ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [9月21日(金)~9月23日(日)]

2018-09-26 01:33:37 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▸23日夜は2年以上前から懸案だったアニメ「ガールズ&パンツァー 劇場版」を観てきました。それも川崎チネチッタご自慢の音響設備LIVE ZOUNDが備わった[チネ8]で、一律1100円のサービス料金で観られたのはホントにラッキー。轟音でズボンがビリビリ震動する体験は初めてでした。あ、この通称「ガルパン」について全然ご存知ない方は、→コチラの記事とか→ウィキペディアを参照されたし。それにしても、女子高生たちがチームを組んで戦車戦(人は死なないしケガもしない)を展開するという<ミリオタ+女子高生萌え>などというアイディアをよく思いついたものです。(バンダイビジュアルの杉山潔ブロデューサーという人。) 中身の大半は戦車戦という単純(?)なものですが、戦車が遊園地のジェットコースターのレール上を走ったりとかも<ありえねー>発想が一杯! 主人公西住みほが熊本の西住流戦車道の家元の娘ってか(笑)。私ヌルボが「西住戦車長伝」(1939)を観たのはいつだったか・・・、調べたら案の定熊本の出身でしたね。これまた案の定なのが、研究者がこの作品について書いていること。朴順愛等(編)「大衆文化とナショナリズム」(森話社.2016)所収の須藤遙子筑紫女学園大学准教授の論稿「「文化圏」としての「ガールズ&パンツァー」」がそれです。「本稿は・・・・「戦車=戦争=右翼=ナショナリズム」という単純な批判に同意するものではない」と慎重に前置きしたうえで、ご当地(というか<聖地>というか)の大洗町では11月のあんこう祭も3月の海楽フェスタも、産(アニメ産業)・官(大洗町、茨城県、自衛隊)・民(大洗の商店街、ファン)の<トリプルWin)が進められてきて、「ガルパンはもはや単なるアニメ作品ではなく、一つの「文化圏」を形成している」という現況をいろいろ紹介・説明しつつ、最後に「ガルパンをめぐる産官民の動きが、戦争に直結するわけではもちろんない。(中略)しかし、産官民が相乗りすることで結果的に生じる「ナショナル」な熱狂状態に、既視感を伴った一抹の危うさが無いともまた言い切れないのである」と、最後まで用心深くまとめています。そう、このような煮え切らない感じの書き方に私ヌルボは共感を覚えましたね。

▸その2日前の21日はシネマ・ジャック&ベティで「顔たち、ところどころ」を鑑賞。このところ下記の【記者・評論家による順位】でずっと1位をキープしているフランスのドキュメンタリーです。しかし、タイトルだけではほとんど意味不明だし、「アニエス・ヴァルダと、気鋭アーティストとして知られるJRが共同監督で作り上げた」云々という説明を見ても、2人の知名度はどうなのか?・・・と思ったら、小雨降る平日の午後1時頃でも観客は30人ほどいて、意外と多いと思いました。そこでたまたま出くわしたのが以前一緒にソウル美術館巡りをした元同僚の美術オタクI氏。彼も同じことを言ってましたね。なお、彼はJRが目当てで観に来たとのこと。私ヌルボは実は知りませんでしたが、なるほどJRが撮って壁に貼る巨大な写真はたしかにインパクトがあります。韓国での高評価がうなずけます。オススメ!
    
「朝鮮日報」9月21日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)


비명 없이도 무서운 공포영화

 《週末の劇場街》で紹介

  「死霊館のシスター」




   悲鳴がなくても恐ろしい恐怖映画



 「安市城」
   戦闘は豪快 叙事は貧弱 ★★★☆


 「明堂[ミョンダン]」

   安定しているが平凡だ ★★☆



 「交渉」

   交渉はなく泣き声だけ ★★



 「物怪」

   CGは巨匠 結末はさて ★★☆

 上記のいずれの作品も、先週または以下の記事の中で紹介しています。

         ★★★ NAVERの人気順位(9月25日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
          ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。

①(2) ダンガル きっと、つよくなる  9.49(1,652)
②(-) 劇場版 ポイン:スーパー変身の秘密(韓国)  9.41(32)
③(-) バナナソングの奇跡(韓国)  9.30(63)
④(3) 私の最後のスーツ  9.30(43)
⑤(5) テンポ・ガールズ(韓国)  9.28(416)
⑥(9) ターシャ・テューダー 静かな水の物語  9.26(102)
⑦(7) 劇場版 ハロー カボット:白亜紀時代(韓国)  9.24(2,028)
⑧(8) 万引き家族(日本)  9.23(2,650)
⑨(10) カメラを止めるな!(日本)  9.20(479)
⑩(-) ミッション:インポッシブル/フォールアウト  9.14(20,781)

 ②「劇場版 ポイン:スーパー変身の秘密」が今回の新登場です。この作品については後述します。

     【記者・評論家による順位】

①(1) 顔たち、ところどころ  8.86(7)
②(2) 万引き家族  8.13(8)
③(3) ソソン里[韶成里](韓国)  8.00(2)
④(4) 生き残った子[最後の息子](韓国)  7.67(9)
⑤(5) search サーチ  7.60(10)
⑥(6) ミッション:インポッシブル/フォールアウト  7.56(9)
⑦(7) ザ・スクエア 思いやりの聖域  7.25(12)
⑧(8) 暗い夜(韓国)  7.20(5)
⑨(10) カメラを止めるな!(日本)  7.14(7)
⑩(-) 罪多き少女(韓国)  7.13(8)

 ⑩「罪多き少女」が今回の新登場です。韓国のミステリー&ドラマ。ある女子高で生徒が突然行方不明になり、同じクラスで最後に一緒にいたヨンヒ(チョン・ヨビン)が疑われます。ヨンヒは潔白を証明しなければならないのですが、集団の人間関係の中で、級友たちだけでなく先生たちからも追いつめられていきます・・・。原題は「죄 많은 소녀」です。チョン・ヨビンの演技が高い評価を受けているようです。これは観てみたい作品。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績9月21日(金)~9月23日(日) ★★★

         秋夕(チュソク)連休、韓国映画が1~3位独占

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(13)・・安市城(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・9/19 ・・・・・・・・1,128,374・・・・・・・1,409,497 ・・・・・・・12,327 ・・・・・・1,341
2(66)・・明堂[ミョンダン](韓国) ・・・・・・9/19・・・・・・・・・・548,989 ・・・・・・・・758,858 ・・・・・・・・6,641 ・・・・・・1,114
3(21)・・交渉(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/19・・・・・・・・・・445,098 ・・・・・・・・618,421 ・・・・・・・・5,445・・・・・・・・871
4(69)・・死霊館のシスター・・・・・・・・・・・9/19・・・・・・・・・・366,367・・・・・・・・544,850 ・・・・・・・・4,778 ・・・・・・・824
5(1)・・search サーチ ・・・・・・・・・・・・・・・・8/29・・・・・・・・・・・87,047・・・・・・・2,736,014 ・・・・・・・23,426・・・・・・・・400
6(新)・・映画 妖怪ウォッチ・・・・・・・・・・・9/20 ・・・・・・・・・・42,541 ・・・・・・・・・46,620・・・・・・・・・・356・・・・・・・・454
       シャドウサイド 鬼王の復活(日本)
7(59)・・ルイスとエイリアンたち ・・・・・9/20 ・・・・・・・・・・21,964 ・・・・・・・・・30,262・・・・・・・・・・239・・・・・・・・325
8(新)・・かみさまみならい ヒミツのここたま・・9/12 ・・・16,692 ・・・・・・・・・16,939・・・・・・・・・・135・・・・・・・・179
       :どっきり!ハロウィンパーティー(日本)
9(2)・・物怪[もののけ](韓国) ・・・・・・・・・9/12・・・・・・・・・・・13,797 ・・・・・・・・701,253 ・・・・・・・・5,925・・・・・・・・289
10(41)・・劇場版 ポイン ・・・・・・・・・・・・・9/20・・・・・・・・・・・10,194 ・・・・・・・・・15,465・・・・・・・・・・120 ・・・・・・・・287
       :スーパー変身の秘密(韓国)
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今年の秋夕(チュソク)は土日がらみで22~26日の5連休。このところベスト10の週ごとの入れ替わりがほぼ3作品ずつだったのが、この秋夕を期して8作品とほとんど一新。とくに目につくのが1~3位の韓国映画と、アニメ4作品です。
 今回の新登場は6・8位以外の8作品です。
 1位「安市城」は、韓国の歴史劇&アクション。遼東半島は4世紀初めから高句麗の支配する所となりました。隋は高句麗遠征を試みますが、ソウルの乙支路にも名前が残る乙支文徳将軍によって隋は撤退を余儀なくされ、ほどなく滅亡します。その後唐代に入って、高句麗で対唐強硬派の淵蓋蘇文[ヨンゲソムン]が642年クーデターを起こして実権を握ると、唐の太宗(パク・ソンウン)はその懲罰を名目に644年高句麗への侵攻を開始します。20万の唐軍は緒戦で遼東城等を落とした後、遼東半島北部の軍事的な要地・安市城に立て籠もる5千の兵力の高句麗軍の包囲作戦を敢行します。これに対し淵蓋蘇文は15万の支援軍兵を送り込み、城外で唐軍と戦いますが結果は惨敗。しかし安市城を守る楊萬春[ヤン・マンチュン](チョ・インソン)は降伏を拒否し徹底抗戦を続けます。唐軍は安市城攻略のため同じ高さの土山を築いたらこれが崩壊して失敗するなど、結局は太宗は退却を命じます・・・。って、巨大な土の山を実際造って撮ったのでしょうか? 予告編観てもわからず。(当然か。) 原題は「안시성」です。
 2位「明堂[ミョンダン]」は、韓国の時代劇。朝鮮では、昔から家を建てたり墓を作ったりする時には土地の良し悪しを重視します。その<地相>の良い所がすなわち<明堂>です。パク・ジェサン(チョ・スンウ)は、地相を観て人間の運命をも変えられる天才的な地相師です。ところが、<明堂>を利用して国を支配しようとする壮洞(チャンドン)金氏家門の謀略を阻止しようとして家族を失くしてしまいます。13年後、復讐を夢見るジェサンの前に世の中をひっくり返したい没落した王族フンソン(チソン)が現れ、一緒に壮洞金氏の勢力を追い出すことを提案します。共通の意志を固めて金持ちのキム・ジャグン(ペク・ユンシク)に接近した2人ですが、2人の王が出るという天下明堂の存在を知り、異なる考えを抱くようになります・・・。原題は「명당」です。
 3位「交渉」は、韓国の犯罪物。どんな状況でも冷静さを失わない交渉専門家ハ・チェユン(ソン・イェジン)は、緊急投入された現場で人質と人質犯の両方が死亡する事件が発生して衝撃を受けます。その10日後、国際犯罪組織の武器密売業者ミン・テグ(ヒョンビン)がタイで韓国の警察官と記者を拉致し、彼女を交渉相手として指名します。理由も目的も条件もなく最悪の拉致を行うミン・テグと、彼の企てを阻止するため一寸も退かないハ・チェユン。残り12時間、命をかけた交渉の行方は・・・。原題は「협상(協商)」です。
 4位「死霊館のシスター」は、アメリカのホラー。日本では2日遅れて9月21日に公開されています。韓国題は原題のまま「더 넌(ザ・ナン)」です。
 6位「映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活」は、日本では2017年12月公開されました。例によって私ヌルボにコメントする資格はありません。韓国題は「극장판 요괴워치 섀도사이드: 도깨비왕의 부활」です。<鬼王>は<トッケビ王>か。
 7位「ルイスとエイリアンたち」(仮)は、ドイツのアニメ。偶然地球のホームショッピング番組を見たエイリアン3人組は、高弾性強化繊維のマッサージマットを求めて地球に出動します。彼らを乗せたUFOが落ちた所は12歳の誕生日を迎えたルイス少年の家の近くでした。彼の父は「エイリアンに襲われたことがある」と言うUFO研究家。エイリアンたちと出会ったルイスは、父親の話を信じなかった人たちにエイリアンの存在を認めさせる絶好の機会だと思いますが・・・。韓国は「루이스」です。
 8位「かみさまみならい ヒミツのここたま:どっきり!ハロウィンパーティー」は、日本の劇場公開作品ではないので、画像等から推測すると昨年10月TV放映の「ここたまハロウィンミステリー」等で構成されたもののようです。韓国題は「에그엔젤 코코밍: 두근두근 핼러윈 파티」です。
 10位「劇場版 ポイン:スーパー変身の秘密」は、韓国のアニメ。「遊び場救助隊ポイン(놀이터구조대 뽀잉)」は2013年からEBSで放映されているTVアニメ。メインキャラクターのポインはライオンですが、変身するとスプリング付木馬になり、他の動物キャラクターもそれぞれ遊び場の遊具に変身します。この劇場版は、遊び場救助隊になる夢を持つポインが優れた能力を持つハイエナ博士の研究室訪ねていくところから始まります。しかし、ポインの失敗で恐竜のおもちゃはティラノロボットに変身し、森の動物たちは怪物に変わって遊び場村は危機にさらされてしまいます。ポインと仲間たちはスーパー変身に挑戦して遊び場村を守るために乗り出します。原題は「극장판 뽀잉: 슈퍼 변신의 비밀」です。

