前回のオカルトスピーカーでは、肝心なことを意図的に抜かして書いていました。そもそも、オカルトスピーカーの存在を知ったのは、ある人のメールに書かれていた(おそらく絶賛)からですが、その返事で次のように書いています。
「弦楽器の場合、弦は横波振動で、これだけでは音になりません。それで筐体に駒を介して弦を連結し、横波を縦波に変換して音にしているのです。寺垣氏の実験は、縦波への変換効率を上げるには、平面よりは曲面が良いというだけのものです。」
このように書くと難しいと思われるかもしれませんが、要するに寺垣理論の波動とは、小学校でやる糸電話と同じ原理なのです。あるいは、レールや橋の欄干を叩いて、遠くで耳を当てれば聞こえる現象です。寺垣氏は、糸の代わりにカーボン製のゴルフクラブを使っただけなのです。この現象に必要なのは、糸電話の場合は張力であり、カーボンや鉄の場合は固体なので強度や粘度というファクターとなります。
スピーカーのコーンは、前後運動による空気の粗密で縦波を発生させ、それが音として聞こえます。しかし、コーンの設計に音速という概念があり、ボイスコイルに加えられた力がコーンの中心から外縁に到達する時間を問題にします。この反応が早ければ早いほど、音圧発生において内側と外側の時間差がなくなります。差が大きくなると、内と外が団扇のように逆位相で動くようになります。これでは信号が打ち消しあったり、逆に強調される異常振動となります。
しかし、先の糸電話理論(馬鹿馬鹿しくて波動理論とは言えない)では、コーンも横波を伝達する媒体として認識されます。前後のピストン運動は縦波を発生させますが、同時に糸電話作用で横波も発生させているのです。この横波は、エッジからフレームを伝い、最後にはキャビネット全体を振動させます。たとえエッジレスにしても、磁気回路からフレームを伝ってキャビネットを振動させるのです。
ホタテ屋さんのミカエルはユニットがFE126Eですが、この製品はフレームが安物の鉄板です。そのせいかは知りませんが、高域に金属的な響きがあると指摘してきました。おそらくはフレームが鳴いているのです。粘土タイプのエポキシで補強すれば改善されると思います。
このように、スピーカーはコーン自体に横波を伝達する作用があるのですから、わざわざ何百万円もかけなくても、寺垣氏の糸電話理論によるキャビネットの共振は可能なのです。ただし、分割振動は悪で正しいピストンモーション帯域だけを使うという、実に技術者らしい考え方も昔からあります。日立のメタルコーンや各社の平面振動板が全盛だった頃は、ウーファーやスコーカーやトゥイーターというユニットが帯域分割を受け持つので、3ウェイは当たり前で、中には5ウェイのシステムも存在しました。
先に、横波は音が聞こえないと書きましたが、弦楽器も弦を裸で弾けば少しだけ縦波を発生させます。しかし、弦楽器は横波を駒を介して胴に伝えて縦波振動を励起するのです。横波の中では例外的に、鞭のように先端速度がマッハ(音速)を越える事で、衝撃波を発生させる場合があります。サーカスの猛獣使いの鞭がパーンというのは、叩いている音ではなくて、鞭の先端が空気を切り裂くときの衝撃波なのです。ジェット戦闘機と同じです。
実は、FE206Eのように、ダブルコーンと呼ばれるスピーカーユニットがあります。コーンのボイスコイルに小さいサブコーンを張り付けたものです。サブコーンはホーンとして働きますから、高域を補う効果があります。また、メインのコーンとの間で位相補正に働く場合もあります。しかし、サブコーンはエッジを持っていないので、鞭と同じように、先端スピードが極端に上がるのです。これが、サブコーンを持っているユニットは音離れが良いとされる理由です。
このサブコーンの特性を生かし、シングルコーンの小口径フルレンジをエッジレスにして実験したことがあります。その時はダンパーも1/6だけカットしたのですが、コーンはふらふらで、息を吹きかけると動くのが見えます。エッジがないのでドーナツ型に穴が開くので、脱脂綿を裂いて、裂き口のケバでエッジを支える感じで塞ぎました。ところが、このユニット(FE87)を取り付けた超小型バスレフは音が良かったのです。パワーは全く入りませんが、音の自然さでは今でもナンバーワンだと思っています。
① 軽く息を吹きかけただけでコーンが動くほど反応が良い
② エッジレスなので、コーン周辺の先端スピードが上がる(鞭の理論)
③ 小口径なので音場感が良い
などなどの理由はありますが、バックロードホーンに入れるために和紙エッジを貼ったら、随分と平凡な音になりました。また、画用紙でラッパを作ってエッジレスのユニットの前に取り付けたことがあります。その時も、音が前に出てくるので驚きました。どうも、メーカーのスピーカー理論は欠陥だらけのようですね。
