2月12日の記事で韓国の児童書「方言の味(사투리의 맛)」を紹介しました。
物語の本筋とは関係ないのですが、その本の挿絵で私ヌルボが気になったのがコレ。
物語では、この少年、とても良い子なのですが、このお辞儀の絵については奇異な印象を受けました。肘を張り出して手を胸の前に組む姿勢が不自然だし、「微笑」もわざとらしい感じで、何か媚びへつらっているように感じられるのです。
おりしも、このようなお辞儀の仕方が近年ネット社会の一部で問題となっていることを教わりました。早い話が、数年前からこのように胸の前あたりで手を組むお辞儀がデパート・スーパー・ホテル等でよく見かけるようになったということ、またこの形はコンス(拱手.공수)という韓国の礼法であり、このコンスが接客サービス業等での礼法指導を通して日本社会に浸透しつつあるということです。
たしかに検索してみるとずいぶんたくさんの記事がヒットします。こんなに話題になっているとはウカツなことに今まで気づきませんでした。
なるほど、たとえば「ホテル」と「お辞儀」で画像検索してみるとアララ!という画像がわんさか出てくるではないですか!(→コチラ。)
近所のスーパー。レジのおねーさんはどうかなと見ると、なるほど、「またお越しくださいマセ」とこのポーズを取っているではないですか! 今まで気づかなかったなー。(別の1店はやってなかったですが・・・。)
で、いつ頃からこの話題が盛り上がっているのかを探ってみると、たとえば2009年9月に<Wow!Korea>のQ&A欄で「韓国人女性がお辞儀をするときに胸元を押さえている理由」についての質問がありました。(→コチラ。) これには「昔の韓服を着ていた時の名残で、胸元で結んだリボンを押さえるしぐさ」という回答がありました。ただ、この質問は「TVで見た韓国人女性」についてのもので、日本人とは関係ナシ。この時期はまだ問題になっていなかったようです。
おそらく、この件についての初期のブログ記事は、2013年1月にアップされた<変なお辞儀・【いつの間にか蔓延】変なお辞儀の正体【朝鮮式(韓国式)立礼】>という→コチラの記事あたりではないかと思われます。
専門学校のホテルコースでの立礼指導を、韓国の女子高卒業式での立礼の画像と並べて、「変なお辞儀の正体」は「朝鮮式立礼」であると看破(?)しています。
これより先、2011年7月に「本来の日本人の作法、立居振舞を子供たちに習得させましょう」と題した記事を載せたのが→コチラですが、その2013年3月の追記で「朝鮮式立居礼法だそうです。清楚な日本式作法と比べて、なんて下品なんでしょう」と批判されていたのが下の動画です。
たしかに、日本人ヌルボとしては違和感はありますね。腕の形、体の傾け方だけでなく、足を前後に開く形も・・・。
そしてこの話題が一気に盛り上がった(?)のが2013年夏頃。その口火を切った(?)のが→コチラの<おかしなアノお辞儀は韓国式コンス>という記事。古今東西のお辞儀についても言及する等、とても詳しく記されています。
たとえば、コンスの起源については次のように説明されています。
もともとは、このお辞儀の仕方が李氏朝鮮の時代で行われていたわけではなくて、聞くところによれば、ロッテが韓国に百貨店を作った際に、お客様をお迎えするにあたって、日本における最高の立礼はどのようなものかと日本の某百貨店に問い合わせてきたことが発端のようです。
この百貨店では、普通の両脇を締めた日本式のお辞儀を教えようとしたようなのですが、あちらさんは納得しない。
普通ではなく、もっとも高貴なものを教えろというわけです。
日本におけるお辞儀としては、旧華族が衣冠束帯姿でお辞儀をする際に、檜扇をおへその前で両手に持ち、お辞儀する形があります。
で、それを教えたところ、その姿がやや変形されて広まったのがコンスといわれています。
以後、数多く出てきたブログ記事では、上記の起源論に関連して小笠原流や皇室、さらには三越等のお辞儀も引き合いに出されました。
