自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆2014年を迎えて

2014年01月01日 | ⇒トピック往来
  2014年元旦の金沢は雨ときどき曇りだった。家族で金沢神社に初詣に行き、帰りに東山の茶屋街に立ち寄った。街中は静かだったのに、ここは観光客でにぎわっていた=写真・上=。午前中だったが、店も一部は開店していた。店の前で芸子さんが姿を現すと、珍しげに観光客が集まった。「写真撮らせていただけませんか」とスマートフォンを構えている。芸子さんが「いいですよ」と微笑むと、ちゃっかりと「ツーショットと撮っていただけませんか」と横に並ぶおばさんもいた。

  話は前後するが、初詣をした金沢神社の隣に兼六園管理事務所がある。事務所横の庭には、まだ背の低い松などが植えてあり、雪つりまで施してある。本来ならば、兼けんろ六園の園外であり、名木でもないのにコストをかけてまで雪つり施す必要はない。理由がある。これらの松は、兼六園の名木たちの2世なのだ。兼六園といえども、強風や台風、大雪も、そして雷などの自然の脅威には常にさらされている。そして、いつかは枯れる。

  そのときのために名木の子孫がスタンバイしているのである。これは兼六園管理事務所の関係者から聞いた話だが、子孫とは、たとえば種子からとることもあるが、名木のもともとの産地から姿の似た名木をもってくる場合もある。兼六園きっての名木「唐崎(からさき)の松」。これは、滋賀県大津市の「唐崎の松」から由来する。歌川広重(安藤広重)が浮世絵「近江八景之内 唐崎夜雨」に描いた松である。その唐崎の松は2代目だが、第13代加賀藩主が2代目の種を取り寄せて植えた松が兼六園の「唐崎の松」である。

  兼六園管理事務所では、滋賀県の唐崎の2代目の種子で成長した低木を譲り受け、管理事務所で育てている=写真・下=。若いが枝振りもよい。これならば雪つりを施す価値があると個人的にも思う。ただ、この子孫の出番はいつか分からない。100年後か200年後か。ただ、名木の2世のスタンバイは永遠という時空をつけている。兼六園は四季の移ろいを樹木などの植物によって感じさせ、それを曲水の流れや、玉砂利の感触を得ながら確かめるという、5感を満たす感性の高い空間なのだ。その空間に永遠という時空をつけて、完成させた壮大な芸術品、それが兼六園。

⇒1日(水)夜・金沢の天気   くもり
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