)に書かれているように、近年北朝鮮に行く韓国人がずいぶん増えているそうで、開城工団で働いている人のブログも見たりしたことがありますが、(a)比較的長い期間、(b)平壌以外の所で、(c)直接北の人たちと接して過ごした体験を、(d)漫画本にした、というのは類書がなく、とても興味深く読みました。

           
 【呉英進さんの赴任先は日本海側の琴湖。2005年に軽水炉建設事業は廃止されたので今はどうなっているか?】

 以下、数テーマに分けて、注目した内容を整理して紹介します。
 10年ちょっと前のことなので、必ずしも今も同じとはいえないことは念頭におく必要があります。

   [A] さまざまな物品や技術のレベルの低さについて

①交通・運輸関係のインフラが整っていない。

 ▶北京空港から平壌へ行くのだが、高麗航空機はちっぽけなロシア製で、第一印象は「鼻をつくようなすえた臭いと古臭いインテリア」。座席は自由席でシートレバーはない。
 エアコンはほとんど役に立たず、シートバッグの網にウチワが入っているが、離陸が遅れている間、暑さに耐えられず一乗客が非常扉を開ける。と、飛行機は整備中だった。(出発の遅れを「平壌の天候不順のため」と説明していたのはウソ。)
▶平壌順安空港から小さな双発機に乗り換えて咸興宣徳空港へ。咸興宣徳空港は軍用で、滑走路にはところどころへこみが・・・。軍用機は第二次大戦時のような年代物。
▶咸興からミニバスで新浦へ。「咸興は北朝鮮随一の工業都市だが、とても古びて見えた」。
 未舗装の道を砂ぼこりを立ててミニバスが行く、その真っ暗な道を大勢の人が歩いている。咸興を抜けるとデコボコはさらにひどくなる。途中停車して、運転手は積んでいたガソリンタンクを取り出して燃料補充。客たちは外で立ちション。山道はガードレールなしで、一部は土砂崩れを起こしたまま。危険を知らせるため絶壁の側には石が並べられている。咸興から新浦まで100km余で5時間もかかり、やっと軽水炉事業・韓国人労働者宿舎へ。「金浦から飛行機で1時間なのに」。
▶工事現場付近を走る列車はいつも満員。乗客は身を乗り出すようにして北では見慣れない工事現場に注目していた。石炭車にも身をすくめて乗っている人たちもいたが、その後統制したのか見かけなくなった。列車はディーゼルではなく電気機関車で、停電事故の場合はその場で止まる。停止が長引くと、乗客は降りてきても焚火で体を暖めながらおしゃべりしている。


 ・・・暗い道を大勢の人が歩いている、という場面は、いろんな本で読みました。交通手段が発達していないので、長い距離を大きな包みを持って歩くというのは、ごくふつうのようです。一方、列車やトラックの荷台は、人を満載しています。

②生活必需品が不足しているようだ。ガラスやビニールのような原料素材も、日用品も。

▶高麗航空機の窓から外を眺めようとしたら、ガラスではなくアクリル製で、傷がたくさんついていて見られない。
▶上記の列車もよく見ると、客車に窓ガラスがない。
▶北の民家に接近することは禁じられているので、車で通過する時一瞥する程度だが、道沿いには造りかけで中断した奇怪な泥煉瓦の家が多い。人の住む気配はするが、戸や窓はガラスではなくビニール。
▶ビニールが高価なのでビニールハウスはない。かわりに縄で編んだ柵の中で苗床を育ててから田植え戦闘へ。所々にトイレも設置する。


 ・・・1991年に私ヌルボが北朝鮮に行った時に、窓ガラス越しに見る景色が歪んでいることに気づきました。ガラスが波打っているのです。そんなガラスでもまだマシなんでしょうか?

▶税関で箱を開けていたら税関員はペンチに強い関心を示す。呉さんが「よかったらあげますよ」と言うが早いか、ポケットに瞬く間に入れる。彼の顔に笑みがかすかに広がる。その後検査がスムーズになった。検査中もポケットの上から触りながらペンチを確かめ、また笑みを浮かべた・・・。 
▶浜辺でこっそり貝を取ってる北の男に、貝を分けてもらおうとバケツを差し出すと、男はバケツを欲しいというので翌日たくさんあげたらすごく喜んだ。


 ・・・ペンチやバケツのような日用小物も貴重品なのでしょうか。

③品質の悪さ、能率の低さは社会体制と密接に関連している。

▶脚立に乗って天井に石膏ボードを張っていた韓国人班長がネジを落としたので、下にいる労働者に「そこのネジ拾ってよ」と言うと「僕の仕事はボード運びです。ネジは拾えません」。 
▶軽水炉現場で働く北の労働者の賃金はすべて党に納めるため、個人に提供されるのは温かい昼飯だけといっていいくらい。ご飯の盛り方がすごい。食べ終えると眠気のため労働者は無気力になる。仕事をせかしても動かない。
▶呉さん「こんな仕事面白くないでしょう」 
 北の労働者「先生、仕事は面白くてやるんですか」 
 呉さん「面白いことやってれば幸福でしょう」
 北の労働者「ボクたちは幸福ですよ」
▶共同農場のトウモロコシは春先雨が降らずほとんど死にかけに。大量に動員された人たちが水を入れる作業。(呉さん「揚水機1台あればいいのに・・・」。) 一方、庭先の個人所有の畑のトウモロコシは立派に育っている


 ・・・つまり、労働者を仕事に駆り立てる動機が欠けている。これで生きていければ、過酷なまでに仕事に追われている資本主義国の生活よりいいかも、という見方は否定できませんが・・・。 

▶現場では、北の人間が車にいつも同乗する。交替の運転手でも整備士でもない。彼の任務は「運転手トンムが不健全な南の放送を聞かないかと見張っているんですよ」。 
▶北の労働者が仕事を覚えて少し力がつき、韓国の人と親しくなる気配がすると、すぐに配置換え。作業効率に問題をきたした。
▶韓国の力で港へ向かう道をアスファルト舗装したら、動員された北の人びとがその入口にコンクリートで何かを作り始める。10日ほどで塔が姿を現し、さらに何日かかけて「敬愛する将軍様万歳」「偉大な主体思想万歳」の字が刻まれた。韓国人の反応は「こんなことやる暇があったら畑でも耕せばいいのに」。


 ・・・体制維持のためのムダな仕事が多い。南の人間や文物、考え方等を非常に警戒しています。そのためのムダも厭わない。

▶セメント煉瓦の品質試験で、3個のサンプルに圧力を加えるとどれも崩れて不合格。山積みの煉瓦を「すべて壊せ」と言うと北朝鮮人の班長、「不合格の3個だけ捨てればいいじゃない。もったいないでしょ」。

 ・・・いい加減な仕事をしても責任を問われないことが多い。また、労働者が工事現場からセメント等をこっそり自宅に持ち去っている、という状況があります。

▶労働党員は90年代で300~400万人。成人の3分の1以上で、党員=支配者層・富裕層ということではないが、作業班長は党員しかなれない。

 ・・・能力があっても、埋もれてしまう人は多いでしょう。

▶最近、南北交流が活発化し、韓国製の田植え機が初めて北にもたらされた。密植に慣れた北の農民たちはそれを遣おうとしなかったが、秋になって田植え機で間隔を置いて植えた方がかえって収穫が多いのを見て、韓国の農機に信頼を持ったという。 
▶韓国から来ているの労働者宿舎完成すると、北の労働者は「湯が出る!」「(水洗トイレを見て)ウンチはどこに流れるのですか?」等々。部屋の暖房にもびっくり。


 ・・・これらの点が北の指導者層にとっては南北交流における悩みのタネなんでしょう。

       

       
     【この折り畳み蒸し器はウチにもあるぞ。たしかに通信機材に見えなくもない?】

 あれま、「フリーサイズ蒸し器でUSB接続の無線LANアダプタを強化する」なんてブログ記事があったぞ。→コチラ

 あと2回続きます。
 続きは→コチラです。
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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[8月17日(金)~19日(日)]

2012-08-21 21:42:29 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 「キネマ旬報」を立ち読みしていたら、銀座シネパトスが来年(2013年) 3月末に閉館するとの記事が目に入りました。あの地下街が耐震性の問題で取り壊されることになったとか・・・。(→関連記事。)
 並木座の閉館はいつだったか、と調べたら1998年。もう14年になるのか。寂しいもんだなー、コホコホ・・・。今週は「ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳」をやっているし、ぜひ観に行かなければ・・・。25日(土)からはプンサンケ(豊山犬)も始まります。(渋谷ユーロスペースでは18日から始まってますが・・・。)

 このところちょくちょく紹介しているキネカ大森に短い記憶(ヘファ、ドン)を観に行ってきました。試写会に続き2回目。主人公の内面を実に繊細に描いた作品で、新しい発見もありました。ぜひ多くの人に観てほしいと思いますが、24日(金)までなんだよなー、残念ながら。で25日からは韓国のホラーサスペンスTHE CATを上映。これにはあの「冬の小鳥」で注目され「アジョシ」にも出演したキム・セロンの妹キム・イェロンが出演してます。

 キム・セロンについては、7月24日の記事で、人気漫画家カンプル原作の隣人(이웃사람)」というホラー映画に出演する、ということを書きました。8月23日公開ということで、関係記事がどっと増えてきています。先日(8月15日)カンプルのtwitterをたまたま見たら、キム・セロンとのツーショットがupされてました。

        
  【セロンちゃんは2000年生まれの12歳か・・・。カンプル原作の数あるホラー映画は全部コケてるんだけどなー。】

 韓国映画ではありませんが、先週観た「桐島、部活やめるってよ」は、予測通り「日本映画史に残る圧巻のフィナーレ」なんて宣伝文句以外は期待を裏切りませんでした。しかし、<映画生活>の評点は73点と全然高くない。私ヌルボと波長が合うと思われる松崎まことさんは案の定絶賛してるんですけどねー。

          ★★★ Daumの人気順位(8月21日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①ヤコブへの手紙  9.4(28)
②どうぶつ会議 3D  9.1(34)
③サミーの冒険 2  9.0(130)
④ステップアップ・レヴォリューション  9.0(164)
⑤アイス・エイジ 4:大陸移動説  8.8(128)
⑥名探偵コナン 11人目のストライカー(日本)  8.4(94)
⑦ベスト・エキゾチック・マリーゴールド・ホテル  8.5(159)
⑧ブルーバレンタイン  8.3(70)
⑨ダークナイト ライジング  8.2(2583)
⑩ドラえもん のび太と奇跡の島  8.2(29)
    アニマルアドベンチャー(日本)

 新登場はありません。夏休みらしさが感じられるベスト10ですね。

【専門家による順位】

①ミッドナイト・イン・パリ  7.8(7)
②少年は残酷な弓を射る  7.7(7)
③嵐が丘  7.7(4)
④二つの扉(韓国)  7.6(6)
⑤プロジェクト・ニム  7.5(2)
⑥ダークナイト ライジング  7.4(7)
⑦シスター  7.2(5)
⑧ぴちぴち(韓国)  7.0(6)
⑨ジョージ・ハリスン リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド  7.0(2)
⑩名探偵コナン 11人目のストライカー(日本)  7.0(1)

 新登場は⑤「プロジェクト・ニム」だけ。ニムと名付けられたチンパンジーの数奇な運命を辿ったイギリスのドキュメンタリーです。1973年、コロンビア大学の心理学者テラス教授が生まれたばかりのチンパンジーを人間として育てる実験が始めます。そのチンパンジーがニムでした。彼はラファージ家に預けられ、手話を教わって人間との一定の意思疎通ができるようになります。服を着て、タバコやドラッグまで吸って・・・。しかしヒッピーのような家庭での生活でわがままに育ったニムを見かねて研究チームは大学の施設に戻します。が、保護者が転々とする中で、成長するにつれて力が強くなったニムは研究チームの一員に大けがをさせてしまいます。その後のニムの人生(猿生?)も変転極まりないものでした。そこから見えてくるものは、ニムを実験台としたチンパンジーの問題もさることながら、彼と関わった人間たちの側の問題・・・。うーむ、これてとてもおもしろそうだぞ。ぜひ観てみたい、・・・けど日本公開未定かー。韓国題は「프로젝트 님」と原題そのまま。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[8月17日(金)~19日(日)] ★★★

