縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

変臉(変面)の秘密

2010-03-29 23:49:46 | もう一度行きたい
 上海で「変臉(bian lian)」を見た。変臉とは、四川省の伝統芸能、川劇(せんげき)を代表するパフォーマンスである。日本では「臉」という字が一般的でないため「面」の字が充てられ、「変面(へんめん)」として知られている。
 この「変面」という言葉は、パフォーマンスの内容をうまく表している。と言っても、変な面、顔をするのではない。コメディではない。これは一種のマジックである。なんと、顔が瞬時に変わるのである。ネットで「変面」と検索すれば、Youtubeなどで動画が見られる。百聞は一見に如かず、是非一度ご覧あれ。

 僕は上海の「巴国布衣風味酒楼」という四川料理のレストランで変面を見た。ここは四川省政府のやっているレストランらしく、地元から変面の役者さんを連れて来ているとのこと。僕が見たのは中山公園近くの店であったが、浦東にも支店があり、そこでも変面を見ることができるようだ。
 
 店に着き、注文を終えたところ、気が付けば、ステージの下や階段を目指す人の動きが。遅れを取ってはいけない。僕らも即座に席を立ち、階段の上、まずまずの場所を確保した。あとはショーが始まるのを待つばかりだ。
 と、そこに、軽快な音楽(勇ましい中国音楽というか、昔流行った「ジンギスカン」のような感じ?)に乗って、京劇の隈取りのような面をした役者さんが現れた。黒いマントに黒い帽子。切れ味の良い動きで踊っている。おそらく正義の味方なのであろう。
 突然、顔が変わった。隈取りをした仮面が、あっという間に別の仮面に早変わり。それも一度ならず、何度も何度も変わった。じっと顔を見ていても、変わる瞬間がわからない。なぜ? いつ? どうやって? 本当に疑問の尽きない、不思議な、しかし、見て、ただ単純に楽しめるパフォーマンスである。
 引田天功やプリンセス天功のイリュージョンとは規模も金の掛け方も違うが、変面も立派なイリュージョンの世界である。いや、雰囲気的には、イリュージョン プラス 仮面ライダー・ショー といった趣きである。

 ところで、この変面、もとい「変臉」、中国では国家の二級機密の扱いになっているらしい。変臉は、四川省では代々自らの息子にしか伝えない、秘伝の技なのである。もっとも最近は女性の役者さんもいるし、変臉を演じる外国人までいるとのこと。一時、中国ではそれが大問題になったようだ。金に目が眩んで、変臉の秘密を他に漏らした、と。

 中国政府の報復は怖いが(?)、僕なりに変臉の秘密を考えてみたい。
 まず、薄い布の仮面を何枚も被っていることは間違いない。それをヒモか何かで引っ張って順に外しているのである。あれだけ瞬時に変わるということは、ゴムかバネを使っているのだと思う。留め金を外すと一気に飛んで行く仕掛けではないか。それに大きな帽子が怪しい。外した仮面は、帽子で隠しながら衣装の中にしまっているのだろう。

 が、しかし、たとえ理屈がわかったところで、この技、技術が素晴らしいことに変わりはない。
 四川省は遠いが、上海は近い。5月からは万博も始まる。上海に行かれた際は、騙されたと思って、一度変臉をご覧になっては如何か。

 ついでに、あのレストランの四川料理がおいしいかどうか確かめて来て欲しい。僕らは冷めた料理しか食べられず、料理の良し悪しがよくわからなかったので。というのは、ショーは19時45分頃から30分弱で、僕らが店に着いたのが19時半。ひとしきり注文し、少し料理が来たところでショーが始まった。そして、悲しいかな、無人のテーブルにどんどん料理が運ばれて行ったのであった・・・・。

