縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

TOBに応募するのって大変!

2024-10-08 12:14:28 | お金の話
えーっ、野村證券に口座を作らないとダメなの?
 - 昔は野村に口座を持っていたけど、もうネット証券だけでいいやと4、5年前に解約したのに・・・。
おーっ、NISA口座で保有している場合は課税口座への振替が必要だって?
 - 面倒くさいし、時間が掛かりそう・・・。
うーん、これは市場で売るしかないか。
 - 初めてだし、面白そうだからTOBに応募したかったのに・・・。

 新NISAでの投資先として、予て伊藤忠によるTOB(株式公開買い付け)の噂がある(株)デサントの株式を100株買った。そもそも噂だけで実際にTOBがあるかどうかは分からないが、NISAで配当金に税金が掛からないこともあり、実現を夢見つつ気長に待つつもり。が、思いのほか、その日は早くやって来た。
 8月5日、伊藤忠がデサントにTOBを実施し、完全子会社化する旨発表したのである。株価は4,350円。過去6ヶ月の終値平均に対し25%強のプレミアムを加えた金額である(もっとも年初は株価が高く、僕の場合、そこまでのプレミアムはなかった)。

 TOBについての知識はあるつもりだが、実際に対象会社の株主というのは初めて。TOBは海外での手続きの関係で11月上旬頃までに開始予定とのこと。のんびり待とう。株主として住所は登録してあるのだから、郵送で必要書類等が送られてくるのだろう。
 ところが、これは大きな誤解、間違いだった。書類は何も送られて来ない。TOBは自ら情報収集し、判断しなくてはならない。そして僕は9月30日の伊藤忠の発表を見落としていた。TOBを10月1日に開始するとの発表があったのである。

 僕は1週間遅れでこの事実を知った。たまたま取引証券からの10月1日付けメッセージを見たのである。いつもはアプリを開いても株価ばかりでメッセージはほとんど見ないが、このときは偶然開いた。ラッキーだった。で、冒頭の状況に。
 TOBは10月29日までであるが、それまでに公開買付代理人である野村證券に口座を開き、デサント株式を移管し、TOBへの応募申込書を提出する必要がある。事前にデサント株式をNISA口座から課税口座に振り替える必要もある。頑張れば間に合わないことはないが、やはり面倒だ。もう市場で株を売ってしまおう。4,350円で売れれば同じだし、その方が全然楽だ。

 なんと株は公開買付価格を上回る4,355円で売却できた。この期に及んで公開買付価格より高く買う人がいるとは驚き。対抗TOB等で価格がつり上がるケースもあるが、本件は伊藤忠による買収が既に決まったも同然。価格が引き上げられることはないだろう。とするとTOB終了後に伊藤忠がスクイーズアウト(少数株主の株式を強制的に買い取る)する際に(あるいはその前に相対で取引?)、利益が得られると考えているのだろうか。株を集めた方がその可能性は高まるのだろう。いずれにしろ素人は手を出さない方が良いに違いない。

 結論。TOBは、自らの取引証券が公開買付代理人であるか否かを問わず、市場で売るのが一番。対抗TOBをする先がないか等状況を見ながら、公開買付価格以上で株を売却できれば御の字だ(因みにデサントの場合もTOB発表後株価が4,445円まで上がったときがあった)。

『熊本地震被災地応援ファンド』を知っていますか?

2017-08-16 22:44:32 | お金の話
 物は試しと、最近話題の“社会的インパクト投資”をやってみました。経済的利益プラスα、世のため人のためにもなる投資のことです。ひょんなことから『熊本地震被災地応援ファンド』の存在を知り、その中の一つ「通潤酒蔵 新しい物語ファンド」に投資をしてみたのです。

 『熊本地震被災地応援ファンド』は、平成28年の熊本地震の被災から立ち上がる事業者を、出資を通じて応援しようというファンドの集まりです。ミュージックセキュリティーズという会社が運営しています。同社は、元は音楽ビジネスから始まった会社ですが、今は“セキュリテ”というファンド事業がメインのようです。ベンチャ-キャピタルのほか、政投銀や電通も出資していますので、それなりにしっかりした会社だと思います。

 さて、実際の投資の手続きは、この“セキュリテ”のWebサイトで簡単に行うことができます。
 まずはファンド選び。『応援ファンド』として、現在9つのファンドが出資を募集しています(その多くは9/29までの募集)。テーマは、農業、食品、酒、ホテルなど様々です。
 僕はファンド紹介を一通り読み、“プラスα”としての地元への波及効果と、地震による被害の大きさの観点から皆を比較し、「通潤酒蔵 新しい物語ファンド」に出資することにしました。フランスのシャトーに負けない酒蔵を作り、地元・山都町への観光客誘致、活性化に貢献したいとの通潤酒蔵さんの想い、あの益城町と同じ上益城郡にあり地震の被害がとても大きかったこと、この二つがポイントでした。
 また復興をメインとする事業者が多い中、通潤酒蔵さんは復興から更にその先(世界に通用する日本酒〝シャトー”を目指す)を見据えていらっしゃるのも選ぶ決め手になりました。いや、酒蔵だけあって、もれなくお酒が貰える!というのが一番の決め手だったかもしれません(笑)。

 各ファンドとも、事業計画、分配金のシミュレーション、事業リスク等を説明していますが、正直そこはあまり見ませんでした。元々『応援ファンド』は、投資額の半分は事業者への寄付となり、残り半分が投資という設計になっています。そう、投資した時点で元本が即半分になるのです。事業が大成功すれば元本の全額回収も夢ではありませんが、現実には難しいでしょう。
 では、どこに投資する目的、理由があるのでしょうか。それは自己満足だと思います。事業に共感し、その事業の成長を見守って行くことに喜びを見い出せるからこそ、『応援ファンド』延いては“社会的インパクト投資”全般に投資できるのです。「この事業の成功の陰には俺の助けがあったんだぜ。」と妄想に耽ることができる、たくましい想像力(?)も必要かもしれませんが。

 などと偉そうに書きましたが、今回僕は大した金額を投資していません。精々“飲んで終電を逃してタクシーで帰った夜”程度の金額です(因みに投資は1口10,800円からできます)。
 皆さんも、清水の舞台から飛び降りる的な意気込みではなく、ごく気軽な気持ちで“社会的インパクト投資”を始めてみませんか。ふるさと納税と違って返礼品を頂くことはできませんが、ある種の満足感は得られるはずです。



サラリーマン諸氏、“ふるさと納税”をしよう

2015-06-21 13:10:46 | お金の話
 この1か月、我が家の食卓が俄然豪華になった。例えば、肉。今まではスーパーで買う名もなき牛肉や豚肉だったのが、伊万里牛や鹿児島黒豚に変わった。魚貝類もそう。家では見たことのない、生うにや蒸し鮑が食卓に並んだ。
 別に給料が格段に上がったわけでも、宝くじに当たったわけでもない。“ふるさと納税”を始めたのである。

