▶「パピチャ 未来へのランウェイ」が今年の見納め。2度観た作品(「はちどり」)と、ほとんど寝落ちしてしまった2作品を除いて計113作品。2019年の124作品には届かなかったものの、4~5月の2月近くのコロナ禍による映画館休館があるので、むしろ今年の方が「よく観た」感があります。恒例の1年間のベスト10選定と感想の記事は31日か?それとも元日になるか?といったころ。
▶この1週間は次の5作品を観ました。
・「戦車闘争」★★★☆(1972年ベトナム戦争に向かう予定だった米軍戦車を、相模原の一般市民が阻止した事件の真実にせまるドキュメンタリー。<米タン阻止>という言葉はその4、5年前頃からリアルタイムで聞いてはいたが(べ兵連かどこかのセクトによる造語?)、相模原のこの闘争は記憶に残っていない。シネマ・ジャック&ベティでの映画終了後のトークの時、来場していた取締りの警官隊OBも求めに応じて発言したのもほぼ半世紀を経た今ならではか。)
・「大和(カリフォルニア)」★★★☆(主人公サクラ(韓英恵、好演かも)がいつも不機嫌なのも米軍基地相模総合補給廠を抱える相模原市同様、大和市に米軍厚木基地があることと決して無関係ではない、のかな? )
・「FUNAN フナン」★★★★(FUNANは漢字だと扶南。紀元2~7世紀にインドシナ半島南部に栄えたクメール人(現カンボジア)の国家(←疑問もあるが)。そのカンボジアで1975~79年原始共産制を理想に掲げたポル・ポト率いるクメール・ルージュの政権は、結局粛清の犠牲者・病死者・餓死者等の総計170万人(=人口の3割。もっと多いという説も)という多くの人々を死に追いやった。この時代の1家族が辿った道をアニメ化した作品だが、→「消えた画」を観てなければ衝撃は大きかっただろう。それにしてもこんな極端な圧政が4年も続いたのはなぜ? それが知りたい。)
・「ウルフウォーカー」★★★★☆(いくつかの映画評ではイマイチの評価だったが、やっぱりカートゥーン・サルーン(アイルランドのアニメスタジオ)は期待を裏切らない! 本作はストーリーも音楽もケルト色が濃厚。ケン・ローチ監督作品や、Enyaの歌を思い起こした。)
・「パピチャ 未来へのランウェイ」★★★★☆(1990年代のアルジェリア。主人公ネジュマ等の<パピチャ>=かわいく常識にとらわれない女の子は夜大学寮を抜け出してナイトクラブに行って踊ったりタバコを喫ったり。一方寮内にはヒジャブを着用するようにとの貼り紙も多く、フランス語の講義中ヒジャブをまとった集団が入ってきて「外国語の授業は必要ない!」と叫んだり・・・。そんな中、ファッションデザイナーを夢見るネジュマは寮内でファッションショーを開こうとするのだが・・・。パンフ中の私市正年先生のコラムによると、アルジェリアにはA[フランス語話者・エリート・富裕層・世俗主義・西欧文化に親しむ]⇔B[アラビア語話者・大衆・貧困層・イスラム教に敬虔・アラブ文化に親しむ]という社会階層の対立があるとのこと。同様の図式は他の国・地域にもありそう。また、富裕層・貧困層を問わず男性は女性に対して抑圧的で権威権力をふりかざす点は本作でも描かれている。なおこの作品はナイジェリア国内で撮影はしたものの上映は許可されず、その理由も不明のままとか。20年経っても社会的対立は続いているということ。一方フランスではごく最近マクロン政権がイスラム過激派対策として一夫多妻制等も規制の対象とする新法案を発表したとか(→コチラ参照)。今後どうなるのかな?
