菩提峠への道,そして「名水」に群がるヒトビト

2000年05月20日 | サトヤマ,サトヤマ
 今週の山歩きは,丹沢表尾根の菩提峠(標高約780m)までの道を辿った。

 自宅から葛葉川沿いに北西の方角に向かい,途中,山麓の菩提集落を過ぎ,道路の両側の斜面に展開する茶畑や,人家からやや離れたところにポツンと立地する障害児施設園の脇を通り抜けて,青少年野外センター入り口付近で桜沢林道に入る。ここまで,クルマであれば家からほんの10分足らずでなのであるが,歩くとなるとゆうに1時間以上はかかってしまう。

 桜沢林道の始点から急な坂道をほんの5分ばかり登ると,「葛葉の泉」という,いわゆる丹沢名水の「人気サイト」がある。周辺は小ぎれいな園地として整備されており,平日の午前だというのに,わざわざ名水を汲みに来る御苦労様な人々でこれまた結構にぎわっている。そこの園地で一休みを兼ねて,ヒマにまかせてほんの少しだけ彼らの行動生態を定点観測してみた。5月19日(金)午前10時40分~55分の15分間における状況は以下のごとし。

 「名水」への来訪者数は,自動車の台数で計13台,人数にして合計22名である。いつもだと小型トラックにポリタンク満載という節操のないクルマも見られるのだが,この日この時間にはいなかった。彼らの居住地の内訳を自家用車のナンバー・プレートによりチェックすると,湘南ナンバー6台,相模ナンバー4台,川崎ナンバー,品川ナンバー,大宮ナンバーが各1台となっている。当市は湘南ナンバー地域に属するゆえ地元民が約半分を占めるかと思うとこれがスットコドッコイ,遠く藤沢・鎌倉方面からノコノコやって来る湘南ナンバーも少なからず含まれている可能性が極めて大である(例の「買ってはいけないノーテンキ医者」のようにね)。だいいち,当市の約半数以上の世帯の上水道は地下水を水源としているため,ここの「名水」が水道の蛇口をひねれば出てくるようなものであるわけだし。

 来訪者の年齢層は中高年が主体で,概ねクルマ1台につき男1人あるいは男女の夫婦という取り合わせだ。10~20代の青年男女はまったくいない。平日ゆえ当然コドモもいない。中年~老人男性の風体に着目すると,ハッキリと二つのタイプに区分できる。一つは中年の水商売関係者風,もう一つは初老のインテリ定年退職者風。前者はアブラぎったパンチパーマ,後者はシルバー・グレーのゴマ塩頭。乗ってきたクルマは,前者はワンボックスバンないしライトバン(ボンゴ・フレンディー,レガシー・ワゴン,etc.),後者は中型ないし大型セダン(マークⅡ,セドリック,etc.)。取水量は,当然ながら前者は20リットルのポリタンで10~20本以上,これに対して後者は同ポリタンがせいぜい2~3本か,もしくは2リットルのペットボトルを数本といったつつましさである。それにしても,ああ,何というステレオタイプ。

 かような連中が,知らぬ者同士おたがいに雑談を交わすこともなく,一応はそれなりの秩序を保ちながら,ただひたすら黙々と水汲みに専念している。汲み終わったら,即,御帰宅である。もっとも,休日になるとそれこそワンサカ大勢押し寄せ過ぎて本来のキャパシティーをオーバーしてしまい,時には,順番をきちんと守れ!クルマの止め方が悪い!とか何とかで水汲み人同士の喧嘩が始まったりするわけだ。トレンドの歪んだ構図,健康志向のなれの果て,何ともナゲカワシイ風景ではある。

 話がどうやら「葛葉の泉」で立ち往生してしまった。私の歩行の方は実はそこから先が本番になる。以下ざっと記録しておくと,桜沢林道を登りつめ,そのあと表丹沢林道の支線に移って,ちょうど12時頃,菩提峠についた。空は曇天,強い風が峠の北側の諸戸・札掛方面から絶えず吹き上げてきて,カヤトの草原がザワザワと波打っている。山上はいまだ早春の趣である。登山者には一人も出会わなかった。峠から岳ノ台(標高899m)の方に少し登ったところにハンググライダーの離陸基地があり『警告!立入禁止!』などという無礼な看板が設置されているが,当然ながら無視してその上で下界の広々とした景色を眺めながらオニギリを食べた。オベントは眺めのいい場所で食べるに限る。

 帰路は菩提林道を下った。ここは林道とはいっても幅1mかそこらの普通の登山道で,スギ・ヒノキ植林が主体の樹林地のなかを頼りない細道がジグザグに急降下してゆく。時には豪雨による土砂流出で道が途切れてしまっているような場所もあるが,スギ林の所々に赤テープが目印になって行く手を導いてくれる。途中で向山林道に合流した。こちらの方は丹沢山中では各地に見られる幅員3~4m規模の立派な林道である(ただし一般車両は通行止め)。自然と歩行のペースを速めながら,そのまま一気に里まで下っていった。

 家に戻って歩数計を見ると約24,000歩を示していた。5時間近い歩行の成果である (ところで仕事の方はどーした!)
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« サトヤマとリンドー (里山... | トップ | web page 百花繚乱 »
最新の画像もっと見る

サトヤマ,サトヤマ」カテゴリの最新記事