▶今回の記事で注目の韓国映画は「閑山:龍の出現」(下左画像)です。公式公開日前の先行上映で上映館数は少ないですが、ランキング10位に入っています。タイトルを見てもほとんどの日本国民は「?」だと思います。<閑山>は日本語だと<かんざん>、韓国語では<ハンサン>と読みます。朝鮮半島の南の統営近くに位置する島の名で、1592年の文禄の役の開戦から3ヵ月ほど後の<閑山島海戦>が戦われた場所です。つまり、豊臣秀吉が派遣した日本軍(の、ごく一部)と朝鮮水軍との戦いです。本作の監督はキム・ハンミン。2014年に韓国映画観客動員数で今までの歴代1位(1761万人)を記録した「鳴梁」[邦題:バトル・オーシャン 海上決戦]の監督です。主役は当然韓国民にとっての代表的英雄・李舜臣[イ・スンシン]将軍。「鳴梁」ではチェ・ミンシクが演じていましたが、今回は誰?と思ったら、えっ、パク・ヘイル!? 私ヌルボにとってはいつまでも「殺人の追憶」のあの何を考えているかわからないような青年のイメージ(下右画像)がずーっと残ってるからなー・・・。
閑山島海戦については→ウィキペディアにいろいろ記されています。その中に「韓国でこの海戦が過大評価され続けてきた」、「全く学術的な方面を無視して、兵力・死傷者を10倍に誇張した創作的な主張が行われている」等々韓国の歴史観に対する批判も出てます。この点については韓国ウィキペディアの閑山大捷[한산대첩](→自動翻訳)とは記述内容が全然違います。(ウィキペディアは同じ項目でも国により記述内容は違います!) したがって本作の説明文に以下のような記述があってもその旨ご承知置き下さい。
「閑山大捷」は計56隻の朝鮮船と73隻の倭船が戦って47隻を撃破し、倭軍1万人余りを戦死させ、壬辰倭乱戦闘の中で初めて圧倒的な勝利を収めた戦闘で、まさに朝鮮の運命を変えた。閑山海戦は国を守ろうとする民衆の熱望に火をつけ、全国各地に義兵が防御に乗り出した。「韓山:龍の出現」は430年前の戦闘の現場に戻って、観客に勝利の快感をプレゼントするだろう。
※本作は日本も含めて世界99か国に先行販売されたと伝えられています。
※統営市では毎年統営閑山大捷祭が開催されています。1962年に始まり第61回目の今年は8月~14日に開催。そのようすは→コチラで。
【 左と右が同人物(パク・ヘイル)とは・・・。約20年経ってるからなー(とは言っても・・・) 】
▶「閑山:龍の出現」とは対照的にミニシアター向けの小ぢんまりとした作品ですが、ちょっと気になったのが「子供のための子供」です。日本ではこの頃ヤングケアラーという言葉をよく目にします。病気や障碍のある祖父母や父母等の世話に忙しく、他の多くの子供のように遊んだりできないばかりか、場合によっては自身の進路選択も希望通りにならない未成年者のことです。ところが本作の場合は、どんな事情があったかわかりませんが、児童養護施設で幼い頃から過ごしてきた主人公の少年が退所間近のところに15年前自分を捨てて去った父親が訪ねて来て、「一緒に暮らそう」と言うのでそうしたら、ほどなくして父親は病死。残された腹違いの弟の面倒を見ることになって、オーストラリアに渡る希望は断念・・・という話です。例の、母親が新宗教に没頭して顧みられなかった息子のような事例も含めて、単に<親ガチャ>というような運の良しあしでは済まされない問題とは思いますが、ではどのような方策が考えられるのか・・・。
★★★ NAVERの人気順位(7月27日(水)現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも①等の右の( )は前週の順位。評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(1) トップガン マーヴェリック 9.77(33,443)
②(3) 名探偵コナン ハロウィンの花嫁(日本) 9.52(1,148)
③(6) 犯罪都市2(韓国) 9.37(26,698)
④(5) 詩人の歌、チョン・テチュン(韓国) 9.35(146)
⑤(4) アナタの顔(韓国) 9.35(141)
⑥(7) 劇場版 呪術廻戦 0(日本) 9.24(1,579)
⑦(8) モア(韓国) 9.22(131)
⑧(新) 子供のための子供(韓国) 9.21(34)
⑨(9) コーダ あいのうた 9.12(992)
⑩(-) カシオペア(韓国) 9.06(470)
⑧「子供のための子供」が新登場です。韓国の社会問題をテーマにしたドラマです。
日本で保育園と言えば家庭の事情で日中面倒を見切れない学齢以前の幼児を1日8時間以内預かる福祉施設ですよね。ところが韓国では成人年齢に達するまでの少年・少女たちを預かる施設も<보육원>(ポユグォン.保育園)と言っているのですね。日本では学齢に達している保護者のない子供や虐待されている子供等を入所させて養護し、退所後の進路相談の自立支援等を行っている施設は<児童養護施設>と総称されています。