それにしても、自分の信念が強いほど周囲の人々を不幸にし、大きな悲劇に捲きこんでいく事例はこれまで数えきれないほどもあるのに、なぜ果てしなく繰り返されていくのでしょうね・・・。
★★★ NAVERの人気順位(12月29日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(2) アンプランド 9.56(587)
②(4) カナの婚宴:口約 9.56(308)
③(3) さすらいのシェフ(韓国) 9.56(185)
④(5) SWAG(韓国) 9.53(135)
⑤(6) 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(日本) 9.49(858)
⑥(8) ブータン 山の教室 9.42(142)
⑦(-) 少年の君 9.40(1,489)
⑧(10) 復活: その証拠(韓国) 9.40(392)
⑨(新) ミュージック&リアリティ(韓国・アメリカ) 9.39(18)
⑩(新) ボブという名の猫2 9.38(76)
⑨と⑩の2作品が新登場です。
⑨「ミュージック&リアリティ」は韓国・アメリカ合作のドラマ。ニューヨークで生まれ育った韓国系の青年ボビー(ビッグ・フォニー)はシンガーソングライターですが、現実はただ苦しいサラリーマン。韓国に行けるという話を聞いて職場も辞め、友だちのビリー(トッド・M・ゴブル)が属するバンドのロードマネージャーになって一緒にワールドツアーに出ます。そして最終的にソウルに到着し、父親の古い写真にある弘大で路上ライブをしているイナ(イム・ファヨン)の歌を聞きます。ボビーは彼女に頼んでソウルのホットプレイスを回り、音楽という共通認識を基として一緒に歌いながら、ずっと探し回ってきたアイデンティティに気付き、韓国に残ることになります。イナとのバンドが公演まで約束され、感情的な交流まで感じたと思った彼ですが、そのイナは突然説明もなく去ると言うのです。ぼくの歌はリアリティ、ぼくの現実は君に向かう心・・・。韓国題は「뮤직 앤 리얼리티」です。※主演のビッグ・フォニー自身もニューヨーク出身のシンガーソングライター。2011年から韓国に居住し、TVやラジオに出演している。
⑩「ボブという名の猫2」については後述します。
【記者・評論家による順位】
①(1) 燃ゆる女の肖像 9.22(9)
②(3) Mank/マンク 8.14(7)
③(4) マーティン・エデン 8.00(8)
④(新) 水を抱く女 8.00(6)
⑤(5) 夏時間[ハラボジの家](韓国) 7.83(12)
⑥(6)未来を乗り換えた男 7.60(5)
⑦(8) 逃げた女(韓国) 7.33(6)
⑧(9) 冬の夜に 7.33(6)
⑨(10) TENET テネット 7.18(11)
⑩(新) 85年の夏 7.17(6)
④と⑩の2作品が新登場です。
④「水を抱く女」は、ドイツ・フランス合作のドラマ。原題は「Undine[ウンディーネ]」(独)で韓国題「운디네」も同じ。このウンディーネとは地・水・風・火の四大精霊のうち、水を司る精霊です。この精霊と騎士との恋物語はフーケやジロドウによって小説や戯曲となり、あるいはバレエやオペラの素材ともされてきました。本作は精霊の神話とは直接関係はなく、主人公の女性ウンディーネ(パウラ・ベーア)の名前として用いられています。彼女はベルリンの小さなアパートで暮らしている歴史学者で、博物館でガイドとして働いています。ところが恋人のヨハネス(ヤコブ・マッチェンツ)が別の女性に心移りして悲嘆にくれることに・・・。精霊のウンディーネは「愛する男に裏切られた時、その男を殺して水に戻る」という宿命を持っていますが、クリスティアン・ペッツォルト監督による現代版のウンディーネはその運命をなぞってはいません。彼女が新たに出会った男性クリストフ(フランツ・ロゴフスキ)の職業はエンジニア・ダイバーで、ダムの水中に長時間潜って電気系統等の修理をしている、つまり水を媒介にして2人は出会います。そして運命に導かれるように激しく惹かれ合い、新しい愛を大切に育みます。しかし彼女が必死に何かから逃れようとしているような違和感をクリストフが感じとった時、ウンディーネは再び自分の宿命と直面することになります・・・。なおパウラ・ベーアは今年の第70回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(最優秀女優賞)を獲得しています。日本公開は来年3月26日。うーむ、なんか深い感じだなー。
