▶<東京国際映画祭>で上映される韓国映画は、特別招待作品の「新感染半島 ファイナル・ステージ」(残席少)の他に「スレート」の2作品だけ。「新感染半島 ファイナル・ステージ」は来年の元旦から一般公開の予定なので、焦ることはありません。「スレート」(原題も「슬레이트[Slate]」)は韓国内でも未公開で当方情報ナシ。韓国関連では他に台湾映画「チャンケ:よそ者」があります。また北朝鮮関係では→3ヵ月ほど前の記事で紹介した清水ハン栄治監督の「トウルーノース」があります。
それにしても、チケットのネット予約で悪戦苦闘。毎度のことなのでいい加減になんとかしてほしい。これに比べると韓国文化院のオンライン「コリアン・シネマ・ウィーク 2020」はまだマシ・・・とは言っても、こういったPCの作業は私ヌルボのような高齢者には手間も時間もかかってシンドイだけですわ。けほけほ・・・。
▶今回の記事で注目した韓国映画は、ネチズンの評価ランキングで10.00という満点で1位となった「ディア・マイ・ジーニアス」というドキュメンタリー。「英才になりたい」という8歳の女の子と、それを支えるママ=監督の話ですが、「え? 天才とか英才なんて生まれつきのものだろうに・・・」と疑問に思ってちょっと調べてみたら韓国では国が才能教育にずいぶん力を入れているのですね。韓国がノーベル賞にずいぶんこだわるのも日本に対する対抗意識以外のこんな点にも関わっているのかも、と思いした。詳しくは下の記事で・・・。
▶この1週間で観た映画は横浜みなとみらいのkino cinemaで観た1本だけです。「朝が来る」★★★★☆(特別養子縁組で育ての親となった夫婦と、産みの親が・・・という設定でイヤな予感がしたが、良い意味で裏切られた。) 先週同じ映画館で観た「ミッドナイトスワン」等、このところ日本映画の注目作が目につきます。
★★★ NAVERの人気順位(10月27日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(新) ディア・マイ・ジーニアス(韓国) 10.00(23)
②(1) アルピニスト - あるカメラマンの告白(韓国) 9.90(20)
③(2) 復活: その証拠(韓国) 9.68(292)
④(新) 紙の花(韓国) 9.63(59)
⑤(4) こんにちは、ミヌ(韓国) 9.50(48)
⑥(-) フォードvsフェラーリ 9.49(8,177)
⑦(7) さすらいのシェフ(韓国) 9.49(98)
⑧(6) ブータン 山の教室 9.47(103)
⑨(3) カイラスへ行く道(韓国) 9.44(141)
⑩(8) 少年の君 9.40(1,397)
韓国映画が6作品で、うち5作品がドキュメンタリーと、いつもの傾向が増幅された感があります。①と④が新登場です。
①「ディア・マイ・ジーニアス」は韓国のドキュメンタリー。第23回釜山国際映画祭やEBS国際ドキュメンタリー映画祭で好評を得た作品です。タイトルの意味は「親愛なる私の天才」。「私もお姉さんのように<英才>になりたい」。<英才>になるのが夢であり目標である8歳の娘(妹)ユニョン。その夢を実現できるように最善を尽くすつくすママ。このママがすなわち本作のク・ユンジュ監督です。さて、ご存じない方が多いと思いますが、韓国では90年台末頃から国が才能教育に力を入れているのですね。2000年には英才教育振興法が制定されました。才能のある子供を育成するため、たとえば英才教育院といって、地域の教育庁と大学が運営している塾のような施設もあります。つまり、才能のある人材は国家的資産として支援するというものです。ユニョンが夢見る<英才>も単にテストで高得点をめざす等の漠然としたものではなく、上記のような具体的な資格・肩書を獲得するということなのです。そしてママのク・ユンジュ監督自身、かつて<英才>だったのです。全校1位で<科学英才>に選ばれ、両親の自慢の種でした。下右の画像は仁川科学英才教育院の修了証です。しかし、<英才>になると幸せになるのでしょうか? ク・ユンジュ監督の場合、大学卒業を前にしばらく立ち止まった状態の<カンガルー族>(=大学卒業後も経済的・精神的に自立できず親と同居して頼る若者)でした。しかしユニョンは確固とした目標を持って激しい学業戦線に飛び込み、ママも今一度教育に情熱を燃やします。塾に行く時が一番幸せというユニョンに対して、ママもユニョンが毎日の勉強の計画をすべて終える時を幸せと感じます。そんな中でク・ユンジュ監督は勉強漬けの母娘の厳しく不安な日々をカメラに収めます。撮影期間は4年間に及びました。