縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

「別府八湯アンバサダー」をご存じですか?

2024-10-04 23:00:20 | 別府の話
 「別府八湯アンバサダー」について話す前に、そもそも「別府八湯ってなに?」という方のために説明を。
 “別府八湯”とは、別府市内にある八つの温泉(浜脇、別府、亀川、鉄輪、観海寺、堀田、柴石、明礬)を総称したものです。別府はご存じの通り、源泉数、湧出量とも日本一の温泉の町。市内には泉質や歴史、街の趣などに違いのある温泉がなんと八つもあるのです(詳しくは『別府良いとこ 八度はおいで(?)- 別府八湯の話』をご覧下さい)。

 で、「別府八湯アンバサダー」ですが、これは別府八湯を自分の足で周り、その地域を自分で案内できる知識を持った人材を育成するための資格です。それも昨年作られた新しい資格。新しく資格を作った背景には、日本一の温泉地別府でも温泉に興味がなく、別府にどのような温泉があるのか知らない、泉質による温泉の効能の違いすら分からない人が多いとの問題意識がありました。哀しいかなホテルや旅館のスタッフですら状況は変わりません。まったく残念なことです。せっかく来た観光客の方に別府八湯の魅力を知って欲しい、もっと別府八湯を楽しんでもらいたい。そのためには、まず別府八湯を理解し、その良さを説明できる人間が必要だと「別府八湯アンバサダー」は創設されたのでした。
 「NPO法人別府温泉地球博物館」が、別府市の支援の下、「別府八湯アンバサダー」の認定等を行っています。資格は、簡単な温泉知識の学科試験(e-ラーニング)と別府八湯の地獄ハイキングコース1つへの参加で取得できます。つまり、3時間の勉強と2時間程度のハイキングに参加するだけであなたも「別府八湯アンバサダー」です。費用は5,000円しか掛かりません。

 ところが、あなたに今だけのお得な情報があります。というとテレビショッピングの宣伝のようですが、これは本当にお得です。費用が掛からないどころか市営温泉の無料入浴券(8カ所分)までもらえるのです。その手順は以下のとおりです。
 ①  「別府八湯アンバサダー養成講座」を受講(別府八湯の泉質、歴史、特徴等に関する1時間の講義)
 ② 市営温泉8カ所(10カ所ある対象施設から選ぶ)に入浴し、スタンプを8つ集める
 ③ 別府市観光協会にて「別府八湯アンバサダー」の認定を受ける
 さらに先着100名様には(というとさらにテレビショッピングっぽいですが)、記念品(ステキな温泉マイスターのTシャツ)まで贈呈されます。
 私も一昨日「別府八湯アンバサダー」の認定を受けTシャツを頂きました。まだTシャツは充分残っていましたが、お早めに講座を受講することをお勧めします。残る講座は、
 10月 6日(日)13時~14時30分 熱の湯(鉄輪温泉)
 10月19日(土)15時~16時 海門寺温泉(別府温泉)
 11月 4日(月・祝)13時30分~14時30分 末広温泉(別府温泉)
 11月13日(水)13時30分~14時30分 柴石温泉(柴石温泉)
の4回となっています。

 私は“一宿一飯”ならぬ“八湯(入浴)一T(シャツ)”の義理もあって書いていますが、温泉の知識が習得でき、なおかつタダで温泉巡りができる、またとない機会であることに違いはありません。別府市内、あるいは大分県内の方、さらには別府愛や温泉愛の強い方は奮ってご参加の程!

【移住の話】健康で文化的なそこそこの生活? その3

2024-09-05 17:00:44 | 別府の話
 移住に不安を感じる方のため実際に移住した人間が(まだ若葉マークですが)地方での暮らしを紹介するシリーズの3回目。

 まずは前回予告した『別府アルゲリッチ音楽祭』の話から。
 別府では1998年より別府アルゲリッチ音楽祭が開かれている。地方創生、町おこしイベントの走り、成功例の一つである。日本のオーケストラすら滅多に来ないクラシック辺境の地・別府に、世界的なピアニストであるマルタ・アルゲリッチが毎年やって来るのである。当時の別府市長がダメ元で大分に来たアルゲリッチにオファーしたのが始まりというから世の中何が起こるか分からない。おかげで我々別府市民は毎年アルゲリッチの演奏や一連のコンサートを聴くことができる。
 因みに私は音楽祭でアルゲリッチとクレーメル(ヴァイオリン)、鈴木愛美(ピアノ)、遠藤真理(チェロ)と實川風(ピアノ)、の3つのコンサートに行った。最後の遠藤・實川のコンサートは大分市の平和市民公園能楽堂で行われた。この能楽堂は渋谷のセルリアンタワー能楽堂より一回り大きい。なぜ地方にこんな立派な能楽堂があるのかまったく不思議である。田舎ではあるが大分も捨てたものではない。

