半日有給休暇後の「残業」の取り扱いは?
よく職場であるケースが、午前中に半日有給をとって、午後から仕事に出かけ、その日に残業することがあります。管理者から言わせれば、何かがあってどうしても休まなければならないのであればともかく、何もないのに休んで残業するとはなんぞやとなりかねません。元総務課長の私からするならば、そういう気持ちは分からないではありません。しかし、本来は、有給休暇は、体を休める時間であり、しかも何の理由も問うべきではありません。
一般の職員の残業となる時間、例えば終了時間が午後5時になっている場合に、午後5時からの労働時間について、割増をつけるべきでしょうか。有給休暇の半日の時間をどう見るかです。有給休暇については、通常の賃金(他に平均賃金、健康保険法の標準報酬月額の選択肢がないわけではありませんが、多くの企業では通常の賃金を支払っています。)の支払いをした場合に限り、「通常の出勤をしたものとして取り扱えば足りる」(昭27.9.20基発675号)としているだけです。労働時間とみなすとは書かれておらず、「休暇」ですので、あくまでも労働時間とみなすことはできないものです。
半日の有給休暇を労働時間としないのであれば、労働時間のスタートは、午後からになります。例えば就業時間の午後1時から5時まで仕事をしたのであれば、この日は単に4時間の仕事をしたことになります。引き続き、午後5時から9時まで4時間の「残業」として、一日で計8時間の仕事をしたとしても、労基法でいう法定労働時間の一日8時間を超えないことになります。ゆえに、割増賃金は加算しなくて良いことになります。時間単価は支払わなければなりませんが、割増賃金は付けなくてもよいのです。
会社によっては、それを承知の上で、事務手続きが煩わしいという理由から、割増をつけるところも多く見られますが、小規模の事業所であれば、だれがどういう状況であるかは把握しようと思わなくとも把握できるものであり、きちんと管理している以上は、従業員の待遇改善から勘案して支払っているのであれば格別、割増は付けなくてもなんら差し支えありません。
就業規則からは、法定労働時間を超過した場合に、割増を加算する旨の一般的な規定があれば、あとは、有給休暇を労働時間としてどうとらえるのかの法解釈の問題ですので、就業規則上もなんら問題はありません。ただし、法定労働時間ではなく、所定労働時間を超えた場合に、割増賃金を支払う旨の規定としている場合は、7時間を一日の所定労働時間としているときには、1時間が割増賃金の対象になるのは、9/26付けでお話ししているところです。
<参考>社長!その残業代払う必要はありません!!(すばる舎、和田栄著)
就業規則・諸規定作成マニュアル(日本法令p155-157、森・岩崎共著)