自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★テレビ局という「ムラ社会」の発想と人権社会の感覚の隔たり

2025年04月01日 | ⇒メディア時評

かつて民放テレビ局に籍を置いたことがある自身の読みだが、一連のフジテレビ問題、これは民放の企業風土の問題そのものではないだろう。ある意味で民放はタテ割り社会で、たとえば番組のプロデューサーが番組制作に関わる人選(ディレクターや出演スタッフ)や制作会社の選定など担う。キー局のゴールデン番組ともなれば、おそらく数百人の規模ではないだろうか。なので、スタッフはプロデューサーには逆らえない。番組では絶対的な権力者でもある。言葉は適当でないかもしれないが、番組という「ムラ社会」だ。このムラの中では長(おさ・プロデューサー)に視聴率という数字を献上する従者(ずさ・ディレクター)がいて、中には数字を上げるために「やらせ」や「捏造」という悪さをする者もいる。

今回のフジテレビの一連の問題で焦点となっているのが、ムラの長が女衆(女性社員)に「晩酌の付き合いをせい」と半ば迫ったことだろう。長とすれば、同じムラという共有意識があれば、付き合いは当たり前という身勝手な思惑があったのだろう。そのムラ社会の発想と人権社会の感覚の隔たりが見えてきたのがフジテレビ問題だった。繰り返しになるが、これは民放の企業風土の問題なので、ほかのキー局や系列局などでも起こりうる、あるいは起きていることなのかもしれない。

フジ・メディア・ホールディングスはきのう(31日)、元タレントの中居正広氏と女性とのトラブルをめぐる第三者委員会の調査報告書を公表した。その様子をフジ系のローカル局で視ていた。委員長の弁護士は手厳しく指摘していた。人権侵害の疑いがあるにもかかわらず、フジテレビの社長ら幹部が「プライベートな男女間のトラブル」と即断したことが「対応を誤る大きな要因となった」「経営判断の体をなしていない」と断じていた。また、情報公開のあり方についても、2024年12月に公開した一部報道に対する会社見解について否定すべき部分は否定するという方針ありきで、「問題があったと言わざるを得ない」と指摘した。(※写真は、フジテレビ社長の生中継での記者会見の様子)

午後8時からのBSフジ「プライムニュース」では、冒頭で女性キャスター2人が「反町キャスターからは『状況に鑑み、番組の出演を見合わせたい』との申し出がありました。BSフジとプライムニュースではこれを受け、今夜は2人でお伝えします」と述べていた。第三者委員会の報告書では、反町氏が総理官邸キャップや政治部デスクだった2006年から2008年にかけて、後輩の女性記者2人に対するハラスメント行為があったと報じられている。食事の誘いを女性から断わられると、この女性に対して原稿が遅いなどと叱責のメールを部内共有で送信するなどしていたようだ。その後、キャスターとなり、報道局解説委員長、取締役なども務めることになる。フジテレビのムラ社会がよく見えてくる。

⇒1日(火)夜・金沢の天気  くもり時々あめ

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★自動車の追加関税25%の衝撃 だれがトランプ大統領の暴走を止めるのか

2025年03月28日 | ⇒メディア時評

まだ桜(ソメイヨシノ)が一輪も開花していないというのに、きのう(27日)はまるで夏を先取りするかのような晴れの暑い一日だった。金沢の自宅近くにある街路樹通りの気温計は「28度」を示していた=写真・上、午後1時39分撮影=。金沢地方気象台によると、7月中旬並みの暑さで、3月としては観測史上最も高い気温となったようだ。市内の繁華街では半袖で歩くインバウンド観光客の姿も多く見られた。そして、きょうは一転、朝から雨で寒々しい。最高気温は14度の予報となっている。あすからは平年を下回る日もあるとの予報だ。「梅は咲いたか 桜はまだかいな」のような気分で春本番を待つ。

話は変わるが、「経済の寒気」は強まりそうだ。アメリカのトランプ大統領は日本を含む輸入自動車に対して25%の追加関税を課す布告に署名した(28日付・メディア各社の報道)。4月3日に発動する恒久的な措置で、乗用車は27.5%、トラックは50%の関税率となる。関税率の大幅な引き上げで国内外のメーカーにアメリカでの生産を促す目論見もあるようだが、これはトランプ氏の「暴走」ではないかとの印象を世界に与えるに違いない。

