縁側でちょっと一杯 in 別府

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映画『はじまりはヒップホップ』は”やる気スイッチ”?

2016-09-20 21:56:53 | 芸術をひとかけら
 日曜日、『はじまりはヒップホップ』という映画を見て来た。日本では珍しいニュージーランド映画。ワイヘキという小さな島の老人会御一行様が、皆でヒップホップを始め、ラスベガスで開かれるヒップホップ世界大会に挑戦する話である。なんと、これは実話。ドキュメンタリー映画なのである。

 チーム名は“Hip Op-erations”。Hip Hopとoperationを掛けたもので、メンバーのほとんどが腰(hip)の手術(operation)をしていることから名付けたという。実際に世界大会に行ったのは27名。90代が5人に80代が7人と、平均年齢は軽く70代超え。60代などまだ若造といった感じ。世界最高齢のダンス・グループだ。
 目がほとんど見えなかったり、耳が聞こえなかったり、車いすが必要だったり、あるいは心臓や肝臓の病を抱えていたりと、皆、年相応のハンディキャップを抱えている。でも皆明るい、そして前向き。

 このチームを指導するのは、ビリー・ジョーダンという若い女性。彼女は2011年2月にクライストチャーチ地震(30人近い日本人留学生が犠牲になった、あの地震である)を経験したことで人生観が変わり、それを機にワイヘキに移り住んだという。それ以来、地元の高齢者の集まりにボランティアで参加し、皆と一緒に遊び、笑い、ときには悲しみ、苦楽をともにして来た。今では皆のリーダーであり、マネージャーであり、そして何よりもおじいちゃん・おばあちゃんの良い友達である。彼女は皆のことを愛し敬い、皆は彼女を信頼している。

 ヒップホップの振り付けも彼女の担当だが、彼女は踊りはまったくの素人。自ら「振付師としては世界でも最低レベル」と語り、もっぱらYouTubeや本で勉強しているとのこと。が、なかなかどうして、彼女の振り付けはパンチが効いている。肉体的な衰えゆえキレのある動きは望むべくもないが、幽霊(ゾンビ?)の動きを入れたりと、いろいろ工夫があって面白い。
 明日の我が身と思わず(失礼!)、おじいちゃん・おばあちゃんが嬉々として幽霊を演じる等、これも互いの信頼感のなせるわざだろう。

 信頼、絆という点では、Hip Op-erationsのメンバーとニュージーランドの若いヒップホップ・ダンサーとの繋がりも描かれている。彼らのダンスを見たメンバーは、信じられない、最高だと彼らを称える。一方若いダンサー達は、ヒップホップを毛嫌いする大人が多い中、ヒップホップに挑戦するなんて素晴らしい、自分達のことを解ってくれると感動し、Hip Op-erationsの皆を敬う。今風に言えば、リスペクトする。
 高齢者に若者の気持ちはわからないし逆もそうだといった先入観や、高齢者だから頭が固い、新しいことに挑戦できないといった偏見を、この映画は見事に打ち砕いてくれる。

 映画では何人かのメンバーの人生がフラッシュバックされる。皆さん様々な経験・過去をお持ちだが、誰一人として特別な人間ではない。自分の近所にいるような、ごく普通のおじいちゃん・おばあちゃんがこの偉業を成し遂げたのである。これがまた素晴らしい。
 高齢の方に出来るのであれば、若い人間は勿論、僕のような中年のおじさんにも、何かが出来ないはずはない。さあ、臆することなく、新しいことに挑戦しよう!と“やる気スイッチ”を押してくれる映画である。

(もっとも、ひねくれた僕は、チームが世界大会に行けなかったら映画はお蔵入りだし、もしや“筋書きのある”ドキュメンタリーだったのかな、などと思ってしまいましたが・・・。すみません。)