ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画の興行成績 [8月5日(金)~8月7日(日)]と人気順位 ►イ・ジョンジェの初監督作「ハント」は今世紀の話に非ず ►今ぜひオススメの韓国映画「モガディシュ」と「キングメーカー」

2022-08-11 23:48:45 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶今回の記事で注目の韓国映画は「ハント」です。
 人気俳優イ・ジョンジェの監督デビュー作で、8月10日の韓国公開に先だって<第75回カンヌ映画祭(2022)>の<ミッドナイトスクリーニング部門>に招待され上映され好評を得ました。(※この部門は非競争部門で、アクション、スリラー、ホラー、ファンタジー、SF等の作品を紹介するもので、作品性と大衆性を備えた作品が選定される。)
 物語のアウトラインは安企部[安全企画部]の組織内に潜んでいる北朝鮮のスパイを摘発するため、安企部海外チームの要員パク・ピョンホ(イ・ジョンジェ)と国内チームの要員キム・ジョンド(チョン・ウソン)が競い合うという諜報アクションドラマです。
 ここで<安企部>という言葉に引っかかる方もいらっしゃるのでは? 少なくとも今の韓国の諜報機関ではないですよね。韓国の現代史をたどると、私ヌルボのような団塊の世代なら<KCIA>という言葉が記憶に残っている方も多いのでは? あれは<大韓民国中央情報部>の略称で、朴正熙がクーデターで政権を握った直後の1961年にアメリカの中央情報局[CIA]をモデルに設置した諜報機関で、北朝鮮に対する諜報活動や工作員の摘発だけでなく、金大中事件(1973)や民青学連事件(1974)、学園浸透スパイ団事件(1975)等のような軍事独裁政権への反対勢力の弾圧にも(時には容疑をでっち上げたりもして)「大きな役割」を果たしてきました。
 その<KCIA>を、朴正熙暗殺の翌々年(1971)新しい権力者全斗煥が中央情報部を拡大・再編して国家安全企画部[安企部]を創設します。そして1999年金大中政権が国家安全企画部を廃止し、代わって大幅に縮小して新設した機関が国家情報院[国情院]です。
   1961 中央情報部[KCIA] ➡ 1971 国家安全企画部[安企部]  ➡ 1999 国家情報院[国情院]
 つまり、この「ハント」では時代設定が現代ではないのです。まあ国情院の時代になってからは進歩系政党も3度政権を担当する中で対北朝鮮政策も大きく変わってきたし、とくに文在寅政権に至っては国情院長が「北朝鮮に対する一切の工作活動を禁止する」と命じたり、国内の北朝鮮スパイに対する対共捜査権を国情院から警察に移管すると発議して国会情報委員会全体会議で可決されたりと、昔のモノサシだと彼ら自身が北朝鮮に内通しているのでは?というレベルにまでなりましたからねー。そんなわけで現代の話にすると監督が意図するスパイ&アクションを作るには不適当で、安企部なんでもありだった1980年代を背景にしたということです。そして実際の事件をモチーフに(←ホンマか?)映画的想像力を加味したとのことです。
 なお、本作にはファン・ジョンミン、イ・ソンミン、ユ・ジェミョン、パク・ソンウン、チョ・ウジン、キム・ナムギル、チュ・ジフンなどの名前だけでも信頼感を与える俳優たちが大挙友情出演しています。この数と顔ぶれを見るとふつうの友情を超えたものが何かあるのかもしれません。

