就業規則と異なる労使慣行の成立があれば破棄は困難だが判例は基本はその成立について慎重姿勢
従業員が午前中遅刻して、結局昼から出勤。こんな場合に給与計算はどうされているだろうか。午前中の遅刻を頭に入れていないと時間外が発生することにもなります。
たとえば、その会社が9時から18時までの就業時間として、うち昼12時から13時が休憩とします。昼から出勤し遅刻した分を取り戻そうとしてたとして、13時から働いていつもの定時終了の18時までに(ここまで5時間就業)加え、18時から1時間の休憩を取って、19時から再度働き午前中働いていなかった3時間をさらに働いて、結局22時に仕事を終了したとします。これでも一日働いた労働時間は8時間です。
いわゆる残業の割増賃金は、法律上は一日8時間を超えた場合に支給されます。ところが遅刻したことを頭に入れていないと、18時以降働いた分を残業と捉え、これに1・25増しの賃金を払うことが考えられます。18時まではまだ5時間しか働いていないのにかかわらずです。ここで、労働基準法は、あくまでも通常一日8時間、週40時間を超えたときに割増しを支払うとなっている点です。
ところが給与計算上面倒なことなどから、就業規則で18時以降の就業を時間外として払うこともあり得ます。それはそれで会社としては、労働者に有利に働くので、最低基準を定める労働基準法ではむしろOKということになります。
しかしながら、就業規則上は、労働基準法どおり一日8時間超の労働を残業手当を支払い対象としていた場合に、「給与係」が就業規則の規定を知ってか知らずか割増賃金を払っていた場合には、どうなるのでしょう。給与係のちょっとしたミスによりちょっとの間だけ、そういった支払いをしていた場合には、就業規則どおり支払えばいいことになります。しかし、これが長期間続いていた場合は、どうでしょう。
就業規則をあまり見ていないと、就業規則に定めているものより労働者側にとって都合の良いルールが行われて、会社内でいつの間にか定着していることがあります。こんな労働条件やルールが会社と従業員の間で当然のことと受け入れられているのを「労使慣行」といいます。労使慣行が成立するのは、①そういった事実が一定の範囲において長期間反復継続して行われていたこと ②労使双方が明示的にこれを排除・排斥をしていないこと ③この労使慣行が労働条件にその決定権限を持つ労使双方の模範意識によって支えられていること この3つを満足した場合に初めて成立するこことされています。結構、厳格な成立要素が必要です。
よくある労使慣行例 ・長期間に渡り、当たり前のように賞与を〇か月分支給
・遅刻しても賃金から控除していない。
・休憩時間を就業規則より多くとっている。
・就業規則で定年を定めているのに、定年年齢を超えても再雇用ではなく、
今までどおり働く続けている。
(以上の例は、労働基準法・労働契約法実務ハンドブック セルバ出版 人事労務編著 より)
この労使慣行として成立している場合は、就業規則と違っていても、簡単にこの労使慣行を破棄することはできません。就業規則によりこれを変更する場合は、その変更の必要性や合理性などの就業規則を変更する場合と同様の考え方と労働者にそれを周知をしなければ、破棄できないことになります。(契約法9・10条)
ただし、労働者との合意により労働契約は変更できることになっています。ゆえに、就業規則の変更ではなくて、個々の労働者と協議・同意を得るという「個々の労働者の合意」により契約の変更は可能なことから、使用者と個々の労働者との合意により労使慣行は破棄できることになると考えます。(契約法8条)
なお、ここまで書いて何なんですが、就業規則に抵触する労使慣行が成立する可能性は、就業規則が労使のルールとして明文化されていることの重要性に対して、不文の形での労使協定成立を認めるどうかという点から、判例は慎重な態度を取っていることを付け加えます。
従業員が午前中遅刻して、結局昼から出勤。こんな場合に給与計算はどうされているだろうか。午前中の遅刻を頭に入れていないと時間外が発生することにもなります。
たとえば、その会社が9時から18時までの就業時間として、うち昼12時から13時が休憩とします。昼から出勤し遅刻した分を取り戻そうとしてたとして、13時から働いていつもの定時終了の18時までに(ここまで5時間就業)加え、18時から1時間の休憩を取って、19時から再度働き午前中働いていなかった3時間をさらに働いて、結局22時に仕事を終了したとします。これでも一日働いた労働時間は8時間です。
いわゆる残業の割増賃金は、法律上は一日8時間を超えた場合に支給されます。ところが遅刻したことを頭に入れていないと、18時以降働いた分を残業と捉え、これに1・25増しの賃金を払うことが考えられます。18時まではまだ5時間しか働いていないのにかかわらずです。ここで、労働基準法は、あくまでも通常一日8時間、週40時間を超えたときに割増しを支払うとなっている点です。
ところが給与計算上面倒なことなどから、就業規則で18時以降の就業を時間外として払うこともあり得ます。それはそれで会社としては、労働者に有利に働くので、最低基準を定める労働基準法ではむしろOKということになります。
しかしながら、就業規則上は、労働基準法どおり一日8時間超の労働を残業手当を支払い対象としていた場合に、「給与係」が就業規則の規定を知ってか知らずか割増賃金を払っていた場合には、どうなるのでしょう。給与係のちょっとしたミスによりちょっとの間だけ、そういった支払いをしていた場合には、就業規則どおり支払えばいいことになります。しかし、これが長期間続いていた場合は、どうでしょう。
就業規則をあまり見ていないと、就業規則に定めているものより労働者側にとって都合の良いルールが行われて、会社内でいつの間にか定着していることがあります。こんな労働条件やルールが会社と従業員の間で当然のことと受け入れられているのを「労使慣行」といいます。労使慣行が成立するのは、①そういった事実が一定の範囲において長期間反復継続して行われていたこと ②労使双方が明示的にこれを排除・排斥をしていないこと ③この労使慣行が労働条件にその決定権限を持つ労使双方の模範意識によって支えられていること この3つを満足した場合に初めて成立するこことされています。結構、厳格な成立要素が必要です。
よくある労使慣行例 ・長期間に渡り、当たり前のように賞与を〇か月分支給
・遅刻しても賃金から控除していない。
・休憩時間を就業規則より多くとっている。
・就業規則で定年を定めているのに、定年年齢を超えても再雇用ではなく、
今までどおり働く続けている。
(以上の例は、労働基準法・労働契約法実務ハンドブック セルバ出版 人事労務編著 より)
この労使慣行として成立している場合は、就業規則と違っていても、簡単にこの労使慣行を破棄することはできません。就業規則によりこれを変更する場合は、その変更の必要性や合理性などの就業規則を変更する場合と同様の考え方と労働者にそれを周知をしなければ、破棄できないことになります。(契約法9・10条)
ただし、労働者との合意により労働契約は変更できることになっています。ゆえに、就業規則の変更ではなくて、個々の労働者と協議・同意を得るという「個々の労働者の合意」により契約の変更は可能なことから、使用者と個々の労働者との合意により労使慣行は破棄できることになると考えます。(契約法8条)
なお、ここまで書いて何なんですが、就業規則に抵触する労使慣行が成立する可能性は、就業規則が労使のルールとして明文化されていることの重要性に対して、不文の形での労使協定成立を認めるどうかという点から、判例は慎重な態度を取っていることを付け加えます。
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