         勢い続く「泥棒たち」、1,000万人に迫る

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・泥棒たち(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・7/25 ・・・・・・・・・・・・・・835,263・・・・・・・・11,127,614 ・・・・・・・・80,414・・・・・・・621
2(2)・・風と共に去りぬ(韓国)・・・・・・・・・8/08・・・・・・・・・・・・・・・823,769・・・・・・・・・3,178,717 ・・・・・・・・22,524・・・・・・・582
3(21)・・トータル・リコール・・・・・・・・・・・・8/15・・・・・・・・・・・・・・・432,169 ・・・・・・・・・・782,688 ・・・・・・・・・5,832・・・・・・・448
4(16)・・R2B:リターン・トゥ・ベース(韓国)・・・8/15 ・・・・・・・・・・・394,766 ・・・・・・・・・・726,823 ・・・・・・・・・5,266・・・・・・・540
5(8)・・ステップアップ・レヴォリューション・・8/15 ・・・・・・・・・・・201,256 ・・・・・・・・・・371,553 ・・・・・・・・・2,861・・・・・・・281
6(5)・・サミーの冒険 2・・・・・・・・・・・・・・・8/01・・・・・・・・・・・・・・・218,639 ・・・・・・・・1,290,223 ・・・・・・・・・9,739・・・・・・・296
7(3)・・私は王である(韓国)・・・・・・・・・・・8/08・・・・・・・・・・・・・・・・82,214 ・・・・・・・・・・723,949 ・・・・・・・・・5,003・・・・・・・222
8(4)・・ダークナイト ライジング ・・・・・・・・7/19・・・・・・・・・・・・・・・・72,088・・・・・・・・・6,293,561・・・・・・・・46,759・・・・・・・182
9(6)・・アイス・エイジ 4 大陸移動説・・・7/25 ・・・・・・・・・・・・・・・57,516・・・・・・・・・1,591,309・・・・・・・・11,923・・・・・・・167
10(7)・・どうぶつ会議 ・・・・・・・・・・・・・・・・8/08・・・・・・・・・・・・・・・・43,965 ・・・・・・・・・・225,967・・・・・・・・・1,494・・・・・・・131
6(6)・・名探偵コナン・・・・・・・・・・・・・・・・・7/19 ・・・・・・・・・・・・・・・・18,044 ・・・・・・・・・・499,974・・・・・・・・・3,204・・・・・・・・82
     11人目のストライカー(日本)
10(7)・・怖い話(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・7/25 ・・・・・・・・・・・・・・・・13,955 ・・・・・・・・・・315,775・・・・・・・・・2,332・・・・・・・・65
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「泥棒たち」が1,000万人を超えました。
 ちなみに、韓国映画で過去1,000万人を超えた作品は①「グエムル 漢江の怪物」(2006)1,302万人②「王の男」(2005)1,230万人③「ブラザーフッド」(2004)1,175万人④「ツナミ」(2009)1,145万人⑤「シルミド」(2003)1,108万人(※以上、千の位4捨5入)でした。ということは、「泥棒たち」はすでに「シルミド」を抜き、じき「ツナミ」を抜いて、たぶん「ブラザーフッド」にもとどきますね。「泥棒たち」は政治性・社会性を排して、純粋に映画の楽しさを追求したのが今の時代にマッチした、ということのようです。
 今回は3位と4位が新登場です。
 3位「トータル・リコール」は、めずらしく日本の方が早くて8月10日公開。私ヌルボ、予告編だけは観ましたが、「ここには貴方のお好みの記憶売っています」という宣伝文句の日本語の誤用がずっと気になってるんですけど・・・。韓国題は「토탈 리콜」。
 4位「R2B:リターン・トゥ・ベース」は、Rain(ピ)が韓国空軍特殊飛行チームの天才的な操縦士を演じる、韓国版「トップガン」と銘打たれた高空アクション映画。実際のトップガンの空軍中佐が製作全般に関与したそうです。しかし、「ソウルの上空で繰り広げられる戦闘機の追撃戦」なんて、一体どこの戦闘機が相手かと思ったら、帰順(脱北)を装った北朝鮮の戦闘機なんですと。そいつがあの63ビルを攻撃することになって交戦が始まる、・・・って、ツッコミ所がありすぎる設定だなー。<Kstyle>の記事の見出しが「戦闘機は高空でもストーリーは低空」とありましたが、観る前から雰囲気がわかりそう。しかしさすがに舞台を竹島(独島)にして日本の自衛隊機を相手にするわけにもいかんしなー、実際の戦争を招きかねないからなー(ってことはないか)。原題は「R2B:리턴 투 베이스」。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・少年は残酷な弓を射る・・・・・・・・・・7/26 ・・・・・・・・・・・・・・・3,589 ・・・・・・・・・・・・・30,063 ・・・・・・・240・・・・・・・・・・16
2(2)・・シスター・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/09 ・・・・・・・・・・・・・・・1,758 ・・・・・・・・・・・・・・7,857・・・・・・・・・60・・・・・・・・・・22
3(3)・・二つの扉(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・6/21・・・・・・・・・・・・・・・・・568 ・・・・・・・・・・・・・68,421 ・・・・・・・471・・・・・・・・・・・9
4(7)・・ジョージ・ハリスン・・・・・・・・・・・・・・・7/19・・・・・・・・・・・・・・・・・294 ・・・・・・・・・・・・・・2,824・・・・・・・・・22・・・・・・・・・・・3
     リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド
5(4)・・カフェ・ド・フロール ・・・・・・・・・・・・・・7/19 ・・・・・・・・・・・・・・・・・275 ・・・・・・・・・・・・・・4,418・・・・・・・・・30・・・・・・・・・・・7

 新登場はありません。
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[韓国語]金正日は「栄光イッスラ!」と言った。 ★第Ⅱ語基に続く命令形のこと等

2012-08-20 23:41:49 | 韓国語あれこれ
 本ブログの韓国語関係の記事は、大体が前々から知っていることを書いているのではなくて、実力は中級と上級の境目辺りをうろついている私ヌルボが初めて知ったこととか、いい加減な知識しかなかったことを調べ直して書いています。

 今回のテーマも、たまたま一昨日のハングルサークルの授業で「命令形は(ふつう)第Ⅲ語基につく」という箇所をやっている時、以前話題となった金正日の号令のことを思い出したのがきっかけで、いくつかの関係サイトを読み、わかったことを整理してみた、というものです。

 自らの肉声をほとんど流さないことで有名たった金正日が、南北首脳会談以前に唯一残した音声は、1992年4月25日の朝鮮人民軍創建60周年の軍事パレードの号令でした。
 「영웅적 조선인민군 장병들에게 영광 있으라!(英雄的朝鮮人民軍将兵諸君に栄光あれ!)」というわずか5秒間のものです。
 YouTubeにその動画があります。(→コチラ。) この1:12~1:17の所に入っています。

 ポイントは、この있으라(イッスラ)」。「있다(イッタ)=在る」の命令形なんですが、「あれ?」と疑問に思う人もいるでしょうね。私ヌルボもそうでした。
 たとえば「넌 여기 있어라.(おまえはここにいろ。)」のように、ふつうは있어라(イッソラ)」じゃないの、ということで・・・。

 命令形に関して、授業で提示されたのが「하다」の命令形。ふつう해라だが、하라になる場合もある、ということ。
 つまりは第Ⅲ語基ではなく、場合によって第Ⅱ語基につく命令形がある、ということ。その違いは後の方で書くとして、韓国サイトを見ると、韓国の人の中にも疑問に思う人がいるんですね。

 「中央日報」のサイト中の[우리말 바루기(韓国語を正す)]に「해라体と 하라体」という記事があり、そこである塾の先生からの質問を取り上げていました。
 その質問というのは、試験問題を作る時の問題文に頭を悩ませているとのこと。たとえば・・・・

・正しい答えを「書け」は、「쓰라」なのか、「써라」なのか?
・正答を「選べ」は、「고르라」なのか、「골라라」なのか?
・絵を「描け」は、「그리라」なのか、「그려라」なのか?
・質問に「答えよ」は、「답하라」なのか、「답하여라」なのか?
・共通するもの同士を「結べ」は、「이으라」なのか、「이어라」なのか?

 続く説明には、こう書かれています。
 まず、目の前にいる相手には「먹으라」とか「보라」ではなくて「먹어라」とか「봐라」と言うでしょう。このような、相手を見下して命令する形を<해라体(ヘラ体)>(つまり第Ⅲ語基)といって、日常生活では自然な形です、ということをまず確認。
 続いて、では運勢の文章を見てみましょう、ということで、以下を例示しています。

 "60年生まれは自信を育てよ(자신감을 키우라)。37年生まれは受けたものを放棄せずに受けよ(포기하지 말고 받으라)。61年生まれは健康に気を遣え(건강에 신경 쓰라)。26年生まれは捨てるほど幸せになる。心を空けよ(마음을 비우라)。"

 そして解説。ここに出てくる各動詞「키워라」、「받아라」、「써라」、「비워라」という言葉ほど相手を見下していない感じがしますが、このように、不特定の相手に本や新聞等の媒体を通じて命令の意を現わす時に、この<하라体>(つまり第Ⅱ語基)を使う、というわけです。
 ・・・ということで、上掲の質問については、試験問題は相手が不特定なので<하라体>「쓰라」、「고르라」、「그리라」、「답하라」、「이으라」が正しいと結論づけています。

 ・・・とここまで書いたところで、非常にわかりやすく説明してくれている日本語サイトを見つけました。

 <初級から先の朝鮮語>がそれ。
 その中から、命令形に関するページを簡略化して整理してみました。

①[第Ⅲ語基+라]・・・・同年配や目下の人に「〜しろ」と命令する時に使う。 →コチラ参照。
 ※禁止命令(「〜するな」)は[第Ⅰ語基+지 말아라]となる。
 ※[第Ⅲ語基+라]は形容詞によっては「〜であれ」のように命令として使える。また、状況によって「〜だなあ」のように詠嘆を表す。詠嘆の場合は形容詞的な意味合いを持つ存在詞(맛있다 、재미있다 など)にも使われる。
   例:야, 맛있어라.(いやあ、旨いなあ。) 
     아이고, 좋아라.(ああ、良い気持ち。)


②[第Ⅱ語基+라]・・・・丁寧語ではなく、同年配や目下の人にいかめしい文語調で「〜しろ」と命令する時に使う。スローガンやシュプレヒコールなどによく現れる。 →コチラ参照。
 例:소비세를 낮추라.(消費税を下げろ。) 
   근무수당을 인상하라.(勤務手当を引き上げろ。)
   이 사람을 보라.(この人を見よ。)
   두드리라 그러면 열릴 것이다.(叩けよ、さらば開かれん。)
   통일이여 어서 오라 통일이여 오라(統一よ はやく 来たれ 統一よ 来い)
←『우리의 소원(われらの願い)』の歌詞。私ヌルボ、1991年北朝鮮旅行の時教わった。

③[第Ⅰ語基+거라]・・・・「가다」及び「〜가다」の形の動詞・「자다」・「있다」 の3語に代表的につく、古めかしく権威的な感じのする命令。 →コチラ参照。
 例:어서 가거라.(さっさと行くがよい。)
   잘 있거라.(元気でおれ。)


④[第Ⅰ語基+너라]・・・・「오다」及び「〜오다」の形の動詞に選択的につく、古めかしく権威的な感じのする命令。 →コチラ参照。
 例:어서 오너라.(さっさと参れ。)

 ・・・ということで、<初級から先の朝鮮語>の管理者・白宣基先生、どうもありがとうございました。

 あ、サークルの授業の中でN先生が「해라」「しろ」で、「하라」「せよ」とおっしゃったのは非常にわかりやすく、腑に落ちた説明だったですね。
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康宗憲(カン・ジョンホン)氏の数奇で幸福な人生[1]

