雇用保険の基本手当(旧失業保険)と老齢厚生年金は制度の趣旨が違い相容れないというのがその理由!!
昔、おおらかな時代では、失業保険(今の雇用保険の基本手当)と老齢厚生年金を同時にもらっていたことがありました。年金も、60歳からまるまるもらっていたのですが、65歳から支給への途中経過ということで、今では報酬比例部分しかもらえない状況になっています。(さらに、68歳までに伸びることについて社会保険審議会で議論されているとことが大きく報道されています。)。これも、原資がないという社会情勢から言えば、仕方がないのかもしれません。
そういえば、まだ高度成長期だった頃、未来学者の坂本二郎さんは、ずっとこのこと(原資がなくなること)について、人口動態から警鐘をならしてきたような気がするのですが、彼は85年に若くしてお亡くなりなっています。彼が生きていたらどうおっしゃるでしょうか。
ところが、予算がないことで、国の方でも気がついたのでしょうか。現在では、雇用保険の基本手当を受けている間は、60歳からの老齢厚生年金は、支給されないことになっています。
いわく、老齢年金が職業生活からの引退した人への所得保障なのに対して、雇用保険は、働き続けようとする人に対する生活保障です。老齢年金は、いわば、昔でいえば、ご隠居さんへの社会的な支援なのですが、雇用保険は、働く意思能力を待った人への社会的な支援なのです。同じ社会的な支援といっても、全く正反対なものなのですから、制度の趣旨から2つの給付は支給するのは、不合理だというわけです。私、還暦社労士としては、その一部年金をいただいていますが、言われてみれば、ご無理ごもっともという気がします。全く反論できません。とはいえ・・・、自分のこととなると・・・となるわけですが、皆が十分に満足する社会は、もう来ないのかもしれません。皆が十分でなくても、支えあって何とか生活できることで満足しなければならないのかもしれません。また、ここでは「十分」という表現は、適当でないのかもしれません。「満足」を知る=「足るを知る」ことも、必要なことかもしれません。
さて、この60歳からの老齢年金と雇用保険は同時に出ないとういう話は、次の議論にもつながります。雇用保険の基本手当は、28日ごとにハローワークで失業状態を確認してその期間の基本手当を支給することになりますが、その間、ちょっとどっかで働いて収入を得た場合は、失業と認められずに基本手当が出ないことだってあり得ます。その28日の間、その期間全部がそういった基本手当が全く出ないのは別にして、基本的には、一日でも基本手当をもらえば、年金はでません。極端な話、一日しか基本手当をもらっていないのもかかわらず、年金がもらえないのはおかしいのではないかという疑問がやはり生じます。しかし、国にいわせれば、最初の論点にもどって、雇用保険をもらったということは、働く意思があるのでしょう。その人が、引退する老齢年金をもらうこととは、相容れないでしょうとなるわけです。水戸黄門の印籠と一緒で、そういわれれば、そうなんだということになります。
そういうことで、基本手当をもらっている間は、途中ちょっと基本手当を支給されなかったとしても、基本的には、その期間は老齢年金はもらえなくなってしまいますが、同じ日数分の基本手当を受けた場合でも、年金の支給停止月数が、「月」の関係で異なることがありえますので、基本手当の支給対象となった日数を30日で割って、すなわち、基本手当を貰った月数相当分を支給対象日数から計算し直して、実際に老齢年金の支給が停止された月数が多いときは、その多くなった月数分を解除することになっています。最後に、実際の日数に合わせて調整して精算は行っているのです。
(ここで一言いいたいのですが、基本手当の対象日数となった日数を30で割るのですが、1未満の端数は1に切り上げとなっていますので、30で割った残りが、余り1日であったとしてもひと月多くなってしまいます。この場合は、基本手当が一日多いだけでも、基本手当支給月数が多く見られて、それに応じて解除される月数が少なくなって、損したような気分になりませんか。こんなところ、国はおおざっぱですが、予算がないので分かっていても知らないふりをしているのではと勘ぐってしまいます。)
支給停止解除月数=年金支給停止月数-*基本手当の支給対象となった日数/30 *1未満の端数は1に切り上げ