「非合理的な思考」=「認知の歪み」10種類(デビッド・D・バーンズ)にも留意
職場でストレスを感じたとき、同じストレスであっても、天と地がひっくり返ったように感じる人と日常生活上で生じるストレスとまったく変わらないような感じ方である人のように、全く感じ方が違うようだ。この違いはなんであろうか。
「職場のメンタルヘルスを強化する」の著者 吉野聡氏は、アルバートエリスのABC理論を紹介している。
この理論は、ある出来事(Actvating event 賦活事象)が生じたとき、その結果として人がどのように反応(Consequence 結果)かは、その人の考え方・捉え方(Belief 信念)次第であるというものである。
Actvating event 賦活事象⇒Belief 信念⇒Consequence 結果
出来事 感じ方 ストレス反応
ここで、AとCは、1対1で対応するものと勘違いをするようであるが、その間にBという「信念」が介在する。「怒られたから気持ちが沈んだ」ではなく、「起こられることは恥ずべきことであって、絶対に避けなければならない」という信念がそうさせるということなのである。必ずしもCは「落ち込んだ」とはならず、「起こられることは期待されている証拠だ。怒られなくなったらおしまい」というような「物の捉え方・感じ方」=Bがあれば、「奮起して頑張った」=Cという人もいる。ストレスに強い人と弱い人の違いは、このBの違いであり、ストレスに強い人材を育てるためにはこのBにアプローチする方法しかないことになる。
企業の今までのメンタルヘルス対策の中心は、労働時間を減らし、責任を軽減し、精神的負担(すなわち「A」)を和らげることにあって、義務的にコンプライアンスとか社会的責任の中で行ってきたのであり、それは企業にとっては単なるコストに過ぎなかった。もちろん、過重労働やハラスメントなどの加重な精神的負担を原因として発症する「過負荷型メンタルヘルス」にあってはこれら精神的負担をできるだけ減らすことは効果的であり、過重労働等を強いる企業の活動の中にあっては、国家を揚げて行う必要は当然あったのである。
しかし、「上司からこっぴどく叱られた」というような職場に当然起こり得るような出来事が発症の原因であるような「不適応型メンタルヘルス」の場合は、この精神的負担を和らげる方法だけでは意味はなく、ストレスを前向きに捉え(Bを育てる手法)、自分を成長(成長型メンタルヘルス)させることしかないのである。このことは、企業の成長にとっても、有用なメンタルヘルスであり、それは単なるコストではなく、企業の経営者にとっても受け入れやすいと思われる。
それでは、どうするかであるが、例えば重要な仕事を任された部下が失敗したらどうしようとプレッシャーに押しつぶされそうになっているとする。そのとき、その対応として、任せる仕事の範囲を狭めることもその仕事から外す(Aへのアプローチ)ことも可能ではあるが、そうではなく、「絶対に成功させなければならない」といったBの非合理的な考え方を指摘して、思いっ切ってこの仕事に挑戦してみる意欲を起こさせるよう考え方を改めさせる。重要な仕事というものAは、なんら変わらなくても、Bが変わり結果Cが変わることになる。
⇒ここで上司の発する「言葉」としては、氏は次のように述べている。
「君が今、プレッシャーに押しつぶされそうになっているのは、重要な仕事だから絶対に成功させなければならないという思考に陥ってしまっているからではないだろうか。もちろん、重要な仕事だからそのような窮屈な思考になることは分かるが、できることばかり無難にこなしていても君の成長にはつながらないよ。君のアイデアを存分に出して、思いっきってこの仕事に挑戦してみたらいいじゃないか。万一、失敗したって会社がつぶれるわけではないし、君が首になることもない。無難に成功するより挑戦して失敗した方がそこから得られるものは大きいいはずだよ」
このような考え方・捉え方の「非合理な思考」は、デビッド・D・バーンズの10種類の認知の歪みとして類型化されており、概略次のようになっている。
日常生活の中でも、この認知の歪みによって、合理的な考え方が出来ないことが多いので、これで自分の考えのチェックをした上で、考え方を修正してみると良い。ちなみに、私(甲斐)の場合は「マイナス化思考」や「すべき思考」が強いようである。
1、全か無か思考 物事を白か黒、勝ち負けというように両極端に捉えてしまう。
2、過度の一般化 一つうまくいかないと、全部うまくいかないと思ってしまう。
3、心のフィルター 出来事が起こると、全て悪い方向に解釈してしまう。
4、拡大解釈と過小評価 嫌な出来事を大げさに捉え、よい部分を適切に評価できない。
5、感情的決め付け 自分の気分や感情がよいか悪いかによって物事を判断してしまう。
6、マイナス化思考 中立的な出来事を自己否定的なマイナス方向に解釈してしまう。
7、結論の飛躍 現実とは異なる悲観的で絶望的な結論を飛躍して出してしまう。
8、すべき思考 具体的な理由なしに「~すべき」と考えてしまう。
9、レッテル貼り 部分的情報からネガティブな方法に全体を判断してしまう。
10、個人化 ネガティブな出来事の原因を自分の責任へと還元してしまう。
** 参考:著書<「職場のメンタルヘルス」を強化する> 精神科産業医 吉野聡 ダイヤモンド社発行
同書の趣旨を表現・用語を含めてたどったものであるが、必ずしもそのままではなく、解釈・要約の過程で私なりに編集したところがあります。その点の編集責任は自分にありますので、念のため。
