▶今回の記事で注目の韓国映画はネチズンの人気ランキングで2位のドキュメンタリー「往十里 キム・ジョンブン」と、《独立・芸術映画》の興行ランキング3位の「アワー・ミッドナイト」です。
韓国映画の新作を紹介する日本の記事はもちろん、<NAVER映画>等の記事でも作品の肝心な部分が抜けていることがこのところ目につきます。→先々週の記事で書いた「ツバキ(椿)」も少し調べてみて初めて麗水・順天(ヨス・スンチョン)事件関係の作品ということがわかりました。
で、今回の「往十里 キム・ジョンブン」ですが、往十里(ワンシムニ)駅近くで長年露店で野菜等を売ったり焼き餅等の軽食を提供しているジョンブンおばあさんを撮った、よくある頑張ってるおばあさんのドキュメンタリーかなと思ったらそれだけではなく、盧泰愚政権時代に活発化した学生たちの街頭闘争の中で当時成均館大の学生だったジョンブンさんの次女キム・ギジョンさんが警察部隊の度を越したデモ鎮圧によって死亡しているのですね。今年は彼女の30周忌ということで制作されたドキュメンタリーとのことです。
日本で警察との衝突で命を落とした学生と言えば1960年の樺美智子さん、1967年の山崎博昭君の名が思い浮かびます。が、韓国の場合→コチラの記事に書いたようにソウル大のキャンパス内だけでも拷問死した朴鍾哲(パク・ジョンチョル)君をはじめ焼身自殺した2学生等計10人を超える学生の追慕碑があり、→延世大には「1987、ある闘いの真実」でカン・ドンウォンが演じた李韓烈(イ・ハニョル)君のモニュメント等があり、また他の大学にも<烈士>とよばれる闘争の犠牲者の慰霊碑等があるようです。日韓のこの数字の差は李承晩政権を倒した韓国の<4.19学生革命>(1960)以来の伝統(?)等政治風土の違いによるものか、熱くなりがちな韓国人の国民性(???)によるものか、そこらへんはよくわかりません。
次に「アワー・ミッドナイト」は初めて出会った若い男女が夜のソウルをただ話をしながら歩くという盛り上がりに欠けるとの見方もあるものの、今の韓国の若者が抱えるいろんな悩みをすくい取った作品のようです。
ついでにもうひとつ「1984 チェ・ドンウォン」。コチラは10年前に亡くなった80年代の韓国野球のレジェンドというべき投手チェ・ドンウォンの韓国シリーズでの活躍を回顧するドキュメンタリーです。
★★★ NAVERの人気順位(11月16日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(-) パクカン・アルム結婚する(韓国) 9.56(45)
②(新) 往十里 キム・ジョンブン(韓国) 9.55(20)
③ (3) 若い盛りのソンニョさん(韓国) 9.52(40)
④(4) 玆山魚譜 チャサンオボ(韓国) 9.33(2,944)
⑤(-) BanG Dream! Episode of Roselia II:Song I am.(日本) 9.29(35)
⑥(5) パリの星空の下 9.27(11)
⑦(6) コーダ 9.25(650)
⑧(9) 映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者(日本) 9.22(470)
⑨(8) 奇跡(韓国) 9.19(4,205)
⑩(10) 私にはとても大切なあなた(韓国) 9.12(367)
②「往十里 キム・ジョンブン」が新登場。<往十里[ワンシムニ]>はソウル市城東区にある街。中央電鉄線、地下鉄2号線と5号線の駅がある交通の要地で、駅ビルには大型スーパーEマートや映画館等もあります。本作は、その往十里駅11番出口で50年以上露店を営んできた最古参の80歳キム・ジョンブンさんについてのドキュメンタリーです。
この露店は、経済的な意志が少し足りない夫に代わってジョンブンさんが子供に食べさせ、着るものを着せ、勉強させようと始めた店ですが、子供たちのことが片付いた後もずっとそこの路上でで商売を続けています。
