25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

僕らの祖先

2018年05月23日 | 社会・経済・政治
 生命は単細胞から始まり、やがて動物と植物に分かれた。ぼくらの系統は動物のほうに進んだが、分かれる前の名残ものこして、魚類や両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類へと変化していった。故三木成夫の研究で、受精した瞬間から38億年の進化の歴史を胎児の十月十日で一気に進化する様を写真で見ることができる。妊娠3日目のころは海の弱い生き物だったぼくらの祖先は2億年かけて陸に上陸したのだった。この困難な時期がつわりの時期に相当する。
 哺乳類のなかでもネズミのようなぼくらの祖先イクチオステガは生き抜いていき、やがて木の上で暮らすチンパンジーのようになった。チンパンジーから最初の人類が誕生したのはアフリカのジャングルの中であった。祖先は弱かった。いつも他の強い動物の餌食になるかもしれなかった。足と手はまだ同じ形をしていたが、人類は二足歩行の方が食べ物を一度に運べることに気がついた。遺伝子が変化した。やがてアフリカの大地は地殻変動で気候が変わり、ジャングルが樹木の少ないサバンナとなった。生きるのが難しくなってきた。このサバンナで生きるには他の動物のようにメスの取り合いでエネルギーを費やすことを好まなかった。一夫一妻によって、夫が食料をとってきて、妻が子育てをする。それが効率がよかった。熱中症になってしんどくなった動物を長いランニングで追いかけることも覚えた。エネルギーの配分も体に費やすより脳に費やすことで、脳が発達し、やがてこころも芽生えたのである。
 人類は27種いたが最後まで残ったのはホモ・サピエンスである。ヨーロッパにいるネアンデルタール人よりも強くなかった。サピエンスは弱かったから、仲間をつくる人として進化した。ネアンデルタール人が10人の集団をつくれば事は足りると自分の強さを過信したのかもしれない。サピエンスは100人、200人という集団を作った。人類の歴史の中でサピエンスだけとなったのはまだ推定10万年から5万年ほどである。骨髄を掻くだす石器を作りだしてから数百万年がある。
 農業革命が起こるまで、人類の進化はとても遅いものであった。
 
 胎児の頃にもこの時代は長い。

サピエンスは集団を維持、発展させていくために、原始宗教を誕生させた。個人幻想が対幻想を生み出し、集団での狩りから共同幻想を生み出した。この力は強かった。
 胎児はやがて母の体内から外にでるが、宗教まで遺伝子に入っていない。それは母とこの印画紙のように思えるがもしすぐに違う環境で育てれば、わかるはずだ。
 宗教をもたずに今日まできている集団もある。南アメリカにいるピダハンは精霊の概念も言葉もない。右や左みない。当然神もない。

 約40億年を繋いできたその先っぽにぼくがいて、息子、娘、孫たちがいる。これは奇跡である。地球上の35億人は人数が多いのではない。奇跡によって運良く命を次に繋げて生きてきた末の存在である。
 ぼくはいつも想像する。いつ食べられるかわからない海の中でも、川辺ででも、ぼくらは偶然にも絶えることなく命を繋がれてきた。逃げ、隠れ、怯え、拾い、奪い、闘い、守り、与えてきたであろう祖先を想像するのである。