実際、アメリカ国内メディアも暴走を危ぶむ論調を発している。「The New York Times」電子版(27日付)は「Canada’s Prime Minister Says U.S. Is ‘No Longer a Reliable Partner’ on Trade」(※意訳:カナダの首相は、アメリカの貿易について「もはや信頼できるパートナーではない」と語った)の見出しで=写真・下=、カナダのほかにメキシコやヨーロッパ、日本、韓国の首脳陣の苦言を掲載している。

中でも信頼関係で成り立つ日本との同盟関係にヒビが入ったのではないだろうか。石破総理は先月2月7日のトランプ氏との日米首脳会談で、日本による対米投資額を1兆㌦の規模にまで引き上げると約束した。にもかかわらず、今月12日、トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、アメリカにおける大量の輸入車について日本を「最大の輸入元の国の一つ」と名指し、「日本にはアメリカ車がない」「日本はアメリカ車を受け入れない」とやり玉に挙げた(今月14日付・メディア各社の報道)。

トランプ氏が気にくわないのは、自動車輸出入をめぐる数字だろう。日本は2024年、アメリカに137万台の自動車を輸出し、対米輸出の総額は全体の3割を占める6兆円に上った。一方、日本はアメリカから「テスラ」や「ジープ」などを輸入しているが、その台数は日本が輸出する台数の100分の1ほどにとどまるとされる。トランプ氏はこの点が気にくわないのだろう。ちなみに、日本は1978年以降、輸入車に対する関税を課していない。

石破総理はきょうの参院予算委員会で、追加関税の対応について「日本経済に与える影響は極めて大きい」と懸念を示した上で、「アメリカの得にならないことを理解させるため、最も効果的なやり方を考える」と語っていた(28日付・NHK中継「参院予算委員会」)。日本政府はこれまで日系メーカーの対米直接投資の実績を訴えて追加関税の除外を求めてきたが、ないがしろにされた。むしろ、日米間の新たな溝が浮き彫りとなってきた。

⇒28日(金)夜・金沢の天気   あめ

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★「アメリカ第一主義」掲げどこまで突っ走るのか トランプ政権の外交・経済の行方

2025年03月04日 | ⇒メディア時評

  この記事を読んでおそらく世界の多くの人は「もうトランプを信じることはできない。アメリカを頼ってはいけない」と思ったのではないだろうか。メディア各社は、アメリカのトランプ政権当局者のコメントとして、ウクライナに対するすべての軍事支援を停止したことを明らかにしたと報じている。2月28日に行われたトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領による首脳会談で両者が決裂したことを受けてのトランプ政権の対抗措置とみられると述べている。

  アメリカのCNNニュースは「Trump pauses military aid to Ukraine after Oval Office argument with Zelensky, White House official says」(CNNニュース公式サイト)の見出しで報道=写真=。この中で、「ここ数週間、トランプ大統領はロシアのプーチン大統領の論点に同調し、ウクライナが戦争を始めたと虚偽の主張をし、ゼレンスキーを独裁者と非難しているが、軍事援助の供給を停止するという彼の決定は、紛争のバランスに現実的な結果をもたらし、プーチンの影響力を強化する可能性のある動きである」と述べ、トランプ氏はプーチン氏を利する動きに転じていると伝えている。

  アメリカのウォールストーリートジャーナルは、ウクライナが軍事支援を失えば、地対地ミサイル「ATACMS」といった長い射程の兵器などが使えなくなり、現在の戦力でロシアと戦えるのはことし半ばまでとみられる、と予測している(4日付・メディア各社の報道)。トランプ氏の外交政策は、ロシアによるウクライナ侵攻を終わらせるために、まずウクライナを降参させて和平交渉にゼレンスキー氏を引きずり出す、という狙いがあるのだろうか。

  トランプ氏の経済政策でも、難題を課して相手を翻弄させ交渉を優位に進めるという同じストーリーが読める。メディア各社の報道によると、トランブ氏はホワイトハウスで記者団に、メキシコとカナダ両国への25%の関税措置を「4日に発動する」と明言した。2月に課した中国への関税は、さらに10%上乗せして20%とする大統領令にも署名した。3ヵ国に対する関税の強化で通商摩擦の激化になることは必至だろう。