30年前、ジョンブンさんは次女のキム・ギジョンさんをやはり路上で亡くしました。(私ヌルボ、最初は交通事故?と思いましたが・・・。) ギジョンさんは1991年当時24歳で、成均館大学の3年生でした。同年4月に明知大学の学生運動家カン・ギョンデ君が<学園自主化・盧泰愚政権打倒>を掲げた集会・デモに参加した時<白骨団>(=警察デモ鎮圧部隊の別称)に捕まり、鉄パイプで頭部を強く叩かれて死亡しましたが、その後抗議の闘争が繰り広げられる中、ギジョンさんは翌5月ソウル市中区筆洞でデモの途中催涙弾の洗礼を浴びる中で<白骨団>により路地に追い込まれ、殴打された末に圧迫・窒息死したとのことです。以後ギジョンさんの同窓の友人たちはお正月と母の日、そしてジョンブンさんの誕生日には忘れずに訪れるそうです。ギジョンさんと同じ花のような年齢だった彼らも今は50代になりました。本作では路上で娘を亡くしてもまた別の子供たちを抱くジョンブンさんの姿を通じて都市の変化も合わせて辿ります。
実はこの作品はキム・ギジョン烈士の30周忌を記念するために作られたドキュメンタリーだそうです。しかし本作はこの事実を最初から明かさず、露店商キム・ジョンブンさんの人間的な姿だけを序盤で撮り、中盤に入ってからキム・ギジョン烈士の話に入ります。この後成均館大同期生のインタビューと共にギョジョンさんの追悼のようすを映しています。彼女の忌日になると墓を訪ねる学生が数百人もいて数十台のバスに分乗して墓所に向かったとか・・・。原題は「왕십리 김종분」です。
それにしても、冒頭でも書きましたが韓国で過去デモに参加して警官隊の過剰な実力行使で死亡したり、抗議の焚身自殺の道を選んだりした学生の数の多さには驚くばかりです。
【記者・評論家による順位】
①(1) ファースト・カウ 8.40(10)
②(2) グリーン・ナイト 8.20(5)
③(3) ノマドランド 8.00(8)
④(4) あの日のように抱きしめて 7.80(5)
⑤(5) プチ・ママン 7.63(8)
⑥(6) DUNE/デューン 砂の惑星 7.50(8)
⑦(7) アネット 7.44(9)
⑧(9) 終着駅(韓国) 7.20(5)
⑨(新) 言葉と行動(ラヴ・アフェアズ) 7.17(6)
⑩(10) ファーザー 7.13(8)
⑨「言葉と行動(ラヴ・アフェアズ)」が新登場です。フランスのドラマ&ラブロマンス。昨年の<第33回東京国際映画祭>で上映された作品です。作家志望のマクシム(ニルス・シュナイダー)は執筆のためバケーションを田舎で過ごしている従兄フランソワ(ヴァンサン・マケーニュ)の別荘を訪れますが、フランソワは病気の同僚の仕事を肩代わりするため急遽パリに行くことになり数日は戻れないということで、妊娠3か月の奥さんダフネ(カメリア・ジョルダナ)が1人で彼を迎えることになります。そしてダフネとマキシムは4日間フランソワの帰りを待ちますが、その間互いの身に起きている愛の物語を語り合います。「欲望と愛情の違いとは?」、「既婚の相手に対し一歩踏み出せるか?」、「成就しなかった恋に再挑戦できるか?」等々。そんな親密な語らいは彼らを近づけていきます・・・。韓国題は「러브 어페어 : 우리가 말하는 것, 우리가 하는 것(ラヴ・アフェア : 私たちが話すこと、私たちがすること)」。日本での一般劇場公開はないのかなと思ったら、今年3月東京のユーロスペースを皮切りに大阪・京都・広島等で開催されてきた<映画批評月間 フランス映画の現在 vol.3>で上映される17作品中に入っていました。そして横浜在住の私ヌルボの近所のシネマ・ジャック&ベティでも明後日11月20日(土)~12.10(金)にこの特集上映があるとは何という偶然! 「言葉と行動」は11月22日(月)と12月2日(木)・9日(木)の3回上映されます。詳しくは→コチラと→コチラを参照されたし。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績11月12日(金)~11月14日(日) ★★★
2週連続1位「エターナルズ」の独走続く
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・エターナルズ・・・・・・・・・・・・・・・11/03・・・・・501,264 ・・・・・2,465,865・・・・・25,872 ・・・・1,976
2(新)・・江陵[カンヌン](韓国) ・・・・・・11/10 ・・・・125,629 ・・・・・・・185,360・・・・・・1,939・・・・・・・760
3(2)・・DUNE/デューン 砂の惑星 ・・・10/20 ・・・・124,980 ・・・・・1,198,415・・・・・12,839 ・・・・・・748
4(35)・・アダムス・ファミリー2 ・・・・11/10・・・・・・60,607・・・・・・・・・73,711・・・・・・・・672・・・・・・・748
アメリカ横断旅行!
