ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

辛ラーメンのレシピの考察(?)と、T-araのメンバーのこと等々

2012-04-29 23:07:15 | 韓国料理・食べ物飲み物関係
 最近、T-araの7人が各々辛ラーメンのレシピを紹介しているCFをYouTubeで見つけました。
 ただ見てるだけでもおもしろいのですが、つい知ってることをいろいろ書いてみたり、知らないことを調べてみたりする性分なので、結局また長い記事になりそうです。
 順々に紹介していきます。

①ジヨン 正統ラーメン
   

 ドラマ等でおなじみの、鍋の蓋に乗っけて食べるところも含めて「正統」ですね。ネギは小口切りじゃなくてななめ切りなのも正統なんですか? この動画の再生回数は17万4千以上と他の6人を圧倒! 1ケタ違うもんねー。しかし、カキコを見ると、かなり嫌韓の人たちが大勢見てはけなしているようで・・・。「箸を握ったり、立てたりして行儀が悪い」とかねー。「高評価109人、低評価762人」。行儀の基準なんて、国によって違うのにねー。

②ウンジョン 飯盒(はんごう)ラーメン
   

 最初に「忠誠(충성)」と叫んで敬礼してます。韓国の軍隊式ですね。「チュン、ソン!」と区切って発音します。飯盒は韓国語で「반합(パンハプ)」。盒の上半分は「合(합.ハプ)」で同じ発音、ふむふむ。
 これは軍隊関係で実際に作ってるぞ。私ヌルボが漫画かなんかで読んだ記憶があるような・・・。
 ・・・と思ってネット検索したら、ある韓国ブログ(←バックに軍歌が流れている)に、「飯盒ラーメンを食べずして人生を論ずるなかれ!」という某予備役の言葉があるそうな・・・。何も入れなくてもいいが、マグロを少し入れると「2人食べてて1人が気絶しても蹴飛ばして食べるほど」とか。この表現、こういう場合に使う?ですねー。
 さらには、軍隊モノのネット漫画にもありましたよー。そのタイトルからして「반합라면이 더 맛있는 이유?(飯盒ラーメンがより美味しい理由は?)」。下の画像がその1コマ。

     
   【「うわー! 飯盒で作るラーメンはなんでこんなに美味しいんですか?!」「おまえ、まだそんなことも知らんのか?」】

 上のコマのあと、右の上等兵が説明します。「底が深く、屈曲している。水蒸気が中で対流現象を起こして、それで麺がしこしこする」。ははは、ほんまかいな。しかし、ラーメンとハムは相性がいいと思います。コチュジャン系は少し避けたいな~という私ヌルボも、これと似た感じのプデチゲは好きな部類。

③ヒョミン 冷ラーメン
   

 「冷たい冷ラーメン」とテロップにあります。しかし「시원한 냉라면」は「さっぱりした(orさわやかな)冷ラーメン」と訳したいところですね。
 4月21日の記事で、韓国の代表的な旨み調味料のタシダ(다시다)とか、コンブ(다시마.タシマ)について書いたばかりです。サークル仲間の話では、さる漫画に「肉汁(육수.ユクス)」を作って保存しておく、という話が出てきて、そういえば、これを出し汁と言ってよさそうですね。この動画でも、最初にこの言葉が出てきます。そしてまず水に昆布を入れてますねー。続いてテロップでは「冷やしただし汁L」とありますが、ヒョミンは「다시마 국물(タシマ・クンムル.昆布のスープ)」と言ってます。
 この冷ラーメン、ヌルボも食欲をそそられます。最後にコチュジャンを大量にべっちょり乗っけるまでは・・・。

④ソヨン ラポッキ
   

 ラポッキの登場はいつ頃からだったかなー? ラーメン(라면)+トッポッキ(떡볶이)→ラポッキ(라볶이)です。
 インスタントという感じでは全然なくて、辛ラーメンも利用して料理を作っているみたいです。ふーん、ごま塩を入れるのか・・・。

⑤ボラム 辛ラーメンどんぶり
   

 どんぶりは덮밥(トッパプ)。しかしシンラミョン・トッパプ・レシピ(신라면 덮밥 레시피)を続けて発音してカタカナで表記するとシンナミョンノッパムネシピ。なんなんだこれは、と怒ってもしょうがない(その1)。このどんぶり、見た目は色とりどりでキレイではないですか。コチュジャンまみれにもなってないし・・・。ただ炭水化物どっさりで、フツーの日本人にはボリュームありすぎ? あら、右手でスッカラ、左手でチョッカラなの!?

⑥キュリ 玉子混ぜカップラーメン
   

 韓国語で계란비빔 컵라면(ケランヒビム コムナミョン)。컵(コプ)+라면(ラミョン)が、なんで컵라면(コムナミョン)になるんだ! ・・・と怒ってもしょうがない(その2)です。
 お湯は麺をふやかして捨てるというのは日本のソース焼きそばと一緒。(焼いてないのになんで焼きそばなの?) ま、手っ取り早いのはいいかも。玉子は黄身(노른자←노른자위の縮約形)だけを使うのか。きみだけーを~♪ 私ヌルボは、最後はコチュジャンじゃなくてソースがいいですけど・・・。

⑦ファヨン 緑茶牛乳カップラーメン
   

 韓国語で「녹차우유컵라면」。う~む、これが一番問題だぞ~。を混ぜるなどとは言語道断横断歩道! 美味しいと思う人はドーゾ。「お肌の美容にとてもいい」と言ってますが、オジサンはカンケーないもんね。
 
 さて、ここまで目を通して下さった皆さん、上記①~⑦は何の順番だと思いますか?
 最初ヌルボとしましては、レシピのオーソドックスな順に並べていったのです。当然「正統」が最初で、「飯盒ラーメン」もあるなー、というふうに・・・。
 とそこで「ハッ!」と気がついたのが、これはもしかして各メンバーの人気とか力関係とかに関わっているのではないか?ということ。
 答を言うと、①~⑦は一般的な見方によるところの人気順位。どうですか? およそレシピの中身と見合っているようにヌルボは思うのですが・・・。
 人気1位といわれるジヨンは一方で非難されることもけっこうあるようで・・・。そうしてみるとカンロクを感じさせますねー。食べ終わって頭を軽くのけぞらせて「クォーッ」と声を発するのはオヤジっぽくて親しみを感じます(?)。こんな彼女に、「あのー、緑茶牛乳・・・」なんて持ちかけたら「何で私が!(怒)」と険しい雰囲気になりそう(?)。
 その点、ウンジョンは自然な感じでフンイキ良さそう、かな?
コメント (2)
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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[4月20日(金)~22日(日)]

2012-04-24 18:05:19 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 最近観た「レイトオータム」は、タン・ウェイの表情の演技と霧のシアトルの魅力ですね。ヒョンビンの役柄は、あえてああいう「軽い」感じの男に設定したのかな? 72時間の自由時間しかない女と、追われる男の愛という筋書きはヨミ筋と知りつつ魅かれてしまう、ということでイ・マニ監督の原作「晩秋」(1966)以降、斎藤耕一監督「約束」(1972)、キム・スヨン監督「晩秋」(198年)と、リメイクされてきたということでしょう。
 ※「レイトオータム」と「アリラン」、横浜のシネマ・ジャック&ベティで4月28日まで上映してますよ。「アコースティック」は5月4日までやってますよ~!
 昨晩観た「ドライヴ」の主役ライアン・ゴズリングも寡黙で、それを評価するブログ記事も多いようですが、私ヌルボはちょいとじれったかったぞ。筋書きも、ヤクザから足を洗う前の最後の一仕事が悲劇になってしまうというよくあるものですが、夜1人で観るには音楽も映像も含めていい雰囲気の映画でした。コチラも女優(キャリー・マリガン)が心に残ります。美人ということでもないですが、やはり眼差しの魅力というか・・・。彼女に注目しているレビューが意外に多い、ということは、日本人好みの女優なのかな?

 「ドライヴ」の上映前に、初見の予告編が6作品も。「ハングリー・ラビット」「ミッシングID」「キラー・エリート」、ここらへんを立て続けに見せられても、オジサンは見分けがつかんぞ。そんなアメリカ映画よりも、胸ワクワクの大期待作は久々のインド映画ですよ。1997年「ラジュー出世する」を観て以来インド映画は大好きなのに、ホントに一般公開は少ないですからね。今回の作品はロボットというSFアクション・コメディ。あの「ムトゥ 踊るマハラジャ」ラジニカーントが無敵のロボットに扮し、恋に破れてまさかの大暴走を展開。お約束のダンスシーンは、今回はロボット集団が担当(笑)。なんともキテレツな・・・。
 ちょいとYouTubeで予告編を見てみてください。

  

 韓国では、同じインド映画で「スタンリーのお弁当箱」や、それに続いてこの「ロボット」、そして2012大阪アジア映画祭で上映されグランプリとABC賞をダブル受賞した「神さまがくれた娘/God's Own Child」(韓国題「하늘이 보내준 딸」)も今上映されています。「ロボット」以外の2作も、一般公開を熱烈希望! 強く強く要請しますっっ!!

         ★★★ Daumの人気順位(4月24日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①かたつむりの星(韓国)  9.6(48)
②タイタニック 3D 9.6(2416)
③語る建築家(韓国)  9.5(25)
④オペラ座の怪人 25周年特別公演  9.4(110)
⑤最強のふたり  9.2(724)
⑥美女と野獣 3D  9.0(69)
⑦偕老(韓国)  9.0(34)
⑧アーティスト  8.9(214)
⑨スタンリーのお弁当箱  8.8(128)
⑩明日を継ぐために  8.8(32)

 新登場は全然なし。最近ちょっとめずらしいかも・・・。

【専門家による順位】

①タイタニック 3D  10.0(2)
②美女と野獣 3D  8.5(2)
②ニーチェの馬  8.5(2)
④2本の線(韓国)  8.0(1)
⑤アーティスト  7.8(6)
⑥ファミリー・ツリー  7.8(5)
⑦ティラノサウルス  7.5(4)
⑧犯罪との戦争:悪いやつらの全盛時代(韓国)  7.3(6)
⑨ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女(2009)  7.3(3)
⑨ビーバー  7.3(3)

 ⑨「ビーバー」がこのランクでは初登場ですが、先週多様性映画のランクで紹介しました。

   ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[4月20日(金)~22日(日)] ★★★

         「バトルシップ」が2週連続トップ

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・バトルシップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/11 ・・・・・・・・・・・・・516,881 ・・・・・・・・・1,948,626・・・・・・・・14,468・・・・・・・624
2(3)・・姦通を待つ男(韓国) ・・・・・・・・・・・4/11・・・・・・・・・・・・・・296,929・・・・・・・・・・・846,017 ・・・・・・・・・6,433・・・・・・・396
3(2)・・建築学概論(韓国) ・・・・・・・・・・・・・3/22 ・・・・・・・・・・・・・268,732 ・・・・・・・・・3,316,682・・・・・・・・24,579・・・・・・・439
4(3)・・最強のふたり ・・・・・・・・・・・・・・・・・3/22 ・・・・・・・・・・・・・・89,231・・・・・・・・・・1,635,276・・・・・・・・12,136・・・・・・・227
5(5)・・ハンガー・ゲーム ・・・・・・・・・・・・・・4/05・・・・・・・・・・・・・・・52,276 ・・・・・・・・・・・584,828・・・・・・・・・4,317・・・・・・・253
6(6)・・死体が帰ってきた(韓国)・・・・・・・・3/29・・・・・・・・・・・・・・・50,472 ・・・・・・・・・・・962,446・・・・・・・・・7,188・・・・・・・235
7(7)・・タイタニック 3D ・・・・・・・・・・・・・・・・4/05 ・・・・・・・・・・・・・・43,377 ・・・・・・・・・・・336,274・・・・・・・・・4,086・・・・・・・145
8(8)・・美女と野獣 3D ・・・・・・・・・・・・・・・・4/11・・・・・・・・・・・・・・・39,949 ・・・・・・・・・・・140,558・・・・・・・・・1,450・・・・・・・173
9(65)・・スーパー・チューズデー・・・・・・・・4/19 ・・・・・・・・・・・・・・29,679 ・・・・・・・・・・・・35,146・・・・・・・・・・・273・・・・・・・・93
         正義を売った日
10(新)・・ハートブレイカー・・・・・・・・・・・・・・4/19 ・・・・・・・・・・・・・・25,198 ・・・・・・・・・・・・30,263 ・・・・・・・・・・224・・・・・・・175
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「建築学概論」は300万人突破。まだそんな減っていないし、400万人はいきそう。
今回はいつになく順位変動が少ないです。新登場も9・10位の2作品のみ。
 9位「スーパー・チューズデー 正義を売った日」は、日本では3月31日に公開されました。韓国題は「킹메이커(キング・メーカー)」です。
 10位「ハートブレイカー」も、昨年10月に日本で公開されているので、説明省略。韓国題は「하트 브레이커」です。
 「人類滅亡報告書」が12位に落ちたのはちょっと残念だなー。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・ハートブレイカー・・・・・・・・・・・・・・4/19 ・・・・・・・・・・・・・・25,198 ・・・・・・・・・・・・・30,263・・・・・・・・・224・・・・・・・・・175
2(新)・・ステキな金縛り(日本)・・・・・・・・・4/19・・・・・・・・・・・・・・・・2,562 ・・・・・・・・・・・・・・3,055・・・・・・・・・・22・・・・・・・・・・20
3(新)・・ロボット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/19 ・・・・・・・・・・・・・・・1,677 ・・・・・・・・・・・・・・2,989・・・・・・・・・・22・・・・・・・・・・37
4(2)・・語る建築家(韓国) ・・・・・・・・・・・・・3/08 ・・・・・・・・・・・・・・・・・973 ・・・・・・・・・・・・・27,778 ・・・・・・・・218・・・・・・・・・・12
5(3)・・12歳のサム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/12 ・・・・・・・・・・・・・・・・・720 ・・・・・・・・・・・・・・3,827・・・・・・・・・・28・・・・・・・・・・15
                                      
 1・2・3位が新登場です。
 1位「ハートブレイカー」は上掲のように全体のランクの10位。
 2位「ステキな金縛り」、韓国題は「멋진 악몽(ステキな悪夢)」です。「金縛り」にピッタリの韓国語はないんですかねー?
 3位「ロボット」については本記事の冒頭で書きました。韓国題は「로봇」。
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堀田善衞の短編「名を削る青年」の素材は、韓国生まれの脱走米兵をめぐる実話(1)

2012-04-23 18:54:13 | 韓国・朝鮮に関係のある本
 集英社<戦争×文学>第2巻「ベトナム戦争」の収録作品中で、韓国に関係するものが1つ。
 堀田善衞の小説名を削る青年です。これは1970年刊行の戦争の中での人間を扱った3つの短編からなる連作「橋上幻像」の中の1編です。

