前回の続きです。
無回転サーブが落ちたり伸びたりする些細なきっかけは渦の乱れ
ニダー君 (T人T) ナムナム(渦の回転方向には自信がない orz)
水平に飛んでいる無回転ボールは、スピードが落ちると、カルマン渦の抵抗により2つの挙動を起こします。一つは、落ちないで伸びてしまうこと。もう一つは揺れるように落ちること。
この2つは、どちらの目が出るか分からないサイコロのようなもの。なぜなら、カルマン渦の大きさや強さや向きは、体育館の空気の粗密に支配されているからです。たまたま上昇気流があれば伸びてしまう。コートの床が冷えていても伸びてしまう。特に、冷暖房を入れる夏と冬には変化が大きくなる。
空気の重さが変化すると浮力も変化するから動作は複雑になる
軟式ボールでも冷えると飛ばない
無回転サーブのボールは、一番似ている挙動がバドミントンのシャトル(羽根)です。高速だと真っ直ぐに飛ぶけど、スピードを殺すと揺れて落ちる。羽子板の羽根も同じですけど。韓国がバドミントン国際試合の自国開催で、体育館の風を韓国有利にした恥ずかしい話は有名です。それほど風に左右されやすい。
バレーボールの場合でも、コートの中に温度差があると、弱いですが上昇気流や下降気流が発生します。温度が低くて密度の高い高気圧と、温度が高くて密度の低い低気圧の空気層を成すこともある。試合中に低気圧が接近しただけで、用意した公式球の反発係数も違ってくる。サーブを打つ前に、ボールをビタンビタンと床に叩きつけるのは、微妙な反発力を確認しているのです。長年培った経験則がそうさせるのでしょう。
だから、ボールをコントロールしたい選手は、あなた任せの無回転ではなく、何らかの回転を与えるサーブを試みます。ドライブサーブやジャンピングサーブもその一つ。
野球の場合、ボールは握り方と投げ方で様々に変化します。ボールに回転を与えない球種はフォークボールとナックルボール。親指と小指で握るパームボールも無回転に近いです。
フォークボールは、人差指と中指で挟んで抜くように投げるので、実は落ちていないで急ブレーキがかかっているだけという説があります。プロには打たれなくても草野球のアマには打たれた、元横浜の佐々木選手は有名。プロは、速球にタイミングを合わせるからブレーキのかかったボールを打てなくなる。
そういう意味では、バレーボールの無回転サーブは、最初からスピードを殺して投げるナックルボールに近いのです。ナックルボール専用の巨大なキャッチャーミットがあるくらいで、大リーグの捕手も揺れて落ちるボールの変化を予測できません。おそらく、ナックルボールは、回転軸そのものが変化するポールシフトを起こしているのです。
バレーボール女子で、外人が速くて落ちるボールが得意なのは、球質がフォークボールに似ているからで、フォークボールと同様に打ち出す(投げ出す)角度が重要になる。水平より少し打ち下ろすと良く落ちる。仰角を付けると落ちなくなる。背が高い外人が有利なのです。日本人にはナックルに近い緩い球の方が合っているのです。
引地舞さんのサーブの軌跡を解析してみました。無回転ではなく、1回転か2回転しているように見えます。ミカサのボールは回転軸が分かりにくい欠点があり、レシーバーにとって、落ちるか伸びるかの判断が遅くなりがちになる。また、回転軸の選び方一つで、独特の模様が揺れているような錯覚をもたらす。いずれにしても、回転数を少なくするのがポイントです。
引地舞のサーブ 相当複雑に飛んでいる
ミカサのボールは黄色い茄子に青いヘタ
無回転サーブはイメージが独り歩きしていますが、あなた任せが嫌なら、1回転か2回転の極低回転を与えるのがベストのような気がします。回転の与え方一つで、バドミントンのシャトルのような落ち方をするかもしれない。引地舞のポールシフトサーブには、バレーボールにまだまだ可能性が秘められていることが暗示されているのです。なお、研究しすぎて肩や肘を壊さないように (;^ω^)
解析に使った 2015夏 サーブ集 改訂版