5(新)・・鬼滅の刃 兄妹の絆(日本) ・・・11/10・・・・・・29,172・・・・・・・・・48,341・・・・・・・・482・・・・・・・383
6(3)・・ヴェノム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/13・・・・・・14,408・・・・・・2,109,675・・・・・20,986 ・・・・・・337
:レット・ゼア・ビー・カーネイジ
7(4)・・ロン 僕のポンコツ・ボット・・・10/27・・・・・・・8,007・・・・・・・・150,623・・・・・・1,367・・・・・・・170
8(新)・・tick, tick... BOOM! ・・・・・・・・11/12 ・・・・・・7,028 ・・・・・・・・・・7,028・・・・・・・・・63・・・・・・・108
: チック、チック...ブーン!
9(新)・・ジャンルだけロマンス(韓国)・・11/17 ・・・・・3,800・・・・・・・・・11,100・・・・・・・・・98 ・・・・・・・・21
10(31)・・1984 チェ・ドンウォン(韓国)・・11/12 ・・・3,669・・・・・・・・・・6,523・・・・・・・・・61・・・・・・・168
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
新登場は2・4・5・8・9・10位の6作品です。
2位「江陵[カンヌン]」は韓国の犯罪&アクション。
江陵[カンヌン]は七夕で知られる日本海に面した都市。キルソク(ユ・オソン)はその地の最大組織の一員です。平和と義理を重要視し、秩序を守って生きてきた彼の前に、江陵最大のリゾート所有権を狙う男ミンソク(チャン・ヒョク)が現れます。最初の出会いから冷めた雰囲気が漂う2人。ミンソクが自身の目標のために本格的に動き出し、2つの組織間で手のつけようのない戦いが始まります・・・。原題は「강릉」です。
4位「アダムス・ファミリー2 アメリカ横断旅行!」はアメリカのファンタジー・アニメ。モンスター一家のアダムス家の物語「アダムス・ファミリー」(2019)の続編です。
アダムス夫妻の2人の子供ウエンズデーとパグズリーは思春期に入り、倦怠した家族の雰囲気に危機を感じます。そこでパパとママが家族の和合のために実行したのはアメリカ横断家族旅行。ナイアガラの滝からグランドキャニオンまでの壮大な旅に出発します。が、なんだか生まれから格別だったウェンズデーの驚くべき秘密が明らかになる・・・って? 韓国題は「아담스 패밀리 2」。日本公開は来年です。
5位「鬼滅の刃:兄妹の絆」は日本では2019年3月公開か。その時は「無限列車編」のようにヒットしたわけでもないようですが、この9月だかTV放映されていたとか。ただ韓国での観客の評価を見ると7.3/10前後で「無限列車編」より2.0ポイントほど低いんですよね・・・。韓国題は「귀멸의 칼날: 남매의 연」です。
8位「tick, tick... BOOM!: チック、チック...ブーン!」はアメリカのドラマ。ミュージカルの作曲家ジョナサン・ラーソンの自伝ミュージカルを映画化した作品です。日本でも韓国と同日公開されているので説明は省略します。韓国題は「틱, 틱... 붐!」です。
9位「ジャンルだけロマンス」は韓国のドラマ&コメディ。ヒョン(リュ・スンリョン)はベストセラー作家、とは言っても目下7年目のスランプに陥っています。彼の古い友人スンモ(キム・ヒウォン)はヒョンの元妻ミエ(オ・ナラ)と秘密恋愛中。そのミエはスンモには甘い姿を見せる一方、ヒョンには養育問題等で厳しく対応というのは当然か。ヒョンのアパートの屋上部屋には作家志望の弟子ユジン(ム・ジンソン)が住むが師とは主客転倒関係? またヒョンの従妹でほとんどの時間を家庭で過ごしているチョンウォン(イ・ユヨン)というミステリアスな女性も登場して、彼らの間の平凡でないロマンスで絡み合った私生活が明らかになっていきます・・・。原題は「장르만 로맨스」です。