 次に演劇の話。某サイトで別府だけではなく大分県全体で今買うことのできる演劇のチケットを調べてみた。なんと6件しかない(期間は11月末くらいまで)。もちろん全国向けのサイトを使わない公演もあると思うが、いずれにしろ絶対数が少ないことに変わりはないだろう。
 地元限定という意味では『別府市民劇場』という会員制の演劇鑑賞団体がある。この組織は別府に限らず多くの地方都市にある(例えば九州では17都市)。前進座、俳優座、文学座など新劇の劇団を主に2ヶ月に1度公演が行われている。劇団にとっては全国の市民劇場での公演が収入の安定化に繋がり、一方地方の住民にとっては東京などに行かなくても生の舞台を見ることができ、いわばwin-winの関係である。ただ新劇が対象なので、劇団☆新感線やキャラメルボックスは別府には来ない。宝塚も来ない。
 ところが、大手の人気劇団の中で『劇団四季』は毎年大分にやって来る。さすがは劇団四季、北は北海道から南は九州まで全国公演を行っているのである。今年は「ジーザス・クライスト=スーパースター」。公演が楽しみだ。

 前回書いたクラシックも今回の演劇も、確かに別府での公演は少ない。東京と比べれば、二桁、三桁どころではなく四桁(五桁?)は少ない数だろう。しかし、東京にいたときクラシックや演劇の公演に頻繁に行っていたわけではない。読売日響の会員だったので月に一度は聴きに行っていたが、他にはクラシック、演劇合わせ年に2、3回行くかどうか。多くの選択肢がある中、探すのが面倒、予約が大変、あるいはいつでも行けるという安心感などがその理由だろう。
 一方、別府に来てからは選択肢が少ないため情報が簡単に手に入り、面白そうと思ったら皆行くようになった。このため、大分、佐伯、北九州など近隣の都市も含め、公演に行く回数は東京にいたときより増えている。だから移住を考える皆さんもご安心を。毎週のようにクラシックや演劇を見ていた方は別として、普通にクラシックや演劇の好きな方であれば地方に移住して困ることはない。地方でもそれなりに(そこそこ?)楽しむことができる。

【移住の話】健康で文化的なそこそこの生活? その2

2024-08-29 21:36:06 | 別府の話
 前回の移住して“健康的”に暮らせるかの話(「健康で文化的なそこそこの生活? その1」)に続き、今回は“文化的”な生活ができるかという話。

 東京で当たり前のようにできたことが、田舎ではできないことが多い。田舎では選択肢がガクッと減ったり、そもそも存在しないこともある。

 例えば、映画館。別府に映画館は2つしかない。一つは以前ブログに書いた別府ブルーバード劇場(2018年10月20日「別府ブルーバード劇場に行こう!」)。そしてもう一つは成人映画館。今時珍しいが、さすがは温泉地である。
 もっともお隣の大分市に行けば(電車で15分程度)、シネコンが3つあるし、ミニシアターも2つある。このため大手映画会社のロードショーを見るには問題ないし、ミニシアター系の映画も、時期が遅れることは多いが、それなりに見ることはできる。因みに最近見た映画『猫と私と、もう1人のネコ』は東京での封切りは3月22日だったが、別府ブルーバードは7月26日からと4ヶ月遅れ。これが、地域で多少の差はあるにしろ、地方都市の映画館事情である。

 続いて、私の趣味で申し訳ないが、クラシック音楽の話。
 別府は勿論、大分県を見てもプロのオーケストラはない。日本オーケストラ連盟には27のオーケストラが加盟しているが、九州は九州交響楽団(福岡市)だけ。その九響だが、大分県には数年に一度しか来ない。福岡市を中心とした福岡都市圏の人口は260万人というが、おそらく福岡市でも演奏会の集客は厳しいだろう。まして県全体で100万人しかいない大分など論外である。よっぽどのスポンサーが付くか、ベートーベンの第9など万人受けするプログラムでない限り、演奏会をやっても人が集まらずペイしない。これはNHK交響楽団、読売日本交響楽団、東京都交響楽団のいわゆるオーケストラ御三家でも同じ。哀しいかな、これがオーケストラを巡る地方の現実である。地方で生のオーケストラの音を聴くのは極めて難しい。

