自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「ミドリムシ燃料」で空を飛ぶ

2021年06月30日 | ⇒トピック往来

   バイオベンチャー企業「ユーグレナ」の社長CEO、出雲充氏の講演を金沢大学で聴いたのはちょうど2年前の2019年6月、トレードマークの緑色のネクタイを揺らせながら熱く語った=写真=。持続可能なエネルギー社会のため、ミドリムシをジェットエンジンの燃料に応用するプロジェクトを進めているという内容だった。そのプロジェクトが実装段階に入ってきたようだ。

   TVニュースによると、きのう29日、投資家所有のプライベートジェット機が、ユーグレナ開発のバイオジェット燃料を使い、鹿児島から羽田まで930㌔を飛んだ。 この燃料は、原料となるミドリムシが成長の過程で光合成し二酸化炭素を吸収するため、政府が2050年に目指すカーボンニュートラル実現に貢献できるとしている。 ただ、この燃料はミドリムシが由来となる成分はわずか1割しか含まれていない。ユーグレナでは今後、その比率を上げるとともに、現在1㍑当たり1万円の製造コストを4年後には200円以下にしたいとしている(6月29日付・NNNニュースWeb版)。

   講演のメモから、出雲氏がなぜバイオジェット燃料の開発に至ったのか、その志を再録してみる。1998年、大学1年の夏にバングラデシュのグラミン・バンク(銀行創設者のムハマド・ユヌス氏は2006年にノーベル平和賞受賞)にインターンシップとして入った。貧困層向けの事業資金として無担保で平均年収に相当する1人3万円ほどの融資を行う銀行だ。出雲氏はバングラデシュの子どもたちは腹を空かせひもじい思いをしていると思い込んでいたが、1日3食カレーが食べられる国で、飢えて苦しんでいる子どもはほとんどいなことに気がついた。カレーには野菜や肉はまったくなく、食べているのにやせているのはタンパク質不足による栄養失調が問題だと実感した。

   大学3年の時に、ミドリムシ(学名「ユーグレナ」)の存在を学んだ。ミドリムシはムシと名前がついているが、藻の一種の植物でクロロフィル(葉緑素)を有し光合成を行い、自ら動く動物でもある。0.1㍉以下の単細胞生物。植物と動物の両方の栄養素が採取でき、人に必要な動物性タンパク質やビタミンやミネラル、アミノ酸など59種類もある。「このミドリムシをバングラデシュの子どもたちに食べてもらえば栄養失調が解消できるかもしれないとひらめいた」(メモから)

   当時はミドリムシを産業として活かすための大量培養の技術はなかった。そこで、2005年8月に会社を設立し、12月に石垣島で屋外での培養に成功した。その後サプリメントや食品として販売実績を積み上げ、2012年12月に東証マザーズに上場、2014年12月に東証一部に市場変更をした。2013年10月に創業のきっかけとなったバングラデシュの首都ダッカに初の海外拠点となるバングラデシュ事務所を設けた。経営理念である「人と地球を健康にする」を実現するための第一歩として、パートナー企業からの協賛金と現地NGOの協力でミドリムシ入りクッキーを現地で生産し、栄養失調の小学生1千人対象を配布するプロジェクトを立ち上げた(2020年度は1万人を対象)。「貧しい国なのに栄養失調の子どもがいなくなれば、ミドリムシとは何だと世界中が驚くに違いない」(メモから)

   企業ビジョンとして掲げているのが「バイオテクノロジーで、昨日の不可能を今日可能にする」だ。エネルギーは石油からバイオ燃料へと移行している。気候変動をもたらすCO2も削減できる。アメリカではバイオ燃料としてトウモロコシが活用され、トウモロコシの価格は5倍に上がった。問題は天候や自然に左右さない安定供給だ。ミドリムシと廃食油でバイオ燃料をつくる、国内初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを2018年11月に横浜市に完成させた。「環境問題、食糧問題、エネルギー問題、健康問題など、この星の困難を一気に乗り越えてくれるかもしれない生物がミドリムシ。このミドリムシが世界を変え、地球を救う時代が到来する」(メモから)と講演を締めくくった。

   講演の後、同じ6月に開催されたG20サミット関連会合「G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」(長野県軽井沢町)でユーグレナのバイオ燃料を使ったバスが運行したことがきっかけで、その後、横浜・鶴見区を走る臨港バスや西東京市を走る西武バスにも導入されている。