strong>【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・・・上映館数
1(12)・・追想 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/20・・・・・・・・・・・・5,231・・・・・・・・・・9,231・・・・・・・・・・・81・・・・・・・・・・54
2(2)・・ターシャ・テューダー ・・・・・・・・・・・9/13・・・・・・・・・・・・3,617・・・・・・・・・13,016・・・・・・・・・・102・・・・・・・・・・34
3(7)・・魅惑の王女 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7/05・・・・・・・・・・・・1,398・・・・・・・・・12,668・・・・・・・・・・・85・・・・・・・・・・・3
4(18)・・リーン・オン・ピート ・・・・・・・・・・・9/20 ・・・・・・・・・・・・・919・・・・・・・・・・1,580・・・・・・・・・・・13・・・・・・・・・・27
5(7)・・万引き家族(日本)・・・・・・・・・・・・・・・7/26 ・・・・・・・・・・・・・842 ・・・・・・・・165,618 ・・・・・・・・1,369・・・・・・・・・・12

 1・3・4位の3作品が新登場です。
 1位「追想」は、日本では8月に公開されています。韓国題は「체실 비치에서」です。
 3位「魅惑の王女」(仮)はロシアのアニメ。好奇心が旺盛で冒険好きな王女バーバラがある日突然いなくなってしまいます。王様は王女を探し出した人との結婚をさせると宣言します。偶然王女を見て一目惚れした隣国の王子イワンは怪しい竜とともに消えた王女を見つけるためドタバタ劇のような冒険に出ますが、はたして王女を無事に探し出せるのか・・・。予告編を見ると、(日本の基準では)王女も王子もあまり<魅惑>的じゃないんですけど。韓国題は「드래곤 프린세스(ドラゴン・プリンセス)」ですが英題を直訳して仮題としました。
 4位「リーン・オン・ピート」(仮)は、イギリスのドラマ。「さざなみ」のアンドリュー・ヘイ監督作品です。15歳の少年チャーリー(チャーリー・プラマー)は、ただ1人の家族である父が病で倒れ、家計を助けるために競馬場の調教助手となり、競走馬リーン・オン・ピートの世話をすることになります。ある日ただ1人の家族だった父を事故で失い、冷酷な現実に直面することになります。さらに追い討ちをかけるように、リーン・オン・ピートの殺処分の決定が知らされると、チャーリーはひそかにリーン・オン・ピートと共に唯一の親戚の叔母を探す旅に出ます・・・。韓国題は「린 온 피트」。日本公開は11月とのことです。
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ハトの背中を見て驚く脱北漫画家! そのワケは?  ▸チェ・ソングク「大韓民国定着記」より

2018-09-22 15:00:14 | 韓国の漫画

 チェ・ソングク「大韓民国定着記」は、脱北者の漫画家が自分の体験をベースに描いた漫画シリーズ中の1冊です。
 いろんなネタがある中で、本筋とは別の<作者の言葉>から、韓国で作者がちょっと驚いたことを紹介します。


     おっ、あの・・・             いやあ、ハトが人の方に来るじゃないか!
     堂々とした歩き方は何だ?        「なんとまあ! ハトの<背中>が全部見えるね!?」


 「何ですって? 北韓にはハトがいないんですか?」
 「いることはいるけど、高い所にいるんで腹しか見えないんですよ」
                      「なんでですか? 地面に降りて来て、
                      人のそばに行ったらよくないんですか?」



                「捕まって食われますよ!」     ホントなんだけどㅠ-ㅠ
            「あ・・・ホントですか?           してみると・・・
             ホント? エーッ、            最近のコメントも

             まさか・・・ホント?」





 ・・・というわけで、北朝鮮ではハトが人間を警戒して地面に降りてこないのですね。
 友人にこの話をしていたら、昔、アグネス・チャンが公園にたくさんいるハトを見て、「どうして誰もハトを捕まえないの? すごくおいしいのに」と言ったとのこと。うーん、ぼんやりと記憶にあります。
 しかし、北朝鮮でハトを捕まえて食べるというのは①中国と食文化が共通しているからか? ②北朝鮮の食料事情が厳しいためか? 韓国にはハトを食べる習慣は(少なくとも今は)なさそうだし、どうも②のような気がしますが、確証ナシ。どなたか教えてください。

 ハトは近所にある横浜市立図書館の駐輪場にも10羽くらいいて、エサをくれそうな人がいると馴れ馴れしく近寄ってきます。週3回は行っているので、個体もほぼ見分けがつくようになりました。(右画像) ハトの腹よりも背中を見ることがずっと多いように思います。

 20年ほど前、ある高校で廊下の天井にハトが巣を作っていたことがありました。ある朝ヒナが孵っていたのを見て、そこの社会科教師(=ヌルボなんですけど)が授業のマクラで「あのヒナは産まれて最初にどんな光景を見て、何を思うのかねー」とか話した後、「ジツは昨晩藤沢の中華レストランでハトを食べてきました」と、授業の最初から脱線していったのでありました・・・。(人間はいろんな矛盾を抱えた存在である、という話でもしたのかな?)
 昨日たまたまシネマベティで出くわした当時の同僚によると、その中華レストランのハトはフランスから仕入れた食用のハトということでした。
 なお、たまにハトを食べる中国人をそのことで嘲笑する「残念な日本人」がいるようですね。
 たまたま数日前、愛読しているゆうきさんの関連ツイートがあったので貼っておきます。

 ハトの話はここまで。

 ことのついでに「大韓民国定着記」の他のページをチラッとご紹介。

 <北朝鮮の簡単な調査過程>
 1.取り調べ。                 2.軽い罪は労働鍛錬隊へ。
 3.重い罪は拘留場を経て教化所、政治犯収容所。 4.調査の過程では待機室。

 酒に酔って、国境警備員の目の前で鴨緑江に飛び込み、そのまま脱北。
 
 韓国の青年が北朝鮮の地方に漂流して現地の若い女性と親しくなり、「平壌から来たんだ」とかウソをついて・・・という設定で北朝鮮の一般住民の生活等を紹介する1話2ページの「韓国青年リュ・シジンの北韓漂流記」がこの本では2回分載っています。
 じつは、この全20話は韓国アムネスティのサイト内の→コチラ(韓国語)で全部読むことができます。(どこかで翻訳本出さないかな?)
コメント (2)
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韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [9月14日(金)~9月16日(日)]

2018-09-18 23:49:56 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▸→<韓国映画「1987、ある闘いの真実」を観る ▸今につながる<6月民主抗争> ①予備知識編(ほとんどネタバレなし!)>
 9日に↑この映画を観てから何人かの知人に韓国で全斗煥政権が終わった頃のことをどれくらい憶えているか訊いてみたところ、概して、いやそれ以上に皆さん記憶に残っていないようですね。ということで、高校生にもわかるレベルを意識して予備知識編を書いてみました。
 それにしても、この映画についても町山智浩さんのトークは興味をかきたてますね。(→コチラ。) 若干ネタバレ領域まで踏み込んでいる感じではありますが。

▸昨日(18日)は、予告編が記憶に残っていた「人間機械」を横浜シネマリンで観てきました。インドの繊維工場での殺人的な労働現場を撮ったドキュメンタリーです。いろいろ考えさせられました。「取材が終わればいなくなるんだろう」という労働者の言葉はコチラにも向かっています・・・。

▸韓国で6月公開された「ハー・ストーリー」はいわゆる<慰安婦映画>ですが、時代は戦中ではなく、1992~98年、下関と釜山を行ったり来たりしながら日本政府を相手取って慰安婦被害者に対する謝罪と賠償を求めた<関釜裁判>とよばれる法廷闘争を闘った人たちの物語です。その一審判決は、慰安婦関係の訴訟で唯一原告の一部勝訴の判決を勝ち取った裁判でした。
 9月に入り日本でも2日東京で上映会が開かれましたが、そんな中、14日付でこの裁判の当事者ともいうべき<戦後責任を問う・関釜裁判を支援する会>が声明を公表しました。というと、「ぜひ多くの人に観てください」と思うでしょう。ところが、驚いたことに「映画『허스토리』(ハーストーリー)の製作者に抗議する!」というのがその表題です。→コチラで内容を読んでみると、「映画を観て驚愕し、怒りと悲しみを禁じえませんでした。原告たちの願い、支援する会の願いが無視され歪曲されています」とか「(挺身隊イコール「慰安婦」という間違った認識や)偏見を増幅させるようなストーリーを作り、勤労挺身隊の実態を関釜裁判から消したことは犯罪的ですらあります」等々、非常に強い言葉で批判し抗議しています。「弁護士にも支援する会にも、何よりも原告に取材しないで作られています」とも。
 ほとんどの日本人は、一読して「これはひどい!」と思うでしょう。少し冷静に考えれば、日韓の歴史に対する考え方の違いも反映されているかもしれません。「正しい歴史」という時、日本人は「史実としての正確さ」とふつう考えますが、韓国人にとっては「倫理的・道義的な正しさ」のことを指します。その倫理的な正しさを訴えるためには多少の(?)誇張やフィクションが入ってもかまわないという意識が働いたのかもしれません。90年代慰安婦問題がクローズアップされた頃には多くいた日本の支援者の数や支援のムードがその後右肩下がりになっていったのも、日本国内の保守化だけでなく、そのような認識のズレがあったのではとないでしょうか? 例の<慰安婦20万人説>についても、「20万人でなく1万人でもそれ以下でも非道は非道」だし、かつての慰安婦と同様に家の事情等々から脱北して中国に行ったものの人身売買の犠牲者になっている多くの脱北女性にも目を向けよう」といったような時代や国を超えた発想がなぜ出てこないのか、とても残念に思います。
    