職場でストレスを感じたとき、同じストレスであっても、天と地がひっくり返ったように感じる人と日常生活上で生じるストレスとまったく変わらないような感じ方である人のように、全く感じ方が違うようだ。この違いはなんであろうか。
「職場のメンタルヘルスを強化する」の著者 吉野聡氏は、アルバートエリスのABC理論を紹介している。
この理論は、ある出来事(Actvating event 賦活事象)が生じたとき、その結果として人がどのように反応(Consequence 結果)かは、その人の考え方・捉え方(Belief 信念)次第であるというものである。
Actvating event 賦活事象⇒Belief 信念⇒Consequence 結果
出来事 感じ方 ストレス反応
ここで、AとCは、1対1で対応するものと勘違いをするようであるが、その間にBという「信念」が介在する。「怒られたから気持ちが沈んだ」ではなく、「起こられることは恥ずべきことであって、絶対に避けなければならない」という信念がそうさせるということなのである。必ずしもCは「落ち込んだ」とはならず、「起こられることは期待されている証拠だ。怒られなくなったらおしまい」というような「物の捉え方・感じ方」=Bがあれば、「奮起して頑張った」=Cという人もいる。ストレスに強い人と弱い人の違いは、このBの違いであり、ストレスに強い人材を育てるためにはこのBにアプローチする方法しかないことになる。
企業の今までのメンタルヘルス対策の中心は、労働時間を減らし、責任を軽減し、精神的負担(すなわち「A」)を和らげることにあって、義務的にコンプライアンスとか社会的責任の中で行ってきたのであり、それは企業にとっては単なるコストに過ぎなかった。もちろん、過重労働やハラスメントなどの加重な精神的負担を原因として発症する「過負荷型メンタルヘルス」にあってはこれら精神的負担をできるだけ減らすことは効果的であり、過重労働等を強いる企業の活動の中にあっては、国家を揚げて行う必要は当然あったのである。
しかし、「上司からこっぴどく叱られた」というような職場に当然起こり得るような出来事が発症の原因であるような「不適応型メンタルヘルス」の場合は、この精神的負担を和らげる方法だけでは意味はなく、ストレスを前向きに捉え(Bを育てる手法)、自分を成長(成長型メンタルヘルス)させることしかないのである。このことは、企業の成長にとっても、有用なメンタルヘルスであり、それは単なるコストではなく、企業の経営者にとっても受け入れやすいと思われる。
それでは、どうするかであるが、例えば重要な仕事を任された部下が失敗したらどうしようとプレッシャーに押しつぶされそうになっているとする。そのとき、その対応として、任せる仕事の範囲を狭めることもその仕事から外す(Aへのアプローチ)ことも可能ではあるが、そうではなく、「絶対に成功させなければならない」といったBの非合理的な考え方を指摘して、思いっ切ってこの仕事に挑戦してみる意欲を起こさせるよう考え方を改めさせる。重要な仕事というものAは、なんら変わらなくても、Bが変わり結果Cが変わることになる。
⇒ここで上司の発する「言葉」としては、氏は次のように述べている。
「君が今、プレッシャーに押しつぶされそうになっているのは、重要な仕事だから絶対に成功させなければならないという思考に陥ってしまっているからではないだろうか。もちろん、重要な仕事だからそのような窮屈な思考になることは分かるが、できることばかり無難にこなしていても君の成長にはつながらないよ。君のアイデアを存分に出して、思いっきってこの仕事に挑戦してみたらいいじゃないか。万一、失敗したって会社がつぶれるわけではないし、君が首になることもない。無難に成功するより挑戦して失敗した方がそこから得られるものは大きいいはずだよ」
このような考え方・捉え方の「非合理な思考」は、デビッド・D・バーンズの10種類の認知の歪みとして類型化されており、概略次のようになっている。
日常生活の中でも、この認知の歪みによって、合理的な考え方が出来ないことが多いので、これで自分の考えのチェックをした上で、考え方を修正してみると良い。ちなみに、私(甲斐)の場合は「マイナス化思考」や「すべき思考」が強いようである。
1、全か無か思考 物事を白か黒、勝ち負けというように両極端に捉えてしまう。
2、過度の一般化 一つうまくいかないと、全部うまくいかないと思ってしまう。
3、心のフィルター 出来事が起こると、全て悪い方向に解釈してしまう。
4、拡大解釈と過小評価 嫌な出来事を大げさに捉え、よい部分を適切に評価できない。
5、感情的決め付け 自分の気分や感情がよいか悪いかによって物事を判断してしまう。
6、マイナス化思考 中立的な出来事を自己否定的なマイナス方向に解釈してしまう。
7、結論の飛躍 現実とは異なる悲観的で絶望的な結論を飛躍して出してしまう。
8、すべき思考 具体的な理由なしに「~すべき」と考えてしまう。
9、レッテル貼り 部分的情報からネガティブな方法に全体を判断してしまう。
10、個人化 ネガティブな出来事の原因を自分の責任へと還元してしまう。
** 参考:著書<「職場のメンタルヘルス」を強化する> 精神科産業医 吉野聡 ダイヤモンド社発行
同書の趣旨を表現・用語を含めてたどったものであるが、必ずしもそのままではなく、解釈・要約の過程で私なりに編集したところがあります。その点の編集責任は自分にありますので、念のため。