   メディア各社によると、今回ユーグレナのバイオジェット燃料は約200㍑で、従来のジェット燃料を混ぜて生成した。同社は2025年をメドに、生産能力2000倍以上の商用プラントを建設する予定だ(6月29日付・日経新聞Web版)。コロナ禍後には、世界的な脱炭素の流れでバイオジェット燃料の需要はさらに高まってくるだろう。また、代替プラスチックなどへの応用にも期待が集まるのではないだろうか。
   出雲氏の著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』(ダイヤモンド社)がある。量産化など課題を抱えながらも、夢を一つ一つ実現していく有言実行の企業家としての姿には感服する。

⇒30日(水)午前・金沢の天気      はれ

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★ヒートドーム化する五輪開催 批判の矛先はテレビ局に

2021年06月29日 | ⇒メディア時評

   きのうのブログで香港の大雨警報、「ブラック・レインストーム」について記した。そしてきょう未明、発達した積乱雲が帯状に連なり集中的な豪雨をもたらす「線状降水帯」が沖縄で発生し、午前3時までの3時間におよそ160㍉の雨が降った。気象庁は沖縄本島地方に「顕著な大雨に関する情報」を発表した(6月29日付・NHKニュースWeb版)。そして太平洋を超えたアメリカとカナダでは強烈な暑さが襲っている。

   アメリカとカナダの西部で記録的な熱波が続いていて、カナダ・ブリティッシュコロンビア州リットンで28日、47.5度を観測した。地元メディアなどが報じた。前日に46.6度を記録し、84年前の最高記録を破ったばかりだった。上空の高気圧が熱い空気を閉じ込める「ヒートドーム(heat dome)」現象が原因とみられる。 アメリアとカナダの両国政府は「危険」な高い気温が今週中は続く恐れがあると、市民に警告した(6月29日付・BBCニュースWeb版日本語)。

   「ヒートドーム」現象という言葉は初めてだ。厳密には気象用語ではないものの、停滞する高気圧が、加熱中の鍋の「ふた」のように機能する。高気圧が晴天と高気温をもたらし、高気圧が長期間続けば続くほど、熱波も続き、気温は日に日に上昇を続けるという。 現在、北アメリカ大陸にかかる高圧帯はカリフォルニア州からカナダの北極圏、内陸のアイダホ州まで広大な範囲を覆っている(同)。

          話は変わるが、新型コロナウイルスのパンデミック下でオリンピック開催を疑問視する国際世論が「ヒートドーム」現象のように熱くなっている。歯に衣着せぬ論評でも知られるアメリカのエンターテインメント週刊誌「ザ・ハリウッド・リポーター」は6月23日号で、「NBC Approaches “Moral Hazard” Amid Tokyo Olympics Push During Pandemic」の見出しで、アメリカの3大ネットワークの一つで、全米のオリンピックの放送権を独占していてるNBCは、東京オリンピック開催で「モラル・ハザード(倫理観の欠如)」のレベルに近づいていると痛烈に批評している=写真=。

   IOCが簡単に五輪を中止しない理由は、IOCの収入は放送権料が73%、スポンサー料が18%だ。その放送権料の50%以上をNBCが払っている。韓国・平昌冬季大会(2018年)と東京大会の合算した数字だが、NBCの供出額は21億9000万㌦だ。ちなみに、開催国の日本はNHKと民放がコンソ-シアムを組んで5億9400万㌦を払っている。

   ザ・ハリウッド・リポーターが「モラルハザード」の論拠として上げているのは、今月14日に金融機関主催の投資家会議でNBCの最高経営責任者(CEO)が、「the pandemic-tainted Tokyo Games “could be our most profitable Olympics in the history of the company.“」(パンデミック下での東京大会は「当社の歴史の中で最も収益性の高いオリンピックになるかもしれない」)と述べたことだ。開催されれば発生するコロナ禍が日本人に最も大きな打撃を与える可能性があるにもかかわらず、その利益をCEOが誇示するのは「命より金」を重視するモラルハザードではないか、と。さらに、CEOが「And then once the Opening Ceremony happens, everybody forgets all that and enjoys the 17 days.」(開会式が行われると誰もがすべて忘れて17日間を楽しむ)と発言したことも批判している。