「朝鮮日報」9月14日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)


느린 시간 속의 행복

 《週末の劇場街》で紹介

  「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」



   ゆったりした時間の中の幸福



 「罪多き少女」
   人間性に対し深い考察 ★★★☆


 「追想」

   不器用な愛に渡す慰労 ★★★

 「罪多き少女」は韓国のミステリー&ドラマ。同じクラスの友人が突然行方不明になり、最後に一緒にいたヨンヒが疑われます。彼女は潔白を証明しなければならないのですが・・・。集団の人間関係の中で、(先生たちからも)追いつめられていく少女、のようです。「追想」は日本では8月に公開されています。

         ★★★ NAVERの人気順位(9月18日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
          ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。

①(-) チンピラ・ノワール(韓国)  9.79(66)
②(2) ダンガル きっと、つよくなる  9.50(1,643)
③(1) 私の最後のスーツ  9.44(32)
④(-) ハー・ストーリー(韓国)  9.30(2,129)
⑤(-) テンポ・ガールズ(韓国)  9.30(413)
⑥(3) ブレス しあわせの呼吸[ブリーズ]  9.26(250)
⑦(4) 劇場版 ハロー カボット:白亜紀時代(韓国)  9.24(2,020)
⑧(5) 万引き家族(日本)  9.23(2,578)
⑨(-) ターシャ・テューダー 静かな水の物語  9.21(48)
⑩(6) カメラを止めるな!(日本)  9.19(391)

 ①⑨の2作品が今回の新登場です。
 ①「チンピラ・ノワール」は、韓国のコメディ&ドラマ。人生の全てだったミヨンを事故で失った三流人生のチャンド(キム・ビョンチョル)は、加害者であるヒソンに復讐しようとヒソンを拉致します。しかし180度変わってしまったヒソンにとまどってしまったチャンド。結局彼は、ヒソンを血眼で探していた(恋い焦がれていた?←不明)ヨンミン(キム・ヨンヨン)に対面するのですが・・・。原題は「양아치 느와르」です。
 ⑨「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」は、日本では2017年4月に公開されています。韓国題は「타샤 튜더」です。

     【記者・評論家による順位】

①(1) 顔たち、ところどころ  8.86(7)
②(3) 万引き家族  8.13(8)
③(4) ソソン里[韶成里](韓国)  8.00(2)
④(5) 生き残った子[最後の息子](韓国)  7.67(9)
⑤(6) search サーチ  7.60(10)
⑥(7) ミッション:インポッシブル/フォールアウト  7.56(9)
⑦(8) ザ・スクエア 思いやりの聖域  7.25(12)
⑧(9) 暗い夜(韓国)  7.20(5)
⑨(-) 聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア  7.14(7)
⑨(10) カメラを止めるな!(日本)  7.14(7)

 今回新登場の作品はありません。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績9月14日(金)~9月16日(日) ★★★

         「search サーチ」が2週連続1位に

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・search サーチ ・・・・・・・・・・・・・・・・8/29 ・・・・・・・・・・505,222・・・・・・2,5157,318 ・・・・・・・21,554 ・・・・・・・955
2(54)・・物怪[もののけ](韓国) ・・・・・・・・9/12 ・・・・・・・・・・421,483 ・・・・・・・・613,134 ・・・・・・・・5,220・・・・・・1,163
3(2)・・君の結婚式(韓国) ・・・・・・・・・・・・8/22・・・・・・・・・・・144,487・・・・・・・2,771,651・・・・・・・23,279・・・・・・・・616
4(新)・・ザ・プレデター・・・・・・・・・・・・・・9/12 ・・・・・・・・・・・98,433 ・・・・・・・・149,401 ・・・・・・・・1,326・・・・・・・・572
5(3)・・アップグレード・・・・・・・・・・・・・・9/06 ・・・・・・・・・・・37,100 ・・・・・・・・178,154 ・・・・・・・・1,641・・・・・・・・171
6(6)・・マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー・・8/08・・・・・・16,927・・・・・・・2,280,322 ・・・・・・・19,500・・・・・・・・203
7(5)・・神と共に-因と縁(韓国) ・・・・・・8/01 ・・・・・・・・・・・14,595・・・・・・12,262,593 ・・・・・・102,574・・・・・・・・223
8(4)・・上流社会(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・8/29 ・・・・・・・・・・・14,149 ・・・・・・・・761,361 ・・・・・・・・6,257・・・・・・・・331
9(新)・・たまご計画・・・・・・・・・・・・・・・・・9/12 ・・・・・・・・・・・12,062 ・・・・・・・・・13,649・・・・・・・・・・104・・・・・・・・281
10(7)・・工作(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・8/08 ・・・・・・・・・・・・6,099 ・・・・・・・4,966,095 ・・・・・・・42,735・・・・・・・・138
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「神と共に-因と縁」は、昨年1位の大ヒット作「タクシー運転手」(1,218万人)を抜いて韓国映画歴代12位に。前作「神と共に-罪と罰」(1,441万人.2位)には及ばなくても、10位までには入りそう。
 今回の新登場は2・4・9位の3作品です。
 2位「物怪[もののけ]」は、韓国の時代劇&アクション。中宗22年(1527年)、漢陽の中心部に近い仁旺山で巨大な物怪が現れて人々を残酷に殺戮しているとの報告が入ります。生き残った人も疫病にかかり、苦しみながら死んでいくとか。漢陽は一瞬のうちに恐怖に包まれます。中宗(パク・ヒスン)は、すべてが自分に批判的な領議政と官僚たちの計略と思い、かつての內禁衛長ユンギョム(キム・ミョンミン)を宮に呼び入れて捜索隊を組織します。 ユンギョムと長年を共に歩んできたソンハン(キム・イングォン)、一人娘のミョン(ヘリ)、そして王が送った武官のホ宣伝官(チェ・ウシク)がユンギョムの捜索隊に加わります。物怪を追う彼らは、すぐに信じられないほどの巨大な秘密に直面することになります・・・。→予告編を見ても、やっぱり怪物の姿はチラッと見えるかどうか、といったところ。原題は「물괴」です。
 4位「ザ・プレデター」は、日本では2日遅れの9月14日公開されています。韓国題は「더 프레데터」です。そもそも最初の「プレデター」の公開は1987年。31年前か・・・。(と、また遠い目。)
 9位「たまご計画」(仮)は、中国のアニメ。韓国題は「바니부기:드래곤 에그를 찾아서(バニーブギー:ドラゴン・エッグを探して)」なのですが、原題の「蛋计划」を直訳して仮題としました。動物保護協会の最精鋭要員バニーとブギーは、<龍の伝説>を見つけてほしいというドクター・ハンスの依頼を受けて冒険の旅に出ます。<龍の伝説>は、時間旅行の力を持つ<ドラゴンエッグ>を見つけるための唯一の手がかりなのです。苦心の末、バニーたちは<龍の伝説>を狙う悪党たちを避けて隠れていたゼニガメに会って<龍の伝説>を求めようとしますが、その時突然現れた悪党ロボットがゼニガメを拉致します。ドラゴンエッグを見つけるためには、まだまだいくつもの関門が待っています。はたしてバニーとブギーはドラゴンエッグを探してゼニガメを入手することができるでしょうか? 韓国では中国アニメがけつこう上映されていますが、日本ではまずなさそうですよねー・・・。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・・・上映館数
1(新)・・インサイド ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/12・・・・・・・・・・・・5,481・・・・・・・・・・9,709・・・・・・・・・・・86・・・・・・・・・228
2(32)・・ターシャ・テューダー ・・・・・・・・・・9/13・・・・・・・・・・・・3,779・・・・・・・・・・5,593・・・・・・・・・・・44・・・・・・・・・・28
       静かな水の物語
3(新)・・南瓜とマヨネーズ(日本)・・・・・・・・9/13 ・・・・・・・・・・・・・965・・・・・・・・・・2,074・・・・・・・・・・・17・・・・・・・・・・49
4(6)・・カメラを止めるな!(日本)・・・・・・・8/23 ・・・・・・・・・・・・・936・・・・・・・・・11,244・・・・・・・・・・・97・・・・・・・・・・11
5(新)・・ワイルド・ブレイブ ・・・・・・・・・・・・9/13 ・・・・・・・・・・・・・925・・・・・・・・・・1,413・・・・・・・・・・・11・・・・・・・・・・56

 じわっと再浮上してきた4位「カメラを止めるな!」以外の4作品が新登場です。
 1位「インサイド」はスペイン・アメリカ合作のホラー。日本ではすでに7月に公開されています。韓国題は「더 게스트(ザ・ゲスト)」です。
 2位「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」は上述のように日本ではすでに公開されています。
 3位「南瓜とマヨネーズ」は、映画も原作漫画も見てないので、私ヌルボとしては何とも・・・。ネチズン28人の平均評点は8.71となかなか高評価です。韓国題は「호박과 마요네즈」です。
 5位「ワイルド・ブレイブ」は、カナダのアクション&ドラマ。日本では今年7~8月新宿シネマカリテの<カリコレ2018>の中で上映されました。韓国題は「브레이븐」です。
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韓国映画「1987、ある闘いの真実」を観る ▸今につながる<6月民主抗争> ①予備知識編(ほとんどネタバレなし!)

