東大阪や五島の振興(あくまでも物語の中であるが・・・)/ 目的=第2の人生での夢の実現も考える
貴司が「歩み」を寝かしつけ、また寝たのを確認する舞であるが、貴司は短歌の書付のノートを開く。舞が貴司に「話があるねんけど・・・」
貴司;<「アビキル」(空飛ぶ車の開発会社)に>協力するって、舞ちゃんの会社が。 舞;けど今より、もっと忙しくなるかもて。こんねくとの事もあるし、歩みの事もあるから、悩んでいて。
貴司;やった方がいいと思うよ。舞ちゃんは大学の頃から空を飛びたいという夢を思い描いていた。それが巡りめぐって、またその夢に会えた。そんな奇跡みたいな巡り合わせ、逃したら後悔する。忙しかったら、また二人で相談して、何とかする方法を見つけよう。
舞は、「こんねくと」を立ち上げ、東大阪市の町工場同士を結びつけ消費者に届けるという事業もどうにか順調に軌道に乗った頃、浪速大学で所属していた「なにわバードマン」(人力飛行機クラブ)の先輩の刈谷と玉本の会社「アビキル」が空飛ぶクルマの開発をしており、東大阪市に引っ越してきたのを縁に、再度、大空への夢が広がっていく。「こんねくと」が、資金ではすでに底を突きつつあった「アビキル」に資金獲得や広報支援の事業提携を行うことになり、IWAKURAとの事業で付き合いのあった菱崎工業の荒金部長(国への諸申請援助の担当)や浪速大学の渥美准教授(なにわバードマンの先輩)が教え子をつれて支援するようになり、コロナの中で遅くとも着実に計画は進んでいく。さらに、登校拒否ぎみであった星好きの朝陽君(五島のばんばの家で心の傷をいやす。)が登場し空飛ぶクルマのデータをグラフ化するという優秀な学生を演じた。
そして、ドラマの最終日、空飛ぶクルマ「かささぎ」が五島の島々を結ぶこととなり、その初フライトのパイロットとして、病院に行くばんばと巡回診療のお医者さんを乗せて飛び立つ。この日が、2027年1月となっているので、コロナが終息した時点での近未来の出来事となるという設定である。(ドラマ最終放映日は、2023年3月31日である。)
仕事の進め方によく出てくる用語に「ゴール」という意味で「目的」と「目標」と言うのがある。「目的」とは、最終的にどんなことを成し遂げたいのかという最終的な到達点であり、「目標」とは、目的を達成するために設けた具体的な「めあて」言い換えれば具体的な「手段」のことをいいます。「英語を話したい」という思った場合には、目的は「英語を話せるようになること」であり、目標は「NHKの英会話を毎朝聞くこと」や「英会話スクールに通うこと」になるわけです。目標とは、「目的」を実現させるためにどのようにしていくのか、その過程を具体的に設定していくことです。つまり、目標とは、何をどのような方法でどのような順序で、そしていつまでに、どれだけものを行うのかという計画を立てて行う具体的なゴールのことをいいますが、対して、目的とは、この目標の積み重ねによって、何を成し遂げたいのかの最終的なゴールのことです。
前置きが長くなりましたが、舞の夢は「空を飛ぶこと」、これは目的です。そして、航空学校に通ってまで、最初に目指したのは「ジェット機のパイロット」になることでした、これは目標です。しかし、実際に実現させたのは「空飛ぶクルマのパイロット」でした、これも目標です。「空飛ぶクルマのパイロット」というのは、目標が後退したのでしょうか。いいや、そうではありません。確かに、ジェットのパイロットの方がより多くの客は運べます。
しかし、舞の場合には、父の浩太が心臓病で突然に倒れ、IWAKURAの会社を母(代表者)と娘の舞(営業担当)が引き継けざるを得ない状況になり、航空会社への就職が決まっていた舞は一旦その夢を諦めます。会社再建の道の中で、東大阪の工場の職人さんの技術がいかに優れているかを身をもって知ることになり、IWAKURAの会社が軌道になった頃、その子会社として、「こんねくと」を立ち上げ、東大阪の町工場同士の技術を生かした商品開発を手掛けることになります。そういった東大阪の町工場の技術の乗った「空飛ぶクルマ」(もとろんネジにはイワクラのねじが採用)と 舞がばんばの養育を受けて精神的に強くなった原点との言える土地である「五島」の島々を結び、島々の生活を一変させるようなる「空飛ぶクルマ」は、ジェットのように単なる多くの客を運ぶというのではなく、東大阪や五島の振興という点で、より多くの事柄を巻き込んで空を飛んだという点で、また違った意味で大きな意味を持ったということができるでしょう。
さらに、パイロットの訓練を受けてきたことが役に立ったという経験(それだけではなく仲間・教官との成長した舞)など、一旦諦めたかのように思えた「空を飛ぶ夢」=目的も、舞にとっては、らせん階段のもっと上のレベルでの同じ局面で成し遂げたような気がするのです。このドラマ、途中では舞はパイロットを諦めたかようでハラハラしましたが、子供の頃の五島のばんばの養育、浪速大学の人力飛行機のスワン号、航空大学校教育、そしてIWAKURA・その子会社「こんねくと」の会社経験すべてが一点に集まり、この空飛ぶクルマのパイロットということに凝縮されたかのようです。そのすべてがつながったのです。
人生において、巡るめぐる、そんな夢物語みたいなことはないという人があるかもしれません。私の例で恐縮ですが、大学時代は税理士・会計士を目指していました。そう言えばかっこいいですが、目指していただけで、具体的にあまり勉強はしていなくて、ためしに税理士の一教科(いちきょうか)のみを試験を受けた経験があるだけです。学生時代ですが、目標だけは大きく掲げて、実際はがむしゃらには勉強はしていないという経験はお持ちではないでしょうか。社会に出てからは、まったくそんなことは忘れていたのですが、60歳の退職が近くなって、あの頃そんなことがあったなと思い出しました。自分の人生を振り返ったときに、税理士になりたかったのは、「人に使われない」からよいという単純な発想です。社会経験をして学び、士業にも社労士というのがあるのを知り、また今までの経験がより生かせる(人事管理や病院の経験)のは社労士だという発想に至りました。舞のように、大きな夢を実現するのは至らなかったのですが、昔の小さな夢(人に使われない)は実現できたようです。第2の人生を歩まれる皆さんの何らかのヒントになれば幸いです。
最後に、この朝ドラ「舞いあがれ」は3人の脚本家の共同執筆の関係なのかは分からないが、まずテーマの「舞があがれ」が心うきうきさせるだけでなく、祥子ばんばの人生訓・金言ともいえる言葉、貴司が作る味わい深い短歌(俵万智氏の応援短歌とメッセージの投稿による盛り上がり)、だれもが体験するだろう人生の岐路等の他、特に私的には、社労士の観点から、矢野倫子が言う「男社会」、親の介護、技術継承、リストラ、仕事のモチベーションなど考えさせられる問題が満載であった。それも、このいろんな切り口ができる問題を、押しつけがましいのではなく、朝ドラらしく、ちょっと考えさせられるような提示の仕方をしており、近年にない良い作品だと思う。※
※それにしても、視聴率がそれほど上がらなかったのは、なぜでしょうか。 最近の傾向として捉えるに、作品の良しあしではなく、別の所にあるのでは?
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