http://youtu.be/07B8hlLaq1M
「引地舞のポールシフトサーブ その3 温度差による変化の実際」に続く
おまけ
レシーバーから見たボールの回転と曲がる方向
回転軸は人によって正反対にもなるし横倒しにもなる
重心を外して叩くと軸が2つ出来るので変化が大きくなる
野球でもスライダーはボールの真ん中を外して握る
強い回転を与えるスライダーはボールの右側に切るように叩く
無回転に近い場合は中心からやや右を強く叩く
シュート回転はサークルチェンジのように人差指と親指は使わないでボールを左側に切る
ただし、シュート系は手首や肘を捻るので肩に負担が大きく故障しやすい
引地舞さんのように叩くだけで回転を与えるのが楽
ボールに働く揚力とダウンフォース
バレーボールはソフトドームトゥイーターと同じ呼吸球でもある
ソフトドームトゥイーターは布で出来ていて押せば凹む
ボイスコイルが引っ込んだ時にドーム内の空気圧が高まって音圧を発生する
振動板が膨らむから呼吸球と呼ばれる
エフライム工房 平御幸
無回転サーブが落ちたり伸びたりする些細なきっかけは渦の乱れ
ニダー君 (T人T) ナムナム(渦の回転方向には自信がない orz)
水平に飛んでいる無回転ボールは、スピードが落ちると、カルマン渦の抵抗により2つの挙動を起こします。一つは、落ちないで伸びてしまうこと。もう一つは揺れるように落ちること。
この2つは、どちらの目が出るか分からないサイコロのようなもの。なぜなら、カルマン渦の大きさや強さや向きは、体育館の空気の粗密に支配されているからです。たまたま上昇気流があれば伸びてしまう。コートの床が冷えていても伸びてしまう。特に、冷暖房を入れる夏と冬には変化が大きくなる。
空気の重さが変化すると浮力も変化するから動作は複雑になる
軟式ボールでも冷えると飛ばない
無回転サーブのボールは、一番似ている挙動がバドミントンのシャトル(羽根)です。高速だと真っ直ぐに飛ぶけど、スピードを殺すと揺れて落ちる。羽子板の羽根も同じですけど。韓国がバドミントン国際試合の自国開催で、体育館の風を韓国有利にした恥ずかしい話は有名です。それほど風に左右されやすい。
バレーボールの場合でも、コートの中に温度差があると、弱いですが上昇気流や下降気流が発生します。温度が低くて密度の高い高気圧と、温度が高くて密度の低い低気圧の空気層を成すこともある。試合中に低気圧が接近しただけで、用意した公式球の反発係数も違ってくる。サーブを打つ前に、ボールをビタンビタンと床に叩きつけるのは、微妙な反発力を確認しているのです。長年培った経験則がそうさせるのでしょう。
だから、ボールをコントロールしたい選手は、あなた任せの無回転ではなく、何らかの回転を与えるサーブを試みます。ドライブサーブやジャンピングサーブもその一つ。
野球の場合、ボールは握り方と投げ方で様々に変化します。ボールに回転を与えない球種はフォークボールとナックルボール。親指と小指で握るパームボールも無回転に近いです。
フォークボールは、人差指と中指で挟んで抜くように投げるので、実は落ちていないで急ブレーキがかかっているだけという説があります。プロには打たれなくても草野球のアマには打たれた、元横浜の佐々木選手は有名。プロは、速球にタイミングを合わせるからブレーキのかかったボールを打てなくなる。
そういう意味では、バレーボールの無回転サーブは、最初からスピードを殺して投げるナックルボールに近いのです。ナックルボール専用の巨大なキャッチャーミットがあるくらいで、大リーグの捕手も揺れて落ちるボールの変化を予測できません。おそらく、ナックルボールは、回転軸そのものが変化するポールシフトを起こしているのです。
バレーボール女子で、外人が速くて落ちるボールが得意なのは、球質がフォークボールに似ているからで、フォークボールと同様に打ち出す(投げ出す)角度が重要になる。水平より少し打ち下ろすと良く落ちる。仰角を付けると落ちなくなる。背が高い外人が有利なのです。日本人にはナックルに近い緩い球の方が合っているのです。