 まず、“ふるさと納税”の制度を簡単に説明しよう。国に言わせると、“ふるさと納税”は寄付であり、特産品の送付は寄付の対価ではなく別途の行為だそうである。が、実際のところは、税金の前払いと通信販売の組合せである。
 “ふるさと納税”とは、市町村等にふるさと納税をすると、納税額のうち2,000円を超える部分について、住民税(所得割額)の2割を上限に、所得税・住民税から控除される制度である。つまり、ふるさと納税を30,000円すると、2,000円を差し引いた28,000円税金が戻ってくるのである(所得税は今年度分から還付され、住民税は翌年度分の支払いが減る形になる)。
 さらに、市町村からふるさと納税の金額に応じた特産品が届けられる。還元率(納税額と特産品の金額との割合)は4割、5割も当たり前と言われており、よってふるさと納税した金額以上のメリットが得られる、善良な納税者には本当にありがたい制度である。
 この4月からは納税先が5つ以内であれば確定申告が不要となり、より利用しやすくなった。ただ、納税額が上限(住民税の2割)を超えると、その部分は純粋な寄付というか、割の悪い通信販売になってしまうのでご注意を。

 “ふるさと納税”の本来の趣旨は、都会から地方への税収移転、地方再生の支援である。しかし、“ふるさと納税”で地方が潤ったとしても、それがめぐりめぐって国全体の税収増に繋がるかは疑問である。厳しい財政事情の下、“ふるさと納税”が広まるにつれ、還元率の規制であるとか、上限額(今年1割から2割に増額されたばかりであるが)の引き下げであるとか、制度が見直される可能性は高いと思う。
 収入をしっかり把握され、かつ節税策の乏しい我々サラリーマンとしては、せっかくの“ふるさと納税”、今のうちに使わない手はない。

 最後に、その使い勝手について一言。僕は2か月で10市町村に“ふるさと納税”をした。Web上で申し込みやクレジットカード決済のできる先しか選んでいないので、申込み自体はとても簡単だ。ただ問題は配送。Web上で配送日時の指定ができたのは僅か1か所。大まかな曜日や時間帯の指定のできる先が1か所あったが、他は皆出たとこ勝負。先方の都合に従うしかなかった。
 もっとも“ふるさと納税”は通信販売ではなく、先方のご厚意だと思えば文句の言えた義理ではない。また特産品の収穫や漁の時期の問題から配送自体が随分先になるケースもあり、日時指定にそぐわない面も確かにある。しかし、しかしである。日中家にいない僕にとって、日時指定は極めて重要。特に生もの。先日家に帰ったら、生うにが届いたとの不在通知があった。時刻は7時過ぎ。電話したところ今日の再配達は無理だと言う。なんと受付は6時が締切だそうだ。明日、あさっては夜遅いので今から取りに行くと言ったところ、9時過ぎまで事務所に人がいないと宣う・・・(結局、僕は食事を我慢し、9時過ぎに某S急便に取りに行った)。

 市町村の“ふるさと納税”ご担当の方、せめて生ものは、業者の方から事前に配送日時の調整、いやせめて日時の連絡をもらえるようにして欲しい。それが無理であれば、せめて再配達の対応が良いヤマト運輸を使って頂けると有難い。せっかくの特産品、美味しい状態で届けることがそのファンの増加に、延いては本来の趣旨である地域振興にも繋がると思うのだが如何だろうか。
(僕は鹿児島県曽於市を応援します。黒豚最高!)

藤田 田(でん)氏の夢 ~ マクドナルドが “きつねうどん” になる日

2015-06-15 22:12:55 | お金の話
 今、日本マクドナルドが苦境に立たされている。昨年の異物混入問題以降、顧客離れが止まらず、2014/12期は218億円の最終赤字。今期はさらに赤字が拡大する見込みである。
 かつての日本マクドナルドの栄光を知る人間として、また創業者 故・藤田 田(でん)氏のファンである僕としては、やはり悲しい。

 海外で“McDonald's”のことを “マクドナルド”と言っても通じない。英語では“マクダーナルズ”が正しい。これは藤田氏が、日本語は3字区切りが良いと、米国本社の反対を押し切って決めたのである。
 彼は出店場所でも米国本社に反対した。米国では店舗は郊外型が主流。当然、日本でも1号店は東京近郊での出店を求めてきた。しかし、彼は東京のど真ん中、銀座での出店を譲らない。新しいものを売るには流行の最先端・銀座しかない、銀座で成功すればハンバーガーは全国に広まると考えたからである。1971年7月、銀座三越にマクドナルド1号店が開店。彼の読み通り、銀座1号店は大成功。1店舗当たりの1日の売上高の世界記録をたたき出した。
 僕は、小学校の高学年の頃だろうか、この話を氏の著書『頭の悪い奴は損をする』で読んだ。そして、僕以上に氏の著書に感銘を受けたのが、あの孫正義氏である。もっとも、これが凡人と天才の違いであるが、藤田氏の著書(注:氏が『頭の悪い~』の前に出版した『ユダヤの商法』)に感動した当時高校生の孫氏は、教えを乞うため藤田氏に会いに行き、アドバイスをもらったそうだ。藤田氏がいなければ今のソフトバンクはなかったかもしれない。

 この藤田氏が率いた日本マクドナルド、70年代は本当に輝いていた。米国の文化、豊かさの象徴の一つであり、若者の憧れであった。銀座の歩行者天国を歩きながらハンバーガーを食べる姿は、日本とは思えない光景だった。
 当初マクドナルドは、ハンバーガーそのものの味というよりは、ファーストフードという新たな業態に、つまり作り立ての商品がすぐ出てくることや、笑顔の接客、清潔な店内等の新しいサービスが評価され、急成長したと思う。それが、店舗が増え、皆がマクドナルドに馴染むにつれ、便利さ、手軽さが大きな魅力となり、最近では価格の安さが一番のウリになっていた。必ずしも味が成長の一番の要因ではないだろう。
 ところで、藤田氏は関西の出身で、ご自身はハンバーガーよりきつねうどんをこよなく愛すとのこと。ハンバーガーを毎日は食べられないが、きつねうどんは毎日でも大丈夫だという。きつねうどんが氏のいわばソウルフードなのである。
 
 僕は、今のマクドナルドの危機の原因が異物混入だけにあるとは思わない。現に先日販売を再開したペヤングは売れに売れているではないか。
 ハンバーガーはこの40年で日本中に広まったが、残念ながら日本人のソウルフードになったとは言えない。日本人のソウルフードといえば、やはり“おにぎり”。ハンバーガーはコンビニのおにぎりに勝てなかったのである。そして、悲しいかな、“ラーメン”や“きつねうどん”にもなれなかった。
 もちろん、これは今現在の話である。マクドナルドを食べて育った子供が、大きくなって自分の子供にマクドナルドを食べさせ、その味が受け継がれて行く。マクドナルドが、それこそ関西人にとっての“きつねうどん”になる。これが藤田氏の夢であったし、そんな時代がいつか来るかもしれない。

