縁側でちょっと一杯 in 別府

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ミュージカル『トップ・ハット』 ~ タップの魅力を知らないあなたに

2015-10-14 00:01:17 | 芸術をひとかけら
 ストリートダンス隆盛の今、タップダンスなんてもう時代遅れ、20世紀の遺物なのだろうか。

 先日、渋谷ヒカリエの東急シアターオーブでミュージカル『トップ・ハット』を観て来た。ハリウッドのミュージカル映画の黄金期を支えた“アステア&ロジャース”の最大のヒット作である同名のミュージカル映画(1935年、米国)を舞台化したものである。2011年にイギリスで舞台化され、日本でも今年3月に宝塚宙組が上演している。
 今回はイギリス国内でツアーを行っている主要メンバーがそのまま来日したとのことであり、いやがおうにも期待が高まる。

 さて、内容を一言でいうと、勘違いラブ・コメディといったドタバタ喜劇である。
 舞台は1930年代のロンドンとベネチア。ハリウッドのミュージカルスター(映画でフレッド・アステアが演じていた)と美人モデル(同じくジンジャー・ロジャース)が恋に落ちたものの、この恋、なかなか一筋縄ではいかない。彼女が彼を親友の夫と勘違いし、彼女は人間不信に。しまいには当てつけで他の男性と結婚してしまう。そして、・・・。
 結末を含め、まあシェークスピアにもありそうな展開なのだが、正直、このドタバタ具合、いくら舞台とはいえ21世紀の今見るにはあまりにリアリティに乏しい。極めていい加減である。
 もっとも、世界恐慌後の不況の中、楽しくなけりゃ映画じゃないという当時の風潮だったのかもしれないが。せめて映画を見ている間だけでも、つらい現実を忘れたい、笑っていたい、と。

 しかし、なぜ80年近くも昔の映画を今舞台化したのだろう。
 一つはアーヴィング・バーリンの楽曲の素晴らしさにあると思う。舞台では“Cheek to Cheek(頬よせて)”や“Top Hat, White Tie and Tails”など映画で使われた曲のほか、“Let’s Face the Music and Dance”や“Puttin’ on the Ritz”など彼がほかで書いた名曲が使われている。曲名を聞いてもわからないが、メロディを聴けば「あっ、この曲か」と聴き覚えのある曲が多いことだろう。
 そして、もう一つというか最大の理由は、フレッド・アステアの優雅で洗練された踊りや軽快なタップダンスが、未だ色褪せていないことだと思う。舞台で主演を務めたアラン・バーキットは、どことなく風貌もアステアに似ている。タップをはじめダンスはアステアより上かもしれない。

 この舞台を観て、古い映画ファンの方は昔を懐かしみ、それ以外の方は温故知新、タップダンスの素晴らしさを実感されては如何だろうか。
 残念ながら東京公演は昨日(10/12)で終わってしまったが、10/16から10/25まで(10/20は休演)大阪・梅田芸術劇場で公演がある。これを逃すとイギリスに行くしかないので、大阪方面の方、是非お早めに。