2018-09-17 07:26:17 | 韓国映画(&その他の映画)
[1]31年前の、史実に基づいた群像劇。人気スターたちが大挙出演

 今年4月に公開された「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」に続いて、9月8日から同じ80年代の民主化闘争を描いた韓国映画「1987、ある闘いの真実」の上映が始まりました。
 1987年の<6月民主抗争>をベースに、大枠は史実に沿った内容です。
 一番主演っぽい人物が(近年主演が増えている)ユ・ヘジン演じる刑務官(看守)ハン・ビョンヨンで、これは実在の複数の人物を組み合わせたキャラクターとのことですが、他の主な登場人物の多くは実名がそのまま用いられています。
 なにしろ大勢が登場する群像劇なので出演俳優もたくさん。それも日本でもよく知られた人気スターがわんさか登場します。
 出演作はすべてヒットと言っても過言ではないハ・ジョンウ「チェイサー」(2008)では連続殺人犯のハ・ジョンウを追う元刑事役だったキム・ユンソク、「お嬢さん」(2016)で青龍映画賞新人女優賞を受賞する等注目された若手女優キム・テリ、そして私ヌルボには懐かしい光州事件関連の名作「ペパーミント・キャンディー」(1999)で共演したソル・ギョングムン・ソリ等々。ただ、ムン・ソリは思いがけない場面でちょっと出てくるくらいなので、ファンでも気がつくかどうか? そして、韓流ファンなら誰でも知ってるレベルの人気スターの。観た人のコメントに「がメイン・ビジュアルに入っていないのはなぜ?」とありましたが、それにはちょっとワケが・・・、ということで、この件については後日の<ネタバレ編>に回します。

[2]1987年の<6月民主抗争>とは、何だ?

 上記のように、「1987、ある闘いの真実」は、韓国の<6月民主抗争>を描いた映画です。
 しかし、<6月民主抗争>といってもご存知ない方がほとんどでは? 30歳以下の人たちは生まれる前のことだし、学校でも教わってないでしょうし・・・。
 50歳以上の方なら、ソウル五輪の前年、ソウル等で大規模なデモが繰り返される中、全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領の独裁政権が結局終止符を打ったという記憶は残っているかも。1987年6月に盛り上がったあの多くの民衆が立ち上がった民主化運動が<6月民主抗争>です。
 この後同年12月新憲法が公布され、国民の直接選挙で盧泰愚(ノテウ)大統領が選出されます。
 政治体制だけでなく、社会の雰囲気、国民の意識等まで含めて、現在の韓国社会の起点というべき年が1987年でした。2016年末のあのローソクデモにもつながっているのです。そんな点で、韓国の現代史を知るだけでなく、今の韓国を理解する一助にもなる映画です。
 また、とくに半世紀前までの日本と違って、デモに参加した経験がない人が多くなった今の日本の、とくに若い人たちにはぜひ観てもらって、日本の状況を見つめ直してほしいと思います。

[3]1980年5月の<光州事件>の延長線上にある<6月民主抗争>

 上記の「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」など、1980年5月の<光州民主化運動(光州事件)>を描いた映画はこれまでいくつも作られてきました。
 ※「ペパーミント・キャンディー」(1999)・「光州5・18」(2008)等。ちなみに私ヌルボの一番のオススメはドラマ「砂時計(モレシゲ)」(1995)です。)
 光州事件について書かれた本も多く出ているので、<6月民主抗争>に比べればかなり知られていると思われます。
 その前年(1979年)10月、1961年の<5・16軍事クーデター>以降長く独裁体制を維持してきた朴正熙(パク・チョンヒ)大統領が暗殺されます。その後12月12日の<粛軍クーデター>で政治の実権を握ったのが全斗煥で、光州事件を武力で鎮圧した責任者も彼でした。そして80年9月に大統領に就任します。
 全斗煥は、光州事件当時も、その後も事件についての報道を封殺しました。しかし「タクシー運転手」で描かれたドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーター撮影の映像や、日本のメディア報道による情報等が秘密裏に民主化運動圏を中心に広まっていったことは、この映画の一場面でもうかがい知ることができます。
 70年代は、金大中拉致事件(1973)には当然大きな関心が寄せられ、政治批判の詩を発表して検挙され死刑を宣告された詩人金芝河(キム・ジハ)の釈放運動が展開されるなど、日本でも民主化運動への弾圧を続ける朴正熙大統領に対する批判の声が高まっていました。
 朴正熙暗殺事件のニュースは「寝耳に水」でしたが、これで韓国の民主化が進むかなと思われました。ところが再び全斗煥による独裁政権が確立して失望したのは私ヌルボのみならず、大多数の日本人も同じ思いだったでしょう。言うまでもなく、多くの韓国人も・・・。
 やや鳥観図的に見ると、このような前史が1987年の<6月民主抗争>につながっていったのです。

[4]<6月民主抗争>のキッカケとなったソウル大生拷問致死事件

 結局は大デモに拡大していった1987年の民主化運動のキッカケとなったのが1月のソウル大生・朴鍾哲(パク・ジョンチョル)君の拷問致死事件でした。
 見出しで「ほとんどネタバレなし!」と書いたのは、映画冒頭のこの事件について多少なりともふれないと話が始まらないからです。
 デモに参加した後連行された朴鍾哲は南営洞の対共分室で取調べを受け、逃亡中の仲間の居場所等について拷問により自白を強要されますが、結局1月14日死亡します。その後、死因が<水拷問>によることが明らかになると、権力側はあの手この手で隠蔽を図りますが、真相糾明を求める抗議の声が広がっていきます・・・。

[5]あの拷問部屋は、現在ふつうに見学できます!

 拷問部屋があった対共分室の建物は、現在警察庁人権保護センターになっています。①ソウル駅④龍山駅の間の③南営(ナミョン)駅至近にあり、予約不要なのでソウル旅行の折に手間をかけずに見学することができます。

        
 上右の図のが(旧)対共分室。④淑明女子大駅□からも歩いて行ける距離です。

      
 正門を入って右の建物が(現)警察庁人権保護センターです。7階建ての建物の5階部分だけ窓が極端に小さいことに注目してください。
     
 その5階こそ、廊下の両側に調査室つまり拷問部屋が計16室並んでいる階でした。朴鍾哲君が拷問死した9号室は保存され、彼の写真が飾られています。部屋の奥に浴槽があるのは水拷問のためです。私ヌルボが訪れてこの写真を撮ったのは16年11月。この映画の公開後は見学者が増えたようで、ハングルで画像検索すると花が供えられた画像がいくつもありました。
 4階には朴鍾哲記念展示室があり、彼の遺品や関連資料が展示されています。
 この建物を17年4月に訪れた方の→コチラのブログ記事は写真も多く、「窓は調査対象者が脱出できないよう、すべて極端に狭く作られています」等、説明も詳しくてオススメです。また私ヌルボが愛読している<韓国古建築散歩>の→コチラの記事も参考になります。
 この対共分室での拷問を主内容とした映画に「南営洞1985」(2012)があります。日本では2014年に小規模ながら公開されました。2011年12月30日に死去した往年の民主活動家で、その後進歩陣営の国会議員として活躍した金槿泰(キム・グンテ)(→ウィキペディアの手記「南営洞」に基づいた映画です。彼もここで厳しい拷問を受けます。朴鍾哲のように死に至らなかったのは、拷問のプロというべき男イ・ドゥハンが「ヘマをしなかった」からでしょうか。しかし金槿泰は拷問の後遺症でパーキンソン病を発症して死亡したとのことです。この映画は内容の大半が22日間に及ぶ拷問シーンで、観るだけで緊張を強いられ、大変疲れた記憶があります。なお、イ・ドゥハンには李根安(イ・グナン)という実在のモデルがいます。またその李根安をモチーフにした小説に千雲寧「生姜(センガン)」(新幹社)があります。

 おっと、かなり拷問関係に深入りしてしまいました。朴鍾哲君の拷問致死事件の発覚の経緯やその後の運動の展開については皆さん映画館でご覧ください。
 その中でのもろもろや、さらに<6月民主抗争>以降のことについては、いずれ<ネタバレ編>で書くことにします。本作の最後に流される歌のタイトルは「その日が来れば(그날이 오면)」なのですが、「その日」ははたして本当に来たのか、考えてみたいと思います。(むずかしそうだなー・・・。)
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韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [9月7日(金)~9月9日(日)]

2018-09-12 16:27:24 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▸9日(日)に「1987、ある闘いの真実」を観てきました。内容的には「!」や「?」もそれなりにあり、大きな「!?」も1つありましたが、ほぼ想定内でした。
 ただ、観客の皆さんの多くは「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」の背景となった1980年の<光州民主化運動(光州事件)>と比べて、コチラの<6月民主抗争>の方はその言葉自体「フツーに知らない」のでは?(私ヌルボも韓国オタク生活に突入する前は知りませんでした。)
 当時TVや新聞等のニュースに接していた人も、大規模なデモが繰り広げられる中、ついに全斗煥の独裁政権が終わった、ということが記憶に残っていれば「フツーの常識人」といったところでしょうか?
 ・・・ということで、<韓国映画「1987、ある闘いの真実」を観る 今につながる6月民主抗争 ①予備知識(ネタバレなし!)>と題した記事を書き始めものの、本記事と「二兎を追う」こととなって、その分ブログ更新が1日遅れてしまいました。(上記の記事は本記事の後にアップする予定で目下編集中。)
 この映画は、とくに全然デモというものをやったことのない若い人たちに観てほしいと思います。(もちろんデモ経験者でもいいですけど。) どうもこの頃(って90年代以降?)、何十年か前なら当然大勢の人がデモに立ち上がったような問題が起こっても国民の反応が「静か」なばかりか、逆に声を上げた人たちを非難するような風潮まで見られることに「居心地の悪さ」を感じているもので・・・。

▸10月26日(金)~11月1日(木)韓国文化院で開かれる<コリアン・シネマ・ウィーク 2018>の上映作品と日程が発表されました。日本初公開作が4作品あります。詳細は→コチラ
    
「朝鮮日報」9月7日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)


거친 사이버펑크 액션극

 《週末の劇場街》で紹介

  「アップグレード」


   激烈なサイバーパンク・アクション


 「私の最後のスーツ」
   長年の傷に新しい和解 ★★★



 「暗い夜」

   ノーラン監督右往左往 ★★★



 「蝶の眠り」

   人の深い共感を込める ★★☆

 「蝶の眠り」は日韓合作で日本では今年5月公開されています。中山美穂主演ということで韓国でも注目。他の作品は以下の記事の中で紹介しています。

         ★★★ NAVERの人気順位(9月11日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
          ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。

①(-) 私の最後のスーツ  9.52(21)
②(1) ダンガル きっと、つよくなる  9.50(1,633)
③(7) ブレス しあわせの呼吸[ブリーズ]  9.25(246)
④(9) 劇場版 ハロー カボット:白亜紀時代(韓国)  9.24(2,008)
⑤(8) 万引き家族(日本)  9.23(2,519)
⑥(3) カメラを止めるな!(日本)  9.21(306)
⑦(-) ゴッホ~最期の手紙~  9.19(5,256)
⑧(-) 暗い夜(韓国)  9.19(21)
⑨(10) 名探偵コナン ゼロの執行人(日本)  9.17(2,556)
⑩(-) ミッション:インポッシブル/フォールアウト  9.14(20,358)