 ところが、唯一、こんな大分に毎年やって来るオーケストラがある。日本フィルハーモニー交響楽団である。なんと1975年に九州公演を開始し来年で50周年。今年は2週間で福岡から鹿児島まで9都市を回っている。
 知らなかったが、日フィルの九州公演は地元企業の支援のほか、公演を行う各都市の市民の方がボランティアとして協力している。地元の方が演奏会の企画・運営にも携わる等、地方ならではというか、東京では見られないユニークな体制となっている。地元が資金的にも人的にも支援しているのである。だからこそ地方での公演が可能なのだろう。おかげで年1回は確実にオーケストラの生の演奏を聴くことができる。クラシック・ファンは高齢者が多く将来に一抹の不安はあるが、これからもずっと続いて欲しい。

 そして、オーケストラではないが、別府には世界に誇るクラシックのイベントがある。皆さまご存じ、『別府アルゲリッチ音楽祭』である。申し訳ないが、話が長くなりそうなのでこれは次回に。




【移住の話】健康で文化的なそこそこの生活? その1

2024-07-25 21:26:09 | 別府の話
 移住に興味があるものの、新しい土地での生活に不安を感じ、なかなか踏み出せない方が多いと思う。田舎の生活は退屈に違いない、田舎には仕事がない、濃密な人間関係に疲れそう、子供の良い学校はあるのか、そもそも地下鉄のない所には住めない等々、確かに考えれば不安の種は尽きない。
 東京から別府に移住して1年にも満たない私であるが、そうした方の何かの参考になればと私の経験をお話したい。
 憲法第25条第1項で「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定されている。いわゆる生存権である。この“健康”と“文化的”について別府の生活を考えてみたい。

 まず“健康”について。
 健康を支えるものといえば、やはり食べ物。その点別府は山海の幸に恵まれており、食生活は都会よりはるかに豊かだ。JAの直売所はあるし、ほとんどのスーパーに産直コーナーがあり、いつでも新鮮な野菜が簡単に手に入る。魚といえば関アジ・関サバ、そして城下カレイに臼杵のフグ。残念ながらこうしたブランド魚は高くてなかなか手が出ないが、普通の魚も十分美味しい。おまけに安い。肉は豊後牛が有名であるが、同じく食べる機会は少ない。しかし大分県(大分市)は鶏肉購入額で全国1位、鶏肉が安くて旨い。豚肉は、産直で買う、お隣り日出町の「日出ポーク」(これも安くて旨い)が我が家の御用達。全国広しといえどもこれだけ食材に恵まれている県は珍しい。

 そして温泉。ご存じの通り、別府は源泉数、湧出量ともに日本一。美味しいものを食べ、温泉で癒やされる。これで健康に暮らせないわけがない。さらに万一病気になっても別府は病院が多いので安心だ(温泉と病院について詳しくは『猫も歩けば温泉にあたる(2024/7/7))』をご覧下さい)。最先端の先進医療を受けるのは難しいかもしれないが、大抵の場合そこまでは必要ないだろう。

 もっともプラス材料ばかりではない。別府では運動不足になりやすい。
 そもそも別府市民(というか田舎全般に当てはまると思うが)は歩かない。東京だと電車で通勤・通学するだけで毎日結構歩く。一方、電車やバスが1時間に1本や2本しかない別府の移動は車が基本。おそらく一日1,000歩、2,000歩しか歩かない人も多いことだろう。また山の近い別府は坂道が多く、自転車も電動アシストの比率が高い。これでは自転車もあまり運動にならない。よって、別府では健康のためには自ら意識して運動しなくてはいけない(因みに、私は意識して歩き、自転車は自らの力で漕ぎ、そして筋トレをし、別府に来てから3kg痩せた)。

 もう一つ健康に関して重要なのはストレス。仕事や家庭のストレスはさておき、地元での人間関係のストレスについて。
 よく田舎では近所の人が突然家にやって来る・上がり込む、毎回町内会の行事に出ないといけない、消防団にかり出される等々、ご近所付き合いが極めて大変、気が狂いそうといった話(噂?)を聞く。
 別府はどうかというと、まったくそんなことはない。私は東京でも別府でもマンション住まいであるが、別府での近所との関係は東京ほどドライではない。かといってべったりでもない。東京から来た人間でも気にならない距離感である。これは、田舎といっても別府は人口11万人の町であること、元々移住者の多い町であること(実際周りには東京、大阪、福岡などからの移住者がいる)、別府が観光の町であること(よそ者にやさしい?)等が理由だと思う。但し、同じ別府市内でも鉄輪は人間関係が濃いと言われており、そこは若干事情が違うかも知れない。
 こうした話は実際に地元の方に聞かないと分からない。よって移住を決める前に現地に足繁く通うのが良い。私もこの10年は年に1,2度別府に来ていたし(初めはただの観光だったが)、家探しには2年近い時間を掛けた。