(そのためにはマクドナルドにもっと美味しくなって欲しいな。でも、米国本社との契約上、日本人に合った独自の商品開発には制約があるのかな・・・。)

家主はつらいよ 確定申告編

2015-02-16 00:41:24 | お金の話
 訳あって家を貸している。そのため、僕はサラリーマンだが、給与以外の所得ありということで確定申告をしないといけない。そう、追加で税金を払うのである。不動産屋さんに聞いたところ、転勤等でその間自宅を貸している人の中には確定申告をしない人もいるらしい。が、僕の父親は公務員であり、言ってみれば僕は税金のおかげで大きくなった。そんな僕が脱税するわけにはいかない。しっかり確定申告をやらねば。
 家を貸し始めたのは一昨年の終わり。昨年の確定申告にはほとんど影響がなかった。しかし、今年は違う。賃料が一年フルに入り、それなりの収入になっている。マンションの管理費や減価償却などの経費もあるが、6割強が利益として残った。仮にその2割が税金としても結構な額になる。

 税務署はしっかりしている。1月に確定申告の手引きと住所・氏名の入った申告書が届いた。お得意様(?)は逃がさないということか。もっとも今回は国税庁のホームページで申告書を作ったのでそれは使わなかったが。
 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」は大変便利だった。作業手順がわかるし、税額は計算してくれるし、そもそも手書きでないのが有難い。その上今回のデータを保存できるので、来年はもっと楽になる。不動産所得の収支内訳書はほぼそのまま使え、ものの30分もあれば申告書一式を作れるのではないだろうか。
 去年は勝手がわからないことに加え、不動産所得のほか株式や投資信託の譲渡所得もあり、申告書の作成にえらく時間が掛かった。おまけに不慣れゆえ書き間違えも多く、申告書は修正だらけ。半日掛けてこの出来かと思うと情けなかった。去年「確定申告書等作成コーナー」の存在に気が付かなかったことが本当に悔やまれる。

 申告書の作成はスムーズだったが、最後に一つ落とし穴が。
 源泉徴収票から給与所得の数字を入力し、不動産所得の収支内訳を別途計算し、それを合算。すると税額が自動計算される。
 えっ、なんだ、この数字。
 出てきた税金の額がまったく想定外、予想の5割増しの金額だった。おかしい、システムが壊れているに違いない。一応税率を見てみよう。確認したところ、なんと税率は33%だった。税率は所得金額に応じて段階的に上がる。不動産所得の部分の税率は僕が想定した20%ではなく33%だったのである。さらに復興特別所得税が税額の2.1%付く。自分の税金に対する無知、無関心を深く反省したものの、時すでに遅し。この金額をなんとか工面しないといけない。賃料は住宅ローンの返済に充てており、手元には残っていない・・・。

 よし、これからは節税対策を考えよう。もっとも、まじめに税金を払ってる自分へのご褒美に寿司(勿論、廻ってないやつ)を食べましたと言っても経費として認めてはくれないだろう。せいぜい「ふるさと納税」くらいだろうか。ダメだ。そんな先のことを言ってる場合ではない。まずは目先の税金をどうするかが問題だ。そして、僕の倹約生活が始まる。ああ、家主、それもしがないプチ大家はつらいよ。

卵とたいめいけん

2014-05-26 21:40:08 | お金の話
 『たいめいけん』といえばオムライス。あの伊丹十三の映画『タンポポ』で有名になった「タンポポオムライス」を作ったのもこの店である。そう、『たいめいけん』は卵にこだわった老舗洋食店なのである。
 「だから『卵とたいめいけん』か。」と思われた貴方、残念ながら違う。今日は物価の話である。

 僕は『たいめいけん』によく行く。勿論2,000円近くするオムライスなどは絶対に食べない(というか、高くて食べられない)。僕はラーメンしか食べない。それも立ち食い。精々4人しか入らない、店の脇にあるラーメンコーナーが僕の行きつけだ。
 ご存知ない方のために“たいめいけんカースト”(?)を簡単に説明すると、一軍は2階の高級洋食レストラン、二軍は1階の洋食店、そして三軍が立ち食いラーメンコーナー、となる。一軍と二軍では料理も値段も違い、まったく違う店の趣きだが、一方、三軍で提供されるラーメンやカレーは二軍と同じだ。ただ、ラーメンを1階のお店で着席して食べようが、立ち食いで食べようが、値段は一緒である。
 僕がわざわざ立ち食いでラーメンを食べる理由は“時間”である。僕が行くのは、ほとんどが残業前の食事。夕方、6時前後であれば、ほぼ並ばずに入ることができる。そしてラーメンが出てくるのに5分と掛からない。このスピード感がありがたい。またラーメンコーナーは厨房のすぐ横にあり、コックさんの調理している姿を見られるのも楽しくて良い。

 さて、前置きが長くなったが、ここからが本題。
 『たいめいけん』では、僕はいつもラーメン、煮玉子、ボルシチそしてコールスローを頼む。消費税増税前まではこの4品で千円でお釣りが来たが、増税後お釣りは来なくなった。寂しい・・・。
 その内訳を見ると、ラーメンは680円から750円、煮玉子は130円から150円、ボルシチとコールスローは各々50円のまま、であった。前の二つは便乗値上げと言われても仕方がないだろうが、後の二つの据え置きは立派である。
 さらに、この値段据え置きは、なんと昭和30年代に30円を50円に値上げして以降、ずっと続いているのである。この二つは値上げするな、というのが創業者の遺訓とのことだ。洋食に親しんでもらいたい、きちんと野菜を採って欲しいといった親心からなのであろう。今や「天下一品のコールスロー」と「ボリウム満点のボルシチ」は、オムライスと並ぶ『たいめいけん』の看板商品である。

 が、しかし、当時の50円は果たして安かったのだろうか。僕が小学生だった昭和40年代、50円あればお菓子など結構買い物できた気がするが・・・。
 東京都区部の消費者物価指数を調べてみると、昭和35年から平成24年で5.3倍になっている。ということは当時の50円は今の265円。そう考えるとあまりお得感はない。当時ラーメンやコーヒー1杯が50、60円だったというので、やはりコールスロー50円は高いと思う。もっとも当時はまだキャベツ自体が高かったのかもしれない。品種改良や高原キャベツの普及はもう少し後のことだ。
 ところで、昔は価格が高かったが、ずっと価格が変わらず、結果的に今は安くなったものといえば、卵。昭和30年代も今も1個10円強という価格はほとんど変わっていない。平飼いからケージ飼いなど養鶏の大規模化等により価格の維持、実質的な値下げが実現したのである。
 そんな物価の優等生・卵と、卵にこだわる『たいめいけん』。これからも50円のコールスローとボルシチに、卵同様、ずっとこだわって行って欲しい。

(因みにお味の方は、コールスローはさっぱりした味で、シャキシャキしたキャベツがとても美味。ボルシチ(ボルシチ風野菜スープ?)も、キャベツ、ジャガイモ、ニンジン等野菜たっぷりでおいしい。是非一度お試しあれ。)

「電力自由化」って大丈夫?

