元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

一人当たりGNP世界33位・アジア6位<労働生産性が賃金上昇のカギ=日本中枢にいる皆さんに問う>

2022-07-02 09:22:01 | 経済・歴史
  「失われた20年」の原因は「経済を取り巻く大きな変化」に対応しきれないでいるのでは!!

  最近、経済のことを勉強していなかったからか、自分の知識が相当なかったことに気が付き、唖然としました。それは、日本の経済の世界における地位です。日本の名目GDPは、中国に追い向かれて今や3位なのは知っていましたが、それでも一人当たりではまあまあ上位にはいくだろうと思っていたからです。

 まず、国全体の名目GDPから述べてみますが、現在の順位は、アメリカ、中国、日本の順で、額にして日本は約5兆ドル、アメリカの約4分の1、中国の3分の1強の水準にしかすぎません。中国に追い向かれたのは2010年のこと、しかしこの10年の間2020年には、中国の3分の1になっていたのです。
 GDPの推移では、日本の経済成長率はほとんど伸びていません。アメリカの1990年を100としたGDPの推移は、2020年には3712、実に351倍です。中国は3712倍 実に37倍ですが、日本はこの30年間で1.6倍しか伸びていないという事実です。

 日本は成熟した国だから経済は成長しなくていいいということでもありません。高橋洋一氏は経済成長率が上がると失業率はさがるというオークンの法則を挙げていた。これは統計的に実証されている法則で感覚的にも分かると思う。まったく経済成長しないというのも困るということですが、G7のアメリカは前述の3.5倍、GDP4位・5位のドイツ・イギリスも約2.3倍になっていますので、成熟国でもそこそこの成長率の実績があるのです。

 それでも、まだ国民一人当たりのGDPはそこそこあるだろうと私は思っていたのですが、大まちがいであることが分かりました。ここに2020年の世界における国民一人当たりの名目GDP(購買力平価換算)を順番に並べたものがあります。1位ルクセンブルグ 2位シンガポール 3位カタール 4位アイルランド 8位アメリカ 18位ドイツ 25位カナダ そして日本はというと33位です。1990年代には20位前後で推移していましたが、この30年でさらに下のランクまで落ちてしまっています。それもまだアジアでは負けないだろうと考えれていた方々(私も含めて)には、さにあらんや衝撃です。先ほど出てきましたがシンガポールがアジアでの1位(世界2位)です。額にして9万8500ドル、日本4万2200ドルの倍以上の数字となっています。そして、香港(世界11位)、台湾(世界15位)、マカオ(世界17位)と続き、韓国(世界28位)に抜かれ、アジアの中でも日本は6位(世界では33位)という散々たる結果になっています。要するに、これは、一人当たりの「所得」ともいうものですから、「世界から見るとそんなに豊かな生活をしているということではない」ということになりますね。

 これほどまでに日本の国力は落ちてしまったのか。日本経済の没落は1990年前半のバブル崩壊がきっかけです。これ以降デフレが続き2010年初頭まで続いたため、「失われた20年」と揶揄されます。デフレは消費と投資を同時に低迷させて、経済の収縮を引き起こしました。政府も経済回復させようと財政支出を図り、安倍政権では異次元ともいうべき金融緩和の2重の回復措置を図りましたが、日本経済を取り巻く環境に変化(人口減少、高齢化、世界の技術進歩、グローバル化、新興国の台頭、そして思いもかけないロシアの軍事侵攻)についていけず、いまだに浮かび上がれずの状態です。政府としても手をこまねいていたわけでもありませんが、一言で言うとこの経済を取り巻く大きな環境の変化に対応しきれなかったのが、経済失速を招いた大きな原因であるように思われます。