エフライム工房 平御幸
「弦楽器の場合、弦は横波振動で、これだけでは音になりません。それで筐体に駒を介して弦を連結し、横波を縦波に変換して音にしているのです。寺垣氏の実験は、縦波への変換効率を上げるには、平面よりは曲面が良いというだけのものです。」
このように書くと難しいと思われるかもしれませんが、要するに寺垣理論の波動とは、小学校でやる糸電話と同じ原理なのです。あるいは、レールや橋の欄干を叩いて、遠くで耳を当てれば聞こえる現象です。寺垣氏は、糸の代わりにカーボン製のゴルフクラブを使っただけなのです。この現象に必要なのは、糸電話の場合は張力であり、カーボンや鉄の場合は固体なので強度や粘度というファクターとなります。
スピーカーのコーンは、前後運動による空気の粗密で縦波を発生させ、それが音として聞こえます。しかし、コーンの設計に音速という概念があり、ボイスコイルに加えられた力がコーンの中心から外縁に到達する時間を問題にします。この反応が早ければ早いほど、音圧発生において内側と外側の時間差がなくなります。差が大きくなると、内と外が団扇のように逆位相で動くようになります。これでは信号が打ち消しあったり、逆に強調される異常振動となります。
しかし、先の糸電話理論(馬鹿馬鹿しくて波動理論とは言えない)では、コーンも横波を伝達する媒体として認識されます。前後のピストン運動は縦波を発生させますが、同時に糸電話作用で横波も発生させているのです。この横波は、エッジからフレームを伝い、最後にはキャビネット全体を振動させます。たとえエッジレスにしても、磁気回路からフレームを伝ってキャビネットを振動させるのです。
ホタテ屋さんのミカエルはユニットがFE126Eですが、この製品はフレームが安物の鉄板です。そのせいかは知りませんが、高域に金属的な響きがあると指摘してきました。おそらくはフレームが鳴いているのです。粘土タイプのエポキシで補強すれば改善されると思います。
このように、スピーカーはコーン自体に横波を伝達する作用があるのですから、わざわざ何百万円もかけなくても、寺垣氏の糸電話理論によるキャビネットの共振は可能なのです。ただし、分割振動は悪で正しいピストンモーション帯域だけを使うという、実に技術者らしい考え方も昔からあります。日立のメタルコーンや各社の平面振動板が全盛だった頃は、ウーファーやスコーカーやトゥイーターというユニットが帯域分割を受け持つので、3ウェイは当たり前で、中には5ウェイのシステムも存在しました。
先に、横波は音が聞こえないと書きましたが、弦楽器も弦を裸で弾けば少しだけ縦波を発生させます。しかし、弦楽器は横波を駒を介して胴に伝えて縦波振動を励起するのです。横波の中では例外的に、鞭のように先端速度がマッハ(音速)を越える事で、衝撃波を発生させる場合があります。サーカスの猛獣使いの鞭がパーンというのは、叩いている音ではなくて、鞭の先端が空気を切り裂くときの衝撃波なのです。ジェット戦闘機と同じです。
実は、FE206Eのように、ダブルコーンと呼ばれるスピーカーユニットがあります。コーンのボイスコイルに小さいサブコーンを張り付けたものです。サブコーンはホーンとして働きますから、高域を補う効果があります。また、メインのコーンとの間で位相補正に働く場合もあります。しかし、サブコーンはエッジを持っていないので、鞭と同じように、先端スピードが極端に上がるのです。これが、サブコーンを持っているユニットは音離れが良いとされる理由です。
このサブコーンの特性を生かし、シングルコーンの小口径フルレンジをエッジレスにして実験したことがあります。その時はダンパーも1/6だけカットしたのですが、コーンはふらふらで、息を吹きかけると動くのが見えます。エッジがないのでドーナツ型に穴が開くので、脱脂綿を裂いて、裂き口のケバでエッジを支える感じで塞ぎました。ところが、このユニット(FE87)を取り付けた超小型バスレフは音が良かったのです。パワーは全く入りませんが、音の自然さでは今でもナンバーワンだと思っています。
① 軽く息を吹きかけただけでコーンが動くほど反応が良い
② エッジレスなので、コーン周辺の先端スピードが上がる(鞭の理論)
③ 小口径なので音場感が良い
などなどの理由はありますが、バックロードホーンに入れるために和紙エッジを貼ったら、随分と平凡な音になりました。また、画用紙でラッパを作ってエッジレスのユニットの前に取り付けたことがあります。その時も、音が前に出てくるので驚きました。どうも、メーカーのスピーカー理論は欠陥だらけのようですね。
エフライム工房 平御幸