2014-02-26 23:29:05 | お金の話
 2000年夏から2001年にかけて起きた「カリフォルニア電力危機」を覚えているだろうか。
 米国では1990年代から電気料金の引き下げが経済の活性化に資すると、電力自由化が進められた。カリフォルニアでは1998年に電力の小売り自由化が行われたが、2000年、ITブームによる好景気や猛暑による電力需要の増加に供給が追い付かず、大規模な輪番停電が行われる事態に陥ってしまった。東日本大震災後の日本をイメージすれば良いだろう。もっともカリフォリニアの停電は天災ではなく、人災あるいは市場の失敗が原因であるが。この電力危機は、大手電力会社3社のうち1社の破綻や、カリフォリニア州知事のリコールにまで発展し、その後米国の電力自由化には大きなブレーキが掛かった。
 そして今、人口、面積全米第2位、石油など天然資源が豊富なテキサス州で、1、2年のうちに電力不足になる、カリフォルニアの二の舞になる懸念が生じている。テキサス州はカリフォルニア電力危機以降も電力自由化を推し進め、その反動で電力の設備投資が遅れてしまったのである。

 一方、我が国では、2016年の電力の小売り自由化実現に向け、経済産業省が今国会で電気事業に関連する約40もの法案改正を目指している。
 しかし、電力自由化は本当に国民の利益になるのだろうか。

 そもそも電力は初期投資が莫大であることから規模の経済の典型(つまり、複数の企業でやるよりも1社でやった方が効率的)とされ、電力事業は公営でやっている国が多い。日本の地域独占もその点では理に適ったシステムといえる。電気料金が高い、総括原価方式にあぐらをかき企業努力が足りない・無駄が多い、政治と密着している等々、我が国の電力業界に対する批判は多いし、ある程度それは正しい。しかし、我が国の電力業界が高度成長期以降の増大する電力需要に対応してきたことや、全国津々浦々あまねく電力を供給してきたことは事実であるし、原発事故までは我が国の電力システムが上手く機能していたことは高く評価できる。

 いったい我が国で電力の自由化が進められたとき、かつてのカリフォルニアや今のテキサスにならないと誰が断言できるのだろう。
 東電はじめ日本の電力会社は、電力需要のピーク(夏の甲子園決勝の日?)に合わせた設備能力を維持してきた。そんな1年の限られたピークにしか使えない設備、つまりは赤字必至の設備を、誰が好んで維持するだろうか。また設備の維持補修に掛ける費用も圧縮される懸念があり、万一どこかの発電所で事故が起きた際、即停電となるリスクは高くなる。電力需要の伸びが期待できない中、設備の増設は行われず、さらに設備のメンテナンスやリプレイスにも不安が残る。

 確かに我が国の電力料金は世界的にみて高いが、一番の理由は我が国が資源に乏しく、燃料のほとんどを輸入に頼っているからである。これは自由化したところで変わらない。ヨーロッパでも1990年代終わりから電力自由化が進められているが、残念ながら自由化以後電気料金の下がった国はない。電力自由化により電気料金が下がるというのは幻想と思った方が良い。さらに今後コストの高い再生可能エネルギーの利用を増やして行けば、それだけでも電気料金は上がってしまう。

 私は電力会社の人間ではないし、何も電力業界を擁護するつもりはない。しかし、まずは貯蔵できない、送電ネットワークが必要、送電によりロスが発生等の電力そのものの特徴をよく理解する必要がある。加えて、東日本(50Hz)と西日本(60Hz)では電源周波数が違い相互の電力融通に大きな制約があること、さらには周波数の変換には莫大なコストが掛かり、また周波数の統一にはもっと莫大な費用が掛かり、ともに容易ではないとの我が国固有の問題を考えれば、電力自由化がすべてを解決するとは到底思えない。少なくとも電力自由化に過度の期待をしない方が良いことだけは確かだ。
 

西武とサーベラスの淋しい(さもしい?)争い

2013-04-07 10:51:56 | お金の話
 以前西武鉄道の人事の方から聞いた話だが、西武には親子で働いている人が多いという。聞いたのは、例の総会屋事件や虚偽記載事件の前なので、今がどうかはわからない。しかし、かつての西武は、従業員に自分の子供も西武で働かせたい、あるいは従業員の子供に自分も父親と同じ西武で働きたい、と思わせるような良い会社だったのである。
 その西武が上場問題を巡り筆頭株主である米国のファンド・サーベラスと揉めている。

 事の発端は、3月12日付けで開始されたサーベラスの公開買付(TOB)。西武の32.4%の株式を保有するサーベラスが、更に4%の株式を買い増すというのである。1/3超の議決権比率を確保し定款変更やM&Aなど特別決議の拒否権を得るとはいえ、なんとも中途半端なTOBである。
 同社が発表した「公開買付説明書」によると、その目的は、西武のコーポレート・ガバナンス及び内部統制を強化し企業価値向上を実現すべく支援と助言を行ってきた同社が、引き続き西武を支援して行く意思を有していることを示すためだという。正直、何を言っているのかよくわからない。マスコミ報道によれば、言うことを聞かない西武の後藤社長を辞めさせるため、サーベラスが揺さぶりをかけているらしい。
 背景には、早期の株式上場を目指す後藤社長と、現在想定される株価では利益が出ないから上場するな、なりふり構わず収益を上げ、もっと高値で上場しろというサーベラスとの対立がある。
 3月26日に西武側はサーベラスのTOBに反対する旨の文書を公表しているが、サーベラスは西武にリストラによる収益改善を提案していたとのこと。具体的には、駅員の削減や不採算路線の廃止、西武ライオンズの売却等が挙げられている。また、プリンスホテルのサービス料値上げ、鉄道の特急料金値上げといった増収策や、鉄道・ホテルの本社人員削減等の提案もあったらしい。目先の収益を増やし上場時の株価が上がれば後はどうなっても構わないというのが、サーベラスの考えなのであろう。

 ところで、サーベラスが西武の筆頭株主となった経緯であるが、西武は有価証券報告書虚偽記載事件を受け2004年に上場廃止に追い込まれた。西武の親会社であったコクドは解散、西武グループは再編され、その際サーベラスが1,100億円の資金を投じ、西武の32.4%の株式を握る筆頭株主になったのであった。以来、西武の再建・再上場という共通の目標の下、両者の関係は良好であったが、再上場が目前に迫った中、上場時の株価を巡り対立、今の事態に至った。今後は6月の株主総会に向け、他の株主の支持を集めるプロキシーファイト(委任状争奪戦)に発展する可能性もある。
 西武には約14,000人の株主がいる。元オーナーの堤義明氏や取引銀行は西武支持を表明しているが、株主の過半を占める個人株主の動向はわからない。ただ従業員に愛されていた西武であり、おそらく個人株主には従業員やOBが多いと思う。もっとも既に代替わりした株主、つまり株式をただ相続しただけで西武に特に愛着のない株主もいる。彼らはどのような決断を下すのだろう。

 しかし、この争い、会社が、そこで働く社員のもの、社会のものと思われていたのどかな時代から、会社は株主の物であり、株主の利益最大化を目指すべきという金融資本主義が跋扈する時代に変わった中での淋しいというか、さもしい争いと思えてならない。

あなたはどこで眼鏡を買いますか?