10位「1984 チェ・ドンウォン」は韓国のドキュメンタリー。チェ・ドンウォン[崔東原](1958~2011)は、KBOリーグ(韓国プロ野球)発足2年目の1983年に釜山が本拠のロッテ・ジャイアンツに入団し、80年代を通じて<鉄腕><釜山の心臓><の闘魂>等と呼ばれたレジェンドとも言うべき投手で、ロッテ・ジャイアンツは彼の背番号11番を永久欠番にしています。本作はそのチェ・ドンウォンのプロ2年目の1984年の韓国シリーズに焦点を絞り、絶対強者のサムスンライオンズを相手に、チェ・ドンウォンの活躍を中心に奇跡のような優勝を遂げた時を回顧します。本作は、今年が2011年大腸がんで亡くなったチェ・ドンウォン投手の10周忌ということで作られたようです。原題は「984 최동원」です。※おりしも韓国では14日から優勝をかけたKTウィズと斗山ベアーズの韓国シリーズの真っただ中・・・って、この時期に公開日を合わせたのでしょう。14日から始まり、KTウィズがここまで3連勝で初制覇に王手をかけ、今日18日の第4戦はちょうど今(18日午後16分頃)KTが勝って優勝を決めたところです。※韓国シリーズの方式は日本シリーズ以上にヤヤコシイですが、→コチラの記事を参照されたし。また韓国プロ野球と言えばこの方、→<span style="color:limegreen;">室井昌也さんのツイッター(→コチラ)も。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(2)・・ファースト・カウ ・・・・・・・・・・・11/04・・・・・・・・・2,132・・・・・・・・8,024・・・・・・・・・・・73・・・・・・・・35
2(1)・・アネット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/27・・・・・・・・・1,409 ・・・・・・35,524 ・・・・・・・・・312・・・・・・・・31
3(18)・・アワー・ミッドナイト(韓国)・・11/11・・・・・・・・1,092・・・・・・・・2,229・・・・・・・・・・・17 ・・・・・・・44
4(39)・・言葉と行動(ラヴ・アフェアズ)・・11/21・・・・・・1,082・・・・・・・・2,458・・・・・・・・・・・20 ・・・・・・・28
5(14)・・ニュー・オーダー・・・・・・・・・・・11/11 ・・・・・・・・・・929・・・・・・・・1,667・・・・・・・・・・・15 ・・・・・・・30
3・4・5位の3作品が新登場です。
3位「アワー・ミッドナイト」は韓国のドラマ。無名の俳優ジフン(イ・スンフン)は学校の練習室と屋上部屋と行き来し、半分失業者のように暮らしています。長くつき合った恋人は彼に結婚を知らせて別れを告げました。会社員のウニョン(パク・ソウン)は社内恋愛中に彼氏からひどい暴力を受け、警察に申告しましたが、会社でも噂の当事者となり抑圧を日々感じています。ジフンが漢江秘密パトロールのアルバイトを始めた日の夜遅く、彼は偶然橋の上で倒れたウニョンを救います。こうして出会った2人は言葉を交わし、缶ビールを手にソウルの夜の街を歩き、また歩きます。映画、友人、家族等たわいのないな話から人生や夢についての話まで。とくに劇的な要素もない展開ですが、いつの間にか彼らの話に耳を傾けて共感することになるのではないでしょうか・・・? 原題は「아워 미드나잇」です。
4位「言葉と行動(ラヴ・アフェアズ)」については上述しました。
5位「ニュー・オーダー」はメキシコのドラマ。これまで<カンヌ国際映画祭>のある視点部門でグランプリを受賞した「父の秘密」(2012)等で高い評価を得てきたミシェル・フランコ監督の2020年の作品です。舞台は202×年の仮想の未来のメキシコ。街には不安が沸騰しています。マリアンと家族が高級マンションで豪華な結婚パーティーを楽しんでいる渦中、社会全域では深刻なレベルの暴力デモが広がっています。マリアンたちの邸宅にもデモ隊が侵入して阿修羅場となり、病気の乳母を助けるために家を出たマリアンは衝撃的な出来事に巻き込まれます。韓国題は「뉴 오더」。日本公開は未定のようです。
韓国映画の新作を紹介する日本の記事はもちろん、<NAVER映画>等の記事でも作品の肝心な部分が抜けていることがこのところ目につきます。→先々週の記事で書いた「ツバキ(椿)」も少し調べてみて初めて麗水・順天(ヨス・スンチョン)事件関係の作品ということがわかりました。
