縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

【移住の話】健康で文化的なそこそこの生活? その1

2024-07-25 21:26:09 | 別府の話
 移住に興味があるものの、新しい土地での生活に不安を感じ、なかなか踏み出せない方が多いと思う。田舎の生活は退屈に違いない、田舎には仕事がない、濃密な人間関係に疲れそう、子供の良い学校はあるのか、そもそも地下鉄のない所には住めない等々、確かに考えれば不安の種は尽きない。
 東京から別府に移住して1年にも満たない私であるが、そうした方の何かの参考になればと私の経験をお話したい。
 憲法第25条第1項で「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定されている。いわゆる生存権である。この“健康”と“文化的”について別府の生活を考えてみたい。

 まず“健康”について。
 健康を支えるものといえば、やはり食べ物。その点別府は山海の幸に恵まれており、食生活は都会よりはるかに豊かだ。JAの直売所はあるし、ほとんどのスーパーに産直コーナーがあり、いつでも新鮮な野菜が簡単に手に入る。魚といえば関アジ・関サバ、そして城下カレイに臼杵のフグ。残念ながらこうしたブランド魚は高くてなかなか手が出ないが、普通の魚も十分美味しい。おまけに安い。肉は豊後牛が有名であるが、同じく食べる機会は少ない。しかし大分県(大分市)は鶏肉購入額で全国1位、鶏肉が安くて旨い。豚肉は、産直で買う、お隣り日出町の「日出ポーク」(これも安くて旨い)が我が家の御用達。全国広しといえどもこれだけ食材に恵まれている県は珍しい。

 そして温泉。ご存じの通り、別府は源泉数、湧出量ともに日本一。美味しいものを食べ、温泉で癒やされる。これで健康に暮らせないわけがない。さらに万一病気になっても別府は病院が多いので安心だ(温泉と病院について詳しくは『猫も歩けば温泉にあたる(2024/7/7))』をご覧下さい)。最先端の先進医療を受けるのは難しいかもしれないが、大抵の場合そこまでは必要ないだろう。

 もっともプラス材料ばかりではない。別府では運動不足になりやすい。
 そもそも別府市民(というか田舎全般に当てはまると思うが)は歩かない。東京だと電車で通勤・通学するだけで毎日結構歩く。一方、電車やバスが1時間に1本や2本しかない別府の移動は車が基本。おそらく一日1,000歩、2,000歩しか歩かない人も多いことだろう。また山の近い別府は坂道が多く、自転車も電動アシストの比率が高い。これでは自転車もあまり運動にならない。よって、別府では健康のためには自ら意識して運動しなくてはいけない(因みに、私は意識して歩き、自転車は自らの力で漕ぎ、そして筋トレをし、別府に来てから3kg痩せた)。

 もう一つ健康に関して重要なのはストレス。仕事や家庭のストレスはさておき、地元での人間関係のストレスについて。
 よく田舎では近所の人が突然家にやって来る・上がり込む、毎回町内会の行事に出ないといけない、消防団にかり出される等々、ご近所付き合いが極めて大変、気が狂いそうといった話(噂?)を聞く。
 別府はどうかというと、まったくそんなことはない。私は東京でも別府でもマンション住まいであるが、別府での近所との関係は東京ほどドライではない。かといってべったりでもない。東京から来た人間でも気にならない距離感である。これは、田舎といっても別府は人口11万人の町であること、元々移住者の多い町であること(実際周りには東京、大阪、福岡などからの移住者がいる)、別府が観光の町であること(よそ者にやさしい?)等が理由だと思う。但し、同じ別府市内でも鉄輪は人間関係が濃いと言われており、そこは若干事情が違うかも知れない。
 こうした話は実際に地元の方に聞かないと分からない。よって移住を決める前に現地に足繁く通うのが良い。私もこの10年は年に1,2度別府に来ていたし(初めはただの観光だったが)、家探しには2年近い時間を掛けた。

