カーナビが好きだ。それは「私は地図が好きだ」と言っているのと同義かも知れないが,とにかく,自動車を運転すること自体はそれほど好きじゃないにもかかわらず,自動車に乗ってカー・ナビゲーション・システムという情報通信機器に接する行為はなかなかに楽しい。クルマが走るのに合わせてモニターのナビマークが車を先導して,というか車に追従して地図上をクネクネヨロヨロと動くさまをチラチラ眺める(脇見運転には御用心!)。時に本来のルートをはずれ,あるいは道に迷うことなどもあるが,あわてて必死になって正しいルートを探し出し,それを御主人(ワタシのことであります)に伝えんとするそのイジマシイまでのひたむきさ。何ともいえず不思議で愉快な気分になる。人工衛星を介した地球規模での三角測量,絶えず移ろい流されゆく自己存在位置の継続的な追跡作業,アイデンティティの模索と確立。ほんの10数年前には全く考えられなかった最先端の高度な技術がごく身近で苦もなく実現されているわけで,まこと,科学技術の目眩く進歩には改めて驚かされる。実はワタクシのささやかなる夢は,東京23区内や横浜旧市街などの迷宮都市のあちこちを車の助手席に座って延々と移動しながらカーナビを思う存分イジクリ回すことだったりする(残念ながらそのような機会には未だ恵まれていないけれども)。
もっとも広い世間には,カーナビなんか使う奴はドライブの本当の楽しみを知らない人間だ,などとノタマウ人種が,特に「知的カーマニア」を自称・他称される方々のなかに少なくないようだ。自分の行き先くらい自分自身で探せないでどうする!未知の道を走る楽しみが奪われるじゃないか!とかね。ところで,そんな彼らの主張するドライビング・プレジャーとは,四角い窮屈な鉄の箱の中に入って区切られた窓枠から見知らぬ土地の瞬時に過ぎ去る風景・風景・風景をセワシナク楽しむ,ってことなのかな? 私自身はそんなスタイルはお生憎様,御免こうむりたい。自らの眼前に展開しそして過ぎ去りゆく風景は,たとえばゆっくりと歩きながら,あるいは自転車に乗ったりしながら,もっと“直に”感じたいと思う。風景とは単なる一過性の情報の羅列などではなく,ある悠久なる共同意思のもとに連綿と形作られた土地の歴史であり大地の物語であるのだから。
それはさておき。 現在,ウチの車に載せているカーナビはアルパイン社製のNVE-055Zという機種で,約5年ほど前に購入したものである。世間的に見れば比較的初期の段階でカーナビを導入した部類に属するといっていいかと思う(何せ新しモノ好きなもんで)。既に4~5世代前の古色蒼然たる製品だ。このナビ君が最近少々体調を崩しているらしく,時に気難しく,時に頭を抱えこみ,時にトンデモナイ答えを提示したりする。以下は少々,いや極めてローカル・ネタになるかと思うゆえ,興味のない方は無視していただきたい。
先週の日曜日,良く晴れて暖かく気持ちのいい陽気だったので,表丹沢の「戸沢出合」まで家族で出掛けた。二級河川金目川水系水無川本谷の最上流部,源次郎沢や戸沢などの支沢が合流して集まるやや開けた谷間で,周囲の尾根筋へは天神尾根,政治郎尾根,書策新道などの登山道が通じ,また,出合の周辺には本谷山荘,戸沢山荘,作治小屋など山小屋も数軒立地し,表丹沢エリアの主要な登山基地のひとつとなっている場所だ。夏季には臨時派出所も設置される。アプローチが比較的楽なわりにはそれなりに深山源流の雰囲気を味わうことが出来ることから,ちょっとしたハイキングやキャンプに相応しい所としても知られている。
家を出る直前にカーナビで探索すると,我が家から戸沢出合まで「所要時間11分,距離5.8km」と表示された。まさかね! いくらなんでも,そんな山奥に住んでないワイ! どういう計算をしとるんじゃ,とは思ったが,とりあえずナビ・ルートに沿って「県道秦野渋沢線」を北西に向かうことにした。
「横野入口」付近からカーナビは妙に頓珍漢な方角を指示し始めた。何故だか葛葉川上流方面に誘導したがっているようだ。今日はそっちには行かないんだってバ。あるいは「三ノ塔尾根」をブチ抜いて直線距離で案内しているのかも知れないなぁ。私自身,戸沢出合まで車で出掛けるのは初めてなのだが,これまでに何度か歩いて行ったことのある場所であるため,一応正しいルートは承知している。従って,取りあえずはナビの誘導を無視して勝手に本来の道を進む。ナビ君は盛んに,そっちじゃない! そこを左に曲がって! などと叫んでいるが,知ったことか。