⑩「85年の夏」については後述します。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績12月25日(金)~12月27日(日) ★★★
韓国でも23日公開の「ワンダーウーマン 1984」が初登場1位
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(新)・・ワンダーウーマン 1984・・・12/23・・・・・・・211,416・・・・・・・・303,839・・・・・・・2,763 ・・・・2,260
2(2)・・盗掘(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・11/04・・・・・・・・18,033・・・・・・1,511,574 ・・・・・13,678 ・・・・・・385
3(1)・・ジョゼ(韓国)・・・・・・・・・・・・・・12/10・・・・・・・・17,063・・・・・・・・173,822 ・・・・・・1,571 ・・・・・・557
4(33)・・花様年華 ・・・・・・・・・・2000/10/20・・・・・・・・14,626・・・・・・・・・31,863 ・・・・・・・・270・・・・・・・411
5(新)・・キャプテン・プードル・・・・・・12/24 ・・・・・・・・・7,253 ・・・・・・・・・8,458・・・・・・・・・・69・・・・・・・370
6(3)・・お隣さん(韓国)・・・・・・・・・・・・11/25 ・・・・・・・・・6,560 ・・・・・・・421,170 ・・・・・・3,618・・・・・・・276
7(4)・・Run:ラン・・・・・・・・・・・・・・・・11/20 ・・・・・・・・・3,763 ・・・・・・・276,372 ・・・・・・2,540・・・・・・・173
8(新)・・ボブという名の猫2 ・・・・・・・12/24・・・・・・・・・・2,655 ・・・・・・・・・3,458・・・・・・・・・・30・・・・・・・202
9(65)・・85年の夏・・・・・・・・・・・・・・・・12/24・・・・・・・・・・2,621 ・・・・・・・・・4,353・・・・・・・・・・39・・・・・・・122
10(5)・・ラブ・アクチュアリー・・2003/12/05 ・・・・・・・2,584 ・・・・・・・325,086 ・・・・・・2,305・・・・・・・・98
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
週末の観客動員数が1万人を超えたのは上位4作品だけと、さらに数字が落ち込んでいます。
今回の新登場は1・5・8・9位の4作品です。
1位「ワンダーウーマン 1984」は、日本でも韓国より(なんと!)5日早く12月18日から公開されています。韓国題は「원더 우먼 1984」です。
5位「キャプテン・プードル」はオーストラリア・ベルギー合作のアニメ。狼男の一族は夜な夜な狼に変身して人々の安全のため密かに街を見廻っています。しかしある夜、群れを率いるフラッシュハートが何者かに家宝のリングを奪われた上崖から転落して死んでしまいます。由緒ある狼一族の後継者フレディは父の遺志を継いで立派なリーダーになることを誓います。そして迎えたフレディの狼化の儀式の日。皆の期待が高まる中、フレディが変身したのはなんと可愛いプードルだったとは! リーダーの座を狙う叔父のホッツパーは夜明けまでにリングを探して来なければ一族を追放するとフレディに告げ、フレディはプードルの姿で街へと向かいますが・・・。韓国題は「100% 울프: 푸들이 될 순 없어(100%ウルフにはなれない)」。日本では劇場公開はなく配信で視聴できます。
8位「ボブという名の猫2」(仮)は、2017年に日本でも公開されて好評を得たイギリス映画「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」の続編。前作は、麻薬中毒のホームレス、ジェームズ・ボーエン(ルーク・トレッダウェイ)と傷ついた野良ネコのボブが運命的に出会って、互いに希望を見出すようになったという実話エッセイ「ボブという名のストリート・キャット」(辰巳出版)を原作にした作品でした。今作でも、ジェームズはあいかわらずロンドンで路上ライブをしながらビッグイシュー販売員として過ごしています。そして彼の心の友つまり肩の上のボブを誰よりも大切にしているジェームズですが、ある日濡れ衣を着せられて、クリスマスだというのにボブと別れる危機に直面してしまいます・・・。韓国題は「내 어깨 위 고양이, 밥 2(ぼくの肩の上のネコ、ご飯2)」。日本公開は来年ですが期日は未定。(えっ、これがボブの遺作だって!?)