 教訓、「巴国布衣風味酒楼」には18時過ぎには行きましょう。で、料理を食べ終わった後で、ゆっくりと変臉を鑑賞しましょう。

東京スカイツリーとブルジュ・ハリファ

2010-03-14 00:32:56 | 最近思うこと
 毎朝、東京スカイツリーを見ている。通勤のバスの中から見えるのである。もう随分高くなった。HPによると今の高さは 311m(3/6現在)。東京タワー(333m)を抜くのも時間の問題だ。今月中に抜くかもしれない。
 スカイツリーは2011年末竣工、2012年春開業の予定である。高さは 634m、東京タワーの2倍近い高さだ。完成すれば世界一高い塔になる(因みに、現在の世界一は中国の広州テレビ・観光塔の610m)。

 さて、間もなく抜かれる東京タワーであるが、その完成は1958年。日本の高度成長が始まった頃である。パリのエッフェル塔を抜く世界一の鉄塔であり、当時の時代の高揚感と相俟って、人々は夢と希望のシンボル、日本の成長のシンボルとして、建設を見守っていたのではないだろうか。
 高さで東京タワーを上回る東京スカイツリーであるが、人々の注目度、関心の高さという意味では、当時の東京タワーの足元にも及ばない。おそらく事業主体の東武鉄道と地元・墨田区以外の人は関心が低いだろう。毎日見ている僕にしても、何の感慨も思い入れもない。ただ出来つつある、高くなっている、という事実を淡々と眺めているだけである。
 皆、醒めている。この低迷の続く日本経済の現状を見るに、東京タワーの建設時のように、高くなるタワーに日本経済の高い成長を重ね合わせることなど到底できない。GNP世界第2位を目指していた当時と、中国に抜かれ3位に転落しようとしている今とでは、状況がまったく違う。

 もう一つ関心が高まらない理由として、東京スカイツリーが真の世界一ではないことがあると思う。確かに塔としては世界一であるが、建造物としてはブルジュ・ハリファの方がはるかに高い。ブルジュ・ハリファは、今年完成したばかりの、ドバイにある地上168階、高さ828mの超高層ビルである。ビルより低いタワーというのは、ちょっと様にならない。

 ところで、このブルジュ・ハリファ、建設中はブルジュ・ドバイと呼ばれていた。それが、昨年のドバイ・ショックによる資金難をアブダビが支援したことから、アブダビに敬意を表し、アブダビの首長の名前、ハリファに変更されたのであった。
 話がちょっと飛躍するが、話がブルジュ(塔)だけに、ドバイ・ショックはバベルの塔が思い出される。
 ドバイはイスラムの中では戒律が弱く、外国人であればお酒を飲めるし、女性の服装も自由だという。それにイスラム教では不浄とされるブタ肉もOKらしい。これだけでも他のイスラム国家から十分嫌われていたのに、外国資本を導入し、金融、流通、不動産、観光等で中東随一の成長を遂げていたことから、やっかみもあり、更に嫌われていたのであった。
 勿論ドバイ・ショックは、神の怒りや他のイスラム国家の怨念が理由ではない。単にドバイが金融という虚業と、自らが作り価値を増幅させた不動産・観光によって外国資本を呼び寄せたものの、その外国資本が一気に収縮して行ったことの帰結にすぎない。いわば他人のふんどしで相撲を取っていたツケが回った結果といえよう。

 翻って東京スカイツリー、注目されないものの、人知れず、少しずつ、しかし着実に高くなっている。東京タワーが高度成長を象徴したかのように、東京スカイツリーが今後の日本経済の緩やかな回復、成長の象徴になると良い。少なくとも自信も驕りも失った今の日本の状況で、東京スカイツリーがバベルの塔になることはないだろう。

山は富士 海は瀬戸内 湯は別府

2010-03-07 14:54:23 | 別府の話
 「日本一の温泉は?」と問われれば、僕は間違いなく別府と答える。
 勿論、泉質や風情、雰囲気など、人それぞれ好みは分かれる。「温泉といえばやっぱり硫黄泉だ」、「美人になる重曹泉がいいわ」、「何は無くとも源泉かけ流し」、「野趣あふれる露店風呂でリラックスしたい」、「人里離れた山あいの一軒宿、秘湯が一番」、「いや、お湯も大事だが料理がおいしくないとダメ」、等々。
 が、そんな細かいことは抜きにして、僕はやっぱり別府が日本一の温泉だと思う。規模や人々の日々の生活への浸透度など、別府は他の温泉を圧倒している。