2012-08-19 23:53:04 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 今年4月に亡くなった在日の歴史学者・李進熙は自伝「海峡」(青丘文化社.2000)で、「私の生涯において、最大の転機は八一年だった」と記しています。

 その年、彼は「季刊 三千里」を創刊(1975年)した仲間の金達寿から声をかけられ、歴史学者・姜在彦、三千里社主の徐彩源とともに韓国を訪れます。

 「海峡」によると、上記の4人が81年1月に集まった酒の席で「金大中の無期への減刑」が話題となり、さらに前年(1980年)の光州事件で首謀者とされる3人の死刑囚のことに話が移る中で、金達寿が突然「どうだろう、韓国に行って、5人の在日朝鮮人死刑囚の減刑を要求しては・・・」と提案したのがきっかけとなったとのことです。

 「海峡」にはあまり詳しくは書かれていませんが、金達寿「故国まで」や金石範「故国行」などを読むと、彼らの韓国訪問が在日人士の間で大きな議論と対立を招いたことがわかります。
 ここでいう在日人士とは、韓国の軍事政権とその非民主的な体制を批判するとともに、60年前後から70年頃にかけて朝鮮総聯から抜けた左翼的な作家や学者たちで、国籍も朝鮮籍のままだった人たちです。
 そのような、大きく括れば同志ともいうべき人たちの間で議論の焦点となったのは、訪韓が韓国側の、とくに光州事件を弾圧した全斗煥の軍事政権の宣伝に乗じることになってしまうのではないか、ということでした。
 とくに金石範の批判は厳しく、結局その後「季刊 三千里」の編集同人から離脱します。

 ・・・このような在日作家の訪韓や、国籍をめぐる問題も興味深いテーマですが、それはひとまず措いといて(これだけ書いたのに・・・)、今回は上記の5人の死刑囚について、いや、その中の1人について取り上げます。

 「海峡」で李進熙は、「陳斗鉉、崔哲教ら五人で、そのなかの陳斗鉉は学生時代からよく知っている間柄だった」と記しています。つまり彼が知っていたのは、陳斗鉉だけだったようです。
 さらに、翌1982年3月2日のこととして、「死刑確定者の5人が無期に減刑された。陳斗鉉、崔哲教、姜宇奎、康宗憲、白玉光の5人。その後彼らは釈放され、日本にいる家族のもとへ帰っている」と5人全員の名が記されています。
 彼ら5人が、どのような事件で死刑を宣告されたのかは全然説明がありません。金達寿等の本でも同様です。

 私ヌルボ、この「海峡」という本を読んだのがこの5月。そしてこの5人の名前を見て、心の中で「あっ」と叫びました。
 この康宗憲(강종헌.カン・ジョンホン)と言えば、今話題のあの人物ではないか・・・!

 まあ、今話題の、と言ってもごく一部でしょうけど・・・。
 つまり、手っ取り早く言えば・・・

①今年(2012年)から在日韓国人にも韓国の総選挙の参政権が認められて、さっそくその在日最初の候補者として、康宗憲氏が統合進歩党から比例代表順位18位にリストアップされ、立候補したのです。(統合進歩党は、民主統合党に次ぐ野党第2党。議会内で最左翼の政党です。) 

②4月11日の選挙の結果、統合進歩党は、選挙前を6議席上回る13議席を獲得しましたが、順位18位の康宗憲氏は当選にとどきませんでした

③ところがその後、比例代表候補党内予備選での代理投票等の不正疑惑が問題化して統合進歩党内は大紛糾。康宗憲氏はもしかして繰り上げ当選もあるか、とも言われました。(そうはならなかったが。)


 ・・・ということで、関心の高さはどれくらいだったかはよくわかりませんが、在日社会の間では今春の話題となった人物が康宗憲氏で、そんなわけで私ヌルボ、「海峡」で彼の名前に出くわして、「あー、こういうふうに彼らの人生が交錯していたのか」とちょっとした感懐に耽ったのでした。
 もし金達寿が彼らの減刑請願を発案していなかったら、康宗憲氏等5人はその後処刑されていたかも・・・。(もっとも、請願に関係なく、彼らはどっちみち減刑されるだろう、との観測もあったようですが・・・。ここらへんはよくわかりません。)

 康宗憲氏の今回の立候補については、3月の共同通信の記事(→コチラ)で「4月の韓国総選挙で、在日韓国人2世の早稲田大客員教授、康宗憲さん(60)=京都市在住=が、左派系の統合進歩党の比例代表候補として出馬することが19日までの同党代議員投票の結果確実になった」と報じています。
 また「在日に対する本国の無関心を改めさせる」と語っているとのことなので、この記事を読んだ日本人読者は「在日韓国人の人たちはこぞって彼を支援するのだろう」と思ったのではないでしょうか? そして民団も組織的に応援するのかな、とも。

 ところがところが・・・。
 韓国ではその後、上記③の統合進歩党内の不正選挙に関連して、党内主流派=<従北勢力>すなわち親北朝鮮どころか北朝鮮に従属しているとの批判・非難が、主に保守言論を中心に高まり、また国会内でもこの言葉がセヌリ党による野党攻撃のために用いられることとなりました。
※この<従北>という言葉については、7月6日の林秀卿(イム・スギョン)についての記事でもふれました。

 そのような中で、民団の機関紙「民団新聞」は、5月23日付で「「金日成主義者」が国会に!?…韓統連系の康宗憲統合進歩党比例代表候補」という記事を掲載し、「康氏は・・・民団などがセヌリ党に集票すべく広範囲な不正選挙を組織した、とのデマを記者会見で公然と流した」等々、彼を非難しました。

 また民団系の「統一日報」も、5月9日の記事「転向していないスパイ康宗憲を国会議員候補に公認した統合進歩党!」で康宗憲氏の過去の行跡、とくに北朝鮮との関係を詳細に記し、厳しく非難しています。

 一方康氏の側も、彼が顧問となっているNPO法人三千里鐵道の理事長・都相太氏が、上述のような民団新聞報道に対して5月28日公開質問状を発しました。(→コチラ参照。) (「民団新聞」の回答はなかったようです。)

 このように、韓国内の左右対立の構図が、康宗憲氏をめぐって日本でも繰り広げられているんだなあ、というのが傍観者的感想なんですが、その後の「統一日報」の記事(→コチラや、→コチラ)によると、彼は死刑台から教壇へ 私が体験した韓国現代史」(角川学芸出版.2010)という自叙伝を出しているんですね。
 政治的・思想的判断はひとまずおいといて、なんかおもしろそうではないですか・・・、って死刑宣告まで受けた人の体験記を「おもしろそう」と言うのも不謹慎な感じではありますが・・・。
 ヌルボ行きつけの横浜市立中央図書館にはなかったものの、旭区の図書館にはあったので、さっそく借りてイッキ読みしました。

        
 【かつては確定死刑囚、今は大学教員とは、たしかにドラマチックな人生です。】

 ・・・が、それからもう1ヵ月かー、うーむ。
 たしかに興味深い内容でした。
 ただ、やはり彼をどう評価し、どのように記事に書くか、というのが<従北>でも保守派でもない(と自分では思っている)ヌルボとしてはむずかしくて、ここに至った次第。
 タイトルも苦心の末「康宗憲氏の数奇で幸福な人生」と・・・。よくわかんないでしょ。
 続きはその自叙伝の中身について。(いつになるかな?)

[2016年2月1日の追記] 続きを書かないまま3年半も経ってしまいました。その後康宗憲氏の「北朝鮮スパイ」容疑については再審で無罪が確定しました。最近では、その「<冤罪事件>審理の裁判官らが今も要職にある」ことが進歩系の新聞「ハンギョレ」で報道されました。(→「産経新聞」の記事。) 彼が死刑に処せられなかったことについては私ヌルボも率直によかったと思っています。ただずっと気になっているのは、上記の彼の著書にはその冤罪事件の具体的内容、つまり北朝鮮に行ったことがあるのかないのかに関してなんら記述がないことです。あるいは朝鮮総聯との関係も具体的に記されていません。この点は徐勝・徐俊植両氏についても同様です。私ヌルボは全然嫌韓派ではなく人権尊重を旨としている者ですが、康宗憲氏や徐3兄弟諸氏は講演等では北朝鮮のことは語ることがあるのか疑問に思っています。
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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[8月10日(金)~12日(日)]

2012-08-14 22:34:24 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 2週間前の記事で、「ダークナイト ライジング」について、「ダークナイト」の方が衝撃度は上で、その理由として、ヒース・レジャーの存在感もさることながら、それ以上に「作品の基底にある価値観の問題。うーむ、うまく表現できない」と書きました。
 先週の「週刊文春」を見ると、町山智浩の「言霊USA」がやはりその2つを比較していました。まず「ダークナイト」は、正義を標榜するバットマンがかえってテロを呼び寄せてしまう皮肉な物語で、アメリカと9.11テロを象徴した傑作といわれた。一方「ライジング」の方は、アメリカ人が見れば「ウォール街を占拠せよ」運動を重ねずにはいられないはず。「ライジング」の敵役・ベイン軍団は武力革命を起こし、金持ちの資産を貧者に分配する。そしてバットマンは警察と手を組んで彼ら革命勢力と戦う。・・・という構図で、アメリカの保守や右翼の論客たちは「ライジング」を絶賛した、ということなんだそうです。なるほどそーか、そーなんだよなー。私ヌルボが書きたかったのもそこらへん。
 
 先週キネカ大森を持ち上げたからには行かなくちゃ、ということでミッドナイトFM観てきました。変質者役のユ・ジテの存在感が大きいですね。追われる悪役がなかなか捕まらないどころか、さらにひどい状況になっていくというのは「チェイサー」だの「悪魔を見た」だのいくつもあったなあ。それらを超えるのはちと難しいぞ。この作品もそうだけど。

          ★★★ Daumの人気順位(8月14日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①ヤコブへの手紙  9.4(28)
②どうぶつ会議 3D  9.2(25)
③アイス・エイジ 4:大陸移動説  8.8(114)
④サミーの冒険 2  8.8(77)
⑤名探偵コナン 11人目のストライカー(日本)  8.8(89)
⑥ベスト・エキゾチック・マリーゴールド・ホテル  8.5(159)
⑦Delicacy  8.4(55)
⑧ブルーバレンタイン  8.3(69)
⑨ダークナイト ライジング  8.2(2489)
⑩2度の結婚式と1度の葬式(韓国)  8.2(182)

 新登場は②だけです。
 その②「どうぶつ会議 3D」はドイツ製のCGアニメ。昨年の第24回東京国際映画祭で上映されました。原作はあのエーリヒ・ケストナーの絵本。岩波の子どもの本で出てますね。会議を繰り返すばかりで全然進展のない人間たちの会議に業を煮やして、世界中の動物たちが集まって会議を行い、国境をなくすとか、)軍隊の撤廃・戦争放棄等々を決めるという内容で、いかにも第2次大戦後間もない時代を反映した絵本でしたが、このアニメの方は、ミーアキャットのビリーがライオンのソクラテスとともに動物たちの王国になくてはならない水を求めて旅に出る・・・、なんて、ケストナーの物語とは全然違うじゃん。コメディアンのパク・ソングァンや、「ギャグコンサート」等に出演しているシン・ボラが声の出演。韓国題は「빌리와 용감한 녀석들 3D(ビリーと勇敢な野郎ども 3D)」です。日本公開は未定。音楽は、アルフレッド・ニューマンの息子のデヴィッドが担当してるんだな、ふーん。 ※3ヵ国予告編比較はいかが?→韓国語版、→ドイツ語版、→英語版

【専門家による順位】

①ミッドナイト・イン・パリ  7.8(7)
②少年は残酷な弓を射る  7.7(7)
③嵐が丘  7.7(4)
④二つの扉(韓国)  7.6(6)
⑤ダークナイト ライジング  7.4(7)
⑥シスター  7.2(5)
⑦ぴちぴち(韓国)  7.0(6)
⑧ジョージ・ハリスン リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド  7.0(2)
⑨名探偵コナン 11人目のストライカー(日本)  7.0(1)
⑩泥棒たち(韓国)  6.8(6)

