自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★能登沖での異常震域と弾道ミサイルで読めること

2021年09月30日 | ⇒メディア時評

   日本海側が震源なのに太平洋側が揺れる「異常震域」という言葉を初めて知った。きのう29日午後5時37分ごろ、能登半島の沖の日本海中部で震源の深さは400㌔、マグニチュード6.1の地震があった。この地震で、北海道、青森、岩手、福島、茨城、埼玉の1道5県の太平洋側で震度3の揺れを観測した=写真・上=。今回の地震は大陸のユーラシアプレートに沈み込む海洋の太平洋プレートの内部深くで起きたとみられている。震源が深かったため、近くよりも遠くが大きく揺れる現象のようだ(29日付・朝日新聞Web版)。

   それにしても、日本海側に住む一人として不気味に思うのは、今回の地震の位置と弾道ミサイルの落下地点の関係性だ。北朝鮮が今月15日正午過ぎに弾道ミサイル2発を発射、能登半島沖の舳倉島の北約300㌔のEEZに落下している(15日午後9時・防衛大臣臨時会見「北朝鮮による弾道ミサイル発射事案」)。防衛省公式ホームページには会見での落下地点の地図などは掲載されていない。

   メディア各社がその位置をイメージ(予想図)として掲載している。毎日新聞Web版(15日付)で掲載されたものと比較すると=写真・下=、震源地と弾道ミサイルの落下地点は近いと感じる。弾道ミサイルと地震の関係性はないのだろうか。ふと、そのようなことを考えてしまう。

   人為的な原因によって誘発される地震を「誘発地震」と言ったりする。北朝鮮が2017年9月3日に行った核実験の影響で、核実験場付近で同月23日に2回、10月13日に1回、12月2日に1回、マグニチュード5.6などの地震が観測されている(Wikipedia「人工地震」など)。

   このところ北朝鮮のミサイル発射は頻繁だ。今月11・12日の長距離巡航ミサイル、15日の移動式ミサイル、28日の極超音速ミサイルと続いている。政府は北朝鮮が発射したミサイルが日本の領土・領海に落下する、あるいは通過する可能性がある場合、Jアラート(全国瞬時警報システム)を鳴らして国民に避難など注意を呼びかける。ただ、EEZ内に落下する可能性がある場合にはJアラートは鳴らない (内閣官房国民保護ポータルサイト)。あさから憂鬱な話になってしまった。

⇒30日(木)午前・金沢の天気   くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆極超音速ミサイル 北が着々と進める戦略兵器開発

2021年09月29日 | ⇒ニュース走査

   前回のブログで北朝鮮が弾道ミサイル1発を日本海に打ち上げた(9月28日)との報道を取り上げた。きょう29日付の労働新聞Web版によると、打ち上げたのは新開発の極超音速ミサイルだと写真付きで掲載している。「국방과학원 새로 개발한 극초음속미싸일 《화성-8》형 시험발사 진행」の見出しの記事=写真=によると、極超音速ミサイルの名称は「火星-8」。北部のチャガン(慈江)道から発射した。金正恩党総書記の側近のパク・チョンチョン党政治局常務委員らが立ち会った。

   記事では極超音速ミサイルについての詳細な記載はない。「令和2年版防衛白書」によると、アメリカや中国、ロシアはすでに開発していて、弾道ミサイルから発射され、大気圏突入後に極超音速(マッハ5以上)で滑空飛翔・機動し、目標へ到達するとされる。弾道ミサイルとは異なる低い軌道を、マッハ5を超える極超音速で長時間飛翔すること、高い機動性を有することなどから、探知や迎撃がより困難になると指摘されている。

   また、記事では極超音速ミサイルの開発について、ことし1月5-12日で開催した朝鮮労働党第8回党大会で提案された戦略兵器開発(5ヵ年計画)におけるトップ5の主要なタスクの一部と位置付けている。確かに、この8回党大会で金総書記は、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いる大陸間弾道ミサイル(ICBM)と原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及していた(2021年1月9日付・BloombergニュースWeb版日本語)。