英語のリスニングで朝が始まり、夜遅くまで勉強するユニョンの横にはママが付きっきりです。しかし撮影しながらも監督は自分の過去を振り返り、不安な未来に対して心配します。監督は<科学英才>とは全く関係のない英文学を専攻しました。その後圧迫感から脱出して過去を振り返ってみたとのことです。科学英才教育院の修了証を取得するため難解な講義を知っているふりをして聴いていたこと等を思い浮かべ、韓国の教育システムに対する疑問や怒りが募ったと言います。自分と同じ道を歩み始めたユニョンも摂食障害になったりしているそうです。そんな状況を見て監督は、現在の韓国社会に対する疑問を投げかけます。2002年以降、毎年韓国政府は数万人の子供を公式英才として認定してきました。累計では約100万人の<英才>がいるのです。その英才たちは今どうしているのでしょうか? いつからか英才認証書は名門大学入学のための礎石とされる等、そのシステムには問題もあるようです。監督の問いかけに対して、観客が自ら答えを見つけることができるように、本作は客観的な視線で撮影し構成したとのことです。原題は「디어 마이 지니어스」です。
④「紙の花」は韓国のドラマ。これまで葬儀用の<紙の花>を折って人生を送ってきた葬儀屋のソンギル(アン・ソンギ)は、事故で体が不自由になって人生に対する意欲を失った息子ジヒョク(キム・ヘソン)と暮らし向きの事情のために大規模な互助会で新たに仕事を始めることになります。そんなある日、向かいの家に引っ越してきたウンスク(ユジン)とノウル(チャン・ジェヒ)の母娘がソンギルとジヒョクの人生にふとかかわることになります。明るい2人の姿を見て、だんだんソンギルとジヒョクは忘れていた希望を再び抱き始め、互いの希望になる奇跡のような瞬間がやってきます・・・。原題は「종이꽃」。アン・ソンギ氏健在! ネチズンも注目してます。
【記者・評論家による順位】
①(1) 燃ゆる女の肖像 9.22
②(2) 恐怖分子 8.22(9)
③(-) ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 8.00(10)
④(3) ハラボジの家(韓国) 7.83(12)
⑤(-) マロナの幻想的な物語り 7.83(6)
⑥(-) フォードvsフェラーリ 7.63(8)
⑦(-) 台北ストーリー 7.40(5)
⑧(5) トムボーイ 7.33(9)
⑨(6) 逃げた女(韓国) 7.33(6)
⑩(-) 家族を想うとき 7.29(7)
過去1年以内に上映された話題作が大挙再上映されています。ということもあり、こちらも高レベルの作品が並び、新登場の作品は入りませんでした。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績10月23日(金)~10月25日(日) ★★★
コ・アソン主演の「サムジングループ英語TOEIC班」が1位 評論家等も高評価
【全体】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数 ・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・サムジングループ・・・・・・・・・10/21 ・・・・・・・270,839 ・・・・・・・358,620・・・・・・3,007 ・・・・・1,603
英語TOEIC班(韓国)
2(2)・・担保(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・9/29・・・・・・・・・72,821 ・・・・・1,579,196・・・・・13,566 ・・・・・・・645
3(新)・・ミスタートロット・・・・・・・・・10/22・・・・・・・・・57,598・・・・・・・・・86,913・・・・・・・・778 ・・・・・・・448
:ザ・ムービー(韓国)
4(1)・・音もなく(韓国)・・・・・・・・・・・・10/15・・・・・・・・・54,847 ・・・・・・・344,919・・・・・・3,049 ・・・・・・・682
5(新)・・劇場版 Fate/stay night ・・10/22・・・・・・・・・21,268・・・・・・・・・31,004・・・・・・・・284 ・・・・・・・149
[Heaven’s Feel]III.spring song(日本)
6(3)・・TENET テネット・・・・・・・・・・・・8/26・・・・・・・・・17,361 ・・・・・1,939,771・・・・・17,898 ・・・・・・・189
