元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

一人に後を継がせる場合の「相続分のないことの証明書」の提出には注意を!!

2014-08-02 18:38:23 | 後見人制度<社労士>
 農家・個人事業主が亡くなった場合の相続方法について<後見人として> 

まだ健在であった父母がなくなったり、兄弟が不幸にして亡くなったりすることがあるが、このとき、亡くなった人の財産を相続することになる。この場合、後見人としては、被後見人の法定の相続割合を主張すべきであるとされている。夫が亡くなり、配偶者である母とその子2人が残された場合は、母1/2、兄1/4、弟1/4が法定の割合であり、母が被後見人であって、その後見人をしてる場合は1/2での財産の相続割合を主張することになる。

 ところが被相続人が農家や個人事業主での経営者であった場合は、法定の相続の主張をしていることができなくなることが多くなる。というのは、遺産が農家の場合は、農地となり、また、個人事業主の場合は、工場の機械や土地であり、商店の店そのものであったりすることになり、それを母親とか兄弟で遺産分割することになると、経営そのものがなりたたなくなる。こういった場合は、だれか一人に後を継がせることになり、例えば弟が次ぐと言い出した場合は、その後継者である弟がそっくりそのまま農地・工場等の財産を受け継ぐようにせざるをえなくなる。そのため、後を継がなかった兄やその母親は、その農地・工場等の財産を放棄することが必要になって、母親が被後見人であった場合は、その後見人は法定の分割を主張することが難しくなる。

 この場合でも、農地が工場は、弟に継がせるとしても、やはり後見人としては、法定の割合は主張すべきであるので、その農地等の財産の評価の上で、後継者からの金銭での精算をしてもらうという方法がある。もちろん、承継財産として現金・預金が相当あれば、現金・預金そのものでもらう形で、法定の財産割合を主張すればいい。そちらの方が、弟が経営資本となる農地・工場の財産を、被後見人である母は、確かな現金預金でという形で、民法906条がいう「遺産の種類、性質・・・各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状態」等を考慮して、分割するという法定の基準に合ったものとなる。

 ところで、工場・農地を一人に、例えば弟に集中する際、「相続分のないことの証明書」の提出を求められることがある。これは、民法が定めた財産放棄ではなく、相続の単純承認となり、もしも亡くなった父に「隠れ負債」が発覚した場合は、法定相続分の負債を背負うことになるので注意が必要である。

 
 「相続のないことの証明書」とは、工場・農地の承継を受けない者が、父の生前に遺産の分け前以上の贈与を受けたことにして、もらっていないにかかわらず、すでに相続相当分をもらっているので「相続分はない」という証明書を作成することにより、工場・農地を一人の者に承継することができるようにするものである。法上の財産放棄よりは、手続きが簡単なために良く行われているとされているところである。しかし、これは、あくまでも単純相続である。そのため、経営者であった被相続人が、他人の債務について保証していても、相続当時は分からないことが多いため、後から判明した場合、判明したマイナスの財産を受け次ぐことになる。よほど財産の状態を把握するか、正式な財産放棄の手続きを取った方が良いと思われる。

 
 いずれにしても、後見人にとしては、監督者である家庭裁判所と協議しながら事を進めていくことになる。

参考文献:成年後見の財産管理(額田洋一著、学陽書房)
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