この作品の主人公ドユン(ヒョン・ウソク)は、もうすぐ成人になってそんな施設から退所する日が近づいています。韓国では希望がないと思っている彼は配達のアルバイトをしてオーストラリアに渡る資金を貯めてはいますが、決して順調にいっているわけではありません。そんな彼のところに、15年前自分を捨てて去った親父のスンウォン(ジョン・ウンイン)が突然現れ、一緒に暮らそうと声をかけられます。これといった代案もなかったドユンはその誘いを受け入れます。そうして入った家には年下の少年がいました。スンウォンの再婚後生まれた弟ジェミン(パク・サンフン)です。ドユンとジェミンは互いに厄介な状況の中でも少しずつ心を開いていきます。ところがその後思わぬことに父スンウォンが病気のため世を去ってしまいます。考えてみれば、これは死を覚悟していたスンウォンがジェミンの保護者としてドユンを想定して呼び入れたという最後に仕組んだ計画だったのです。1人残されたドユンは父親を恨みながらも自分にとってはずいぶん遅くなった家族を守ろうと心を決めます・・・。原題は「아이를 위한 아이」です。
【記者・評論家による順位】
①(1) 別れる決心(韓国) 8.71(14)
②(2) ドライブ・マイ・カー(日本) 8.44(9)
②(2) トップガン マーヴェリック 8.44(9)
④(4) 偶然と想像(日本) 8.29(7)
⑤(5) 小説家の映画(韓国) 8.00(3)
⑥(6) アフター・ヤン 7.80(5)
⑦(7) GUNDA/グンダ 7.50(4)
⑧(8) モア(韓国) 7.38(8)
⑨(9) さがす(日本) 7.33(6)
⑩(10) オマージュ(韓国) 7.25(4)
順位・評点とも前週と同じです。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績7月22日(金)~7月24日(日) ★★★
チェ・ドンフン監督の新作SFアクション「宇宙+人 1部」が1位
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(27)・・宇宙+人 1部(韓国)・・・・・7/20・・・・・・632,026・・・・・・・913,266・・・・・・・9,683・・・・1,829
2(22)・・ミニオンズ フィーバー ・・7/20・・・・・・600,391・・・・・・・833,483・・・・・・・8,259・・・・1,394
3(1)・・トップガン マーヴェリック・・6/22・・・・448,498・・・・・6,501,893 ・・・・・69,551・・・・1,115
4(3)・・別れる決心(韓国) ・・・・・・・・6/29・・・・・・135,179・・・・・1, 501,350 ・・・・・15,449・・・・・・664
5(2)・・ソー:ラブ&サンダー ・・・・7/06・・・・・・・71,910・・・・・2, 677,731 ・・・・・29,107・・・・・・612
6(4)・・名探偵コナン ・・・・・・・・・・・・7/13 ・・・・・148,556 ・・・・・・・216,746・・・・・・・2,254・・・・・・758
ハロウィンの花嫁(日本)
7(5)・・犯罪都市2(韓国)・・・・・・・・・5/18・・・・・・・・9,178 ・・・・12,684,571 ・・・・131,207・・・・・・139
8(6)・・エルヴィス・・・・・・・・・・・・・・・7/13・・・・・・・・6,015・・・・・・・・・77,260 ・・・・・・・・830 ・・・・・・・47
9(30)・・サマーフィルムにのって(日本)・・7/20・・5,471・・・・・・・・・10,566 ・・・・・・・・106 ・・・・・・・65
10(新)・・閑山:龍の出現(韓国)・・・・7/27 ・・・・・・・3,399・・・・・・・・・・6,688 ・・・・・・・・・75・・・・・・・・・9
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
1・2・9・10位の4作品が新登場です。
1位「宇宙+人 1部」は韓国のSFアクション&ファンタジー。これまで「10人の泥棒たち」(2012)、「暗殺」(2015)という1千万人超え大ヒット作を送り出しているチェ・ドンフン監督作品です。
非常に長い間、宇宙人は彼らの囚人を人間の体に閉じ込めてきましたた。そして2022年の現在、ガード(キム・ウビン→計1人4役)とサンダー(キム・ウビン)は地球に住み、人間の体に閉じ込められた宇宙人の囚人を管理しています。そんなある日、ソウル上空に宇宙船が現れ、刑事ムン・ドソク(ソ・ジソプ)は奇妙な光景を目撃します。