7(新)・・熊出没:原始時代・・・・・・・・・10/22・・・・・・・・・・4,769・・・・・・・・・・5,008・・・・・・・・・・40 ・・・・・・・217
8(新)・・ハロウィーン・ジャックの伝説・・7/21 ・・・・・・・3,850・・・・・・・・・・4,750 ・・・・・・・・・22 ・・・・・・・・15
9(59)・・武侠:ザ・コード ・・・・・・・・・・6/22 ・・・・・・・・・・3,377・・・・・・・・・・5,673 ・・・・・・・・・20 ・・・・・・・・19
10(70)・・ゴシック・ハーヴェスト ・・・6/23 ・・・・・・・・・・3,376・・・・・・・・・・6,072 ・・・・・・・・・20 ・・・・・・・・17
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
今回の新登場は2・4・6位以外の7作品です。
1位「サムジングループ英語TOEIC班」は韓国のドラマ。イジャヨン(コ・アソン)は実務能力はカンペキ、現実はコーヒー淹れの達人の生産管理3部のでしゃばり、チョン・ユナ(イ・ソム)は推理小説マニアで手厳しいコメントに長けたマーケティング部の直球投手、シム・ボラム(パク・ヘス)は数学オリンピック優勝者でしたが、実体は偽領収書の細工の達人の会計部数学王。この3人、入社8年目の同期の末端女性職員たちですが、1995年にTOEICで600点を超えれば代理になれるとのことで、代理になれば本当の仕事をすることができるという希望を抱いてサムジングループ英語TOEIC班に結集します。ところが、雑用で行った工場で、黒い廃水が流出するのを目撃したジャヨンは、ユナとボラムと共に会社が何を隠そうとしているか、決定的な証拠をつかもうとします。3人の仲間は解雇の危険を冒して奮闘を開始しますが・・・。原題は「삼진그룹 영어토익반」です。※この作品のモチーフは、1991年の斗山電子による洛東江フェノール流出事件とのこと。また女性労働の価値を不当に軽視した当時の状況も描いています。
3位「ミスタートロット:ザ・ムービー」は韓国の公演実況です。しかしK-POPのアイドルグループではなく、トロット(演歌)歌手6人なのですね。イム・ヨンウン(임영웅)、ヨンタク(영탁)、イ・チャンウォン(이찬원)、チョン・ドンウォン(정동원)、チャン・ミノ(장민호)、キム・ヒジェ(김희재)という面々。韓国では、やはり年配層を中心にトロットは変わらぬ人気がありますね。この6人は皆若く、最年長がチャン・ミノの43歳ですが、オドロキは最年少チョン・ドンウォンの13歳! 文章で説明するよりも、本作の→予告編と、→チョン・ドンウォンの歌をYouTubeで視聴してみてください。原題は「미스터트롯: 더 무비」です。
5位「劇場版 Fate/stay night [Heaven’s Feel]III.spring song」は、いろいろある日本アニメの中でも私ヌルボが一番縁遠い部類に属していて、何ともコメントできません。韓国ではネチズン265人(7割が20代男性)の平均評点が9.27の高評価。国の違いを超えて相通じる人たちがちゃんといるということです。韓国題は「페이트 스테이 나이트 헤븐즈필 제3장 스프링 송」。毎度のことながら、日本アニメ、とくにシリーズ物のタイトルは長過ぎるぞ。
7位「熊出没:原始時代」は、中国の人気アニメ<熊出没>シリーズの最新作。韓国では<ブーニーベア(부니베어)>シリーズとして2014年から今回まで6作全部劇場公開されています。「いやあ、ここは一体どこだ?」 クマの兄弟ブライとブランブルそしてビッグたちは蝶を追っているうち偶然に原始時代にタイムスリップしてしまいます。そこで原始人や動物に追われた彼らは臆病者のチビ狼ペペと出会い、想像しがたい冒険を繰り広げます。はたしてクマの兄弟や仲間たちは力を合わせて元住んでいた所に無事帰ることができるでしょうか・・・。韓国題は「부니베어: 원시시대 대모험」です。
8位「ハロウィーン・ジャックの伝説」(仮)はイギリスのホラー。小さな町のダンウィッチが残酷な殺人事件で大騒ぎとなります。刑事のフランクは自分のミスで容疑者ジャック・ケインが法の網を抜け出すと、殺人魔を見つけ出して直接正義の審判を下します。1年後、ハロウィーンの雰囲気で陽気な町で相次いで殺人事件が発生し、フランクは被害者たちの間に驚くべき関連があることを発見しますが・・・。韓国題は「할로윈: 살인마 잭(ハロウィーン:殺人魔 ジャック)」。以下の2作品も含めて日本公開はなさそう、です。