   北朝鮮は各地の代表からなる党最高人民会議をきのう28日からピョンヤンで開催している。ということば、きのう打ち上げた極超音速ミサイルは、今月11・12日の長距離巡航ミサイル、15日の移動式ミサイルの発射と合わせて、戦略兵器開発は順調に進んでいるとの党幹部向けのアピールの狙いもあるのかもしれない。

   それにしても、日本の防衛システムは北朝鮮が次々と開発を進める戦術兵器に対応できるのか。弾道ミサイルは楕円軌道を描きながら標的の上に落ちてくるので迎撃が可能とされている。が、極超音速ミサイルは上下左右に飛び方を変えながら標的に向かうので迎撃が困難とされる。極超音速ミサイルの実用化までには時間がかかるとしても、日本の防衛システムが翻弄されることだけは間違いない。

⇒29日(水)午後・金沢の天気     はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★弾道ミサイル発射 文大統領への揺さぶりメッセージか

2021年09月28日 | ⇒ニュース走査

   また、北朝鮮の脅威だ。けさ北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたと発表した(防衛省公式ホームページ)。NHKニュースWeb版(28日付)によると、政府高官は「発射は1発と見られるが、落下した場所も含めて現在確認を進めている」と述べた。また、政府関係者は、日本のEEZ(排他的経済水域)の内側に落下した可能性は低いという認識を示した。

   北朝鮮は今月15日にも日本海に向けて弾道ミサイル2発を発射している。落下地点は、能登半島の舳倉島の北方約300㌔の海域と推測される(同・読売新聞Web版)。舳倉島から輪島市は約49㌔の距離。つまり、能登半島の約350㌔先のEEZ内だった。

   前回の発射でさらに脅威を感じさせることが報道された。北朝鮮の朝鮮中央テレビ(9月17日付)は、弾道ミサイルは鉄道を利用した移動式ミサイル発射台から発射されたもので、その動画を公開した=写真=。安倍政権時代に北朝鮮の弾道ミサイルの発射予測を検知して事前に破壊する「敵基地攻撃能力」の保持が議論されていた。15日の弾道ミサイルは敵基地攻撃の意味がなさなくなったことを示すものだった。けさ発射された弾道ミサイルは1発だが、移動式ミサイル発射台をさらに進化させたものだったのか、どうか。

   北朝鮮はきょう28日、各地の代表を集めて最高人民会議を開催すると予告している(9月28日付・NHKニュースWeb版)。韓国の文在寅大統領は22日の国連総会での演説で、「終戦宣言こそ朝鮮半島に『和解と協力』の新しい秩序を作る重要な出発点だ」と述べ、休戦状態となっている朝鮮戦争の終戦宣言を、南北とアメリカの3者か、中国を加えた4者で行うことを提案した(9月22日付・同)。これに対し、北朝鮮の金正恩党総書記の妹、金与正党副部長は24日、「終戦宣言は悪くない」として、「長期間続いている朝鮮半島の不安定な停戦状態を物理的に終わらせ、相手に対する敵対視を撤回する意味での終戦宣言は興味深い提案であり良い発想」とする談話を出した(9月24日付・聯合ニュースWeb版日本語)。

   以下、憶測の話になる。開催される最高人民会議で金党総書記が「文大統領からの終戦宣言の提案を喜んで受ける」と表明したら、今後朝鮮半島の情勢はどのように変化していくだろうか。休戦協定の当事者であるアメリカは「先に非核化、その後に経済制裁解除と終戦宣言」が原則だ。逆に、文大統領は非核化交渉の入口として、先に終戦宣言をすることを提示している。金党総書記の狙いは、弾道ミサイルを発射したぞ、それでも終戦宣言をするんだなと文大統領に揺さぶりをかけたのではないか。アメリカと韓国の亀裂も狙ってのことだ。弾道ミサイルのきょうの発射は、文大統領に対する強烈なメッセージではないのか。