 堀田善衞(1918~98)は、ウィキペディアにもあるように、ベトナム戦争中に脱走米兵を自宅(別荘)に匿ったこともありました。
 この「名を削る青年」も、そんな彼自身の経験に基づいた作品です。

 この作品についてなんらかのことを書く場合、2通りの書き方に大別されます。
 1つは、作品自体に即した文学的な観点。もう1つは、その素材となった事実について。
 どちらも私ヌルボの能力と生来のナマケ心からすれば厄介な作業で、2週間ほど前に読み終えた短編なのに、なかなか書き始めることができませんでした。

 今回は、最初の方の観点からということで、とりあえず作品の梗概を記します。

 ジンギス汗が男の家へあらわれたのは、正月早々のある日曜日のことであった。
という冒頭の一節から物語は始まります。
 本文には記されていませんが、1968年の正月です。「男」は堀田自身とみなしてよく、「あらわれた」とあるのは、具体的には脱走兵の支援をしていたベ平連メンバーが、ジンギス汗(作品内での仮称)を隠れ家である「男」の家に連れてきた、ということです。ただし、この作品では、「ベ平連」という言葉も「脱走兵支援組織」という言葉も記されていません。1970年は、脱走兵をめぐってはまだ68年と同じ状況にあったため具体的記述を避けたということでしょう。また文学として、より抽象化した表現が採られたということもあるかもしれません。

 さて、「男」の家にかくまわれることになった脱走兵ですが、ウィリアム・ジョージ・マクガヴァーンという名で紹介された米兵とはいっても、見た目は「日本人、あるいは東洋人然たる東洋人」で、彼をつれてきた「男」の友人によると、「別の名をパク・チョン・スーとも言います」とのこと。

 つまり、彼は韓国生まれで、朝鮮戦争で孤児となり、その後アメリカの養家にもらわれていった海外養子(韓国でいうところの)「入養児」だったのです。

 作品内で彼自身が語る経歴は次のようなものです。

 1945年ソウルで生まれた。朝鮮語は「完全に忘れた。」 
 朝鮮戦争で北朝鮮軍がソウルに入ったとき、孤児になった。
 「父母が死んだのかどうかさえわからない。要するに気がついてみると、街頭にたった一人でいただけだ。私は五歳だった。朝鮮で学校に行ったことは一度もない。そういう浮浪児は、当時数百人もいたと思う。生活は米軍基地から投げ棄てられるものや、盗みでまかなっていた。・・・九歳のときに、アメリカ人たちの組織している、戦災孤児を養子に迎える会、といった組織に拾われて、ロサンゼルスへ移された。私はアイオワ市の実業家(多くのガソリンスタンドの持ち主)の家へ送られ、その家での最年少の第七番目の息子ということになった。」
 最初に洗濯=シャワー、薬品で消毒、医者の身体検査、・・・で「合格」。教会で洗礼を受け、ウィリアムと名付けられる。


 ・・・彼はすでにこの時点でこの新しい名前に対してまったく納得が行かず、「これであなたはウィリアムになったのよ、神様が認めて下さったわ」という養母の言葉に動顛し、「なぜぼくがウィリアムなんだ、パク・チョン・スーで何がわるい?」と問い返したりします。「なぜって、あなたはマクガヴァーン家の人になったのですから」というのが養母の答えでした。
 高校時代に、彼にとって一つの「事件のようなもの」が起こります。派手な事件を起こした等ではなく、タナカが来たことを契機に彼は自問するのです。なぜ彼はタナカなのに、自分はパク・チョン・スーではないのか?と。そう思いはじめた彼はアメリカの名前で呼ばれることに耐えられなくなり、4日後に家出します。

 「ぼくはぼく自身になりたかった。ぼくがぼく自身でつくった、そういう自己自身(identificataion)がほしかったんだ」と早口で、しかも次第に甲高くなって行く話を聞いていて、「男」も「一種異様な感慨に突き落とされて行く自分」を感じます。
 しかし、青年は「パク・チョン・ス―にも戻れない」と考えます。
 「米軍基地にたかって残飯を手づかみで食べる浮浪児には二度と戻りたくない・・・。」
 家出後、保養地のモーテルで1年ほど働いていた彼は、家出捜索会社に見つかってしまいます。しかし養家は寛大で、居所を通報することを条件に自由にしていいと言われ、その通りにします。養家が住所の通報を条件にしたのは、徴兵カードが来た時に居所がわからず宙に浮くようになったら家の名誉に関わるから。
 はたしてその後徴兵カードが来て、彼は従軍します。またウィリアムがついてまわります。サンフランシスコで入営し、訓練後まずドイツ、そして朝鮮に移送されます。
 ところが・・・。
 「朝鮮で、ぼくは物凄く不幸だった。・・・浮浪児の一人だったぼくが、今度は十一年後に、米軍の兵士の一人として、金網の内側の人として、そういう女を買い、浮浪児に物を投げ与える側の人間として、名前までウィリアム・ジョージ・マンガヴァーンとなって、戻ってきたわけだ。いまのぼくは、たしかに脱走兵だけど、本当は脱走兵というものでもない、そのずっと以前のところで、ぼくは国というものがいやなのだ。いらないんだ。・・・ 
 金網の内側でも外側でも、少しも仕合せではない。しかし少なくとも、ぼくは朝鮮にいて金網の内側であってはならない、と思った。」

 しかし、金網の外側で朝鮮人として暮らすことも出来ない彼、「アジア的不潔さ」には耐えられず、「キムチなんぞという朝鮮人としての自己検証(アイデンティティ)に絶対必要なものなんか、汚くて手にするのも見るのもいや」という彼は、求めてベトナムへ転属されます。

 ここまで、梗概というには長々と書いてしまいました。
 要は、この作品の眼目は、アイデンティティと、その基底に据えられることの多いナショナリティ、さらにはそのナショナル・アイデンティティとも関連しつつ、より深い層で個のアイデンティティの拠り所となる名前についての省察ということ、・・・と私ヌルボは理解しました。

 「男」は、青年のいないところで家族の全員に質問をします。
 「姓名がある、名前がある、それを自分のものとして承認をしているということは、それ自体で、何かを持っている、所有をしているということなのだろうか?」
 娘の一人は「アーッ、アタマがヘンになった! アタマにキタぞおッ!」と絶叫をして自分の部屋へ駈け出して行きます。
 朝鮮名もアメリカ名も拒否するという青年。そんな「最低の、人間であるための条件」を拒否するということはどういうことか。
 「男」はふと気付きます。「あの青年は、ひょっとして<橋>なのではなかろうか」

 青年は米軍の身分証明書(アイデンティティ・カード)を燃やします。そして「犬の鑑札(ドッグ・タグ)」と言っていた銅製の兵籍番号票を「男」に渡します。青年が「この世界」につながる最後の一枚である「犬の鑑札」を握って、「男」は思います。
 「「この青年が人間であっておれは国家人なのか・・・。」 男もまた、男の娘のように、わぁーッ、と叫びたくなった。」

 「そうだ、署名をしよう」と言って彼が書いたサインは卐(ナチスの鉤十字)と、✡(ユダヤの六芒星)と、ソ連の国章の鎌と槌。
 冒頭の一文の「ジンギス汗」は、青年の求めに応じて「男」が彼につけた仮称です。小説のラストで、2人はジンギス汗の将来について語り合います。
 「将来、どこかで中華料理屋をひらきたい」という彼。「北欧のあの国にも中華料理屋はあるかしらん?」と、あえて「スウェーデン」の名は避けています。樹木のある国は花粉のアレルギーがあるからだめ、という青年は、「彼」のアドバイスにしたがって結論を語ります。
 「そうか、じゃモロッコへ行って中華料理屋をやる」 
 ジンギス汗は、男の家へ来てはじめて明るく、白い歯を見せてくったくなく笑った。
「向こうへ行って落ち着いたら、ぼくはぼくのための、適当な名前を自分でつくるつもりだ。・・・


 その後青年は「彼」の家を出て行きます。
 裸の男を送り出したかの感があった。 
 葬儀のときの、出棺、というに近い感があった。
 男の家では、しばらくはテレヴィジォンだけが喋っていた。


 ・・・「出棺」とは、言いえて妙だと思いました。

 本書が刊行された1970年当時の日本では、まだアイデンティティという言葉は一般的ではなかったと思います。
 その後、一般的にいえば日本人にとって国の存在が薄れていき、個々の「アイデンティティ」の揺らぎがさまざまな形で社会問題として表出するようになって、この言葉も一般化してきました。
 同じ1970年、「文芸」8月号に発表された古井由吉の「杳子」(71年芥川賞受賞作)はいわゆる「内向の世代」の作品で作風は全然違いますが、思えばやはりアイデンティティの問題を扱った、文学史的・社会史的に意味のある作品だったかもしれません。
 ただ、戦争というのは、「国」の側から一方的にナショナリティを迫るもので、確固たるナショナル・アイデンティの持ち主は「使命感」に燃える一方、脆弱な「国民」は精神的にも実生活面でも追いつめられることになります。脱走兵はまさにその代表例で、この作品はそんな脱走兵が外から飛び込んでくることによって否応なく自分自身のアイデンティティを考えることに立ち至った「男」が主人公で、その後の日本のアイデンティティがらみの作品とは性格が異なりますね。

 「ナショナリティ」と密接に結びついた「名前」をめぐるアイデンティティ確立の問題としては、70年代以降、在日の間で進められた、主に教育現場での「本名を呼び、名のる運動」が思い起こされます。これについては、まさに社会的な問題なので、機会があれば別記事で考えてみることにします。

 本題の最初に戻って、この「名を削る青年」の2通りの書き方の後者の方、その素材となった事実すなわち実在の脱走兵金鎮洙(キム・ジンス)をめぐっては、「となりに脱走兵がいた時代」(思想の科学社)などにかなり詳しく載っています。
続きでは、彼や当時のベ平連のこと等について書く予定です。
 (このテの記事は疲れるなー・・・。)
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[韓国料理の基本アイテム] 「タシダ」等について考えてみる

2012-04-21 23:56:58 | 韓国料理・食べ物飲み物関係
 最近の「週刊文春」には、毎号のように「金正日の遺訓』独占入手」(4月19日号)のように興味津々、という記事が掲載されていて、「ほんまかいな?」と思いつつ読みふけったりしてます。で、「なるほど、そーなのか」と思っても「ホンマカイナ?」という疑念は消えるわけでもありません。

 ・・・ということで、今回は政治方面のややこしい問題はさておいて、先々週の「週刊文春」(4月19日号)掲載の今週のBEST10  おすすめの韓国料理アイテムを紹介します。
 とりあえず、下のリストを見てみてください。

       

 私ヌルボ、このリストを見て、いつの間にかここまで韓国の食文化が日本に浸透してきているのか、との思いを痛感しました。
 まあ、この週刊誌の読者が皆知っていては記事の意味はないし、逆に誰も知らなくて関心もなければ記事にならないし、その間での多くの読者の興味を引きそうな記事という判断なのでしょう。
 で、今の日本のフツーの家庭で(って何がフツーかもわからなくなってますが)、このリストにあげられたモノがどれほど①知っていて、使っているか、②知っているが使ったことはないか、③知らないか、も正直なところよくわかりません。

 私ヌルボ、約10人ほどの家庭婦人に訊いてみたところ、お一人はタシダを常備していて、いろんな料理に用いているとのこと。

 ヌルボとしましては、サムジャンの1位は意外。この言葉からして、もうそれなりに知られているのですか? 
 経験的にはゴマ油、トウガラシ、ニンニク、トッポキ等については書けばいろいろありますが、好みでいえば一番思い入れがあるのは7位ホットクミックスですね。私ヌルボは2012年釜山の屋台で食べたのがホットク初体験。今は職安通りで出来たての熱いのを食べられるし、韓国広場(職安通り)では焼くときに押さえる道具も売ってるし、けっこうなことです。まだ食べたことのない人はオススメ!

 実はここからが本題。今日サークルの仲間で話題になったのが上掲リスト第5位のダシダ(韓国語ではタとダは曖昧)です。韓国語で「다시다」。ヌルボならずとも、少し韓国に興味・関心を持っている人なら韓国食材店等でおなじみですね。

      다시

 このリストの説明では、この「ダシダ(다시다)」というネーミングは「日本語の出汁に由来」とありますが、それ以外にも「다시다」は「舌つづみを打つ」という意味の動詞でもあり、また「コンブ」「다시마(タシマ)」だし、もしかしたら「다시(タシ.もう1度)」なんて言葉も関係ある(??)かもしれません。

 で、サークル仲間で盛り上がった話題が「旨味(うまみ)」について。そもそも味の素の始まりは池田菊苗博士による旨味成分=グルタミン酸ソーダの抽出。そしてそれを製造・商品化したのが鈴木三郎助で、当初東逗子の工場で生産してたが、その臭気に住民が抗議して川崎に移転して現在に至る、という歴史はずっと前に川崎図書館で味の素の社史で読んだことがありました。(「鈴木町」という町名、駅名はこれに由来。)
 さて、この「うまみ」の歴史、「出汁(ダシ)」の歴史はいつからか?というのが酒を飲みながらの話題。
 よく初めて味噌汁を自分で作ったオトーサンが、味見をしてみると「おいしくないゾ」と首を傾げたら、オカーサンに「出汁を入れてないんじゃないの!?」と言われて「ガ~ン!」となったという話をヌルボは一度ならず見聞きしています。
 日本では、上記のようなオトーサンはさておき、コンブ・カツオ・イリコといった常識レベルのダシの文化が、韓国では、あるいは世界ではどんなもんだったのでしょうか? この記事は、飲み会から帰ってすぐなので詳しくどころかほとんど調べてませんが、チラと検索すると日本では室町時代頃からの歴史があるそうで・・・。韓国については「ダシ」に相当する固有語はないようです。

 甘い・辛い・苦い・塩辛い等と比べると、直接調理には携わることの少なかった男性(=文字文化の主な担い手)は、「旨味」は池田菊苗博士のように歴史的には最近の「発見」の対象であり、もしかしたら発見されないまま(記録されないまま)で現在に及んでいるのかもしれないなー、とかなりアルコールが体内を循環している状態で考えている(現在進行形)ですが、実際はどうなのかなー・・・。若き学徒たちよ、こんなところにも研究対象はあるぞー・・・。 
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石丸次郎氏の講演(2) 「国際社会が人権問題に関心を持つことが北朝鮮へのプレッシャーになる」

2012-04-20 22:42:18 | 北朝鮮のもろもろ
 1つ前の記事の続きです。

 この講演会の場では、2年前の講演会の時にも来られた脱北者の李さんがご自身の体験を話されました。高校2年の時家族で北朝鮮に渡り、46年ぶりに日本に帰還したという彼は、「これまでの苦労は一晩どころか1年しゃべっても語りきれない」と前置きしながらも語ったことを以下略述します。

