トランプ大統領に相当な決断があったことは想像に難くない。今月23日付のこのブログで、トランプ氏が香港の一国二制度を支援する香港人権・民主主義法案がアメリカ議会上下院で採択され、大統領署名をするのか拒否権を発動するのかどうか、「通商交渉を有利に進めるために法案をチラつかせ、中国側が仕方なく折れてアメリカ側が交渉を勝ち取ったとしたらどうだろう。トランプ氏は微笑みながら拒否権を発動するだろう。」と書いた。さらに「『金のために民主主義を売ったアメリカ大統領』として歴史に悪名を刻むことになるのではないか。」とも述べた。
というのも、トランプ氏はそれまで、「中国は香港との境界沿いに多くの軍部隊を駐留させているが、香港に侵攻していないのは私が習主席に侵攻しないよう要請しているからにほかならない」「現在、歴史上最大の通商合意に向け交渉が進められており、実現すれば素晴らしいことになる。 私がいなければ、香港で数千人の人々が殺され、警察国家が誕生することになる」(22日付・ロイター通信Web版)と述べていた。記事をストレートに解釈すれば、トランプ氏が中国による香港への侵攻を習氏に要請して止めているので、法案は必要ない、つまり拒否権を発動すると同じ意味ではないかと読んでいた。
民主主義を守るというアメリカ議会の強い政治姿勢を示した法案だけに、トランプ氏にとっては拒否権を行使したら、国内外からの大きな非難に揺れる。その意味で、香港の区議会議員選挙の結果を見計らったうえでの決断(署名)だったのだろう。きょうのアメリカのCNN(Web版)=写真=によると、新法は政府に対し香港の特別な自由が保たれているか毎年検証するよう求めているほか、自由が維持されていないと判断された場合、香港への優遇装置の取り消す。また、香港市民の恣意的な拘束、拷問、自白強要などに関与した人物への渡航制限、民主化を阻害した人物に対する資産凍結などの措置も盛り込まれている。個人への制裁にも及ぶ強烈な内容だ。
当然、中国政府は怒り心頭だろう。時事通信Web版によると、法成立についてさっそく非難声明を出し、香港や中国の内政に対する著しい干渉であり、「赤裸々な覇権行為」「中国は必ず断固反撃を加え、それで生じる一切の結果はアメリカが負う」と激しく反発している。世界の2大国の対立が経済面、政治面で先鋭化してきた。これがグローバル社会にどう波及するのか。日本の政治はこの事態にどう向き合うのか。まさか、あすも「桜を見る会」なのか。きょうの夕方、北朝鮮は飛翔体を発射したようだ。アメリカと中国、韓国と北朝鮮の混迷がさらに深まる。
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