縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

ジャワ島中部地震の教訓

2006-05-30 22:51:06 | 海外で今
 27日早朝、インドネシア・ジャワ島中部、ジョグジャカルタ沖で発生した地震の被害が拡大している。3日経った本日午後の時点で死者は5,428人に達した。世界各国が続々と援助に乗り出しているが、混乱の続く中、未だ被災者の元に十分な援助が届いていないようだ。更なる被害の拡大が懸念される。

 ところで、今回の地震のマグニチュードは6.3。地震の多いインドネシアではさほど大きな地震ではない。にもかかわらず死者の数が多い。例えば、神戸を直撃したあの阪神・淡路大震災のマグニチュードは7.1で死者6,434人、先の新潟県中越地震では各々6.8、51人である。
 これは、いくつかの理由が重なった結果であるが、元々の原因はインドネシアにおいて耐震基準が無視されていたことにある。多くの人はコンクリート・ブロックを積み重ねた家に住んでいた。この地震に弱い家を、震源が浅く横ずれの生じる直下型の地震が襲ったことから、家屋の倒壊が相次いだ。更に悪かったのが地震の時間。早朝6時前、まだ寝ている人が多く、逃げる間もなく倒壊する家屋の下敷きになったのであった。

 勿論、地震国インドネシアに耐震基準はある。が、現実にはあまり守られていない。直接の理由はコスト。コンクリート・ブロックを積み上げるだけでなく、中に鉄筋を入れれば強度は高まるが、建築コストが10~15%以上アップしてしまう。しかし、この根底にあるのは政府の失敗、即ち耐震基準の重要性を国民に徹底して来なかった政府のミスと考えられる(政府のミスといえば、耐震基準の管理を怠った結果、却ってその重要性をあまねく世間に知らしめた政府もどこかにあったが)。

 もっともインドネシアの耐震基準を守った建物が安全かというと必ずしもそうではない。日本と比べ基準が緩く、総じて耐震性は弱い。事実、今回の地震でも空港や病院といった公共施設の損壊が伝えられている。
 地震に加え、台風の強風も前提としたわが国の建物は世界でも稀な強さを持っている。日本の優れた技術力を持ってしながら、日本に100階を越す超高層ビルがないのは、この厳しい前提のせいである。その点、海外のビルは結構いい加減だ。インドネシアの公共施設に損害が生じたのはおそらく鉄筋しか使っていなかったからであろう。日本では当たり前のH型鋼などの鉄骨は、海外、特にアジアではあまり使われていない。高層ビルもRC造、つまり鉄筋で建てているケースが多い。

 話が脱線して恐縮だが、あの9.11の貿易センタービル崩壊を見た某鉄鋼メーカーの人が、あれは造りがちゃちだ、ウチの鉄骨を使ってしっかり造っていれば飛行機が飛び込んだぐらいで倒れない、と言っていた。もし日本の建築基準が世界標準であったなら、世界の歴史は変わっていた??
 ところで、今回の地震で竹を編んだ昔ながらの家はほとんど無傷だったそうだ。伝統というか、その地に合った建築の強さを感じた。