  また、上記の関税を引き上げる理由を説明する際、トランプ氏は日本に対しても、「中国とともに日本が通貨安を誘導してきた」と問題視する発言を述べ、通貨安を狙った為替操作が確認できれば関税を課して対抗する考えを示した。この発言が今度どのように波及していのか。アメリカ第一主義を掲げるトランプ氏の外交・経済の政策が実行段階に入り、世界で物議を醸している。冒頭の「もうトランプを信じることはできない。アメリカを頼ってはいけない」は、いわゆる同盟国の枠を超えて対応すべき日本の課題として浮上してきた。

⇒4日(火)夜・金沢の天気    あめ

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★これはトランプ流外交の「真骨頂」なのか「愚の骨頂」なのか

2025年03月01日 | ⇒メディア時評

  これがトランプ流外交の真骨頂なのか愚の骨頂なのか。アメリカのトランプ大統領は28日、ホワイトハウスでウクライナのゼレンスキー大統領と会談した。記者団を入れた会談だったが、冒頭で激しい口論となり、予定していたウクライナの資源権益に関する協定への署名を見送り、共同記者会見も中止となったとメディア各社が報じている。アメリカのCNNニュースサイトは見出しでこう伝えている。「Trump orders Zelensky out of White House after angry exchange」

  CNNによると、首脳会談の冒頭でトランプ氏とバンス副大統領は、アメリカの支援に十分な感謝の意を示していないとして、声を荒げてゼレンスキー氏を非難した。本格侵攻から3年以上が経過する中で、ゼレンスキー氏がロシアとの和平合意の妨げになっているとも批判した。トランプ氏は「あなたの今の立場はそれほど良くない。非常に悪い立場に自らを追い込んでいる」と発言。「現状、あなたには交渉カードがない。われわれと一緒ならカードが手に入る」とも述べた。 これに対し、ゼレンスキー氏は「私はカード遊びをしているわけではない」と反論。するとトランプ氏は「あなたは数百万人の命でギャンブルをしている。あなたがやっているのは、第3次世界大戦をギャンブルにすることだ」と声を荒げた。

  トランプ氏はさらに「あなたの振る舞いからはそれほど感謝しているように見えない」と続け、バンス氏はゼレンスキー氏に「一度でも『ありがとう』と言ったことがあるのか」と問いかけた。この応酬の後、両首脳は別々の部屋に入り、トランプ氏はウクライナ側に退出を命じた。ウクライナ側は抗議し、協議の継続を望む考えを表明したものの、予定されていた共同記者会見は中止になった。ゼレンスキー氏はそのままSUV車でホワイトハウスを後にした。

  そもそも、トランプ氏はSNS(2月19日付)でゼレンスキー氏のことを「A Dictator without Elections」(選挙を経ていない独裁者)などと記して物議を醸している。トランプ氏はゼレンスキー氏とそもそも相性が悪いのか。外交上の単なる騒動なのか。あるいはロシアのプーチン大統領をトランプ氏側に引き込み、停戦交渉を優位に進めるための高等戦術なのか。

⇒1日(土)夕・金沢の天気   はれ

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☆フジテレビ問題をきっかけに、スポンサーの「テレビ離れ」となるのか

2025年02月28日 | ⇒メディア時評

  広告最大手の電通はきのう27日付の公式サイトで「2024年 日本の広告費」をニュースリリースしている。それによると、日本全体の広告費は前年比4.9%増の7兆6730億円で、3年連続で過去最高を更新した。好調な企業業績や消費意欲の高まりを受けて広告出稿が増えたと分析している。以下、電通サイトの記事から引用。

  好調な広告の牽引役となっているのがインターネット広告費で前年より9.6%増の3兆6517億円、広告費全体の47.6%、ほぼ5割を占めている。SNS上の縦型動画に加え、「TVer」「ABEMA」などを含むネットに接続する「コネクテッドTV」などの動画広告がけん引した。電子商取引(EC)サイトの広告も伸びた。ネット広告費の推計を始めた1996年以来増え続けている。