 ①⑧の2作品が今回の新登場です。
 ①「私の最後のスーツ」(仮)は、アルゼンチン・スペイン合作のドラマ。ブエノスアイレスに住むアブラハムは88歳のおじいさん。家族も敬遠するほどの気難し屋ですが孫娘に対しては例外です。長年テーラーとして生きてきた彼はある日ずっと忘れていた古いスーツを発見します。そして、70年間停止していた約束を果たすため、そのスーツを持って旅に出ることに。ところが、その旅の目的地がなんとポーランドとは・・・。近年、老齢や難病等のため自身の余命を悟った人が<最後にやるべきこと>をやる、といったテーマの作品が多いように思われますが、この作品の場合、個人的な体験だけでなく、歴史にも関わる物語ともなっています。韓国題は「나의 마지막 수트」。日本公開は未定のようです。
 ⑧「暗い夜」は、韓国のアクション&コメディ。映画鑑賞同好会リーグ・オブ・シャドウのメンバーたちは、クリストファー・ノーラン監督の影響を受けて、スーパーヒーロー映画を製作することに。やる気満々で始めたものの、初めてのことなので万事が簡単にはいきません。シナリオからキャスティング、撮影、演出まで、情熱とチャレンジ精神で映画完成のために最後までがんばるのですが・・・。夢はハリウッドの連中を抱腹絶倒させて云々と遠大なのですが、はたして映画は無事完成するのか・・・。タイトルについて。クリストファー・ノーラン監督の代表作のひとつに「ダークナイト」があります。その原題は「The Dark Knight」なのですが、それを「The Dark Night」とわざとパロった上で韓国語に訳し、韓国題を「어둔 밤」としたというわけです。映画制作の舞台裏をそのままコメディとして作品化したという点ではあの「カメラを止めるな!」と軌を一にしているな、とも思いましたが、私ヌルボ、本作は観てないのでどこまで当たっているかは不確か。

     【記者・評論家による順位】

①(1) 顔たち、ところどころ  8.86(7)
②(-) ラ・ラ・ランド  8.34(14)
③(2) 万引き家族  8.13(8)
④(4) ソソン里[韶成里](韓国)  8.00(2)
⑤(5) 生き残った子[最後の息子](韓国)  7.67(9)
⑥(6) search サーチ  7.60(10)
⑦(7) ミッション:インポッシブル/フォールアウト  7.56(9)
⑧(9) ザ・スクエア 思いやりの聖域  7.25(12)
⑨(-) 暗い夜(韓国)  7.20(5)
⑩(10) カメラを止めるな!(日本)  7.14(7)

 ⑨「暗い夜」が新登場ですが、この作品については上述しました。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績9月7日(金)~9月9日(日) ★★★

         日本では来月公開のサスペンス「search サーチ」が1位に

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(2)・・search サーチ ・・・・・・・・・・・・・・・・8/29・・・・・・・・・・767,670 ・・・・・・・1,735,548 ・・・・・・・14,698 ・・・・・・1,096
2(1)・・君の結婚式(韓国) ・・・・・・・・・・・・8/22 ・・・・・・・・・・321,342・・・・・・・2,521,822 ・・・・・・・21,144・・・・・・・・905
3(新)・・アップグレード・・・・・・・・・・・・・9/06 ・・・・・・・・・・・89,158 ・・・・・・・・109,581 ・・・・・・・・1,017・・・・・・・・220
4(3)・・上流社会(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・8/29 ・・・・・・・・・・・85,522 ・・・・・・・・717,749 ・・・・・・・・5,898・・・・・・・・572
5(4)・・神と共に-因と縁(韓国) ・・・・・・8/01 ・・・・・・・・・・・53,277・・・・・・12,229,178 ・・・・・・102,303・・・・・・・・449
6(6)・・マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー・・8/08・・・・・・42,319・・・・・・・2,246,498 ・・・・・・・19,213・・・・・・・・363
7(7)・・工作(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/08 ・・・・・・・・・・・32,854・・・・・・・4,947,361 ・・・・・・・42,592・・・・・・・・374
8(75)・・アドリフト・・・・・・・・・・・・・・・・・9/06 ・・・・・・・・・・・31,144 ・・・・・・・・・41,977 ・・・・・・・・・346・・・・・・・・490
9(5)・・目撃者(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・8/15 ・・・・・・・・・・・23,349・・・・・・・2,512,110 ・・・・・・・21,635・・・・・・・・383
10(新)・・オッドソックイーター・・・・・・9/06 ・・・・・・・・・・・16,164 ・・・・・・・・・18,579・・・・・・・・・・129・・・・・・・・354
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「神と共に-因と縁」は、昨年1位の大ヒット作「タクシー運転手」(1,218万人)を抜いて韓国映画歴代12位に。前作「神と共に-罪と罰」(1,441万人.2位)には及ばなくても、10位までには入りそう。
 今回の新登場は3・8・10位の3作品です。
 3位「アップグレード」はアメリカ・オーストラリア合作のSFアクションです。時代は治安用のドローンと自律走行車が一般化した近未来。幸せな生活を送るグレイ・トレイス(ローガン・マーシャル=グリーン)は、ある日車の事故に遭ったばかりか、突如現れたギャングに最愛の妻を殺された上、下半身不随にされてしまいます。復讐心に燃えるグレイに、友人の大富豪アーロン(ハリソン・ギルバートソン)が接近します。彼のねらいはグレイの体にAIチップを埋め込んで<アップグレード>させるという生体実験でした。それはふつうの人間をはるかに超える身体能力を発揮させるというもの。アーロンの提案を受け入れたグレイのスペックはこうしてがアップグレードされたのですが・・・。韓国題は「업그레이드」です。日本公開はありそうですが詳細不明。
 8位「アドリフト」は、アメリカのドラマ&ラブロマンス。この作品の主人公タミー・オールダム・アシュクラフト自身による回想録「Red Sky In Mourning」の映画化作品です。1983年、23歳のタミー・オールダム・アシュクラフト(シャイリーン・ウッドリー)は婚約者のリチャード・シャープ(サム・クラフリン)と一緒に、南太平洋のタヒチ島からアメリカの故郷サンディエゴに向けてヨットで行く仕事を引き受け、航海に出発します。ところが海に出て3週間近くが過ぎた後ハリケーンに遭遇し、ヨットが大破してリチャードは荒れた海に放り出されて死亡します。タミーは愛する人を失った絶望に打ちのめされながらも、その後1人で約41日間漂流を続けてハワイにたどり着きます・・・。・・・というのが元の回想録のあらまし。(で、映画の方は?) 韓国題は「어드리프트:우리가 함께한 바다」です。
 10位「オッドソックイーター」は、チェコのアニメ。今年3月開催された<TAAF2018>でも上映されたチェコのアニメ。物語の主人公は、靴下から生まれ、靴下を食べて生きている<オッドソックイーター>のヒューゴ。韓国題では「양말요정 휴고의 대모험(靴下妖精 ヒューゴの大冒険)」で、<靴下妖精>と訳してますが、→コチラの画像を見ると歯が頑丈そうというか怖そうというか、妖精というにはややブキミ感あり。その<オッドソックイーター>の間でも部族(?)間の争いとかもあり、また彼らの秘密を暴こうとする博士も登場し等々ある中で、主人公ヒューゴは叔父の過酷な訓練を通じて勇敢な<オッドソックイーター>に成長してゆく、という話のようです。今後日本での一般公開があるかは不明のようです。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・・・上映館数
1(新)・・バッド・ウェイヴ・・・・・・・・・・・・・・9/06 ・・・・・・・・・・・4,232・・・・・・・・・・6,345・・・・・・・・・・・52・・・・・・・・・206
2(6)・・万引き家族(日本) ・・・・・・・・・・・・・・7/26 ・・・・・・・・・・・1,433・・・・・・・・162,595 ・・・・・・・・1,345・・・・・・・・・・24
3(新)・・私の最後のスーツ・・・・・・・・・・・・・9/06 ・・・・・・・・・・・1,317・・・・・・・・・・1,815・・・・・・・・・・・15・・・・・・・・・・20
4(4)・・生き残った子 (韓国)・・・・・・・・・・・・8/30 ・・・・・・・・・・・1,197・・・・・・・・・・7,622・・・・・・・・・・・65 ・・・・・・・・・・41
5(3)・・ホイットニー・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/23 ・・・・・・・・・・・1,190・・・・・・・・・18,677・・・・・・・・・・153・・・・・・・・・・23

 1・3位の2作品が新登場です。
 1位「バッド・ウェイヴ」はブルース・ウィリス主演のアメリカのアクション。日本では2017年10月に公開されています。韓国題は「원스 어폰 어 타임 인 베니스」です。
 3位「私の最後のスーツ」については上述しました。
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[韓国映画]早稲田松竹で観た「ペパーミント・キャンディー」 ③申京淑の自伝的小説「離れ部屋」を読んで気づいた3つの共通項

2018-09-05 22:53:37 | 韓国映画(&その他の映画)
       

 →<早稲田松竹で観た「ペパーミント・キャンディー」 ①18年ぶりに知った新事実>
 →<早稲田松竹で観た「ペパーミント・キャンディー」 ②映画で振り返る九老・加里峰・大林洞の40年の歴史>

 韓国の女性作家・申京淑(シン・ギョンスク)の小説「申京淑」(原題:외딴방)を久しぶりに読みました。2005年発行なので、たぶん12~3年ぶりです。
 そして気がついたのは、映画「ペパーミント・キャンディー」との共通項がいくつかあること。それも細かな点で。
 以下、発見の衝撃度の軽いものから順に書いていきます。

⓪1979年当時20歳だった「ペパーミント・キャンディー」の主人公キム・ヨンホ(ソル・ギョング)と同じ時期に、「離れ部屋」の主人公<わたし>も同じ地域(九老洞・加里峰洞)で工員として働いていた。

 私ヌルボ、この点を知っていたから再読したわけで、当然衝撃度は⓪。したがってタイトル中の<3つの共通項>には入っていません。
 申京淑は1963年1月全羅北道井邑市の生まれ。家が貧しく高校進学を断念せざるを得なかった彼女は、すでにソウルに出て夜間学校に通いながら働いている7歳上の長兄を頼りに、従姉と共に上京します。それが1978年の晩夏~初夏のこと。九老工団の入口にある職業訓練院での1ヵ月ほどの訓練(←はんだ付けとか)を経て、九老工団第一団地にある東南電機に配属されました。コンベアで流れてくるステレオの部品にエアドライバーでボルトを打ち込むという仕事です。その後彼女は社内の選抜試験に受かり、昼間は働きながら永登浦女子高校の夜間部に通学することになります。
 当時彼女が起居していた部屋が「離れ部屋」でした。加里峰駅(現在の加山デジタル団地駅)が窓から見える部屋で、この小説で何度か出てくる<陸橋>は先の記事で書いた<輸出の橋>のことと推定されます。
 この小説は、<わたし>が九老工団で働いていた満15~18歳の頃、つまり1978~81年の4年間のことを記しています。この4年間は朴正熙大統領の暗殺(1979年10月)や光州事件(1980年5月)があり、また九老工団では大きな労働争議もありました。そんな出来事も作中に描かれています。韓国ウィキペディアがこの作品について次のように記しているのは私ヌルボとしてもおおいにうなずけます。

 「わたし」を中心とした微視的な叙述が内面性への沈潜という否定的な結果に帰結されるのではなく、個人、そして同じ時代を一緒に生きていく人たちの集団的記憶に還元されることを確認させてくれる作品である。