で、今回の「往十里 キム・ジョンブン」ですが、往十里(ワンシムニ)駅近くで長年露店で野菜等を売ったり焼き餅等の軽食を提供しているジョンブンおばあさんを撮った、よくある頑張ってるおばあさんのドキュメンタリーかなと思ったらそれだけではなく、盧泰愚政権時代に活発化した学生たちの街頭闘争の中で当時成均館大の学生だったジョンブンさんの次女キム・ギジョンさんが警察部隊の度を越したデモ鎮圧によって死亡しているのですね。今年は彼女の30周忌ということで制作されたドキュメンタリーとのことです。
日本で警察との衝突で命を落とした学生と言えば1960年の樺美智子さん、1967年の山崎博昭君の名が思い浮かびます。が、韓国の場合→コチラの記事に書いたようにソウル大のキャンパス内だけでも拷問死した朴鍾哲(パク・ジョンチョル)君をはじめ焼身自殺した2学生等計10人を超える学生の追慕碑があり、→延世大には「1987、ある闘いの真実」でカン・ドンウォンが演じた李韓烈(イ・ハニョル)君のモニュメント等があり、また他の大学にも<烈士>とよばれる闘争の犠牲者の慰霊碑等があるようです。日韓のこの数字の差は李承晩政権を倒した韓国の<4.19学生革命>(1960)以来の伝統(?)等政治風土の違いによるものか、熱くなりがちな韓国人の国民性(???)によるものか、そこらへんはよくわかりません。
次に「アワー・ミッドナイト」は初めて出会った若い男女が夜のソウルをただ話をしながら歩くという盛り上がりに欠けるとの見方もあるものの、今の韓国の若者が抱えるいろんな悩みをすくい取った作品のようです。
ついでにもうひとつ「1984 チェ・ドンウォン」。コチラは10年前に亡くなった80年代の韓国野球のレジェンドというべき投手チェ・ドンウォンの韓国シリーズでの活躍を回顧するドキュメンタリーです。
【ソウル大の朴鍾哲追慕碑(左)と、延世大の李韓烈君のよく知られた新聞写真の形象化作品 】
★★★ NAVERの人気順位(11月16日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(-) パクカン・アルム結婚する(韓国) 9.56(45)
②(新) 往十里 キム・ジョンブン(韓国) 9.55(20)
③ (3) 若い盛りのソンニョさん(韓国) 9.52(40)
④(4) 玆山魚譜 チャサンオボ(韓国) 9.33(2,944)
⑤(-) BanG Dream! Episode of Roselia II:Song I am.(日本) 9.29(35)
⑥(5) パリの星空の下 9.27(11)
⑦(6) コーダ 9.25(650)
⑧(9) 映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者(日本) 9.22(470)
⑨(8) 奇跡(韓国) 9.19(4,205)
⑩(10) 私にはとても大切なあなた(韓国) 9.12(367)
②「往十里 キム・ジョンブン」が新登場。<往十里[ワンシムニ]>はソウル市城東区にある街。中央電鉄線、地下鉄2号線と5号線の駅がある交通の要地で、駅ビルには大型スーパーEマートや映画館等もあります。本作は、その往十里駅11番出口で50年以上露店を営んできた最古参の80歳キム・ジョンブンさんについてのドキュメンタリーです。
この露店は、経済的な意志が少し足りない夫に代わってジョンブンさんが子供に食べさせ、着るものを着せ、勉強させようと始めた店ですが、子供たちのことが片付いた後もずっとそこの路上でで商売を続けています。
30年前、ジョンブンさんは次女のキム・ギジョンさんをやはり路上で亡くしました。(私ヌルボ、最初は交通事故?と思いましたが・・・。) ギジョンさんは1991年当時24歳で、成均館大学の3年生でした。同年4月に明知大学の学生運動家カン・ギョンデ君が<学園自主化・盧泰愚政権打倒>を掲げた集会・デモに参加した時<白骨団>(=警察デモ鎮圧部隊の別称)に捕まり、鉄パイプで頭部を強く叩かれて死亡しましたが、その後抗議の闘争が繰り広げられる中、ギジョンさんは翌5月ソウル市中区筆洞でデモの途中催涙弾の洗礼を浴びる中で<白骨団>により路地に追い込まれ、殴打された末に圧迫・窒息死したとのことです。以後ギジョンさんの同窓の友人たちはお正月と母の日、そしてジョンブンさんの誕生日には忘れずに訪れるそうです。ギジョンさんと同じ花のような年齢だった彼らも今は50代になりました。本作では路上で娘を亡くしてもまた別の子供たちを抱くジョンブンさんの姿を通じて都市の変化も合わせて辿ります。