  ネット広告ほどの勢いはないが、新聞・テレビ・雑誌・ラジオの「マスコミ4媒体」もわずかながら増え、0.9%増の2兆3363億円だった。前年を超えたのは3年ぶり。ただ、4媒体の中でも明暗がある。新聞広告費は3417億円で前年比97.3%とマイナスになっている。出稿する広告業種は、流通・小売業で回復したものの、食品は前年に続き減少し、コロナ禍からの回復傾向にあった交通・レジャーも減少した。テレビ広告は1兆7605億円で前年比101.5%、3年ぶりで前年比を超えた。タイム広告(番組提供)はパリ2024オリ・パラなど大型スポーツ大会などで好調に推移したものの、能登半島地震による被災や、不透明な世界情勢などの影響を受けて前年を下回った。スポット広告は、半導体不足の解消などにより自動車・関連品が復調した。

  4媒体の中で伸び率が高かったのはラジオ広告で、前年比102.0%の1162億円となっている。多様な音声コンテンツを届ける音声メディアへの関心が高まり、radikoを含むデジタルオーディオ広告の増加とともに、地上波ラジオ放送における広告にも波及している。業種別では日常シーンに溶け込みやすい食品や交通・レジャーが二桁の伸び。

  以下は自身の目線。CMからさまざまなことが見えてくる。世界市場ではネット広告はすでに6割近い。日本でも2025年は50%を超えるだろう。一方で、新聞の凋落は加速しそうだ。部数と広告の減少の影響で、ローカル紙では夕刊の休刊が相次いでいる。テレビ広告もこれから順調に推移するだろうか。中居問題に連動したフジテレビでは、CMをACジャパンに差し替えたスポンサーが1月末時点で311社に上っているとメディア各社が報じている。これはフジテレビ問題というより、スポンサーの「テレビ離れ」ではないだろうか。この際、テレビ広告からネット広告に乗り換える、そのような雰囲気が漂っていると感じる。あくまでも憶測だ。

⇒28日(金)夜・金沢の天気   くもり

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☆「煮え切らない」フジのやり直し会見 なぜ10時間もかかったのか

2025年01月28日 | ⇒メディア時評

  経営の根幹が揺らぐフジテレビの首脳陣の記者会見をテレビで視聴した=写真=。午後4時に始まった会見は日付をまたいで午前2時23分に終了。10時間におよぶ異例の会見だった。休憩は開始から6時間が経過しようとした午後10時前に1回取っただけだったので、「トイレは大丈夫なのか」と視聴する側が案じたほどだった。

  やり直し会見だった。今月17日にフジテレビ社長が出席して会見を開いたものの、会見に出席するメディアを定例会見のメンバーに限定し、また、テレビメディアでありながら動画撮影を禁じた。このことがむしろ火に油を注ぐことになり、スポンサー企業などからCM出稿の差し止めなどが相次いだ。こうした批判を受け、フジはきのう27日午後4時から、あらためて会見を開催した。週刊誌やネットメディアの記者も参加し、会場には191社437人が詰めかけた報じられている。動画撮影も可能だった。

  会見でむしろ気になったのはフジ側というよりメディア側だった。質疑応答では、司会者が「プライバシーの観点からぜひご配慮お願いします」と繰り返し述べていた。会見のテレビ中継とネット配信はプライバシー侵害や保護の観点から、メディア各社が必要な編集を行ったうえで最低10分遅れでの放送・配信のルールで行われたようだ。ただ、質疑応答には記者のヤジや怒声が聞こえ、けんか腰の雰囲気が感じられた。

  会見ではフジの会長と社長の2人が同日付で引責辞任すると発表した。社長は「人権侵害が行われた可能性のある事案に対し、社内での必要な報告や連携が適切に行われなかった。自身が人権への認識が不足していた」と謝罪した。

  会見の印象をひと言で言えば、「煮え切らない」という印象だった。タレントの中居正広氏の女性とのトラブルが週刊文春で報道され、その後フジの編成部長が絡んでいたことや、女性アナも被害者として証言していると報じられていた。社長と会長はこの週刊誌報道を否定していたが、なぜ当事者とされた編成部長が会見に出てその報道を否定しなかったのか。編成部長はテレビ局の番組編成を統括する会社幹部でもあり、顔出して堂々と否定すれば会見に10時間もかからなかったのではないか。

⇒28日(火)夜・金沢の天気    あめ

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★各紙の世論調査 政治に「不満」82% トランプ2.0で日米関係「変わらない」50%

2025年01月27日 | ⇒メディア時評

  けさ読売新聞に目を通すと、早稲田大学先端社会科学研究所と読売新聞社による全国世論調査の結果が報じられていた。去年10月の衆院選挙後の有権者の政治意識を調査するもので、郵送方式で調査期間は11月25日から12月31日、全国の有権者3000人に発送し1958人から回答を得ている(回答率65%)。読売の調査結果の一面トップの見出し。「政治に『不満』最多82% 自公政権継続 望まず61%」

