縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

『逢えてよかったね友だちプロジェクト』 ~ 音楽で“そっと寄り添う”被災地支援

2015-10-26 23:35:38 | 最近思うこと
 みなさんは小原孝氏の『弾き語りフォーユー』という番組をご存じだろうか?
 NHK FMで月曜から木曜の午前11時から11時20分までやっているラジオ番組である。ピアニストである小原氏が、一般からのリクエストを受け、クラシックから童謡、歌謡曲、JPOP、民謡など、幅広いジャンルの音楽を自らのアレンジで弾くという番組らしい。もう17年も続いているというから、多くの人に愛されている番組なのだろう。
 伝聞調の表現で申し訳ないが、実は、僕は『弾き語りフォーユー』を聴いたことがない。そもそも、 つい2日前まで小原氏のことも番組のことも知らなかった。

 先週の土曜日、『渋谷音楽祭』の“心地よい週末のひと時を 今夜はとことんクラシック!”というイベントに行って来た。前半は東フィルがモーツァルトの「ジュピター」を演奏し、後半が小原氏のピアノとおしゃべりだった。
 小原氏の演奏はとても楽しかった。そう、まるでジャズのアドリブを聴いているような感じだ。クラシックを弾いているかと思ったら、途中で演歌(「川の流れのように」)に変わったり、童謡に変わったりと。このほか、ベートーヴェン風の「人生いろいろ」であるとか、ショパンと「ねこふんじゃった」を合体させた「仔猫と子犬のワルツ」であるとか、氏の才能、アレンジの妙が感じられる、本当に楽しい演奏だった。

 しかし、僕が今日みなさんに一番ご紹介したいのは、『逢えてよかったね友だちプロジェクト』である。これは、小原氏が2011年から続けられている、東日本大震災の復興支援、被災地の方々を音楽で励まそう、勇気づけようという活動である。僕は今回のイベントで初めてこの活動を知った。
 小原氏は、震災後、何か自分にできること、音楽にできることはないかと思い、「あなたにありがとう/逢えてよかったね」のCDを発売し、そのCDの売上やコンサートの収益の一部で、被災地にCDや楽譜、楽器などを送られているという。また被災地でのコンサートも行っていらっしゃる。最後に皆で一緒に「逢えてよかったね」を合唱するのだという。被災地の方各々の置かれた状況や苦しみも知らずに、ただ頑張れと言うのではかえって重荷になることもある。音楽でそっと寄り添ってあげたい、何かの支えになればうれしいと氏は考えられたのだという。

 この氏のお考えは大変立派である。さらに、それ以上に素晴らしいのが、氏が今もその活動を続けられていることだ。震災から4年半、まだ現地は復興の途上である。大切な方を失ったり、ご自身本当に苦しい思いをされた方が皆、震災前と変わらぬ生活を、気持ちを取り戻したとは到底思えない。が、悲しいかな、僕のように被災地と直接関係のない人間は、日々の生活にかまけ、震災のことも忘れがち。
 僕の勤める会社で、震災後、被災地の小中学校にメッセージを添えて本を贈ろうというプロジェクトがあった。うちの会社もたまには良いことをするなと思い、僕も喜んで協力した。ただ残念なことに、このプロジェクトが行われたのは震災の年の1回だけだった。
 僕自身、今、被災地の方のため何かを積極的にやっているわけではない。だからこそ小原氏の活動を知り、僕も何かお手伝いをしたいと思い、まずは皆さんに氏の活動をご紹介した次第である。皆が自分のできる範囲で何かを始められると良い。

リスボンのお勧めレストラン(ポルトガル紀行その2)

2015-10-20 00:01:54 | もう一度行きたい
 ポルトガル料理といえば、やはりバカリャウ(干した塩ダラ)抜きには語れない。一年365日、毎日違うレシピで食べられるという、その豊富な料理のバリエーション。目の前が海で、いくらでも新鮮な魚介類が手に入るのにポルトガル人は塩漬けのタラの干物が大好物。いわばポルトガル人のおふくろの味なのである。
 因みにポルトガル近海でタラは獲れない。タラは寒流の魚であるが、ポルトガルの横を流れるのは暖流の北大西洋海流。ポルトガル人は、はるか大航海時代の昔から、ノルウェー沖やカナダのニューファンドランド沖まで行ってタラを獲っていた。冷蔵技術のない時代、船での保存は塩漬け。長い年月を掛け、ポルトガル人のDNAに塩ダラ好きが刷り込まれて来たのであろう。
 また、この塩ダラ好きのせいか、あるいは昔も今も塩田での塩づくりが盛んなせいか、はたまた暑いせいか、ポルトガルの味付けは全体に塩辛い。苦手な方は「塩を少し控えめに」というポルトガル語を覚えて行くことをお勧めする。

 さて、DNAに塩ダラ信仰の刷りこみのない僕らは、ポルトガルでバカリャウではなく、海老、カニ、タコなどを食べていた。いくつかリスボンで気に入ったお店を紹介したい。

 ホテルで新鮮な魚介類を食べたいと言ったところ紹介されたのが ”Cervejaria Ramiro”(ラミーロ)。夕食時、店の前は大行列だった。観光客も多いようだ。列の後ろはシンガポール在住の中国人だったし、隣に座ったのはオーストラリア人のカップルだった。店は大衆食堂の雰囲気。安くて、とにかく量が多い。新鮮な魚介類をとことん堪能するにはもってこいの店だ。
 僕らは、茹でた海老、カニ(イチョウガニ?)、ペルセベス(カメノテ)を食べた。特にカニみそが旨い。カニのむき身をカニみそと少し酸味のあるソースであえたものが、甲羅いっぱいに詰っている。そのまま食べたり、パンに付けて食べたり、いい酒のつまみである。またハサミではなく、ハンマーが出てきたのにはちょっと驚いた。あと日本人としては、やはり日本のカニスプーンが欲しかった(日本から輸入すれば売れるかな?)。