 新登場は⑥「シスター」だけです。今年第62回ベルリン国際映画祭で特別銀熊賞を受賞したフランス・スイス合作の作品。第13回全州国際映画祭でも開幕作として上映されました。ですが原題は「L'Enfant d'en haut」つまり高い所の子ども=いいとこのぼっちゃん。しかし主人公は山の麓に姉と住む12歳の少年で、高い所にあるスキー場でスキー客のウェアや鞄などを盗んで生計を立てているのです。ところが姉は仕事もなく弟に貢いでもらっているのになぜか弟に高圧的で、なんだか謎めいている・・・。韓国題は英語題と同じく「시스터(Sister)」。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[8月10日(金)~12日(日)] ★★★

         勢い続く「泥棒たち」、1,000万人に迫る

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・泥棒たち(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・7/25 ・・・・・・・・・・・・・1,138,556・・・・・・・・・9,237,475・・・・・・・・66,782・・・・・・・801
2(29)・・風と共に去りぬ(韓国)・・・・・・・・8/08・・・・・・・・・・・・・・・961,793・・・・・・・・・1,343,487 ・・・・・・・・・9,587・・・・・・・694
3(5)・・私は王である(韓国)・・・・・・・・・・・8/08・・・・・・・・・・・・・・・271,093 ・・・・・・・・・・490,592 ・・・・・・・・・3,390・・・・・・・471
4(2)・・ダークナイト ライジング ・・・・・・・・7/19・・・・・・・・・・・・・・・240,446・・・・・・・・・6,073,551・・・・・・・・45,072・・・・・・・367
5(3)・・サミーの冒険 2・・・・・・・・・・・・・・・8/01・・・・・・・・・・・・・・・218,639 ・・・・・・・・・・967,343 ・・・・・・・・・7,441・・・・・・・370
6(4)・・アイス・エイジ 4 大陸移動説・・・7/25 ・・・・・・・・・・・・・・118,625 ・・・・・・・・1,453,209 ・・・・・・・・10,993・・・・・・・271
7(新)・・どうぶつ会議・・・・・・・・・・・・・・・・・8/08 ・・・・・・・・・・・・・・・86,564 ・・・・・・・・・・123,247・・・・・・・・・・・827・・・・・・・241
8(新)・・ステップアップ・レヴォリューション・・8/15・・・・・・・・・・・・21,029・・・・・・・・・・・・22,245・・・・・・・・・・・177・・・・・・・・90
6(6)・・名探偵コナン・・・・・・・・・・・・・・・・・7/19 ・・・・・・・・・・・・・・・・18,044 ・・・・・・・・・・499,974 ・・・・・・・・・3,204・・・・・・・・82
     11人目のストライカー(日本)
10(7)・・怖い話(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・7/25 ・・・・・・・・・・・・・・・・13,955 ・・・・・・・・・・315,775 ・・・・・・・・・2,332・・・・・・・・65
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「泥棒たち」は先週から減ったとはいっても今回も100万人を超える数字で、1,000万人の大台も目の前です。
 また、1~3位がすべて韓国作品というのは久しぶり。
 2・7・8位の3作品が新登場です。
 2位「風と共に去りぬ」はチャ・テヒョン主演の時代劇コメディ。
金よりも貴重だったという氷の倉庫が西氷庫(ソビンゴ)で、国家が許可した商人らに管理させていたのですが、邪魔者を謀略で排除して氷を手中に収めた男がチョ・ミョンス。それに対し、彼により父親を失った無念を晴らすため、その息子が西氷庫の氷20万枚を強奪する計画を立て、さまざまな分野(盗掘とか爆弾作りとか)の専門家を集めるのですが・・・。予告編(→コチラ)を見ると、やっぱりコメディっぽい雰囲気で、楽しそうではあります。
 7位「どうぶつ会議」は上述しました。やっぱり韓国題の「ビリーと勇敢な野郎ども」の方が内容に合ってるかも・・・。
 8位は「ステップアップ・レヴォリューション」は若者に人気のダンス映画シリーズの第4弾。日本では劇場公開は第1作だけでしたが・・・。この映画については、タイ在住の方のブログ記事が詳しく、また興味深かったです。7月29日の記事ということは、韓国より早く上映しているんですね。3Dでも2人の料金が480バーツ(約1200円)、やっぱり安いなー。映画の内容ですが、プロのダンサーを目指すマイアミのホテルオーナーの娘が、ダンスチームのリーダーをやってるそのホテルのウェイターと惹かれあい、チームに加わる。チームは最初はYouTubeのヒット数を上げて賞金を稼ぐことが目的だったが、ある事件をきっかけに、地域開発計画に対してダンスで抗議活動をするようになる、というもの。先のブログの主は「自分的には、STEP UPシリーズ中最高作だと思います」とのこと。また「タイ人は、音楽、踊り、単純なストーリーを好むため(インド人も同じ?)、この手の映画は向いていると思います」ですと。韓国題は「스텝업4:레볼루션」。日本公開は未定。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・少年は残酷な弓を射る・・・・・・・・・・7/26 ・・・・・・・・・・・・・・・3,645 ・・・・・・・・・・・・・22,160 ・・・・・・・176・・・・・・・・・・14
2(新)・・シスター・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/09 ・・・・・・・・・・・・・・・2,236 ・・・・・・・・・・・・・・3,989・・・・・・・・・31・・・・・・・・・・19
3(3)・・二つの扉(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・6/21・・・・・・・・・・・・・・・・・672 ・・・・・・・・・・・・・66,638 ・・・・・・・458・・・・・・・・・・12
4(2)・・ぴちぴち(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・7/25・・・・・・・・・・・・・・・・・・501・・・・・・・・・・・・・11,148・・・・・・・・・76・・・・・・・・・・・9
5(4)・・カフェ・ド・フロール ・・・・・・・・・・・・・・7/19 ・・・・・・・・・・・・・・・・・286 ・・・・・・・・・・・・・・3,792・・・・・・・・・26・・・・・・・・・・・5

 新登場は2位「シスター」のみ。内容等は上述の通りです。
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「鄭雨沢の妻」を読む  北朝鮮で粛清された総聯幹部と、日本に残された元妻の運命の岐路

2012-08-13 23:56:37 | 韓国・朝鮮に関係のある本
 7月29日の記事で、たまたまプロポーズされて結婚した相手が在日朝鮮人の男性で、おりしも北朝鮮への帰国運動が盛り上がっている時期でもあったので、間もなく一家ともども北朝鮮に渡った日本人妻・斉藤博子さんの北朝鮮に嫁いで四十年-ある脱北日本人妻の手記」(草思社.2010)を紹介しました。

 北朝鮮への帰国事業が、いかに多くの在日朝鮮人や、日本人妻等の運命を大きく左右したか・・・。彼らについて書かれた本や手記等を読むと、その悲劇にも実に多様な「諸相」があることがわかります。(最近公開された梁英姫監督の映画かぞくのくにもそのひとつ。)

 この鄭雨沢の妻」(サイマル出版会.1995)も、その一例を提供してくれます。<自伝小説>と銘打たれていますが、おそらくほとんどは著者の角(すみ)圭子さんの実体験とみていいのでは、と思います。

      

 今、鄭雨沢(てい・うたく.チョン・ウテク)という人物を知る人は多くはないでしょう。私ヌルボも知りませんでした。
 最近李恢成の自伝的小説「地上生活者」を読んでいたら、朝鮮総聯創立初期の中央常任委員で、文化・宣伝部次長の任にあった千時雨という人物の名が少しだけ出てきて、それでなんとなく書名だけ記憶にあったこの「鄭雨沢の妻」を思い出し、図書館で借りて読んで、はじめていろんなことを知ったというわけです。

 鄭雨沢は1927年3月17日生まれ、角圭子さんは1920年生まれ。角さんが7つ年上です。
 2人が知り合ったのは1950年、朝鮮戦争が勃発して間もない頃で、角さんは当時神田駿河台のソヴェト研究者協会(ソ研)の事務局で、副島種典(種臣の孫)の下で勤務していました。
 そのソ研の総会で、解放新聞社(在日本朝鮮人連盟系)の記者だった彼が招かれ、朝鮮戦争の現状について講演をしたのが1つ目のきっかけ。そして10日ほど後に偶然中央線の電車に偶然乗り合わせたのが2つ目のきっかけ。車内で話に興が載って、武蔵境の寮に帰るという鄭に彼女は声をかけ、彼女が間借生活をしている三鷹で一緒に下車することになります。(こうした偶然が両者の運命を決定づけるんだなー。)

 翌1951年1月2日、武蔵境の寮が火災で丸焼けになった後、2人は彼女の部屋で新婚生活に入ります。

 その間の2人が交際を深めるエピソードの中で、とくに彼の提案で行った相模湖のデートは最上の思い出だったようで、会話も情景も仔細に、かつ印象深く描かれています。
 たとえば湖に浮かべたボートで声をかぎりに歌を歌ったこと等々。彼は少年期に声楽家の従兄から教わったという歌を次々に歌ったとか。

 「それらはフォスターであったり、シューベルトであったりしたから私も歌えた。またトセルリの「嘆きのセレナータ」を鄭は母国語で歌い、私は日本語で合わせた。やがて彼は歌劇「リゴレット」中のアリア「女心の歌」を「ラ・ドンナ・エ・モビレ」と、イタリア語で本格的な発声で歌いだし、私を驚かせた」。

 歌といえば、後年(1957年)板橋区志村中合でアパート生活を始めた頃の朝のことも・・・。

 「黒い目をあけてよ かわいい人よ 夜が明けた もう鳥が啼いている 愛の唄を」
  私は・・・眠ったふりをして歌を聴いているが、「愛の唄を」のくだりまでくると噴出してしまう。彼はマスネーの有名な歌曲「青い目をあけて」を黒い目に置き替えて、思い入れたっぷりに唄っているのだ。

 本についての会話も紹介します。

 青写真(未来の人生設計)についての彼女への質問を、そのまま返された彼はこう答えます。
 「ぼくが人生のエンジニアだったら、未来をこう設計します。《世界を震撼させた十日間》のジョン・リードとか、《ニッポン日記》のマーク・ゲイン」 
 私はここでコミュニストのジョン・リードとリベラリストのマーク・ゲインの名が彼の口から同時に出てきたことに、ちょっと驚いた。
  「彼らのような一級の、世界的ジャーナリストになって、世界をまたに活躍したいんです」

 ・・・いやー、何という夫婦なんだ! 要するに、2人ともすごいインテリなんですね。

 彼女は、両親が画家という家の一人娘。明星学園に11年通った後日本女子大。ノモンハン事件(1939年)の頃には父母には「仮面をかぶって」「ぼつぼつ赤の勉強」を始めたという、すなわち社会主義に理想を抱く良家の子女。戦後のソ研での仕事もその延長線でしょう。

 一方鄭雨沢は、朝鮮半島南西部、木浦の沖の荏子島(イムジャド)の富裕な地主の三男。木浦中学2年の時、徴用で大邱の軍事工場に入れられるが、半年後仲間を誘って日本人の監督に闇討ちをかけ、逃亡したため、学歴は中2止まり。以後終戦まで丸5年間本を読み漁る。マルクスも読んでいた彼は、終戦後朝鮮共産党(のちの南朝鮮労働党)に加わり、何度も捕まっては水拷問や電気拷問に責め立てられたりもしたそうです。
 1948年8月の大韓民国成立の2ヵ月後起こった麗水・順天事件で、危うく生命の危機を免れた彼は、密航船に乗り込んで日本に逃れます。
 2人が出会ったのは、彼が日本に密航して1年9ヵ月後のことです。(捕まったら李承晩政権の韓国に送られて死刑になる、と鄭は彼女に語ります。)