その中で、→コチラのブログ記事(2013年9月)で「朝鮮式(韓国式)コンスのポイントは以下の2つ」であるとして①肘の左右への張り出し具合 と ②お辞儀をする際の手首の高さ をあげているのはなるほどと思いました。
ここで공수というハングルを手がかりに韓国サイトを見てみると、たしかに多くの学校で礼儀指導としてこのコンスが教えられていることがわかります。初等学校(小学校)から高校に至るまでです。
また韓国の記事を見ると、たとえば→コチラでは拱手法が陰陽説と関連付けられて説明されています。
たとえば上の図のように手を組む時には、男性は右手で左手の親指を握り左手で右手を覆います。女性は男性の逆で、右手が上になるように組むとされています。(凶事の場合は逆。)
これ以外にもいくつかの拱手法についての韓国記事を読むかぎりでは、それが李氏朝鮮時代からの礼法としてふつうに認識されているようです。
一方、小笠原流の本によると、なるほど、両手を前で組むのは悪いお辞儀とされています。
ネット内の論議が続く中、2014年5月の<「朝鮮お辞儀」と「三越風お辞儀」は別物>という記事(→コチラ)では、それまでの議論内容を次のような図で整理しています。(※私ヌルボは、これをそのまま受け入れているわけではない。)
日本(皇室)
↓
三越他 → 朝鮮へ
↓ ↓
日本の 朝鮮式と混ざる
接客業 ↓(肘を張る)
(肘張らない) ↓
↓ ↓
今ココ ←← 侵略中(マナー教室を悪用?)
また2014年7月に公表された動画<日本では変なお辞儀-朝鮮式(韓国)お辞儀コンス>(→コチラ)は、一見コンスのように見える皇族のお辞儀はコンスとは異なる等の内容のもので、毎日100をこえるアクセスがあるようです。
ところで<ウィキペディア>のお辞儀(→コチラ)の項目にはどう説明されているのかを見ると・・・・
近年、ビジネス界では男女のお辞儀の仕方に差異が見られ、例えば男性は腰を曲げたときに手は体の横にそのまま添わせ、女性は臍の下あたりで両手の指先を重ねるように、ビジネス・スクールやマナー教室で教えているが、本来の礼法ではない。
・・・とあり、さらに続けて「正しくない理由」が具体的に書かれているのですが、あれ?ちょっと前に見た時よりずいぶん詳しくなってるぞ?と思ったら、最終更新2015年2月17日。10日ばかり前につけ加えられたのか。これも上述のようなネット内論議をふまえたものでしょうね、おそらく。(※2021年9月20日の追記:最新(2021年8月25日)の更新まで何度か更新されたようで、上記のような「本来の礼法ではない」といった断定的な記述はなくなっています。)
さて、例によってあれこれ長々と書いてきましたが、最後に私ヌルボの見解。
まず、今の日本のお辞儀文化をみると、一般人の日常の礼儀としてのお辞儀と、接客サービス業を中心としたビジネス界のお辞儀とは分けて考える必要があるのでは?ということ。
デパートの店員さんに支払いを済ませた後「ありがとうございました」と小笠原流の心のこもったていねいなお辞儀をされるとドギマギしてしまうし、個人的にいろいろ面倒をみてやった相手からコンスの形でお礼を言われても「オレを馬鹿にしてるのか!?」と思っちゃいそう(笑)だし・・・。で、今後もしかしたら体の前で手を組むお辞儀が接客用として定着していく可能性もあるかも・・・。しかし、相手に不自然な印象どころか不快感まで与えてしまっては当然アウトですが。
ただ、近年ビジネススクールやマナー教室で教えられているという「コンス風のお辞儀」が実際に韓国の影響かどうかは確証に乏しいように思います。カタチを見るとたしかによく似てはいますが、ぜひ日韓間のビジネススクール等の結びつき(←そんなもんあるのか?)を示す資料とか、またなによりも当事者(マナー講師等)の証言がほしいところです。
また、先に紹介したような日本と朝鮮(韓国)間の相互影響の歴史も、かなり詳しいもののまだ推測の域を脱していないのでは?・・・と何事にも慎重なヌルボは思うわけですが、いかがなものでしょうか?