 キム・ヨンホや彼の初恋の女性ユン・スニム(ムン・ソリ)は<わたし>より数歳年上でしたが、同じ時期に同じ地域で働いていた労働者であり、また同時に同じような体験と記憶を持つ大勢の人たちの象徴的な存在ともいえるということです。

①どちらの作品も、冒頭部分で70年代末の大ヒット曲「나 어떡해」(ナ オットッケ.僕はどうしよう)が出てくる。

 「ペパーミント・キャンディー」では、最初の99年春の<野遊会>の章でヨンホが絶望的な雰囲気でこの歌を絶叫します。最後の<遠足>の章(79年秋)では、仲間たちと一緒に車座になって歌っています。
 一方、「離れ部屋」の冒頭。78年の晩春~初夏の頃、田舎の家にいた(数え年)16歳の<わたし>がラジオのスイッチを入れると流れてきた歌が「わたし、どうしよう」だったのです。つまり、同じ曲。(翻訳の(故)安宇植さん、女性の歌と思ったようで、歌詞を「そんなの嫌よ、ほんとに嫌よ、行かないで」と訳していますが。)
 この歌を聴いた16歳の<わたし>は、「思わずからだが竦(すく)むくらいびっくりして」ラジオのスイッチを切ってしまいますが、その後もラジオのスイッチを入れるとこの歌が流れてきて、「どうやら都会は、「わたし、どうしよう」が占領しているみたい」と思い、「何度か聴くようになると・・・・その歌を一緒になってうたっていた」ということになります。
 今その1977年の大学歌謡祭の大賞受賞曲を→YouTubeで聴いても、当時の韓国の人たちがそれほど熱狂したとは、感覚的にはわかりません。
 ※現代の、T-araが歌う「나 어떡해」(→コチラ)と聴き比べてみてください。(※ユン・ミンスも人気歌謡番組「私は歌手だ」でこの曲を歌っています。→コチラ)
 考えて見れば、今の日本の若い世代が1968年頃爆発的な人気を集めたグループ・サウンズの曲を聴いてどれほどコーフンするでしょうか? オックスの歌で失神(!)する人が1人でもいるか??(笑) それと同じようなものかも。
 韓国ウィキペディアの「나 어떡해」の項目を見ると「韓国の全国カラオケの累積集計で、今までで最も多く歌われた歌の1つとも言われている」とか。そういえば数日前、スマホでなんとなく韓国のSBSラブFMを聴いていたら、20世紀のK-POPベスト何十だかというのをやっていて、そのラストつまり第1位でしたね。
 つまり、多くの韓国人の心に残る懐メロということなのですね。
 そういった点では、「ペパーミント・キャンディー」と「離れ部屋」の共通項とはいってもその時代の定番なのでそんなに意外ではないかも。ただ、それが冒頭に出てくるという点に私ヌルボは「!」と思ったのです。

②1日に2万個のキャンディーを包むという製菓会社の女性労働者のこと

 前々回の記事でも書きましたが、「ハッカ飴がお好きなんですか?」というキム・ヨンホの問いに、ユン・スニムが「私の工場では1日に千個のハッカ飴を包むんです」と答えるシーンがありました。
 「離れ部屋」では、<わたし>が通う夜学の同級生で製菓会社に勤めているアン・ヒャンスクが登場します。隣席の彼女は左ききなので肘がぶつかり合ったりすることもありました。ある日<わたし>が彼女の手を取ると、「手の皮膚がごわごわを通り越して硬くなっていた」ので急いで離してしまいます。<わたし>の気持ちに気づいたらしいヒャンソクがにこっとして言います。

 「キャンディーを包装する作業をしているの。磨り減ってこうなったの」
 「1日にどれくらい包むのよ?」
 「普通は2万個くらいかな」


 ユン・スニムが言う1日に千個という数字は少なすぎる、と映画を観た時思いました。逆に1日2万個はずいぶん多い感じ。私ヌルボ、目の前にキャンディーと包み紙があると想定しておよその時間を測ってみました。すると10秒で4個。1分で24個。1時間で約1420個になります。この数字だとスニムの仕事は1時間足らずで終わってしまいます。一方ヒャンソクは10時間労働でも2万個に達しません。
 労働者詩人朴ノヘは九老工団の女工たちの生活を1日14時間/手足がパンパンに脹れるほど/有名ブランドの高い服を作っても/高級オーディオの調律をしても/自分の分け前はない」と書きました。
 ヒャンソクがもし14時間働いたらちょうど2万個のキャンディーを包み終えることができます。(根拠のない推測ですが、この10秒間に4個のペースの、1.5倍くらい速いスピードで包んでいたのではないでしょうか? だとすると、実働時間10時間くらいか?)

 さて、上記の会話に続く部分にも注目です。
 アン・チャンスクは<わたし>の手を取っていいます。

 あんたの手って、ほんとに柔らかいのね。あんたって、会社で遊んで食べさせてもらっているみたい」

 「ペパーミント・キャンディー」の<祈祷>の章。1984年秋。新米刑事のヨンホがいる警察署にスニムが面会に来て、(前々回の記事で書いた)工団食堂で2人は久しぶりに話をします。
スニムがヨンホに言います。(セリフは必ずしも正確ではありません。実際はもう少し長い。)
 「ふと思ったんだけど、ヨンホさんは優しい手をしてる。初めて会った時、ヨンホさんの手を見て、こういう手をしている人は優しい人だろう思ったの」
 ヨンホは、つい今しがた警察で初めて学生活動家を拷問したところでした。警察のトイレで文字通り「汚れた手」を洗っていると、入ってきた先輩が言います。「その臭いはよく落ちないぞ」
 工団食堂のシーンはまさにその直後です。
 スニムの言葉に、ヨンホはわざとらしく手を広げ、「僕の手はほんとに優しいよ」と言いながら、水を持ってきた食堂の娘(ホンジャ(キム・ヨジン)の腿をあからさまに撫でたりします。
 もちろん、ヨンホがその手の持つ<優しさ>を自ら裏切ったことへの自責の裏返し的な行動ですが、スニムがヨンホの手が優しいと思ったのも、自分の手が(ヒャンソクのように)硬い手だったからかもしれません。

③ユン・スニムは、「離れ部屋」にも登場している。

 「離れ部屋」(翻訳書)でユン・スンニムという名前を見た時には驚きました。ハングルではユン・スニムと同じ윤순임、漢字だとたぶん尹順任あたりです。(尹純任かも。) つまりスニム=スンニム。日本語表記の違いです。(以下、小説の登場人物の方はスンニムと書きます。)
 スンニムは製菓会社ではなく、同じ東南電機の先輩工員で、歳は<わたし>の5~6歳上。79年だと満22歳前後です。<わたし>と共同生活をしていた従姉が片思いしていた工業高校生の片思いの相手がスンニム・オンニでした。従姉の会話の中で<わたし>から見たスンニム・オンニの印象は・・・。
 「あのオンニって、凄く綺麗だもの。髪も長いし、目が毎日にこにこしているじゃない。確かにあたしだって、あのオンニと顔を合わせると気分が爽やかになるもの、男の子たちだったら余計にそうなんじゃなくて」
・・・とすこぶる好印象。
 後の方のページで、<わたし>は更衣室に置いてあったスンニム・オンニの作業服のポケットからつい1万ウォン札の入った封筒をつい抜き取って会社から早退してしまいます。しかし彼女の仕業と見当をつけたスンニム・オンニは正面切って追及はしません。<わたし>の部屋のドアに「封筒を返してください」等の短い手紙を挟んだだけです。翌日、出勤できない<わたし>を訪ねて来たスンニム・オンニに封筒を手渡すと、「ありがとう」と言ってにっこりします。
 その後しばらくして、欠勤の続く彼女を訪ねてきたのもスンニム・オンニでした。そして自分が高校を中退したことを打ち明けます。学校で何気なしに開けた筆記道具入れに入っていた千ウォン札2枚がそのきっかけ。「そのおカネを自分が盗むとは、夢にも思わなかったわ」と彼女。その後学校には行かず、結局母親のお金を盗んで家出をして、「思ってもみなかった、ここへ流れ着いたのよ」という話でした。そして「明日から会社へでておいで」というオンニの言葉に応えて翌朝<わたし>は会社に行きます。
 スンニム・オンニは、組合員としての意識も高い女性でした。<わたし>に声をかけて、組合の活動家のミス・イの部屋に怪我の見舞いに行ったりもします。(ミス・イは会社側の弾圧により手足を縛られたまま地下の取調室に下る階段で足蹴にされ、足にギブスをしています。)
 80年に入り、リストラが進められる状況になった東南電機では、退職金等の問題が組合の課題となり、スンニム・オンニもそんな話をしてくれますが、大学進学の見通しが立った<わたし>は結局辞表を出します。スンニム・オンニは<わたし>をいろいろ説得しますが、その時を最後に、2人が会うことはありませんでした。小説では、続けて「彼女は産業の現場の、風俗画の世界に閉じこめられたりはしなかっただろう」以下、ほぼ1ページにわたってスンニム・オンニのことを書き綴っています。
 ・・・と、延々と「離れ部屋」のユン・スンニムのことを書いたのは、「ペパーミント・キャンディー」のユン・スンニムとずいぶんイメージが重なると思ったからです。
 なお、この映画も小説も90年代の代表的な作品の1つなので、ここまで書いたことは韓国ではかなり知られてることだろうと思って検索したら、意外なことにどちらにも同じ名前の女性が登場することを書いた記事は1つ(→コチラ)しか見つかりませんでした。[2022年8月6日の補足] リンク先のURLはなくなっています。いろいろ検索してみましたが、元の記事も類似の記事も見つかりません。

 「ペパーミント・キャンディー」を観た皆さんは上記の共通項を読んでどう思いますか?
 私ヌルボは、イ・チャンドン監督は間違いなくこの小説を読んだと思います。1995年発行でずいぶん注目された小説だし、監督自身小説家でもあるし、労働者の現実を描いた映画「美しい青年,全泰壱(チョン・テイル)」(1995)で脚本も書いているし。ただ、ちょっと②のキャンディーの個数等、不確かな記憶のままの部分もあるかもしれませんが・・・。

 最後に、関係の画像を2つ貼っておきます。
    
 左は<わたし>の「離れ部屋」があった1980年代の九老工団第3団地、つまり今の加山デジタル団地駅近くの街並み。今の街の景観からは全然想像がつきませんね。右は<わたし>の職場・東南電機のあった場所に現在建っているエース・テクノタワー2次という高層ビル。1つ前の記事に書いた<輸出の女神像>から西に200mほどの場所にあります。

 前回の記事の最後に「短い記事でまとめる予定です」と書いた言葉は結果的にウソになっちゃいましたね、ははは
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韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [8月31日(金)~9月2日(日)]

