縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

舞台と映画の違い ~ 『ジャージー・ボーイズ』の場合

2014-11-25 18:33:21 | 芸術をひとかけら
 初めてミュージカル映画を見た時、それは強い違和感を覚えた。あり得ない、不自然、なんでコイツ突然歌い出すんだ、と。しかし、次第に慣れと割り切りにより、主人公が唐突に歌い始めてもさほど動揺しなくなった。
 が、今回、映画『ジャージー・ボーイズ』を見終わった時、また違う違和感を覚えてしまった。ひとことで言えば、ミュージカルっぽくない、といった感じだろうか。
 
 さて、この違和感について話す前に、まずはミュージカル映画の流れをおさらいしたい。ミュージカル映画の全盛期は1940~50年代。ジュディ・ガーランドが唄い、ジーン・ケリーが、そしてフレッド・アステアがスクリーン狭しと踊っていた時代だ。当時の映画はオリジナル作品が多い。『オズの魔法使』、『雨に唄えば』、『巴里のアメリカ人』など、ミュージカル映画を代表する作品の多くはこの時期に創られている。

 それが1960年代に入って一転、今度はブロードウェイでヒットしたミュージカルの映画化が増えてきた。一つは映画会社が冒険を避け安全策を取ろうとしたこと、もう一つは『ウエスト・サイド物語』の大ヒットがその理由であろう。
 60年代、テレビの普及により映画会社の経営は転機を迎え、制作費の嵩むミュージカル映画での失敗は許されない状況となっていた。いきおい作品の完成度が高く、集客の見込める舞台のヒット作に目が行ったのである。一方、ご存じ『ウエスト・サイド物語』は、1957年ブロードウェイ初演、1961年に映画化され、作品賞を含むアカデミー賞10部門受賞の大ヒットとなった。この成功体験が、後の『マイ・フェア・レディ』、『サウンド・オブ・ミュージック』、『キャバレー』など、ブロードウェイ・ヒット作の映画化に繋がったことは間違いない。
 そしてこの流れは、『マンマ・ミーア!』や一昨年大ヒットした『レ・ミゼラブル』などを見てもわかるように、今も続いている。

 翻って映画『ジャージー・ボーイズ』、この作品も2006年にトニー賞(注:アカデミー賞の舞台版)を受賞したブロードウェイ・ヒット作の映画化である。60年代に一世を風靡したロック・グループ“フォー・シーズンズ”の苦難と成功そして挫折を描いている。
 実は『ジャージー・ボーイズ』の舞台を見たことがある。言葉はよくわからなかったが、とても面白いミュージカルだった。“フォー・シーズンズ”については、名前を知っている程度でほとんど知識はなかったが、舞台を見て主人公フランキー・ヴァリの苦悩、生き様がストレートに伝わってきた。音楽も意外に聞き覚えのある曲が多く、結構ノリノリで聴けた。

 が、これに対し映画は、音楽は変わらず良かったが、筋が分かりにくかった。話を膨らませたり、伏線を張ったりして、一つの人間ドラマに仕立てようとした感じ。そう、ミュージカル映画というより、ロック・スターが主人公の一般映画なのである。
 映画は舞台と違って制約が少ない。場面を沢山使うことができるし、それをいくつものアングルから見せることも、簡単に切り替えることもできる。過去のエピソードの挿入も容易い。そんな映画の特徴を活かし、舞台との差別化を図ろうとする気持ちも解らなくはない。しかし、ミュージカルなのだから、ストーリーをもっとシンプルにした方が良かった。主人公がセリフの途中で突然歌い出しても構わないが、ストーリーが錯綜するのは良くない。複雑な人間模様を味わいたいのであれば、観客は違う映画を選ぶのだから。

(えっ、「そう言うおまえのブログは長い。もっとシンプルに!短く!」って。ど~もすみません。)

『人の気持ちがわかる人、わからない人』を読んで ~ 貴方の人生へのスパイス

2014-11-16 20:08:27 | 最近思うこと
 この本は、人生をハッピーにするためのスパイスがいっぱい詰まった本である。勿論、スパイスを上手に使うかどうかはシェフである貴方の腕次第。まずは本を読み、そして実践あるのみだ。

 著者である和気香子氏は、東大、女優、MBA、大手外資系企業、ベンチャーキャピタル等を経て、今はエグゼクティブ・コーチをされている方。この経歴を見る限り、天が二物も三物も与えた方なのであろう(注:残念ながら本に著者の写真はない)。
 不勉強ながら、“エグゼクティブ・コーチ”なるものがどんな職業なのか、僕は知らない。が、この本を読む限り、悩みを抱えた方や自分の進むべき道のわからない方の話を聞き、その解決のお手伝いをする仕事のようである。全知全能の神? いや、違う。そうではない。解決方法というか答えは、初めから相談者の中にあるのである。ただ、それに本人が気が付いていないだけ。エグゼクティブ・コーチは、相談者の話を聞き、問題点を整理し、そして新たな視点を提供する。この過程で相談者は自ら答えに気付くのである。つまり、エグゼクティブ・コーチとは、人に気付き、発見を与えるスペシャリスト。この本は、そんな「人の気持ちがわかる」プロが書いた本なのである。

