元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

新型コロナのワクチン接種しないようとの上司指示は無効?!(安全配慮義務・予防接種法違反)

2021-09-05 09:14:07 | 社会保険労務士
 従業員がコロナで死亡すれば安全配慮義務が問われるのでは!場合によっては損害賠償も!!

 新型コロナのワクチン接種について、会社によっては、ワクチンの副反応によって、業務が止まると困ることから、会社の上司が接種をしないように指示することがあるやに聞いています。大きな会社であれば、会社の体力があり少々の支障があっても、乗り越えることができますが、小さな会社であれば、シフト作成等の業務運用自体ができないこととなってしまいますので、そういうこともありなんと思ってしまいます。

 たしかにワクチンの副反応は、現役の若い人ほど強く発熱や腕の痛みにより、休まざるを得ないなど業務に支障が出ることは十分考えられます。

 しかし、会社は、「労働者がその生命、身体当の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」(労働契約法5条)となっており、ワクチンの効果として、コロナの発症や重症化を防ぐことがあるため、これを受けないよう指導することは、この安全配慮義務の違反になる可能性があります。この条項は「必要な配慮」とされており、配慮すればよいように受け取れられるかもしれませんが、あくまでも「必要な配慮の義務」であって、この規定は、「会社の」労働契約の締結に伴う労働者への重要な義務であります。

 ワクチン接種しないことの指示は、明日のシフト作成の交代人員が不足というような目先の利益にとらわれることであって、しかしそれは、その職場にクラスターが発生すれば元も子もありません。コロナの重症化や死亡を抑えるというワクチンの効果を考えれば、従業員がワクチン接種をすることは、その職場の労働者の生命、身体の安全の確保につながることになりますので、この安全配慮義務からいっても、会社は十分な責務を果たすことが必要となります。

 さて、新型コロナのワクチンj接種は、予防接種法上の予防接種であって、「接種を受けるよう努めるものとする」となっています。したがって、アレルギー反応のある方などを除けば、国が国民に協力を求め、国民はワクチン接種は努力義務となっているものです。

 この予防接種法の努力義務と会社の安全配慮義務を考慮すれば、ワクチン接種をするなという上司の指示は、会社の業務上の指示ではあっても、これは無効と言わざるを得ません。たとえ上司の指示であっても、無視すればいいことになります。ワクチン接種を受ける、受けないは、個人の自由ということになりますが、ただ予防接種法からいって、先ほどから申し上げているように、ワクチン接種は受けるよう努めなければなりません。

 では、従業員は上司の指示に従い不利益を被った場合に損害賠償できるのでしょうか。会社が接種を受けたら会社の命令違反だから就業規則に基づいて懲戒にしますという脅しに屈して、従業員が素直にそれに従い、コロナ感染して死亡した場合や後遺症が残った場合はどうでしょうか。会社の違法(違法を超えて「無効」です。)な命令によって、従業員の健康・生命が害されたことになり、十分損害賠償の対象になるでしょう。しかし、そこまでいかず、単に従業員に接種は控えるように「推奨」しただけでは、ワクチン接種は最終的には個人の権利・義務として考えるものであり、必ずしも損害賠償の範囲に考えることは困難であるというのが実情でしょう。

 いずれにしても、目の前の業務がひっ迫しているのはわかりますが、大きくとらえて、安全配慮義務にそった措置を取られるようお願いします。
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