9位「85年の夏」(仮)はフランスのドラマ。フランソワ・オゾン監督の新作です。物語の舞台は1985年のフランス、ノルマンディーのビーチ。一人乗りヨットが転覆して溺れたアレックス(フェリックス・ルフェーブル)をダヴィッド(バンジャマン・ウォアザン)が救ってくれたことをきっかけに、2人の少年は急速に親しくなっていきます。アレクシスは父の仕事の都合で最近港町に引っ越してきたこともあって友人も少なく、そこに現れたダヴィッドは彼の心の支えとなります。「どちらか1人が死んだらその墓の上で踊ろう」。愛の証のような誓いと共に夏の太陽のような愛を共有する2人でしたが、やがてアレックスはダヴィッドの冷めた心を知ります。そして・・・。韓国題は「썸머 85(サマー 85)」です。
なお、4位「花様年華」は、ウォン・カーウァイ監督による名作ラブ・ストーリーの再上映。韓国題は「화양연화」です。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(11)・・花様年華・・・・・・・・・・・・・・2000/10/20・・・・・・14,626・・・・・・・・・・31,863 ・・・・・・・270・・・・・・・411
2(28)・・85年の夏 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12/24・・・・・・・2,621・・・・・・・・・・・4,353・・・・・・・・・39・・・・・・・122
3(1)・・ラブ・アクチュアリー ・・・・2003/12/05・・・・・・・2,584 ・・・・・・・・325,086 ・・・・・2,305・・・・・・・・98
4(27)・・Love Letter(日本) ・・・・・1999/11/20・・・・・・・2,534・・・・・・・・・118,844 ・・・・・・・919 ・・・・・・109
5(2)・・アメリカン・フォーク ・・・・・・・・・・12/16・・・・・・・1,999 ・・・・・・・・・・・9,933 ・・・・・・・・82・・・・・・・・49
2位「85年の夏」が新登場ですが、これについては上述しました。
4位「Love Letter」は、もちろん1995年に公開された岩井俊二監督の佳作。昨年末、そして今年6月にも再上映されています。25年経っても変わらぬ人気は間違いなく日本以上です。たまたま<NAVER映画>の記者・評論家による寸評(→コチラ.韓国語)を見たら、10人中評点10点=6人、9点=3人、7点=1人という高評価。その内容は近く別記事で紹介します。たぶん。
▶この1週間は次の5作品を観ました。
・「戦車闘争」★★★☆(1972年ベトナム戦争に向かう予定だった米軍戦車を、相模原の一般市民が阻止した事件の真実にせまるドキュメンタリー。<米タン阻止>という言葉はその4、5年前頃からリアルタイムで聞いてはいたが(べ兵連かどこかのセクトによる造語?)、相模原のこの闘争は記憶に残っていない。シネマ・ジャック&ベティでの映画終了後のトークの時、来場していた取締りの警官隊OBも求めに応じて発言したのもほぼ半世紀を経た今ならではか。)
・「大和(カリフォルニア)」★★★☆(主人公サクラ(韓英恵、好演かも)がいつも不機嫌なのも米軍基地相模総合補給廠を抱える相模原市同様、大和市に米軍厚木基地があることと決して無関係ではない、のかな? )
・「FUNAN フナン」★★★★(FUNANは漢字だと扶南。紀元2~7世紀にインドシナ半島南部に栄えたクメール人(現カンボジア)の国家(←疑問もあるが)。そのカンボジアで1975~79年原始共産制を理想に掲げたポル・ポト率いるクメール・ルージュの政権は、結局粛清の犠牲者・病死者・餓死者等の総計170万人(=人口の3割。もっと多いという説も)という多くの人々を死に追いやった。この時代の1家族が辿った道をアニメ化した作品だが、→「消えた画」を観てなければ衝撃は大きかっただろう。それにしてもこんな極端な圧政が4年も続いたのはなぜ? それが知りたい。)
・「ウルフウォーカー」★★★★☆(いくつかの映画評ではイマイチの評価だったが、やっぱりカートゥーン・サルーン(アイルランドのアニメスタジオ)は期待を裏切らない! 本作はストーリーも音楽もケルト色が濃厚。ケン・ローチ監督作品や、Enyaの歌を思い起こした。)