 まず、温泉の規模というか、その種類、集積が凄い。
 別府には、別府八湯(はっとう)という、別府、浜脇、鉄輪、明礬、亀川、観海寺、柴石、堀田の八つの温泉がある。それぞれ個性の違う温泉である(もっとも同じ温泉であっても、源泉が違えば隣の宿であろうが湯の感触は違うが)。温泉の泉質は単純泉、塩化物泉など全11種と言われるが、なんと別府にはそのうち10種類ある。言ってみれば、別府は温泉のデパート、見本市だ。
 僕は別府八湯の中で鉄輪がお気に入りで、別府に行ったときは必ず「鉄輪むし湯」に行く。むし湯というのは、早い話が和風サウナ。石菖(せきしょう)という薬草の敷き詰められた石室に入り、温泉の熱で蒸されるのである。温度は高いものの、普通のサウナと違い乾燥していないのがいい。石菖の香りも心地よい。又、花粉症に効くとの噂もある。
 ところで、規模についてはデータの裏付けもある。別府には源泉が約2,900本あり、日本一の数を誇る。なんと別府だけで北海道や静岡県の源泉数を上回っているのである。又、別府の湧出量13万kl/日も日本一の量である。世界でもアメリカのイエローストーン国立公園に次ぐ湧出量であり、実際に利用されているという意味では別府が世界一といえるだろう。

 別府には旅館・ホテルのほか共同浴場が多い。市内には100を越す共同浴場がある。鉄輪を歩けば、百メートルも行かないうちに次の共同浴場にぶつかり、まさに“犬も歩けば温泉にあたる”といった感じである。入浴料は100円程度の施設が多く、各々地元の常連さんで賑わっているようだ。即ち、別府の共同浴場は、観光客の外湯めぐりというより、地域の人々の生活のためにあるのである。

 温泉が生活に密着という意味では“地獄蒸し”もはずせない。地獄蒸しは温泉の蒸気を利用して食材を蒸す料理であり、食感が良く、油や灰汁が抜け味も良い。別府の旅館、特に湯治客向けの宿には“地獄窯(蒸し窯)”を備えているところが多い。肉、魚介類、野菜、なんでもいける。地獄蒸しは、食材によって蒸し時間に多少差はあるが、ただザルやセイロに食材をのせるだけの、超簡単かつ極めて美味な料理である。
 この地獄蒸し、別府に日帰りで行ってはなかなか味わうことが難しかった。鉄輪の旅館、大黒屋さんが地獄蒸し屋台を一般にも貸しており、自ら食材を持ち込み、地獄蒸し料理を味わうことができる。が、我々は大黒屋さんと相性が悪く、今まで1勝2敗の成績で屋台を貸してもらえなかった。そして女将さんが怖い。「今日は予約でいっぱいよ。」「これから踊りに行くからダメ(注:ちょうど「別府八湯温泉まつり」の日だった。)」と素っ気ない言葉で断られた。もっとも、とある店で聞いたところ、女将さんは田舎育ちゆえ愛想がないが、根はやさしい方だそうだ。予約せず突然行った我々がいけなかったのだろう。

 しかし、皆さんに朗報が。3月28日、鉄輪・いでゆ坂に市営の『地獄蒸し工房 鉄輪』がオープンする。自ら地獄蒸しを体験できる施設である。地元の魚屋さんや八百屋さんで、その時期、地獄蒸しには何が良いかを聞き、是非、地獄蒸しに挑戦されては如何か。改めて温泉の力に感嘆すること請け合いだ。
(因みに、先日は「べっぷ駅市場」の魚屋さんで、ウチワエビ、カキ、オコゼが良いと紹介され、我々はすべて堪能いたしました。)