物語の本筋とは関係ないのですが、その本の挿絵で私ヌルボが気になったのがコレ。
【(少年の絵の右)恭しく、礼儀正しく (左)顔には微笑 (下)「おばあさん、こんにちは!」 私は大きな声で挨拶します。】
物語では、この少年、とても良い子なのですが、このお辞儀の絵については奇異な印象を受けました。肘を張り出して手を胸の前に組む姿勢が不自然だし、「微笑」もわざとらしい感じで、何か媚びへつらっているように感じられるのです。
おりしも、このようなお辞儀の仕方が近年ネット社会の一部で問題となっていることを教わりました。早い話が、数年前からこのように胸の前あたりで手を組むお辞儀がデパート・スーパー・ホテル等でよく見かけるようになったということ、またこの形はコンス(拱手.공수)という韓国の礼法であり、このコンスが接客サービス業等での礼法指導を通して日本社会に浸透しつつあるということです。
たしかに検索してみるとずいぶんたくさんの記事がヒットします。こんなに話題になっているとはウカツなことに今まで気づきませんでした。
なるほど、たとえば「ホテル」と「お辞儀」で画像検索してみるとアララ!という画像がわんさか出てくるではないですか!(→コチラ。)
近所のスーパー。レジのおねーさんはどうかなと見ると、なるほど、「またお越しくださいマセ」とこのポーズを取っているではないですか! 今まで気づかなかったなー。(別の1店はやってなかったですが・・・。)
で、いつ頃からこの話題が盛り上がっているのかを探ってみると、たとえば2009年9月に<Wow!Korea>のQ&A欄で「韓国人女性がお辞儀をするときに胸元を押さえている理由」についての質問がありました。(→コチラ。) これには「昔の韓服を着ていた時の名残で、胸元で結んだリボンを押さえるしぐさ」という回答がありました。ただ、この質問は「TVで見た韓国人女性」についてのもので、日本人とは関係ナシ。この時期はまだ問題になっていなかったようです。
おそらく、この件についての初期のブログ記事は、2013年1月にアップされた<変なお辞儀・【いつの間にか蔓延】変なお辞儀の正体【朝鮮式(韓国式)立礼】>という→コチラの記事あたりではないかと思われます。
専門学校のホテルコースでの立礼指導を、韓国の女子高卒業式での立礼の画像と並べて、「変なお辞儀の正体」は「朝鮮式立礼」であると看破(?)しています。
これより先、2011年7月に「本来の日本人の作法、立居振舞を子供たちに習得させましょう」と題した記事を載せたのが→コチラですが、その2013年3月の追記で「朝鮮式立居礼法だそうです。清楚な日本式作法と比べて、なんて下品なんでしょう」と批判されていたのが下の動画です。
たしかに、日本人ヌルボとしては違和感はありますね。腕の形、体の傾け方だけでなく、足を前後に開く形も・・・。
そしてこの話題が一気に盛り上がった(?)のが2013年夏頃。その口火を切った(?)のが→コチラの<おかしなアノお辞儀は韓国式コンス>という記事。古今東西のお辞儀についても言及する等、とても詳しく記されています。
たとえば、コンスの起源については次のように説明されています。
もともとは、このお辞儀の仕方が李氏朝鮮の時代で行われていたわけではなくて、聞くところによれば、ロッテが韓国に百貨店を作った際に、お客様をお迎えするにあたって、日本における最高の立礼はどのようなものかと日本の某百貨店に問い合わせてきたことが発端のようです。
この百貨店では、普通の両脇を締めた日本式のお辞儀を教えようとしたようなのですが、あちらさんは納得しない。
普通ではなく、もっとも高貴なものを教えろというわけです。
日本におけるお辞儀としては、旧華族が衣冠束帯姿でお辞儀をする際に、檜扇をおへその前で両手に持ち、お辞儀する形があります。
で、それを教えたところ、その姿がやや変形されて広まったのがコンスといわれています。
以後、数多く出てきたブログ記事では、上記の起源論に関連して小笠原流や皇室、さらには三越等のお辞儀も引き合いに出されました。