 1953年8月8日朝日新聞は「北鮮、十二要人を粛清」との見出しで南朝鮮労働党の指導者だった朴憲永等の粛清を伝えます。(処刑は56年(?)) 同じ南労党出身の鄭雨沢も衝撃を受けたことでしょう。
 翌1954年、赤狩りが激化する中で、2人は警察の追及を受ける身となり、居所を転々と移します。
 角さんは「良き妻の素振り」で夫に聞こうとしなかったし、彼も語りませんが、分裂している日本共産党の主流派の側に属して同胞の地下活動を指導しているらしかった、とか・・・。

 警察の追及を逃れて、最後に入り込んだ所が川崎の池上新田にある大きな朝鮮人街。
 「ふつう中留と呼ばれているそこは、一九五四年の当時、警察官も一人で入れぬ無法地帯ともいわれていた」
・・・とあります。現在は池上新町。<川崎のコリアタウン>セメント通りも近い所です。そこの街や、そこで暮らす人々のようす、角さん自身の体験の描写は非常に興味深いものがあります。全270ページの本書のうち約100ページに及んでいます。(現在の街はずいぶん変貌していることは推察できます。)
 ヤミ商売・密航者・家庭争議・煤煙等々、そんな中で、人々は飲み、食い、歌い、踊る・・・。
 この部分については、次のエピソードだけ紹介して、他はあえて省略します。

 彼らとのつき合いの中で習った朝鮮語を得意そうに口にした妻に、鄭は「喜ぶどころか複雑な、暗い表情」になります。そして「しばらく考えるふうに黙してから」言います。
 「ね、スミ。ここの人たちの言動を朝鮮本来のものとはどうか思いこまないでおくれ。ゆがんでいる・・・・。ひどくすさんでいる」 
  後半の言葉をとても苦しそうに、だが思い切って言うというふうに言いおわると、あらためてここの人びとに、いや多分、在日朝鮮人のすべてにであろう、思いを馳せる深い眼差しになって、「無理もないことなんだ」と低い声で、ゆっくり噛みしめるようにつぶやく鄭雨沢でもあった。
(朝鮮人街に住む人々と、鄭自身との距離感の微妙な表現がいかにもインテリっぽい。)

 2人が川崎に潜んで暮らしている間、1955年朝鮮総聯が創立し、民族団体は日共の影響下を離れて北朝鮮に直結した金日成路線へと転換しました。組織内で先覚派(主流派)に対する後覚派に属していた鄭は、神奈川県朝鮮中高級学校の日本語教員に「左遷」されますが、翌56年には中央常任委員に選ばれ、文化・宣伝部次長となって信濃町の総聯中央本部に通うようになります。
※1954年横浜の紅葉ヶ丘に音楽堂とともに落成した県立図書館に2人がほとんど日曜ごとに通って思い思いの読書に耽った、という記述には、今近辺に居住してその「歴史を感じさせる」たたずまいを知るヌルボにとっては、思うところが多いですね・・・。

 1957年夏から板橋区志村中台のアパートへ。「ひぐらしの里」とよばれる美しい自然環境で、2人はしあわせな日々を送ります。

 そして1958年夏頃から北朝鮮への帰国運動が活発化します。
 総聯の宣伝部長として、鄭雨沢は最前線で働きます。

 1959年4月、角さんが著した「トルストイの愛と青春」の刊行を祝って、中央公論社の地下ホールに先輩や友人たちが集まります。その二次会の席でロシア文学者の江川卓がツルゲーネフの「その前夜」を話題にします。ブルガリア人青年と結婚したロシア人女性エレーナが、夫の病死後も彼が命をかけた独立戦争に身を捧げるため看護婦としてブルガリアに向かうという物語。「エレーナの生き方を私に重ねていたからかもしれない」とも思われる江川が「角さんも、いくの? やっぱり」という問いかけに「行くってどこへ」ととぼける彼女。江川は鄭雨沢にも、彼が岩波の「世界」3月号に載せた「全国民を敵として 李政権の恐怖政治と国家保安法」について語りかけます。(角さんは、密航者である夫が「もう、大丈夫なんだわ」という喜びを内心に秘めます。)

 角さんの人生の転機は、不意打ちのようにやってきます。
 出版記念会の20日後、当時続けてきた朝鮮大学校の講師の解雇を、突然言い渡されます。
 そして1961年。朝鮮戦争開戦日の6月25日日比谷公園で開かれる在日朝鮮人の集会で、演説するための原稿を持って出かけるところの鄭雨沢に、角さんは「私もあとから行くわ」と言います。ところが振り返った彼の言葉は「来る必要ないよ」でした。

 大学を馘になって以来の疑問と悲しみを一度にぶつける妻に、鄭雨沢が語ったのは、帰還船に乗り込んだ日本人妻の多くが社会主義建設の重荷になっている、ということ。朝鮮人の帰国者には指導員1人つけば足りるのに、日本人妻には3人つけても間に合わない等々。したがって、日本人妻を帰国船に乗せるのはわが国にもう少し余裕ができるまで見合わせて、同族結婚の家族を優先してほしい、と共和国(北朝鮮)から連絡があった、というのです。

 ともかく今日の集会には反・日本人妻感情といったものが沸騰していて、その中に自分をさらすことが鄭にはできないとわかった角さんは「集会に行かないから、心配しないで行って」と告げますが、彼が背中を見せた瞬間激しい孤独感に襲われて「テイ」と呼びとめます。
 振り向いた彼に「私はこれからどう生きればいいの」問いかけると、しばらく無言で見つめ合った後、大粒の涙を流しながら彼が発した言葉が「スミ、ぼくたちは別れなければならない」です。「スミは、自民族の良き娘に還らなければならない」とも・・・。

 「スミは日本人の中でも、とくべつ毛並みの良い家の娘に生まれた。ご両親がきみにさずけた才能の上に、ああいう家庭で培われたおのずからのものを、きみは資質としても、感性としても持っている。朝鮮人の世界では、そういうかけがえのない貴重なものを殺してかからなければ・・・」

 もし彼らの物語が将来映画化でもされることがあったら、このような彼の言葉を手がかりに、彼女を北朝鮮に連れて行った後の悲劇を予見して、あえて別れた、という含みをもたせるかもしれません。
 しかし、ここはやはり彼はあくまでも共和国の指示に忠実だったとみるのが正しいかも。

 (上記のような日本人妻についての見方は、あくまでも組織の内部情報に止めたということなんでしょうか? 具体的にすると、知られてはまずい北の実情が「敵」に漏れてしまうし・・・。)

 「テイ、演説に遅れて、早く行って」という彼女の言葉で終わる本書が書かれたのは1995年。巻頭には、79年春のこととして、新聞に「北・朝総連元幹部相次ぎ粛清」という横見出しの下に知識人らを“スパイ”で処断、鄭雨沢(元中央外務部副部長)もとある記事を目にします。

 ヌルボが一読者として思うに、上述のように①南労党系で、②地主階級出身で、③ブルジョア的教養(?)を持つ彼が粛清されたのは、(今から見れば)当然の成り行きでしょう。
※先述の鄭雨沢が歌った西洋の歌曲について思い出されるのが声楽家金永吉(日本名・永田絃次郎)のこと。1960年1月帰国船に乗って清津港に着いた彼は、歓迎式直後に「オーソレミオ」をイタリア語で歌ったことが問題とされたといわれます。それが彼の共和国の状況だったとすると、鄭雨沢の教養は、国にとっても彼にとっても危険なものだったでしょう。
 そのような危惧を彼は予感していなかったのでしょうか? 総連関係者で、「帰国」すれば処罰が待っているような北朝鮮に、それでも行く事例は何かで読んだ記憶がありますが・・・。

 夫とともに北朝鮮に行った日本人妻・斉藤博子さんの場合は生まれて間もない子どもと別れたくない、ということが決断の大きな理由となりました。

 斉藤博子さん夫妻と、鄭雨沢・角圭子夫妻は、夫婦の民族性以外はほとんど対照的です。
 ただ、角さんに子どもがいれば状況は変わったかどうか・・・。
 また、もし鄭雨沢が日本人妻についての情報を聞いていなかったり、無視したとすると、角さんは当然心に決めていた通り北朝鮮に渡っていたでしょう。するとその先は・・・。
 ・・・ということなどをいろいろ考えてみると、本当に禍福はあざなえる縄のごとし、です。

 角さんは、まえがきで「見たことも行ったこともない国の在り様を、鄭とともに信じてうたがわなかった責任から、私がまぬがれ得るものとは思わない」と記しています。このような誠実さに、彼女の人間性がうかがわれます。(彼女よりもはるかに大きな責任を負っていながらも、なんらの反省や謝罪の言葉もない人はたくさんいるのに・・・。)


 ★追記
 先にあげた李恢成「地上生活者 第3部」に、物語の語り手・趙愚哲が在日の学生組織の仲間の自宅を訪ねる場面があります。その場所が川崎の中留。そこで一晩をすごした翌朝、その友人が声をかけます。
 「ほら、前の部屋だよ、千時雨が少し前まで住んでいたのは」
 直接会ったことがない千時雨の名を愚哲が覚えているのは、雑誌「世界」に彼が書いたものを読んでいるからです。
 以下、長いですが、そのまま引き写します。

 驚ろくのはその文章のなめらかさだった。日本人はだしである。たぶんこの自分よりか七、八歳うえの世代だろう。植民地時代にたっぷり国定教科書や軍事訓練による教育を受けた賜物もあるのかも知れないが、要は本人の資質のせいにちがいない。愚哲は在日一世にこんな達者な文章で論理展開をする人がいるのを誇らしく思ったくらいなのだ。 
 「千時雨氏はここで日本人のかみさんと暮してたのさ。ロシア文学やってる角田敬子という女性だけど知らんか? トンムはロシア文学やってたから知ってるんじゃないの」
 「うーん。おれは天麩羅学生みたいなもんだからな。けど、名前だけは何かの翻訳で見たことがあるような気がするな」
 「そうか。彼女は民族師範専門学校でもロシア語をおしえているオシドリ夫婦なのさ」
 「ふうん」ぼく愚哲は深く考えぬまま彼の話を聞き流していた。
  まさかそのときは後年この二人と知り合いになり、入院中の彼を見舞ったり、あげくの果てはべつの若い朝鮮人女性と帰国する彼を独りで上野駅まで見送ることになろうとはゆめにも想像していなかった。
 
 「地上生活者 第4部」には、千時雨は同僚の若い朝鮮人女性と北に渡ったこと、その時彼女は身籠っていたことが短く書かれています。
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[韓国語の新語?] 「サルファファン(米花環)」がK-POPコンサートの定番に?