   CEOの不注意な発言だろう。しかし、オリンピック開催を疑問視する国際世論が、IOCに対してだけでなく放送局にまで「モラルハザードだ」と批判が高まるのはレアケースだ。まさに、「ヒートドーム」現象のように沸騰し、いつ何が起きるか分からない現象が起きている。開催まであと24日だ。

⇒29日(火)夜・金沢の天気      くもり

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☆香港を覆う「ブラック・レインストーム」

2021年06月28日 | ⇒ニュース走査

          中国政府への批判を続けてきた香港の新聞「蘋果日報(アップル・デイリー)」が今月24日付を最後に発行停止に追い込まれ、紙面の主筆や中国問題を担当する論説委員も逮捕されたと報じられている(6月27日付・メディア各社)。香港国家安全維持法(国安法)違反の容疑だ。香港で反政府的な動きを取り締まる国安法が2020年6月30日に施行されて1年となる。香港政府とバックの中国政府の狙いは何か。

   国安法では、裁判は陪審員なしで秘密裏に行われ、裁判は中国政府の当局に引き継がれる。中国政府の治安要員は、免責されたまま香港で合法的に活動することができる。中国政府には、この法律は民主化運動で揺らいだ領土の安定を取り戻し、本土との整合性を高めるとの狙いがあるようだ。

   最初に適用されたのは昨年7月。香港で国安法に抗議する民衆デモで370人が逮捕され、うち10人が「香港独立」の旗を所持していたとして国安法違反の適用となった(2020年7月2日付・共同通信Web版)。その後、国安法をタテに政治活動や言論への締めつけが強まる。この法律が導入された後、多くの民主化運動グループが安全性を恐れて解散。自由で寛容な国際都市と言われてきた香港の姿が一変した。

   蘋果日報が狙い撃ちされたのは昨年8月だった。創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏が国安法と詐欺の容疑で逮捕された後、保釈された。12月に詐欺罪での初公判が開かれ、保釈申請は却下、即日収監された(同12月3日付・読売新聞WEB版)。では、詐欺罪はどのような内容だったのか。蘋果日報を発行する「壱伝媒」の本社がある不動産の貸借契約に反し、黎氏が別会社に一部を提供して不正に利益を得たとして詐欺罪に問われた(同)。つまり、「また貸し」が詐欺として罪に問われたというのだ。日本では民事のような案件だが、香港では刑事事件として問い、収監におよぶところに政治的なむき出しが見て取れる。

   蘋果日報への狙い撃ちは「見せしめ」の狙いもあるだろう。報道機関への弾圧に他の新聞・テレビも当初は強い怒りを感じただろう。しかし、そのメディアの義憤は次第に無力感へと変質しているに違いない。また、香港市民や企業も取材相手として関わることを恐れ、敬遠するようになっていたのではないだろうか。

   きょうのイギリスBBCWeb版(6月28日付)は「Black rainstorm' warning suspends Hong Kong trading」の見出しで、香港では暴風雨警報が発令され、雨量は70㍉以上の「黒い暴風雨」が予想されると報じている=写真=。このため、香港の証券市場とデリバティブ市場の取引が中止された。また、安全上の懸念から、学校の授業やワクチン接種も中断されている。痛ましいばかりの「ブラック・レインストーム」が香港を覆う。

⇒28日(月)午前・金沢の天気   くもり時々はれ

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★初めてのコロナワクチン接種

2021年06月27日 | ⇒メディア時評

   国内で新型コロナウイルスのワクチン接種者は1回目が2102万人(人口比率16.5%)、2回目が804万人(同6.3%)と進捗している(6月26日現在・総理官邸公式ホームページ「ワクチン接種状況ダッシュボード」)。自身もきょう27日午前、金沢市内の病院に行き、1回目の接種を受けた。すでに多くの人が接種していて話題性も低いので、ブログのネタにしようかどうか迷ったが、備忘録のつもりで記すことにした。

   金沢市では5月6日にワクチン接種の予約受付が始まり、市のコールセンタ-とは同月12日にようやく電話が繋がった。ところが、ワクチン接種を行う市内201の医療機関はすでに申し込みが満杯の状態で予約はできないとの返事。この日、予約受付の顧客管理システム「Salesforce」が一時ダウンするなど行政の現場は混乱していた。メッセージアプリ「LINE」による予約受付もあったが、ユーザー情報が中国のLINE子会社からアクセスできる状態になっていたと問題になっていたので、わざわざインストールして使う気にはなれなかった。電話で予約できたのは6月2日だった。