・高卒後、志願して炭鉱に行き、そこで4年間働いた。志願理由は、食料の配給が一般は700gだったが炭鉱だと900gでたくさん食べられるから。しかし炭鉱労働者は(金日成は称えてくれたが)毎日事故で死者がでるほどで、「坑夫と漁師には嫁に行くな」と言われたりした。炭坑夫の出身は地元の人が4割。そして、かつて徴用とかで慶尚道や全羅道から来た人。また平壌や沙里院から来た昔の地主や、朝鮮戦争の時南に行った人の家族(つまり「成分がよくない人」)など・・・。

・(石丸氏の「周囲に政治犯はいましたか?」の問いに)いました。同じアパートの3階に住んでいた音楽家の一家で、朝5時半頃朝食の直前に保衛部の人間が来て・・・。泣きながらトラックに乗せられて行きました。ピアノも・・・。

・87年、労働党員の突撃隊員(分隊長)の時、近く(咸鏡北道鏡城(キョンソン))の11号管理所の解体作業をやった。驚いたのは罪人(=政治犯)の1人用の「ねぐら」。長さは2mくらい、高さは約90㎝で、地下80㎝ほど掘り下げた、犬小屋ほどの大きさで、上に木の葉を乗せビニールをかぶせる。そこに横たわって寝るのである。その「ねぐら」の前に豚小屋があるが(これも防寒のため地下を掘って作る)、見分けがつきにくい。1年に1人が100㎏のブタを飼うことが義務づけられていて、ブタにやるトウモロコシを自分が食べてしまうと叩かれる。
 政治犯の家族の住まいは別にある。収容所には、酒・レンガ・瓦・テーブルやたんす等を作る工場がある。

・つらかったことは、1に食料問題。それから、言葉ひとつ間違っても大変なことになるので、うかつなことが言えないこと。
 また、地位によって権力の差が格段に異なること。たとえば警官が市場で「Marlboroをよこせ」と強要するのに対して、拒否したら殴る蹴るの仕打ちを受け、反抗できない。

・配給が停止したのは1993年。ソ連・東欧諸国の崩壊で・・・。95~97年は、あちこち石ころみたいに死体が転がっていた。腐った強烈な臭いが漂っていた。中国に渡って、日本にいる姉宛てに手紙を投函し、その後30万円送られてきたが、それを受け取りに平壌まで行かなければならなかった。東京~広島間くらいの距離で、1週間かかった。食べる時は(臭いを避けて)風上で食べた。「阿鼻叫喚の生き地獄」だった。耳に虫がわいている人、ネズミにかじられて目玉が無い人等・・・。子どもに水を盗まれたが、放っておいた。値打ちのある骨董品等がすごく安い値段で売りに出されたりしていた。「買っておけばずいぶん儲かったかもしれません(笑)」。

・(石丸氏「改善のために、外の人間はどうすべきだと思いますか?」)6者協議等では北朝鮮はびくともしません。アメリカがもう1歩前に出て、北朝鮮と中国に強く対してほしい。人権問題を解決しようと思ったら、独裁体制を倒すしかありません。


 私ヌルボ、「苦難の行軍」の時期の飢餓の実情や、管理所の「ねぐら」の話は、前回の講演会では出なかった話で、興味深く聞きました。
 最後に彼が述べた「強硬論」には、石丸氏、ややとまどったようすでしたが・・・。

     
   【石丸次郎氏。彼も「レッツノート」を使ってましたねー。「脱北者の李さんの写真は撮らないで」と主催者側から。当然ですが、このこと自体がこの問題の状況を物語る一例。】

 石丸氏が最後に強調したのは、「国際社会が人権問題に関心を持つことが北朝鮮政府へのプレッシャーになる」ということ。一昨年の講演会でも語っていたことですが、96~98年当時は、多くの脱北者に「人権(인권.インクォン)」について質問しても、その言葉を知らないで「それは何の<券(권.クォン)>のことか?」という誤解もあったのが、3~4年後には通じるようになったそうです。その間、国際世論の高まりの中で、北朝鮮内でも「人権査察が入るとまずいから・・・」ということで取り調べの際の暴力が減ったそうです。

※石丸氏の話では、韓国から北朝鮮に送還された非転向長期囚(ヌルボの注.34年間獄中にあった李仁模(イ・インモ)?)が、北朝鮮の収容所を見て回って、「南朝鮮の刑務所はこんなにひどくはなかった」と金正日に改善を提言した、という「うわさ」が広まっているそうです。
※ヌルボのネット検索によると、関連で、諸サイトに次のような考えようによっては悲しい、皮肉っぽい笑い話が載っています。(例→コチラ。)
 北朝鮮では、30年以上の収監生活は常識では考えられないことである。とてもそんなに長く生きられるはずがない。韓国の監獄では1日3度の食事を多様なメニューで提供するが、李仁模老人のようにそれを食べないでハンストまでするなどは想像もできないことで、ある脱北者は「それは監獄ではなくて天国だと思った」と感想を述べた、ということです。

 石丸氏は、国際社会からの批判に対して朝鮮中央通信が「人権に名を借りた内政干渉である」とか、「日本は(あるいはアメリカ、韓国は)どうだ? (差別等の)人権問題があるではないか!」と反駁しているのは「国際社会の評判を気にしている証拠」だと見ています。

 まだまだ石丸氏としては話し足りない、聞く側も聞き足りない雰囲気でしたが、すぐに大阪に帰らなければならないとのことで、最後に会場からのいくつかの質問に答え、2時間の講演を終えました。
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石丸次郎氏の講演(1) 北朝鮮の食糧、「絶対量は不足してはいない」

2012-04-19 23:57:48 | 北朝鮮のもろもろ
 一昨日(4月17日)18時30分~20時30分、アムネスティ日本支部(千代田区小川町)で開かれた石丸次郎氏の講演「金正恩体制下での朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の今」を聞きに行ってきました。

 金正日総書記の死亡と三代世襲、核兵器問題、ミサイル発射問題、金日成生誕100周年の「太陽節」(4月15日)、脱北者強制送還問題等々、北朝鮮をめぐるニュースが最近次々と報道される中で、私ヌルボ、先着70名だと早めに行かないとダメだろうと思って30分ほど前に会場に行ったら30人くらいしかいなくてちょっと拍子抜け。
 しかし講演が始まって少し経つと椅子は全部埋まり、さらに後から来た人たちは床に座って、結局80人以上にはなったかも・・・。
 また、このような集会は近年年配者ばかりが目立つのがふつうのようですが(反原発集会は別かも・・・)、今回は若い人たちの姿がわりと多く見られたのはけっこうなことでした。
 一方、石丸次郎氏の追っかけ(?)のような人も相当数いるようで(ヌルボもそうだって!?)、神戸や奈良からの参加者もいました。

 さて、本ブログでは一昨年(2010年)11月20日やはりアムネスティ主催で開かれた横浜での石丸氏の講演会についての報告記事を載せました。(→コチラと→コチラです。)

 今回もアムネスティの主催ということもあって、副題に「北朝鮮の人権改善に向けて私たちは何ができるか?」とあるように人権問題をメインとした講演です。

 石丸氏、まず最初に前回同様「北朝鮮に行ったことがある人は?」と訊ねてましたが、手を挙げた人は4~5人くらい。(石丸氏の言葉通り「やはり多いですね」。)
 講演の冒頭の語りも、ほぼ前回と同じ内容です。つまり、ポイントは次の2点。

①北朝鮮の人たちは、決して洗脳されたロボットのような存在ではない。 
②北朝鮮の人権問題を語る際、まず胸に手をおいて考えなければならないことは、「植民地支配とは何だったのか?」ということ。つまり「補償」「慰労」「謝罪」という課題がなされないままになっている、ということである。


 ・・・①について。この点から語り始めるということは、やはり多くの日本人が「北朝鮮人民=洗脳されたロボット」と誤解している現実があるからでしょうか? 石丸氏はこれまで約30年の間に800人くらいの北朝鮮難民・越境者と会ったが、彼らはなんとか変えたいという希望を持っている、とのことで、「(石丸氏自身としては)全然絶望していない」と語っていました。
 ・・・②について。会場で配布されたレジュメに「ややこしい朝鮮問題」との見出しで人道支援に熱心な人は、拉致問題、脱北問題に消極的、逆もまたしかり。ねじれ構造の克服が課題とあります。ヌルボが日頃はがゆく思っていることそのままです。政治的・思想的立場に由来する恣意的な解釈や独善的な主張、見たくないことは見ないという姿勢を排して、人権が脅かされている「さまざまな」事実を正視することが大切、とヌルボは理解しました。

※この講演では語られなかったのですが、「朝鮮学校の無償化問題」で私ヌルボは→コチラと→コチラの記事で無償化から朝鮮高校を除外することに反対しながらも「1.学校は、生徒に間違ったことを教えてはいけない。」「2.公的機関といっても、学校は政治(とくにその時の政権)のための道具になってはいけない。そのためにも、教育の自立性・自主性は尊重されなければならない。」という観点から無償化賛成派・反対派双方を批判しました。どちらの側に対しても批判する人が他にいるかな、と思っていたところ、それ以前に石丸氏が<アジアプレス>のサイト中でほぼ同内容の記事を載せていることに気づきました。(→コチラ。)
 「反対派は思想教育や総連の支配という負の部分をクローズアップしようとする傾向が強く、一方の賛成派には、「除外は差別」ということは主張しても、醜悪な独裁者崇拝教育の問題点には触れようとしない態度が多い。関心が高まっているこの機会に、朝鮮学校を無償化の内側に包摂しつつ、教育内容と学校の運営を改善していくにはどうしたらよいのか、タブーなく議論してほしいと思う。」と記しているのは、まさに同感。

 今回、とくに石丸氏が強調したのは、北朝鮮の独裁体制はスーパーウルトラ真性独裁であるということ。これは軍事独裁、プロレタリア独裁、宗教独裁等と異なる北朝鮮式絶対主義であり、これこそが人権侵害の根本要因である、とのことです。
 その独裁のシステムが唯一指導体系とよばれるものです。
 同義の「唯一思想体系」のための十大原則がレジメにありました(→参考)が、「唯一」「指導(領導)」するのは金日成・金正日だけということで、たとえばいかに有能でも、工場等で「指導者」はいてはならず、現場では「了解」するのみ。この体制や金父子への批判あるいは皮肉のような言葉を口にすると、密告等により管理所(収容所)に送られてしまいます。これは革命化(!)と称され、裁判のような手続きはありません。(※刑事犯が送られる所は教化所といいます。)
 北朝鮮では個々に誰かが誰かの監視任務を負わされているという疑心暗鬼にならざるを得ない体制で、また50~60世帯で構成される最末端組織の人民班が相互監視の役割を持たされています。
 この密告制度が、自分の職場等での「敵」を追い落とすために用いられたりすることもあるとか・・・。

 このような唯一指導体系が社会の発展を阻害していることは容易に理解されます。またこの体系を守るために、多くの酷い人権問題が起こるというわけです。

 ところが今、金正恩が権力を受け継いだ北朝鮮は「われわれは絶対に変わりません」と繰り返しています。これは唯一指導体系を変えないということで、人権状況の好転は期待できません。

 多くのメディアでは、金正恩が第1書記に就任したことで権力継承がなされたと報じていますが、石丸氏は「権力継承は今から始まる」とみています。
 北朝鮮の政策決定は(意外なことに)上意下達ではなく、ボトムアップ式で、金正恩の役目は下から上がってきた提議書の決裁をすること。しかし当然経験不足なので、今は金正恩唯一指導体系をつくるための「過渡的な側近集団指導体制」だとの分析です。

 講演会は、この後最近の北朝鮮の内情を伝える映像の上映と、それについての説明がありました。

 下に載せたのは、「リムジンガン」の第6号(2012年2月)に載っていた10歳のコッチェビ(浮浪児)の写真と、飢えてやせ細った兵士たちの写真です。上映されたのは、これらの元の動画です。

   
  【左は平安南道の市場(2011年2月)。子どもの顔が黒いのは焚火で暖をとる時に付いた煤のため。右も平安南道(2011年7月)。】


 石丸氏の説明でヌルボが(たぶん他の多くの人も)意外だったのは、食糧の絶対量は不足してはいない、ということ。このコッチェビのいるところは市場で、背景にはたしかにいろいろ食料が映っています。
 またコッチェビも見かけは汚れているが「けっこうふっくらしている」、つまり食べてはいる、ということです。市場に行けば物乞いをしたり、拾い食いをしたりできるのです。

 ただ、市場で食糧を得るには現金が必要です。コッチェビは「食べ物をめぐんで・・・」ではなく「お金をください」と言うそうです。

 今、厳しい飢餓状態にあるのは、商売をして金を稼ぐことも、物乞いもできず、市場(=食糧)にアクセスするすべのない兵士等だといいます。

 かつては、体制維持のために重要とされる軍隊・警察・行政機関幹部等は「優先配給対象者」とされて恵まれていたが経済不振により配給が滞るようになり、それにもかかわらず市場(=食糧)からは遠ざけられたままの状態で、慢性的に飢えるしかないということです。
※この点については、上掲の「リムジンガン」第6号に詳述されています。
※レジュメに次のような引用がありました。
 「厳しい飢餓が発生し続けていることは、民主的政治が制度としても実践としても欠如していることと密接に関連している」(アルマティア・セン「貧困と飢饉」より)

 この後、2年前の集会にも来られた脱北者の方から体験に基づいた話がありましたが、以下はつづきということにします。
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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[4月13日(金)~15日(日)]

2012-04-17 17:37:19 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 アカデミー賞受賞作「アーティスト」を観てきました。いろんな点で「ヒューゴの不思議な発明」と対照的であるとともに、共通点もあります。で、私ヌルボとしては躊躇なく「ヒューゴの不思議な発明」の方に手を挙げます。数十年前の映画ファンが「月世界旅行」を観て感じたであろうセンス・オブ・ワンダーのといったものに魅かれたので・・・。「アーティスト」も期待外れということではないですけど。「週刊文春」4月19日号のシネマチャートで他の4人が★4~5をつけている中、おすぎは「現代の話をサイレントスタイルで撮れば面白い挑戦だと思うけど、1920年代の話なら昔の名作を見た方がいい!!」と★3つをつけてましたが、これはこの映画の肝心なところを理解していないように思います。

 韓国文化院で、<韓日ハンマウム フェスティバル~韓国映画上映会>と銘打って5月16~18日「グッバイ、マザー」「朝鮮名探偵~ヒメトリカブトの秘密~」「私の愛、私のそばに」の3作品を上映するということで、今申込み受付中です。上映機会のあまりなさそうな映画だし、何といっても無料なのがいい! 私ヌルボもすでに申し込みましたが、倍率が高くなることもかえりみずお知らせしました。(・・・って、このブログ記事を読んでくれてる人の数、さらに申し込む人の数がそんなにいないことを念頭に置いてたりして・・・。)