実はこの作品はキム・ギジョン烈士の30周忌を記念するために作られたドキュメンタリーだそうです。しかし本作はこの事実を最初から明かさず、露店商キム・ジョンブンさんの人間的な姿だけを序盤で撮り、中盤に入ってからキム・ギジョン烈士の話に入ります。この後成均館大同期生のインタビューと共にギョジョンさんの追悼のようすを映しています。彼女の忌日になると墓を訪ねる学生が数百人もいて数十台のバスに分乗して墓所に向かったとか・・・。原題は「왕십리 김종분」です。
それにしても、冒頭でも書きましたが韓国で過去デモに参加して警官隊の過剰な実力行使で死亡したり、抗議の焚身自殺の道を選んだりした学生の数の多さには驚くばかりです。
【記者・評論家による順位】
①(1) ファースト・カウ 8.40(10)
②(2) グリーン・ナイト 8.20(5)
③(3) ノマドランド 8.00(8)
④(4) あの日のように抱きしめて 7.80(5)
⑤(5) プチ・ママン 7.63(8)
⑥(6) DUNE/デューン 砂の惑星 7.50(8)
⑦(7) アネット 7.44(9)
⑧(9) 終着駅(韓国) 7.20(5)
⑨(新) 言葉と行動(ラヴ・アフェアズ) 7.17(6)
⑩(10) ファーザー 7.13(8)
⑨「言葉と行動(ラヴ・アフェアズ)」が新登場です。フランスのドラマ&ラブロマンス。昨年の<第33回東京国際映画祭>で上映された作品です。作家志望のマクシム(ニルス・シュナイダー)は執筆のためバケーションを田舎で過ごしている従兄フランソワ(ヴァンサン・マケーニュ)の別荘を訪れますが、フランソワは病気の同僚の仕事を肩代わりするため急遽パリに行くことになり数日は戻れないということで、妊娠3か月の奥さんダフネ(カメリア・ジョルダナ)が1人で彼を迎えることになります。そしてダフネとマキシムは4日間フランソワの帰りを待ちますが、その間互いの身に起きている愛の物語を語り合います。「欲望と愛情の違いとは?」、「既婚の相手に対し一歩踏み出せるか?」、「成就しなかった恋に再挑戦できるか?」等々。そんな親密な語らいは彼らを近づけていきます・・・。韓国題は「러브 어페어 : 우리가 말하는 것, 우리가 하는 것(ラヴ・アフェア : 私たちが話すこと、私たちがすること)」。日本での一般劇場公開はないのかなと思ったら、今年3月東京のユーロスペースを皮切りに大阪・京都・広島等で開催されてきた<映画批評月間 フランス映画の現在 vol.3>で上映される17作品中に入っていました。そして横浜在住の私ヌルボの近所のシネマ・ジャック&ベティでも明後日11月20日(土)~12.10(金)にこの特集上映があるとは何という偶然! 「言葉と行動」は11月22日(月)と12月2日(木)・9日(木)の3回上映されます。詳しくは→コチラと→コチラを参照されたし。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績11月12日(金)~11月14日(日) ★★★
2週連続1位「エターナルズ」の独走続く
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・エターナルズ・・・・・・・・・・・・・・・11/03・・・・・501,264 ・・・・・2,465,865・・・・・25,872 ・・・・1,976
2(新)・・江陵[カンヌン](韓国) ・・・・・・11/10 ・・・・125,629 ・・・・・・・185,360・・・・・・1,939・・・・・・・760
3(2)・・DUNE/デューン 砂の惑星 ・・・10/20 ・・・・124,980 ・・・・・1,198,415・・・・・12,839 ・・・・・・748
4(35)・・アダムス・ファミリー2 ・・・・11/10・・・・・・60,607・・・・・・・・・73,711・・・・・・・・672・・・・・・・748
アメリカ横断旅行!
