めちゃカワー
ムルソーとマリーの再会
目が覚めながら不意に思ったのだけれど、
課長に2日間休みたいと申し出たとき、
なぜ怒ったような顔をしたのか。
今日は土曜日だ。
なんとなく忘れていたけれど、
起きたときに思い出したよ。
当然のことだけれど、課長は考えたんだね、
俺が4日連休するつもりだって。。。
明日の日曜を含めて。
それで、課長は気分を害したんだよ。
だけど、かあちゃんをお墓に埋めたのが
今日でなく昨日だということは俺の落ち度じゃないぜ。
それに、土曜日と日曜は、とにかく休みなんだから。
もちろん課長の考え方も良く分かるけれど。。。
昨日のこと(葬式)で疲れていたんで
起きるのがしんどかったよ。
ヒゲを剃りながら何をしようかと考えたんだが、
泳ぎに行くことに決めた。
市街電車に乗って港のそばの公共ビーチに行った。
そこで着替えて海に飛び込んだ。
若い連中が、たくさん泳いでいたよ。
泳いでいるときに、偶然、マリー・カルドナに出くわした。
かつて俺の会社で働いていたタイピストの女の子だ。
俺はマリーのことが好きだった。
彼女も俺に気があったと思うよ。たぶんね。
でも、発展する前に彼女は会社を辞めてしまったから、
一線を越えるようなことはなかった。
マリーが沖に浮かぶ休息用の浮き舞台に
上がりたいと言うので助けてやった。
彼女の体を押し上げながら
オッパイの感触をちょっとばかり楽しんでしまった。
俺はまだ水の中だったけれど、
マリーは浮き舞台に這い上がると
すぐに腹ばいになって俺の方を向いた。
髪が目にかかって彼女は笑っていたっけ。
俺もよじ登って彼女の隣に横たわった。
気分良かったなぁ~。
マリーが仰向けになったので、
冗談言いながら俺も仰向けになって
頭をマリーのおなかの上に乗せたのだけれど、
彼女は何も言わなかったので、
そのまま頭を預けたままにしていたんだ。
俺の目に映るのは広い空だけ。
青空の中で太陽のぎらつきが金色に見えた。
彼女の心臓がゆっくりと鼓動するのを俺はうなじに感じた。
うつらうつらしながら、
結構長い間浮き舞台の上に横たわっていたよ。
太陽の照り付けで体が熱くなると、マリーは海に飛び込んだ。
俺も彼女の後に続くように飛び込んだ。
彼女に追いつくと俺は彼女の体に腕を回して一緒に泳いだ。
マリーは始終笑いながらはしゃいでいたよ。
波止場の突堤に着くと、そこで甲羅干しをしたんだ。
マリーは言ったものさ。
「あたし、あなたより日に焼けているわよ」
俺、その時、「今夜映画にでも行かないか」って誘ったんだ。
彼女笑って言ったね。
「だったら、フェルナンデルの映画が見たいわ」
着替えてから顔を合わせたとき、
マリーは俺の黒いネクタイを見てかなり驚いた様子だった。
「お葬式にでもでたの?」
「俺のかあちゃんが亡くなったんだよ」
「えっ、亡くなったって、いつのことよ?」
「昨日だよ」
マリーはちょっとビックリしたようだった。
でも、それ以上何も言わなかった。
俺の落ち度じゃないんだぜ、と言う気になったけれど、
止めにしておいたよ。
同じようなことを課長に言ったことを思い出したからね。
言ったところで、どうにもならないし、
それに、後ろめたい気持ちに駆られるからね。
その晩までには、マリーはその事をすっかり忘れてしまったようだ。
映画はところどころ可笑しかったけれど、
それ以外のところでは、あまりにも馬鹿ばかしすぎたよ。
マリーは映画を見ている間中、
俺に体を持たせかけていたので、
彼女の太腿は俺の太腿にぴったりとくっついていた。
それで、俺も腕を回しながら彼女のオッパイを
やさしく撫ぜたりいじったりしていた。
映画が終わる頃、彼女にキスしたけれど、
フレンチキスほどすごいやつじゃなかった。
でも、マリーは映画見た後で俺のアパートにやって来たよ。
(本文には書いてないけれど、
行間を読むつもりで聞いて欲しいんだ。
マリーが会社を辞める前、
お互いに気が合ったと思うんだよ。
俺はマリーが好きだったし、
マリーも俺に気があるようだったからね。
でも、一線を越えるだけの時間がなかった。
土曜の晩マリーとベッドで愛し合ったのは、
海で再会した時にある程度、
そうなることをお互いに予感していたと思う。
マリーがあのまま会社に勤めていたら、
やはりこうなったと思うんだ。)
翌朝目が覚めたとき、マリーはすでに帰った後だった。
そう言えば、おばさんの家に行かなければならないと、
彼女が言っていたのを思い出したよ。
日曜だと言うのを思い起こして気が重くなった。
俺は日曜が嫌いなんだ。
そう言う訳で、寝返ってマリーが寝ていた枕に
彼女が残した潮の匂いを嗅ごうとして鼻をうずめてみた。
それからタバコを数本ベッドの中ですった。
昼までそうしていたよ。
よく行くレストラン・セレステで昼飯を食べる気がしなかった。
なぜならレストランの連中が必ず
(葬式の事で)いろいろと聞いてくるからね。
俺はそれがイヤなんだ。
玉子焼きを作ってフライパンから直(じか)に食べた。
パンを切らしていたので玉子焼きだけだった。
パンを買いに外に出る気もしなかった。
『萌える異邦人』より
デンマンさん。。。、また『異邦人』ですかぁ~?