2018-09-05 01:27:10 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▸→<早稲田松竹で観た「ペパーミント・キャンディー」 ①18年ぶりに知った新事実>
 →<早稲田松竹で観た「ペパーミント・キャンディー」 ②映画で振り返る九老・加里峰・大林洞の40年の歴史>
 →<早稲田松竹で観た「ペパーミント・キャンディー」 ③申京淑の自伝的小説「離れ部屋」を読んで気づいた3つの共通項>
 この映画の最終章が1979年。そのちょうど20年後が映画の公開年。で、来年が映画公開から20年か。なんか「わが身ひとつはもとの身にして」という言葉が脳裏に浮かんできます。

▸<映画生活>の平均評点が65点と低目ということを知りながらも「スターリンの葬送狂騒曲」を観に行ったのは、幼時のおぼろげな知識を整理しようと思ったからです。物心がついた時分にはすでにスターリンは世を去っていました。しかし、後に権力を掌握したフルシチョフ以外にも、ブルガーニン、モロトフ、マレンコフ等の名前は記憶に残っています。名前だけですが。やや後に、すでに消されていたベリヤという人物がいることを知りました。この映画を観る前の予備知識はほとんどそれだけ。で、この映画を観ていろんなことがわかりました。もちろん史実とフィクションの継ぎ目は(ウィキベディアによる安直な)事後学習が必要でしたが。そんなわけで、ヌルボ個人としてはおもしろくためになった映画でした。しかし、この作品が<コメディ>に分類されているのはいかがなものか? 史実をベースにしたドラマがコメディに見えるとしたら、それは現代日本の視点から見ているからでは? たとえば、朝鮮民主主義人民共和国の初期、金日成が同じ社会主義者の同志たちを次々とスパイのレッテルを貼ったりして粛清して独裁体制を作り上げていった過程も見方によっては喜劇になるかもしれません。(もちろんスリラーにもなりそう。) そんな殺し合いレベルではないにしても、現在日本でいろいろ繰り広げられている政治劇も、コメディっぽい事例がいくつもありそうな・・・。「笑える」とか「笑えない」とか言ってる場合じゃなさそうですけどね。
    
「朝鮮日報」8月31日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)

새로운 스토리텔링의 스릴러


 《週末の劇場街》で紹介

  「search/サーチ」



   新しいストーリー・テリングのスリラー



 「生き残った子」[最後の息子]
   月並を超える叙事の力 ★★★☆



 「ハッピーボイス・キラー」

   陰鬱と愉快が混ぜこぜ ★★★



 「上流社会」

   初め平凡、最後なお微弱 ★★☆

 各作品とも以下の記事の中で紹介しています。

         ★★★ NAVERの人気順位(9月4日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
          ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。

①(2) ダンガル きっと、つよくなる  9.51(1,625)
②(1) カウンターズ(韓国)  9.49(193)
③(3) カメラを止めるな!(日本)  9.30(228)
④(-) あなたの宇宙は大丈夫ですか[大観覧車](韓国・日本)  9.29(34)
⑤(6) インクレディブル・ファミリー  9.27(9,728)
⑥(7) 1987、ある闘いの真実(韓国)  9.25(31,321)
⑦(9) ブレス しあわせの呼吸[ブリーズ]  9.25(245)
⑧(-) 万引き家族(日本)  9.23(2,430)
⑨(8) 劇場版 ハロー カボット:白亜紀時代(韓国)  9.23(2,001)
⑩(10) 名探偵コナン ゼロの執行人(日本)  9.20(2,518)

 ④「あなたの宇宙は大丈夫ですか」が今回の新登場です。日韓合作映画で、[大観覧車(대관람차)]の方が韓国題です。船舶事故で行方不明になった先輩のテジョン(チ・デハン)の代わりに大阪に出張に来た船舶会社の代理であるウジュ(カンドゥ)は、出張の最後の日テジョンと似た男性を見かけ、何も考えずに後を追います。<大正>という名の見慣れない街に着いたウジュは、ギターの音に惹かれて<Pier 34>という小さなバーに入ります。バーのオーナーのスノウ(スノウ)のギターを聴いているうちにテジョンを思い出しながら眠り込んでしまったウジュは、翌朝、帰りの飛行機に乗り遅れます。会社に状況を報告していたウジュは、部長にこっぴどく叱られて衝動的に会社を辞め、行方不明のテジョンを探すことを決意します。再びバー<Pier 34>に来たウジュは、マスターからギターを習う少女・はるな(堀春菜)と出会う。そのままバーの居候となったウジュは、思いがけない久々の休暇を大阪で過ごすことになります・・・。今年の<大阪アジアン映画祭>で初めて上映された作品。なお、韓国版ポスターに大きな写真が載っている大観覧車は大阪・天保山にあります。日本での一般劇場公開は未定なのかな?

     【記者・評論家による順位】

①(1) 顔たち、ところどころ  8.86(7)
②(2) 万引き家族  8.13(8)
③(3) 1987、ある闘いの真実(韓国)  8.08(12)
④(4) ソソン里[韶成里](韓国)  8.00(2)
⑤(-) 生き残った子[最後の息子](韓国)  7.67(9)
⑥(-) search サーチ  7.60(10)
⑦(6) ミッション:インポッシブル/フォールアウト  7.56(9)
⑧(9) インクレディブル・ファミリー  7.33(9)
⑨(10) ザ・スクエア 思いやりの聖域  7.25(12)
⑩(-) カメラを止めるな!(日本)  7.14(7)

 今回の新登場は⑤⑥の2作品です。
 ⑤「生き残った子」は韓国のドラマ。新鋭シン・ドンソク監督の初の長編ですが、今年の第68回ベルリン国際映画祭で新人監督の登竜門とされるフォーラム部門に公式招待されたり、ソウル独立映画祭で最優秀長編賞を受賞したり等々、昨年からいろんな映画祭で上映され、高い評価を得ています。日本でも7月川口市で開かれた<SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018>では審査員特別賞を受賞しました。(その時の邦題が「最後の息子」。) 以下あらすじ。息子のウンチャンを事故で失った父親ソンチョル(チェ・ムソン)と母親ミスク(キム・ヨジン)は、息子が命を懸けて助けた少年のギヒョン(ソン・ユビン)と偶然出会います。悲しみに沈んでいたソンチョルとミスクはギヒョンを通して喪失感に耐え、一方、頼れるところがなかったギヒョンはソンチョルとミスクに対して心を開いていきます。ところがある日、ギヒョンの思いもよらなかった告白により3人の関係は揺らぐのですが・・・。(もっと詳しく知りたい方は→コチラ。原題は「살아남은 아이」です。川口での上映の時に観に行くべきでしたね。って、今になって知りましたが・・・。ぜひ一般公開してほしい!
 ⑥「search サーチ」については後述します。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績8月31日(金)~9月2日(日) ★★★

         「君の結婚式」が2週連続1位

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・君の結婚式(韓国) ・・・・・・・・・・・・8/22 ・・・・・・・・・・568,304・・・・・・・1,948,645 ・・・・・・・16,430・・・・・・・・969
2(新)・・search サーチ・・・・・・・・・・・・・・・8/29 ・・・・・・・・・・446,879 ・・・・・・・・570,876 ・・・・・・・・4,910・・・・・・・・778
3(42)・・上流社会(韓国) ・・・・・・・・・・・・・8/29 ・・・・・・・・・・291,222 ・・・・・・・・509,219 ・・・・・・・・4,187・・・・・・・・841
4(4)・・神と共に-因と縁(韓国) ・・・・・・8/01 ・・・・・・・・・・114,439・・・・・・12,126,436 ・・・・・・101,477・・・・・・・・537
5(2)・・目撃者(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・8/15 ・・・・・・・・・・102,080・・・・・・・2,453,652 ・・・・・・・21,156・・・・・・・・570
6(5)・・マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー・・8/08・・・・・・90,301・・・・・・・2,159.346 ・・・・・・・18,503・・・・・・・・452
7(3)・・工作(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/08 ・・・・・・・・・・・86,336・・・・・・・4,877,536 ・・・・・・・42,029・・・・・・・・535
8(6)・・私を振ったスパイ・・・・・・・・・・・・8/22 ・・・・・・・・・・・29,532 ・・・・・・・・235,061 ・・・・・・・・2,081・・・・・・・・193
9(7)・・モンスター・ホテル・・・・・・・・・・・8/08 ・・・・・・・・・・・23,560・・・・・・・1,056,045 ・・・・・・・・7,816・・・・・・・・208
       クルーズ船の恋は危険がいっぱい?!
10(62)・・ゼロ・グラビティ・・・・・・2013/7/25 ・・・・・・・・・・・21,187・・・・・・・3,262,924 ・・・・・・・32,026・・・・・・・・・51
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 [多様性映画]の方も含めて、かなり以前の作品の再上映が目につきます。これが今たまたまなのか、今後も続くのかはよくわかりません。しかし考えてみれば、「トップガン」といった80年代のヒット作も30歳未満の人にとっては産まれる前の作品なんですよねー、って当たり前ですけど。まあ再上映が過去を知ったり世代間の疎通につながるとしたらけっこうなことですが。
 今回の新登場は2・3・10位の3作品です。
 2位「search サーチ」はアメリカのサスペンス&ドラマ。木曜日の夜、娘のマーゴにかかってきた不在着信3通。父親のデビッドは、その後連絡のない娘が行方不明になったことを知ります。警察の調査が開始されますが、決定的な手がかりが出てこない中、失踪した夜にマーゴが向かっていたところが明らかになり、新事実が発見されます。捜査の糸口となったのはマーゴのパソコンでした。Google、YouTube、フェイスブック等々から想像もできなかった娘の真実が徐々に明らかになっていきます・・・。韓国題は「서치」です。
 3位「上流社会」は、韓国のドラマ。学生たちから人気と尊敬を一身に受ける経済学教授のテジュン(パク・ヘイル)は、偶然の機会から期待の新人政治家として国会議員選挙に出馬することになります。一方、彼の妻で未来美術館の副館長の役職にある彼の妻スヨン(スエ)は館長になる機会を得ます。しかし、スヨンの美術品取引とテジュンの選挙で馬の裏で未来グループと民国党との裏取引があったことが明らかになり、テジュンとスヨンの上流社会進出はそり目前で危機に直面します。そこでテジュンとスヨンは未来グループと民国党に新しい取引を提案するのですが・・・。原題は「상류사회」です。
 10位「ゼロ・グラビティ」は、2013年のアメリカのサスペンスの再上映。韓国題は「그래비티」です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・・・上映館数
1(新)・・ハッピーボイス・キラー・・・・・・・・8/29 ・・・・・・・・・・・6,405・・・・・・・・・・9,498・・・・・・・・・・・56・・・・・・・・・・61
2(18)・・トップガン ・・・・・・・・・・・・・1987/12/19 ・・・・・・・・・・・6,346・・・・・・・・・12,775・・・・・・・・・・104・・・・・・・・・153
3(2)・・ホイットニー・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/23 ・・・・・・・・・・・2,433・・・・・・・・・15,363・・・・・・・・・・128・・・・・・・・・・40
4(新)・・生き残った子 (韓国)・・・・・・・・・・・8/30 ・・・・・・・・・・・2,399・・・・・・・・・・4,431・・・・・・・・・・・39 ・・・・・・・・・・65
5(新)・・坂道のアポロン(日本) ・・・・・・・・・8/29 ・・・・・・・・・・・1,981・・・・・・・・・・5,752・・・・・・・・・・・46 ・・・・・・・・・・60