▶昨年映画館で観た映画が150本。金と時間をそんなに費消していいのか?と深~く反省し、今まで観るべき映画を選ぶ指針としてきた<onsenmaru blog>を、今年は何を観ないで済ませるかを判定するための参考にしています。その結果約2割減で、現時点で74本。
 その中でこれはぜひ観てほしい!と思う韓国映画を2つ紹介します。1つ目は「モガディシュ 脱出までの14日間」です。
 韓国が国連加盟のために東奔西走していた時期の1990年のソマリアの首都モガディシュを舞台にしたアクション&ドラマで、一触即発の内戦が起きて孤立状態に置かれた現地韓国大使館の職員と家族は銃弾が飛び交う中不安な一日一日を送っていると北朝鮮大使館の一行が助けを求めて韓国大使館の門を叩くのですが・・・という実話に基づく話なのですが、エンタメとして十分に楽しめ、昨年の韓国では一番のヒット作となりました。そればかりか昨年~今年の韓国の映画賞で、<青龍映画賞>の最優秀作品賞等5冠、<百想芸術大賞>の大賞等3冠、<釜日映画賞>の最優秀作品賞等6冠、<韓国映画評論家協会賞>の監督賞等4冠と、数多くの映画賞を受賞したのもうなずけます。北朝鮮の人物が登場しても「双方が困難な状況下で力を合わせる」といった(韓国の進歩系によくある)ベタベタしたシーンがないのもよい。ただ、上映館が少ないのが残念です。
 もう1つは「キングメーカー 大統領を作った男」。明日8月12日公開ですが、私ヌルボは先々週試写会で観ました。1967年、確たる信念を持って挑戦する政治家キム・ウンボム(ソル・ギョング)の選挙事務所に「世の中が変わるありさまを見てみたいです」とやってきた男ソ・チャンデ(イ・ソンギュン)は選挙に勝つためには手段を選ばぬ辣腕の選挙参謀でした。彼の力でウンボムは以後選挙に連勝して野党・新民党内で頭角を現し、やがて同じ党内の若手実力者でウンボムの生涯のライバルとなったキム・ヨンホ(ユ・ジェミョン)と大統領選の党代表候補の座を争うことに。その大統領とはクーデター以降独裁者として長期政権を狙うパク・キス大統領(キム・ジョンス)で、ウンボムはその後彼によって大きな<事件>に巻き込まれることに・・・。
 コチラの方はまさに韓国の現代政治史に密着した作品です。ただ、物語の焦点は各政治家間の争いではなく、ウンボムとチャンデの理念をめぐる対決。その両俳優の演技が光ります。
 上記のウンボムは金大中元大統領でチャンデは実際に彼の選挙参謀だった厳昌録[オム・チャンノク]。金大中のライバルは金泳三で大統領はもちろん朴正熙。・・・といった韓国政治史のビッグネームは今の日本の40歳以下の皆さんはふつうにご存知なのでしょうか?
      
【 「モガディシュ 脱出までの14日間」(左)と「キングメーカー 大統領を作った男」の韓国版ポスター 】

    ★★★ NAVERの人気順位(8月10日(水)現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
 ※[記者・評論家による順位]とも①等の右の( )は前週の順位。評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
  「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) トップガン マーヴェリック  9.77(37,602)
②(3) 名探偵コナン ハロウィンの花嫁(日本)  9.50(1,493)
③(-) しなやかに(韓国)  9.50(16)
④(4) アナタの顔(韓国)  9.40(149)
⑤(5) 犯罪都市2(韓国)  9.35(27,058)
⑥(6) 詩人の歌、チョン・テチュン(韓国)  9.35(146)
⑦(8) 劇場版 呪術廻戦 0(日本)  9.24(1,605)
⑧(9) モア(韓国)  9.20(143)
⑨(7) ポロロ 劇場版:ドラゴンキャッスル大冒険(韓国)  9.17(195)
⑩(-) コーダ あいのうた  9.13(1,002)

 新登場の作品はありません。

     【記者・評論家による順位】

①(1) 別れる決心(韓国)  8.71(14)
②(2) トップガン マーヴェリック  8.44(9)
③(4) 偶然と想像(日本)  8.29(7)
④(5) 小説家の映画(韓国)  8.00(3)
⑤(6) アフター・ヤン  7.80(5)
⑥(7) GUNDA/グンダ  7.50(4)
⑦(8) モア(韓国)  7.38(8)
⑧(9) さがす(日本)  7.33(6)
⑨(新) ベルイマン島にて  7.30(7)
⑩(新) ハント(韓国)  7.25(8)

 ⑨⑩の2作品が新登場です。
 ⑨「ベルイマン島にて」は仏・英・独・スウェーデン・ベルギー・ポーランド・メキシコ・ブラジル合作のラブロマンス。日本では4月に公開されているので説明は省略します。韓国題は「베르히만 아일랜드」です。
 ⑩「ハント」については後述します。

      ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績8月5日(金)~8月7日(日) ★★★
         歴代観客動員数1位「鳴梁」のキム・ハンミン監督の「閑山:龍の出現」が1位

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(10)・・閑山:龍の出現(韓国) ・・7/27・・・・1,156,867・・・・・4,598,500 ・・・・・46,982・・・・1,638
2(9)・・非常宣言(韓国)・・・・・・・・・・8/03・・・・・・816,784・・・・・1,397,969 ・・・・・14,080・・・・1,718
3(3)・・トップガン マーヴェリック・・6/22・・・190,003・・・・・7,448,900 ・・・・・79,467・・・・・・632
4(2)・・ミニオンズ フィーバー・・・7/20・・・・・・177,918・・・・・1,972,801・・・・・・19,134・・・・・・818
5(5)・・ポロロ 劇場版・・・・・・・・・・・7/28 ・・・・・・・73,101 ・・・・・・367,160・・・・・・・3,435・・・・・・581
       :ドラゴンキャッスル大冒険(韓国)
6(6)・・別れる決心(韓国) ・・・・・・・・6/29・・・・・・・46,430・・・・・1,775,050 ・・・・・18,385・・・・・・278
7(4)・・宇宙+人 1部(韓国) ・・・・・・7/20・・・・・・・42,114・・・・・1,496,937 ・・・・・15,629・・・・・・407
8(26)・・映画ドラえもん ・・・・・・・・・8/03 ・・・・・・20,826・・・・・・・・36,419・・・・・・・・・346・・・・・・362
       のび太の宇宙小戦争 2021(日本)
9(7)・・名探偵コナン ・・・・・・・・・・・・7/13・・・・・・・10,748・・・・・・・442,572・・・・・・・4,598・・・・・・・96
       ハロウィンの花嫁(日本)
10(20)・・ハント(韓国)・・・・・・・・・・・8/10・・・・・・・・4,920・・・・・・・・16,573・・・・・・・・・165・・・・・・・12
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は10位「ハント」だけです。韓国のドラマ&アクション。公式公開前の先行上映で少ない上映館数ながらランクインしました。冒頭に記したように人気俳優イ・ジョンジェの初監督作品です。
 亡命を申請した北朝鮮の上級公務員を通じて情報を入手した安全企画部海外チームのパク・ピョンホ(イ・ジョンジェ)と国内チームのキム・ジョンド(チョン・ウソン)は 組織内に潜むスパイ、ドンリムの割り出し作戦を始めます。ところがスパイを通じて一級機密事項が流出し、危機に直面すると、その両チームは鋭い対立と競争の中、相手チームを容疑線上に乗せて調査に拍車をかけます。自分たちがスパイを見つけられなければスパイとして名指しされるという危機的な状況下、相手側に向かって猛烈な追跡を繰り広げたパク・ピョンホとキム・ジョンドは隠された実体に近づくことになり、ついに大韓民国1号暗殺作戦という巨大な事件に直面することになります・・・。原題は「헌트」です。

【独立・芸術映画】
順位 ・・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・サマーフィルムにのって(日本)・・7/20 ・・・・・・2,015 ・・・・・・・25,331 ・・・・・・・・244 ・・・・・・・49
2(9)・・ボイリング・ポイント/沸騰・・8/04 ・・・・・・・・・1,580 ・・・・・・・・2,361・・・・・・・・・・24 ・・・・・・・41
3(7)・・カモン カモン・・・・・・・・・・・・・・・7/28・・・・・・・・・・・798 ・・・・・・・16,762・・・・・・・・・153・・・・・・・12
4(5)・・CURE キュア(日本)・・・・・・・・・・7/06・・・・・・・・・・・643 ・・・・・・・23,593・・・・・・・・・247・・・・・・・18
5(2)・・ロスト・ドーター ・・・・・・・・・・・・7/14・・・・・・・・・・・529 ・・・・・・・12,339・・・・・・・・・115 ・・・・・・・22

 2位「ボイリング・ポイント/沸騰」が新登場です。レストランの厨房を舞台にしたワンカットのイギリス映画で、日本でも7月15日から公開されているので内容紹介等は省略します。韓国題は「보일링 포인트」です。
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