   友人たちとメールでやり取りをしていると、「オレは接種しない」との意見も少数だがある。石川県では2回接種(3月13日、4月3日)を終えた病院の女性職員が感染したことがニュースになっていた(4月12日付・メディア各社)。2回接種が完了しているにもかかわらず発症することを、「ブレイクスルー感染」と言うそうだ。また、全身にアレルギーが出たり、急に血圧が低下して気分が悪くなったという、アナフィラキシー・ショックを体感した知人もいる。さらに、次々と出現する変異株にワクチンがどこまで効果があるのかなどワクチン接種に不安がない訳でもなかった。

   そしてきょう午前、指定されていた金沢市の病院に赴いた。この日持参したのは接種券(クーポン券)、予診票、運転免許証の3点。予定より少し早めの9時13分に受付窓口に着いた。同16分に男性医師による問診があった。予診票を出し、血液をサラサラにする薬を服用している旨を告げると、「それでは接種した部分を2分間軽く圧迫してください」と言う。「えっ、圧迫とは」と聞き直すと、医師は「あっ、軽く押さえてくださいという意味ですよ」と。接種希望書に署名する。

   9時16分、隣接の接種会場に行き、指定されたイスに着席する。間もなく小型ワゴンを押しながら女性看護師2人が近づいてきた。接種を受ける人は座ったままで、看護師が会場内を移動して接種する方式だ。看護師は「お待たせしました。右利きですか、左利きですか」と尋ねてきたので、「右利きです」と答えると、左腕の半袖をさっとめくり上げてくれて、接種の準備が始まった。「少しチクリとするかもしれませんがすぐ終わります」と言う間にチクリと。あっという間だった。これが今世間を騒がせているワクチン接種かと妙に実感した。

   接種担当の看護師に、「確かにワゴンで回ると効率的でスピード感がありまね」と声をかけると、「これ、三島方式と言うんです」とすぐに返事が。静岡県三島市が始めた方式で、接種を受ける側は座ったまま、巡回する医師から問診と接種を順番に受ける。おそらく、「三島方式」が全国で広がっているのだろう。もう一人の看護師が用紙に接種時間(9時19分)と経過観察終了時間(9時34分)を記入して手渡してくれた。

   経過観察として15分間、同じイスに座り、時折スマホで時間を見る。用紙には「息切れがする。咳が出る」「じんましんや皮膚のかゆみがでてきた」「呼吸がゼーゼー、ヒューヒューする」「気分が悪くなってきた。座っているのがしんどい」などの体調の変化や自覚症状を感じた場合にはスタッフに知らせてくださいと書いてある。さらに、「接種後の数日間には以下のような副反応が起こることがあります」と注意書きがあり、「注射した部位の痛み」「疲労感、倦怠感」「頭痛」「寒気、発熱」「関節や筋肉の痛み」など書かれている。

   接種から15分間経過したが体調の変化や自覚症状もないのでイスから立ち上がり、出口の受付へ。2回目の接種は3週間後の7月18日であることを確認し、次回持参する予診票と接種クーポン券を渡された。クーポン券をよく見ると、「予防接種済証(臨時)」の欄に、「COMIRNATY(コミナティ筋注)」というシールが貼られてあった。シールにあるQRコードをスマホで読み取ると、ワクチンの説明があった。「コミナティ筋注」は薬品名で、アメリカの製薬会社「ファイザー」がドイツのバイオ医薬品企業「ビオンテック」と共同開発した筋肉注射のワクチン。日本ではことし2月に特例承認されている。

   病院を出たのが9時36分。受付から退出までわずか23分だった。ブログを書き終えるまで接種から4時間余り経ったが、とくに体調の変化もない。念のため、飲酒は数日間控えることにした。

⇒27日(日)午後・金沢の天気     くもり時々あめ  

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☆皇室は国内最後の養蚕家になるのか

2021年06月26日 | ⇒ニュース走査

   前回のブログの続き。「人呼んで上滑り長官」ではないのか。報道によると、宮内庁の西村長官は、24日の定例の記者会見で、「オリンピックをめぐる情勢につきまして、天皇陛下は現下の新型コロナウイルス感染症の感染状況を、大変ご心配されておられます」と述べた。そのうえで、「国民の間で不安の声があるなかで、ご自身が名誉総裁をおつとめになるオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大につながらないかご懸念されている、ご心配であると拝察をいたします」と話した(6月24日付・NHKニュースWeb版)。