 長くなったので “文化的” については次回に。あしからず。

「別府八湯」温泉道名人への道

2024-07-14 16:44:24 | 別府の話
 別府市にある八つの温泉(浜脇、別府、亀川、鉄輪、観海寺、堀田、柴石、明礬)を総称して「別府八湯」というが、その温泉文化への理解・浸透や観光振興を目的に“別府八湯温泉道”が行われている。公式ホームページによれば、「その豊富な源泉と多様な泉質を誇る日本一の温泉地「別府」だからこそ可能な、温泉を味わい尽くす「湯の真理を得んとする求道者(無類の温泉好き)のためにある、厳しくも愉快な入湯修行(スタンプラリー)の道」とのこと。早い話、別府の温泉にたくさん入ってスタンプを集めようというプロジェクトである。

 “別府八湯温泉道”には共同浴場・外湯、旅館・ホテルなど150ほどの施設が参加している。そのうち8つの湯に入ると初段、16湯で二段、以後8湯入る毎に昇段し、80湯で十段、88湯で見事“名人”となる。参加者は温泉に入り、パスポートならぬ“スパポート”に入湯印(各施設独自のスタンプ)を集めて行く。スパポートはパスポートを模したスタンプ帳で、観光協会等で1冊110円で購入できる。また最近はスマホのアプリ(温泉ハンター)でも参加できるようだ。

 以下、いくつか参加にあたっての注意事項を。湯船に入る前にかけ湯をする・体を洗う、湯船にタオルを浸けない等は当然のこととして、別府には別府だけのローカルルールがあるからだ。
 一つめ、浴槽のふちに座らない。これは私も温泉に行くと必ずやるが、ここ別府では絶対NG。別府では、浴槽のふちは腰掛けて休むためではなく、頭を乗せるためにある。湯船に入りながら(あるいは洗い場に寝っ転がって?)頭を乗せる所にお尻を乗せるなどもってのほか、ということらしい。あと、単に邪魔だからかもしれない。温泉の湯量豊富な別府では、温泉はタダ・水や沸かしたお湯はお金がかかる、が常識。このため体や髪を洗うのには浴槽のお湯(温泉)を使う。皆、浴槽の前に座り、洗面器で浴槽からお湯を汲んでいる。浴槽のふちに座られると洗うスペースが狭くなるし、お湯が汲みにくくなってしまう。
 二つめ、湯船に勝手に水を入れない。別府市民は熱いお湯が好き。それに源泉を薄めることを嫌う人もいる。こんな熱さは無理だと思ったら、周りの方に断ってから水を入れよう。共同浴場は地元の方が守っている温泉であり、お金を払ったお客さんの立場であっても地元の方へのリスペクトが大切だ。リスペクトという意味で、脱衣所や浴室に出入りするときの挨拶も忘れずに。

 別府市民は各々近所に行きつけの温泉を持っているのが普通。このため湯巡りをする人は少ない。よって温泉道の参加者は温泉好きで別府に何度も来ている人や私のような別府への移住者が多いようだ。既に名人は延べ12,000人弱。名人11回の永世名人も200人以上いるため、名人の実人数は10,000人もいないだろう。それにしてもすごい数だ。別府八湯の魅力の賜物である。
 私も先日無事名人の称号を頂いた。スケジュールの空いた日に温泉を集中して回ったので一日5件、6件はざら。温泉のはしごは疲れるし、本当に名人へのつらい修行(?)だった。これからは永世名人を目指すよりは気に入った温泉にのんびり入りたい。その方が別府市民らしいだろう。

別府良いとこ 八度はおいで(?)ー 別府八湯の話

2024-07-12 15:56:15 | 別府の話
 「別府八湯」とは市内にある八つの温泉(浜脇、別府、亀川、鉄輪、観海寺、堀田、柴石、明礬)の総称である。いずれも古い温泉であり、新しい温泉でも開湯は江戸時代に遡る。温泉の掘削が始まったのは明治以降のため当初はどの温泉も自然湧出だった。やはり最近の深~く深く掘削して掘り当てた温泉とはパワーが違う。また別府八湯は10種類ある温泉の泉質のうち7種類がある極めて珍しい温泉である。
 
 別府八湯の中で一番有名なのは鉄輪(かんなわ)温泉。このブログのカバー写真がまさに鉄輪。いたるところから湯けむり立ち上る“ザ・温泉”といった風情だ。未だに貸間旅館といわれる湯治宿が数多くある。自炊のできる宿、さらには温泉から噴き出る高温の蒸気を利用した「地獄蒸し」のできる宿もある。共同浴場も多く、人口密度ならぬ“温泉密度”は鉄輪が日本一だと思う。