⇒28日(火)午前・金沢の天気      くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆「Go To トラベル」の再開はいつなのか

2021年09月27日 | ⇒メディア時評

    新型コロナウイルスによるパンデミックがようやく和らいできたようだ。石川県の感染状況は「ステージⅢ(感染まん延特別警報) 」となっていて、感染者の7割を占める金沢市には「まん延防止等重点措置」が適用されている。このため兼六園など観光名所はいまも閉鎖が続いているが、数字的に減速傾向が見え始めてきた。

   きょう27日、石川県は新たな3人の陽性が確認されたと発表した。感染者が5人以下となるのは7月4日以来で85日ぶり。これまで119人(7月28日)を数えるなど7月下旬から8月にかけては高止まりだったが、9月に入り徐々に減少に転じた。石川だけでなく東京など全国的な傾向だ。NHKニュースWeb版(27日付)によると、政府は東京や大阪など19の都道府県に出されている緊急事態宣言と、石川など8つの県に適用されているまん延防止等重点措置は今月30日ですべてで解除する方針を固めた。

   この全国的な減速傾向はワクチン接種が進んでいるからだろう。総理官邸公式ホームページによると、きょう27日時点で2回目の接種を終えた人数は7249万人で人口の57%に達している。

   パンデミックの危機はなんとか脱出できるとしても、問題は経済の落ち込みだ。内閣府発表(8月16日付)では、ことし4月から6月までのGDPの速報値は物価の変動を除いた実質の伸び率が前の3か月と比べてプラス0.3%だった。年換算でプラス1.3%となり、GDPは2期ぶりにプラスに転じたことになる。ただ、比較の対象となる1月から3月までのGDPの伸びが年率換算でマイナス3.7%の下落だったことを考えると、景気の持ち直しの力強さを欠く。とくに個人消費はGDPの半分以上を占めるが、プラス0.8%の伸びにとどまっている。

   日銀の黒田総裁はきょう記者会見で、「感染拡大がいつピークアウトするのかにもよるが、緊急事態宣言などが解除されるようになれば、個人消費、なかでも対面型のサービスが回復することが期待される。早ければ年内、遅くとも来年早々には、外食や宿泊にも回復が広がっていくのではないか」と述べた(NHKニュースWeb版)。日銀は金融政策決定会合(9月21、22日)で、短期金利をマイナスにし、長期金利がゼロ%程度に抑えるよう国債を買い入れる今の大規模な金融緩和策の維持を決めている。

   日銀は経済回復を煽っているという印象だ。そして、政府は全都道府県の緊急事態宣言およびまん延防止措置について、今月末で解除する方針を固めた。では、「Go To トラベル」事業はすぐに再開されるのだろうか。加藤官房長官は記者会見(今月16日)で「感染状況を見ながら、専門家の意見を聴き、適切に判断していく」と述べたにとどまっている。おそらく政府とすれば、「Go To トラベル」を再開したいというのが本音だろう。メディアや野党などからの「時期尚早」などとバッシングを想定しながらも、政府がいつ「Go To トラベル」を再開するのか、ここが個人の消費動向を促す経済回復策の一つのポイントではないだろうか。

⇒27日(月)夜・金沢の天気     はれ時々くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★皇室の一時金制度そのものが問われている

2021年09月25日 | ⇒ニュース走査

   はやり宮内庁は大きな勘違いをしている。なぜ皇室経済会議を開催しないのか。NHKニュースWeb版(25日付)はこう伝えている。皇族が結婚などによって皇室を離れる場合、品位を保つことを目的に「一時金」が支給されることが皇室経済法で定められていて、眞子さまのような「内親王」の場合、1億5250万円が上限となっている。これについて眞子さまは、小室さんの母親の金銭トラブルに対する批判的な世論などを踏まえ、受け取りを辞退される意向を示されていて、宮内庁が、政府や内閣法制局とも連絡を取りながら対応を検討してきた。その結果、宮内庁として眞子さまへの一時金は支給しない方向となり、眞子さまの結婚の日程などとあわせ、来月上旬にも発表できるよう調整を進めている。これによって、総理大臣が議長となって一時金の支給額を決定する「皇室経済会議」は開かれない見通し。