・「パピチャ 未来へのランウェイ」★★★★☆(1990年代のアルジェリア。主人公ネジュマ等の<パピチャ>=かわいく常識にとらわれない女の子は夜大学寮を抜け出してナイトクラブに行って踊ったりタバコを喫ったり。一方寮内にはヒジャブを着用するようにとの貼り紙も多く、フランス語の講義中ヒジャブをまとった集団が入ってきて「外国語の授業は必要ない!」と叫んだり・・・。そんな中、ファッションデザイナーを夢見るネジュマは寮内でファッションショーを開こうとするのだが・・・。パンフ中の私市正年先生のコラムによると、アルジェリアにはA[フランス語話者・エリート・富裕層・世俗主義・西欧文化に親しむ]⇔B[アラビア語話者・大衆・貧困層・イスラム教に敬虔・アラブ文化に親しむ]という社会階層の対立があるとのこと。同様の図式は他の国・地域にもありそう。また、富裕層・貧困層を問わず男性は女性に対して抑圧的で権威権力をふりかざす点は本作でも描かれている。なおこの作品はナイジェリア国内で撮影はしたものの上映は許可されず、その理由も不明のままとか。20年経っても社会的対立は続いているということ。一方フランスではごく最近マクロン政権がイスラム過激派対策として一夫多妻制等も規制の対象とする新法案を発表したとか(→コチラ参照)。今後どうなるのかな?
それにしても、自分の信念が強いほど周囲の人々を不幸にし、大きな悲劇に捲きこんでいく事例はこれまで数えきれないほどもあるのに、なぜ果てしなく繰り返されていくのでしょうね・・・。
★★★ NAVERの人気順位(12月29日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(2) アンプランド 9.56(587)
②(4) カナの婚宴:口約 9.56(308)
③(3) さすらいのシェフ(韓国) 9.56(185)
④(5) SWAG(韓国) 9.53(135)
⑤(6) 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(日本) 9.49(858)
⑥(8) ブータン 山の教室 9.42(142)
⑦(-) 少年の君 9.40(1,489)
⑧(10) 復活: その証拠(韓国) 9.40(392)
⑨(新) ミュージック&リアリティ(韓国・アメリカ) 9.39(18)
⑩(新) ボブという名の猫2 9.38(76)
⑨と⑩の2作品が新登場です。
⑨「ミュージック&リアリティ」は韓国・アメリカ合作のドラマ。ニューヨークで生まれ育った韓国系の青年ボビー(ビッグ・フォニー)はシンガーソングライターですが、現実はただ苦しいサラリーマン。韓国に行けるという話を聞いて職場も辞め、友だちのビリー(トッド・M・ゴブル)が属するバンドのロードマネージャーになって一緒にワールドツアーに出ます。そして最終的にソウルに到着し、父親の古い写真にある弘大で路上ライブをしているイナ(イム・ファヨン)の歌を聞きます。ボビーは彼女に頼んでソウルのホットプレイスを回り、音楽という共通認識を基として一緒に歌いながら、ずっと探し回ってきたアイデンティティに気付き、韓国に残ることになります。イナとのバンドが公演まで約束され、感情的な交流まで感じたと思った彼ですが、そのイナは突然説明もなく去ると言うのです。ぼくの歌はリアリティ、ぼくの現実は君に向かう心・・・。韓国題は「뮤직 앤 리얼리티」です。※主演のビッグ・フォニー自身もニューヨーク出身のシンガーソングライター。2011年から韓国に居住し、TVやラジオに出演している。
⑩「ボブという名の猫2」については後述します。
【記者・評論家による順位】
①(1) 燃ゆる女の肖像 9.22(9)
②(3) Mank/マンク 8.14(7)
③(4) マーティン・エデン 8.00(8)
④(新) 水を抱く女 8.00(6)
⑤(5) 夏時間[ハラボジの家](韓国) 7.83(12)
⑥(6)未来を乗り換えた男 7.60(5)
⑦(8) 逃げた女(韓国) 7.33(6)
⑧(9) 冬の夜に 7.33(6)
⑨(10) TENET テネット 7.18(11)
⑩(新) 85年の夏 7.17(6)
④と⑩の2作品が新登場です。