   これについて菅総理は、官邸で記者団に対し「長官ご本人の見解を述べたと理解をしている」と話した(6月25日付・同)。西村長官が陛下の気持ちを案じて述べたコメントなのか、あるいは長官本人の見解なのか、正直どちらでもよい。陛下がオリンピック・パラリンピックを案じられる気持ちは、国民も理解できる。それもさることながら、長官がもう一つコメントすべきは、皇室の威厳にかかわる問題として浮上している、眞子さまの婚約内定問題についてだろう。長官は陛下の今のお気持ちをなぜ述べなかったのか。

   オリ・パラより難題で、宮内庁長官といえどもコメントできないのは理解できる。皇室がお二人の結婚に反対していると発言すれば、国際世論が沸騰する。相思相愛のお二人の結婚を許さない日本の皇室は前近代的だ、旧態依然とした日本の姿をさらす出来事だ、と。問題は婚約内定中の小室圭氏側にあったとしても、この批判は日本にとって不名誉なことになる。逆に、結婚を認めれば国民の皇室への求心力がガタ落ちすることは想像に難くない。

   冒頭の「人呼んで上滑り長官」は、4月8日に小室氏が母親の金銭トラブルに関して説明した28㌻文書について、西村氏が同日の記者会見で「非常に丁寧に説明されている印象だ」と述べていたが、その4日後に小室氏側が解決金を渡す意向があると方針転換したことで、長官発言は軽々しいとSNSなどで批判されたことを指す。

   話は変わるが、宮内庁の公式ホームページをチェックしていて、「給桑(きゅうそう)」という言葉が目に留まった。蚕(かいこ)に桑(くわ)を与えること。大きく育った蚕に、枝付きの桑を与えることを「条桑育(じょうそういく)」と説明している。5月25日に皇后が皇居内の紅葉山御養蚕所で給桑をほどこされる様子を掲載している=写真=。この画像を見て、皇室は相当長い歴史と技術を有する養蚕家でもあるのだと気付かされた。

   日本文化のシンボルの一つは和装、その素材は絹織物だ。蚕が産み出す繭(まゆ)から生糸をつくり、生糸を繊維に加工して絹織物をつくる。ところが、農水省の公式ホームページに掲載されている「新蚕業プロジェクト」によると、平成元年度(1989)に養蚕農家は全国で5万7230戸だったが、同30年度には293戸と激減している。さらに、養蚕農家の主たる従事者は現在も70歳以上が6割を占める。絶滅が危惧される業種なのだ。世界では中国が圧倒的なシェアを占め、インド、ウズベキスタンと続く(JETRO公式ホームページ「ビジネス短信」)。ひょっとして、10年後、20年後には皇室が国内最後の養蚕家になるのか。

⇒26日(土)夜・金沢の天気      くもり時々あめ

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★「人呼んで変異株オリンピック」

2021年06月25日 | ⇒メディア時評

   金沢の観光名所の一つにもなっている「忍者寺」で有名な妙立寺の前を久しぶりに通った。コロナ禍でしばらく拝観を中止していたが、今月21日から予約のみで再開していると貼り紙があった。寺に何度か拝観に入ったことがあるが、ガイド嬢の説明が面白かった。寺の井戸が金沢城に続く抜け道になっているとか、掛け軸の裏にある隠し扉、床板を外すと現れる隠し階段など凝った仕掛け。ただ、妙立寺では「忍者寺」とは名乗っていない、「人呼んで忍者寺」と案内看板=写真=を出している。寺名より「忍者寺」が有名なので、寺としては苦肉の策として「人呼んで」と表現するしかないのだろう。

  •    自分でそう名乗っているわけではないが、 他の人はそう呼ぶ。このような事例は多くある。おそらくこの選挙は、「人呼んでコロナ選挙」だろう。任期満了に伴う東京都議選(定数127)がきょう告示され、7月4日の投開票日まで9日間の選挙戦が本格的にスタートした。立候補者数は271人に上り、平成以降最多。うち女性候補は過去最多の76人となった。秋までに実施される衆院選を見据え、各候補や各党幹部らは初日から街頭などで支持拡大を訴えた(6月25日付・共同通信Web版)。