9位「武侠:ザ・コード」(仮)はアメリカのアクション。環境破壊に人々が病気にかかり、すべての生命体がなくなる危機に直面すると、世界中の人々はメディカンという会社で作られた空気浄化システムに依存して生きていくことになります。しかし、環境汚染がさらに悪化すると、それさえも役に立たなくなり、その上システムを更新するためのコードが流出される事件まで起きます。一方、事件を解決した唯一の解決士クラウドは、知らず知らずのうちに危険な仕事に巻き込まれることに・・・。韓国題は「무협: 더 코드」です。
10位「ゴシック・ハーヴェスト」(仮)はアメリカのホラー。ニューオーリンズ恒例の祝祭マルディグラに来た4人の仲間は、最後の夜を楽しむためにバーを探します。そこで1人の男と遊んでいた友人ホープが突然連絡が途絶え、残りの友人は彼女を探します。一方、見知らぬ男と一緒に夜を過ごしたホープは、偶然彼の家族が平然と人を殺すシーンを見ることになりますが・・・。韓国題は「죽이는 여자(殺す女)」です。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(新)・・熊出没:原始時代 ・・・・・・・・・・・・・10/22・・・・・・・4,769・・・・・・・・・・・5,008 ・・・・・・・・・40 ・・・・・・・217
2(18)・・紙の花(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・10/22・・・・・・・3,177・・・・・・・・・・・4,951 ・・・・・・・・・42 ・・・・・・・256
3(新)・・Every Time I Die・・・・・・・・・・・・・・10/21 ・・・・・・2,056・・・・・・・・・・・3,826 ・・・・・・・・・31 ・・・・・・・135
4(31)・・バハールの涙・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/22 ・・・・・・1,487・・・・・・・・・・・1,862 ・・・・・・・・・16 ・・・・・・・103
5(9)・・復活: その証拠(韓国) ・・・・・・・・・・・10/08・・・・・・・1,419 ・・・・・・・・・10,067・・・・・・・・・・86 ・・・・・・・・20
5位以外の4作品が新登場です。
1位「熊出没:原始時代」と2位「紙の花」については上述しました。
3位「Every Time I Die」はアメリカのスリラー。湖畔で謎の死を受けたサム。そして・・・。「私は誰なのか?」 目を覚ました瞬間、現実のすべてが揺れる・・・。謎の事故で死んだサムが苦しむ予測不可能の体験を強烈に描写した幻覚スリラーです。韓国題は「에브리타임 아이 다이」。日本公開はなさそう、かな。
4位「バハールの涙」はイラク、シリアのISとの戦闘を女性の視点で見つめたフランスのドラマ。日本では19年1月に公開されています。韓国題は「태양의 소녀들」です。
それにしても、チケットのネット予約で悪戦苦闘。毎度のことなのでいい加減になんとかしてほしい。これに比べると韓国文化院のオンライン「コリアン・シネマ・ウィーク 2020」はまだマシ・・・とは言っても、こういったPCの作業は私ヌルボのような高齢者には手間も時間もかかってシンドイだけですわ。けほけほ・・・。
▶今回の記事で注目した韓国映画は、ネチズンの評価ランキングで10.00という満点で1位となった「ディア・マイ・ジーニアス」というドキュメンタリー。「英才になりたい」という8歳の女の子と、それを支えるママ=監督の話ですが、「え? 天才とか英才なんて生まれつきのものだろうに・・・」と疑問に思ってちょっと調べてみたら韓国では国が才能教育にずいぶん力を入れているのですね。韓国がノーベル賞にずいぶんこだわるのも日本に対する対抗意識以外のこんな点にも関わっているのかも、と思いした。詳しくは下の記事で・・・。
▶この1週間で観た映画は横浜みなとみらいのkino cinemaで観た1本だけです。「朝が来る」★★★★☆(特別養子縁組で育ての親となった夫婦と、産みの親が・・・という設定でイヤな予感がしたが、良い意味で裏切られた。) 先週同じ映画館で観た「ミッドナイトスワン」等、このところ日本映画の注目作が目につきます。
★★★ NAVERの人気順位(10月27日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(新) ディア・マイ・ジーニアス(韓国) 10.00(23)
②(1) アルピニスト - あるカメラマンの告白(韓国) 9.90(20)