2012-08-09 23:31:50 | 韓国語あれこれ
 いやー、知らんかったなー。
 ・・・というのは熱烈K-POP女子のTさんから聞いた米花輪のこと。

 韓流スターに贈る花輪で、単なる造花ではなくて、お米がセットになっていて、それをスターの側がとりまとめて、自分の名前で恵まれない人たちにプレゼントする、というものなのだそうです。
 そういうのが今はフツーになってきてるそうですよ。

 で、帰ってからいろいろ検索してみたら、なーるほど、あるある、たくさんある・・・。

 たとえば、今年(2012年)5月16日「歌手IUの多国籍ファン、米俵の誕生日プレゼント 恵まれない近隣に寄付」という記事。20歳ということで200kg、5月16日ということで516kg、計716kgの米を欠食児童などに寄付するとか・・・。
<欠食児童>なんて言葉、若い人たちは知ってるだろうか? 昭和初期の東北の飢饉の頃の流行語。私ヌルボは幼い頃、「なんか食べる物ない?」としきりにせがむと、明治生まれの母は「そんな欠食児童みたいに・・・」と言ったものです。
※米1升(1.8ℓ)が約1.5kg。大雑把に計算して、米1トンが児童の食事8千食分に相当。

       
  【お米の袋がたくさん積み上げられています。が、これは本当にお米が入っているわけではありません。】

 また4月にはKARAの日本公演「KARASIA」でもこの米花輪が登場。関連記事&写真は→コチラ

 その他、同様の記事はいっぱい。

 米花輪の種類も、先のUAの写真のような豪気なものから、お米10㎏を贈る個人単位のものもふつうにたくさんあります。
 またスターにファンが贈るものばかりでなく、一般の間の祝賀会等のおめでたい催しや、逆に葬礼用のものもあります。

           

 この米花輪を、韓国語では쌀 화환というんですね。<米 花環>。サル・ファファン。より韓国語の発音に近く書けばサルァワンです。
 本記事のタイトル、「新語?」と<?>を付けたのは、新語というより新しいモノと言った方がよさそうだからです。

 米花輪関係の記事が韓国のネット上に載るようになったのは2010年頃のようです。
 昨年(2011年)8月のJ-PICTURESの記事「「BEAST」米俵、奇抜なアイディアに大爆笑」(日本語)には、「コンサート、ミュージカル、製作発表会などにファンが送るスター応援用の米俵がファンクラブ応援文化のトレンドとなり、米俵の役割がますます進化している」と書かれています。(米花輪を米俵と訳すのは問題あり。) また「ファンがスターに愛を表現しながら米農家と貧しい人々を助けることができ、米俵一つにもスターを愛する情熱と意識を込めて社会貢献に役立つ成熟したファンクラブ文化を作っている。tvN「ENEWS」で「スターのファンがプレゼントした異色花束」の第3位で紹介された米俵送り運動には、現在世界約30ヶ国の韓流ファンが参加している」というあたりで、いろんな背景が見えてきますねー。

 そして2011年12月にはスターたちが年末を迎えて米花輪を寄付した、という記事がグンちゃんの応援ブログに・・・。(→コチラ。)
 チャン・グンソクの3070㎏を筆頭に、パク・ユチョン(JYJ)、ピ、パク・ジョンミン、ビースト、2PM等々が寄付したお米の総量が11.635トンになったんですと。

 いろいろ記事を見てみると、この米花輪というのを取り扱っている代表的な会社が드리미(Dreame.ドリーミー)であることがわかりました。
 その日本語サイト(→コチラ)にあるように、드리미は드리다(トゥリダ.差し上げる)」と「(ミ.米)」の合成語です。(もちろん英語のdreamyもかけているのでしょう。) いかにも、というネーミングです。

 関連記事の中で、今年6月2日の「ヘラルド経済」に「米花輪の寄付、2年で7倍↑...過去最高は?」という記事(韓国語)にとくに注目しました。
 それによると、5月17日に開かれたMBCのドラマ「Dr.JIN」製作発表会で、キム•ジェジュンに31ヵ国のファンが寄付した米花輪の総量は26.8トンに達し、歴代の制作発表会に寄付された米花輪の最高値を記録したとのことです。(これまでは今年(2012年)3月のビッグバンのソウル公演が12.7トンで最高。個人では同月SBSドラマ「屋根部屋の皇太子」の制作発表会でのパク•ユチョンが11.5トンが最高値でした。)
 さらにこの記事では、ドリーミーの代表ノ・スング代表に直接取材しています。そのポイントは次の通りです。

・一般の人の慶弔事をターゲットに2007年5月にオープンしたが、今は芸能人に送る割合が60%を超えている。「韓流がこんなにすごいとは思わなかった」。 
・芸能人たちに寄付された米の花輪件数は、2010年が約4千件、2011年が1万5千件。今年は5月末現在で1万5千件で、年間では昨年の倍以上と予想される。
・米花輪は、2010年が約70トン、2011年が約300トン。今年は5月までで200トンを突破し、年間で約500トンに達すると予想される。(つまり、花輪件数、米の総量とも2年間で7倍増!)
・米花輪の寄付は、基本が米20kg10万ウォンで、米1トンが288万ウォン台。ここにスターの大型写真が入ると価格が高くなる。
・アイドルスターは平均1〜3トン、一般的な韓流スターは平均100kg〜1トンくらい。
・ドリーミー側はスターに寄付された米の預かり証をくれて、その後はスターが福祉館や社会福祉施設等を指定すれば寄付先に米を提供し、ファンに結果を通知する。
・外国人購入の割合が50%を超える。60ヵ国で米花輪寄付を利用している。今年6月末には日本の東京に支社をオープンする。


 スターとファンとの絆、恵まれない人たちへの支援、そして韓国米の販路拡大かー。知恵者がいるもんだなー。

<日本人と韓国人 その似て非なる事>というブログでは、米花輪について2011年1月(早い!)に2つに分けて記事を載せています。「日本のファンやサイトが独自に韓国芸能人名で日本の施設への寄付はできませんか?」と提案してますが、どうなんでしょうね?
 さらに翌2月の記事では、「2010年SHINeeが韓国で行ったミュージカルの時に集まった米花輪1.44トン分が米等の食料品とか医薬品とかになって北朝鮮に送られていた、と言うことは知っていましたか? ・・・韓国の人にとっては北朝鮮の人は同胞ですし南北統一ということもありますし、長い間太陽政策ということも行っていましたので仕方ないのかもしれません。でも日本の人ならばどうでしょう」と問題提起しています。
(よく調べたものです。)

※→コチラの大阪の花屋さんもドリーミーと提携しているようですね。米10kgの米花輪のお値段は3万円か。<韓流スターお届先情報>のページには、約100人のスターたちの宛先がリストアップされてます。
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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[8月3日(金)~5日(日)]

2012-08-07 19:33:25 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 目黒シネマなんて本当に久しぶり。オジサンには懐かしい雰囲気でホッとします。見逃してしまった「ドラゴン・タトゥーの女」、気になってたので観に行ってきました。50人くらい入ってたかな? 観終わってキネカ大森に向かい、これまた去年見逃した「わたしを離さないで」をハシゴ鑑賞。
 さて「ドラゴン・タトゥーの女」と「わたしを離さないで」の共通点といえば、どちらも原作本の評価がすごく高いこと。大体原作本vs映画の対決は9割方は原作本の勝ちなので、すでに読んでしまって内容を知ってるし、観てもたぶん失望するだろうと思ったのがパスした理由。しかし実際観てみると、さすがに原作を凌駕するとはいかないまでも、なかなか良くできた作品で観た甲斐はありました。
※キネカ大森では10日(金)までスエ主演の韓国映画ミッドナイトFM上映中。8/18(土)~8/24(金)は短い記憶、8/25(土)~8/31(金)はThe Catと、ちょっとマイナーな韓国映画を上映してくれるのがうれしい。あ、そういえば目黒シネマでも9/15~9/28サニー 永遠の仲間たち上映予定ですよ。

           
 【インドの大人気スター・ラジニカーント像。いやー「ロボット 完全版」おもしろかった! (この像、誰が作ったの?)】

 そして一昨日観たトガニ 幼き瞳の告発も原作本とは違う点はいろいろありますが、それは映画の特性を考慮した上での変更ということでOKでしょう。パンフによると、作者の孔枝泳さんは(映画化された3つの小説の中で)「内容を一番よくくみとってくださった映画がこの作品」と満足しているとのこと。読者の1人の私ヌルボもナットクの出来映えだと思います。ただ、原作では主人公(コン・ユ)の設定がもっと複雑で、その分内心の葛藤が深く描かれていました。その点、映画の方は明解ですね。人権センター幹事の女性(チョン・ユミ)についても同様。<善>対<悪>の対決を際立たせると、観客はえてして自分は昔も今も正義の味方、と思い込んでしまいがちだから、それはそれで問題ではないかなー? こうした事件を隠蔽しようという隠微な性向や異端者への圧力は、もしかしたら自分たちの中にもあるんじゃないの? ・・・と気づかせる要素がもう少しあるとよかったかな。

 109シネマズ川崎で公開初日(4日)の初回に観たかぞくのくには15分前に行って残り5席くらい。梁英姫監督、はっきりと新しい一歩を踏み出しました。ぜひたくさんの人に観てほしいものです。かなり重要な点で虚構があるのが少し気になります。同時に、とても重要なところはやっぱり監督自身の体験した事実に基づいています。いくつかのサイトで観た人の感想を読むと、北朝鮮への帰国事業のことを知らなかった人がけっこうたくさんいらっしゃるんですね。若い人たちにとっては生まれる20年30年も前のことだから無理もない、のかなあ?

 近作の予告編で期待していいかな、という日本映画は9月15日公開の内田けんじ監督「鍵泥棒のメソッド」、9月8日公開の西川美和監督「夢売るふたり」、そして8月11日公開の吉田大八監督「桐島、部活やめるってよ」の3作ですが、「桐島・・・」は「日本映画史に残る圧巻のフィナーレ」なんて宣伝文句は、たとえ実際そうだったにしても、チンプな文言の典型。ヌルボが担当者の上司だったら断固書き直させるぞ。「アナタ、これ、ちょっとね、月並みというか、え、月並みの意味知らない? 困ったなー・・・」。

          ★★★ Daumの人気順位(8月7日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①ヤコブへの手紙  9.4(27)
②サミーの冒険 2  9.1(42)
③アイス・エイジ 4:大陸移動説  8.9(105)
④名探偵コナン 11人目のストライカー(日本)  8.9(77)
⑤Delicacy  8.7(54)
⑥ベスト・エキゾチック・マリーゴールド・ホテル  8.5(157)
⑦ドラえもん のび太と奇跡の島  8.4(25)
       アニマルアドベンチャー(日本)
⑧ブルーバレンタイン  8.3(69)
⑨マジック・マイク  8.3(49)
⑩The Cabin in the Woods  8.3(997)

 新登場は②と⑨の2作品。
 ②「サミーの冒険 2」は、2010年公開のベルギー製アニメの第2作。サミーというのはカリフォルニアの海岸で生まれたウミガメ。第1作は、彼が仲間と一緒に50年かけて5大洋・6大陸をめぐる冒険物語でした。今度は、密猟者によって水族館に入れられたサミーとレイを、孫のエラや少年リッキーたちが助けようとする、というお話だそうです。歌手のIUがエラの吹き替えと、主題歌も歌ってるとか。韓国版予告編(→コチラ)を観てみたけど、立体的アニメはなんかブキミな感じがしちゃうんだよなー。韓国題は「새미의 어드벤쳐 2」。日本公開は未定(前作同様公開はないかな?) しかし、ウミガメは何歳までが少年時代なんだろ?
 ⑨「マジック・マイク」は、フットボール部で問題を起こして退学後、何の仕事をやっても上手くいかない青年(アレックス・ペティファー)が、人気男性ストリッパーのマジック・マイク(チャニング・テイタム)と知り合い、若手ストリッパーとして成功していくが・・・、というコメディだそうです。俳優になる前はホントにストリッパーだったというチャニング・テイタムの自叙伝的映画とか。男優2人が脱ぎまくり、ということで期待している向きもいらっしゃるようですが(?)、日本公開は未定。韓国題は「매직 마이크」とそのまま。

【専門家による順位】

①ミッドナイト・イン・パリ  7.8(7)
②少年は残酷な弓を射る  7.7(7)
③嵐が丘  7.7(4)
④二つの扉(韓国)  7.6(6)
⑤The Cabin in th e Woods  7.5(6)
⑥ダークナイト ライジング  7.4(7)
⑦ぴちぴち(韓国)  7.0(6)
⑧ジョージ・ハリスン リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド  7.0(2)
⑨毛皮を着たヴィーナス(韓国)  7.0(1)
⑨名探偵コナン 11人目のストライカー(日本)  7.0(1)

 今回は新登場はありません。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[8月3日(金)~5日(日)] ★★★