④「水を抱く女」は、ドイツ・フランス合作のドラマ。原題は「Undine[ウンディーネ]」(独)で韓国題「운디네」も同じ。このウンディーネとは地・水・風・火の四大精霊のうち、水を司る精霊です。この精霊と騎士との恋物語はフーケやジロドウによって小説や戯曲となり、あるいはバレエやオペラの素材ともされてきました。本作は精霊の神話とは直接関係はなく、主人公の女性ウンディーネ(パウラ・ベーア)の名前として用いられています。彼女はベルリンの小さなアパートで暮らしている歴史学者で、博物館でガイドとして働いています。ところが恋人のヨハネス(ヤコブ・マッチェンツ)が別の女性に心移りして悲嘆にくれることに・・・。精霊のウンディーネは「愛する男に裏切られた時、その男を殺して水に戻る」という宿命を持っていますが、クリスティアン・ペッツォルト監督による現代版のウンディーネはその運命をなぞってはいません。彼女が新たに出会った男性クリストフ(フランツ・ロゴフスキ)の職業はエンジニア・ダイバーで、ダムの水中に長時間潜って電気系統等の修理をしている、つまり水を媒介にして2人は出会います。そして運命に導かれるように激しく惹かれ合い、新しい愛を大切に育みます。しかし彼女が必死に何かから逃れようとしているような違和感をクリストフが感じとった時、ウンディーネは再び自分の宿命と直面することになります・・・。なおパウラ・ベーアは今年の第70回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(最優秀女優賞)を獲得しています。日本公開は来年3月26日。うーむ、なんか深い感じだなー。
⑩「85年の夏」については後述します。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績12月25日(金)~12月27日(日) ★★★
韓国でも23日公開の「ワンダーウーマン 1984」が初登場1位
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(新)・・ワンダーウーマン 1984・・・12/23・・・・・・・211,416・・・・・・・・303,839・・・・・・・2,763 ・・・・2,260
2(2)・・盗掘(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・11/04・・・・・・・・18,033・・・・・・1,511,574 ・・・・・13,678 ・・・・・・385
3(1)・・ジョゼ(韓国)・・・・・・・・・・・・・・12/10・・・・・・・・17,063・・・・・・・・173,822 ・・・・・・1,571 ・・・・・・557
4(33)・・花様年華 ・・・・・・・・・・2000/10/20・・・・・・・・14,626・・・・・・・・・31,863 ・・・・・・・・270・・・・・・・411
5(新)・・キャプテン・プードル・・・・・・12/24 ・・・・・・・・・7,253 ・・・・・・・・・8,458・・・・・・・・・・69・・・・・・・370
6(3)・・お隣さん(韓国)・・・・・・・・・・・・11/25 ・・・・・・・・・6,560 ・・・・・・・421,170 ・・・・・・3,618・・・・・・・276
7(4)・・Run:ラン・・・・・・・・・・・・・・・・11/20 ・・・・・・・・・3,763 ・・・・・・・276,372 ・・・・・・2,540・・・・・・・173
8(新)・・ボブという名の猫2 ・・・・・・・12/24・・・・・・・・・・2,655 ・・・・・・・・・3,458・・・・・・・・・・30・・・・・・・202
9(65)・・85年の夏・・・・・・・・・・・・・・・・12/24・・・・・・・・・・2,621 ・・・・・・・・・4,353・・・・・・・・・・39・・・・・・・122
10(5)・・ラブ・アクチュアリー・・2003/12/05 ・・・・・・・2,584 ・・・・・・・325,086 ・・・・・・2,305・・・・・・・・98
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
週末の観客動員数が1万人を超えたのは上位4作品だけと、さらに数字が落ち込んでいます。
今回の新登場は1・5・8・9位の4作品です。
1位「ワンダーウーマン 1984」は、日本でも韓国より(なんと!)5日早く12月18日から公開されています。韓国題は「원더 우먼 1984」です。