 人の気持ちをわかるために必要なことは、【他人・自分・物事】をどういう視点でとらえるかと、いかに想像力を働かせるかだと著者はいう。そして、人の気持ちがわかる人は自分ともうまく付き合えるという。
 この本には、そのために必要な視点、思考のプロセスと、そうした考え方を身に着けるためのエクササイズが書かれている。まさに“気付き”の秘伝書か、“気付き人間”養成ギブス(ちょっと古い?)といった感じだ。

 僕は、所詮、人間同士は解り合えないと考えている。解り合えないからこそ、解り合う努力が必要だと思う。ただ、そんな努力を皆にするのは大変。好きな人のことは、それこそ伝記を書けるくらい知りたいと思うが、関心のない人にはとことん関心がない。仕事その他の関係で付き合わざるを得ない場合は必要最低限でいい、といった感じ。
 が、そういう考え、気持ちは周りにも伝わり、逆に周囲からもそれなりの対応しかされていないのであろう。この本を読み、深く反省した次第。自分の考え、行動が変われば、人間関係が劇的に変化するかもしれない。
 よし、明日からこの本のエクササイズを少しずつ始めよう。新しい人間関係を創るために、ちょっぴりハッピーになるために。

ハロン湾 ああハロン湾 ハロン湾(ベトナムの話 その3)

2014-11-08 14:44:49 | もう一度行きたい
 遅い夏休みを取ってタイとベトナムに行ってきた。季節はちょうど雨季から乾季への変わり目。バンコクでは毎日スコールに遭ったが、ベトナムで雨は初日の夜だけ。楽しみにしていたハロン湾は、抜けるような青空とは行かなかったが、雨に降られることはなかった。
 ハロン湾はハノイから車で3時間半。大小3,000近い島や奇岩のある“海の桂林”と言われる景勝地である。解りやすく言えば“スケールの大きな松島”といったイメージだろうか。もっとも日本三景の松島に比べ世界遺産のハロン湾は、はるかに規模が大きい。そして、より幻想的で、より神秘的である。
 この雄大かつ荘厳な景観を前にすると、自然の力の偉大さ、不思議を感じざるを得ない。こんな景色を人工的に作ることなどとてもできない。改めて人間の無力さに気付かされたし、自分はなんてちっぽけな存在なのだろうと思い知らされた。
 
 ところで、あの「松島や ああ松島や 松島や」というのは松尾芭蕉の俳句ではない。江戸時代後期の狂歌師、田原坊の作である。『おくのほそ道』の中に芭蕉が松島で詠んだ句はない。松島の絶景を前にして、芭蕉は句を詠むことができなかった、あるいは敢えて句を詠むべきではないと考えたようだ。
 芭蕉先生に倣い、僕もハロン湾の美しさを事細かに説明することはしない。そう、筆舌に尽くしがたい美しさなのだから。まずは写真を見て、そしていつの日か実際に行かれて、ご自身の目でハロン湾の美しさを見ていただきたいと思う。よって、以下ではハロン湾クルーズについてだけお話ししたい。

 バイチャイやホンガイなどハロン湾の町に滞在する場合を除き、多くの方はハノイからハロン湾クルーズに参加してハロン湾を訪れる。個人的には、日帰りよりも宿泊のツアーをお勧めしたい。
 日帰りは、ハノイを朝の8時過ぎに出て夜の8時過ぎに帰ってくる半日コース。ただ、なんとコースの2/3、8時間はバスである。おまけにトイレ休憩と称した強制的な土産物店での買い物時間も付いている。ハロン湾の見学時間は残り1/3、船上での昼食時間を差し引けば正味3時間強しかない。おそらく皆さんハロン湾には一生に一度しか行かないであろうから、それではあまりに短い。薄暮から夜にかけてのハロン湾(運が良ければ満天の星を楽しむことが出来るかもしれない)、そして日の出。奇岩に囲まれた風景がぼんやりと見え、それはそれは幻想的でロマンチックである。いずれも日帰りでは味わうことができない。

 もう一つ、多少の煩わしさを厭わないのであれば、旅行会社のツアーではなく、直接クルーズ会社に予約することをお勧めする。その方がお得である。因みに僕は1泊2日のクルーズを直接クルーズ会社で予約したが、ハノイからの送迎を含め料金は一人US$220.- 。同じ内容を旅行会社で申し込むとUS$349.- である。この差は大きい。実はこの差を知り部屋をスイートに変える贅沢をしてしまったが(一生に一度のことだし・・・)、それでも一人US$304.- と旅行会社を使うより安く済んだ。

 ベトナムは今から4月頃までが乾季で晴れた日が多い。さすがに年末年始はもう飛行機に空きはないだろうが、それ以外であればまだ席は取れると思う。ハノイは日本からわずか5、6時間の距離、是非一度は訪れていただきたい。勿論、ハロン湾で一句詠むか、あるいはハロン湾の絶景に言葉を失うか、それは貴方次第である。