 個人的には明礬(みょうばん)温泉がオススメ。第一に、なんと言ってもお湯が良い。明礬泉といわれる強酸性の含鉄泉。殺菌効果が強く、古い角質を除去してくれる。お肌すっきり、若返りの湯だ。緑や青っぽいお湯の色は神秘的。身体だけでなく心も癒やされる。
 第二に、眺めが良い。明礬温泉は伽藍岳の中腹に位置し別府八湯の中で最も標高の高い場所にある。別府市内や別府湾が一望でき、また東側が海のため水平線から上る日の出を見ることができる。小さな赤い太陽が上っていく様は本当に美しい。
 三つめのオススメ理由、美味しい。勿論宿の食事も良いと思うが、ここでは岡本屋売店を取り上げたい。一番有名なのが「地獄蒸しプリン」。地獄蒸しの効果なのか、最近はやりの柔らか・なめらか系ではなく、ちょっと硬めの昔ながらのプリンである。あと「地獄蒸したまごのサンドイッチ」もオススメ。以前は手作り感満載だったが、いつからか包装がきれいになり、サンドイッチがちょっと小さくなった気がする。でも美味しいからつい買ってしまうのである。

 僕は別府八湯すべて行ったが、残りの6つの温泉も各々泉質や町の趣が違っていて面白い。温泉には個人の好みや合う・合わないがある。だから皆さんには別府を何度か訪れ、自分のお気に入りの温泉を見つけて欲しい。別府は温泉の引き出しが多い町なのできっと見つかると思う。

猫も歩けば温泉にあたる

2024-07-07 11:13:12 | 別府の話
 別府の町でよく見かけるものといえば、まずは“温泉”。
 ご存じの通り、別府は源泉数、湧出量とも日本一の温泉の町。温泉が多いのは当たり前。ただ別府が他の温泉町と大きく違うのは共同浴場の数である。なんと100軒以上もある。「鉄輪むし湯」や「竹瓦温泉」のように観光客に人気の共同浴場もあるが、その多くは地元民のための小さな共同浴場である。地区の公民館と共同浴場がセットになっているケースが多い。
 そして市民向けの共同浴場は料金が安い。だいたい100円とか200円である。市営では無料のところもある。このため別府市民は皆近所に行きつけの温泉を持っている。また贅沢なことに共同浴場のほとんどは源泉掛け流し。よって「水はもったいないからお湯(温泉)を使う」は別府市民の常識。こんな町、他にあるだろうか。

 次に思い浮かぶのは“病院”。
 どこの町でも美容院は多いが、別府は病院も多い。別府の人口は11万人で25の病院がある。日本医師会の資料(JMAP)によると、人口10万人あたりの病院数は、全国平均6.43に対し別府は21.68。つまり、別府には全国平均の3倍以上の病院がある。おそらくこれは別府が温泉の町だからだろう。古くから温泉療養や湯治が医療と結びつき、病院が集まったのだと思う。

 そして“猫”。
 別府の町には猫が多い。野良猫ではなく地域猫。地元の皆さんが猫のエサやり、トイレの管理から不妊・去勢手術を行うなど、猫の支援、管理を行っている。市もこうした市民の活動を支援している。別府は猫たちが守られ、安心して(?)暮らせる町なのである。
 また猫が多いのは温泉の恩恵もあると思う。別府には地熱や温泉の排水で地面の暖かいところが結構ある。実際鉄輪では道路のいたるところで排水口から湯けむりが出ている。こうした温泉の温かさが猫を冬の寒さから守るのに一役買っているに違いない(因みに鉄輪では冬でも蚊がいる)。

 観光は勿論のこと、様々な温泉の恩恵を受け、温泉とともに暮らす別府である。

別府ブルーバード劇場に行こう!

2018-10-20 17:30:16 | 別府の話
 旅先で映画というのもなんだが、先日別府に行った際、「別府ブルーバード劇場」で映画を観て来た。いつもの別府旅行は “温泉に入って癒される”、“美味しいものを食べる”が目的、それが今回はブルーバード劇場で映画を観ることが目的の一つになっていたのである。

 きっかけは10月4日(木)日経朝刊の文化欄の記事。「半世紀シネマとともに ~ 父から続く別府の映画館、87歳の今も独りで切り盛り」というタイトルだった。普段文化欄などほとんど読まないが、別府好き、映画好きの僕としては読まずにいられなかった。
 記事は、父親が残してくれた映画館を、一緒に盛り上げて行くはずだった夫が若くして亡くなった後、50年近く独りで守り続けて来た岡村照(おかむら・てる)さんの話である。照さんの映画への深い愛情、温かな想いが伝わってくる内容だった。また、50代から映写機の使い方を覚える、“寅さん”の撮影で別府に来ていた渥美清さんに直談判、2017年9月に初の映画祭を開催など、照さんの行動力、バイタリティには感服した。
 ビデオやネットで簡単に映画が見られる今、おまけに別府の人口は高々12万人しかいないし、映画館の経営は本当に大変である(実際、僕らがお伺いした際も、土曜日の午後なのに観客は僅か4人だった)。自社ビルだから何とかやっていけるのだと思うが、これからも照さんには映画を愛する人のために頑張ってほしい。そんな照さんを応援したいと、ブルーバード劇場に行くことにしたのである。