5位「キャプテン・プードル」はオーストラリア・ベルギー合作のアニメ。狼男の一族は夜な夜な狼に変身して人々の安全のため密かに街を見廻っています。しかしある夜、群れを率いるフラッシュハートが何者かに家宝のリングを奪われた上崖から転落して死んでしまいます。由緒ある狼一族の後継者フレディは父の遺志を継いで立派なリーダーになることを誓います。そして迎えたフレディの狼化の儀式の日。皆の期待が高まる中、フレディが変身したのはなんと可愛いプードルだったとは! リーダーの座を狙う叔父のホッツパーは夜明けまでにリングを探して来なければ一族を追放するとフレディに告げ、フレディはプードルの姿で街へと向かいますが・・・。韓国題は「100% 울프: 푸들이 될 순 없어(100%ウルフにはなれない)」。日本では劇場公開はなく配信で視聴できます。
8位「ボブという名の猫2」(仮)は、2017年に日本でも公開されて好評を得たイギリス映画「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」の続編。前作は、麻薬中毒のホームレス、ジェームズ・ボーエン(ルーク・トレッダウェイ)と傷ついた野良ネコのボブが運命的に出会って、互いに希望を見出すようになったという実話エッセイ「ボブという名のストリート・キャット」(辰巳出版)を原作にした作品でした。今作でも、ジェームズはあいかわらずロンドンで路上ライブをしながらビッグイシュー販売員として過ごしています。そして彼の心の友つまり肩の上のボブを誰よりも大切にしているジェームズですが、ある日濡れ衣を着せられて、クリスマスだというのにボブと別れる危機に直面してしまいます・・・。韓国題は「내 어깨 위 고양이, 밥 2(ぼくの肩の上のネコ、ご飯2)」。日本公開は来年ですが期日は未定。(えっ、これがボブの遺作だって!?)
9位「85年の夏」(仮)はフランスのドラマ。フランソワ・オゾン監督の新作です。物語の舞台は1985年のフランス、ノルマンディーのビーチ。一人乗りヨットが転覆して溺れたアレックス(フェリックス・ルフェーブル)をダヴィッド(バンジャマン・ウォアザン)が救ってくれたことをきっかけに、2人の少年は急速に親しくなっていきます。アレクシスは父の仕事の都合で最近港町に引っ越してきたこともあって友人も少なく、そこに現れたダヴィッドは彼の心の支えとなります。「どちらか1人が死んだらその墓の上で踊ろう」。愛の証のような誓いと共に夏の太陽のような愛を共有する2人でしたが、やがてアレックスはダヴィッドの冷めた心を知ります。そして・・・。韓国題は「썸머 85(サマー 85)」です。
なお、4位「花様年華」は、ウォン・カーウァイ監督による名作ラブ・ストーリーの再上映。韓国題は「화양연화」です。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(11)・・花様年華・・・・・・・・・・・・・・2000/10/20・・・・・・14,626・・・・・・・・・・31,863 ・・・・・・・270・・・・・・・411
2(28)・・85年の夏 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12/24・・・・・・・2,621・・・・・・・・・・・4,353・・・・・・・・・39・・・・・・・122
3(1)・・ラブ・アクチュアリー ・・・・2003/12/05・・・・・・・2,584 ・・・・・・・・325,086 ・・・・・2,305・・・・・・・・98
4(27)・・Love Letter(日本) ・・・・・1999/11/20・・・・・・・2,534・・・・・・・・・118,844 ・・・・・・・919 ・・・・・・109
5(2)・・アメリカン・フォーク ・・・・・・・・・・12/16・・・・・・・1,999 ・・・・・・・・・・・9,933 ・・・・・・・・82・・・・・・・・49
2位「85年の夏」が新登場ですが、これについては上述しました。
4位「Love Letter」は、もちろん1995年に公開された岩井俊二監督の佳作。昨年末、そして今年6月にも再上映されています。25年経っても変わらぬ人気は間違いなく日本以上です。たまたま<NAVER映画>の記者・評論家による寸評(→コチラ.韓国語)を見たら、10人中評点10点=6人、9点=3人、7点=1人という高評価。その内容は近く別記事で紹介します。たぶん。