         ★★★ Daumの人気順位(4月17日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①かたつむりの星(韓国)  9.6(46)
②タイタニック 3D 9.6(2378)
③語る建築家(韓国)  9.5(25)
④オペラ座の怪人 25周年特別公演  9.4(109)
⑤最強のふたり  9.2(675)
⑥明日を継ぐために  9.1(28)
⑦美女と野獣 3D  9.0(64)
⑧偕老(韓国)  8.9(31)
⑨スタンリーのお弁当箱  8.9(127)
⑩アーティスト  8.9(212)

 新登場は⑥と⑦。
 ⑥「明日を継ぐために」について。LAにはヒスパニック系の人たちがとても多いそうで、それもメキシコからの不法移民。いくつかブログ記事を見ると、「違法移民がいないと成り立たないのでは、というくらい彼らに頼っている部分もある」とかで、「勤勉さと賃金の安さから、レストランや建築現場などでは欠かすことの出来ない労働力となっている」そうです。この作品の主人公も不法移民のメキシコ人で、庭師をしながら男手ひとつで14歳の息子と暮らしているのですが、その息子はギャングに気持ちが傾きかけています。そんな中、雇い主のメキシコ人が母国に引き上げるのでトラックを譲ってくれるという思わぬビジネスチャンスが到来。「より良い生活」(原題「A Better Life」)が期待できる、と思ったのもつかの間、トラブルに巻き込まれてしまいます・・・。日本では昨年10月東京国際映画祭で公開されましたが一般公開は予定なしみたい。韓国では「이민자(移民者)」のタイトルで先週12日から公開。
※韓国では中国から来た朝鮮族の人たち46万人(!)もいて3K(韓国では3D)の仕事に多く就いているし、スペインに詳しい知人の話では、かの国は南米人がオリーブの実落とし等に従事しているそうだし・・・。同じような構図が地球上のたちこちにあるようですね。
 ⑦「美女と野獣 3D」は日本では2010年に公開されています。韓国題は「미녀와 야수3D 」。(しかし、西洋と日本では「美女」の基準が違うのではないでしょうか? (韓国映画「野獣と美女」(2005)の「美女」役シン・ミナはナットク。)

【専門家による順位】

①タイタニック 3D  10.0(2)
②美女と野獣 3D  8.5(2)
③ニーチェの馬  8.5(2)
④2本の線(韓国)  8.0(1)
⑤アーティスト  7.8(6)
⑥ファミリー・ツリー  7.8(5)
⑦ティラノサウルス  7.5(4)
⑧犯罪との戦争:悪いやつらの全盛時代(韓国)  7.3(6)
⑨ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女(2009)  7.3(3)
⑩さすらいの女神たち  7.2(4)

 新登場は②だけ。説明は略します。

   ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[4月13日(金)~15日(日)] ★★★

         「バトルシップ」が初登場でトップに

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・バトルシップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/11 ・・・・・・・・・・・・・674,442 ・・・・・・・・・1,195,690・・・・・・・・・8,860・・・・・・・734
2(1)・・建築学概論(韓国) ・・・・・・・・・・・・・3/22 ・・・・・・・・・・・・・254,498 ・・・・・・・・・2,917,540・・・・・・・・21,673・・・・・・・450
3(10)・・姦通を待つ男(韓国) ・・・・・・・・・・4/11・・・・・・・・・・・・・・242,685・・・・・・・・・・・396,688 ・・・・・・・・・3,042・・・・・・・348
4(3)・・最強のふたり ・・・・・・・・・・・・・・・・・3/22 ・・・・・・・・・・・・・・84,506・・・・・・・・・・1,502,378・・・・・・・・11,156・・・・・・・242
5(2)・・ハンガー・ゲーム ・・・・・・・・・・・・・・4/05・・・・・・・・・・・・・・・69,322 ・・・・・・・・・・・504,858・・・・・・・・・3,731・・・・・・・323
6(4)・・死体が帰ってきた(韓国)・・・・・・・・3/29 ・・・・・・・・・・・・・・67,290 ・・・・・・・・・・・880,186・・・・・・・・・6,586・・・・・・・268
7(6)・・タイタニック 3D ・・・・・・・・・・・・・・・・4/05 ・・・・・・・・・・・・・・56,128 ・・・・・・・・・・・269,286・・・・・・・・・3,278・・・・・・・159
8(新)・・美女と野獣 3D ・・・・・・・・・・・・・・・4/11・・・・・・・・・・・・・・・44,653 ・・・・・・・・・・・・96,581・・・・・・・・・・・993・・・・・・・220
9(35)・・人類滅亡報告書(韓国) ・・・・・・・・4/11 ・・・・・・・・・・・・・・31,584 ・・・・・・・・・・・・73,856・・・・・・・・・・・533・・・・・・・236
10(5)・・タイタンの逆襲・・・・・・・・・・・・・・・・3/29 ・・・・・・・・・・・・・・10,113 ・・・・・・・・・・・883,738 ・・・・・・・・・7,525・・・・・・・114
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は1・8・9位の3作品。
 1位「バトルシップ」は日本でも13日から公開されています。予告編を観ると、他の宇宙人侵略モノ同様どうみても勝ち目はないように思えるのですが・・・。それから、このテの映画作ること自体、好戦的なのはわれわれ地球人(orアメリカ人?)の方でしょ。韓国題は「배틀쉽」。
 8位「美女と野獣 3D」については省略。
 9位「人類滅亡報告書」は、人類滅亡の兆候を描いた3作のオムニバス。人類滅亡報告書1「素晴らしい新世界」は、家族が海外旅行に行って1人残された研究員(リュ・スンボム)はゴミを分別しないで出して彼女(コ・ジュンヒ)へ。ところがおいしい料理を楽しんだ後彼の身体に異様な変化が・・・。報告書2「天上の被造物」は、自ら悟りを開いて説法する域に達したロボットRU-4を、そのメーカーは人類への威嚇と見なして解体を決めるが、彼をインミョン(仁明?人命?)師と呼んで崇拝する僧侶たちは反対する。そして解体の時に至って・・・。報告書3「ハッピーバースデー」、ビリヤード狂の父の8番ボールをつぶしてしまった小学生の女の子ミンソ(チン・ジヒ)は、正体不明のサイトにアクセスしてボールを注文する。しかし2年後にビリヤードボール形の怪彗星が地球に向かって接近し始め、滅亡の危機に一家は地下防空壕に避難する。そして7年後、明るい光に誘われるように成長したミンソ(ペ・ドゥナ)は勇敢に地上へ向かう・・・。・・・というように、いっぷう変わったアイディアのSF。先々週のKBS2「映画が良い」での紹介を見たかぎりではB級のテイストが漂っていたような・・・。ネチズンの評点は必ずしも高くはない(6.9)ですが、個人的には観てみたいなー。ペ・ドゥナはまた走ってるのかな? 原題は「인류멸망보고서」。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・ビーバー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/12 ・・・・・・・・・・・・・・・1,681 ・・・・・・・・・・・・・・2,455・・・・・・・・・・17・・・・・・・・・・25
2(1)・・語る建築家(韓国) ・・・・・・・・・・・・・3/08 ・・・・・・・・・・・・・・・1,276 ・・・・・・・・・・・・・25,706 ・・・・・・・・203・・・・・・・・・・10
3(新)・・12歳のサム・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/12 ・・・・・・・・・・・・・・・1,065 ・・・・・・・・・・・・・・2,436・・・・・・・・・・18・・・・・・・・・・15
4(新)・・明日を継ぐために・・・・・・・・・・・・・4/12 ・・・・・・・・・・・・・・・・・763 ・・・・・・・・・・・・・・1,609・・・・・・・・・・11・・・・・・・・・・15
5(3)・・かたつむりの星(韓国)・・・・・・・・・・3/22 ・・・・・・・・・・・・・・・・・577 ・・・・・・・・・・・・・14,286 ・・・・・・・・・98・・・・・・・・・・14
                                      
 1・3・4位が新登場です。
1位「ザ・ビーバー」はジョディ・フォスターの監督作品。ブサカワなビーバーのパペットが、成功者であったはずの1人の男の抑うつとした心を開き、次なる成功へと導いてくれるドラマ。韓国題は「비버」。
 うつ症状を長期に患った男(メル・ギブソン)が、モーテルのくずかごから拾ったビーバーのパペット人形を通して、自分を代理的に語ることでセルフ・レスキューを果たしていく、という物語。しかしこの作品、ハリウッド・レポーター紙が発表した2011年の興行失敗作品10本に入れられてしまってるんですね。日本公開もなさそう・・・。
 3位はイギリス映画。韓国サイトの説明を見たら「시한부」少年という言葉があって、何かと思ったら「時限付き」ということでした。(この場合に限った用法ではないようです。) つまり白血病患者で、毎日日記を書いているのですが、その内容がけっこう愉快で、父親・家族から周りの人たちにも話題になり始めます。ところがそんな中で、病院はサムの治療の停止を宣言、するのかな? 韓国題は「열두살 샘」、日本公開は未定。
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[韓国語]「桃骨(ポクスンア・ピョ)」って、どこの骨? ・・・・新しい標準語(1)

2012-04-16 14:12:39 | 韓国語あれこれ
 しばらく前から、ファーストフード店で店員さんに「お持ち帰りですか?」と聞かれて「はい、持ち帰りです」と答える人が少なくないことに気づきました。自分のことなのに尊敬語を使うのはヘンだなーと私ヌルボは思うのですが、「テイクアウト=お持ち帰り」ということになりつつあるのでしょうか?

 日本人が間違いやすい日本語の例はたくさんあって、関係の本も多数出ているように、韓国でも同様の本がいくつもあるようです。
 以前入手した전방징「우리말 달인 1(ウリマル達人 1)」という本もその1つ。
 パラパラと流し読みしていて、目にとまったのが下の絵。

     
  【日本語のくるぶしと同じく、足首の方は内側だけでなく外側も<복사뼈>といいます。】

 手首外側に出っ張った骨の方はさておいて、足首両側に突き出た骨は「くるぶし」ですね。
 韓国語では、日韓辞典に載っている言葉としては<복사뼈(ポクサピョ)>があるだけです。
 <복사(ポクサ)>といえば、中級の韓国語学習者なら<複写>という漢字語が思い浮かぶくらいで、ヌルボも実はそれ以外に知らなかったのですが、「ウリマル達人 1」によると<복사>は<복숭아(ポクスンア.桃)>の略語なのだそうです。で、<복사꽃>といえば桃の花のことです。

 では、なぜくるぶしが「桃骨」なのかというと骨の形が桃の種に似ているからなのだそうです。ヌルボとしてはこの理由づけに今ひとつナットクできないので少し韓国サイトをあたってみたら、やはり同じ説明がなされていました。

     
   【多くの言葉についてかなり細かく説明しているわりには読みやすい本。】

 さて、この本によると、<복사>=<복숭아>であることから、<복사뼈>のことも복숭아뼈>と言う韓国人が多いとのこと。
※Google検索のヒット数は<복사뼈>が24.5万件であるのに対し、<복숭아뼈>は約82万件と3倍以上です。
 ところが、「<복숭아뼈>の方は標準語ではない」と書かれているんですね。
 学術用語として<복사뼈>が正式なものとされているので、それと連動してこれのみが標準語とされた、ということです。
 したがって、市販の辞典でも<복사뼈>しか見出し語にないというわけ。

 しかし、昨年9月1日の「朝鮮日報」の報道等によると、8月31日に国立国語院「日常ではよく使われているが、これまで標準語に認定されていなかった単語39を標準語に入れることにした」とのことで、その中にこの<복숭아뼈>も入っていました。これで「桃骨」も晴れて標準語に仲間入りしたというわけです。

 また、「ウリマル達人 1」には「目(눈)にはしっぽ(꼬리)がない」という見出しで、「よく目じりのことを<눈꼬리(ヌンコリ)>と言うが、標準語では<눈초리(ヌンチョリ)>である」と書かれていました。
 これも上の記事によると、新たに追加された標準語の中に入っていました。
 <눈초리>の方は「ある対象を眺める時に目に表れる表情」という意味が強く、「目つき」や「まなざし」と訳した方が合っていることが多いようで、「目じり」の場合はむしろこの<눈꼬리>の方がよさそうですね。

 しかし、いったい何をもって「正しい」韓国語、あるいは「正しい」日本語というのかは論議がありそうですね。文化審議会国語分科会(2001年までは国語審議会)に対しては、漢字だの文法だの仮名遣いだの、今に至るまで実にさまざまな論議・論争があったし、たぶん韓国でもそうなんでしょうねー。

 あ、手首の外側に突き出た骨も<복사뼈>というんですかねー。日本語では何か言い方があるのかな?
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[韓国語]おもしろく、ためになる! 若松実(編著)「韓国のなぞなぞ」(高麗書林.1977)

2012-04-13 17:23:43 | 韓国語あれこれ
 最近「韓国語・朝鮮語(ハングル)学習書籍100冊」というサイトを見つけました。タイトル通り100冊あるかどうかは数えていませんが、とにかくたくさんの韓国語学習書をレベルごと等で分類し、それぞれの内容・特色・評価を要領よく記しています。また驚いたことには、これすべてサイト運営者お一人が直接「学習用に読んだ本」だとのことです。
 このサイトを知らなかった韓国語学習者の皆さん、ぜひ見てみてください。

 さて、上記サイトでは学習書以外の韓国関係本も紹介しているのですが、なぜか「実践的表現」のページで紹介されている若松実(編著)「韓国のなぞなぞ」(高麗書林.1977)という本に興味を持ちました。原文付だが、語学書というよりもなぞなぞユーモアが好きな人向き。(所蔵している図書館も少なく、希少本)」という3点セットですからねー。
 ネット販売を検索したら、たった1冊、それもお手頃価格で出ていたので即購入。
 そして一気に目を通しました。やっぱり期待通りの本でしたね、うっふっふ。

         
  【表紙裏にある高麗書林出版物には趙芝薫「韓国民族運動史」金成植「抗日学生運動史」等が・・・。】

 何が期待通りかというと、
 ・ことば遊びの文化がわかる。 
 ・なぞなぞを通して、歴史・文化・社会がわかる。
 ・韓国語の勉強になる。
 
 ・・・ということ等です。あ、もちろん単純におもしろいという理由が一番ですけど。
 
 何はともあれ内容を紹介、って全部で800もあるので、私ヌルボが厳選した(?)20を紹介します。

赤字は問題文
青字は本書の訳
・答→の右の部分に答と本書による解説がありますが、考えながら読んでいただいた方が楽しめるだろうと思い、範囲指定しないと読めないようにしました。
・黒字は私ヌルボのコメントです。