2013-01-21 00:56:52 | お金の話
 一般に眼鏡屋さんに対するロイヤリティは高い。いや、高かったと思う。以前は、一度眼鏡を作った店で、また次も眼鏡を作る人が多かった。アフターサービスでお世話になっていたり、データが保管されていたり、馴染み深い存在だからである。お店側も既存顧客に特別な割引や特典を与えるなど囲い込みに熱心だった。両者の関係は、一種、お互いハッピーなアリ地獄(?)のような状態といえる。

 しかし、この“アリ地獄”に、2001年以降、特にこの5年、大きな変化が起きている。ZoffやJINSなど、スリー/ツー・プライスと明朗かつ低価格で販売する眼鏡店の台頭である。彼らは、当時眼鏡一式3、4万円が当たり前だった中で、5,000円から10,000円で眼鏡を売り出した。眼鏡版ユニクロ=SPA(製造小売業)というか、中国でフレームを大量に安く調達し、韓国の安いレンズを組み合わせ、この低価格を実現した。なんと従来の2割の価格である。
 この結果、既存のパリミキや愛眼といった専門店チェーンや、メガネスーパー、ビジョンメガネといった量販店は大赤字となり、リストラを余儀なくされるに至った。唯一既存勢の中で健闘、それも大健闘しているのはメガネトップ。『眼鏡市場』ブランドで中高年齢層をターゲットとし、やや価格は高めであるも高機能のレンズのツープライス販売を実現したからである。JINSと重ならない、少し上のマーケットを対象とした点、そしてターゲット層の女性に絶大な人気を誇ったヨン様を広告に使った点が、成功の理由であろう。

 さて、上場している5社の損益計算書を調べてみた。売上高、経常利益ともにトップはメガネトップ。2012/3期で売上高635億円、経常利益90億円。もう1社黒字なのはJINSで、売上高226億円、経常利益26億円。パリミキ(三城ホールディングス)、メガネスーパー、愛眼はいずれも赤字である。
 だが、おもしろいことに5社の粗利率は70%前後でさほど変わらない。つまり、眼鏡の原価、仕入れ値は、高級眼鏡であろうと低価格の眼鏡であろうと、販売価格の3割程度とさほど変わらないのである。30,000円の眼鏡の原価が9,000円、5,000円の眼鏡はなんと1,500円ということになる。
 黒字と赤字の違いは、原価以外のコスト、なかでも人件費の違いが大きい。例えば、JINSの売上高に対する人件費の比率は15%強に過ぎないが、専門店チェーンのパリミキや愛眼はいずれも33%強である(因みに量販店のメガネトップとメガネスーパーはその中間、26%前後)。
 JINSの人件費の比率が低いのは、新しい企業ゆえ若い社員が多く賃金が低いこともあろうが、やはり売り方の違いが大きい。TV等の広告で大量に集客し(事実、売上高に占める広告費の比率はJINSが13%と他社の倍近い)、セルフ販売を行う体制。JINSは、効率の追求、つまり、接客や検眼(眼鏡の度数を測ること)等の時間を最低限に抑え、店員一人で最大限のお客様をこなすというビジネスモデルなのである。

 今日、眼鏡を買った。どの店で買うのが良いかと迷ったが、結局、僕は専門店チェーン(パリミキや愛眼ではない他のチェーン店)にした。実は、今回初めて遠近両用の眼鏡を作ることにしたので僕は価格より安心を選んだのである。
 で、先ほどの人件費の話であるが、その店では店員さんがフレーム選びからレンズその他の説明、フレームの調節まで約1時間ずっと付いてくれた。眼科で処方箋をもらっており店で検眼をしていないのにこの時間である。JINS的に言えば、極めて非効率な販売、高コストである。が、この1時間が安心感に繋がっている。
 もちろん僕はいわゆるスリープライスの店を否定しない。簡単に、早く、しかも安く眼鏡を買えるというのは画期的なことであるし、彼らは眼鏡を、視力を補う器具から洋服やアクセサリーと同じオシャレアイテムに変えたのである。オシャレアイテムだと割り切れば、眼鏡に多少不具合があってもさほど気にならない。思うに、どの店で眼鏡を買うのかは、まずは価格、そして次に眼鏡の機能とオシャレのどちらを重視するかで、自ずと決まって来るのであろう。

オリンパスの悲劇

2012-01-29 16:16:45 | お金の話
 オリンパスの上場維持が決まった。出来レースの感もないではないが、取り敢えず社員の皆さんはほっとされたことだろう。
 しかし、このオリンパスの事件、いったい誰が得をしたのだろうか。あのイギリス人社長の行動は正しかったのだろうか。

 得をしたとしてまず思い浮かぶのは、オリンパスの株価が暴落する中、あるいはその後値を戻す中で、上手く株を売り抜けた人である。某外資系証券は空売りで莫大な利益を上げたというが、個人投資家でもそこそこ儲けた人はいるだろう。勿論、その数百倍(数千倍?)損をした人がいるに違いないが。
 ほかには今のところ得をした人はいない。これから得をするかもしれないといえば、資本・業務提携先として噂されるソニー、富士フィルム、パナソニック等であろう。安くオリンパスの内視鏡事業を取り込むことが出来るかもしれないからだ。

 逆に損をしたといえば、既存の株主、役員(自業自得?)、オリンパスを喰いものにしたコンサルタント(これは因果応報)、監査法人(責任なしとはしない?)、そしてオリンパスの一般の社員である。
 本件を主導した、あるいは知り得る立場にあった役員や、彼らをそそのかしたコンサルタントは言語道断であるが、真摯にものづくりに取り組んでいる社員、そのものづくりを支えている社員、そうした多くのオリンパス社員の方々には同情の念を禁じ得ない。
 幸い、倒産や完全に第三者の傘下に収められることは避けられたようだが、社員の方々にとっては今まで自分が信じてきたもの、価値観が一瞬にして崩れてしまったのである。社長に裏切られた、日々愛する会社の信用が失われて行く、今まで自分は何のために働いてきたのだろう、誰もがそう思ったに違いない。

 今回の損得を考えれば、私は損の方が大きい気がしてならない。オリンパスのブランド、信用が毀損し、そして、何の責任もない、ただオリンパスやそのお客様のために一生懸命働いてきただけの多くの従業員の方々が傷ついたのである。
 コンプライアンス違反をしていたのだから当然の結果だ、ルールは守らなければならない、株主を欺いてきたのだから仕方がない等々、確かにそうかもしれない。しかし、狡賢いやつだけが儲け、多くのまじめな人間が酷い目にあったのは事実である。果たして、あの社長の行動は、本当に正しいことだったのか。僕にはそうは思えない。ほかにやり方があったと思う。

