一般に眼鏡屋さんに対するロイヤリティは高い。いや、高かったと思う。以前は、一度眼鏡を作った店で、また次も眼鏡を作る人が多かった。アフターサービスでお世話になっていたり、データが保管されていたり、馴染み深い存在だからである。お店側も既存顧客に特別な割引や特典を与えるなど囲い込みに熱心だった。両者の関係は、一種、お互いハッピーなアリ地獄(?)のような状態といえる。
しかし、この“アリ地獄”に、2001年以降、特にこの5年、大きな変化が起きている。ZoffやJINSなど、スリー/ツー・プライスと明朗かつ低価格で販売する眼鏡店の台頭である。彼らは、当時眼鏡一式3、4万円が当たり前だった中で、5,000円から10,000円で眼鏡を売り出した。眼鏡版ユニクロ=SPA(製造小売業)というか、中国でフレームを大量に安く調達し、韓国の安いレンズを組み合わせ、この低価格を実現した。なんと従来の2割の価格である。
この結果、既存のパリミキや愛眼といった専門店チェーンや、メガネスーパー、ビジョンメガネといった量販店は大赤字となり、リストラを余儀なくされるに至った。唯一既存勢の中で健闘、それも大健闘しているのはメガネトップ。『眼鏡市場』ブランドで中高年齢層をターゲットとし、やや価格は高めであるも高機能のレンズのツープライス販売を実現したからである。JINSと重ならない、少し上のマーケットを対象とした点、そしてターゲット層の女性に絶大な人気を誇ったヨン様を広告に使った点が、成功の理由であろう。
さて、上場している5社の損益計算書を調べてみた。売上高、経常利益ともにトップはメガネトップ。2012/3期で売上高635億円、経常利益90億円。もう1社黒字なのはJINSで、売上高226億円、経常利益26億円。パリミキ(三城ホールディングス)、メガネスーパー、愛眼はいずれも赤字である。
だが、おもしろいことに5社の粗利率は70%前後でさほど変わらない。つまり、眼鏡の原価、仕入れ値は、高級眼鏡であろうと低価格の眼鏡であろうと、販売価格の3割程度とさほど変わらないのである。30,000円の眼鏡の原価が9,000円、5,000円の眼鏡はなんと1,500円ということになる。
黒字と赤字の違いは、原価以外のコスト、なかでも人件費の違いが大きい。例えば、JINSの売上高に対する人件費の比率は15%強に過ぎないが、専門店チェーンのパリミキや愛眼はいずれも33%強である(因みに量販店のメガネトップとメガネスーパーはその中間、26%前後)。
JINSの人件費の比率が低いのは、新しい企業ゆえ若い社員が多く賃金が低いこともあろうが、やはり売り方の違いが大きい。TV等の広告で大量に集客し(事実、売上高に占める広告費の比率はJINSが13%と他社の倍近い)、セルフ販売を行う体制。JINSは、効率の追求、つまり、接客や検眼(眼鏡の度数を測ること)等の時間を最低限に抑え、店員一人で最大限のお客様をこなすというビジネスモデルなのである。
今日、眼鏡を買った。どの店で買うのが良いかと迷ったが、結局、僕は専門店チェーン(パリミキや愛眼ではない他のチェーン店)にした。実は、今回初めて遠近両用の眼鏡を作ることにしたので僕は価格より安心を選んだのである。
で、先ほどの人件費の話であるが、その店では店員さんがフレーム選びからレンズその他の説明、フレームの調節まで約1時間ずっと付いてくれた。眼科で処方箋をもらっており店で検眼をしていないのにこの時間である。JINS的に言えば、極めて非効率な販売、高コストである。が、この1時間が安心感に繋がっている。
もちろん僕はいわゆるスリープライスの店を否定しない。簡単に、早く、しかも安く眼鏡を買えるというのは画期的なことであるし、彼らは眼鏡を、視力を補う器具から洋服やアクセサリーと同じオシャレアイテムに変えたのである。オシャレアイテムだと割り切れば、眼鏡に多少不具合があってもさほど気にならない。思うに、どの店で眼鏡を買うのかは、まずは価格、そして次に眼鏡の機能とオシャレのどちらを重視するかで、自ずと決まって来るのであろう。