①끓여도 차다고 하는 것이 무엇이냐?
 煮え立っても、冷たいというものはナーニ。
 答→
차 茶。茶は冷たい(차갑다)の차と同音であり、熱い茶でも名前はやはり冷たいの차갑다の차と同音であることによることば遊び。
 차다には2つの意味がある。

②찬 두부 한 모를 죄다 먹겠나?
 冷たい豆腐一丁、みな食べられるか。
 答→
못 먹는다 食べられない。冷たいの차と蹴るの차との同意によることば遊び。冷たい豆腐は食べられても、足で蹴った豆腐は食べられない。
 豆腐は「한 모(ハン モ.一丁)」と数えるのですね。찬を動詞の過去連体形と解すると・・・。

③사방 중 어디를 향하든지 북이 무엇이냐?
 四方のうち、どちらを向いても北になるのはナーニ。
 答→
북 太鼓。東西南北の北の북(プク)と太鼓の북との同音によることば遊び。
 「南極」と答える人もいるかも。

④언제나 즐겁게 살 수 있는 땅의 불고기가 무엇이냐?
 いつでも楽しく暮らせる土地の魚はナーニ?
 答→
낙지 たこ。いいだこ。たこの낙지は、楽地(ナクチ)と同音のためによることば遊び。
 この問題を漢字と結びつけて考える韓国人は今どれくらいいるのかな? しかし、これは魚じゃないでしょ。

⑤오던 놈인지 가던 놈인지 모르는 게 무엇이냐?
 来た奴だか、行った奴だかわからないのはダーレ?
 答→
게 かに。かにの게(ケー)と것이の게(ケー)との同音によることば遊び。
 この表現でないと問題にならない。

⑥가위는 가위인데 자르지도 못하는 가위는 무엇이냐?
 鋏(はさみ)は鋏だが切ることもできない鋏はナーニ。
 答→
팔월 한가위 八月の秋夕。はさみの가위(カウィ)と秋夕の가위との同音によることば遊び。
 「○は○だが~」は定型のなぞなぞ、「강(川)は강だが~」とくれば下に강がつく川以外の単語を応えればよい。しかし、下に가위がつく言葉をヌルボは思いつきませんでした。

⑦가장 작은 새는?
 いちばん小さい鳥はナーニ。
 答→
눈 깜짝할 새 眼をまばたくあいだ(瞬間)。鳥の새とあいだの새との同音によることば遊び。
 そーか。これはよくできているような気がします。

⑧하늘의 개 세마리 있는 것이 무엇이냐?
 空に犬三匹いるのはナーニ。
 答→
무지개・안개・번개 虹・霧・いなびかり。 무지개(ムジゲー)・안개(アンゲー)・번개(ポンゲー)の개(ケー)と犬の개(ケー)との同音によることば遊び。
 1つだけ教えてくれれば、あと2つが出てくる、かなー?

⑨농촌 헌병은 누가 다 잡아가아?
 農村の憲兵を皆つかまえていくのはダーレ。
 答→
엿장수 飴売り(飴を廃品と交換する)。 憲兵(ホンビョン)と古い瓶の同音による語戯。昔の苛酷な憲兵に対する農民の痛烈な皮肉がうかがえる。
 考えてもわかるわけのない問題ですが、解説を読むと深い。

⑩자기 장모와 매형의 장모가ㅏ 물에 빠졌다 누굴 먼저 건질까?
 自分の妻の母と、義兄の妻の母が水におぼれた。だれを先に引き上げるべきか。
 答→
매형의 장모 義兄(매형)の妻の母(장모.丈母)。義兄の妻の母は自分の母になる。
 あー、ややこしや。(しかし、想像すると大変な状況だなー。)

⑪저절로 가는 것은?
 ひとりでに行くのはダーレ。
 答→
승려 僧侶。僧が自分の寺(저절로)に行くことと、ひとりでにの저절로の同音によることば遊び。
 語彙力があればどうということのない問題ですがねー・・・。

⑫눈이 스물 둘 등 여섯 머리 둘이 무엇이냐?
 目が二十二、背中が六つ、頭が二つのものはナーニ。
 答→
사람 몸 人間のからだ。目(눈)が二十二とは、目二つと手足の爪の白い点(손톱눈)を合わせたもの。背中(등)が六つとは、背中一つと手の甲(손등)足の甲(발등)四つと鼻筋(콧등)一つで六つとなる。頭(머리)が二つとは、頭が一つと鼻の頭(콧머리)とをいう。
 いつの時代のどこの誰だか、よく数え上げたものです。

⑬다섯 치 되는 종이가 무엇이냐? 
 五寸になる紙はナーニ。
 答→
반자지 天井をはる紙。天井をはる紙を반자지というが、これは반(パン.半) 자(チャ.尺) 지(チ.紙)、すなわち一尺の半分で五寸の紙となる。
 今の韓国の人はすぐわかるのでしょうか?

⑭가슴의 무게는 몇 근?
 胸の重さはなん斤か。
 答→
두 근 二斤。胸がどきどきするのを「두근거리다(トゥグンコリダ)」というので、この두근が重さの二斤の두근との同音によることば遊び。
 これはわかりやすい。誰かに話したくなりますね。倍で答えるのもありかも・・・。

⑮하나를 여덟이라고 하는 것은?
 一つを八つというものはナーニ。
 答→
팔뚝 腕の肘から手首までの部分。腕。팔(パル.腕)は一つでも팔(八)という同音によることば遊び。
 あれっ、二つじゃないの!?

⑯달을 부르면 오는 것이 무엇이냐
 月を呼べば来るものはダーレ。
 答→
개 犬。韓国では、犬を呼ぶとき「월이 월이(ウォーリ ウォーリ)」というが、월이と月の월(ウォル)の音が似ているためにいうことば遊び。
 ホンマカイナ? いつの話? 韓国サイトも探してみましたが、確認できませんでした。

⑰주주하면 오는 것은?
 走れ走れというと来るものはナーニ。
 答→
닭 鶏。韓国では鶏を呼ぶとき、주주(走走)ということによる。
 ホンマカイナ?その2。 これも確認できませんでした。日本では「トートー」と呼ぶってのは、まだ死語になってませんか? 広辞苑にないようですが・・・。

⑱하늫에 올라가면서 춤추는 것은?
 空に上がりながら踊りを踊るのはナーニ。
 答→
도리깨 からざお。殻竿を振り上げるとき、竿の先端についている棒が揺れるのを、ひらひらと踊りを踊るのにたとえる。
 答の日本語を見ても何かわからない人も多いかも。ウィキの説明は→コチラ。YouTubeに動画がありました。→コチラ。韓国のものは先が3本になっています。→コチラ
 思い起こせば私ヌルボ、1960年代のある日徳島市郊外の遍路道を自転車で走っていたら、農家の前庭でおばあさんが民謡(仕事歌)らしき歌を歌いながらこれを持って脱穀しているのを見ました。当時すでに日本史の教科書の江戸時代の部分に載っていた農具です。考えてみれば歴史的な光景だったのかもしれません。

⑲거꾸로 보면 절반 바로 보면 끝니 무엇?
 さかさに見れば半分、まっすぐに見るとおしまいの字はナーニ。
 答→
끝 말(末) 자 すえの末の字。末の字はすえの意味があるが、さかさにすると半の字に形が似ているためにいう。
 なるほどね。

⑳바람에 새가 날아 와서 벌레를 다 먹는 것이 무슨글자야?
 風に鳥が飛んで来て、虫をみな食べた字はナーニ。
 答→
새 봉(鳳) 자 おおとりの鳳の字。風の字の中の虫の字を鳥と入れ替えたのを、鳥が虫を食べたものとみる。
 な~るほどね。

 この本の発行は1977年。まだ韓国への関心が低かった時代に、定価1,000円の本書はあまりに早かったと思います。しかしこの時代だったからこそ古い時代の名残りが盛り込まれています。
 著者の若松實さんは1912年生まれ。32年天理外国語学校(朝鮮語学部)卒業。39年京城帝国大学法文学部文学科(朝鮮語・文学科)卒業。その後の経歴は、→コチラ。今は亡き先学に感謝します。

          
  【街中でチゲクン(背負子かつぎ労働者)が見られたのはいつ頃までなんでしょうか?】
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韓国総選挙:開票速報を見ながら考える。 与党・セヌリ党の勝利だが・・・。

2012-04-12 23:54:43 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 昨晩はずっとKBS1で韓国総選挙の開票速報を見ていました。

 今回初めて見たのですが、すぐ気づいたのは、日本とは違って得票数ではなく得票率の数字(%)で公表されること。なぜなのかはまだ調べていません。

 さて、結果はというと、すでに日本でも報道されているように与党のセヌリ党の勝利。全300議席中過半数の152議席を獲得しました。野党第1党の民主統合党は127議席、最左翼の野党・統合進歩党は13議席、野党(保守)の自由先進党は5議席、無所属が3議席でした。
 韓国全土の各選挙区で勝った政党を色分けしたものが下図です。

赤色セヌリ党
黄色民主統合党
紫色統合進歩党
青色自由先進党

   
     【地方(○○道)により明確に色分けされているのが韓国の政治風土の特徴。】

 セヌリ党の赤色は、この2月シンボル・カラーを赤と白にしました。民主正義党(1981年)当時から使ってきた青をやめて採択したのですが、党内で反対論もあったようです。あの「日本はない」の著者・田麗玉議員は「韓国で赤は韓国戦争(朝鮮戦争)を経験した人たちにとって恐怖」と語ったとか。(2月8日「中央日報」日本語版) サッカーの「赤い悪魔」もすでにあるし、「赤」といえば「パルゲンイ」(共産主義者)という時代でもなくなったのでしょう。運動会は紅白ではなく依然としてなんでしょうね。
 民主統合党の黄色=ケナリ(レンギョウ)も、民主党時代の緑色から変更されました。盧武鉉の大統領選の時のシンボル・カラー。つまり、進歩陣営にとっては、故・盧武鉉前大統領はいまだに大きな象徴的意味がある、ということのようです。
 紫色=チンダルレ(ツツジ)も統合進歩党のシンボル・カラーです。進歩陣営の両党の提携は黄紫連合とよばれました。

 上掲の地図を一目見てわかるように、韓国東北部の江原道はすべてセヌリ党、東南部の慶尚道もほとんどがセヌリ党の勝利。一方、民主統合党は全羅道(西南部)をはじめ首都圏で多く議席を得ています。
 盧武鉉時代に地域主義の打破が叫ばれたりもしましたが、また逆戻りしたのかな? 
 釜山地区で赤色の中にポツンと黄色があるのは、進歩陣営の有力な大統領候補・文在寅(ムン・ジェイン)氏。盧武鉉の精神を受け継いで比例代表ではなくあえて選挙区に出馬して勝利したのですが、ここは大統領候補として、比例代表の方を選んで全国レベルで選挙戦をリードすべきだったとの声もあるようです。

 各選挙区の開票速報を見ていて、最初疑問に思ったのは、たとえばソウルの選挙区では「중구갑」「중구을」等となっていて、「중구」は「中区」でいいとして、次の「갑」「을」は・・・と、しばし考えたら「甲」と「乙」なんですね。蘆原区や松坡区は丙()まで3つに分けられています。
 で、そのソウル特別市の選挙結果を見ると、下の図のように民主統合党30議席、セヌリ党16議席、統合進歩党2議席で、民主統合党の圧勝。

    
       【富裕層が多い江南方面は、やはり保守が強い。】 

 今回の選挙は、事前の報道では進歩陣営が多少有利の予測だったので、やや意外な結果でした。
 韓国サイトで結果の分析をいくつか見てみたところ、セヌリ党の方が切迫感があった。とくに朴槿恵選挙対策委員長の果たした役割が大きかったとされています。2月に党名を変更し李明博大統領も批判して、現政権の評価の争点化を希薄にし、進歩派が専ら唱えていた福祉や経済の民主化を掲げたりしたこと等々。
 一方、進歩陣営は候補者選定をめぐる不祥事が報じられたり、李明博政権批判に大きな影響力をもったネット放送「ナコムス」のメンバーであるキム・ヨンミン候補者(民主統合党・落選)の放言も問題とされたようです。

 さて、今回の選挙についての私ヌルボの感想です。
 いつものことですが、韓国の左右両派のミゾは深すぎます。どちらが勝っても、今後タイヘンだと思います。セヌリ党が過半数を占めたといっても、首都ソウルでは完敗だし・・・。
 「左右両派のミゾ」と言えば、メディアもまさに真っ二つ。「朝・中・東」と総称される保守系3紙(「朝鮮日報」「中央日報」「東亜日報」)と対する左派系の「ハンギョレ」や「京郷新聞」はそれぞれの応援団と化して相手陣営のネガティブ・キャンペーンを展開するし・・・。日本の「朝日」対「読売」「産経」の比ではありません。

 セヌリ党が勝って良かったかどうか? うーむ、わからん。今後次第? 以前のヌルボならほとんど無条件で革新支持だったのですが・・・。今回も、格差を拡大させた現政権を批判し、米韓FTA反対を叫ぶ進歩陣営支持者の気持ちは非常によくわかります。ただ強い親北・反米民族主義の性向はちょっとねー・・・。
 上記4党以外に小さい政党が約20ばかりあって、その中に「緑の党(녹색당)」があります。3月5日の「朝日新聞」に「脱原発掲げ韓国「緑の党」誕生」という記事が載っていて、副見出しに「4月総選挙の争点に」とあったので若干注目していたのですが、得票率は0.5%にとどまっていました。

 先に韓国は左右のミゾが深すぎると書きましたが、その分各政党の主張がわかりやすいともいえます。
 日本の場合は同じ政党でも人により消費税とかTPPとかについての賛否も違うし、実にわかりにくいです。各新聞・雑誌は、当落予想記事より先に、各立候補予定者が、たとえば原発の存廃・消費税率upの賛否・TPP参加の是非・憲法改正の賛否・沖縄米軍基地存廃・大きな政府or小さな政府等の項目についてアンケートを取って一覧表を作ってほしいものです。
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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[4月6日(金)~8日(日)]

2012-04-10 19:13:38 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 先週観た「ルート・アイリッシュ」「山びこ学校」「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」はどれも良かった! 「ルート・アイリッシュ」は5月5日からシネマ・ジャック&ベティで上映されることを知っていたものの待ちきれず。(「アリラン」は今上映中。) ケン・ローチ監督は期待を裏切りません。ただ、今回の主人公は短気すぎて感情移入できませんでしたが・・・。しかし、なんで民間軍事会社なんて犯罪的なものが存在するんだ? 批判すべきは北朝鮮のミサイルだけじゃないぞっ! (日本人にもブラック・ウォーターに雇われてイラクに行った人がいるんですね。(→コチラ。) イラクの子供に睨まれて「この世界の、不条理さを身をもって体験」して止めたということですが・・・。
 「山びこ学校」(1952)、音声は聴き取りにくかったてすが、私ヌルボが好きな木村功主演。いかにも今井正監督、いかにも戦後民主主義。貧困のため修学旅行に行けない級友のために生徒たちが杉皮運びをしてその費用を作る、なんてのは今はストップがかかるでしょう。生活綴り方からしてプライバシー保護の観点から否定されそう・・・。教育の場から失われたものが多すぎます。無着成恭先生の「全国こども電話相談室」は1992年までやっていたのか・・・。
 「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」は主演の少年(トーマス・ホーン)に注目。おじいさん(マックス・フォン・シドー)がドレスデン空襲の被災者だったというのは大きな意味があると思いますが、その点をもっと詳しく描いてもよかったかも・・・。日本人の多くはよく知らないのでは? この映画の韓国題は「엄청나게 시끄럽고 믿을 수 없게 가까운」なんですが、えっ、まだ公開されていないの? なにかわけがありそう・・・。

 4月7日のKBS2「영화가 좋다(映画が良い)」では「ステキな金縛り」を詳しく紹介していました。韓国題は「멋진 악몽(ステキな悪夢)」なんですね。4月19日公開だそうです。また5月3日公開の「KOREA」出演のハ・ジウォンも出てましたねー。(これも北朝鮮への片思い映画?)

