変形期間内であっても、就業規則に非常時等のスケジュール変更事由を規定すれば、認められる。
1か月の変形労働時間とは、1か月以内の一定の期間を平均して1週間当たり40時間以内であれば、(サービス業等特定業種によっては44時間まで認められているものにあっては44時間以内でよいことになっていますが) 特定の日が一日8時間を超え、あるいは特定の週の労働時間が1週40時間(特定業種は44時間)の法定労働時間を超えて労働することができることになっています。一定の定められた要件を満たし、労働基準監督署に届け出ることが必要です。
ところで、その1月以内の変形期間中に、その定められた各人の各日の労働時間を勝手に会社の都合で、変更されては労働者としてはたまったものではありませんので、少なくても変形期間の開始前までにそのスケジュールを公表し、基本的には決まったら動かさないのが原則です。
厚労省の通達では、「変形期間を平均し週40時間の範囲内であっても使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更する制度はこれに該当しない」(昭63.1.1基発1号)としていますし、もともと労基法において、変更する規定が見当たないのがその理由ともなっています。
しかし、全くダメかというとそうではないと思われ、地裁の判例ですが、次のような判例があります。変更の定めをおいていないのは、「使用者の裁量による変更が許されないという趣旨にとどまるものであって」就業規則上で変更の規定を置くことを禁じたものではないと解されるとしており、「労働者の生活に不利益を及ぼさず、予測可能な程度に変更事由が就業規則に具体的に定めてあれば、」変更することも許されるというのがあります。(JR東日本事件、東京地裁H12.4.27)
それに沿って、就業規則モデル条文(中山慈夫著)では、次のようなモデル条文を作っています。
前項のスケジュール表で設定された勤務時間では、事故・災害又は取引先の緊急発注等により納期が切迫した場合、事前に連絡した上で変更することがある。
いずれにしても、会社がかってに決定された勤務表をいじるのは、変形労働時間の趣旨から考えてこれはアウトですが、就業規則でどうしてもそれでできない非常時等のために、具体的に定めた就業規則によって変更するのは可能ということでしょうか。
(参考)労働時間・休日・休暇の法律実務 安西愈著
未払い残業代問題解決の実務 糀谷博和著
就業規則モデル条文 中山慈夫著
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