   憲法第88条では「すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない」と定めている。皇籍離脱の一時金は皇族費であり、皇室経済法第6条に基づき、皇室経済会議を開く必要がある。本来は一時金の金額の認定などする場ではあるが、「受け取らない」場合であっても、その理由について了承を得る必要がある。会議メンバーは総理大臣、衆参正副議長、財務大臣、宮内庁長官、会計検査院長の8人だ。

   今回の一時金支給の辞退は皇室の歴史においても異例だ。NHKニュースWeb版はこう伝えている。一時金をめぐっては、昭和22年に11宮家の51人が皇籍を離脱した際、軍に所属していた男性皇族11人に支給されなかった例があるが、戦後、結婚によって皇室を離れた女性皇族に支給されなかった例はない。皇室経済会議は眞子さまが辞退したので、「あ、そうですか」と会議を開かない理由が納得いかない。なぜ、辞退されたのか問うてほしい。その上で、「皇室を離れる場合、品位を保つことを目的」としている一時金の意義を論議すべだ。皇室にとって必要のない、あるいは形骸化している制度であれば、この際、一時金制度を廃止すべきだろう。皇室経済会議を開いてその議論をなぜしないのか。

   ましてや、冒頭の記事で眞子さまの辞退の理由は「小室さんの母親の金銭トラブルに対する批判的な世論などを踏まえ」とされている。小室圭氏の母親の疑惑は厚生労働省や司法が判断する別次元の話だ。この件を、一時金で配慮するという眞子さまの感覚そのものがずれている。あるいは、一時金を辞退するので、小室の母親の疑惑はなかったことにしてほしいとのお気持ち、あるいは国民に向けたメッセージであるならば、それは論外ではないだろうか。

   2017年9月の婚約内定会見から4年、国民の信頼の失墜を招いた責任は宮内庁にあるだろう。その役割はもう終わった。全国に700ある天皇家にまつわる陵墓を守るのが宮内庁の大きな役目の一つとされる。それに専念すればよいのではないか。

(※写真は、「小室圭さん母 『年金詐取』計画 口止めメール」疑惑を報じた週刊文春=2021年4月29日号)

⇒25日(土)夜・金沢の天気    あめ  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆「終戦宣言は悪くない」 北の思惑

2021年09月24日 | ⇒ニュース走査

   前回のブログの続き。韓国の聯合ニュースWeb版日本語(24日付)よると、北朝鮮の金正恩国務委員長(朝鮮労働党総書記)の妹、金与正党副部長は24日、韓国の文在寅大統領が国連総会演説で朝鮮戦争の終戦宣言を提案したことについて、「終戦宣言は悪くない」として、「長期間続いている朝鮮半島の不安定な停戦状態を物理的に終わらせ、相手に対する敵対視を撤回する意味での終戦宣言は興味深い提案であり良い発想」とする談話を出した。朝鮮中央通信が伝えた。

   このニュースの見て、「アフガニスタン」の二の舞を想像した。2001年9月月11日の同時多発テロで、アメリカは「テロとの戦い(War on Terrorism)」を錦の御旗に掲げ、当時のブッシュ大統領はアフガニスタンで政権を握っていたタリバンがテロ事件の首謀者とされたオサマ・ビン・ラディンをかくまっていると非難。アメリカ主導の有志連合軍がアフガンへの空爆を始め、タリバン政権は崩壊する。しかし、ビン・ラディンを捕捉できなかった。テロとの戦いはオバマ大統領に引き継がれ、2011年5月、パキスタンのビン・ラディンの潜伏先を奇襲し殺害。オバマ氏は緊急声明で「Justice has been done」と発した。

   そうなると、アメリカ世論もアフガンのケースと同様にいつまで韓国に軍隊を駐在させる必要があるのかと撤退の声が高まる。北朝鮮の狙いはそこにあるのではないだろうか。

(※写真は、2018年5月26日に行われた韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長の2度目の首脳会談を伝える聯合ニュースWeb版)