         「泥棒たち」、700万人も目前

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・泥棒たち(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・7/25 ・・・・・・・・・・・・・2,009,283・・・・・・・・・6,883,940・・・・・・・・49,784・・・・・1,092
2(2)・・ダークナイト ライジング ・・・・・・・・7/19・・・・・・・・・・・・・・・617,124・・・・・・・・・5,524,890・・・・・・・・40,898・・・・・・・630
3(34)・・サミーの冒険 2・・・・・・・・・・・・・・8/01 ・・・・・・・・・・・・・・359,349 ・・・・・・・・・・550,090 ・・・・・・・・・4,355・・・・・・・486
4(3)・・アイス・エイジ 4 大陸移動説・・・7/25 ・・・・・・・・・・・・・・301,814 ・・・・・・・・1,194,674 ・・・・・・・・・9,109・・・・・・・425
5(14)・・私は王である(韓国)・・・・・・・・・・8/08・・・・・・・・・・・・・・・・58,764 ・・・・・・・・・・・84,123 ・・・・・・・・・・・613・・・・・・・160
6(6)・・名探偵コナン・・・・・・・・・・・・・・・・・7/19・・・・・・・・・・・・・・・・54,744 ・・・・・・・・・・459,190 ・・・・・・・・・2,944・・・・・・・146
     11人目のストライカー(日本)
7(4)・・怖い話(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・7/25・・・・・・・・・・・・・・・・48,883 ・・・・・・・・・・268,305 ・・・・・・・・・1,978・・・・・・・150
8(32)・・ロック・オブ・エイジズ・・・・・・・・・8/02 ・・・・・・・・・・・・・・・48,744 ・・・・・・・・・・・67,693・・・・・・・・・・・・495・・・・・・・243
9(新)・・ピラニア・リターンズ ・・・・・・・・・・8/01 ・・・・・・・・・・・・・・・35,288 ・・・・・・・・・・・59,266・・・・・・・・・・・・519・・・・・・・266
10(7)・・ドラえもん のび太と奇跡の島(日本)・・7/25・・・・・・・・・・27,817 ・・・・・・・・・・141,108 ・・・・・・・・・・・910・・・・・・・109
     アニマルアドベンチャー
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「泥棒たち」は今週も圧倒的にトップ。累積688万人で、「ダークナイト ライジング」を追い越しました。すごいすごい。
 3・5・8・9位の4作品が新登場。全体的に数字が増えているようなのは夏休みに入ったためかな?
 3位サミーの冒険 2」は上述の通り。韓国語はサミーじゃなくてセミね。
 5位「私は王である」は時代劇コメディ。世宗大王が王位に就く前に、乞食と立場を入れ替わって町の中を歩き、新しい人との出会いや社会を経験してゆくという話。ふむ、韓国版「王子と乞食」? チュ・ジフンが初の時代劇出演で1人2役。原題は「나는 왕이로소이다」、王様はこういう言い方をするのか。えっナニナニ、イ・ビョンホンの初の時代劇映画「光海、王になった男」も今秋公開予定だって?(→関係記事)
 8位「ロック・オブ・エイジズ」は人気ロック・ミュージカルの劇場映画化。かつてはロックの神と呼ばれたミュージシャンが再起を目指す、という役どころをトム・クルーズが長髪をなびかせて熱演するそうですよ。80年代のロックナンバーの数々、ってのはどんな曲かな? 韓国題は「락 오브 에이지」、ロックじゃなくてラクね。日本では9月21日公開。今試写会募集してます。(→コチラ。)
 9位「ピラニア・リターンズ」は7月14日日本公開。韓国題は「피라냐 3DD」です。ピラニャねー。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・少年は残酷な弓を射る・・・・・・・・・・7/26 ・・・・・・・・・・・・・・・4,501 ・・・・・・・・・・・・・14,655 ・・・・・・・116・・・・・・・・・・15
2(2)・・ぴちぴち(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・7/25・・・・・・・・・・・・・・・・1,423 ・・・・・・・・・・・・・・9,951・・・・・・・・・68・・・・・・・・・・18
3(3)・・二つの扉(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・6/21・・・・・・・・・・・・・・・・・994 ・・・・・・・・・・・・・64,214 ・・・・・・・442・・・・・・・・・・16
4(6)・・カフェ・ド・フロール・・・・・・・・・・・・・・・7/19・・・・・・・・・・・・・・・・・546 ・・・・・・・・・・・・・・3,032・・・・・・・・・20・・・・・・・・・・・4
5(4)・・嵐が丘 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/28・・・・・・・・・・・・・・・・・249 ・・・・・・・・・・・・・22,546 ・・・・・・・157・・・・・・・・・・・3

 今回は新登場はありません。
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T-ARAの前に、ちょいと周美(.チュ・ヒョンミ)ファンのアジョシの皆さんへ

2012-08-06 23:45:57 | 韓国の音楽
 一昨日、熱烈K-POP女子のTさんから最近の情報を聞いたので、その関係のネタを、と思ったんですけど、ね。
 一応オジサンの私ヌルボもT-ARAについてのもろもろは、それなりに知ってはいるんですけど、ね。「自己管理の不足」という点では自分もピッタンコ当てはまってるなー、と思ったりして、ね。

 で、思い出したのが本ブログ今年4月29日の記事。辛ラーメンのテレビCMにメンバー7人が登場していたことを動画入りで書きました。→コチラ
 メンバーそれぞれが、7通りのレシピを紹介するというCMでした。その記事で私ヌルボ、「これはもしかして各メンバーの人気とか力関係とかに関わっているのではないか?」と書きましたが、いやー、今にして思えば、われながら鋭かったですね。(←自慢、ですね(笑)。)
 「一般的な見方によるところの人気順位」だと1位ジヨンが①正統ラーメン、2位ウンジョンが②飯盒ラーメン、3位ヒョミンは③冷ラーメン・・・と続き、そしてラスト7位ヒョミンが⑦緑茶牛乳カップラーメン!
 「う~む、これが一番問題だぞ~。を混ぜるなどとは言語道断横断歩道!」というのがヌルボの感想でしたが、これを食べさせるのは日本ならリッパないじめになる・・・かどうかはわかりませんが、まあ「正統」に対する「異端」という感じではあるわなー・・・。

 あ、のっけから脇道に入ってるゾ・・・。

 さて、熱烈K-POP女子Tさんの話を聞いていたアジョシ3人中、ヌルボ以外の2人は韓国音楽&映画については90年代前半で時が止まっていて(!?)、真っ先に出てくる歌手の名が周美(주현미.チュ・ヒョンミ)ですがな。
 ところが酒を飲みながらの会話の中で、ヌルボより22日年長のT兄(ヒョン)が「周美を知ってるか?」とのたまうので、「知らいでか!?」という強い気持ちを込めて、次のサイトを紹介します。
 それは<日韓歌謡架橋>という韓国トロット関係のサイト。この中に<周美日本応援サイト>が含まれていて、YouTubeにupされている彼女の動画が100曲以上収められています。
 毎度おなじみの「雨降る湖南線」や「木浦の涙」、「泣いて越える朴達嶺(サビの部分のみ)」等は<トロット名曲コーナー>の方にあります。歌詞(原語&日本語訳)が付いているのもいいですね。
 TOPページからのリンクでコチラのページを見てみると、このサイトの運営者の方の熱い思いが伝わってきます。周美さんからも直接感謝の色紙をいただいてるんですね。そして今日でアクセスが累計2637828かー、すごいなー。

 さて、そのサイトからもリンクが張られているのが周美さんの公式サイト。(→コチラ。)
 そのSCHEDULEのところを開いてみるとわかるように、彼女はなんと毎晩20:05~22:00、KBS2ラジオの「周美のラブレター(주현미의 러브레터)」という番組でDJをやっているのです。内容は→コチラ(韓国語)参照。
<ハッピーFM>でも聴けるようてすね。ヌルボは利用していませんが・・・。

 ラジオといえば、この頃ヌルボは、お気に入りの「シン・ソンウォンの文化を読む」(KBS1ラジオ)もあまり聴いていないことに思い至りました。あれはいい番組だから聴かなければ・・・。(この頃ちょっと本を読む方に偏りがちのようです。)

 あ、周美さんの公式サイトの情報だと、9月14・15日龍山の戦争記念館平和の広場野外特設ステージで周美南珍(ナム・ジン)のビッグショーがあるぞ! これに行くのは無理っぽいけど、早くから情報をゲットして、1度は直接見て来なくては・・・。アジョシたち、どーですか?
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詩人・許南麒(ホ・ナムギ)の確固たる人生 [後編]ふと漏らした呟きの底に・・・・

2012-08-05 07:44:36 | 在日の作家と作品
 →前の記事の最後に、李恢成「地上生活者 第4部」(講談社)を読んでいて、「アラッ」と驚いた件(くだり)があったのが許南麒をとりあげたきっかけだと書きました。

 この李恢成の自伝的小説は、主人公の名こそ趙愚哲としているものの、実在の人物がたとえば慎錫範(金石範)、雁雨植(安宇植)、金鶴翔(金鶴泳)、林時鐘(金時鐘)等々、すぐ察しのつく変名で数多く登場します。
 そして許南麟とあるのがもちろん許南麒。(こんな変名にする意味がどこにあるんでしょうね? 虚構の部分があるということ?)

       
    【在日作家たちの間の人間関係、考え方の違い等が読み取れます。】

 李恢成は1961年早稲田大を卒業後、朝鮮総連そして朝鮮新報社に勤務します。
 小説では、趙愚哲が民族新聞社(朝鮮新報)の報道部にいた時、総連の「統一評論」誌に載せた小説に許南麟が目をとめ、「わざわざ報道部に立ち寄ってくれた」と記しています。「在日朝鮮人文学者の間では金達鎮と双璧の人物」で文芸同の委員長。「眼鏡の奥のちいさな目と広くて平べったいひたいをもつ彼は相手をじっと見つめ、やわらかい口調で話す人であった」。
 ・・・と、この当時の李恢成は、まだ「社会主義建設の記事を読者につたえるのが歓びだった」(「死者と生者の市」より)という頃だったので、こういう書き方になっていますが、その後李恢成も67年1月1日に新聞社を辞めることになります。
金時鐘「わが生と詩」(岩波書店)に金時鐘と梁石日の対談が収められていますが、同様の内容を→コチラで見ることができます。これによると梁石日は許南麒を批判した文を書いたために組織を出ることになったとか・・・。金時鐘も早く(1950年代)から組織批判、許南麒の作品批判を正面切って行っています。(朴鉄民(編)「在日を生きる思想」(東方出版.2004)所収の金石範との対談等)

 1966年、許南麒は総聯中央常任委員会副議長に就任し、総連内のトップレベルの地位に上りつめます。

 「地上生活者 第4部」を読み進むと、「冬季オリンピックが終って二週間ばかり経っていた」というと1972年2月。「ぼく愚哲」は学生時代以来の友人の宋東奎と「新宿西口の高速バスターミナル近くの「海辺のように大きい」喫茶店」で北朝鮮のことや組織のことを語り合います。

 (宋東奎)「トンム(=愚哲=李恢成)は林勝(=徐勝)がまだ高校生のときに中央教育部にいて、京都での合宿でコーチしたことがあったといっていたが。首相(=金日成)は林勝を義理の息子として遇している。・・・」
 ・・・などという甚だ興味深い記述もありますが、それはそれとして、許南麒のことに絞ると・・・。

 (宋東奎)「トンムは『金日成伝』を読んだかい。上質のカバーをもつ大部の本だが」
 (ぼく愚哲)「三年前・・・・六九年だかに出たやつだろう。ぼくは詩人・許南麟(=許南麒)がああいうのを翻訳しているのをみると悲しくなる。この人がはたしてあのすぐれたプロレタリア詩『火縄銃のうた』とかハイネの長詩に似せた『朝鮮冬物語』を書いた人物と同じ人物なのだろうか、と。前歴に泥を塗るようなものでしかない。なんで韓議長の詩の手直しかなんかでお茶を濁しているんだろう。自分本来の詩を発表して、なんなら副議長職を袖にするくらいの度胸があの人にあればいいんだが。惜しい人だよ」
「うむ」と宋東奎が呻った。 
 ぼく愚哲はそのときふとおもいうかんだことがあった。
 「いつだったか、あんたとぼくがタクシーで富士見町(=朝鮮総聯)まで許南麟先生を送ったときのことだ。彼が車を降りしなに洩らした言葉がいまだに忘れられない。『さあ、これから嘘をつきにいくか』。ぼくはどきっとしたがね。これが文芸同中央委員長の本心なのか。やはり抵抗詩人の片鱗はもっているんだと複雑な心境だったが・・・・」


 ・・・この文中の許南麟の洩らしたという『さあ、これから嘘をつきにいくか』という言葉。愚哲が「どきっとした」だけでなく、私ヌルボが「アラッ」と思ったのもこの言葉です。

 在日の多くの作家や学者が組織を離れる中で、組織に残り高位に就いた彼。北朝鮮では独裁者の英雄化・偶像崇拝と異端の排除が強まり、日本の組織でも教条主義と統制が進む中、かつての「抵抗詩人」の心の内はどうだったか?