   ワクチン接種も十分ではないのに、コロナ禍で選挙という「人流」をつくる東京都議選の意義はなんだろうかと都民は冷ややかに思っているのではないか。大阪市が昨年11月1日に「大阪都構想」の是非をめぐる住民投票を実施した。すると、大阪市民からは、「コロナ禍にも関わらず、なぜ住民投票を実施するのか。都構想のメリット・デメリットはなにか」(大阪市公式ホームページ「市民の声」)などと住民投票そのものに疑念の声が上がっていた。もちろん、「コロナ感染をもって、民主主義に踏み込んでよいものか、投票とコロナは別だ」との意見もあるだろう。

   今月19日に来日したウガンダの東京オリンピック選手団の9人のうち1人が新型コロナウイルスに感染していることが空港で確認されたほか、滞在先の大阪で行われた保健所の調査で、空港では陰性とされた8人が濃厚接触者と認定され、その後、1人の感染が確認された(6月25日付・NHKニュースWeb版)。

   ウガンダ選手は、インド型の変異ウイルス=デルタ株だったこともが判明している。従来のウイルスの2倍の感染力を持つとされる。ウガンダ選手団の感染者はレアケースなのだろうか。そうではない。今後続々と世界各国から選手団が入国するたびに同じケースが頻発するのではないだろう。世界中から変異株が持ち込まれ、まさに「人呼んで変異株オリンピック」が始まるのか。

⇒25日(金)夜・金沢の天気       はれ    

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☆見えそうで見えないカーテンの向こう

2021年06月24日 | ⇒メディア時評

   かつてよく使われた「鉄のカーテン」は、イギリスのチャーチル首相が大戦後に発した、東西冷戦の時代の到来を予言する言葉だった。その後、東欧側の排他性や閉鎖性、秘密主義を西欧側が非難する言葉として使われた。1990年の東西ドイツ統合でいわゆる「ベルリンの壁」が崩壊し、「鉄のカーテン」という言葉も国際政治の舞台では使われなくなった。ただ、今でも閉鎖性を意味して、「心のカーテンを閉めている」などと表現したりする。

   「五輪のカーテン」とでも言ったらよいのか、新型コロナウイルスのパンデミックの下、開催まで1ヵ月を切った東京オリンピックをめぐり、政府は「実施する」とは言うものの、何をどう実施するのか国民はよく見えてこない。報道によると、大会組織委員会の橋本会長は会場内では酒類の販売を見送り、飲酒も禁止すると発表した。会場に観客が酒類を持ち込むことはもともと禁止されていて、さらに、選手を含めた大会関係者に対しても会場内のラウンジで酒類は提供されない(6月23日付・NHKニュースWeb版)。オリンピック会場内は酒類は一切禁止。「五輪は禁酒のカーテンに閉ざされた」とでも言おうか。五輪期間中、大会関係者からはブーイングが起きるのではないだろうか。

   「菊のカーテン」も気になる。秋篠宮家の長女の眞子さまと婚約内定中の小室圭氏が4月8日に、実母と元婚約者男性の金銭トラブルについて記したA4用紙28枚の文書を発表した。「切実に名誉の問題」とする文面だったが、4日後の12日に小室氏の代理人弁護士は報道陣に金銭問題について、小室氏側が解決金を渡す意向があるとの方針転換を明らかにした。国民の関心はさらに高まり、70日余りも経過しているものの、「開かれた皇室」からの反応は何も見えても聞こえてもこない。静かにカーテンは閉まったままだ。

   小室文書では「録音」についての記述が何か所も出てくる。たとえば、2012年9月の実母と婚約者男性の婚約破棄に関わる記載では、13㌻と19㌻の「脚注」に「元婚約者の方の『返してもらうつもりはなかった』というご発言を録音したデータが存在します」「このやりとりについては私自身同席していて聞いています。又、録音しているので、元婚約者の方が『返してもらうつもりはなかった』とおっしゃったことは確認できています」と記している。以下憶測だ。