 経済は生き物といわれます。画期的な処方箋があるかというとないのが現実です。ですが、社会保険労務士であるからいうのではないのですが、労働生産性にひとつのヒントがあるように思います。労働生産性と言うのは、労働成果のモノ・サービス(付加価値)をを労働投入量で割ったものです。ミクロで見た場合に、小規模事業者の社長は、新しく人を一人雇い入れる場合に、その人がどれだけの働き方(生産性を上げるか)をするのかに注視します。そしてそれに見合った賃金を出すというのが現実のところでしょう。つまり、労働生産性と言う計算式は頭にないかもしれませんが、実際には、労働生産性に応じた賃金を支出するのです。また、新しい機械を導入するにあたり、その機械がどれだけ生産を増やすかを考え、今度は労働量は増やさないので、その生産が増えた分だけ労働生産性は増えることになります。その労働生産性に、実際は機械の減価償却分だけを差し引き、それに応じた賃金を増やすことができます。このように、小規模事業者は、労働生産性に応じて賃金を上げるというのが実情でしょう。大企業の場合もこれに準じた行動でしょうが、賃金の上げ下げはもっと多くの要素が絡んでくるので単純にはそうとも言い切れません。

 総括的には、企業の社長さんは、労働生産性を考慮して、賃金の上昇を考えていくことになる。すなわち。賃金は労働生産性の従属変数といえるのではないかと思われます。労働生産性もまたこの10年・20年の間、あまり上がっていないのが実情です。大企業においては、リーマンショック以降急激に落ち込んだが、最近では徐々に回復しているが、中小企業においては横ばいを続けている。政府は賃金を上げるよう依頼するが、いかんせん小規模の事業ではこの労働生産性が上がらない限り、増やすのは難しいでしょう。大企業は内部留保を持っており、その掃き出しにより賃金を増やすことはできますが、中小企業者、特に小規模になると困難です。安倍首相の時代にちょっとの間、この労働生産性を盛んに言っていた時期がありましたが、労働生産性が思うように上がらなかったため、政府が賃金の上昇をお願いする時に、藪蛇になると判断したのでしょうか(推測です)、後半になると話にも上らなかったというのがあります。それ以降、この労働生産性について、言及する首相・政治家はいないように思います。

 2019年の日本の時間当たりの労働生産性は、47.9ドル OECD加盟国37か国のうちで21位、OECD平均59.3ドルを約2割下回る数字。G7で生産性が高いフランス6位・アメリカ8位の6割程度の水準です。ちなみに、1・2・3位は、アイルランド108.8ドル、ルクセンブルグ107.4ドル、ノルウェイ91.0ドルと飛びぬけています。

 経済を回すためには、この労働生産性が上がらない限り、賃金も上昇しない(※※※)し、それに応じた消費を行うことによって、次に投資を呼び込み、つぎの生産に回すことができません。この労働生産性に注目しない限り、賃金の上昇は望むべきもありません。私が言いたいのは、この労働生産性に着眼したところで、即、経済回復の手順・政策が見えてくるわけではありません。しかし、少なくとも労働生産性は全てに通じるごとく、この数値の上昇を考えない限り、賃金上昇も望めないし、さらに経済も回らない。また、労働生産性が上がればそのまま賃金が上がるかというと、そうでもなくて日本では賃金と労働生産性は世界と比べると相関関係は高くない(労働分配率の低下)。日本の中枢にいる皆さん(政治家やブレーンといわれる経済の専門家)ぜひ、何とかこの数字を上げる(誘導)政策とその労働分配の実現を考えて欲しい。

※注意 経済データのほとんどは、「101のデータで読む日本の未来」宮本弘曉著(php新書)より
    「オークンの法則」については、明解経済理論入門 高橋洋一著 あさ出版 参照
※※※ 賃金の上昇 賃金水準は、2001年以下低下傾向にあったものの、リーマンショックの影響を受けた2009年を境に上昇に転じ、20年前の水準を超えるところまで回復している。しかし、男性で見ると、回復傾向にあるものの、いまだ20年前の水準には達していない。(独立法人労働政策研究・研修機構 2021年産業構造基本統計調査分析)

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