保佐と補助については、連続的で区別が困難ではある。
民法の成年後見制度は、判断能力が不十分な人を支援するための制度であり、判断能力の減退の程度が重症のほうから、成年後見・保佐・補助の3つの制度が用意されています。成年後見の対象となる人(これを「成年被後見人」と呼びます。)は、精神上の障害により法的な判断能力を通常欠いている状態にある人のことで、保佐は精神上の障害により著しく不十分な人(これを「被保佐人」と呼びます。)が、そして補助は精神上の障害により判断能力が不十分な人(これを「被補助人」と呼びます。)が対象となります。
成年被後見人、被保佐人、被補助人には、それぞれ成年後見人、保佐人、補助人が家庭裁判所から選任され、同意権・取消権、代理権という法的手段をもって、これらの方々を支援・保護することになります。成年後見の場合は、判断能力を通常欠いている状態のため、成年被後見人が代理人としての役割を担い、もしも被後見人が契約等の法律行為を行った場合には、成年後見人がそのまま取消権を持ちます。
また、被保佐人の行った一定の契約等は、保佐人の同意がなければ完全な契約等とはみなされず、保佐人による取り消しがあり得ますし、被補助人の契約等の場合は、さらにそのうちの一部分である特定の行為のみ、補助人の同意がなければ取り消しが可能となります。保佐、補助ともに特定した範囲で代理権限を与えることもできます。
なお、契約には、財産上の契約だけでなく、老人ホームの施設の入所契約や病院の入院の契約等も含みます。
しかし、なかなか成年後見・保佐・補助の区別について、判断能力を「通常欠いている」とか、「著しく不十分」とか、「不十分」というのが民法の規定ですが、なかなかその区別がはっきりしません。
鑑定書手引きでは、「財産を管理・処分する能力」をキーワードとして、区別しているようです。
1-A 自己の財産を管理処分することができない。
日常的に必要な買い物も自分ではできず、誰かに代わってやってもらう必要があるという程度⇒後見に相当する。
1-B 自己の財産を管理処分するには、常に援助が必要である。
日常の買い物程度は単独でできるが、重要な財産行為(不動産、自動車の売り買いや自宅の増改築、金銭の貸し借り等→民法13条で定める9項目をいいますが、別途下に掲げる項目です。*1)は自分ではできない程度⇒保佐に相当する。
1-C 自己の財産を管理処分するには、援助が必要な場合がある。
重要な財産行為(不動産、自動車の売り買いや自宅の増改築、金銭の貸し借り等)について、自分でできるかもしれないが、できるかどうか危惧がある。(本人の利益のためには、誰かに代わってやってもらった方がよい。)という程度⇒補助に相当する。
最高裁判所による紹介事例では、より具体的に次のような具体例が紹介されている。(「成年後見教室」P253から)
2-A アルツハイマー病の男性(57歳)。5年ほど前から物忘れがひどくなり、直属の部下を見てもだれかわからなくなるなど、次第に社会生活を送ることができなくなった。家族の判別もつかなくなり、症状は重くなり、回復の見込みはない。2年前から入院している。⇒後見に相当する
2-B 中程度の認知症の女性(73歳)。以前から物忘れがみられた。最近症状が進み、買い物で1万円札を出したか5000円札を出したか、わからなくなることが多くなった。日常生活に支障が出てきたため、長男家族と同居することになった。⇒保佐に相当する。
2-C 軽度の認知症の女性(80歳)最近、米をとがずに炊いてしまうなど、家事の失敗が見られるようになった。訪問販売員から必要のない高額の呉服を何枚も購入してしまった。⇒補助に相当する。
この具体例について、上の鑑定書手引きと対照して、見られたらどうであろうか。より納得できると考える。
市民後見人養成講座パート1(成年後見センターリーガルサポート編、P53・60・67)では、よくある類型の例として次のようなものをあげている。
3-A 1-Aの他に、ア、ごく日常的な事柄(家族の名前、自分の居場所等)が分からなくなっている人 イ、完全な植物状態(遷延性意識障害の状態)⇒後見に相当する