 ところで、今となっては死語かもしれないが、昔、「企業は社会の公器」という言葉があった。また「会社は社員のもの」というのもよく聞いた。それが日本的経営の強みとも言われていた。が、今は真面目にそう言うと笑われてしまう世の中になっている。
 企業は株主のものであって、株主の利益を極大化するために企業は活動しないといけない。経営者にとっては企業価値を如何に高めるかが最も重要なのである。これが金融資本主義だ。この金融資本主義の行き着いた姿が、1%の人間に99%の富が集中する今のアメリカである。
 日本は、「企業は株主のもの」と言い始めたころから、おかしくなってきた気がする。金融資本主義の下、多くの日本の企業は、自らの強みや長所、本来海外から称賛されるべきものまで、その一切合財を捨て、目先の利益追求に走ってしまったのではないだろうか。

 オリンパス社員の方々の悲劇は、かつての経営陣の無責任さ、いい加減さはさておき、こうした社会の変化の結果でもあると思う。

一つの時代の終わり ~ GM破綻に思うこと

2009-06-07 22:00:36 | お金の話
 ご存じの通り、ゼネラル・モーターズ(GM)が6月1日にチャプター11(連邦破産法第11章)の適用を申請した。日本でいう民事再生法の適用を申請したのである。今後GMはアメリカ政府の支援の下、再生を目指すことになる。
 私は『GMはチャプター11で再生すべき』(2008年11月19日)の中で、GMは政府の支援を受けプレパッケージ型の再生を目指すべき、と書いたが、漸くその方向でGMとアメリカ政府が一歩踏み出したわけである。アメリカ経済、いや世界経済全体にとって、当面の混乱を最小限に止めるという意味で大変喜ばしいことといえる。

 しかし、政府が支援したからといってGMの再生が上手く行く保証はない。UAW(労働組合)の譲歩をあまり引き出せなかった点、売れる車が見当たらない点等、せいぜい縮小均衡が良いところで、事業基盤の強化、収益構造の改善には相当の時間が掛かるのではないだろうか。
 UAWは退職者向け医療保険基金へのGMの拠出金200億ドルの半減を呑んだが、他の無担保債権者よりも多い代償を得ている。工場の削減は呑んだが、コンパクト・カーの中国への生産移転は拒否した。又、現役組合員の基本給、医療保障、年金は何ら減額されていない。つまり依然として米国の工場労働者の中で最高の給与・福利厚生の水準を維持しているのである。通常の破綻企業ではありえない話だ。
 一方、利益率の高い大型車に収益の大部分を依存し、コンパクト・カー、更にはハイブリッド・カーや電気自動車の開発をなおざりにしていたGMが、即座に売れる車、時代にあった低燃費の小型車を製造できるとは思えない。1、2年でプラグイン・ハイブリッド・カー(いわば電気自動車とハイブリッド・カーを掛け合わせた車)、シボレー・ボルトを販売するというが、それにしてもまだ先の話だ。以前GMは電気自動車の開発で日本メーカーを凌駕すると言われたが、商品化前に開発を中断してしまった。今、そのツケが回っているのである。

 GMはかつて世界最大の売上高を誇る企業であり、経営の手本となる企業であった。事業部制の導入や、フルラインの商品構成、自動車メーカーによる自動車ローン等、いずれもGMが始めたものである。
 80年代「いつかはクラウン」というコピーが一世を風靡した。トヨタのCMである。今は給料も安いし、地位もない、まだカローラにしか乗れないが、いつの日にかクラウンに乗れる人間になりたい、そして今漸く・・・、といったイメージであろう。
 これはトヨタがGMのマーケティング戦略に倣ったものである。エントリー・カーとしてはシボレー、その後の収入や社会的地位の上昇に応じていくつかの車種を用意し、そして最後はキャディラックに、というGMのやり方をトヨタも取り入れたのであった。
 「GMにとって良いことはアメリカにとって良いことだ」と豪語した社長がいたが、GMはあながちウソと言えないほどの存在だったのである。まさに20世紀を代表する企業である。そんなGMが破綻したのであった。

 GMの破綻、それは単に一つの巨大企業の破綻というのではなく、一つの時代の終わりのような気がしてならない。20世紀の主役が製造業とすれば、21世紀は情報・ITはじめサービス業が主役である。
 又、経済のグローバル化、貧困の増加、更には温暖化問題など、私達を取り巻く環境が大きく変化し、「明日は今日より良い日だ、いつか自分も高級車に乗れる日が来る」と単純には考えられなくなったことも事実であろう。それが良いか悪いかは別として、人々の考え方、価値観が変わっていることは確かだと思う。

 GMの破綻は“古き良き時代”の終りを象徴する出来事の一つである。

不動産不況の中、何をすべきか

2008-12-07 23:32:15 | お金の話
 11月末、東証2部上場の不動産会社モリモトが民事再生法の適用を申請、事実上倒産した。これで今年の上場会社の倒産は31社となり、戦後最多の記録を更新している。年末の資金を手当てできず、更に倒産する企業が出る恐れもあり、なかなか出口の見えない、厳しい年の瀬になりそうだ。

 モリモトの社長によれば、倒産の原因は不動産市況の悪化であるが、直接のきっかけは監査法人の意見不表明だという。
 少し説明しよう。同社は11月末の資金繰りにつき、銀行から支援の確約を得ていた。ところが、監査法人は、同社が10月に予定していた賃貸マンションの売却に失敗し資金繰りが悪化したことを問題視し、銀行から来年9月までの資金援助の保証を得られなければ、第2四半期決算に対する監査意見を表明できないと主張。こうした状況の中で銀行が来年の資金援助を保証するはずもなく、遂に民事再生法の適用を申請するに至ったというのである。

 倒産した会社の社長の話なので多少割り引いて聞いた方が良いだろう。もし資金繰りだけの問題であれば監査法人は継続企業の前提に疑義があると注記すれば済むと思う。それが監査意見を表明できないというのは、厳しい事業環境の下、売上の計上や費用の認識など、同社には他に決算をできない理由があったのではないだろうか。いずれにしろ、監査法人の対応が全般に厳しくなっていることは事実であろうが。

 このモリモトの件に限らず、不動産会社や建設会社が数多く倒産する、それも黒字なのに資金繰りが付かず倒産する企業まで出るのを見ると、政府の無策を感じざるを得ない。
 自らの選挙のことしか考えず、やれ2兆円の定額給付金を行うとか、道路特定財源は一般財源化しようがやっぱり「道路」に回すとか、正直、そんなことを言っている場合ではない。