③(2) 復活: その証拠(韓国) 9.68(292)
④(新) 紙の花(韓国) 9.63(59)
⑤(4) こんにちは、ミヌ(韓国) 9.50(48)
⑥(-) フォードvsフェラーリ 9.49(8,177)
⑦(7) さすらいのシェフ(韓国) 9.49(98)
⑧(6) ブータン 山の教室 9.47(103)
⑨(3) カイラスへ行く道(韓国) 9.44(141)
⑩(8) 少年の君 9.40(1,397)
韓国映画が6作品で、うち5作品がドキュメンタリーと、いつもの傾向が増幅された感があります。①と④が新登場です。
①「ディア・マイ・ジーニアス」は韓国のドキュメンタリー。第23回釜山国際映画祭やEBS国際ドキュメンタリー映画祭で好評を得た作品です。タイトルの意味は「親愛なる私の天才」。「私もお姉さんのように<英才>になりたい」。<英才>になるのが夢であり目標である8歳の娘(妹)ユニョン。その夢を実現できるように最善を尽くすつくすママ。このママがすなわち本作のク・ユンジュ監督です。さて、ご存じない方が多いと思いますが、韓国では90年台末頃から国が才能教育に力を入れているのですね。2000年には英才教育振興法が制定されました。才能のある子供を育成するため、たとえば英才教育院といって、地域の教育庁と大学が運営している塾のような施設もあります。つまり、才能のある人材は国家的資産として支援するというものです。ユニョンが夢見る<英才>も単にテストで高得点をめざす等の漠然としたものではなく、上記のような具体的な資格・肩書を獲得するということなのです。そしてママのク・ユンジュ監督自身、かつて<英才>だったのです。全校1位で<科学英才>に選ばれ、両親の自慢の種でした。下右の画像は仁川科学英才教育院の修了証です。しかし、<英才>になると幸せになるのでしょうか? ク・ユンジュ監督の場合、大学卒業を前にしばらく立ち止まった状態の<カンガルー族>(=大学卒業後も経済的・精神的に自立できず親と同居して頼る若者)でした。しかしユニョンは確固とした目標を持って激しい学業戦線に飛び込み、ママも今一度教育に情熱を燃やします。塾に行く時が一番幸せというユニョンに対して、ママもユニョンが毎日の勉強の計画をすべて終える時を幸せと感じます。そんな中でク・ユンジュ監督は勉強漬けの母娘の厳しく不安な日々をカメラに収めます。撮影期間は4年間に及びました。英語のリスニングで朝が始まり、夜遅くまで勉強するユニョンの横にはママが付きっきりです。しかし撮影しながらも監督は自分の過去を振り返り、不安な未来に対して心配します。監督は<科学英才>とは全く関係のない英文学を専攻しました。その後圧迫感から脱出して過去を振り返ってみたとのことです。科学英才教育院の修了証を取得するため難解な講義を知っているふりをして聴いていたこと等を思い浮かべ、韓国の教育システムに対する疑問や怒りが募ったと言います。自分と同じ道を歩み始めたユニョンも摂食障害になったりしているそうです。そんな状況を見て監督は、現在の韓国社会に対する疑問を投げかけます。2002年以降、毎年韓国政府は数万人の子供を公式英才として認定してきました。累計では約100万人の<英才>がいるのです。その英才たちは今どうしているのでしょうか? いつからか英才認証書は名門大学入学のための礎石とされる等、そのシステムには問題もあるようです。監督の問いかけに対して、観客が自ら答えを見つけることができるように、本作は客観的な視線で撮影し構成したとのことです。原題は「디어 마이 지니어스」です。
【記者・評論家による順位】
①(1) 燃ゆる女の肖像 9.22
②(2) 恐怖分子 8.22(9)
③(-) ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 8.00(10)
④(3) ハラボジの家(韓国) 7.83(12)
⑤(-) マロナの幻想的な物語り 7.83(6)
⑥(-) フォードvsフェラーリ 7.63(8)
⑦(-) 台北ストーリー 7.40(5)
⑧(5) トムボーイ 7.33(9)
⑨(6) 逃げた女(韓国) 7.33(6)
⑩(-) 家族を想うとき 7.29(7)
過去1年以内に上映された話題作が大挙再上映されています。ということもあり、こちらも高レベルの作品が並び、新登場の作品は入りませんでした。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績10月23日(金)~10月25日(日) ★★★
コ・アソン主演の「サムジングループ英語TOEIC班」が1位 評論家等も高評価