しかし、この“アリ地獄”に、2001年以降、特にこの5年、大きな変化が起きている。ZoffやJINSなど、スリー/ツー・プライスと明朗かつ低価格で販売する眼鏡店の台頭である。彼らは、当時眼鏡一式3、4万円が当たり前だった中で、5,000円から10,000円で眼鏡を売り出した。眼鏡版ユニクロ=SPA(製造小売業)というか、中国でフレームを大量に安く調達し、韓国の安いレンズを組み合わせ、この低価格を実現した。なんと従来の2割の価格である。
この結果、既存のパリミキや愛眼といった専門店チェーンや、メガネスーパー、ビジョンメガネといった量販店は大赤字となり、リストラを余儀なくされるに至った。唯一既存勢の中で健闘、それも大健闘しているのはメガネトップ。『眼鏡市場』ブランドで中高年齢層をターゲットとし、やや価格は高めであるも高機能のレンズのツープライス販売を実現したからである。JINSと重ならない、少し上のマーケットを対象とした点、そしてターゲット層の女性に絶大な人気を誇ったヨン様を広告に使った点が、成功の理由であろう。
さて、上場している5社の損益計算書を調べてみた。売上高、経常利益ともにトップはメガネトップ。2012/3期で売上高635億円、経常利益90億円。もう1社黒字なのはJINSで、売上高226億円、経常利益26億円。パリミキ(三城ホールディングス)、メガネスーパー、愛眼はいずれも赤字である。
だが、おもしろいことに5社の粗利率は70%前後でさほど変わらない。つまり、眼鏡の原価、仕入れ値は、高級眼鏡であろうと低価格の眼鏡であろうと、販売価格の3割程度とさほど変わらないのである。30,000円の眼鏡の原価が9,000円、5,000円の眼鏡はなんと1,500円ということになる。
黒字と赤字の違いは、原価以外のコスト、なかでも人件費の違いが大きい。例えば、JINSの売上高に対する人件費の比率は15%強に過ぎないが、専門店チェーンのパリミキや愛眼はいずれも33%強である(因みに量販店のメガネトップとメガネスーパーはその中間、26%前後)。
JINSの人件費の比率が低いのは、新しい企業ゆえ若い社員が多く賃金が低いこともあろうが、やはり売り方の違いが大きい。TV等の広告で大量に集客し(事実、売上高に占める広告費の比率はJINSが13%と他社の倍近い)、セルフ販売を行う体制。JINSは、効率の追求、つまり、接客や検眼(眼鏡の度数を測ること)等の時間を最低限に抑え、店員一人で最大限のお客様をこなすというビジネスモデルなのである。
今日、眼鏡を買った。どの店で買うのが良いかと迷ったが、結局、僕は専門店チェーン(パリミキや愛眼ではない他のチェーン店)にした。実は、今回初めて遠近両用の眼鏡を作ることにしたので僕は価格より安心を選んだのである。
で、先ほどの人件費の話であるが、その店では店員さんがフレーム選びからレンズその他の説明、フレームの調節まで約1時間ずっと付いてくれた。眼科で処方箋をもらっており店で検眼をしていないのにこの時間である。JINS的に言えば、極めて非効率な販売、高コストである。が、この1時間が安心感に繋がっている。
もちろん僕はいわゆるスリープライスの店を否定しない。簡単に、早く、しかも安く眼鏡を買えるというのは画期的なことであるし、彼らは眼鏡を、視力を補う器具から洋服やアクセサリーと同じオシャレアイテムに変えたのである。オシャレアイテムだと割り切れば、眼鏡に多少不具合があってもさほど気にならない。思うに、どの店で眼鏡を買うのかは、まずは価格、そして次に眼鏡の機能とオシャレのどちらを重視するかで、自ずと決まって来るのであろう。