 例えば、定額給付金2兆円と道路特定財源1兆円で計3兆円の不動産買取ファンドを作ってはどうだろう。マンションの売値の平均が 4,000万円とし、それを75%、3,000万円で買い取るとすれば、3兆円で10万戸買い取ることができる。今年の首都圏のマンション販売戸数は49千戸、関西圏は26千戸程度と見込まれており、10万戸あれば十分お釣りがくる。
 買い取ったマンションは、賃貸物件(公営住宅、URや住宅供給公社など)や公務員宿舎として利用すれば良い(そして空いた公務員宿舎は売却)。又、市況の回復を待って売却すれば、却って利益が出るかもしれない。
 取得額を抑えるには不動産会社に入札させる手もある。販売価格に対するディスカウント率で買い取り物件を決めるのである。これは本当に資金の欲しい会社を選別するのにも良いかも知ない。
 
 足元の物件を処分できれば、多くの不動産会社は一息付けるだろう。建設会社も不動産会社から無事資金を回収できる。もっとも、これはあくまで対症療法に過ぎず、他の景気刺激策、住宅取得促進策が必要であることは言うまでもない。

 しかし、政治家の先生にこんなことを言っても、おそらく相手にされないだろう。なぜなら、マンション不況は大都市圏の問題だからである。地方で大規模なマンション開発が進んでいるとは聞かないし、元々地方はマンションより戸建が多い。そんなわけで政治家の先生にとっては、東京の不動産会社がつぶれるよりも、地元建設会社が受注する公共事業の減る方が大問題なのである。
 が、それで本当に良いのだろうか。日本経済全体が冷え込み内需が更に落ち込めば、当然、地方経済にも大きな影響がある。又、公共事業が減少する中、地方の建設会社の中には活路を大都市圏の民間建築に求めている先も多い。

 先生、天に唾している気が・・・・。

健保組合の解散 ~ 怒れるオジサンの叫び

2008-08-30 23:04:08 | お金の話
 最近、年を取ったせいか、怒りっぽくなった。よくつまらないことで怒ってしまう。例えば、タクシーがトロトロ走っていたり、黄色信号で停まったときなど。「バカヤロー、こっちは急いでるんだ。だからタクシーに乗ってるんだろ。ここの制限速度は何キロだ、黄色は注意して進めだろ、おまえ教習所で何習ったんだ。」勿論、口に出して言わないだけの分別はあるが、今のところ・・・・。

 が、しかし、これは怒って良い、いやサラリーマンとして怒るべきだと思う。健康保険組合が解散に追い込まれている話である。

 先日新聞で西濃運輸が「運営を続ける意義が見出せなくなった」として健康保険組合(健保組合)を解散するとの記事を見た。健保組合を解散し、同社の従業員・家族等57,000人は政府管掌健康保険(政管健保)に移ったそうである。
 この理由は以下の通り。今年4月に75歳以上の後期高齢者医療制度が導入され、「年金天引き」が話題になったことは皆さん記憶にあると思う。その陰に隠れ、あまり話題にならなかったが、同時に65~74歳をカバーする前期高齢者医療制度も導入されたのであった。そこで「財政調整」の美名の下、健保組合から国民健康保険に対し、前期高齢者の医療費を負担するため支援金を拠出する仕組みが設けられたのである。
 西濃運輸は、この高齢者医療への負担に応じて保険料を引き上げるよりも、健保組合を解散し政管健保に移管した方が合理的と判断したのである。なぜなら新たな負担を行うには保険料を10%以上に引き上げる必要があり、政管健保の保険料8.2%を大きく上回ってしまうからだ。

 もっとも従来より健保組合から高齢者医療への拠出金はあり、健保組合は相当な額の負担を行っていた。よって今回の問題の根底には、なぜ健保組合がこうした支援を行うのか、個々の健保組合の負担額の決め方はこれで正しいのか、といった基本の議論がない中で制度が始まり、企業・健保組合の側に制度への不信が生じたことがある。加えて、健保組合への影響が一律でなく、年齢構成の若い健保組合の負担が大きいとの問題もあった。早い話、取りやすそうな所からお金を取ろうというだけで、明確な根拠がないのである。健保組合の解散はまだまだ続くであろう。

 私は我が国の国民皆保険の制度は大変素晴らしいと考えている。が、こうした場当たり的な対応だけでは早晩限界に達するのは明らかであり、現に健保組合の解散という制度のほころびが出てきているのである。

 ここで簡単に医療保険の現状をおさらいすると、大雑把に、国民の半分が国民健康保険(主に自営業者)と後期高齢者医療制度、1/4が政管健保(主に中小企業の従業員)、1/4が健保組合(主に大企業の従業員)、という加入状況である。健保組合に国からの資金はほとんど入っていないが、政管健保には国の負担が8,100億円あり、国民健康保険や後期高齢者医療制度となるとそれ以上、国と地方自治体を合わせ10兆円近いお金、つまり税金が使われている。
 このとき、ほぼ企業と従業員の負担だけで、つまり税金をほとんど使っていない健保組合が、多額の税金が使われている国民健康保険や高齢者医療をどこまで支援する必要があるのだろうか。今回のように2兆円を超す負担が必要なのだろうか。更に言えば、企業やその従業員は別途税金を払っており、既に国民医療費の負担を支えているのである。

 これは平等、公正あるいは社会的正義に関する問題であり、簡単に答えは出せないであろう。しかし、経済合理性だけ考えれば、経営者は皆、政管健保への移管を選ぶのではなかろうか。健保組合を運営し、政管健保にはないサービスを提供することにより、従業員の健康維持・増進に役立ち、延いては企業の利益に資すると証明できない限り、高いコストを掛けて自らの健保組合を持つことは正当化できない。今の世の中、それこそ株主代表訴訟にもなりかねないだろう。

 私は、医療保険の一元化、即ち国民健康保険、政管健保それに健保組合とを統合し、負担と給付を合わせるべきだと思う。皆が同じ基準・料率で負担し、同じ内容の給付を受ける。そして足らずまいは国が負担する形だ。もうその場しのぎの対応では間がつまない状況ではないだろうか。

夢の夢 ~ 凋落の続く日本の国際競争力

2008-05-29 23:25:59 | お金の話
 先日、IMDというスイスのビジネススクールが世界各国の競争力の評価を発表した。世界55カ国を対象に、各国の経済状況、政府の効率性、ビジネスの効率性、ビジネスインフラ等から順位を出したものである。1989年から毎年行われており、今回は20回目だ。
 日本は何位かというと、なんと22位。これでも昨年から二つ順位を上げている。一方上位はというと、1位はアメリカで、2位シンガポール、3位ホンコン、4位スイス、5位ルクセンブルクと続く。又、アジアの中で見ても、日本はさらに台湾(13位)、中国(17位)、マレーシア(19位)の後塵を拝し、6番目となっている。

 が、ここで衝撃の事実というか、今から思うと夢のような話がある。日本は第1回の89年から92年までトップに君臨していたのである。IMDによると、当時の日本は、他の追随を許さない不動のトップに見えた、とのことだ。
 しかし、バブル崩壊後、日本はアメリカに1位の座を譲り、そして金融機関の破綻が相次いだ90年代後半に至っては、一気に20位台までその順位を落とした。1位に返り咲くなど、夢のまた夢である。