 ブルーバード劇場は昭和レトロな雰囲気がたっぷり。最近流行りのシネコンの華やかさなど微塵もない。写真は待合室であるが、昔懐かしい名画座のような趣き。上映される映画は、ロードショーが終わった映画かと思っていたが(照さん、ごめんなさい)、なんとミニシアター系の映画だった。東京で言えば、新宿武蔵野館やユーロスペースのような感じである。
 僕らが観たのは『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』という映画。自分とうまく折り合いが付けられない高校生の悩み、苦しみを描いた、大変面白い作品だった。若いうちは、誰でもコンプレックスがあり、傷つきやすいし、逆に不器用で人を傷つけたりもする。ときに自己嫌悪に陥る。この年になると、そんな感覚は次第に薄れ、鈍感になってしまった。が、ああ、そんなことあったな、わかるなと、青春の日々を思い出させてくれる良い映画だった。
 そうそう、ブルーバード劇場では、あの話題の『カメラを止めるな!』も上演されていたそうだ。

 11月23、24、25日の3日間、別府ブルーバード劇場では『第2回Beppuブルーバード映画祭』が開催される。お近くの方は勿論、寒さゆえ温泉が恋しくなる頃だし、ちょうどふぐの美味しい季節だし、遠方の方もどうぞお出掛けください。皆でとっても可愛らしい照おばあちゃんに会いに行きましょう!

インフィニティ温泉 in 別府

2017-10-10 21:25:17 | 別府の話
 最近流行りのインフィニティ・プール、そしてその次に来るのがインフィニティ温泉??
 別府『潮騒の宿 晴海』で、あたかも湯船と海が一体となったように見える海辺の露天風呂に入った。

 この 3連休で別府に行って来た。ささやかながら別府を応援しようと(詳しくは、2017/1/23、「別府に行こう! ~ 熊本地震からの復興」をご覧ください)、今年2度目の訪問。とか言いながら、本当は単に別府好き、温泉好きなだけだが・・・。

 今回はいつもと少し違う旅にしようと、1泊めは別府駅近くの宿に“朝食のみ”で泊まり、そして夜の街へと繰り出した。目指すは“かも吸”で有名な老舗居酒屋『チョロ松』さん。かも吸とはこの店のオリジナル料理で、合鴨とゴボウ、ネギ、コンニャク、豆腐を塩コショウで煮込んだ鍋である。と聞くと和風な感じがするが、とてもスパイシーで、あのシンガポールの肉骨茶(バクテー)の鴨版といった感じである(因みにバクテーは豚肉)。美味しく、クセになる味だ。お酒の良いあてになるし、ご飯も進む。あと地鳥のたたきも美味しかった。おまけに安い!次回は、多くのお客さんが頼んでいた豚天(見た目は豚の唐揚げっぽい)を食べてみたい。

 こうして 1泊めを安く抑えた代わりに 2泊目はちょっと奮発。別府湾に面し、全室オーシャンビューかつ露天風呂付き、そしてインフィニティ温泉がうりの『晴海』に宿泊したのである。伊豆や熱海だと 2人で 1泊10万円以上しそうだが、半分程度で済むのが別府の良いところ。それでも十分高いが、何かのお祝いや記念日などに泊まれば良い思い出になること間違いなしだ。

 さて、肝心のインフィニティ温泉は 1階の大浴場「潮騒の湯」の露天風呂である。風呂の縁から海までの距離は10mもないだろう。遠くに水平線を望み、波の音を聴きながら湯船に浸かっていると、本当に海の中にいる気持ちになる。
 この風呂はよく計算されている。風呂は源泉掛け流しで、溢れたお湯は海側の縁全体から流れ出るようになっている。さらに、縁が手前から海側へと斜めに切られているため、流れるお湯で縁は見えない。この工夫が海との一体感を一層高めている。のんびり、海にたゆたうかの気分は最高だ。日常の忙しさや、嫌なことも忘れられる至福の時間。