【全体】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数 ・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・サムジングループ・・・・・・・・・10/21 ・・・・・・・270,839 ・・・・・・・358,620・・・・・・3,007 ・・・・・1,603
英語TOEIC班(韓国)
2(2)・・担保(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・9/29・・・・・・・・・72,821 ・・・・・1,579,196・・・・・13,566 ・・・・・・・645
3(新)・・ミスタートロット・・・・・・・・・10/22・・・・・・・・・57,598・・・・・・・・・86,913・・・・・・・・778 ・・・・・・・448
:ザ・ムービー(韓国)
4(1)・・音もなく(韓国)・・・・・・・・・・・・10/15・・・・・・・・・54,847 ・・・・・・・344,919・・・・・・3,049 ・・・・・・・682
5(新)・・劇場版 Fate/stay night ・・10/22・・・・・・・・・21,268・・・・・・・・・31,004・・・・・・・・284 ・・・・・・・149
[Heaven’s Feel]III.spring song(日本)
6(3)・・TENET テネット・・・・・・・・・・・・8/26・・・・・・・・・17,361 ・・・・・1,939,771・・・・・17,898 ・・・・・・・189
7(新)・・熊出没:原始時代・・・・・・・・・10/22・・・・・・・・・・4,769・・・・・・・・・・5,008・・・・・・・・・・40 ・・・・・・・217
8(新)・・ハロウィーン・ジャックの伝説・・7/21 ・・・・・・・3,850・・・・・・・・・・4,750 ・・・・・・・・・22 ・・・・・・・・15
9(59)・・武侠:ザ・コード ・・・・・・・・・・6/22 ・・・・・・・・・・3,377・・・・・・・・・・5,673 ・・・・・・・・・20 ・・・・・・・・19
10(70)・・ゴシック・ハーヴェスト ・・・6/23 ・・・・・・・・・・3,376・・・・・・・・・・6,072 ・・・・・・・・・20 ・・・・・・・・17
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
今回の新登場は2・4・6位以外の7作品です。
1位「サムジングループ英語TOEIC班」は韓国のドラマ。イジャヨン(コ・アソン)は実務能力はカンペキ、現実はコーヒー淹れの達人の生産管理3部のでしゃばり、チョン・ユナ(イ・ソム)は推理小説マニアで手厳しいコメントに長けたマーケティング部の直球投手、シム・ボラム(パク・ヘス)は数学オリンピック優勝者でしたが、実体は偽領収書の細工の達人の会計部数学王。この3人、入社8年目の同期の末端女性職員たちですが、1995年にTOEICで600点を超えれば代理になれるとのことで、代理になれば本当の仕事をすることができるという希望を抱いてサムジングループ英語TOEIC班に結集します。ところが、雑用で行った工場で、黒い廃水が流出するのを目撃したジャヨンは、ユナとボラムと共に会社が何を隠そうとしているか、決定的な証拠をつかもうとします。3人の仲間は解雇の危険を冒して奮闘を開始しますが・・・。原題は「삼진그룹 영어토익반」です。※この作品のモチーフは、1991年の斗山電子による洛東江フェノール流出事件とのこと。また女性労働の価値を不当に軽視した当時の状況も描いています。
3位「ミスタートロット:ザ・ムービー」は韓国の公演実況です。しかしK-POPのアイドルグループではなく、トロット(演歌)歌手6人なのですね。イム・ヨンウン(임영웅)、ヨンタク(영탁)、イ・チャンウォン(이찬원)、チョン・ドンウォン(정동원)、チャン・ミノ(장민호)、キム・ヒジェ(김희재)という面々。韓国では、やはり年配層を中心にトロットは変わらぬ人気がありますね。この6人は皆若く、最年長がチャン・ミノの43歳ですが、オドロキは最年少チョン・ドンウォンの13歳! 文章で説明するよりも、本作の→予告編と、→チョン・ドンウォンの歌をYouTubeで視聴してみてください。原題は「미스터트롯: 더 무비」です。