 さて、今回の調査の大きな話題は「アメリカのトップはいつまで続くのか」だった。初回トップであった日本の凋落ぶり、そしてサブプライム後のアメリカの状況が当時の日本と酷似しているのではないか、というのである。
 サブプライム前のアメリカは好景気が続き不動産価格が高騰していた。又、金融技術の進歩や自由化に制度や枠組みが追いついていないところも同じだ。そこにサブプライム問題が発生し、証券会社や銀行に多額の損失が生じた。まさにかつての日本を髣髴させる。ご存知のように、その後の日本は、証券市場の暴落が不動産市場へと広まり、大銀行や証券会社まで破綻する未曾有の金融危機へと発展して行った。デフレが進み、超低金利が常態化。こうした中、後追いで、それも小出しにしか対応できない政府。いわゆる「失われた10年」であった。

 果たしてアメリカは今後どうなるのだろう。

 IMDの専門家は楽観的である。なぜか。第一にアメリカの金融当局は日本の失敗を見て何をなすべきかを知っていること。金融市場に大胆に流動性を供給し、金融機関、更には市場全体に安心感を与えた。又、巨大化した中東やアジアの政府系ファンドも、多額の損失に苦しむ金融機関の資本改善に一役買っている。加えて、世界経済が総じて成長を続けていることもプラスに働いている。
 もう一つ、日本とアメリカには大きな違いがあるとIMDは指摘する。それは企業家精神の有無。日本に創造的破壊は皆目見られないが、アメリカは違うと言う。90年代、日本の企業はトヨタやキャノンなどごく一部の企業を除き、有効な策を打ち出せず、瀕死の状態にあった。その点、アメリカ企業は企業家精神に満ち溢れており、加えて経済の対外的な開放度は高く、よってアメリカ経済には自らを立て直す術を見つけ出す力、ダイナミズムがある、と言うのである。

 当らずとも遠からず、か。確かに日本にマイクロソフトやグーグルのような新しいビック・ビジネスはない。日本の有名なベンチャー企業といえば、ソニーでありホンダであるが、いずれも戦後まもなく生まれた企業である。次回、この違いについて考えて見たい。

(もっともIMDも、最近の原油をはじめとする資源・エネルギー価格や食物価格の高騰、アメリカの抱える貿易赤字と財政赤字など、アメリカにも不安材料はあると付け加えている。まあ、驕れる平家は久しからず、なのだろうか。来年以降の調査が楽しみである。)

東芝にエールを ~ 東芝HD-DVD撤退 ~

2008-02-27 00:48:24 | お金の話
 先週、東芝がHD-DVDからの撤退を発表した。皆さんご存知の通り、ブルーレイ・ディスクとの新世代DVDの規格争いに敗れたのである。
 ただ東芝はこの撤退発表と同時にフラッシュメモリー2工場の建設を発表している。総額1兆7000億円の巨額投資。半導体と原子力を中核事業とする東芝の事業選別、いわゆる「選択と集中」を明確に示すものといえよう。

 そんな東芝の勇気と決断にエールをと思い、東芝にまつわる“ちょっといい話”を。

 まず一つめはエアコンの話。
 我が家では東芝のエアコンを使っている。3年くらい前、東芝からエアコンに不具合が見つかったので無償で修理するとの連絡があった。モーターのリード線部分から発煙・発火の恐れがあるとのこと。理由はよくわからないが、ともあれ物騒な話だ。
 で、当日、修理に来た人に理由を尋ねてみた。すると次のような答えだった。
「通常のエアコンはモーターのリード線部分が固定されています。が、今回我々は着脱可能な方が便利だと考え、取り外せるようにしました。普通に使っている分には何の問題ありません。しかし、業者にエアコンの掃除を頼み、分解して掃除する際に洗浄液が入り込み、漏電、発煙・発火を起こすケースがあるんです。まあ、実際に起きたのはまだ一件だけですけど。」
 本件は、良かれと思ってやったことが仇になったわけであり、更には分解して掃除するなど一般家庭で今までになかったことが行われるようになったが故に起きた事故である。経緯には十分同情の余地がある。にもかかわらず、東芝はたった一件の事故で斯かる可能性を知り、何千・何万ものエアコンを無償で修理する、それも1台1台探し出して修理することを決めたのである。本当に膨大な手間、苦労である。
 欠陥があれば修理するのは当たり前と思われるかもしれない。しかし、その当たり前のことの出来ていない会社がいかに沢山あったことか。僕は真摯な東芝の姿勢に好感を持った。今度、家電製品を買うときは東芝にしようと思った。

 と、言いながら、実は先月新世代DVDを買ってしまいました、それもブルーレイを。東芝さん、すみません。

 で、そのブルーレイを買いに行ったときの出来事が二つめの“ちょっといい話”。
 大手家電量販店に行った僕は、ブルーレイを値引きしてもらえるか店員さんに聞こうと、辺りをキョロキョロしていた。と、一人の店員さんと目があった。まずい、東芝の販売員さんだ。劣勢の東芝の人にブルーレイのことを聞くのは忍びない。案の定、東芝のHD-DVDは大きく値引きするしディスクもサービスで付けるが、ブルーレイは値引きもおまけも一切なし、更に好調な販売に生産が追い付かず、入荷はいつになるかわからないとまで言う。それでも僕はブルーレイを買うことにした。
 ここで店員さんがバトンタッチ、東芝の方から○○の方に。○○の方は、入荷したら連絡します、送料はこちらで負担しますと言って奥に引っ込んでしまった。随分待たされたが、漸く戻って来て、開口一番、「お客さん、一箱、見つかりました。送付伝票が付いてないし、開けた形跡もありません。おそらく発送前にキャンセルになった品物でしょう。これなら今日お持ち帰りできますよ。どうしますか。」
 箱を見たところ確かに開けた形跡はなさそうだ。若干薄気味の悪さは残るが、僕の心が“お持ち帰り”に傾きかけたそのとき、最初の東芝の販売員さんが登場。箱の裏を確認して一言、「これ、箱を開けてますよ。何かの理由で戻ってきた品物だと思います。」
 そうだったんだ。これを聞いて○○の販売員さんは「本当ですね。これは止めときましょう。」と言った。忙しさか、経験不足なのか、本当に気が付いていなかったようだ。この未熟者め。
 一方、他社製品、それもまったく売れない自社製品を尻目に販売を伸ばしている他社製品を買った、そんな僕のことまで気に掛けてくれていた東芝の販売員さんに強い“プロ意識”を感じた。

 これを書くにあたり東芝のHPを見た。そこにはまだ僕と同じ型のエアコンを探している旨の記載があった。
 HD-DVDを買った人の中には、今後のアフターケアに不安を感じている人も多いと思うが、僕は東芝なら大丈夫、心配はいらないのではないかと思う。