前回書いた通り、足下医療機関の倒産が増えている。又、経営の悪化した医療機関、いわゆる倒産予備群も相当数あると思われる。
一方で世界的な金あまり、運用難の中、REIT(不動産投信)の過熱感、優良不動産物件の不足等から、病院が新たな投資対象になろうとしている。今年に入って、野村ホールディングス系の野村ヘルスケアサポート・アンド・アドバイザリー、三菱商事、三井物産、伊藤忠とドイツ証券など、大手企業が相次いでファンドを組成している。
病院ファンドの役割を一言で言えば、「病院を資金面で支援するとともに、病院の経営改善を行い、その病院の再生、価値向上を図る」となる。美しい話だ。
が、実際はどうだろう。冒頭の大手企業のファンドはまだ緒についたばかりで、その良し悪しは判断できない。しかし現状は、悲しいかな、悪徳ブローカー、悪徳ファンドが病院を餌食にしていると噂されている。
具体的な手口は次の通りである。
経営難に苦しむ病院に近づき、最新医療機器の購入や病院の増改築等の資金を支援しましょう、と持ち掛ける。そうすれば患者さんが増え、経営が楽になりますよ、と甘い言葉を囁く。ときには、貴方の病院はこの地域には不可欠の病院だ、これを失くすわけには行かない、などと、正義の味方を装うかもしれない。
経営に疎い、医師である理事長・院長は、ついついその言葉に騙され、金を借りてしまう。経営難の病院は銀行から相手にされないことが多く、これが最後の望み、窮地を救われたと思ってしまうのである。
次に、悪徳ファンドは病院の理事会の過半を押さえ、実質的に病院の経営を支配する。医療法により病院の理事長は原則医師でなければならない。そのため理事長の医師は引き続き雇われ理事長・院長として働くことになる。ただ対外的に理事長、つまり医療法人のトップであることは変わらないので、銀行借入等の債務への理事長の個人保証はそのまま残る。
そして、ここから悪徳ブローカー、悪徳ファンドのやりたい放題が始まる。薬品メーカーや調剤薬局、リネン・給食、果ては病院内の花屋など出入り業者から金を搾り取る。診療報酬を担保に高利で資金を貸し付け病院の不動産を乗っ取る。診療報酬の不正請求を行う。そして、最後は病院の不動産を転売する。病院が潰れたり、理事長個人が破産したところで彼らには関係ないのである。
これは絵空事の話ではない。現実に起きている話である。前回はより良い病院経営を行うため、あるいは病院の再生を図るには、医療と経営の分離が必要と書いた。今回は、悪徳業者に騙されないためにも、病院には経営のセンスが必要という話である。が、やはり医師にそれを求めるのは難しいと思う。
もっとも冒頭に挙げた大手企業が、ここまでの悪事を働くとは思わない。しかし、事業会社の再生や不動産ファンドと比べて、病院ファンドの exit 、つまり投資資金の回収は難しく、どこまでこの事業が軌道に乗るかわからない。
病院ファンドは、通常、病院の土地・建物の購入、病院への貸付債権の購入等で投資を行う。資金回収としては、当面は不動産の賃料やコンサル収入しかない。が、これはあくまで病院の収入、診療報酬の範囲内であり、限りがある。不動産を売却するにしても病院の継続が前提である。マンション用地としては高く売れるかもしれないが、病院のままでは高い価格は難しい。残るは貸付債権の売却だが、これは相当なディスカウントで買う必要がある(例えば100の貸付債権を20、30など債権額よりかなり低い価格で買う)。
いずれにしろ、今の保険診療制度、医療は非営利等の原則を前提とすれば、病院ファンドはビジネスとして難しいと思う。彼等は株式会社による病院経営や、自由診療の一般化、即ち医療技術やサービスにより収入に大きな差が付くことまで想定しているのであろうか。
一方で世界的な金あまり、運用難の中、REIT(不動産投信)の過熱感、優良不動産物件の不足等から、病院が新たな投資対象になろうとしている。今年に入って、野村ホールディングス系の野村ヘルスケアサポート・アンド・アドバイザリー、三菱商事、三井物産、伊藤忠とドイツ証券など、大手企業が相次いでファンドを組成している。
病院ファンドの役割を一言で言えば、「病院を資金面で支援するとともに、病院の経営改善を行い、その病院の再生、価値向上を図る」となる。美しい話だ。
が、実際はどうだろう。冒頭の大手企業のファンドはまだ緒についたばかりで、その良し悪しは判断できない。しかし現状は、悲しいかな、悪徳ブローカー、悪徳ファンドが病院を餌食にしていると噂されている。
具体的な手口は次の通りである。
経営難に苦しむ病院に近づき、最新医療機器の購入や病院の増改築等の資金を支援しましょう、と持ち掛ける。そうすれば患者さんが増え、経営が楽になりますよ、と甘い言葉を囁く。ときには、貴方の病院はこの地域には不可欠の病院だ、これを失くすわけには行かない、などと、正義の味方を装うかもしれない。
経営に疎い、医師である理事長・院長は、ついついその言葉に騙され、金を借りてしまう。経営難の病院は銀行から相手にされないことが多く、これが最後の望み、窮地を救われたと思ってしまうのである。
次に、悪徳ファンドは病院の理事会の過半を押さえ、実質的に病院の経営を支配する。医療法により病院の理事長は原則医師でなければならない。そのため理事長の医師は引き続き雇われ理事長・院長として働くことになる。ただ対外的に理事長、つまり医療法人のトップであることは変わらないので、銀行借入等の債務への理事長の個人保証はそのまま残る。
そして、ここから悪徳ブローカー、悪徳ファンドのやりたい放題が始まる。薬品メーカーや調剤薬局、リネン・給食、果ては病院内の花屋など出入り業者から金を搾り取る。診療報酬を担保に高利で資金を貸し付け病院の不動産を乗っ取る。診療報酬の不正請求を行う。そして、最後は病院の不動産を転売する。病院が潰れたり、理事長個人が破産したところで彼らには関係ないのである。
これは絵空事の話ではない。現実に起きている話である。前回はより良い病院経営を行うため、あるいは病院の再生を図るには、医療と経営の分離が必要と書いた。今回は、悪徳業者に騙されないためにも、病院には経営のセンスが必要という話である。が、やはり医師にそれを求めるのは難しいと思う。
もっとも冒頭に挙げた大手企業が、ここまでの悪事を働くとは思わない。しかし、事業会社の再生や不動産ファンドと比べて、病院ファンドの exit 、つまり投資資金の回収は難しく、どこまでこの事業が軌道に乗るかわからない。
病院ファンドは、通常、病院の土地・建物の購入、病院への貸付債権の購入等で投資を行う。資金回収としては、当面は不動産の賃料やコンサル収入しかない。が、これはあくまで病院の収入、診療報酬の範囲内であり、限りがある。不動産を売却するにしても病院の継続が前提である。マンション用地としては高く売れるかもしれないが、病院のままでは高い価格は難しい。残るは貸付債権の売却だが、これは相当なディスカウントで買う必要がある(例えば100の貸付債権を20、30など債権額よりかなり低い価格で買う)。
いずれにしろ、今の保険診療制度、医療は非営利等の原則を前提とすれば、病院ファンドはビジネスとして難しいと思う。彼等は株式会社による病院経営や、自由診療の一般化、即ち医療技術やサービスにより収入に大きな差が付くことまで想定しているのであろうか。