レンゲさんは、夏になると必ず『異邦人』を読むと言ってましたよね?
そうですわ。。。だから、こうしてまた『異邦人』から同じところをコピペしたのですか?
僕の気に入った箇所なんですよ。。。てかぁ、『異邦人』と聞くと僕は、まずこの箇所を思い浮かべるのですよ。
なぜですか?
『異邦人』の雰囲気がこの箇所に凝縮されているような気がするのですよ。
『異邦人』の雰囲気って。。。どういうことですか?
ムルソーの感覚的な生き方。。。建前の社会に背を向けているような生き方。。。そういうものをこの箇所から僕は最も強烈に感じ取れるのですよ。
建前の社会に背を向ける、と言う事はお葬式のあった翌日に海水浴に行く。。。そういう事からなんとなく判るような気もしますけれど、感覚的な生き方って、どういうことですの?
イギリスのある批評家が次のように言っていますよ。
ムルソーは、感情もなければ、楽しみも無く、反省することもできないロボットではありません。
それどころか、感情もあり、楽しむことも知っており、反省もします。
ただし、感情や表情をあからさまに表さないで自分の価値観に従って既存の社会的価値観に反対するのです。
ムルソーの価値観のうち第一のものが人生を楽しむと言うものです。
彼が仕事をしている時であれ、ビーチに居るときであれ、
マリーとの関係や、友人との付き合いであれ、
また刑務所の中でさえ、
ムルソーの関心事は身近にある感覚的な楽しみです。
そのような楽しみが無ければ、無いでムルソーは平気です。
もしあれば、十分に楽しみます。
この小説の初めから明らかなことですが、
空、太陽、海、日光、温もり、。。。そういう自然の恵みや風物がムルソーにとっての楽しみの重要な源(みなもと)です。
マリーとの人間関係でも、一緒に海で泳ぐ時であれ、
浜辺を歩いている時であれ、
あるいは枕に残っているマリーの潮の匂いを嗅ぐ時でも、ムルソーの楽しみは本質的に自然の恵みや風物と無関係ではない。
むしろマリーはムルソーにとって感覚的に楽しむことができる自然の恵みや風物の化身と言えるのです。
ムルソーは(文化的な)“愛”の概念など、どうでも良いと思っています。
しかし、欲望の力、価値、意義については充分に理解しているのです。
『萌える異邦人』より
レンゲさんは、とぼけているような事を言っているけれど、実は感覚的な生き方って充分すぎるほど分かっているんでしょう?
あたし自身は感覚的に生きているとは思っていませんわ。
でもねぇ、レンゲさんがムルソーに感じる親近感は、まさにこの感覚的な生き方だと僕には思えるのですよ。
どうして、そう思うのですか?
夏になると『異邦人』を読むと、レンゲさんから初めて聞いた時、僕はとっさに椎名さんのことが思い浮かんだんですよ。
ずいぶんと昔の事を覚えているのですわね?
昔のことではありませんよ。3年前の夏ですよ。しかも僕にとっては強烈なイメージとしてオツムに刷り込まれているのですよ。
それ程強烈でしたぁ~?
強烈も何も、レンゲさんはかつて椎名さんに殺されそうになったのですよ。。。しかも、そういう事までレンゲさんはネットに書いた。
心身ともにつらい。
2004 12/19 16:07 編集
どうしてわたしは、まっすぐ歩けなくて、
無理したら、こけてしまうんだろ?
今朝も気付いたら、ふとももとかが痛い。
去年のように、血まみれにはなりたくない!
男はどこにいったのかな。
待ってるような、待ってないような、
どっちにしろ、恋愛に関しての考えがちがってるから。
もし、彼が戻ってきても受け入れない!
・・・と言いたいけど、無理でしょうね。
孤独に耐えて、
わたしの思いを埋めてしまって、
さようなら…と言いたい。
あ~あ。
by レンゲ
『「自滅の愛」へと突き進んでゆくレンゲさん!(その2)』より
レンゲさんは椎名さんに殺されかけた。それにもかかわらずレンゲさんは彼ときっぱりと別れる決心がつかない。
あたし別れました。
そうです。。。そうです。。。やっと別れたのですよ。それも上の手記を書いてから1年以上もかかった。レンゲさんのドクターも他の人はともかく、椎名さんとだけは別れなさいと言っていたのですよ。
だから、あたし、もう会わないように決めたのですわ。
でもねぇ、また、いつレンゲさんの気持ちが変わってしまうかもしれない。。。つまりね、レンゲさんだってオツムでは分かっているのですよ。でもねぇ、なかなか思っているようにゆかない。。。つまり、感覚的に。。。感情的に押し流されてしまう。僕が感覚的な生き方と言うのはそういう事ですよ。
あたしはどうして優柔不断なんでしょう?
レンゲさんの愛と性の世界に深く関わっているのですよ。