⇒24日(金)夜・金沢の天気       はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★朝鮮戦争の終戦宣言は「核あり統一」の布石か

2021年09月23日 | ⇒ニュース走査

   韓国の文在寅大統領の国連総会での演説には正直、「また同じことを繰り返すのか。くどい」という印象がぬぐえない。NHKニュースWeb版(9月22日付)によると、文大統領は「終戦宣言こそ朝鮮半島に『和解と協力』の新しい秩序を作る重要な出発点だ」と述べ、70年近く休戦状態が続いている朝鮮戦争の終戦宣言を、南北とアメリカの3者か、中国を加えた4者で行うことを改めて提案した。ことしは韓国と北朝鮮が国連に同時に加盟してからちょうど30年で、文大統領としては来年5月までの任期中に朝鮮半島の平和と安定に向けて成果を出そうと各国に支持を求めた形だ。

   文氏が国連総会で「終戦宣言」を持ち出すのは3度目だ。文氏は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と2018年4月に板門店で初の南北首脳会談で「完全な非核化」の約束を取り付けた=写真=。6月にはシンガポールで初の米朝首脳会談が開かれ、共同声明で板門店宣言を再確認し、北朝鮮は完全な非核化に向け取り組むと記された。会談後に当時のトランプ大統領は米韓合同軍事演習を凍結すると発言した。その年の9月の国連総会で文氏は「非核化のための果敢な措置が実行され、終戦宣言につながることを期待する」と述べた。

   その後に原則論が違いが浮き彫りになる。トランプ氏の原則は先に非核化、その後に経済制裁解除と終戦宣言だった。ところが、板門店で文氏は金氏に対して、非核化交渉の入口として、先に終戦宣言を提示していた。金氏もその提案に同意した。亀裂が生じたのは2019年2月、ハノイでの2回目の米朝首脳会談だった。会見でトランプ氏は、金氏が非核化の前に経済制裁の解除を求めたので、それは無理だと先に席を立ったと述べた。同じ年の6月には板門店で3回目が持たれたが、成果には至らなかった。

   そして、2020年6月、南北首脳会談の板門店宣言の合意で建設した南北連絡事務所を北朝鮮が爆破した。それでも、文氏は、その年の9月、オンラインでの国連総会演説で「終戦宣言こそ、朝鮮半島での非核化とともに恒久的な平和への道を開く扉になる」と繰り返した。そして3度目が冒頭の演説だった。文氏の演説の後、アメリカのバイデン大統領が就任後初めての国連演説に臨み、北朝鮮とイランの非核化を引き続き追求すると明らかにした。文氏が提案した終戦宣言には言及していない。

   北朝鮮は9月に入り、長距離巡航ミサイルや移動式弾道ミサイルなどの発射実験を相次いで行っている。韓国も、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射実験を文氏の立ち合いのもとで行っている。両国の軍事競争が不可解だ。「核なき統一」は日本もアメリカも国際社会も望むところだ。ところが、文氏の演説は統一が最優先であって、核は後回し、つまり「核ありの統一」のように聞こえる。油断ならない。

⇒23日(祝)午後・金沢の天気      はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆自民総裁選の「メディアジャック」現象

2021年09月22日 | ⇒メディア時評

   広告業界には「メディアジャック」という言葉がある。電車の中の広告や新聞、雑誌の広告スペースを1社が買い占める広告戦略のことだ。和製英語とも言われる「ハイジャック」からヒントを得た造語なのだろう。「メディア乗っ取り」だ。きのう21日午後のTBS系の情報番組に出演していたコメンテーターで、元大阪府知事、弁護士の橋下徹氏が「野党側も予備選やってメディアジャックをしないと、自民の総裁選に引っ張り込まれる」との趣旨の発言をしていた。久しぶりに聞いた言葉にハッとさせられた。