その中で、→コチラのブログ記事(2013年9月)で「朝鮮式(韓国式)コンスのポイントは以下の2つ」であるとして①肘の左右への張り出し具合 と ②お辞儀をする際の手首の高さ をあげているのはなるほどと思いました。
ここで공수というハングルを手がかりに韓国サイトを見てみると、たしかに多くの学校で礼儀指導としてこのコンスが教えられていることがわかります。初等学校(小学校)から高校に至るまでです。
【晋州の初等学校(上左)、天安の中学校(上右)、大田中央高校(下左)、全州の高校(下右)のコンス指導。】
また韓国の記事を見ると、たとえば→コチラでは拱手法が陰陽説と関連付けられて説明されています。
たとえば上の図のように手を組む時には、男性は右手で左手の親指を握り左手で右手を覆います。女性は男性の逆で、右手が上になるように組むとされています。(凶事の場合は逆。)
これ以外にもいくつかの拱手法についての韓国記事を読むかぎりでは、それが李氏朝鮮時代からの礼法としてふつうに認識されているようです。
一方、小笠原流の本によると、なるほど、両手を前で組むのは悪いお辞儀とされています。
ネット内の論議が続く中、2014年5月の<「朝鮮お辞儀」と「三越風お辞儀」は別物>という記事(→コチラ)では、それまでの議論内容を次のような図で整理しています。(※私ヌルボは、これをそのまま受け入れているわけではない。)
日本(皇室)
↓
三越他 → 朝鮮へ
↓ ↓
日本の 朝鮮式と混ざる
接客業 ↓(肘を張る)
(肘張らない) ↓
↓ ↓
今ココ ←← 侵略中(マナー教室を悪用?)
また2014年7月に公表された動画<日本では変なお辞儀-朝鮮式(韓国)お辞儀コンス>(→コチラ)は、一見コンスのように見える皇族のお辞儀はコンスとは異なる等の内容のもので、毎日100をこえるアクセスがあるようです。
ところで<ウィキペディア>のお辞儀(→コチラ)の項目にはどう説明されているのかを見ると・・・・
近年、ビジネス界では男女のお辞儀の仕方に差異が見られ、例えば男性は腰を曲げたときに手は体の横にそのまま添わせ、女性は臍の下あたりで両手の指先を重ねるように、ビジネス・スクールやマナー教室で教えているが、本来の礼法ではない。
・・・とあり、さらに続けて「正しくない理由」が具体的に書かれているのですが、あれ?ちょっと前に見た時よりずいぶん詳しくなってるぞ?と思ったら、最終更新2015年2月17日。10日ばかり前につけ加えられたのか。これも上述のようなネット内論議をふまえたものでしょうね、おそらく。(※2021年9月20日の追記:最新(2021年8月25日)の更新まで何度か更新されたようで、上記のような「本来の礼法ではない」といった断定的な記述はなくなっています。)
さて、例によってあれこれ長々と書いてきましたが、最後に私ヌルボの見解。
まず、今の日本のお辞儀文化をみると、一般人の日常の礼儀としてのお辞儀と、接客サービス業を中心としたビジネス界のお辞儀とは分けて考える必要があるのでは?ということ。
デパートの店員さんに支払いを済ませた後「ありがとうございました」と小笠原流の心のこもったていねいなお辞儀をされるとドギマギしてしまうし、個人的にいろいろ面倒をみてやった相手からコンスの形でお礼を言われても「オレを馬鹿にしてるのか!?」と思っちゃいそう(笑)だし・・・。で、今後もしかしたら体の前で手を組むお辞儀が接客用として定着していく可能性もあるかも・・・。しかし、相手に不自然な印象どころか不快感まで与えてしまっては当然アウトですが。
ただ、近年ビジネススクールやマナー教室で教えられているという「コンス風のお辞儀」が実際に韓国の影響かどうかは確証に乏しいように思います。カタチを見るとたしかによく似てはいますが、ぜひ日韓間のビジネススクール等の結びつき(←そんなもんあるのか?)を示す資料とか、またなによりも当事者(マナー講師等)の証言がほしいところです。
また、先に紹介したような日本と朝鮮(韓国)間の相互影響の歴史も、かなり詳しいもののまだ推測の域を脱していないのでは?・・・と何事にも慎重なヌルボは思うわけですが、いかがなものでしょうか?