「戸川交番前」の交差点を右に折れて水無川上流方面へと向かう。「県立秦野戸川公園」を過ぎ「リトルスイス滝沢園」のキャンプ場を過ぎて,道は未舗装の「戸川林道」に入る。今夏の豪雨の影響だろうか,路面は非常に荒れており,所々でかなり深い溝が掘られている。我が家のクルマは当地周辺に多く見られる例の巨大四駆などではなく,ごく普通の小型自動車であるため,ガタガタ道で車の底を擦らないようと慎重運転を心掛ける。このあたりでナビ君は,もう知らない!とばかりルート案内を完全に放棄してしまった。ヲイヲイ。
林道の途中にある丹沢名水のひとつ「竜神の泉」は,休日だというのに水汲み人達は全く来ておらず,あたりは閑散としていて水場の湧水も垂れ流し状態であった。日頃から名水を必要以上にアリガタガッテいる皆さん方も,やはりガタガタ林道の方は敬遠して道路の整備された「護摩屋敷の泉」か「葛葉の泉」の方に水汲みに行っているのかな。
さらに上流部へと進んで「新茅山荘」付近を通り過ぎると,路肩の狭い空き地にテントを張っている数名がおり,髭面の若いオニイサンが何やらうれしそうに道端で無心に太鼓をたたいていた。不思議なヒトもいるものである。
とかなんとか道中のいろんな風景を眺めながらノロノロと走り続け,結局,家から約40分近くかかって終点の戸沢出合に到着した。子供らにとってはこのような長い時間,ガタガタ林道を車で走り続けるのは初めての経験であるが,意外にも楽しそうであった。途中,車酔いをしないかと心配したが,ガタガタのスウィングが結構気持ち良かったらしい。現地では,渓流のほとりでさっそくオベントを広げ,それから後は水辺で遊んだり山道を散策したり,都合2時間あまりの楽しい時間を過ごした。
それにしても,今回はナビ君の面目丸つぶれであります。実はごく最近,アルパイン社からカーナビの新製品のビデオ・カタログが送られてきたのだが,それなどを見ると,現在のカーナビの性能たるや実に凄いもんである。自動車本体については5年たってもちっとも古びたとは思われないのに(少なくとも私の評価のなかでは),たかだか車載オプションたるカーナビの方は5年の歳月を経て全く別製品といっていいほどまでに進化・変貌してしまっている。この技術の進歩,いささか不穏当な例えかも知れないが,まるでMS Windows2.1が一気にWindows2000に変わったようなもんだ(え? Windows2.1なんて今どき誰も知らないって?) もし諸般の事情(主として金銭的なソレ)が許せば,是非とも最新型のDVDカーナビ機種に変えたいという気持ちは内心大いにあるんだけれども..... ま,でもやっぱり「事情」が許さないだろうなぁ(いや,その.... 妻子方面からのクレーム攻撃がネ)
もっとも広い世間には,カーナビなんか使う奴はドライブの本当の楽しみを知らない人間だ,などとノタマウ人種が,特に「知的カーマニア」を自称・他称される方々のなかに少なくないようだ。自分の行き先くらい自分自身で探せないでどうする!未知の道を走る楽しみが奪われるじゃないか!とかね。ところで,そんな彼らの主張するドライビング・プレジャーとは,四角い窮屈な鉄の箱の中に入って区切られた窓枠から見知らぬ土地の瞬時に過ぎ去る風景・風景・風景をセワシナク楽しむ,ってことなのかな? 私自身はそんなスタイルはお生憎様,御免こうむりたい。自らの眼前に展開しそして過ぎ去りゆく風景は,たとえばゆっくりと歩きながら,あるいは自転車に乗ったりしながら,もっと“直に”感じたいと思う。風景とは単なる一過性の情報の羅列などではなく,ある悠久なる共同意思のもとに連綿と形作られた土地の歴史であり大地の物語であるのだから。
それはさておき。 現在,ウチの車に載せているカーナビはアルパイン社製のNVE-055Zという機種で,約5年ほど前に購入したものである。世間的に見れば比較的初期の段階でカーナビを導入した部類に属するといっていいかと思う(何せ新しモノ好きなもんで)。既に4~5世代前の古色蒼然たる製品だ。このナビ君が最近少々体調を崩しているらしく,時に気難しく,時に頭を抱えこみ,時にトンデモナイ答えを提示したりする。以下は少々,いや極めてローカル・ネタになるかと思うゆえ,興味のない方は無視していただきたい。