   確かにきょう22日の新聞のラジオ・テレビ欄を見ても、NHK含めテレビのほとんどのニュース番組やワイドショーなどで「自民総裁選まで1週間」や「自民総裁選の最新情勢」などの見出しが躍っている。テレビをハイジャックする自民党総裁選とは何なのか、「メディアジャック」現象について考えてみた。

   目立つのは自民党総裁選の4候補の顔ぶれだ。4人の候補者のうち2人が女性だ。当然、討論のテーマも女性目線が注目される。きょう22日に行われた党内の討論会では、子育て関係の政策を担う「こども庁」の設置について議論が交わされた。河野氏は「子どもの自殺、虐待、貧困ゼロを掲げる」と強調。岸田氏は「子どもたちの命、健康、人権を一元的にしっかり見ていく」と訴えた。野田氏は「願いは社会の中で一番弱いと言われる人たちが、いつも笑顔でいられる社会、国をつくること」と述べた。高市氏は「令和の省庁再編に挑戦する。子ども政策の推進のため、効率的かつ効果的な組織は何か検討したい」と話した(9月22日付・毎日新聞Web版)。これまでは、学校教育ばかりに重点が置かれていたが、日本の未来を担う子どもたちの政策について議論したことはなかった。その意味で画期的な政策討論だ。

   18日の公開討論会(日本記者クラブ主催)も面白かった。NHKの生番組で視聴していた。キーワードは「コロナ」「原発」「年金」の3つ。中でも、国民年金について河野氏は「若い人たちの将来の年金生活が維持されなければ意味がない」と、消費税を財源にした最低保障年金の創設を訴えた。日本の少子高齢化は進み、年金制度そのものが維持できなくなるとの河野氏の危機感だろう。これに対し、高市氏は「基礎年金を全額税金で賄うのは制度的に無理がある」と反論し、岸田氏は「税でやるとした場合に消費税を何%に上げるのか」と迫るなど議論が白熱した。少子高齢化が急速に進む日本でシンボル的な課題の一つが年金の持続可能性の問題だ。シニア世代の誰もが感じていることなのだが、最近では公に議論されることはほとんどなかった。

   少子化問題、そして年金問題について、近未来の政策を担う「総理候補」が討論するだけに目が離せない、有権者の関心度が高い。最初は河野氏の意見が率直で的を得ているとも思ったが、このところ、高市氏の言葉が胸に刺さることがある。テレビとすれば、選挙報道と同様に、メディアジャックのコンテンツではないだろうか。自身は党友でも党員でもない。単なる政治ウオッチャーだ。(※写真は自民党本部ホームページより)

⇒22日(水)午後・金沢の天気     あめ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★中秋の名月なれど チャイナリスクの暗雲

2021年09月21日 | ⇒ニュース走査

   今夜は「中秋の名月」だ。天候が変りやすい北陸では名月を拝めないことが多い。なにしろ芭蕉の句がある。「名月や北国日和定なき」(『奥の細道』)。今夜は中秋の名月を期待していたけれど、あいにく雨で拝むことができなかった。福井・敦賀で詠んだ句とされる。しかし、今夜はすっきりと見ることができた=撮影:午後7時45分=。しかも、平成25年(2013)以来、8年ぶりの満月というから、まさに名月だ。  

   時代劇のドラマで中秋の名月のカットがよく使われる。大事件や裏切り、画策、謀反、旗揚げなど不吉な出来事の予兆のシーンとして、ウオーッという犬の鳴き声や風に揺れるススキの穂とともに名月が浮かんで出てくる、あのカットだ。きょうの名月もひょっとして。  

   連休明けのきょう21日の日経平均株価は取り引き開始直後からほぼ全面安。終値は先週末より660円安い2万9839円だった。終値が3万円を割り込むのは9月7日以来だ。そして、日本だけでなくアメリカ株も全面安となるなど、世界同時株安の様相だ。その原因と報じられているのが「チャイナリスク」。中国の不動産大手「中国恒大集団」の経営悪化が原因と言われる。日本円で33兆円におよぶ巨額の負債を抱えているとされ、中国経済全体や金融システムに影響を及ぼすのではないかとの懸念が強まっている。