         ★★★ Daumの人気順位(4月10日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①かたつむりの星(韓国)  9.6(44)
②タイタニック 3D 9.6(2309)
③語る建築家(韓国)  9.5(25)
④オペラ座の怪人 25周年特別公演  9.4(109)
⑤最強のふたり  9.2(623)
⑥偕老(韓国)  8.9(31)
⑦スタンリーのお弁当箱  8.9(125)
⑧アーティスト  8.9(211)
⑨マリリン 7日間の恋  8.6(48)
⑩建築学概論(韓国)  8.6(1338)

 新登場は②だけ。日本でも先週(7日)から公開されています。韓国題は「타이타닉」。

【専門家による順位】

①タイタニック 3D  10.0(2)
②ニーチェの馬  8.5(2)
③2本の線(韓国)  8.0(1)
④アーティスト  7.8(6)
⑤ファミリー・ツリー  7.8(5)
⑥ティラノサウルス  7.5(4)
⑦犯罪との戦争:悪いやつらの全盛時代(韓国)  7.3(6)
⑧ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女(2009)  7.3(3)
⑨さすらいの女神たち  7.2(4)
⑩建築学概論(韓国)   7.1(6)

 ①と⑨が新登場です。①は上述。
 ⑨「さすらいの女神たち」は、めずらしく日本の方が早く2011年9月公開。そんなに話題にならなかったような・・・。ヌルボも未見です。韓国題は英語題をとって「온 투어(On Tour)」。

   ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[4月8日(金)~10日(日)] ★★★

         「建築学概論」が3週連続トップで200万人を超える

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・建築学概論(韓国) ・・・・・・・・・・・・・3/22 ・・・・・・・・・・・・・454,426 ・・・・・・・・・2,332,691・・・・・・・・17,394・・・・・・・555
2(23)・・ハンガー・ゲーム ・・・・・・・・・・・・・4/05 ・・・・・・・・・・・・・273,796 ・・・・・・・・・・・317,387・・・・・・・・・2,375・・・・・・・511
3(3)・・最強のふたり ・・・・・・・・・・・・・・・・・3/22 ・・・・・・・・・・・・・216,277・・・・・・・・・・1,291,240・・・・・・・・・9,622・・・・・・・343
4(4)・・死体が帰ってきた(韓国)・・・・・・・・3/29 ・・・・・・・・・・・・・195,508 ・・・・・・・・・・・704,947・・・・・・・・・5,301・・・・・・・353
5(2)・・タイタンの逆襲 ・・・・・・・・・・・・・・・・3/29 ・・・・・・・・・・・・・163,419 ・・・・・・・・・・・836,225・・・・・・・・・7,176・・・・・・・402
6(新)・・タイタニック 3D ・・・・・・・・・・・・・・・4/05・・・・・・・・・・・・・・119,786 ・・・・・・・・・・・140,131・・・・・・・・・1,702・・・・・・・271
7(5)・・火車(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/08・・・・・・・・・・・・・・・27,172・・・・・・・・・・2,406,957 ・・・・・・・18,244・・・・・・・163
8(新)・・コナン・ザ・バーバリアン ・・・・・・・4/05・・・・・・・・・・・・・・・19,048 ・・・・・・・・・・・・23,997・・・・・・・・・・・188・・・・・・・198
9(8)・・宇宙犬物語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/22・・・・・・・・・・・・・・・・4,709 ・・・・・・・・・・・・40,929・・・・・・・・・・・271・・・・・・・・41
10(新)・・姦通を待つ男(韓国) ・・・・・・・・・・4/11・・・・・・・・・・・・・・・・4,178 ・・・・・・・・・・・・・8,554・・・・・・・・・・・・58・・・・・・・・11
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は2・6・8・10位の4作品。
 2位「ハンガー・ゲーム」はスーザン・コリンズの同名小説(翻訳書あり)の映画化。近未来のSFサスペンスで、13の地区から選抜された24人の少年少女たちが殺し合って、ただ一人だけが勝者となる過酷なゲーム、というアメリカ版の「バトル・ロワイヤル」です。日本公開は今年秋の予定。
 6位「タイタニック 3D」は説明省略。
 8位「コナン・ザ・バーバリアン」は、コナンといっても名探偵の方ではなく、ロバート・E・ハワードの小説「英雄コナン」シリーズを映画化したもの。アーノルド・シュワルツェネッガーの出世作「コナン・ザ・グレート」のリメイク版。有史前を舞台に、勇者コナンが父の仇を討つまでのアクション・ファンタジー。韓国題は「코난:암흑의 시대(コナン:暗黒の時代)」。
 10位、原題の「간기남(カン・ギ・ナム)」は「간통을 기다리는 남자(姦通を待つ男)」の略語。韓国では広く知られているように(?)姦通罪があるんですねー。姦通現場に踏み込んで謎の殺人事件に巻き込まれ、有力容疑者にされた姦通専門刑事(パク・ヒスン)が、殺人事件の真実を暴くために孤軍奮闘する過程を描く・・・。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(2)・・語る建築家(韓国) ・・・・・・・・・・・・・3/08 ・・・・・・・・・・・・・・・1,493 ・・・・・・・・・・・・・23,035 ・・・・・・・・182・・・・・・・・・・11
2(3)・・彼女が去る時・・・・・・・・・・・・・・・・・3/29 ・・・・・・・・・・・・・・・1,050 ・・・・・・・・・・・・・・4,118・・・・・・・・・・31・・・・・・・・・・13
3(1)・・かたつむりの星(韓国)・・・・・・・・・・3/22 ・・・・・・・・・・・・・・・1,003 ・・・・・・・・・・・・・12,829 ・・・・・・・・・88・・・・・・・・・・22
4(9)・・オモニ(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/05・・・・・・・・・・・・・・・・・459 ・・・・・・・・・・・・・・1,512・・・・・・・・・・・9・・・・・・・・・・19
5(9)・・ミレニアム2 火と戯れる女・・・・・・・3/22・・・・・・・・・・・・・・・・・377 ・・・・・・・・・・・・・・1,817・・・・・・・・・・13・・・・・・・・・・・6
                                      
 先週の記事で1995年の青龍映画賞最優秀作品賞の「美しき青年-全泰壱(チョン・テイル)」のことを少し書きましたが、4位「オモニ」は、その全泰壱の母・李小仙(イ・ソソン)さんの最後の2年間を撮ったドキュメンタリー。長男全泰壱の焼身自殺後、彼女自身も逮捕・投獄される目に遭いながら息子の意思を引き継いで労働運動に関わるようになった、とのことです。
 5位「ミレニアム2 火と戯れる女」、日本では2010年に公開されました。韓国題は「밀레니엄:제2부 불을 가지고 노는 소녀」。
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脱北者問題 - 韓国民の大多数は無関心、とくに進歩陣営は冷淡  

2012-04-09 23:27:41 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)

 本ブログでは、
2月24日<「週刊文春」掲載の南北朝鮮の比較写真 と 中国政府による脱北者の強制送還問題>
2月26日<中国による脱北者強制送還に対する韓国の進歩系新聞「ハンギョレ」の社説は悲しい>
3月12日<中国による脱北者強制送還反対運動の高まりと、その波及効果>
昨日(4月8日)の記事<中国による脱北者強制送還問題 - 韓国が国際社会にアピールする道を選んだ結果は?>
・・・と、4回にわたって中国による脱北者強制送還問題について記してきました。  韓国で、この問題についてこれだけ集会等が開かれたり、メディア(主に「朝鮮日報」「中央日報」「東亜日報」の3大保守紙)が報道したことはありませんでした。

 しかし、前の記事の最後に書いたように、私ヌルボが痛感したことは多くの韓国人の関心がまだまだ低いということです。
 前々回の記事で、自由先進党の朴宣映議員の断食闘争に続いて、2月23日から脱北女性として初めて韓国で博士号を取得した李愛蘭北韓伝統飲食文化研究院長も断食に入ったことを書きました。

 朴宣映議員が3月2日、断食11日目で抗議集会中に意識を失って倒れて病院に搬送された後、李愛蘭院長は1人で断食闘争を続けていましたが、彼女も断食19日目の3月11日力尽きて断食を中断しました。
 「東亜日報」3月12日付の「李愛蘭氏「進歩人士の脱北無関心に意欲喪失」と見出しのついた記事によると、彼女は記者のインタビューに対して、次のように答えていました。
 健康に大きな問題はありませんが、期待するほど多くの人々の参加を導き出すことができなかった中途半端な集会という気がして中断することにしました。4日に断食を終える予定でしたが、ちょうどその日アン•チョルス氏が座込み場所に訪れたので、これを皮切りに進歩陣営の参加がもっと引き出せるのではと期待して期間を延長しましたが、そうはいきませんでした。
※「東亜日報」系のTVのチャネルAに、このインタビューの動画がありました。

 この問題についての人々の関心について、「朝鮮日報」(日本語版3月20日)に、<「脱北者問題への社会の関心低い」 83%>という見出しで世論調査の結果と分析の記事が載っていました。
 それによると、「脱北者支援や強制送還阻止などの脱北者問題に、韓国社会の関心が低い」という点に、「そう思う」が83.0%、「そう思わない」は14.0%でした。
 世代別にみると、脱北者問題への関心が低いという意見は、20代で83.0%、30代で86.1%、40代で84.5%、50代で80.9%、60代以上で80.4%と、若い世代がやや高いものの、全ての世代とも80%の高率を示しました。
また、与党セヌリ党の支持者は83.0%、野党民主党の支持者は87.2%が「脱北者問題に無関心」で、進歩陣営がやや高いが、保守陣営も80%以上が「関心が低い」という意見。

     
        【8割以上が「関心が低い」と回答。】

 私ヌルボが思うに、これは誤解を招きやすい設問で、「自分も関心は低い」という人だけではなく、「自分は高い関心を持っているが、一般の韓国の人たちは関心が低い」という人も「そう思う」の方に含まれているかもしれません。
 しかし、それにしても韓国社会の脱北者に対する関心の低さは否定すべくもありません。(独島問題だとあれだけのパワフルになるのに・・・。)

 また、今回の一連の運動でチャ・インピョ氏が、「このような人権問題に、進歩だ保守だというような政治的・思想的な違いはない」と訴えたことは大きな影響力を持ったと思いますが、それでも進歩陣営の腰は重い、というか、そう簡単には北朝鮮にたいする見方・姿勢は変わらないと思いました。
 その代表例として、「ハンギョレ」の記事を紹介します。

※この問題についての「ハンギョレ」の姿勢については、本ブログ2月26日の記事でヌルボなりの批判を書きました。

 3月に入っても、「ハンギョレ」は脱北者強制反対の運動に対して批判的な(冷静な?冷淡な?)記事を数本掲載しています。
次の3つの記事は翻訳されて<ハンギョレ・サランバン>のサイトで読むことができます。

①3月8日「社説:脱北者とその家族の安全が最優先だ」
②3月23日「[土曜版]カバーストーリー 国家情報院 職員、ボールペンで脱北者の頭を・・・」
③3月24日「[土曜版]カバーストーリー 家族の気持ちを推し量ってみましたか? 韓国の政治論理じゃないんですか?」各記事のポイントを記す前に、この問題に対する「ハンギョレ」の立ち位置を如実に表しているのが②の記事の冒頭部分。

 韓国政府と自由先進党、セヌリ党など保守政党所属政治家が主導している脱北者(北韓離脱住民)の強制北送還反対の声が北韓人権に対する国内外の関心拡大につながっているが、実際に北韓を脱出して韓国に入国する北脱出者の人権は疎外されているという指摘が提起されている。」
 つまり、脱北者(北韓離脱住民)の強制送還反対の声を主導しているのは政府と保守政党所属政治家である、と自明のことのように記しています。はたして、この記者にとって、脱北者はどんな存在として映っているのでしょうか?
 この後に続く②の記事では、最近北朝鮮を脱出して韓国に入ってきた脱北者の中で、国家情報院が主導し、警察、国防部関係者などが加わってなされる合同尋問過程で、悪口や暴行、事実上の監禁など反人権的待遇を受けたという事例がいくつもあるということを問題化しています。中には、その暴行の後遺症で今も難聴に苦しめられている人もいるとか。また政府が2010年9月、「脱北者を装ったスパイの浸透を遮断し、定着支援金を狙う在中同胞の偽装入国をより徹底的に遮断するため」それまで90日だった調査期間を最長180日に増やしたことも脱北者たちを抑圧するものとなっていると批判しています。
 これはたしかに大きな問題で、批判はあたっていると思いますが、上掲の冒頭の言葉をみるかぎり、同様の、あるいはそれ以上の仕打ちを北朝鮮や中国で蒙ってきた脱北者の人権問題を自らの問題として引きうける姿勢がないと、単に政府・与党批判のイシューとして取り上げているような印象を受けてしまいます。

 ①や③の記事で、あるいはそれ以前の記事でも「ハンギョレ」が指摘していた点は、脱北者についての情報公開は、かえって彼らの状況を危うくするおそれがある、ということです。
 ①では、韓国内の一脱北者の「中国大使館前の強制送還反対デモは私たちが望むものではない」という声を載せています。そして「この脱北者の主張が全面的に正しいとは限らないが、脱北者のために乗り出した人々の軽率な言動が逆に脱北者をより大きな危険に陥れているならば、これは必ず改めなくてはならない」と述べています。(この「軽率な言動」という言葉には憤る人も多いのではないでしょうか?)
 また「韓国政府がもう少し早く乗り出していれば今回のことが騒がれずに捕えられている脱北者が解放されることもありえた」と言う脱北者の思いを外交通商部は心して聞くことを望む」とも記していますが、騒がれることもない状態で人権状況が改善される見通しがあるというのでしょうか? また、この脱北者の人権問題で一番大きな責任があるのが北朝鮮政府、次に中国政府、三四がなくて五に韓国政府と韓国民ではないでしょうか?
 これまで、「静かに」進められてきた脱北がどれだけ命がけで敢行されてきたか、「ハンギョレ」の記者は知らないのでしょうか? また過去2万人を超える脱北者が韓国入りしていますが、それよりはるかに多い10万の脱北者が過去17年間中国から送還されたとも伝えられています。