3-B 1-Bの他に、ア、いわゆる「まだら状態」の人(ある事柄はよくわかるが他の事柄は全くわからない人と、日によって認知症の症状等が出る日と出ない日がある人の両方を含みます。)のうち重度の人⇒保佐に相当する。
3-C 1-Cの他に、認知症の症状が、いわゆる「まだら状態」で軽度の人⇒補助に相当する。
最終的に云えるのは、後見相当は、判断能力が「常に」欠けているため、「絶対的」な判断能力の基準があると思われるが、保佐と補助相当においては、連続的でなかなか線を引くのが困難で、結局、民法13条の定める重要な財産行為の9項目のすべてについて、支援保護すべきかいなかということになる。9項目全てで保護すべきであるときは、保佐相当であるし、その一部分であるときは、補助相当であることになる。(成年後見制度 新井他著P33)
ここで、法的権限の付与であるが、同意権・取消権付与や代理権付与については、補助について特定の同意権・取消権や代理権(特に同意権・取消権について)を限りなく多くすれば、保佐に近づき、保佐との境界になる。また、保佐の方でも同様のことがいえるのである。保佐と補助の境界域は、法的な権限においても、連続的で区別は困難な領域があると思われる。
*1 民法13条で定められている重要な財産行為(9項目)
・貸金の元本の返済を受けたり、不動産や金銭の貸し付けをすること
・金銭を借り入れたり、保証人になること
・不動産をはじめとする重要な財産(自動車等)について、売買等をすること
・訴訟を提起すること(相手方の訴えに対する応訴は含まない)
・贈与をすること、和解や仲裁合意をすること
・相続の承認や放棄をすること、遺産分割の協議をすること
・贈与の申し込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申し込むを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること
・新築・増築・改築又は大修繕をすること
・建物について3年、土地について5年を超える期間の賃貸借契約をすること
民法の成年後見制度は、判断能力が不十分な人を支援するための制度であり、判断能力の減退の程度が重症のほうから、成年後見・保佐・補助の3つの制度が用意されています。成年後見の対象となる人(これを「成年被後見人」と呼びます。)は、精神上の障害により法的な判断能力を通常欠いている状態にある人のことで、保佐は精神上の障害により著しく不十分な人(これを「被保佐人」と呼びます。)が、そして補助は精神上の障害により判断能力が不十分な人(これを「被補助人」と呼びます。)が対象となります。
成年被後見人、被保佐人、被補助人には、それぞれ成年後見人、保佐人、補助人が家庭裁判所から選任され、同意権・取消権、代理権という法的手段をもって、これらの方々を支援・保護することになります。成年後見の場合は、判断能力を通常欠いている状態のため、成年被後見人が代理人としての役割を担い、もしも被後見人が契約等の法律行為を行った場合には、成年後見人がそのまま取消権を持ちます。
また、被保佐人の行った一定の契約等は、保佐人の同意がなければ完全な契約等とはみなされず、保佐人による取り消しがあり得ますし、被補助人の契約等の場合は、さらにそのうちの一部分である特定の行為のみ、補助人の同意がなければ取り消しが可能となります。保佐、補助ともに特定した範囲で代理権限を与えることもできます。
なお、契約には、財産上の契約だけでなく、老人ホームの施設の入所契約や病院の入院の契約等も含みます。
しかし、なかなか成年後見・保佐・補助の区別について、判断能力を「通常欠いている」とか、「著しく不十分」とか、「不十分」というのが民法の規定ですが、なかなかその区別がはっきりしません。
鑑定書手引きでは、「財産を管理・処分する能力」をキーワードとして、区別しているようです。
1-A 自己の財産を管理処分することができない。
日常的に必要な買い物も自分ではできず、誰かに代わってやってもらう必要があるという程度⇒後見に相当する。
1-B 自己の財産を管理処分するには、常に援助が必要である。