 ただ、この夢のお風呂にも二つ問題というか、注意すべき点がある。
 一つはその大きさ。案外小さい。 概ね 3m四方といったところだろうか。運悪く、混雑した芋洗い状態のときに当たってしまうと、のんびり感傷に浸ることはできない。インフィニティ(無限)を感じるどころではなく、最悪、他の入浴客しか見えないかもしれない。
 これを避けるには風呂に入る時間を選ぶ必要がある。実は、僕は 3連休の真っただ中に行ったにも拘わらず、風呂に入った 2回とも貸切状態でインフィニティ温泉を楽しむことができた。1回目は夕方の 5時過ぎ。僕は「潮騒の湯」は 3時から 5時が混雑のピークだと思った。「潮騒の湯」の入浴は午後3時から。宿泊客に加え食事客も入浴できるため、3時前のロビーは人でごった返していた。また宿泊客も明るいうちに早めに入りたいと思っているはず。こう考えた僕は、日没前の、少し遅めの時間を選んだ。
 そして 2度目は朝の 7時半過ぎ。朝食が始まる時間帯ゆえ、もう空いているかなと思って入ったが、案の定誰もいなかった。
 勿論、僕がたまたま運が良かっただけかもしれないが、参考にして頂けると有難い。

 二つ目はインフィニティ温泉ならではというか、海との間に何の障害物もないがゆえの問題である。そう、海から丸見えなのである。僕は全然気にしなかったが、女性の方は遠くに漁船やボートの影が見えたら気になるかもしれない。まあ、皆が皆望遠鏡を抱えた覗き魔ではないだろうし、大らかな気持ちで温泉に入るか、それともアキラ100%のように隠す技を磨くか、それは皆さんにお任せするが。

 (冒頭の写真は部屋から見た日の出。覗き魔ではないので風呂の中の写真は撮れなかった。悪しからず。)


別府に行こう! ~ 熊本地震からの復興

2017-01-23 22:18:08 | 別府の話
 「あっ、お風呂が新しくなった。」
 1年振りに訪れた別府・明礬温泉、岡本屋さんの部屋のお風呂が綺麗になっていた。以前の方が風情があって良かった気がしないでもないが、やはり新しいお風呂は気持ちがいい。それに勿論お湯の良さは変わらない。源泉かけ流しのとても贅沢な風呂である。

 が、風呂を新しくした理由を聞いて僕は驚いた。なんと熊本地震だったのである。地震で瓦は落ちるは、客室の浴槽は抜けるは、浴室の壁は剥がれ落ちるは、大きな被害が出たという。風呂付の部屋は3室あるが、皆同じく風呂が地震で壊れてしまったそうだ。

 熊本地震の被災地というと益城町はじめ熊本県を思い浮かべるが、実は大分県も由布院や別府を中心にかなりの被害が出た。別府では最大震度6弱の揺れがあり、余震も随分続いたようだ。特に岡本屋さんのある明礬や鉄輪の被害が大きかったという。幸い別府では死者や重傷者は出なかったものの、家屋の損壊や、食器・ビン類が割れる等の被害が多く発生している。
 別府好きの僕としては恥ずかしいが、今回別府に行くまで地震被害のことをほとんど知らなかった。

 もっとも地震から9カ月経った別府は既に平静を取り戻していた。
 「べっぷ駅市場」では、新鮮な魚や美味しそうな惣菜を並べた店が相変わらず繁盛している。馴染みの鰻屋「大谷うな重 別府やよい店」も何も変わっていない。ここは、以前昼食難民と化した際に何の期待もせず入ったのだが、意外に旨く、それ以来よく通っている。うな重も良いが、うなとろ、肝焼きなどつまみが充実しているのがうれしい。僕は昼しか行ったことがないが、昼からお酒の進む店である。
 そしてソルバセオ銀座商店街というアーケードに沿った路地にある餃子専門店「湖月」。この店は焼餃子とビールしかない。小振りだが、パリッと焼かれ、モチモチした皮の餃子。いつもビールが進む。時間の関係で今回は行けなかったが(湖月の営業時間は14時~21時)、前を通ったところ普通に営業しているようだった。また、いつも食品売場をチェックする地場のデパート「トキハ」も変わっていなかった。

 銀座商店街、それに並行して走るもう一つのアーケード・やよい銀店街にもシャッターの降りた店が目立つが、これは地震以前からの話。悲しいかな、観光地・別府でもシャッター商店街化は否めない。地震でさらに拍車がかかったかもしれない。
 ただ今回街を歩いて気が付いたが、裏通りに若い人の店が増えている。バーのようなコーヒー・スタンドであったり、ベトナム料理の店だったり、立ち飲みバーだったりと。おそらく廃業した店を安く借りて開店したのであろう。人通りが少なく、若者が少ないこの場所でやっていけるかどうか若干不安だが、次回別府を訪れた際にこうした店が続いていることを願う。

 別府に行こう!