 長くなったので “文化的” については次回に。あしからず。

「別府八湯」温泉道名人への道

2024-07-14 16:44:24 | 別府の話
 別府市にある八つの温泉(浜脇、別府、亀川、鉄輪、観海寺、堀田、柴石、明礬)を総称して「別府八湯」というが、その温泉文化への理解・浸透や観光振興を目的に“別府八湯温泉道”が行われている。公式ホームページによれば、「その豊富な源泉と多様な泉質を誇る日本一の温泉地「別府」だからこそ可能な、温泉を味わい尽くす「湯の真理を得んとする求道者(無類の温泉好き)のためにある、厳しくも愉快な入湯修行(スタンプラリー)の道」とのこと。早い話、別府の温泉にたくさん入ってスタンプを集めようというプロジェクトである。

 “別府八湯温泉道”には共同浴場・外湯、旅館・ホテルなど150ほどの施設が参加している。そのうち8つの湯に入ると初段、16湯で二段、以後8湯入る毎に昇段し、80湯で十段、88湯で見事“名人”となる。参加者は温泉に入り、パスポートならぬ“スパポート”に入湯印(各施設独自のスタンプ)を集めて行く。スパポートはパスポートを模したスタンプ帳で、観光協会等で1冊110円で購入できる。また最近はスマホのアプリ(温泉ハンター)でも参加できるようだ。

 以下、いくつか参加にあたっての注意事項を。湯船に入る前にかけ湯をする・体を洗う、湯船にタオルを浸けない等は当然のこととして、別府には別府だけのローカルルールがあるからだ。
 一つめ、浴槽のふちに座らない。これは私も温泉に行くと必ずやるが、ここ別府では絶対NG。別府では、浴槽のふちは腰掛けて休むためではなく、頭を乗せるためにある。湯船に入りながら(あるいは洗い場に寝っ転がって?)頭を乗せる所にお尻を乗せるなどもってのほか、ということらしい。あと、単に邪魔だからかもしれない。温泉の湯量豊富な別府では、温泉はタダ・水や沸かしたお湯はお金がかかる、が常識。このため体や髪を洗うのには浴槽のお湯(温泉)を使う。皆、浴槽の前に座り、洗面器で浴槽からお湯を汲んでいる。浴槽のふちに座られると洗うスペースが狭くなるし、お湯が汲みにくくなってしまう。
 二つめ、湯船に勝手に水を入れない。別府市民は熱いお湯が好き。それに源泉を薄めることを嫌う人もいる。こんな熱さは無理だと思ったら、周りの方に断ってから水を入れよう。共同浴場は地元の方が守っている温泉であり、お金を払ったお客さんの立場であっても地元の方へのリスペクトが大切だ。リスペクトという意味で、脱衣所や浴室に出入りするときの挨拶も忘れずに。

 別府市民は各々近所に行きつけの温泉を持っているのが普通。このため湯巡りをする人は少ない。よって温泉道の参加者は温泉好きで別府に何度も来ている人や私のような別府への移住者が多いようだ。既に名人は延べ12,000人弱。名人11回の永世名人も200人以上いるため、名人の実人数は10,000人もいないだろう。それにしてもすごい数だ。別府八湯の魅力の賜物である。
 私も先日無事名人の称号を頂いた。スケジュールの空いた日に温泉を集中して回ったので一日5件、6件はざら。温泉のはしごは疲れるし、本当に名人へのつらい修行(?)だった。これからは永世名人を目指すよりは気に入った温泉にのんびり入りたい。その方が別府市民らしいだろう。

別府良いとこ 八度はおいで(?)ー 別府八湯の話

2024-07-12 15:56:15 | 別府の話
 「別府八湯」とは市内にある八つの温泉(浜脇、別府、亀川、鉄輪、観海寺、堀田、柴石、明礬)の総称である。いずれも古い温泉であり、新しい温泉でも開湯は江戸時代に遡る。温泉の掘削が始まったのは明治以降のため当初はどの温泉も自然湧出だった。やはり最近の深~く深く掘削して掘り当てた温泉とはパワーが違う。また別府八湯は10種類ある温泉の泉質のうち7種類がある極めて珍しい温泉である。
 