先週の日曜日,良く晴れて暖かく気持ちのいい陽気だったので,表丹沢の「戸沢出合」まで家族で出掛けた。二級河川金目川水系水無川本谷の最上流部,源次郎沢や戸沢などの支沢が合流して集まるやや開けた谷間で,周囲の尾根筋へは天神尾根,政治郎尾根,書策新道などの登山道が通じ,また,出合の周辺には本谷山荘,戸沢山荘,作治小屋など山小屋も数軒立地し,表丹沢エリアの主要な登山基地のひとつとなっている場所だ。夏季には臨時派出所も設置される。アプローチが比較的楽なわりにはそれなりに深山源流の雰囲気を味わうことが出来ることから,ちょっとしたハイキングやキャンプに相応しい所としても知られている。
家を出る直前にカーナビで探索すると,我が家から戸沢出合まで「所要時間11分,距離5.8km」と表示された。まさかね! いくらなんでも,そんな山奥に住んでないワイ! どういう計算をしとるんじゃ,とは思ったが,とりあえずナビ・ルートに沿って「県道秦野渋沢線」を北西に向かうことにした。
「横野入口」付近からカーナビは妙に頓珍漢な方角を指示し始めた。何故だか葛葉川上流方面に誘導したがっているようだ。今日はそっちには行かないんだってバ。あるいは「三ノ塔尾根」をブチ抜いて直線距離で案内しているのかも知れないなぁ。私自身,戸沢出合まで車で出掛けるのは初めてなのだが,これまでに何度か歩いて行ったことのある場所であるため,一応正しいルートは承知している。従って,取りあえずはナビの誘導を無視して勝手に本来の道を進む。ナビ君は盛んに,そっちじゃない! そこを左に曲がって! などと叫んでいるが,知ったことか。
「戸川交番前」の交差点を右に折れて水無川上流方面へと向かう。「県立秦野戸川公園」を過ぎ「リトルスイス滝沢園」のキャンプ場を過ぎて,道は未舗装の「戸川林道」に入る。今夏の豪雨の影響だろうか,路面は非常に荒れており,所々でかなり深い溝が掘られている。我が家のクルマは当地周辺に多く見られる例の巨大四駆などではなく,ごく普通の小型自動車であるため,ガタガタ道で車の底を擦らないようと慎重運転を心掛ける。このあたりでナビ君は,もう知らない!とばかりルート案内を完全に放棄してしまった。ヲイヲイ。
林道の途中にある丹沢名水のひとつ「竜神の泉」は,休日だというのに水汲み人達は全く来ておらず,あたりは閑散としていて水場の湧水も垂れ流し状態であった。日頃から名水を必要以上にアリガタガッテいる皆さん方も,やはりガタガタ林道の方は敬遠して道路の整備された「護摩屋敷の泉」か「葛葉の泉」の方に水汲みに行っているのかな。
さらに上流部へと進んで「新茅山荘」付近を通り過ぎると,路肩の狭い空き地にテントを張っている数名がおり,髭面の若いオニイサンが何やらうれしそうに道端で無心に太鼓をたたいていた。不思議なヒトもいるものである。
とかなんとか道中のいろんな風景を眺めながらノロノロと走り続け,結局,家から約40分近くかかって終点の戸沢出合に到着した。子供らにとってはこのような長い時間,ガタガタ林道を車で走り続けるのは初めての経験であるが,意外にも楽しそうであった。途中,車酔いをしないかと心配したが,ガタガタのスウィングが結構気持ち良かったらしい。現地では,渓流のほとりでさっそくオベントを広げ,それから後は水辺で遊んだり山道を散策したり,都合2時間あまりの楽しい時間を過ごした。
それにしても,今回はナビ君の面目丸つぶれであります。実はごく最近,アルパイン社からカーナビの新製品のビデオ・カタログが送られてきたのだが,それなどを見ると,現在のカーナビの性能たるや実に凄いもんである。自動車本体については5年たってもちっとも古びたとは思われないのに(少なくとも私の評価のなかでは),たかだか車載オプションたるカーナビの方は5年の歳月を経て全く別製品といっていいほどまでに進化・変貌してしまっている。この技術の進歩,いささか不穏当な例えかも知れないが,まるでMS Windows2.1が一気にWindows2000に変わったようなもんだ(え? Windows2.1なんて今どき誰も知らないって?) もし諸般の事情(主として金銭的なソレ)が許せば,是非とも最新型のDVDカーナビ機種に変えたいという気持ちは内心大いにあるんだけれども..... ま,でもやっぱり「事情」が許さないだろうなぁ(いや,その.... 妻子方面からのクレーム攻撃がネ)