 3位以外の4作品すべてが新登場です。
 1位「ハッピーボイス・キラー」は2014年のアメリカのスリラー&コメディ。日本では2015年に公開されています。韓国題は「더 보이스」です。
 2位「トップガン」は、トム・クルーズ主演で1986年公開され大ヒットしたアメリカのドラマ&アクションの再上映。韓国題は「탑건」です。
 4位「生き残った子」については上述しました。
 5位「坂道のアポロン」は、日本では今年3月公開の、私ヌルボの極私的感動作。韓国題は「언덕길의 아폴론」です。<언덕길(丘の道)>の方が<비탈길(坂道・斜面の道)>よりいいのか。
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[韓国映画]早稲田松竹で観た「ペパーミント・キャンディー」 ②映画で振り返る九老・加里峰・大林洞の40年の歴史

2018-09-03 15:36:16 | 韓国映画(&その他の映画)
 →[韓国映画]早稲田松竹で観た「ペパーミント・キャンディー」 ①18年ぶりに知った新事実

 ハンギョレ系のソウル情報サイト<ソウル&>に、「思い出と希望を訪ねて<Gバレー>を歩く」という記事(韓国語)がありました。(→コチラ。) その記事は、次のような問いから始まっています。

 沈相奵(シム・サンジョン)金文洙(キム・ムンス)孫鶴圭(ソン・ハッキュ)朴ノヘ「離れ部屋」「グリーン・フィッシュ」「ペパーミント・キャンディー」・ディスコ(韓国語でGoGo장)の共通点は何か?
 沈相奵、金文洙、孫鶴圭はよく知られた政治家、朴ノヘは詩人、「離れ部屋」は申京淑(シン・ギョンスク)の小説です。

 正解は九老工団先の記事の末尾で、「とりあえずの結論は、「ペパーミント・キャンディー」は<光州事件の映画>であるとともに、<九老工団関係の映画>でもある」と書いたので、本記事を続けて読んでいる方はすぐわかるかも。
 なお、沈相奵、金文洙、孫鶴圭は、かつてこの九老地区で労働運動に携わった政治家です。朴ノヘ[本名:朴基平(パク・ギヒョン)]は1984年詩集「労働の夜明け」を発表して大きな衝撃を及ぼした労働者詩人。(<南韓社会主義労働者同盟>を結成し、国家保安法違反で死刑宣告を受けたこともある)、「離れ部屋」は、1980年前後に九老工団で労働者として働きながら夜間高校で勉強し、90年代には韓国の代表的作家の1人となった申京淑の自伝的小説です。そして「グリーン・フィッシュ」と「ペパーミント・キャンディー」はイ・チャンドン監督による映画です。

 私ヌルボが、かつて工業団地があったこの地域に行ったのは2016年11月でした。その記録は→コチラの過去記事参照。
 そこでも書きましたが、まず訪れたのは加山デジタル団地駅至近の九老工団労働者生活体験館。

    
 労働者生活体験館の外観(左)と、その地下に再現されている当時の労働者たちが起居していた「蜂の巣(벌집)」とよばれた2、3坪ほどの狭い部屋。
 1964年以降韓国初の産業団地として造成された九老工団は朴正熙大統領による輸出主導型の開発政策の象徴するもので、1980年代半ばまでここは輸出産業の中心地でした。
 私ヌルボ、生活体験館でのにわか学習で、その近く(?)に、輸出製品を積み出していったという<輸出の橋>や、女性労働者を讃える<輸出の女神像>があることを知りました。しかし場所を道行く人に訊ねたりしたもののよくわからず、断念。後で調べてみたら・・・。

     
 この車が渋滞気味の跨線橋が<輸出の橋>だったとは!(左画像) 川に懸かっている橋かと思ってました。この橋の下は、近年日本人観光客にも人気のアウトレット街です。そして<輸出の女神像>は東に直線距離で約2kmの九老工団デジタル団地駅に近いビルの前にあります。
 真ん中の画像正面のKICOXベンチャーセンターのビルはかつての九老工団の中心というべき所に2000年建てられました。人件費の安い東南アジアへの工場移転が進む等々、産業構造の変化により90年代に入り沈滞していった九老団地一帯は、21世紀に入りゲーム産業等、先端産業の街へと面貌を一新しました。<九老工団>に代わって案出された<Gバレー>という言葉もデジタル団地化を象徴するものです。(※九老(Guro)のGとシリコンバレーのバレーの合成語。) 駅名も2004年九老工団駅が九老デジタル団地駅となり、翌05年には加里峰駅が加山デジタル団地駅に改称されました。そして今、この<輸出の女神像>の前には「신산업의 터전(新産業の拠点)」と刻まれた大きな石柱が立っています。
 <輸出の女神像>は、元はといえば1974年に工業団地創立10周年を記念して造られた<輸出の女人像>でしたが、ビル建設が進む中花壇の隅に追いやられていたのを、2014年工団建設50周年のイベントで元の位置に据え直したものとのことです。

 このように街の景観が大きく変貌した今、とくに目につくのは中国の簡体字と赤い色の看板の店舗、とくに食堂です。つまり、90年代以降この一帯は中国朝鮮族の集住地域になっているのです。

 右は、南九老駅近くの大通り(九老道路)に面した雑居ビル。
 <中國网吧>(ネットカフェ)や、<중화노래 연습장>(中華歌練習場.カラオケ)といった看板があります。
 さらに大林(テリム)駅辺りまで行くと、ここにはちょっと知られた(?)チャイナタウンがあって、(朝鮮族自治州の)延辺料理、とくにヤンコチ(양꼬치.羊肉の串焼き)や犬肉料理の食堂が目立ちます。
 多くの観光客が訪れる横浜の中華街とは雰囲気が全然違って、朝鮮族の人たちが中国での食文化をそのまま持ち込んだ感じの街です。

    
 
 ところで、韓国映画ファンの皆さんはこの大林洞辺りを舞台にした最近の韓国映画をご存知でしょうか? いくつかあります。いや、「いくつも」と言った方がいいかもしれません。答えは後の方で書きます。

 ここで、加山洞~加里峰洞~大林洞一帯の地図を見てみましょう。

 ①加山デジタル団地駅 ②南九老駅 ③大林駅 ④九老デジタル団地駅 ⑤九老工団労働者生活体験館 ⑥輸出の橋 ⑦輸出の女神像 ⑧チャイナタウン
 この地図の縦横はおよそ3kmです。
 また、この上の地域全体は、ソウル駅(右の地図の右上印)の南西方向に位置しています。

 ふー。やっとここで本記事のタイトル<映画で振り返る九老・加里峰・大林洞の40年の歴史>にたどりつきました(笑)。
 私ヌルボ、韓国外国語大学校のサイト内に<文学と映画の中の加里峰洞(大林洞)>という記事(韓国語)があるのを見つけました。(→コチラ。)
  文学の方は、上記の「離れ部屋(외딴방)」や映画化された李文烈の小説「九老アリラン(구로 아리랑)」が当然入っているな、というのをチラッと見て、映画の方に目を移すと、1976~2017年の21作品がリストアップされているではないですか。
 日本で公開された作品は約半分。長くなりついでに全部転載します。
 ※日本公開作品は邦題をつけておきます。(漏れがないかな?) それにしても、韓国映画ファンにはたぶんおなじみの<輝国山人 ホームページ>に日本未公開の→「高校ヤルゲ」や→「薔薇色の人生」の記事まであるのは、<韓国映像資料院 古典映画コレクション>のDVDを観て書かれたようですが、たいしたものです。

・고교얄개[高校ヤルゲ](1976) ソク・レミョン監督
・불타는 소녀[燃える少女](1977) キム・ウンチョン監督
・바람 불어 좋은 날[風吹く良き日](1980) イ・ジャンホ監督 邦題:風吹く良き日
・어둠을 뚫고 태양이 솟을 때까지:구로항쟁의 진상을 밝힌다[闇を突き抜けて太陽がほとばしる時まで:九老抗争の真相を明かす(1987) イ・サンビン監督 ※ドキュメンタリー
・구로아리랑[九老アリラン](1989) パク・ジョンウォン 邦題:九老アリラン
・내친구 제제[僕の友だちジェジェ](1989) イ・セリョン監督
・장미빛 인생[薔薇色の人生](1994) キム・フンジュン監督
・초록물고기[緑の魚](1997) イ・チャンドン監督 邦題:グリーンフィッシュ
・박하사탕[ハッカ飴](1999) イ・チャンドン監督 邦題:ペパーミント・キャンディー
・눈물[涙](2001) イム・サンス監督 邦題:ティアーズ
・돌아보면[振り返ってみれば](2001)キム・ソンミン監督 ※ドキュメンタリー
・가리봉 엘레지[加里峰エレジー](2002) イ・ギウォン(脚本) ※MBCの特集ドラマ
・달팽이의 꿈[カタツムリの夢](2003) キム・ソンミン監督 ※ドキュメンタリー
・가리베가스[カリベガス](2005) キム・ソンミン監督 ※ドキュメンタリー
・전우치[チョン・ウチ](2009) チェ・ドンフン監督 邦題:チョン・ウチ 時空道士
・황해[黄海](2010) ナ・ホンジン監督 邦題:哀しき獣 THE YELLOW SEA
・신세계[新世界](2013) パク・フンジョン監督 邦題:新世界
・가리봉[カリボン](2013) パク・ギヨン監督 ※ドキュメンタリー
・위로공단[危路工団](2015) イム・フンスン監督 邦題:危路工団 ※ドキュメンタリー
・청년경찰[青年警察](2017) キム・ジュファン監督 邦題:ミッドナイト・ランナー
・범죄도시[犯罪都市](2017) カン・ユンソン監督 邦題:犯罪都市

 日本公開の11作品中私ヌルボが観たのは7作品か。九老工団の歴史をたどった「危路工団」を観られたのはラッキーでした。一方、観るつもりでいた「ミッドナイト・ランナー」を見逃したのは残念。
 とくに近年は朝鮮族がらみの犯罪物が続いていて、この「ミッドナイト・ランナー」に対しては韓国内の中国朝鮮族団体が上映中断と制作陣の謝罪を要求したとのニュースが報じられていましたね。(→コチラ参照。)

 今回の記事は、ほとんど「ペパーミント・キャンディー」自体にはふれませんでしたね。
 ところが、さらにこの続きを書くことに急遽決定しました。そして今度こそは「ペパーミント・キャンディー」に直接関わる、(前回とは違って)他の韓国映画ファンも知らない<新発見>を、短い記事でまとめる予定です。(ウソの3点セットみたい。)

 →<早稲田松竹で観た「ペパーミント・キャンディー」 ③申京淑の自伝的小説「離れ部屋」を読んで気づいた3つの共通項>
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