   小室氏は物的証拠を求める録音マニアではないだろうか。ありていに言えば、「隠し録り」だ。こうした「隠し録り」や「隠し撮り」マニアの人物はデータをかざしながら、「ウソつくな、証拠がある」と相手を追いつめ、最後に「オレは悪くない」と言い逃れをするタイプだ。上記の2012年9月は、眞子さまと小室氏はICUの同級生で親密な交際を重ねておられたころ。おそらく、眞子さまの会話や電話でのやりとりはすべて録音されている。「菊のカーテン」の内側が一番恐れているのはここではないか。

(※写真は2017年9月3日、眞子さまと小室氏の婚約内定の記者会見=宮内庁公式ホームペ-ジより)

⇒24日(木)午後・金沢の天気      はれ

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★書架にある立花隆氏の本を眺め、悼む

2021年06月23日 | ⇒ドキュメント回廊

   ジャーナリストの立花隆氏が、ことし4月、急性冠症候群のため亡くなっていたことが分かったとメディア各社がけさ報じている。80歳だった。いわゆる「文春砲」、雑誌ジャーナリズムの先駆けをつくった人だ。1972年、テルアビブの空港で日本赤軍の3人が銃を乱射し24人が死亡した事件で、現地の警察に拘束されていた実行犯の岡本公三容疑者への一問一答の記事を「週刊文春」に掲載し、当時社会に衝撃を与えた。

   1974年には月刊「文芸春秋」に「田中角栄研究 その金脈と人脈」を発表。現職総理の政治手法を入念な取材と裏付け調査で明らかにし、退陣のきっかけをつくった。その後、「ロッキード事件」が発覚。田中氏や丸紅、全日空の役員らが受託収賄、贈賄などの罪で起訴される歴史的な疑獄事件となった。ジャーナリストとしての粘り強さ、徹底した調査報道は際立っていた。

   書棚を眺めて立花氏の本を手に取る=写真=。権力者の不正を追及するだけではなく、「科学する心」を持ったジャーナリストだった。宇宙や医療、脳、インターネットといった分野でも数々の著書を残している。科学・技術の最前線に立った人間がその体験を精神世界でどう受容し、その後の人生にどう影響したのか人物像も追っている。

   書棚の本をいくつかを紹介する。インターネットの普及期に読んだ『インターネットはグローバル・ブレイン』(1997)は示唆に富んでいた。著書名の通り、地球を生命体と見立てればインターネットは頭脳であり、プラットフォームやブログサイトなどはその神経細胞の一つというものだ。その細胞を活性化させることは、いかにして質の高い内容をアップロードし続けるかにある。自身はその後、この「インターネットはグローバル・ブレイン」というタイトルを会話や意見交換などで使わせてもらっていた。それが高じて、幻冬舎ルネッサンス新書『実装的ブログ論 日常的価値観を言語化する』(2017)を出版するきっかけにもなった。

   『臨死体験』と『証言・臨死体験』(文藝春秋社)は人間の脳の最期の姿を現すものだった。数々の臨死体験の中で、光の輪に入り、無上の幸福感に包まれるという臨死体験者の証言がある。立花氏は著書の中で「死にかけるのではなく本当に死ぬときも、大部分の人は、臨死体験と同じイメージ体験をしながら死んでいくのではないか」と推定している。この本を読んだのは1997年だった。17年後にこの本のことを思い起こすことになる。

   2014年2月、乳がんを患っていた妻の最期に立ち合うことができた。脈拍、心拍数がどんどん落ちていく。医師から臨終を告げられたのは午後8時50分だった。そのとき、妻の左目から涙がひとしずく流れた。死の生理現象なのかもしれないが、若くして逝った悔し涙だったのかなどと、その涙の意味をそれからずっと考えていた。ふと、以前読んだ『臨死体験』を思い出した。あのときの妻の涙は光の輪の幸福に包まれ流した涙だったに違いない、と。今でもそう思っている。書籍を通じてだが、教示いただいた立花氏に感謝している。そして、氏も臨終の際は光の輪の幸福に包まれていたことを祈る。

⇒23日(水)朝・金沢の天気    はれ

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☆バイデン大統領 報道されないある一面

2021年06月22日 | ⇒ニュース走査

   アメリカ大統領のバイデン氏は78歳。日本でいう後期高齢者ながら、はっきりとした物言いで、先のG7サミット(イギリス・コーンウォール、6月11-13日)でも存在感があった。バイデン氏がイニシアティブを発揮した共同声明では、中国に対して新彊ウイグル自治区での人権尊重、香港の高度の自治を求めたほか、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。と、報道はされているものの、別の側面もあったようだ。