5(新)・・鬼滅の刃 兄妹の絆(日本) ・・・11/10・・・・・・29,172・・・・・・・・・48,341・・・・・・・・482・・・・・・・383
6(3)・・ヴェノム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/13・・・・・・14,408・・・・・・2,109,675・・・・・20,986 ・・・・・・337
:レット・ゼア・ビー・カーネイジ
7(4)・・ロン 僕のポンコツ・ボット・・・10/27・・・・・・・8,007・・・・・・・・150,623・・・・・・1,367・・・・・・・170
8(新)・・tick, tick... BOOM! ・・・・・・・・11/12 ・・・・・・7,028 ・・・・・・・・・・7,028・・・・・・・・・63・・・・・・・108
: チック、チック...ブーン!
9(新)・・ジャンルだけロマンス(韓国)・・11/17 ・・・・・3,800・・・・・・・・・11,100・・・・・・・・・98 ・・・・・・・・21
10(31)・・1984 チェ・ドンウォン(韓国)・・11/12 ・・・3,669・・・・・・・・・・6,523・・・・・・・・・61・・・・・・・168
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
新登場は2・4・5・8・9・10位の6作品です。
2位「江陵[カンヌン]」は韓国の犯罪&アクション。
江陵[カンヌン]は七夕で知られる日本海に面した都市。キルソク(ユ・オソン)はその地の最大組織の一員です。平和と義理を重要視し、秩序を守って生きてきた彼の前に、江陵最大のリゾート所有権を狙う男ミンソク(チャン・ヒョク)が現れます。最初の出会いから冷めた雰囲気が漂う2人。ミンソクが自身の目標のために本格的に動き出し、2つの組織間で手のつけようのない戦いが始まります・・・。原題は「강릉」です。
4位「アダムス・ファミリー2 アメリカ横断旅行!」はアメリカのファンタジー・アニメ。モンスター一家のアダムス家の物語「アダムス・ファミリー」(2019)の続編です。
アダムス夫妻の2人の子供ウエンズデーとパグズリーは思春期に入り、倦怠した家族の雰囲気に危機を感じます。そこでパパとママが家族の和合のために実行したのはアメリカ横断家族旅行。ナイアガラの滝からグランドキャニオンまでの壮大な旅に出発します。が、なんだか生まれから格別だったウェンズデーの驚くべき秘密が明らかになる・・・って? 韓国題は「아담스 패밀리 2」。日本公開は来年です。
5位「鬼滅の刃:兄妹の絆」は日本では2019年3月公開か。その時は「無限列車編」のようにヒットしたわけでもないようですが、この9月だかTV放映されていたとか。ただ韓国での観客の評価を見ると7.3/10前後で「無限列車編」より2.0ポイントほど低いんですよね・・・。韓国題は「귀멸의 칼날: 남매의 연」です。
8位「tick, tick... BOOM!: チック、チック...ブーン!」はアメリカのドラマ。ミュージカルの作曲家ジョナサン・ラーソンの自伝ミュージカルを映画化した作品です。日本でも韓国と同日公開されているので説明は省略します。韓国題は「틱, 틱... 붐!」です。
9位「ジャンルだけロマンス」は韓国のドラマ&コメディ。ヒョン(リュ・スンリョン)はベストセラー作家、とは言っても目下7年目のスランプに陥っています。彼の古い友人スンモ(キム・ヒウォン)はヒョンの元妻ミエ(オ・ナラ)と秘密恋愛中。そのミエはスンモには甘い姿を見せる一方、ヒョンには養育問題等で厳しく対応というのは当然か。ヒョンのアパートの屋上部屋には作家志望の弟子ユジン(ム・ジンソン)が住むが師とは主客転倒関係? またヒョンの従妹でほとんどの時間を家庭で過ごしているチョンウォン(イ・ユヨン)というミステリアスな女性も登場して、彼らの間の平凡でないロマンスで絡み合った私生活が明らかになっていきます・・・。原題は「장르만 로맨스」です。