 翌日はガイドブックを見て、”Solar dos Presuntos”(ソラール・ドス・プレズントス) へ。またまた海老、カニを食べた。この店の方が料理もインテリアも、それに店員も洗練されている。値段も若干高い。皿に無造作に海老・カニが置かれていたラミーロに対し、こちらは皿に氷が敷かれ、その上に海老・カニがきれいに並べられていた。カニみそのソースもラミーロとはちょっと味が違う。むき身の量の違いかもしれないが、昨日よりマイルドで、僕はこちらの方が好みだった。ここも人気店である。時間が遅かったので並ばずに入れたが、店は3階までいっぱいだった。

 リスボンでもう1軒、是非とも紹介したい店がある。それは”Belcanto”(ベルカント)。ミシュラン1つ星の店である。高級店なのに、僕らはベルカントに飛び込みで行った。乗ろうとしたポルトに向かう特急列車がいっぱいで、急に2時間の待ち時間ができたことから、リスボンでの最後の午餐を優雅に楽しもうと思ったのである。席が空いているか、短パンにポロシャツのラフな格好で店入れてくれるか等不安だったが、だめもとで店に行ってみた。外国人だと思い大目に見てくれたのかもしれないが、僕らは無事店に入ることができた。
 ここの料理、特に前菜は本当に芸術的だった。シェフの想像力というか独創性というか、見た目も味もその才能が感じられる料理だった(もっともこれは最近まで居たという日本人シェフのセンスかもしれないが)。意外性、良い意味での驚きの連続である。メインの子豚のローストも秀逸。パリッとした皮にジューシーな肉、それにオレンジのソースがよく合っている。
 実は、あまりに料理とワインが素晴らしかったため店を去りがたく、予約した特急列車に乗り遅れてしまった。幸い1時間後の特急に乗ることが出来たが、ベルカントは列車に乗り遅れてでも行く価値のある店である。

ミュージカル『トップ・ハット』 ~ タップの魅力を知らないあなたに

2015-10-14 00:01:17 | 芸術をひとかけら
 ストリートダンス隆盛の今、タップダンスなんてもう時代遅れ、20世紀の遺物なのだろうか。

 先日、渋谷ヒカリエの東急シアターオーブでミュージカル『トップ・ハット』を観て来た。ハリウッドのミュージカル映画の黄金期を支えた“アステア&ロジャース”の最大のヒット作である同名のミュージカル映画(1935年、米国)を舞台化したものである。2011年にイギリスで舞台化され、日本でも今年3月に宝塚宙組が上演している。
 今回はイギリス国内でツアーを行っている主要メンバーがそのまま来日したとのことであり、いやがおうにも期待が高まる。

 さて、内容を一言でいうと、勘違いラブ・コメディといったドタバタ喜劇である。
 舞台は1930年代のロンドンとベネチア。ハリウッドのミュージカルスター(映画でフレッド・アステアが演じていた)と美人モデル(同じくジンジャー・ロジャース)が恋に落ちたものの、この恋、なかなか一筋縄ではいかない。彼女が彼を親友の夫と勘違いし、彼女は人間不信に。しまいには当てつけで他の男性と結婚してしまう。そして、・・・。
 結末を含め、まあシェークスピアにもありそうな展開なのだが、正直、このドタバタ具合、いくら舞台とはいえ21世紀の今見るにはあまりにリアリティに乏しい。極めていい加減である。
 もっとも、世界恐慌後の不況の中、楽しくなけりゃ映画じゃないという当時の風潮だったのかもしれないが。せめて映画を見ている間だけでも、つらい現実を忘れたい、笑っていたい、と。

 しかし、なぜ80年近くも昔の映画を今舞台化したのだろう。
 一つはアーヴィング・バーリンの楽曲の素晴らしさにあると思う。舞台では“Cheek to Cheek(頬よせて)”や“Top Hat, White Tie and Tails”など映画で使われた曲のほか、“Let’s Face the Music and Dance”や“Puttin’ on the Ritz”など彼がほかで書いた名曲が使われている。曲名を聞いてもわからないが、メロディを聴けば「あっ、この曲か」と聴き覚えのある曲が多いことだろう。
 そして、もう一つというか最大の理由は、フレッド・アステアの優雅で洗練された踊りや軽快なタップダンスが、未だ色褪せていないことだと思う。舞台で主演を務めたアラン・バーキットは、どことなく風貌もアステアに似ている。タップをはじめダンスはアステアより上かもしれない。

 この舞台を観て、古い映画ファンの方は昔を懐かしみ、それ以外の方は温故知新、タップダンスの素晴らしさを実感されては如何だろうか。
 残念ながら東京公演は昨日(10/12)で終わってしまったが、10/16から10/25まで(10/20は休演)大阪・梅田芸術劇場で公演がある。これを逃すとイギリスに行くしかないので、大阪方面の方、是非お早めに。