5位「劇場版 Fate/stay night [Heaven’s Feel]III.spring song」は、いろいろある日本アニメの中でも私ヌルボが一番縁遠い部類に属していて、何ともコメントできません。韓国ではネチズン265人(7割が20代男性)の平均評点が9.27の高評価。国の違いを超えて相通じる人たちがちゃんといるということです。韓国題は「페이트 스테이 나이트 헤븐즈필 제3장 스프링 송」。毎度のことながら、日本アニメ、とくにシリーズ物のタイトルは長過ぎるぞ。
7位「熊出没:原始時代」は、中国の人気アニメ<熊出没>シリーズの最新作。韓国では<ブーニーベア(부니베어)>シリーズとして2014年から今回まで6作全部劇場公開されています。「いやあ、ここは一体どこだ?」 クマの兄弟ブライとブランブルそしてビッグたちは蝶を追っているうち偶然に原始時代にタイムスリップしてしまいます。そこで原始人や動物に追われた彼らは臆病者のチビ狼ペペと出会い、想像しがたい冒険を繰り広げます。はたしてクマの兄弟や仲間たちは力を合わせて元住んでいた所に無事帰ることができるでしょうか・・・。韓国題は「부니베어: 원시시대 대모험」です。
8位「ハロウィーン・ジャックの伝説」(仮)はイギリスのホラー。小さな町のダンウィッチが残酷な殺人事件で大騒ぎとなります。刑事のフランクは自分のミスで容疑者ジャック・ケインが法の網を抜け出すと、殺人魔を見つけ出して直接正義の審判を下します。1年後、ハロウィーンの雰囲気で陽気な町で相次いで殺人事件が発生し、フランクは被害者たちの間に驚くべき関連があることを発見しますが・・・。韓国題は「할로윈: 살인마 잭(ハロウィーン:殺人魔 ジャック)」。以下の2作品も含めて日本公開はなさそう、です。
9位「武侠:ザ・コード」(仮)はアメリカのアクション。環境破壊に人々が病気にかかり、すべての生命体がなくなる危機に直面すると、世界中の人々はメディカンという会社で作られた空気浄化システムに依存して生きていくことになります。しかし、環境汚染がさらに悪化すると、それさえも役に立たなくなり、その上システムを更新するためのコードが流出される事件まで起きます。一方、事件を解決した唯一の解決士クラウドは、知らず知らずのうちに危険な仕事に巻き込まれることに・・・。韓国題は「무협: 더 코드」です。
10位「ゴシック・ハーヴェスト」(仮)はアメリカのホラー。ニューオーリンズ恒例の祝祭マルディグラに来た4人の仲間は、最後の夜を楽しむためにバーを探します。そこで1人の男と遊んでいた友人ホープが突然連絡が途絶え、残りの友人は彼女を探します。一方、見知らぬ男と一緒に夜を過ごしたホープは、偶然彼の家族が平然と人を殺すシーンを見ることになりますが・・・。韓国題は「죽이는 여자(殺す女)」です。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(新)・・熊出没:原始時代 ・・・・・・・・・・・・・10/22・・・・・・・4,769・・・・・・・・・・・5,008 ・・・・・・・・・40 ・・・・・・・217
2(18)・・紙の花(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・10/22・・・・・・・3,177・・・・・・・・・・・4,951 ・・・・・・・・・42 ・・・・・・・256
3(新)・・Every Time I Die・・・・・・・・・・・・・・10/21 ・・・・・・2,056・・・・・・・・・・・3,826 ・・・・・・・・・31 ・・・・・・・135
4(31)・・バハールの涙・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/22 ・・・・・・1,487・・・・・・・・・・・1,862 ・・・・・・・・・16 ・・・・・・・103
5(9)・・復活: その証拠(韓国) ・・・・・・・・・・・10/08・・・・・・・1,419 ・・・・・・・・・10,067・・・・・・・・・・86 ・・・・・・・・20
5位以外の4作品が新登場です。
1位「熊出没:原始時代」と2位「紙の花」については上述しました。
3位「Every Time I Die」はアメリカのスリラー。湖畔で謎の死を受けたサム。そして・・・。「私は誰なのか?」 目を覚ました瞬間、現実のすべてが揺れる・・・。謎の事故で死んだサムが苦しむ予測不可能の体験を強烈に描写した幻覚スリラーです。韓国題は「에브리타임 아이 다이」。日本公開はなさそう、かな。
4位「バハールの涙」はイラク、シリアのISとの戦闘を女性の視点で見つめたフランスのドラマ。日本では19年1月に公開されています。韓国題は「태양의 소녀들」です。