10位「1984 チェ・ドンウォン」は韓国のドキュメンタリー。チェ・ドンウォン[崔東原](1958~2011)は、KBOリーグ(韓国プロ野球)発足2年目の1983年に釜山が本拠のロッテ・ジャイアンツに入団し、80年代を通じて<鉄腕><釜山の心臓><の闘魂>等と呼ばれたレジェンドとも言うべき投手で、ロッテ・ジャイアンツは彼の背番号11番を永久欠番にしています。本作はそのチェ・ドンウォンのプロ2年目の1984年の韓国シリーズに焦点を絞り、絶対強者のサムスンライオンズを相手に、チェ・ドンウォンの活躍を中心に奇跡のような優勝を遂げた時を回顧します。本作は、今年が2011年大腸がんで亡くなったチェ・ドンウォン投手の10周忌ということで作られたようです。原題は「984 최동원」です。※おりしも韓国では14日から優勝をかけたKTウィズと斗山ベアーズの韓国シリーズの真っただ中・・・って、この時期に公開日を合わせたのでしょう。14日から始まり、KTウィズがここまで3連勝で初制覇に王手をかけ、今日18日の第4戦はちょうど今(18日午後16分頃)KTが勝って優勝を決めたところです。※韓国シリーズの方式は日本シリーズ以上にヤヤコシイですが、→コチラの記事を参照されたし。また韓国プロ野球と言えばこの方、→<span style="color:limegreen;">室井昌也さんのツイッター(→コチラ)も。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(2)・・ファースト・カウ ・・・・・・・・・・・11/04・・・・・・・・・2,132・・・・・・・・8,024・・・・・・・・・・・73・・・・・・・・35
2(1)・・アネット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/27・・・・・・・・・1,409 ・・・・・・35,524 ・・・・・・・・・312・・・・・・・・31
3(18)・・アワー・ミッドナイト(韓国)・・11/11・・・・・・・・1,092・・・・・・・・2,229・・・・・・・・・・・17 ・・・・・・・44
4(39)・・言葉と行動(ラヴ・アフェアズ)・・11/21・・・・・・1,082・・・・・・・・2,458・・・・・・・・・・・20 ・・・・・・・28
5(14)・・ニュー・オーダー・・・・・・・・・・・11/11 ・・・・・・・・・・929・・・・・・・・1,667・・・・・・・・・・・15 ・・・・・・・30
3・4・5位の3作品が新登場です。
3位「アワー・ミッドナイト」は韓国のドラマ。無名の俳優ジフン(イ・スンフン)は学校の練習室と屋上部屋と行き来し、半分失業者のように暮らしています。長くつき合った恋人は彼に結婚を知らせて別れを告げました。会社員のウニョン(パク・ソウン)は社内恋愛中に彼氏からひどい暴力を受け、警察に申告しましたが、会社でも噂の当事者となり抑圧を日々感じています。ジフンが漢江秘密パトロールのアルバイトを始めた日の夜遅く、彼は偶然橋の上で倒れたウニョンを救います。こうして出会った2人は言葉を交わし、缶ビールを手にソウルの夜の街を歩き、また歩きます。映画、友人、家族等たわいのないな話から人生や夢についての話まで。とくに劇的な要素もない展開ですが、いつの間にか彼らの話に耳を傾けて共感することになるのではないでしょうか・・・? 原題は「아워 미드나잇」です。
4位「言葉と行動(ラヴ・アフェアズ)」については上述しました。
5位「ニュー・オーダー」はメキシコのドラマ。これまで<カンヌ国際映画祭>のある視点部門でグランプリを受賞した「父の秘密」(2012)等で高い評価を得てきたミシェル・フランコ監督の2020年の作品です。舞台は202×年の仮想の未来のメキシコ。街には不安が沸騰しています。マリアンと家族が高級マンションで豪華な結婚パーティーを楽しんでいる渦中、社会全域では深刻なレベルの暴力デモが広がっています。マリアンたちの邸宅にもデモ隊が侵入して阿修羅場となり、病気の乳母を助けるために家を出たマリアンは衝撃的な出来事に巻き込まれます。韓国題は「뉴 오더」。日本公開は未定のようです。
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