 別府八湯の中で一番有名なのは鉄輪(かんなわ)温泉。このブログのカバー写真がまさに鉄輪。いたるところから湯けむり立ち上る“ザ・温泉”といった風情だ。未だに貸間旅館といわれる湯治宿が数多くある。自炊のできる宿、さらには温泉から噴き出る高温の蒸気を利用した「地獄蒸し」のできる宿もある。共同浴場も多く、人口密度ならぬ“温泉密度”は鉄輪が日本一だと思う。

 個人的には明礬(みょうばん)温泉がオススメ。第一に、なんと言ってもお湯が良い。明礬泉といわれる強酸性の含鉄泉。殺菌効果が強く、古い角質を除去してくれる。お肌すっきり、若返りの湯だ。緑や青っぽいお湯の色は神秘的。身体だけでなく心も癒やされる。
 第二に、眺めが良い。明礬温泉は伽藍岳の中腹に位置し別府八湯の中で最も標高の高い場所にある。別府市内や別府湾が一望でき、また東側が海のため水平線から上る日の出を見ることができる。小さな赤い太陽が上っていく様は本当に美しい。
 三つめのオススメ理由、美味しい。勿論宿の食事も良いと思うが、ここでは岡本屋売店を取り上げたい。一番有名なのが「地獄蒸しプリン」。地獄蒸しの効果なのか、最近はやりの柔らか・なめらか系ではなく、ちょっと硬めの昔ながらのプリンである。あと「地獄蒸したまごのサンドイッチ」もオススメ。以前は手作り感満載だったが、いつからか包装がきれいになり、サンドイッチがちょっと小さくなった気がする。でも美味しいからつい買ってしまうのである。

 僕は別府八湯すべて行ったが、残りの6つの温泉も各々泉質や町の趣が違っていて面白い。温泉には個人の好みや合う・合わないがある。だから皆さんには別府を何度か訪れ、自分のお気に入りの温泉を見つけて欲しい。別府は温泉の引き出しが多い町なのできっと見つかると思う。

猫も歩けば温泉にあたる

2024-07-07 11:13:12 | 別府の話
 別府の町でよく見かけるものといえば、まずは“温泉”。
 ご存じの通り、別府は源泉数、湧出量とも日本一の温泉の町。温泉が多いのは当たり前。ただ別府が他の温泉町と大きく違うのは共同浴場の数である。なんと100軒以上もある。「鉄輪むし湯」や「竹瓦温泉」のように観光客に人気の共同浴場もあるが、その多くは地元民のための小さな共同浴場である。地区の公民館と共同浴場がセットになっているケースが多い。
 そして市民向けの共同浴場は料金が安い。だいたい100円とか200円である。市営では無料のところもある。このため別府市民は皆近所に行きつけの温泉を持っている。また贅沢なことに共同浴場のほとんどは源泉掛け流し。よって「水はもったいないからお湯(温泉)を使う」は別府市民の常識。こんな町、他にあるだろうか。

 次に思い浮かぶのは“病院”。
 どこの町でも美容院は多いが、別府は病院も多い。別府の人口は11万人で25の病院がある。日本医師会の資料(JMAP)によると、人口10万人あたりの病院数は、全国平均6.43に対し別府は21.68。つまり、別府には全国平均の3倍以上の病院がある。おそらくこれは別府が温泉の町だからだろう。古くから温泉療養や湯治が医療と結びつき、病院が集まったのだと思う。

 そして“猫”。
 別府の町には猫が多い。野良猫ではなく地域猫。地元の皆さんが猫のエサやり、トイレの管理から不妊・去勢手術を行うなど、猫の支援、管理を行っている。市もこうした市民の活動を支援している。別府は猫たちが守られ、安心して(?)暮らせる町なのである。
 また猫が多いのは温泉の恩恵もあると思う。別府には地熱や温泉の排水で地面の暖かいところが結構ある。実際鉄輪では道路のいたるところで排水口から湯けむりが出ている。こうした温泉の温かさが猫を冬の寒さから守るのに一役買っているに違いない(因みに鉄輪では冬でも蚊がいる)。

 観光は勿論のこと、様々な温泉の恩恵を受け、温泉とともに暮らす別府である。