日常の買い物程度は単独でできるが、重要な財産行為(不動産、自動車の売り買いや自宅の増改築、金銭の貸し借り等→民法13条で定める9項目をいいますが、別途下に掲げる項目です。*1)は自分ではできない程度⇒保佐に相当する。
1-C 自己の財産を管理処分するには、援助が必要な場合がある。
重要な財産行為(不動産、自動車の売り買いや自宅の増改築、金銭の貸し借り等)について、自分でできるかもしれないが、できるかどうか危惧がある。(本人の利益のためには、誰かに代わってやってもらった方がよい。)という程度⇒補助に相当する。
最高裁判所による紹介事例では、より具体的に次のような具体例が紹介されている。(「成年後見教室」P253から)
2-A アルツハイマー病の男性(57歳)。5年ほど前から物忘れがひどくなり、直属の部下を見てもだれかわからなくなるなど、次第に社会生活を送ることができなくなった。家族の判別もつかなくなり、症状は重くなり、回復の見込みはない。2年前から入院している。⇒後見に相当する
2-B 中程度の認知症の女性(73歳)。以前から物忘れがみられた。最近症状が進み、買い物で1万円札を出したか5000円札を出したか、わからなくなることが多くなった。日常生活に支障が出てきたため、長男家族と同居することになった。⇒保佐に相当する。
2-C 軽度の認知症の女性(80歳)最近、米をとがずに炊いてしまうなど、家事の失敗が見られるようになった。訪問販売員から必要のない高額の呉服を何枚も購入してしまった。⇒補助に相当する。
この具体例について、上の鑑定書手引きと対照して、見られたらどうであろうか。より納得できると考える。
市民後見人養成講座パート1(成年後見センターリーガルサポート編、P53・60・67)では、よくある類型の例として次のようなものをあげている。
3-A 1-Aの他に、ア、ごく日常的な事柄(家族の名前、自分の居場所等)が分からなくなっている人 イ、完全な植物状態(遷延性意識障害の状態)⇒後見に相当する
3-B 1-Bの他に、ア、いわゆる「まだら状態」の人(ある事柄はよくわかるが他の事柄は全くわからない人と、日によって認知症の症状等が出る日と出ない日がある人の両方を含みます。)のうち重度の人⇒保佐に相当する。
3-C 1-Cの他に、認知症の症状が、いわゆる「まだら状態」で軽度の人⇒補助に相当する。
最終的に云えるのは、後見相当は、判断能力が「常に」欠けているため、「絶対的」な判断能力の基準があると思われるが、保佐と補助相当においては、連続的でなかなか線を引くのが困難で、結局、民法13条の定める重要な財産行為の9項目のすべてについて、支援保護すべきかいなかということになる。9項目全てで保護すべきであるときは、保佐相当であるし、その一部分であるときは、補助相当であることになる。(成年後見制度 新井他著P33)
ここで、法的権限の付与であるが、同意権・取消権付与や代理権付与については、補助について特定の同意権・取消権や代理権(特に同意権・取消権について)を限りなく多くすれば、保佐に近づき、保佐との境界になる。また、保佐の方でも同様のことがいえるのである。保佐と補助の境界域は、法的な権限においても、連続的で区別は困難な領域があると思われる。
*1 民法13条で定められている重要な財産行為(9項目)
・貸金の元本の返済を受けたり、不動産や金銭の貸し付けをすること
・金銭を借り入れたり、保証人になること
・不動産をはじめとする重要な財産(自動車等)について、売買等をすること
・訴訟を提起すること(相手方の訴えに対する応訴は含まない)
・贈与をすること、和解や仲裁合意をすること
・相続の承認や放棄をすること、遺産分割の協議をすること
・贈与の申し込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申し込むを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること
・新築・増築・改築又は大修繕をすること
・建物について3年、土地について5年を超える期間の賃貸借契約をすること
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