   その予兆は昨年から顕著になっていた。恒大集団は負債比率の削減を目指しすべての不動産物件を30%値引きすると発表(2020年9月7日付・ロイター通信Web版日本語)、このころから危機説が浮上した。もともと、中国当局が不動産価格の過度な高騰を警戒し、市場を引き締めたことが資金繰りが悪化した原因の一つとみられている。そして、本格的にデフォルト(債務不履行)となれば、リーマン・ショック級の信用崩壊が発生し、不動産資産が下落するだろう。不動産を担保にしてビジネスをしている人たちが金融機関の強引な貸しはがしに合うケースも増えるだろう。こうなると、資金繰りが全体に悪化し、不況へと突入する。

   では、中国政府による恒大集団の救済はあるだろうか。習近平政権は「共同富裕」を掲げ、貧富の格差解消を進めている。ある意味で不動産バブルを煽ってきたとも言える恒大集団に助け舟を出せば人民の反発を招くことになるかもしれない。

⇒21日(火)夜・金沢の天気      はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆夏の終わりによみがえるあの2曲

2021年09月20日 | ⇒トレンド探査

   朝夕に肌寒さを感じるようになった。まもなく秋分の日(23日)だ。この夏を振り返ると、印象に残るのやはり東京オリンピックとパラリンピック、そして、耳に残るのが『マツケンサンバⅡ』と『波乗りジョニー』だろうか。

   俳優の松平健はテレビ番組『暴れん坊将軍』でおなじみだったが、歌っているとは知らなかった。オリンピック開会式のセレモニー楽曲を担当する作曲家グループの1人だった小山田圭吾氏が過去のいじめ告白問題で7月19日に辞任して大騒ぎになったが、そのとき、ヤフー・コメントなどで「マツケンサンバを開会式で」との書き込みを何度か目にした。検索して、『マツケンサンバⅡ』を動画で見て初めて知った。

   サンバのリズムに乗ってテンポよく歌い踊る松平健の後ろでは、腰元と町人風のダンサーたちが乱舞する。サンバは肌を露わにしたダンサーが踊る姿をイメージするが、赤い衣装を着た腰元ダンサーの方がむしろ艶っぽくなまめかしい。これが、正式にリリースされたのが2004年7月なので、17年も前の楽曲だ。さすがに、オリンピックの開会式では時間もなく無理だろうと思ったが、閉会式ではひょっとしてサプライズがあるのではないかと期待もした。家飲みのときにネットで楽しませてもらっている。
 
   テレビでオリンピック競技を17日間視聴して、印象に残っているのはもちろんアスリートたちの姿だが、番組での解説やコメントなどスタジオのバックで流れていた桑田佳祐の『波乗りジョニー』も、だった。この曲はもともと、テレビCMに流れる、日本の夏を象徴する曲だ。夏のテーマソングがそのままオリンピックのテーマソングのようになり、盛り上げてくれた。オリンピック競技場の無観客の状態は当初さみしいとも感じたが、毎日違和感なく視聴できたのもこの曲のおかげかもしれない。

   最後にこの夏を締めくくる言葉。東京オリンピックの閉会後にイギリスBBCのスポーツ編集長は「Tokyo Olympics : Sporting drama amid a state of emergency but how will Games be remembered?」との見出しで記事を書いている。最後の下り。「(意訳)パンデミックという事態であっても、オリンピックを否定することはできなかった。そのことに安堵した人も、失望した人もいたはずだ。そして、東京オリンピックの開催が正しかったのかどうかは、今後ずっと議論されていくだろう。しかし、不安に満ちた時代でも、スポーツ選手はこれまでと同じように、その元気な姿で我々を励ましてくれる存在であり続けた。それだけは確かなことではないだろうか」(8月9日付・BBCニュースWeb版)

⇒20日(祝)午前・金沢の天気      はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする