開眼式の翌々日には
こんなに天気がよさそうなので
急に思い立って
紀州富士といわれる龍門山に登ってきた。
これを奇襲という。
形のいい山をご当地の「富士」と呼ぶことがよくあり、
「〇〇富士」のような「ご当地富士」は
全国各地にある。
さすがに「富士」は日本人の心の山といえる。
近畿では「近江富士」と呼ばれる
三上山なんかが有名だ。
今回登った「奇襲富士」、じゃなかった「紀州富士」は、
紀伊国名所図会の中で
「是を望むに、その形あたかも富嶽に似たり」
と書かれてあることからついた名前だといわれているが、
その山の姿を見ると、
なだらかな尾根の続く
とても富士とは言えない姿である。
ふもとの紀ノ川の右岸から眺めた姿がこれ。
富士の形とは程遠いが、
唯一山頂から紀ノ川にかけて広がる山すそが、
ある意味富士を彷彿させたのかもしれない。
実は下流の和歌山市あたりの
紀ノ川沿いから見ると、
富士山みたいなきれいな形になっていて、
紀ノ川を航行する船の目印になっていたそうだ。
さらにこの山、
そんな姿だけが特徴的なのではなくて、
もっと意外な別の特徴を持った山だったのだ。
手持ちの地図資料を探ってみると、
ぐるっとひと廻りのコース設定ができる
というかそういうコースで登るのが
一般的なようだったので、
登山口まで車で行き登ることにした。
地図ではかなり細い道を
車で登って行くようだったが、
あの当麻寺の山道を登った経験があれば
何も怖いことはないだろうと、
ミセスの軽自動車を駆って行った。
粉河から紀ノ川を龍門橋で渡り、
なおもグングン登って行く。
案の定、すれ違いがほとんどできないような
果樹園の中の細い道をガルルル~
と上がっていったところに、
小さな空き地がいくつかあって、
登山者の駐車場になっている。
家からここまで約一時間のドライブである。
靴をはきかえたり帽子を被るなど
身支度を整え、さらにナビをセットして、
標識を確認してスタートをした。
今回のコースは、一般的なルートである
田代ルートから入って中央コースを下ってくるコースだ。
トレースはこんな感じ。
たいていはこの地図には
地名とか出てくるのに、
今回は全部山の中なので
地名等の表示が出ないため、
よくわからないでしょう。
まあ、山の案内本にはよく出てくる山だから、
参照してくださいな。
とにかくこんな風に、
ぐるっと一周回ってきた。
では、田代ルートに入って行きましょう。
車を停めた空き地からすぐに登りが始まる。
踏み跡はしっかりしているものの、
ところどころにこんな倒木が
あったりするので注意して進もう。
登り始めてすぐに思ったのは、
植生がけっこう変化に富んでいて
植物が豊富だという事。
こんなシダ類もあったり、
季節が来ればショウジョウバカマも咲いているだろう。
その気になれば山菜も様々手に入れられるところのようだ。
これは「うるい」と呼ばれる
オオバギボウシの若芽。
独特のぬめりがあっておいしいのだが、
今日の目的ではないので
もちろん採取はしない。
ていうか、ここでは採取してはいけない。
ところでこの「うるい」という山菜は、
毒のあるコバイケイソウの若芽とよく似ており、
トリカブトとニリンソウの間違いのように、
よく中毒騒ぎを起こすことで有名だ。
見分けるポイントは
葉脈の形とだけ紹介しておこう。
山道のところどころにあるこの植物が、
実はこの山の特徴の原因となっている
「ヒメカンアオイ」。
ウマノスズクサ科のこの植物は
よく似た種がいっぱいあって、
同定が難しい。
なので、既存のガイドブックや
自治体のホームページなんかに
書かれてある記載から頂戴した。
株の根元の地味な花が特徴的だ。
花は地味だけど、
この植物は派手な生き物の食草になる。
それが「ギフチョウ」。
以前葛城山で出会って写真を撮ったこともあるこの蝶が
生息する最南端が、
何とこの「龍門山」なのである。
ワクワクと続く。