一方630年前の高麗では、間抜け道士ムルク(リュ・ジュニョル)と雷撃の妻イアン(キム・テリ)が莫大な賞金がかかった神剣を手に入れるために互いにだまし合う中、神剣の秘密を探す2人の神仙・黒雪(ヨン・ジョンア)と青雲(チョ・ウジン)、仮面の中のチャジャン(キム・ウィソン)も新剣争奪戦に出てきます。そして宇宙船が深い渓谷から光を出して浮かび上がります・・・。
2022年、人間の中に収監された宇宙人の囚人を追う人々、そして1391年高麗末、噂の神剣を手に入れようとする道士たち。時間の門が開いてすべてが変わり始めます・・・。原題は「외계+인 1부」です
2位「ミニオンズ フィーバー」はアメリカのコメディ&冒険アニメ。日本でも7月15日に公開され全国で上映されているので説明は省略します。韓国題は「미니언즈2」です。
9位「サマーフィルムにのって」は私ヌルボも観てとても気に入った作品で、<★2021年 ヌルボの個人的映画ベスト10>(→コチラ)でも次点のトップに入れました。<TAMA映画賞>等で最優秀新進女優賞を受賞した伊藤万理華さんをはじめ若い女優さんたちが実に生き生きとしてましたね。韓国では記者・評論家の平均評点が7.00(10人)という高ポイントを得ています。一般の観客の皆さんにもおおむね好評。韓国の青春物との違いも指摘されていますか、どう違うのかは、うーん、よくわかりません。韓国題は「썸머 필름을 타고!」です。
10位「閑山:龍の出現」は韓国の時代劇ア慶尚南道統営市クション。監督はあの「バトル・オーシャン 海上決戦」[韓国題 :鳴梁]のキム・ハンミン監督で、今作ももちろん李舜臣将軍が主人公です。<閑山[ハンサン]>とは朝鮮半島の南、慶尚南道統営市に近い閑山島のことで、文禄の役(韓国では壬辰倭乱)が開戦して間もない1592年7月に日朝両軍の間で<閑山島海戦>とよばれる海戦が繰り広げられた海域です。日本軍は同年4月12日に第1番隊の宗義智と小西行長が釜山に上陸して以後快進撃を続け、同月29日に国王宣祖は漢城府を脱出し、5月2日に日本軍が漢城に入って、開戦からわずか21日で漢城府は陥落します。
ところが、この間見るべき抵抗の無かった朝鮮南岸で釜山を中心に支配領域拡大のために展開していた日本の輸送船団が5月以降李舜臣を中心とする朝鮮水軍の襲撃を受けます。これに対し豊臣秀吉は脇坂安治等の3大名に朝鮮水軍を討つように命じます。そして功名をあせった脇坂安治が閑山島と巨済島の間の海峡に単独出撃をしますが、結局はこの抜け駆けが主な原因となって日本水軍は敗北します。
以上が閑山島海戦のあらましですが、以下は本作の内容の紹介です。
1592年4月朝鮮は壬辰倭乱勃発後わずかの間に倭軍に漢城を奪われ、絶体絶命の危機にさらされます。朝鮮を一気に占領した倭軍は明に向かう野望を夢見て大規模兵力を釜山浦に集結させます。一方、李舜臣将軍(パク・ヘイル)は相次ぐ戦争の敗北と宣祖まで義州に避難し、守勢に追い込まれた状況でも、朝鮮を救うために戦術に苦慮しながらも出戦を準備します。しかし先の戦闘で損傷を受けた亀甲船の出征は難しくなり、その図面さえ倭軍の諜報に盗まれれてしまいます。倭軍は連勝に支えられ、その勢いで閑山島の沖合に向かい、李舜臣将軍は朝鮮の運命を分ける戦闘のために必死の戦略をめぐらします。1592年夏、旧暦7月8日閑山島沖、圧倒的な勝利が必要な朝鮮の運命をかけた海戦が繰り広げられます・・・。原題は「한산: 용의 출현」です。※主要人物としては脇坂安治をピョン・ヨハン、朝鮮南海の水路案内人として李舜臣の信頼があつかった魚泳潭[オ・ヨンダム]はアン・ソンギが演じています。
【独立・芸術映画】
順位 ・・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(8)・・サマーフィルムにのって(日本)・・7/20 ・・・・・・5,471・・・・・・・10,566・・・・・・・・・106 ・・・・・・・65
2(新)・・子供のための子供(韓国)・・・・・7/21・・・・・・・・・1,474 ・・・・・・・・2,717・・・・・・・・・・23 ・・・・・・・46
3(1)・・CURE キュア(日本)・・・・・・・・・・7/06・・・・・・・・・1,433・・・・・・・20,234・・・・・・・・・214 ・・・・・・・32
3(2)・・ロスト・ドーター ・・・・・・・・・・・・7/14・・・・・・・・・1,433・・・・・・・・8,309 ・・・・・・・・・・79 ・・・・・・・41
5(4)・・アフター・ヤン・・・・・・・・・・・・・・・6/01・・・・・・・・・・・255 ・・・・・・38,580・・・・・・・・・374・・・・・・・・11
1・2位の2作品が新登場ですが、いずれについても上述しました。