   アメリカのオンライン・メディア、「ワシントン・フリー・ビーコン」は「What About His Gaffes? Joe Biden Bumbles His Way Through G7 Summit」(6月14日)との見出しでサミットにおけるバイデン氏の様子を報じている。中でも、「It's also very embarrassing for America.」(アメリカにとっても非常に恥ずかしいこと)として、バイデン氏の「ボケぶり」を伝えている。

   写真は、バイデン氏が会議場の屋外の座席エリアに迷い込んで混乱しているところ。バイデン氏の妻が彼を連れ出したエピソードを紹介している。また、7ヵ国の首脳とゲスト参加の韓国、オーストラリア、南アフリカの首脳が並んで写真撮影する場で、ホストであるイギリスのジョンソン首相が一人ひとりを紹介した。ジョンソン氏は、南フリカのラマポサ大統領をすでに紹介していたにもかかわらず、バイデン氏はジョンソン氏の話の途中で「南アのラマポサ大統領はどこに」と口を挟んだ。ジョンソン氏が「すでに紹介しましたけど」と告げると、バイデン氏は「そうか。それは失礼した」と。

   この記事を読んで連想したのが、日本の「エーザイ」とアメリカの製薬会社「バイオジェン」が開発したアルツハイマー病の新薬「アデュカヌマブ」について、アメリカのFDA(食品医薬品局)は原因と考えられる脳内の異常なタンパク質「アミロイドβ」を減少させる効果を示したとして治療薬として承認したとのニュースだった。「アデュカヌマブ」は、アミロイドβを取り除く効果が認められ、アルツハイマー病の進行そのものを抑える効果が期待される初めての薬となる。

   この夢の薬、ぜひ点滴投与を受けたいとのニーズは世界で高まっているだろう。ひょっとして、バイデン氏も待ち望んでいる一人かもしれない。

⇒22日(火)夜・金沢の天気     くもり

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★夏至の長い一日

2021年06月21日 | ⇒ドキュメント回廊

   けさ目覚めて時計を見たら、午前4時40分だった。部屋のカーテンはしているが、外が明るく感じて、その後、なかなか寝付けなかった。そうか、きょうは夏至か。これから盛夏がやってくる。ある意味できょうは熱い一日だった。

   午前と午後は外出したが日中は30度を超える暑さだった。半袖にして正解だった。そして、暑さを感じたニュース。きょうの東京株式市場で日経平均株価は前週末比953円15銭(3・3%)安と急落した。下げ幅は約4ヵ月ぶりの大きさとなった。一時は1168円安だった。18日にアメリカのFRB(連邦準備理事会)の高官が2022年後半への利上げの前倒しを示唆する発言をしたため、世界的に景気回復が鈍化するとの懸念から売りが膨らんだ(6月21日付・日経新聞Web版)。自動車や機械など世界の景気に連動しやすい輸出企業の株が売られた。コロナ禍でのワクチン接種も広まり、景気回復へと向かう矢先で冷や水を浴びせられた。

   暑さが増すとともに、ガソリン価格も増している。金沢市内の自宅近くのカソリンスタンドではレギュラーの価格が1㍑あたり155円だった。前の週より2、3円アップしている。欧米ではワクチン接種が進展して、経済回復への期待が高まりがガソリンが値上がり基調となっていると報じられていた。新型コロナウイルスの感染拡大が広まった昨年4月は不要不急の外出自粛でリモートワークや「巣ごもり」の生活スタイルが広がって、金沢市内で1㍑あたり120円前後だった。その前の3月は130円、2月は1㍑140円だったので、月あたり10円ほど価格が落ちていた。それにしても、コロナ禍でこれほど価格が上下するものだろうか。不思議だ。

   きょうの夕方からは自宅の草むしり(除草)をした。この時季、雑草は勢いを増している。昭和天皇のお言葉に「雑草という草はない。どんな植物でもみな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる」という有名なフレーズがある。植物もまさに活き活きと生を育んでいる。草と向き合い、日没の午後7時半ごろまで作業を続けることができた。夏至の長い一日だった。

⇒21日(月)夜・金沢の天気     はれ

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