  さらに記事を読み込んでみる。質問は「今の国の政治に、満足していますか」。その回答は「満足」1%、「ある程度満足」17%、「やや不満」44%、「不満」38%となり、「やや不満」と「不満」の合計は82%となった。前回2021年10月の衆院選後の調査では「やや不満」と「不満」は合計74%で、2014年以降の調査で最高だったが、今回はさらにそれを上回ったことになる。自民党支持層でも59%が不満としている。その不満の根底にあるのが経済問題だ。先に衆院選で重視した選挙の争点について、順位別では「景気・雇用」「物価」「社会保障制度」「労働・働き方」「消費税」となっていって、長引く物価高への不満が募っている。

  内閣支持率は「支持する」が39%、「支持しない」が48%となっている。石破総理の評価についても調査されていて、「誠実さ」では評価が高いものの、「国際感覚」や「指導力」、「説明力」、「危機管理能力」、「国家像」といった項目では評価が低い。

  きょう付で日経新聞もテレビ東京と共同で行った世論調査(今月24-26日に電話調査、回答946件、回答率39%)の結果を掲載している。石破内閣の支持率は「支持する」が43%、「支持しない」が50%だった。日銀が金融政策決定会合で追加利上げを決めたことに対する評価については「評価する」が54%、「評価しない」が34%だった。また、アメリカのトランプ大統領をめぐり今後の日米関係についての質問では、「変わらない」が50%、「悪くなると思う」が36%、「良くなると思う」が8%だった。同じ日経新聞には共同通信の世論調査(今月25、26日)も掲載されていて、内閣支持率は支持が35.7%、不支持が49.2%だった。

  世論調査は国政選挙がある年には盛んに行われる。ことし7月にも予定される参院選挙。少数与党の行方、政権交代はあるのか、さまざまな論点でにぎやかに報道される。

⇒27日(月)午後・金沢の天気    はれ

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★スポンサー企業のテレビCM離れ フジテレビだけの問題なのか

2025年01月22日 | ⇒メディア時評

   月曜日(今月20日)夜の番組を視聴していて、じつに面白かった。有名な神社仏閣をテーマに、出演者に「法隆寺の五重塔は何階建か」や「奈良の大仏の右手の意味は」などと問題が出される。中でも、初めて知ったのが石清水八幡宮には発明家エジソンの記念碑があり、遺徳をしのんで誕生日(2月11日)と命日(10月18日)には慰霊祭が営まれているという。エジソンが白熱電球を開発する際に使ったのが、竹の名産地で知られた京都・八幡の「八幡竹」だったことが縁という。番組を楽しませてもらったが、気になったのはゴールデンタイムにも関わらず、CM枠に公共広告「ACジャパン」が目立っていたことだ=写真=。番組はフジテレビの『呼び出し先生タナカ 2時間SP』だった。スポンサー企業によるCM取り下げの動きが加速しているようだ。

  メディア各社の報道によると、同社へのCM差し止めはこれまで70社に上るという。この事態に陥った背景はいくつかあるようだが、転機となったのは今月17日のフジテレビ社長の記者会見だった。タレントの中居正広氏の女性とのトラブルが週刊文春で報道され、その後フジの編成部長が絡んでいたこと(12月26日号)、最新号(1月23日号)ではフジの女性アナも被害者として証言していると報じられ、社長の会見はこの流れを受けてのものだった。

  ところが、記者会見の設定や内容そのものがさらに問題視されることになった。会見はフジが定例で行っている定例記者会見の前倒しとして設定されたものだが、出席の枠を定例会見と同じくNHKと民放テレビ局、全国紙、スポーツ紙に絞った。週刊誌やインターネットメディアなどの参加を認めなかったのだ。さらに、テレビ局でありながらカメラによる動画撮影を許可しなかった。

  会見で社長は「多大なご心配、ご迷惑をおかけし、説明ができていなかったことをおわびします」と謝罪し、外部の弁護士を中心とした調査委員会を立ち上げると述べた。ところが、中居氏と女性のトラブルをフジ側が2023年6月に把握していながら、番組を続けていたことなどに質問が集中すると、「回答を控える」を繰り返した。会見で視聴者や国民におわびと言っておきながら、誠実さが見えない、さらに企業統治、ガバナンスの問題はいったいどうなっているのかとむしろ不満が噴出した。

  きょう付の新聞メディア各社の報道によると、1975年から続くフジの長寿番組『くいしん坊!万才』は今月26日分の放送をもって休止することが分かった。1社提供のキッコーマンが放送を当面見合わせるよう要請したようだ。スポンサー企業は番組の現場レベルでの問題ではなく、フジテレビ全体の問題だと捉えるようになったのだろう。

  これは一時的な問題なのだろうか、さらに、スポンサーのテレビCM離れはフジテレビだけにとどまるのだろうか。広告最大手の電通のまとめによると、2023年の総広告費は通年で7兆3167億円(前年比103.0%)となり、1947年の調査開始以降、前年に続き過去最高を更新した。中でもインターネット広告費は3兆3330億円(前年比107.8%)と過去最高を更新した。一方、テレビメディア広告費(地上波テレビと衛星メディア関連)は1兆7347億円(前年比96.3%)と落ち込んだ。前年2022年の北京冬季オリンピック・パラリンピックやFIFAワールドカップ2などの反動減と言えなくもないが、ネットに広告シェアを奪われているのは事実。スポンサー企業のテレビ離れがこのまま加速するのかもしれない。テレビ業界全体の問題としてスポンサーのCM離れとどう向き合うのか。

⇒22日(水)午後・金沢の天気    くもり時々あめ

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★トランプ政権に傾くSNS経営者 ファクトチェックは死語となるのか

2025年01月20日 | ⇒メディア時評

  1月20日はアメリカのトランプ氏が大統領に復帰する日だ。メディア各社の報道によると、トランプ氏は就任後、ただちに100本に及ぶ大統領令に署名し、不法移民の強制送還や関税の引き上げなど選挙公約の実現に向けて動き出すようだ。その一方でトランプ氏の大統領復帰に合わせるかのような動きも報じられている。IT大手メタ社のザッカーバーグCEOは今月8日、アメリカ国内のフェイスブックやインスタグラムなどで行ってきた投稿内容のファクトチェック(事実確認)を廃止すると発表した。

  メタ社はこれまで119ヵ国のファクトチェック団体と提携し、60を超す言語でファクトチェックを実施してきたことで知られる。廃止対象となるアメリカでは、これまでAFPやUSAトゥデイなどの通信社を含む10のファクトチェック団体と提携してきた。それを解消するという。この背景で浮かぶのがトランプ氏との関係の修復を図ろうとするザッカーバーグ氏の思惑のようだ。(※写真は、ファクトチェックをめぐるザッカーバーグ氏の大きな変化は、自己防衛なのか、それとも影響力を期してのことなのか、と報じるCNNニュースWeb版)

  そもそもプラットフォーマーがフェクトチェックに動いたはトランプ氏の投稿がきっかけだった。2020年5月、ツイッター社は当時のトランプ大統領がカリフォルニア州知事が進める大統領選挙(同年11月)の郵便投票が不正につながると主張した投稿について、誤った情報や事実の裏付けのない主張とファクトチェックで判断し、「Get the facts about mail-in ballots」とタグ付けして警告を発した。さらに、同じ5月にミネソタ州ミネアポリスで、アフリカ系アメリカ人の男性が警察官に首を押さえつけられて死亡する事件が起き、抗議活動が広がった。このとき、トランプ大統領がツイートした内容のうち、「略奪が始まれば(軍による)射撃も始まる」との部分が個人または集団に向けた暴力をほのめかす脅迫に当たると同社は判断し、大統領のツイッターを非表示とした。

  アメリカでは、SNS各社は通信品位法(CDA:the Communications Decency Act )230条に基づき、ユーザーの違法な投稿をそのまま掲載したとしても責任は問われない。だからといって、ヘイトスピーチなどを野放しにしておくわけにはいかないというのがSNS各社のスタンスだった。そして、トランプ氏とSNS各社の緊張関係がピークに達したのが、2021年1月だった。大統領選に敗れたトランプ氏の支持者らによるアメリカ連邦議事堂への襲撃事件。トランプ氏は暴徒を「愛国者だ」などとメッセージを投稿したことから、ツイッターやフェイスブック、グーグルなど各社は公共の安全が懸念されるとしてトランプ氏のアカウントを相次ぎ停止した。

  風向きが変わったのは、実業家イローン・マスク氏が2022年10月にツイッター社を買収してからだ。マスク氏は「言論の自由を重視する」として同年11月にトランプ氏のアカウントを復活させている。さらに、当時8000人とも言われたツイッター社のスタッフの8割をリストラした。この中には偽情報や誤情報対策を担っていたチームも含まれ、ファクトチェック部門は解体に追い込まれた。2023年にはツイッターは「X」に改名された。Xは誤情報への対策として「コミュニティノート」を導入している。登録した一部の利用者は、誤っている投稿に対して情報を追加できる仕組みだ。

  こうした流れの中で、メタ社のザッカーバーグ氏もフェイスブックやインスタグラムなどで行ってきた投稿内容のファクトチェックを廃止すると発表。まずはアメリカで止め、偽情報に対してはXと同様のコミュニティノートで対応する考えを示した。

  ファクトチェックは言論を弾圧しているわけでもなく、むしろ情報の透明性を重視するプラットフォーマーの行動規範ではなかっただろうか。今後、マスク氏が政権の中枢に入り、SNSがさらに変容していくのか。そして、ファクトチェックは死語となってしまうのか。

⇒20日(月)午後・金沢の天気   くもり

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☆報道した週刊誌なぜ排除  企業ガバナンスが問われたフジ社長会見

2025年01月18日 | ⇒メディア時評

  テレビ業界の用語で、映ってはいけないものが映り込んだりすることをバレルと言う。このところテレビ業界は不祥事や違反が相次ぎ、まさにバレバレの状態ではないだろうか。メディア各社の報道によると、きのう(17日)午後、フジテレビ社長による定例記者会見が開かれた。フジテレビ社長の定例会見はもともと2月28日に予定されていたが、記者会から前倒しでの会見の要望があり、フジテレビ側は前日の16日にこの日での開催が決めた。定例会見というより「緊急会見」のような様相だった。

  タレントの中居正広氏の女性とのトラブルをめぐる週刊誌報道がにぎやかだ=写真=。とくに、フジテレビの編成部長が絡んでいると週刊文春(12月26日号)で報道され、さらに最新号(1月23日号)では、フジテレビの女性アナも被害者として証言していると報じられている。フジテレビ社長の会見はこれを受けてのもので、会見内容は全国紙や経済紙なども報道している。冒頭でバレルと述べたが、まさにこの会見はテレビ局らしからぬ側面が見えている。

  会見は、冒頭で述べたように記者クラブ加盟社の記者のみが参加できる定例記者会見の前倒しとして設定され、主催者はフジテレビだった。このため、出席は全国紙やスポーツ紙が加盟するラジオ・テレビ記者会、参加が認められたNHKと民放テレビ局などに限定された。さらに、フジは定例記者会見であることを理由にカメラによる動画撮影を許可せず、週刊誌やインターネットメディアなどの参加も認めなかった。

  そもそも、記者会がフジテレビ社長の定例会見の前倒しを要望したのは、タレント中居正広氏の女性とのトラブルでのフジテレビ編成部長の関わりについて、法人トップの見解を求めるものだった。会見で社長は「多大なご心配、ご迷惑をおかけし、説明ができていなかったことをおわびします」と謝罪し、外部の弁護士を中心とした調査委員会を立ち上げると述べた。第三者から見ても、これは実質的な謝罪会見だ。つまり、会見を通じて視聴者や国民におわびをするということになる。ならば、定例会見という枠を設けずに、動画撮影を許可し、週刊誌やインターネットメディアなどの参加を認めるべきではなかったのか。むしろ、今回の会見で問われたのは企業統治、ガバナンスの問題だろう。

  もう一つ。テレビ東京の番組「激録・警察密着24時!!」をめぐり、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会は2023年3月の放送分について、実際の密着は2日間のみで、1年にわたって密着取材したかのように誤解させる表現をしていて、放送倫理違反に当たるとの意見を公表した(1月17日付・BPO放送倫理検証委決定第46号)。一方で委員会は、制作会社スタッフの過酷な勤務状態による「ひっ迫する制作体制」に問題があると述べ、制作を委託したテレビ東京側にも責任があるとしている。

⇒18日(土)夜・金沢の天気    くもり

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