 わりと知られていると思われるヒトラー・ジョークに、
 <「知的である」「誠実である」「ナチである」という3つの命題の全てを満足することはない>
・・・というものがあります。(一部で「ヤスパースのパラドックス」とよばれているようですが、根拠不明。)
 この「ナチ」を「金日成主義者」に置きかえても命題は成り立つでしょう。
 多くの在日知識人たちは「知的」であり、「誠実」であろうとしたゆえに組織を離れるしかなかった。許南麒の場合は、早くから理念的にも社会主義の理想に浸り、組織のメンバーとして活動していたがために、祖国とその指導者の実像を見抜くに足る「知」を十分に持ちえなかったのか、とも思いましたが、上記の『さあ、これから嘘をつきにいくか』という言葉が虚構のものでなければ、彼は本心を偽っていたということになります。

 小説では、「ぼく愚哲」がそんな思い出を打ち明けると、宋東奎は次のような話をします。

 「トンムはひとに幻想を持たない方がいいよ。純真すぎるんだ。あるものをそのままの姿で見つめるべきだろうね。私はつねにそう心懸けているが。たしかにこの私もあの先生の『朝鮮冬物語』とか『朝鮮詩選』には心を躍らされた。中・高時代には朝鮮の詩や詩調(ママ)をまなんでいるからね。金素月とか詠み人知らずの『春香伝』や『沈清伝』とか。そりゃ、みごとなものだ。しかし、それは過去の話だ。いまの許南麟にはかつての抵抗詩人の面影はない。残念ながらいまの許南麟は共和国の『白峯』-どんなやつらが集団創作したか、みえみえだがね-そいつの翻訳で暇つぶしをしている牙を抜かれた人間でしかない」 
 「たしかに『白峯』著のこの読み物はいろんな点で感心しない」
 「なにのんきなことをいってる。個人崇拝のきわまれる産物じゃないか」 彼は嘲笑するようにいった。


 この小説の場面と同じ1972年、金日成主席誕生60周年に際して許南麒は金日成勲章を授与されます。
彼の伝記「鶏は鳴かずにはいられない」(孫志遠.朝鮮青年社.1993)には、その3年後彼が作った「偉大な主席に捧げる詩」(1975)が掲載されています。
 末尾6行は次の通りです。

 ああ、民族の太陽よ! 
 革命の偉大な首領
 キム・イルソン元帥よ!
 在日六〇万同胞の
 父なる
 キム・イルソン元帥よ!


 かつて彼が書いた抵抗詩と引き比べると、実に無残な思いにとらわれざるをえません。

 川村湊先生は「生まれたらそこがふるさと」(平凡社.1999)で、彼は本質的に日本語詩人にほかならなったと規定しています。自らの内なる「囚われた言葉」=日本語を駆使して「抵抗詩」を書き続けた彼が朝鮮語で書いた詩は、緊張感をすっかり喪失した、見るも無残なプロパガンダ詩にしかなっていないことがそれを例証している、というわけです。
 しかし私ヌルボは、「現実の彼の置かれた地位や立場といったものが、彼をして朝鮮語でプロパガンダ詩を書かせた」と単純に理解しています。たとえば金時鐘のような詩を彼が書くことは許されることではなかった、ということです。
 そんな現実的制約の中で生きざるをえなかった彼の「正体」が、はからずも『これから嘘をつきにいくか』と口をついて出てしまうことがあったにせよ・・・。

 その後許南麒は1977年朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議代議員に当選します。そして1988年70歳で世を去り、平壌郊外の愛国烈士陵に葬られます。その碑文に、
 「祖国の解放と社会主義建設、統一偉業のためにたたかい犠牲になった愛国烈士たちの偉勲は永遠に輝くであろう」
と記されているそうです。(「鶏は鳴かずにはいられない」による。)
 石碑を建てるのであれば、川口朝聯学園の跡地に「これがおれたちの学校だ」の詩碑を建てる方が本来の彼のためでもあり、(ついでながら)朝鮮学校無償化を求める運動の理念に沿うことになるともヌルボは本気で思うのですが・・・。

 前出の「在日を生きる思想」の中で、李恢成は英雄主義について次のように語っています。

 「在日の体制的文学者は、しばしば権力擁護のための美しい文章を書くでしょう。頌歌(オード)をね。実は忠誠を示すというより、自分の利益導入のためにやられてるんだけど。
 『冗談』や『不滅』を書いたミラン・クンデラは、スターリン時代のチェコについてこう言っているんだ。「私は『恐怖政治』の時代に抒情的迷妄が果たす傑出した役割を理解した」「それは私にとって、『詩人が死刑執行人とともに支配した時期』だった」って。これは他山の石とすべき言葉じゃないかな。」


       
  【この伝記がこんな読まれ方をされちゃったとはねー・・・・。】
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詩人・許南麒(ホ・ナムギ)の確固たる人生 [前編]ストレートな抗日詩の力強さ

2012-08-03 23:27:04 | 在日の作家と作品
 この数ヵ月、在日の小説家・詩人・学者等が書いた本や、彼らについて書かれた本をいろいろ読んでいます。最初は、今年4月亡くなった歴史学者・李進熙の自伝「海峡 ある在日史学者の半生」(青丘文化社.2000)。これについては6月1日の記事で少し書きました。
 この本には、李進熙の朝鮮大学校教員当時の同僚朴慶植(1922~98)や、朝鮮大学校を辞めた後に共に「季刊三千里」の編集者として名を列ねた金達寿(1919~97)・金石範(1925~)・姜在彦(1926~)等のことが書かれています。

 彼らをはじめ、戦後の主だった在日の小説家・詩人・学者等は、例外なく左翼人士だったと言っても過言ではありません。しかし、だからといって十把一からげに「反日左翼文化人」とレッテルを貼って全否定してしまうのは、乱暴に過ぎます。
 たとえば、上にあげたような人々が書いた自分史や、自分史的な随筆、あるいは対談等を読むと、彼らの間の関係性、より具体的には、盟友関係や相剋といったものが見えてきます。
 それも、各々が数十年の時間軸の中で生き方(拠って立つ理念、思想的政治的立場や主張等)が変わってきたりもしているわけで、3時限的に見ていくと、なかなか興味深いものがあります。

 彼らの間の対立の原因となったのは、具体的には組織(朝鮮総聯)との関係、国籍の問題(朝鮮籍のままか、韓国籍を取得するか?)、(軍政下の)韓国に行くことの是非があげられます。

 その中で組織の問題について言えば、1960年代までは在日の8割は朝鮮総聯に所属していました。当時総聯は互助的な組織として在日の人々の間に広く浸透し、また知識人にとっては社会主義が理念的に美しく正しいものに見え、金日成は抗日運動の英雄として、また新生朝鮮の若き指導者として輝ける存在に見えた時代だから総聯を選ぶのは至極当然だったわけです。

 ところがその後組織内の教条主義、金日成に対する個人崇拝等が進む中で、上掲の人々は左翼的な考え方は残しつつも、次々に組織を離れてゆきます。そして人により穏やかな脱退やケンカ別れ等の違いはありながらも、結局は全員が総聯を脱退します。

 朴憲永をはじめとする政敵、というより政敵予備軍を次々と粛清してスターリン型(&天皇制型&儒教型)独裁体制を固め、社会主義の理想を裏切っていった金日成の北朝鮮と、その出先機関の朝鮮総聯から、彼ら知識人たちが離れていったのもまた至極当然でしょう。

 しかし、組織に残ったどころか、その重要ポストにまで就いた詩人がいました。
 許南麒(ホ・ナムギ)です。
 
 私ヌルボが許南麒の詩を読んだのは、ずっと以前(70年代頃?)たぶんどこかの古書店で、青木文庫の火縄銃のうたを見つけて買ったのが最初ではなかったかと思います。
 東学の闘い、万歳事件(三一独立運動)、抗日独立闘争という3代にわたる闘争の歴史を力強く謳った叙事詩で、諸書で指摘されているように、槇村浩「間島パルチザンの歌」(1932)(→コチラ参照)と内容も形式も重なり合う部分が多いので、なんとなく日本の統治期の作品の作品かと思いましたが、彼の日本語の詩作の多くは戦後間もない頃から朝鮮戦争期に集中しています。その代表作が朝鮮冬物語であり「火縄銃のうた」です。
※「火縄銃のうた」の冒頭部分は→コチラ、説明は→コチラ参照。

 戦後しばらくの間、許南麒は川口市の朝聯学校の校長等として民族教育に携わりました。
 その頃の「これがおれたちの学校だ」等々の子どもたちに呼びかける内容の作品は、今も訴える力を失っていないと、私ヌルボは思います。

 その後1955年朝鮮総聯結成され、翌56年朝鮮大学校が創立されて、彼はその講師となり、また総聯の機関紙創刊にも参加します。さらに1959年結成の在日本朝鮮文学芸術家同盟(文芸同)委員長に就任します。
 この頃から、日本語での執筆はほとんどなくなります。
 詩想の涸渇、ではなくて、朝鮮総聯の綱領第四項で
 「われわれは在日朝鮮同胞子弟に母国の言葉と文化で民主民族教育を実施し、一般成人のなかにのこっている、植民地奴隷思想と封建遺習を打破して、文盲を退治し、民族文化の発展のため努力する」・・・とあったからなんですね。

 許南麒の経歴を見ると、1918年6月現在は釜山広域市に含まれる慶尚南道東莱郡の亀浦で生まれ、39年に東京へ。日大芸術学部映画科の学生の頃、朝鮮人学生たちで演劇団体・形象座を発足させたが、治安維持法違反で7人が検挙され、劇団は解散。彼も停学処分。40年からは中央大法学部等で学ぶ。44年からは徴用で立川の飛行機工場でプロペラ作り。
 終戦直後の45年10月からは在日朝鮮人聯盟で朝鮮語教科書編纂。映画ニュース製作等々、早くから在日組織のメンバーとして活動を始めます。

 ・・・ということで、当然朝鮮語はふつうに話せるし、学生時代から強い民族意識を持ってきているわけで、上記の母国語(朝鮮語)を基軸とする総聯の方針をそのまま受け入れ、先導していく役割も大きな葛藤や負担もなく担っていったということでしょう。
 在日の下の世代にとって、言葉の問題がはるかに重くのしかかったことを、許南麒はどれほど理解できたでしょうか? 

 その後、前述のように多くの在日作家たちは総聯から離れていきます。終戦直後は、1946年金達寿が編集長の「民主朝鮮」にも共に作品を載せていたことが、その後の2人の人生の軌跡を知ると、逆に信じられないようにも思えます。(※川村湊「生まれたらそこがふるさと」参照)
 金達寿は岩波新書「朝鮮――民族・歴史・文化」(1958)を批判されるなどで総聯を離れ、一方許南麒は逆に組織の階段を上がっていきます。

 一般に、在日の文学史、あるいは抵抗詩について書かれた本で、許南麒の名前が出てくるのは「朝鮮冬物語」や「火縄銃のうた」とともに登場するのは、1988年70歳で世を去った彼の人生のほぼ前半部分だけ、つまり総聯の組織人として重要なポストに就く以前の、詩人としての彼です。

 しかし、私ヌルボは、青年時代に「あのような」作品を書いた人物がどのような後半生を送ったか、以前から興味を持っていました。

 それがたまたま最近読んだ李恢成の自伝的小説地上生活者 第4部」(講談社)の中に、彼に関して読んでいて、「アラッ」と驚いた件(くだり)があったのです。
 それがこの記事を書くことになったきっかけです。

 ・・・という導入だけでもう3600字。例によって長過ぎですね。
 本論は[後編]で、ということにします。

 → <詩人・許南麒(ホ・ナムギ)の確固たる人生 [後編]ふと漏らした呟きの底に・・・・>
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