ウディ・アレン、1935年生まれ、映画監督・俳優・脚本家・小説家等々。本当に多才な方である。
この映画を作ったのは、ウディ・アレンが75、76歳の頃。うーん、本当に恐れ入ってしまう。穏やかな年金生活を送っていたり、はたまた死んでもおかしくない(失礼!)年齢なのに、この想像力や愛情、エネルギーはいったい何処から来るのだろう。
『ミッドナイト・イン・パリ』は大人のファンタジーである。主人公は、1920年代のパリに憧れる、アメリカ人の映画脚本家。パリを旅行中の彼が、深夜12時の鐘とともにクラシック・カーに乗り込み、21世紀から1920年代のパリへとタイム・スリップ。そこは、フィッツジェラルドやヘミングウェイといった作家や、ピカソやダリといった画家など多くの芸術家が活躍する、華の都、芸術の都パリ。まさにその絶頂期。毎夜繰り広げられるパーティー、狂乱の日々。彼は想う、ああ、この世界に暮らすことが出来れば、と。
ファンタジーなので、あまり細かいことを気にしてはいけない。例えば、どうして簡単に稀代の天才と知り合うのかとか、当時のお金は持っていないのにとか、あるいは、さえない中年男なのに何故美女と恋に落ちるのか、等々。ファンタジーに?は要らない。ただ信じる、素直にその世界に入り込むだけである。
彼は脚本家として成功し、そのうえ裕福な家の美しい娘と婚約している。間違いなく勝ち組、上位1%側の人間といえよう。が、彼は、金儲けのためにシナリオを書き散らすことを止め、小説を書く、それもジャズ・エイジの作家のように、パリに暮らし、パリで小説を書きたいと考えている。フィアンセのことを愛しているが、そんな彼の夢を理解しない彼女との間に最近隙間風が・・・。
そんなとき彼は、1920年代のパリで絶世の美女に出会い、一目惚れする。この世界で彼女と暮らし、小説を書く、それは彼が想い続けてきた夢。しかし、フィアンセを捨てることもできない。二人の間、さらに二つの世界の間で、揺れ動く乙女心、もとい中年男の心。
結末は是非映画をご覧頂きたいが、彼は最後に現実を選ぶ。地に足のついた生活を選ぶ(ように思える)。
「隣の芝生は青い」と言うように、厳しい現実を前にすると、人はつい別の時代や別の世界に憧れてしまう。夢、あるいは現実逃避。生きて行くのは本当に大変だし、厳しく、辛いことばかり。いきおい、あの時代は本当に華やかだった・自由だったなど、違う時代に憧れ、礼賛してしまう。
しかし、実際はどうだろう。映画の中でも、1920年代の美女は1890年代、世紀末のパリが最高だと言い、一方、世紀末のドガやロートレックはルネッサンスが理想だと言う。つまるところ、結局は『オズの魔法使い』ではないが、“There's no place like home.”という気がしてならない。
嫌なことから逃げることなく、与えられた今を大事に生きて行きたい。そんなことを考えさせられた映画だった。
p.s. 前にもウディ・アレンのことを書いているので良かったらご覧ください。【久々のウディ・アレン、『マッチ・ポイント』】
この映画を作ったのは、ウディ・アレンが75、76歳の頃。うーん、本当に恐れ入ってしまう。穏やかな年金生活を送っていたり、はたまた死んでもおかしくない(失礼!)年齢なのに、この想像力や愛情、エネルギーはいったい何処から来るのだろう。
『ミッドナイト・イン・パリ』は大人のファンタジーである。主人公は、1920年代のパリに憧れる、アメリカ人の映画脚本家。パリを旅行中の彼が、深夜12時の鐘とともにクラシック・カーに乗り込み、21世紀から1920年代のパリへとタイム・スリップ。そこは、フィッツジェラルドやヘミングウェイといった作家や、ピカソやダリといった画家など多くの芸術家が活躍する、華の都、芸術の都パリ。まさにその絶頂期。毎夜繰り広げられるパーティー、狂乱の日々。彼は想う、ああ、この世界に暮らすことが出来れば、と。
ファンタジーなので、あまり細かいことを気にしてはいけない。例えば、どうして簡単に稀代の天才と知り合うのかとか、当時のお金は持っていないのにとか、あるいは、さえない中年男なのに何故美女と恋に落ちるのか、等々。ファンタジーに?は要らない。ただ信じる、素直にその世界に入り込むだけである。
彼は脚本家として成功し、そのうえ裕福な家の美しい娘と婚約している。間違いなく勝ち組、上位1%側の人間といえよう。が、彼は、金儲けのためにシナリオを書き散らすことを止め、小説を書く、それもジャズ・エイジの作家のように、パリに暮らし、パリで小説を書きたいと考えている。フィアンセのことを愛しているが、そんな彼の夢を理解しない彼女との間に最近隙間風が・・・。
そんなとき彼は、1920年代のパリで絶世の美女に出会い、一目惚れする。この世界で彼女と暮らし、小説を書く、それは彼が想い続けてきた夢。しかし、フィアンセを捨てることもできない。二人の間、さらに二つの世界の間で、揺れ動く乙女心、もとい中年男の心。
結末は是非映画をご覧頂きたいが、彼は最後に現実を選ぶ。地に足のついた生活を選ぶ(ように思える)。
「隣の芝生は青い」と言うように、厳しい現実を前にすると、人はつい別の時代や別の世界に憧れてしまう。夢、あるいは現実逃避。生きて行くのは本当に大変だし、厳しく、辛いことばかり。いきおい、あの時代は本当に華やかだった・自由だったなど、違う時代に憧れ、礼賛してしまう。
しかし、実際はどうだろう。映画の中でも、1920年代の美女は1890年代、世紀末のパリが最高だと言い、一方、世紀末のドガやロートレックはルネッサンスが理想だと言う。つまるところ、結局は『オズの魔法使い』ではないが、“There's no place like home.”という気がしてならない。
嫌なことから逃げることなく、与えられた今を大事に生きて行きたい。そんなことを考えさせられた映画だった。
p.s. 前にもウディ・アレンのことを書いているので良かったらご覧ください。【久々のウディ・アレン、『マッチ・ポイント』】