 ③の記事では、記者は中国の都市丹東(タンドン)に行き、脱北者の女子大生や脱北者の家族、そして脱北者出身の脱北ブローカーの話を聞いています。その皆が訴えたことは「保守であろうが進歩であろうが脱北者の強制北送還問題だけは政治論理ではなく家族の問題として接近してほしい」ということ。(それはヌルボも当然同感なのですが・・・。左派右派どちらも相手側が政治的に対応している、と論難しているという図式。)
 この記事で紹介されている個別の事例は、この問題がイシュー化したことによって中国に捕えられていた家族が結局北に送られてしまったとか、ブローカーに渡さなければならない金額が急騰したという厳しい事実です。またソウルにいる脱北女子大生の「韓国が脱北者問題を大きくするので中国政府が面会までできなくなりました」という言葉も載せられています。彼女はまた「脱北者の人権のためだと言って中国を刺激すれば中国は一層緊張して原則を強調せざるを得ないと思います。だから今お金も通じないでしょう。韓国政府と一部政治家が脱北者家族をよく考えていないという気がします」とも語っていますが、これはそのまま「ハンギョレ」の意見のように思われます。

 2月に「朝鮮日報」や「東亜日報」では、脱北青少年たちが「私たちの家族や友だちを強制送還するな!」と声を上げて立ち上がったことを伝えていました。
 どちらの脱北者の声も嘘ではなく、切実なものだと思います。それが正反対の内容になってしまうこと自体がこの問題のむずかしさを表しています。ただ、それを伝えるメディアが、自身も含めてどれだけ問題の全体像を公正に(←ありうるのか?)客観的に(←ありえない!?)伝えられるかが問われるということでしょう。

 この③の記事なんですが、読んでいて悲しくなった記述が次から次へと出てきて、とてもやりきれない気持ちになってしまいました。

 丹東市内で喫茶店を営む女性への取材。「韓国のニュースはドラマとは違いよく理解できない」と話した。特にファン氏が受け入れ難いニュースは強制送還に対する恐怖を必要以上に誇張する韓国内脱北者インタビューであった。ファン氏は中国国籍を持っているが故郷は平壌だった。夫と息子は今でも平壌に住んでいる。「韓国ニュースで出てくるように北韓に捕えられるといっても処刑されたりするケースは多くはありません。・・・子どもたちはこぶしで頭を叩かれ家に帰ったり、大人は労働鍛練隊に行って3ヶ月仕事をして家に戻ります。・・・無条件に拷問したり処刑していると言うのは韓国の政治論理じゃないですか?」。・・・統一研究院が出した2011年版<北韓人権白書>によると北韓は1992年まで祖国と人民を裏切ることは最も大きな罪悪だと規定してきたが・・・1998年に処罰を緩和した。「2000年以後には(強制送還者を)政治犯収容所に移管するケースはほとんどなく、ほとんどが労働鍛練隊で1~6ヶ月程度の労働鍛練刑を受けることになる。 送還以後、最終釈放までの拘禁期間が1年を越えるケースは非常に稀だった」と明らかにしている。北韓に強制送還された後、拷問と人権蹂躪に苦しめられたという韓国内一部脱北者の証言があるが、反対に軽い処罰を受けたという証言もある。
 これについてキム・ヒョンドク韓半島平和繁栄研究所長は「脱北送還者に対する過度な処罰が一部存在するなど、北韓の人権状況が1960~70年代の韓国と類似していることは事実」としながらも「ただし対北韓食糧支援はバラマキだとして阻んでいる保守陣営が他方で北韓の人権問題を強調することは人権を政治手段化する行為」と指摘した。また、キム所長は「収容所外の北韓住民が飢えて死ぬのも放っておきながら、閉じ込められている人に何をどのようによくしろということなのか疑問」と付け加えた。・・・韓国政府および政界の一部の脱北者送還反対運動は中国で共鳴されずにいることは明らかだった。 中国人はこのような状況をほとんど知らなかったし、中国と北韓を行き来する北韓の人々は拒否感を示した。

 進歩陣営の、脱北者あるいは北朝鮮に対する姿勢をよくあらわしている内容だと思います。
 ここに名前が出てくる脱北者出身のキム・ヒョンドク韓半島平和繁栄研究所長という人については今まで知りませんでしたが、2月末に「中国を圧迫して北送を阻止? 見込みがない」と題したインタビュー記事が「オーマイニュース」にありました。(→自動翻訳)
 その記事中にもありますが、特異な経歴の人物です。彼の主張は「脱北者問題の解決策は、北朝鮮内で生きていける環境を作ること(経済の再生)」、そのために「北の支配層が安心して開放と交流ができるように環境を作る努力が必要」というのですが、これってどれだけ現実的なのでしょうか? 開放と交流が自分たちの地位を危うくするから踏み切れないのではないですか? また「ハンギョレ」の記事中の「収容所外の北韓住民が飢えて死ぬのも放っておきながら、閉じ込められている人に何をどのようによくしろということなのか疑問」という発言の大きな問題点に、記者は何も気づいていないようだし・・・。

 反権力も人権の尊重も、創刊時から「ハンギョレ」が掲げてきた理念のはずですが、どうも反権力=反政府となり、「敵の敵は味方」という感じで親北朝鮮となり、北朝鮮政府が北朝鮮人民の人権を抑圧しても、それを正視できなくなってしまっているようで、とても残念です。

 本記事のタイトルを見るとそうは思われないでしょうが、私ヌルボは「進歩陣営」の側だと自分では思っているんですけどねー・・・。

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中国による脱北者強制送還問題 - 韓国が国際社会にアピールする道を選んだ結果は?  

2012-04-08 23:03:59 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)

 4月5日の「読売新聞」の国際欄に、韓国・北朝鮮関係の記事が3つ載っていました。
○「経済大統領」に失望 広がる格差 激戦韓国総選挙[上]、
○現実無視の正恩指令 食糧ないのに「供給しろ」
○脱北者の韓国行き許可 中国、北への「不快感」表れか

 上の2つも興味深いですが、3つ目については、3月12日の本ブログ記事<中国による脱北者強制送還反対運動の高まりと、その波及効果>で記したことと直接関連するので、その記事の続編という形で、その後のいくつかの事実とともに紹介します。

 前回の記事では、「中国・瀋陽で8日公安に抑留され北朝鮮へ送還される危機にある脱北者10人が韓国の国家人権委員会に緊急救済を要請した」と13日人権委員会が明らかにした、と報じられたことから、韓国内で中国による脱北者強制送還反対の運動が広がっているということを記しました。

 ところが、その後の「中央日報」の記事によるとそれは誤報で、「人権委員会が明らかにした」という部分が事実と異なるというもので、「ある人権委員が秘密情報を外部の人間(知り合い)に漏らしてしまった」というのが正しいとのこと。
 そして、これまで脱北者を支援してきた北朝鮮人権改善の会のキム・ヒテ事務局長は、懸念を表しました。
 それは、今までは秘密裏に中韓双方の協議で脱北者のことを協議してきたのが、問題が公然化すると、中国当局としては(北朝鮮の手前)強い姿勢(=強制送還)を見せざるをえない。それは命がけで脱北した人たちをむしろ死地に追いやる結果を招く、というもので、このような状況になったのは「人権委員会のアマチュアリズムのため」で、「人権を語る人権委員会が脱北者の人権をむしろ死角地帯に追いやった」と非難しました。

 国際世論に訴える道を選んだ韓国政府

 政府部内、とくに外交通商部(日本の外務省に相当)内でも、中国に対し正論を主張するか、両国の対話チャンネルの維持を優先するかで意見が分かれ、苦慮したようです。(「聯合ニュース」2月22日)
 しかし、結局韓国政府は「正論を主張する」法を選びました。
 (私ヌルボ思うに)①開けたフタは閉じようがないから。②国内世論、市民の動きを勘案した。③総選挙に向けて、進歩陣営を叩くネタになりそうだから。・・・というのがその判断の理由でしょう。

 以後韓国政府は、中国に国際法上の義務を守るよう促して、それまで非公開協議にとどまっていた脱北者の身柄処理問題を初めて公然化しました。さらに国際社会に問題をアピールしました。

 まず、中国に対しては、李明博大統領、金星煥外交通商部長官は3月2日訪韓した中国の楊外相に脱北者強制送還の中断を求めました。(が、楊外相は国内法と国際法、人道主義の原則に基づき妥当に問題を処理するという従来の立場を繰り返したとのことです。)
 
 また金星煥長官は訪米して3月7日潘基文国連事務総長と会って脱北者問題の解決に国連が積極的に乗り出すよう求め、9日のクリントン国務長官との会談でも脱北者問題が取り上げられました。

※それ以前に、アメリカ国務省は22日、国際機関と協力しながら問題解決に取り組む考えを明らかにし、中国に対し脱北者強制送還の中止を要求しています。(「中央日報」2月25日) 
 アメリカでは、3月5日「中国の脱北者強制送還公聴会」も開かれました。アムネスティの関係者、ワシントンの北朝鮮関連団体代表らが出席した公聴会の場で、脱北者ハン・ソンファさんは「中国公安から脱北者を引き渡された北朝鮮の保衛部の人たちは『お前たちはこれから犬だ』と話し、手錠と鎖をつけてひどく暴行を加える。北朝鮮に送還されて入れられた収容所では、午前5時から夜遅くまで労働を強いられる」等の証言をしました。(「中央日報」3月7日)


 韓国政府は、さらに国連人権理事会に脱北者送還問題を提起することを決め、ジュネーブに代表団を派遣しました。この代表団は、ソウルの中国大使館前で抗議のハンストを行った野党・自由先進党の朴宣映議員に、国会北朝鮮人権委員会の議員らが賛同し実現したものです。
 3月22日開かれたその国連人権理事会では、北朝鮮人権決議案を無投票で採択されました。
 この際、韓国国会代表団と駐ジュネーブ北朝鮮代表部大使の間で衝突があったことが伝えられています。(「中央日報」3月13日)
 ※ジュネーブでは、北朝鮮人権団体がキャンペーンなどの活動を展開しました。先述の"北韓人権改善の会"は13日ジュネーブ国際会議場で、 "北の連帯"と共同で北朝鮮の教化所収監被害者の証言をもとに描かれた絵の展示会を開きました。14日には国連広場で地元の活動家たちと一緒に集会をもち、北朝鮮韓代表部、中国代表部に書簡を伝達しました。(北朝鮮は受取拒否。)(「デイリーNK」3月15日)

 作家・申京淑、香港で脱北者送還反対を訴える

 脱北者強制送還問題について、その後3月6日韓国・日本・中国・インドネシア等のアジア諸国を中心としたアジア記者協会(AJA)が中国政府に対し、脱北者を難民として認定するよう求めたこと(「朝鮮日報」3月8日)、09年3月中朝国境地帯で脱北者の人身売買の実態を取材していた時に北朝鮮当局に逮捕され、140日間抑留された後釈放された中国系アメリカ人のローラ・リン記者が、脱北者強制送還の中止を要求するビデオを緊急製作した脱北者強制送還中止要求キャンペーンのビデオに出演し、彼らの送還阻止をと国際社会によびかけたこと(「東亜日報」3月9日)等が伝えられました。

 脱北者送還反対の声の中で、私ヌルボが注目したのは、小説「母をお願い」で広く注目された作家・申京淑さんの発言です。
 3月25日の「朝鮮日報」のコラム「萬物相」によると、申京淑さんは3月15日、香港で開かれたマン・アジア文学賞の授賞式会場で檀上に立って次のように語ったとのことです。
 「最後にこの場を借りてお話したいことがあります。今、命懸けで中国に渡ってきた脱北者たちが、再び北朝鮮に送還されるという事態が発生しています。命懸けで脱北してきた人々を再び本国に送還することは、彼らを死に追いやるも同然です。これは政治的問題などではなく、人間に対する礼儀ではないでしょうか」。
 ※このコラムでは、彼女の発言を聞くと、「村上春樹氏が2009年にイスラエルで最高権威のエルサレム賞を受賞した当時の光景が思い出される」と記しています。

 苦慮する中国政府

 脱北者強制送還に対する抗議運動の高まりや韓国政府の要求に対して、中国政府は「脱北者は経済的目的で違法に越境した人々で、難民と見る十分な根拠はない」との基本姿勢を維持し続けています。しかし、苦しい内部事情があるのもたしかです。

 まず、中国内部でのネットユーザーや一部マスメディアの反応。
 中国共産党の機関紙「人民日報」の姉妹紙の「環球時報」は脱北者が送還の危機にあるとの韓国紙報道を要約して掲載し、中国版ツイッターの微博では強制送還に反対する書き込みや「脱北者に難民の地位を与えよう」という書き込みもあったということです。(「東亜日報」2月16日)同2月24日)
 「朝鮮日報」3月6日の記事でも、「小説家の劉亜偉氏、画家で音楽家でもある楊林川氏等知識人を中心に強制送還に反対する声が広まっている。・・・上海在住のあるネットユーザーが3日から微博上で行っているアンケートでも「強制送還に反対」とする回答は全体の75%を占めていた」と報じています。

 また、国際社会でも、政治的・経済的に存在感を増し影響力を強める中で、「人権後進国」という低評価がこの問題で上塗りされてしまうことはできれば避けたいことでしょう。

 しかし、脱北者を難民として認め、自由に韓国への出国を認めることは、北朝鮮の体制崩壊を招きかねません。それは是が非でも避けなければならない・・・・。

 このようなジレンマの中、中国政府が、これも中国との決定的な対立は避けたい韓国政府とコミュニケーションをはかりつつ打ち出した方策が、冒頭の「読売新聞」の記事にある、駐中韓国公館で3年近く滞留してきた脱北者の韓国への出国許可です。

 結局は中韓両国政府が求めた「落としどころ」で結着

 3月核安全保障サミットに際してソウルを訪れた中国の胡錦濤国家主席は、26日に李明博大統領と会談しました。この時最大の外交課題として脱北者の強制送還問題が話し合われ、その中でとくに北京の韓国大使館に3年近く未成年の息子とともに滞在し、中国を出国できずにいるペク・ヨンオクさん一家の韓国行き問題に注目が集まったことがすでに「朝鮮日報」(3月27日)の記事等で伝えられていました。(北京や瀋陽の大使館・領事館で長期滞在している脱北者のことは、それまで韓国各紙で報道されてきました。)
 その間、例の北朝鮮のミサイル発射問題がクローズアップされる中、「読売」の記事にあるように、中国としては北朝鮮に対する「不快感」をこのような形で表明しつつ、かといってこれまでの基本姿勢を改めたわけでもありません。