 別府は、見た目では地震の影響はもうないように見えるが、まだまだ別府の方の精神的なダメージや金銭面の負担は残っているに違いない。行って何ができるというわけではないが、行って、飲食店で飲み食いし、温泉宿に泊まる、それだけでも被災を受けた別府の方の応援になると思う。
 であれば、まずは東北や熊本にと言う方が多いと思うし、それを否定するつもりは毛頭ない。ただ熊本の陰に隠れた被災地、別府のことも知って欲しいと思った次第である。

山は富士 海は瀬戸内 湯は別府

2010-03-07 14:54:23 | 別府の話
 「日本一の温泉は?」と問われれば、僕は間違いなく別府と答える。
 勿論、泉質や風情、雰囲気など、人それぞれ好みは分かれる。「温泉といえばやっぱり硫黄泉だ」、「美人になる重曹泉がいいわ」、「何は無くとも源泉かけ流し」、「野趣あふれる露店風呂でリラックスしたい」、「人里離れた山あいの一軒宿、秘湯が一番」、「いや、お湯も大事だが料理がおいしくないとダメ」、等々。
 が、そんな細かいことは抜きにして、僕はやっぱり別府が日本一の温泉だと思う。規模や人々の日々の生活への浸透度など、別府は他の温泉を圧倒している。

 まず、温泉の規模というか、その種類、集積が凄い。
 別府には、別府八湯(はっとう)という、別府、浜脇、鉄輪、明礬、亀川、観海寺、柴石、堀田の八つの温泉がある。それぞれ個性の違う温泉である(もっとも同じ温泉であっても、源泉が違えば隣の宿であろうが湯の感触は違うが)。温泉の泉質は単純泉、塩化物泉など全11種と言われるが、なんと別府にはそのうち10種類ある。言ってみれば、別府は温泉のデパート、見本市だ。
 僕は別府八湯の中で鉄輪がお気に入りで、別府に行ったときは必ず「鉄輪むし湯」に行く。むし湯というのは、早い話が和風サウナ。石菖(せきしょう)という薬草の敷き詰められた石室に入り、温泉の熱で蒸されるのである。温度は高いものの、普通のサウナと違い乾燥していないのがいい。石菖の香りも心地よい。又、花粉症に効くとの噂もある。
 ところで、規模についてはデータの裏付けもある。別府には源泉が約2,900本あり、日本一の数を誇る。なんと別府だけで北海道や静岡県の源泉数を上回っているのである。又、別府の湧出量13万kl/日も日本一の量である。世界でもアメリカのイエローストーン国立公園に次ぐ湧出量であり、実際に利用されているという意味では別府が世界一といえるだろう。

 別府には旅館・ホテルのほか共同浴場が多い。市内には100を越す共同浴場がある。鉄輪を歩けば、百メートルも行かないうちに次の共同浴場にぶつかり、まさに“犬も歩けば温泉にあたる”といった感じである。入浴料は100円程度の施設が多く、各々地元の常連さんで賑わっているようだ。即ち、別府の共同浴場は、観光客の外湯めぐりというより、地域の人々の生活のためにあるのである。

 温泉が生活に密着という意味では“地獄蒸し”もはずせない。地獄蒸しは温泉の蒸気を利用して食材を蒸す料理であり、食感が良く、油や灰汁が抜け味も良い。別府の旅館、特に湯治客向けの宿には“地獄窯(蒸し窯)”を備えているところが多い。肉、魚介類、野菜、なんでもいける。地獄蒸しは、食材によって蒸し時間に多少差はあるが、ただザルやセイロに食材をのせるだけの、超簡単かつ極めて美味な料理である。
 この地獄蒸し、別府に日帰りで行ってはなかなか味わうことが難しかった。鉄輪の旅館、大黒屋さんが地獄蒸し屋台を一般にも貸しており、自ら食材を持ち込み、地獄蒸し料理を味わうことができる。が、我々は大黒屋さんと相性が悪く、今まで1勝2敗の成績で屋台を貸してもらえなかった。そして女将さんが怖い。「今日は予約でいっぱいよ。」「これから踊りに行くからダメ(注:ちょうど「別府八湯温泉まつり」の日だった。)」と素っ気ない言葉で断られた。もっとも、とある店で聞いたところ、女将さんは田舎育ちゆえ愛想がないが、根はやさしい方だそうだ。予約せず突然行った我々がいけなかったのだろう。

 しかし、皆さんに朗報が。3月28日、鉄輪・いでゆ坂に市営の『地獄蒸し工房 鉄輪』がオープンする。自ら地獄蒸しを体験できる施設である。地元の魚屋さんや八百屋さんで、その時期、地獄蒸しには何が良いかを聞き、是非、地獄蒸しに挑戦されては如何か。改めて温泉の力に感嘆すること請け合いだ。
(因みに、先日は「べっぷ駅市場」の魚屋さんで、ウチワエビ、カキ、オコゼが良いと紹介され、我々はすべて堪能いたしました。)