引地舞さんのサーブの軌跡を解析してみました。無回転ではなく、1回転か2回転しているように見えます。ミカサのボールは回転軸が分かりにくい欠点があり、レシーバーにとって、落ちるか伸びるかの判断が遅くなりがちになる。また、回転軸の選び方一つで、独特の模様が揺れているような錯覚をもたらす。いずれにしても、回転数を少なくするのがポイントです。
引地舞のサーブ 相当複雑に飛んでいる
ミカサのボールは黄色い茄子に青いヘタ
無回転サーブはイメージが独り歩きしていますが、あなた任せが嫌なら、1回転か2回転の極低回転を与えるのがベストのような気がします。回転の与え方一つで、バドミントンのシャトルのような落ち方をするかもしれない。引地舞のポールシフトサーブには、バレーボールにまだまだ可能性が秘められていることが暗示されているのです。なお、研究しすぎて肩や肘を壊さないように (;^ω^)
解析に使った 2015夏 サーブ集 改訂版
http://youtu.be/07B8hlLaq1M
「引地舞のポールシフトサーブ その3 温度差による変化の実際」に続く
おまけ
レシーバーから見たボールの回転と曲がる方向
回転軸は人によって正反対にもなるし横倒しにもなる
重心を外して叩くと軸が2つ出来るので変化が大きくなる
野球でもスライダーはボールの真ん中を外して握る
強い回転を与えるスライダーはボールの右側に切るように叩く
無回転に近い場合は中心からやや右を強く叩く
シュート回転はサークルチェンジのように人差指と親指は使わないでボールを左側に切る
ただし、シュート系は手首や肘を捻るので肩に負担が大きく故障しやすい
引地舞さんのように叩くだけで回転を与えるのが楽
ボールに働く揚力とダウンフォース
バレーボールはソフトドームトゥイーターと同じ呼吸球でもある
ソフトドームトゥイーターは布で出来ていて押せば凹む
ボイスコイルが引っ込んだ時にドーム内の空気圧が高まって音圧を発生する
振動板が膨らむから呼吸球と呼ばれる
エフライム工房 平御幸
サーブの解析をありがとうございます。
無回転ボールが結構好きなのですが、カルマン渦の抵抗でどちらの目が出るかわからないサイコロみたいなものだというのが興味深かったです。
引地選手のサーブは動画でも確認しましたが、そうとう面白い回転をしていますね。なかなか打てるものではないと思います。
角度なども関係して、外国人と日本人でサーブに違いが出るのも納得です。
サーブはかなり高度なテクニックのような気がしますが、色々と研究しがいがありそうですね…
無回転サーブはネットを過ぎた辺りで挙動が変化します。ここで落ちれば加速度的に落ちる。ここで落ちないと果てしなく伸びる。
川村小捺さんも引地舞さんと同じような回転をするみたいです。2人で研究しているのか (@_@;)
上の引地舞さんの回転は、縦のポールで1回転半くらいだからと思います。わずかなシュート回転ですね (;´∀`)
サーブの解説有難うございます!
図がとても分かりやすく、ちょいちょい出てくるニダー君がいい仕事してますねw
バレーボールでも体育館の温度環境で結構違ってくるものなんですね。
やっていた時は全然気づいていませんでしたorz
サーブがここまで奥が深いとは思っていませんでした。
試合観戦での注目ポイントにしたいと思いますm(__)m
無回転サーブで画像検索したらニダーくんが出てきたのには笑いました (;´∀`)
それほど、無回転サーブの理論を画像で説明しているサイトが少ないということです。打ち方だけ教えれば良いというものではありませんね (・(ェ)・)
巨大な竜巻の発生も、最初の一巻きは小さな渦に過ぎません。バレーボールの渦抵抗も同じ。僅かな最初の一巻きが大きな渦抵抗になる。だから、微小な空気の変化を馬鹿にできないのです。
選手が実感できる風量や気圧の変化は、流体力学的な視点からはとても大きなものなのです。分からなくて当然だと思います。