 一方、韓国政府としては、「この問題で正面から中国と対峙しても変化は期待できないし、場合によっては逆効果」との悲観的な見方も強かった中で、一定程度の「成果」が得られたことで良しとした、ということでしょう。脱北者の問題について、一定程度国際社会にもアピールして北朝鮮をまたいくらか追いつめることもできたし・・・。

 ・・・ということで、2月以来の中国による脱北者強制送還問題は一段落するのでしょうかねー。
 しかし、北朝鮮内で、あるいは脱北して中国内で苦しい生活を余儀なくされている人たちの状況はあいかわらず、というのではまずいのですが・・・。この間の一連の流れの中でこの問題に関心を向けるようになった国連人権理事会や各人権組織・団体に期待したいものです。

 ところで、この問題について韓国内の報道を追っている中で痛感したことがあります。それは脱北者問題に対する韓国民の無関心。とくに左派にその傾向が強いのですが、左派に限ったわけでもありません。
 この件については続きで書くことににします。 

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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[3月30日(金)~4月1日(日)]

2012-04-03 21:59:45 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 1つ前の記事も韓国映画関係です。ご一読ください。

 3月22~28日ロッテシネマ弘大入口で開かれたインディー・ドキュ・フェスティバルに、開幕作としてホン・ヒョウン監督の「誰も見ない夢(아무도 꾸지 않은 꿈)」というドキュメンタリーが上映されました。この作品を知ったのは、<レイバーネット>の記事によってです。このサイトには「二つの扉 竜山惨事の召喚状」も紹介されています。
 これら2作品は、韓国映画で1つのジャンルをなしている<労働者映画>です。<DAUM映画>で検索すると、20作近くの作品がヒットしましたが、その最初が「九老アリラン」(1989)。私ヌルボが観たのは1994年今はない千石の三百人劇場で開かれた「韓国映画の全貌」の時だったか? 今<輝国山人の韓国映画>で確認したら、チェ・ミンシクも出演していたんですね。
 それ以後、日本ではこのジャンルの作品が一般公開される機会はほとんどなかったのではないでしょうか?
 2010年に、1989年韓国スミダの闘いとその後の20年を追ったドキュメンタリー「海を越えた初恋―スミダの記憶」上映会が労組関係・市民団体で開かれたのは数少ない例だと思います。
 <DAUM映画>の評点で、少し前「저 달이 차기 전에(あの月が満ちる前に)」というドキュメンタリーが数は少ないながらも9.6という高評点なので調べてみると、2004年双龍自動車の整理解雇反対闘争を描いたもので、2010年全州国際映画祭で観客賞を受賞した作品でした。
 これらの労働者映画を、私ヌルボもいろいろ観てみたいのですが、韓国内でさえあまり陽の当たらない作品を、日本であえて上映しようという奇特な配給会社があるとも思えないし、うーむ・・・。
 労働者映画といえば、1995年の青龍映画賞最優秀作品賞の「美しき青年-全泰壱」、観てないんですよ。レンタル店にもないし、あーあ。(韓国で発売されたDVD(リージョン3)には日本語字幕が付いているとか・・・。)

         ★★★ Daumの人気順位(3月27日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①かたつむりの星(韓国)  9.6(37)
②語る建築家(韓国)  9.5(22)
③オペラ座の怪人 25周年特別公演  9.4(108)
④最強のふたり  9.2(533)
⑤偕老(韓国)  9.0(30)
⑥スタンリーのお弁当箱  8.9(124)
⑦アーティスト  8.9(211)
⑧ダンシング・クィーン(韓国)  8.9(1298)
⑨メアリー&マックス  8.7(52)
⑩マリリン 7日間の恋  8.6(47)

 今回は新登場はありません。観客動員数トップの韓国のドキュメンタリー等、概して「多様性映画」の評価が高いですね。

【専門家による順位】

①自転車に乗った少年  8.8(6)
②ニーチェの馬  8.5(2)
③2本の線(韓国)  8.0(1)
④アーティスト  7.8(6)
⑤ファミリー・ツリー  7.8(5)
⑥ティラノサウルス  7.5(4)
⑦犯罪との戦争:悪いやつらの全盛時代(韓国)  7.3(6)
⑧ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女(2009)  7.3(3)
⑨ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ  7.1(6)
⑨建築学概論(韓国)   7.1(6)

 ⑥「ティラノサウルス」が初登場です。2011サンダンス映画祭でワールドシネマ監督賞とワールドシネマ審査員特別賞2部門の受賞作で、東京国際映画祭でも上映されたイギリス映画です。タイトルからして恐竜映画かと思いましたが、ヒューマン・ドラマです。主人公は、酒に溺れ、暴力をふるうという日々を送ってきた60代にもなろうかという男性。ある夜帰宅途中に暴漢に襲われ、気を失ってしまいます。いつしか早朝、女性の声で目覚めると、そこは彼女が切り盛りする教会系のリサイクルショップの前。これをきっかけに2人は親しくなっていくのてすが、平穏に見えた彼女にも暗い秘密があることを知ることになるのだった・・・。このティラノサウルスというのはこの男の(2人の?)心の中の恐竜ということのようです。韓国題は「디어 한나(ディア・ハンナ)」で、むしろわかりやすそう。日本での一般公開は未定のようです。

   ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[3月30日(金)~4月1日(日)] ★★★

         韓国のラブ・ロマンス「建築学概論」が2週連続トップ

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・建築学概論(韓国) ・・・・・・・・・・・・・3/22 ・・・・・・・・・・・・・570,904 ・・・・・・・・・1,609,035・・・・・・・・12,019・・・・・・・579
2(新)・・タイタンの逆襲 ・・・・・・・・・・・・・・・3/29 ・・・・・・・・・・・・・482,483 ・・・・・・・・・・・554,486・・・・・・・・・4,885・・・・・・・536
3(2)・・最強のふたり ・・・・・・・・・・・・・・・・・3/22 ・・・・・・・・・・・・・315,938 ・・・・・・・・・・・940,459・・・・・・・・・7,032・・・・・・・411
4(16)・・死体が帰ってきた(韓国)・・・・・・・3/29 ・・・・・・・・・・・・・312,869 ・・・・・・・・・・・368,062・・・・・・・・・2,788・・・・・・・433
5(3)・・火車(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/08 ・・・・・・・・・・・・・110,310・・・・・・・・・・2,339,240 ・・・・・・・17,753・・・・・・・326
6(6)・・Black&White ブラック&ホワイト・・2/29・・・・・・・・・・・・・・15,435 ・・・・・・・・・・・857,344・・・・・・・・・6,545・・・・・・・103
7(4)・・ジョン・カーター ・・・・・・・・・・・・・・・・3/08・・・・・・・・・・・・・・・11,427 ・・・・・・・・・・・831,555・・・・・・・・・7,174・・・・・・・152
8(9)・・宇宙犬物語・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/22 ・・・・・・・・・・・・・・11,167 ・・・・・・・・・・・・35,826 ・・・・・・・・・・238・・・・・・・・89
9(5)・・クロニクル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/15 ・・・・・・・・・・・・・・・6,761 ・・・・・・・・・・・381,410・・・・・・・・・2,863・・・・・・・109
10(12)犯罪との戦争 ・・・・・・・・・・・・・・・・・2/02 ・・・・・・・・・・・・・・・2,394 ・・・・・・・・・・4,681,429・・・・・・・・36,255・・・・・・・・26
         悪いやつらの全盛時代(韓国)
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回も6位以下の観客動員数の少なさが目につきます。とくに、10位のこの数字は、当ブログ開設以来最低値だと思います。この状況が一時的なものであってほしいものです。
今回の新登場は2位と4位の2作品。
 2位「タイタンの逆襲」は「タイタンの戦い」(2010)の続編。日本では今月21日公開で、すでに紹介記事や予告編も出ているので、説明は略します。韓国題は「타이탄의 분노(タイタンの憤怒)」。
 4位「死体が帰ってきた」は、タイトルからホラー映画かと思ったらコメディ。研究員たち2人(イ・ボムス&キム・オクビン)が違う目的で1つの死体を手に入れようとするが、予期せぬ人物(リュ・スンボム)が登場して、激しく大胆な争奪戦が始まる。え?そこにまた別の目的のために死体&彼らを追う連中がやってて追撃戦が始まるの? 複雑みたいですが、観た人の感想では「基本はわかりやすいストーリー、そして体を張った古いタイプのコメディ、ドタバタっぽいところもあり、しばしば劇場内が爆笑の渦に包まれました」とのことです。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(2)・・かたつむりの星(韓国)・・・・・・・・・・3/22 ・・・・・・・・・・・・・・・2,044 ・・・・・・・・・・・・・・9,029 ・・・・・・・・・63・・・・・・・・・・33
2(1)・・語る建築家(韓国) ・・・・・・・・・・・・・3/08 ・・・・・・・・・・・・・・・1,975 ・・・・・・・・・・・・・19,901 ・・・・・・・・158・・・・・・・・・・15
3(新)・・彼女が去る時・・・・・・・・・・・・・・・・3/29 ・・・・・・・・・・・・・・・1,567 ・・・・・・・・・・・・・・1,867・・・・・・・・・・14・・・・・・・・・・13
4(4)・・スタンリーのお弁当箱・・・・・・・・・・3/08 ・・・・・・・・・・・・・・・・・870 ・・・・・・・・・・・・・45,177・・・・・・・・・303 ・・・・・・・・・・6
5(3)・・アーティスト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2/16 ・・・・・・・・・・・・・・・・・828 ・・・・・・・・・・・・118,606・・・・・・・・・907 ・・・・・・・・・11
                                      
 3位「彼女が去る時」は、昨2011年アカデミー賞外国映画賞候補作としてドイツから出品された作品。トルコ系ドイツ人の女優シベル・ケキリが演じるのは、若い母親ウマーイ。イスタンブールで夫の家族と暮らしていたが、夫の暴力に耐えかねて幼い一人息子を連れてベルリンの実家に帰ってくる。里帰りと思った母は2人を歓迎するが、ウマイが婚家に帰る意思がないことを知ると顔色を変える・・・。
 イスラム教社会では女性からの離婚要求は難しいようで、それ以前に夫の元から子供を連れて去る女性の存在自体が、家父長制文化によって拒絶されているのだそうです。イスラム社会での「恥と名誉」という価値観の中で、たとえば婚前・婚外交渉を行った女性は家族全員の名誉を汚すものなので、父親や男兄弟が彼女を殺害する「名誉の殺人」という風習もあります。(ウィキによると年間5000人にのぼるとか!)
 この作品は、ドイツでそんな葛藤の中に暮らす移民家族の問題を、フェオ・アラダグ監督が女性に対する暴力に反対するアムネスティのキャンペーンとの関わりの中から製作したとのことです。この映画、私ヌルボはぜひ観てみたいと思いますが、日本公開は未定のようです。韓国題は「그녀가 떠날 때(彼女が去る時)」、英語題「When We Leave」、原題は「Die Fremde」です。
<サンフランシスコ・シネマライフ>というブログにくわしい紹介記事がありました。
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韓国映画ファン必見(?) KBS2テレビ「映画がいい」 で、コン・ヒョジンの出演作をふり返る

2012-04-02 22:16:48 | 韓国の文化・芸能・スポーツ関係の情報
 私ヌルボ、韓国映画ファンを自認しながらも、KBS2テレビの영화가 좋다(映画がいい)という番組のことは最近初めて知りました。なんとなく番組表を見ていて目に入ったというわけです。
 毎週土曜日の10:05~11:05の1時間番組です。

※KBSテレビはパソコンでタダで見ることができます。
 方法がわからないという方は、本ブログの過去記事
 「韓国KBSテレビの過去の番組(ただし2週間以内)をパソコンで見る方法」
 「韓国&日本のテレビ・ラジオをインターネットで視聴するには・・・」を参照してください。

 ・・・ということで、3月31日放映の回を見てみました。
 内容は、たとえば新作の紹介。
 4月11日公開の「カン・ギ・ナム」とか、B級の雰囲気が色濃く漂うSF映画「人類滅亡報告書」とか・・・。
 「カン・ギ・ナム」は「간통을 기다리는 남자(姦通を待つ男)」の略語だそうです。
 また、4月26日公開の「ウンギョ」は作品の紹介だけでなく、70代の老人を演じる(!)主演のパク・ヘイル、共演のキム・ゴウンキム・ムヨルの3人がゲストとして出演してました。
 それに観客動員数トップに立った「建築学概論」のいろんなシーンも流したり、また「ハートブレイカー」「シラノ恋愛操作団」の比較もしていたようで・・・。
 なにぶん韓国語の聴き取りが得意ではないもので、何度も動画を止めてはテロップ(もちろん韓国語)の解読作業をやったりして、きっちり理解しようとすると時間のかかること・・・、ハハハ(汗)。

 で、今回の番組で一番興味をもったのは、最初の方の「私は俳優だ(나는 배우다)」のコーナー。昨年のヒット歌番組「私は歌手だ(나는 가수다)」のパクリ的タイトルがホントに多いなー、ということはさておき、今回はコン・ヒョジン編。前週(3月24日)はハ・ジョンウ編だったから、「ラブフィクション」の主役が連続出演ですね。

 そのコーナーで、コン・ヒョジンのデビュー以来の諸作品をたどっていたのですが、私ヌルボが観たものも「女高怪談 2少女たちの遺言」から「牛と一緒に7泊8日」まで7作品もあって、懐かしかったです。・・・というよりも、最初の頃の作品は、そもそもコン・ヒョジンが出演していることを知らなかったので、「えーっ、そうだったの!?」という感じでしたねー。

 YouTubeに、ちょうどこのコーナーの部分だけが見つかったので載せておきます。

    

 コン・ヒョジンについては、<左見右見>というブログに、彼女の整形疑惑(?)を中心に、過去の写真をいろいろたくさん載せた記事がありました。(→コチラ)
 それを見ると、なるほど鼻等をいじってる感じではありますが、別に美人で売ってる女優でもないし、別にいいじゃないですかっっ! ってヌルボが声を荒だてるこたーないですが・・・(笑)。

    
  【デビュー作「女高怪談 2少女たちの遺言」(1999)。19歳の時。主演ではありません。】

    
 【「火山高」(2001)に出ていたとは知らなかった! テロップは「個性派女優としての出発点」。シン・ミナの映画デビュー作でもある、というのも知らなかった~。】

 本ブログ2011年8月2日の記事に書いたことですが、彼女が「黄金漁場」の<膝打ち導師>にゲスト出演した時、「いつも「美人とはいえないが・・・」といわれ続けていてイヤ。"美貌の女優"とよばれたい」と語っていたことを思い出しました。
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